説明

プロジェクタ

【課題】投影画像の全体にわたって高品質な画像を投影することができるプロジェクタを提供する。
【解決手段】格子状パターンを有する枠データを記憶する記憶部28と、前記枠データに基づく枠が投影領域の縁部と略一致するように前記枠を投影面に対して投影する投影部34と、前記投影面に投影された前記枠を撮影する撮影部24と、撮影領域の縁部が前記枠と略一致するように撮影画角を調整する画角調整部42と、前記画角調整部で調整された前記撮影画角で前記撮影部により撮影された前記枠内の格子状パターンを含む撮影データに基づいて前記投影画像の補正値を算出する補正値算出部20と、前記補正値に基づいて投影画像の画像データを補正する補正部とを備え、前記投影部は、前記補正部により補正した画像データに基づく投影画像を前記投影面に投影することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラにより投影面に投影された投影画像を撮影するプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このプロジェクタによれば、投影面が曲面を有する場合であっても、投影画像に対して補正を行うことにより投影面に滑らかな画像を投影することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−169211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のプロジェクタにおいては、カメラによる撮影領域がプロジェクタによる投影領域と一致しない場合があり、このような場合には適切に投影画像の補正を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、投影画像の全体にわたって高品質な画像を投影することができるプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクタは、格子状パターンを有する枠データを記憶する記憶部と、前記枠データに基づく枠が投影領域の縁部と略一致するように前記枠を投影面に対して投影する投影部と、前記投影面に投影された前記枠を撮影する撮影部と、撮影領域の縁部が前記枠と略一致するように撮影画角を調整する画角調整部と、前記画角調整部で調整された前記撮影画角で前記撮影部により撮影された前記枠内の格子状パターンを含む撮影データに基づいて前記投影画像の補正値を算出する補正値算出部と、前記補正値に基づいて投影画像の画像データを補正する補正部とを備え、前記投影部は、前記補正部により補正した画像データに基づく投影画像を前記投影面に投影することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプロジェクタによれば、投影画像の全体にわたって高品質な画像を投影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るプロジェクタにおける処理を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態に係るプロジェクタにより投影面に投影される格子状パターンを有する枠を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るプロジェクタについて説明する。図1は、実施の形態に係るプロジェクタのシステム構成を示すブロック図である。プロジェクタ2は、CPU20を備え、CPU20には、図示しない電源スイッチ等を備える操作部22、被写体を撮影するための撮影部24、撮影部24により撮影された画像の画像データを記憶する画像記憶部26、格子状パターンを有する枠データを記憶する枠データ記憶部28、枠データの画素の色を補色に変更する等の画像処理を行う画像処理部29、投影する画像の画像データを記憶するメモリカード30、枠データに基づく画像及びメモリカード30に記憶された画像データに基づく画像等を投影する投影部34が接続されている。ここで、撮影部24は、撮影レンズ41の駆動制御を行うレンズ駆動部42、CCD等により構成される撮像素子43、レンズ駆動部42及び撮像素子43の駆動制御を行う撮影制御部44を備えている。また、投影部34は、LED光源46の点灯及び消灯を行う電源制御部48、投影する画像を表示するLCOS50の表示制御を行う投影制御部52を備えている。
【0010】
次に図2に示すフローチャートを参照して実施の形態に係るプロジェクタ2における処理について説明する。まず、電源スイッチがオンされると、CPU20は、投影部34により図3に示す格子状パターンを有する枠60の投影を開始する。即ち、CPU20は、枠データ記憶部28から枠データを読み出して、枠62が投影領域の縁部と略一致するように調整した後、投影制御部52により枠データに基づいて格子状パターンを有する枠60をLCOS50に表示する。また、電源制御部48は、LED光源46を点灯し、図示しない投影窓を介して投影光を射出することによって、投影部34から投影面に格子状パターンを有する枠60を投影する(ステップS1)。
【0011】
次に、CPU20は、撮影部24に指示して撮像素子43により、投影面に投影された格子状パターンを有する枠60の撮影を行う(ステップS2)。ここで、撮像素子43から撮像制御部44を介して読み出された撮像信号に基づく画像データは画像記憶部26に記憶される。
【0012】
次に、CPU20は、画像記憶部26から撮影部24により撮影された画像の画像データを読み出し、画像データから図3に示す枠62及び格子状パターン64の形状が識別できるか否かの判定を行う(ステップS3)。なお、枠62及び格子状パターン64の色が投影面の色に近似する場合、撮影された画像の画像データの枠62及び格子状パターン64は不鮮明なものとなり、画像データから枠62及び格子状パターン64の形状が識別しにくくなる。
【0013】
画像データにおいて枠62及び格子状パターン64の形状が識別できない部分が存在する場合(ステップS3:No)、CPU20は、画像処理部29により枠62及び格子状パターン64の形状が識別できるように枠データに対して所定の画像処理を行う(ステップS4)。例えば、画像処理部29により枠データの画素の色を補色へ変更する画像処理を行う。画像処理後はステップS1の処理に戻り、投影部34により画像処理後の枠データに基づいて格子状パターンを有する枠60を投影面に投影する(ステップS1)。
【0014】
一方、画像データから枠62及び格子状パターン64の形状の全体が識別できた場合(ステップS3:Yes)、CPU20は、撮影部24による撮影領域の縁部が投影面に投影された枠62と略一致しているか否かの判定を行う(ステップS5)。例えば、撮影部24により撮影された画像の画像データから枠62を検出し枠62が画像データの縁部に位置しているか否かの判定を行う。ここで、撮影部24による撮影領域が投影面に投影された枠62よりも広い場合、画像データにおいて枠62の外側から画像データの縁部までの間に空間ができるため撮影領域の縁部は投影面に投影された枠62と略一致していないと判定される。また、撮影部24による撮影領域が投影面に投影された枠62よりも狭い場合、画像データから枠62が検出できないため撮影領域の縁部は投影面に投影された枠62と略一致していないと判定される。
【0015】
撮影部24による撮影領域の縁部が投影面に投影された枠62と略一致していない場合(ステップS5:No)、撮像制御部44は、レンズ駆動部42を駆動して撮影レンズ41を光軸方向に移動させ、撮影部24による撮影領域の縁部が投影面に投影された枠62と略一致するように撮影部24の撮影画角を調整する(ステップS6)。次に、CPU20は、撮影部24により調整後の撮影画角で格子状パターンを有する枠60を再度撮影し(ステップS7)、撮影した画像の画像データを画像記憶部26に記憶する。
【0016】
撮影部24による撮影領域の縁部が投影面に投影された枠62と略一致している場合(ステップS5:Yes)、及び撮影部24による撮影領域の縁部が投影面に投影された枠62と略一致していない場合においてステップS7の処理を行った後、CPU20は、撮影部24により撮影した画像の画像データに基づいて枠データを補正する必要があるか否かの判定を行う(ステップS8)。例えば、投影面に変形部分がなく撮影部24により撮影した画像において格子状パターン64が歪んでいない場合は枠データを補正する必要がないと判定する。一方、投影面に変形部分があり撮影部24により撮影した画像において格子状パターン64が歪んでいる場合は枠データを補正する必要があると判定する。
【0017】
枠データを補正する必要がない場合(ステップS8:No)、CPU20は、メモリカード30から画像データを読み出して画像データに基づく画像を投影面に対して投影する(ステップS15)。一方、枠データを補正する必要がある場合(ステップS8:Yes)、CPU20は、撮影部24により撮影された画像の画像データに基づいて、投影面に投影される格子状パターン64の歪みを補正するための補正値を算出する(ステップS9)。即ち、格子状パターンを有する枠60が変形部分を有する投影面に投影された場合において、投影された格子状パターン64が歪まないようにするための補正値を画像データに基づいて算出する。
【0018】
次に、CPU20は、補正値に基づいて枠データに対して補正を行い(ステップS10)、補正後の枠データを画像記憶部26に記憶する。次に、CPU20は、画像記憶部26から補正後の枠データを読み出して、再度投影部34により補正後の枠データに基づく格子状パターンを有する枠60を投影し(ステップS11)、撮影部24により格子状パターンを有する枠60を撮影する(ステップS12)。そして、撮影した画像の画像データに基づいて枠データを再度補正する必要があるか否かの判定を行う(ステップS13)。
【0019】
例えば、補正値に基づいて補正した枠データに基づいて変形部分を有する投影面に格子状パターンを有する枠60を投影し、撮影部24により撮影した画像において格子状パターン64が歪んでいない場合は枠データを再度補正する必要がないと判定する。一方、撮影部24により撮影した画像において格子状パターン64が歪んでいる場合は枠データを補正する必要があると判定する。
【0020】
枠データを再度補正する必要がある場合(ステップS13:Yes)、枠データを補正する必要がなくなるまでステップS9〜S13の処理を繰り返す。一方、枠データを再度補正する必要がない場合(ステップS13:No)、CPU20は、メモリカード30から投影する画像の画像データを読み出して、ステップS9において算出した補正値に基づいて画像データを補正し(ステップ14)、補正後の画像データを画像記憶部26に記憶する。次に、CPU20は、画像記憶部26から補正後の画像データを読み出して、投影部34により補正後の画像データに基づく画像を投影面に対して投影する(ステップS15)。
【0021】
この実施の形態に係るプロジェクタ2によれば、撮影部24による撮影領域の縁部が投影面に投影された枠62と略一致するように撮影部24の撮影画角を調整した上で格子状パターンを有する枠60を撮影し、撮影した画像の画像データに基づいて算出した補正値により投影する画像の画像データに対して補正を行うため、投影画像の全体にわたって高品質な画像を投影することができる。
【0022】
また、投影面に投影された枠62及び格子状パターン64の形状が不鮮明な場合、枠62及び格子状パターン64の形状が識別できるように枠データに対して画像処理を行うため、正確に枠62及び格子状パターン64の形状を識別することができる。また、補正した枠データに基づいて格子状パターンを有する枠60を投影し、撮影した画像の格子状パターン64がなお歪んでいる場合には、枠データに対して補正を行う必要がなくなるまでステップS9〜S13の処理を繰り返すため、精度の高い補正値を算出することができる。また、補正値に基づいて枠データの変形部分に対応する投影画像の領域を補正することにより、投影面に変形部分がある場合であっても、滑らかな画像を投影することができる。
【0023】
なお、上述の実施の形態においては、枠62及び格子状パターン64の形状が識別できなかった場合、枠データに対して画素の色を補色へ変更する画像処理を行う場合を例に説明しているが、枠データの輝度を変更する画像処理を行ってもよい。また、画素の色を補色へ変更する画像処理と併せて輝度を変更する画像処理を行ってもよい。
【0024】
また、上述の実施の形態においては、格子状パターン64の変形を補正するための補正値を算出する場合を例に説明しているが、投影画像に対して色ムラを補正するための補正値を算出するようにしてもよい。例えば、投影面に色ムラ部分があり、格子状パターンを有する枠60がこの色ムラ部分を含む領域に投影されたとする。この場合において、撮影部24により撮影が行われると、一部に色ムラ部分を有する画像の画像データが画像記憶部26に記憶される。ここでCPU20は、この色ムラ部分の色に基づいて色ムラ部分に対応する投影画像の領域に対してホワイトバランス調整を行うための補正値を算出するようにしてもよい。これにより、投影面に対して投影画像を投影した時に投影画像の色ムラ部分を目立たなくすることができる。なお、CPU20は、色ムラ部分の輝度を基準として輝度の変更を行うための補正値を算出するようにしてもよい。
【0025】
また、投影面に色が異なる色ムラ部分が複数存在する場合には、各々の色ムラの部分の色を基準とする複数の補正値を算出し、色ムラの部分に対応する各々の領域に各々の補正値を用いて補正を行うようにしてもよい。この場合、色ムラの部分同士の間の領域にグラデーションをつけることにより色の変化を目立たなくするようにしてもよい。
【0026】
また、上述の実施の形態において、プロジェクタ2は前面の壁等に投影画像を投影するタイプのものでもよく、プロジェクタ2を載置する机等の載置面に投影画像を投影するタイプのものでもよい。
【符号の説明】
【0027】
2…プロジェクタ、20…CPU、22…操作部、24…撮影部、26…画像記憶部、28…枠データ記憶部、29…画像処理部、30…メモリカード、34…投影部、42…レンズ駆動部、43…撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状パターンを有する枠データを記憶する記憶部と、
前記枠データに基づく枠が投影領域の縁部と略一致するように前記枠を投影面に対して投影する投影部と、
前記投影面に投影された前記枠を撮影する撮影部と、
撮影領域の縁部が前記枠と略一致するように撮影画角を調整する画角調整部と、
前記画角調整部で調整された前記撮影画角で前記撮影部により撮影された前記枠内の格子状パターンを含む撮影データに基づいて前記投影画像の補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値に基づいて投影画像の画像データを補正する補正部とを備え、
前記投影部は、前記補正部により補正した画像データに基づく投影画像を前記投影面に投影することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記補正部は、前記補正値に基づいて前記格子状パターンを有する枠データを補正し、
前記補正値算出部は、前記投影部により投影され前記撮影部により撮影された前記補正後の格子状パターンの撮影データに基づいて再度前記補正値の算出を行うことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記撮影データに基づいて前記投影面に投影された前記枠及び前記格子状パターンの形状が識別できるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により識別ができないと判定された場合に前記枠データの色に関する情報の変更を行う色変更部とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記色に関する情報の変更には、輝度の変更及び補色への変更が含まれることを特徴とする請求項3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記補正値は、前記格子状パターンの変形を補正するための値であり、
前記補正部は、前記投影画像の画像データにおいて前記撮影データの前記格子状パターンの変形部分に対応する領域に対して補正を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記補正値は、前記投影画像に対して色に関する情報の変更を行うための値であり、
前記補正部は、前記投影画像の色ムラ部分を目立たなくするための補正を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記色に関する情報の変更には、ホワイトバランス調整及び輝度の変更が含まれることを特徴とする請求項6に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−231323(P2012−231323A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98584(P2011−98584)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】