説明

プロセス制御用計算機のテスト支援装置、方法及びプログラム

【課題】プロセス制御用計算機に送信するテストデータを簡単に登録でき、しかも既設計算機とは運転状況が異なる場合や既設計算機がない場合でもテストを行えるようにする。
【解決手段】生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機200のテストを支援するテスト支援装置100は、プロセス制御用計算機200が受信する伝文を登録する受信伝文登録部101と、受信伝文登録部101で登録された伝文のうち、生産ライン上の設備の稼動状況に応じてプロセス制御用計算機200が受信する伝文について、プロセス制御用計算機200にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定部102と、テストの開始後に、受信伝文登録部101で登録された伝文及びタイミング設定部102で設定されたタイミングに従ってテストデータをプロセス制御用計算機200に送信するテスト実行部103とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストを行うのに好適なテスト支援装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば製鉄所における製鋼工程のプロセスの制御、管理には、操業時の実績収集用又は制御用のアプリケーションプログラム(AP)を実行することにより、製鋼工程上の電気計装を含む設備群と伝文を送受信して、生産情報の採集、分析、計算等を行うプロセス制御用計算機が用いられる。
【0003】
通常、プロセス制御用計算機は、プロセス制御システムの機能・機構・処理設計から始まり、製作・テストを経た上で実用化される。プロセス制御用計算機のアプリケーションプログラム(AP)の機能検証については、プロセス制御計算機単身での検証を実施した後に、機械設備や電気設備と連動させての総合試運転を実施する。しかし、プロセス制御用計算機単身でのテスト段階では伝文をやりとりする機械設備や電気設備は無いため、伝文の送受信をシミュレートすることが必要となる。伝文の送受信をシミュレーションするテストを行う際には、どのタイミングでどういったデータをプロセス制御用計算機に与えるかについてのテストシナリオを作成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−353206号公報
【特許文献2】特開2005−322157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、テストシナリオはコマンドライン入力で開発担当者等が作成しているが、テストシナリオコマンドを正確に把握していないとテストシナリオを作成することができず、専門家でないとテストシナリオを作成するのが難しいという問題があった。
【0006】
計算機のテストを支援する技術として、例えば特許文献1には、テストのためのデータをユーザが対話的に作成可能とするテスト支援システムが開示されている。しかしながら、結局はテストシナリオの手動作成であり、作成しなければならないデータやイベントの量が多く、多くの時間を要し、非効率的である。
【0007】
また、例えば特許文献2には、本番系システムで稼動している既設計算機が機械設備や電気設備等から受信している信号を横取りして新設計算機に受信させて新設計算機の運転テストを支援するテスト支援装置が開示されている。しかしながら、既設計算機及び新設計算機における操業に係る運転条件(例えば操業条件や設備条件)が同一であることが前提となり、既設計算機とは運転状況が異なる場合や既設計算機がない場合は運転テストを支援することが困難である。
【0008】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、プロセス制御用計算機に送信するテストデータを簡単に登録でき、しかも既設計算機とは運転状況が異なる場合や既設計算機がない場合でもテストを、従来よりも効率的に行えるようにすることを第1の目的とする。また、一旦構成したテスト支援装置を類似の工程のプロセス制御用計算機のテスト支援へ適用することを容易にすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援装置は、生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストを支援するテスト支援装置であって、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する受信伝文登録手段と、前記受信伝文登録手段で登録された伝文のうち、前記生産ライン上の設備の稼動状況に応じて前記プロセス制御用計算機が受信する伝文について、前記プロセス制御用計算機にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定手段と、テストの開始後に、前記受信伝文登録手段で登録された伝文及び前記タイミング設定手段で設定されたタイミングに従ってテストデータを前記プロセス制御用計算機に送信するテスト実行手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援装置の他の特徴とするところは、前記受信伝文登録手段は、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文の仕様書のファイルに基づいて、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する点にある。
また、本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援装置の他の特徴とするところは、前記テスト実行手段はユーザからの指示に応じてテストを開始する点にある。
また、本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援装置の他の特徴とするところは、前記テスト実行手段により前記プロセス制御用計算機に送信したテストデータのデータログを記録するデータログ記録手段を備えた点にある。
また、本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援装置の他の特徴とするところは、前記テスト実行手段は、前記受信伝文登録手段で登録された伝文のうち、瞬時値については乱数をテストデータとして送信する点にある。
また、本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援装置の他の特徴とするところは、前記テスト実行手段は、前記受信伝文登録手段で登録された伝文のうち、積算値についてはテストの開始後からの経過時間に応じて求めた積算値をテストデータとして送信する点にある。
本発明のプロセス制御用計算機のテスト支援方法は、生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストをテスト支援装置により支援するテスト支援方法であって、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する受信伝文登録手順と、前記受信伝文登録手順で登録された伝文のうち、前記生産ライン上の設備の稼動状況に応じて前記プロセス制御用計算機が受信する伝文について、前記プロセス制御用計算機にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定手順と、テストの開始後に、前記受信伝文登録手順で登録された伝文及び前記タイミング設定手順で設定されたタイミングに従ってテストデータを前記プロセス制御用計算機に送信するテスト実行手順とを有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストを支援するためのプログラムであって、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する受信伝文登録処理と、前記受信伝文登録処理で登録された伝文のうち、前記生産ライン上の設備の稼動状況に応じて前記プロセス制御用計算機が受信する伝文について、前記プロセス制御用計算機にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定処理と、テストの開始後に、前記受信伝文登録処理で登録された伝文及び前記タイミング設定処理で設定されたタイミングに従ってテストデータを前記プロセス制御用計算機に送信するテスト実行処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プロセス制御用計算機がどのタイミングでどの伝文を受信すべきであるのかを簡単に登録でき、伝文仕様書からテストデータを自動生成するので効率的なテストが可能となる。しかも既設計算機とは運転状況が異なる場合や既設計算機がない場合でもテストを行うことができる。また、一旦構成したテスト支援装置を類似の工程のプロセス制御用計算機のテスト支援へ適用することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るプロセス制御用計算機のテスト支援装置の機能構成を示す図である。
【図2】テスト支援装置が表示するメニュー画面の例を示す図である。
【図3】テスト支援装置が表示するプロコン受信伝文登録画面を示す図である。
【図4】テスト支援装置が表示する設備ステータス伝文登録画面を示す図である。
【図5】テスト支援装置が表示する設備ステータスイベント項目情報登録画面を示す図である。
【図6】テスト支援装置が表示するGOTシミュレータ画面を示す図である。
【図7】テスト支援装置が表示する送信データログ選択画面を示す図である。
【図8】「定周期情報伝文」の仕様書の例を示す図である。
【図9】「ステータス情報伝文」の仕様書の例を示す図である。
【図10】テスト支援装置が表示するテストデータのデータログ画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るプロセス制御用計算機のテスト支援装置100の機能構成を示す。本実施形態では、プロセス制御用計算機(以下、プロコンと称する)200が、製鉄業における製鋼工程上の電気計装機器を含む設備群と伝文(各種データ)を送受信することによりプロセスを制御、管理する一例を説明する。
【0013】
テスト支援装置100は、プロコン200を製鋼工程上の設備群に実際に接続する前段階においてプログラムのテストを行うためのものである。プロコン200のテストとしては、プログラム毎の単体テストや機能毎の複合テストがあるが、テスト支援装置100は、これら単体テストや複合テストの後に行う、伝文の送受信をシミュレーションしてプロコン200のプログラム全体の機能検証を行う総合テスト(GOT:General Online Test)を支援する。テスト支援装置100は、製鋼工程上の設備群を模擬して操業状況を再現し、プロコン200にテストデータを送信することにより、プロコン200が伝文を受信するシミュレーションを実行する。
【0014】
テスト支援装置100において、101は受信伝文登録部であり、プロコン200が受信する伝文(以下、プロコン受信伝文という)を登録する。受信伝文登録部101は、記憶装置160に格納されているプロコン受信伝文の仕様書のファイル300に基づいてプロコン受信伝文を登録することにより、テストデータの自動生成を行う。
【0015】
102はタイミング設定部であり、受信伝文登録部101で登録されたプロコン受信伝文のうち、製鋼工程上の設備の稼動状況に応じてプロコン200が受信する伝文について、プロコン200にテストデータを送信するタイミングを設定する。
【0016】
103はカウンタを含むテスト実行部であり、テストの開始後に、受信伝文登録部101で登録されたプロコン受信伝文、及びタイミング設定部102で設定されたタイミングに従ってテストデータを、後記するI/O部を経由してプロコン200に送信する。
【0017】
104はデータログ記録部であり、テスト実行部103によりプロコン200に送信したテストデータのデータログを記録する。
【0018】
105はI/O部(入出力部)であり、例えばネートワーク接続するためのLANボードで構成するとよい。
【0019】
150は表示装置であり、テスト支援装置100はユーザが操作入力するため、及びユーザにテスト結果等の情報を提示するための各種画面を表示する。図2はユーザが操作入力するためのメニュー画面20の例を示す図である。受信伝文登録画面ボタン21をユーザ(テスト実施者、システム開発者)が押下すると、図3に示すプロコン受信伝文登録画面30に移る。ステータス伝文登録画面ボタン22を押下すると、図4に示す設備ステータス伝文登録画面40に移る。イベント項目情報登録画面ボタン23を押下すると、図5に示す設備ステータスイベント項目情報登録画面50に移る。GOTシミュレータ画面ボタン24を押下すると、図6に示すGOTシミュレータ画面60に移る。送信データログ選択画面ボタン25を押下すると、図7に示す送信データログ選択画面70に移る。
【0020】
図1に説明を戻して、160は記憶装置であり、プロコン200の設計時に作成されたプロコン受信伝文の仕様書のファイル300を格納する。
【0021】
プロコン200において、201はI/O部(入出力部)であり、例えばネートワーク接続するためのLANボードで構成するとよい。
【0022】
202はAP処理部であり、アプリケーションプログラム(AP)を実行することにより、製鋼工程上の電気計装を含む設備群と伝文を送受信して、生産情報の採集、分析、計算等を行う。
【0023】
(テスト支援装置100へのプロコン受信伝文の登録)
図3に示すプロコン受信伝文登録画面30では、「応答受信伝文」、「ステータス情報伝文」、「合金銘柄アサイン情報伝文」、「合金鉄切出順位情報伝文」、「定周期情報伝文」等のプロコン受信伝文(図3のプロコン受信伝文登録画面30で背景色があるもの)を登録することができる。
【0024】
プロコン200のAP設計時には、プロコン受信伝文についての仕様書がシステム開発者等により作成されており、そのファイル300が記憶装置160に格納される。図8には「定周期情報伝文」の仕様書の例を示す。「定周期情報伝文」は、定周期でプロコン200が受信する伝文である。「定周期情報伝文」の仕様書では、データ項目、型、単位、バイト位置、バイトサイズ、データ仕様・説明、データの値の上下限、データ種別、備考が記述される。例えばNo.16の還流ガス支管(1)流量は、還流ガス支管(1)の流量計から定周期でプロコン200が受信する伝文であり、時々刻々と変化する流量計の検出値であるのでデータ種別は「瞬時値」であることが定義されている。
【0025】
また、図9には「ステータス情報伝文」の仕様書の例を示す。「ステータス情報伝文」は、製鋼工程上の設備の稼動状況に応じてプロコン200が受信する伝文である。「ステータス情報伝文」の仕様書でも、データ項目、型、単位、バイト位置、バイトサイズ、データ仕様・説明、データの上下限、データ種別、備考が記述される。例えばNo.22の鍋上昇開始は、溶鋼の入った鍋が上昇開始したときにプロコン200が受信する伝文であり、伝文の内容は鍋情報開始時にON=「1」となることが定義されている。
【0026】
「合金銘柄アサイン情報伝文」、「合金鉄切出順位情報伝文」等は、「ステータス情報伝文」の該当するデータ項目(例えば合金に関するデータ項目)のON(=1)/OFF(=0)に従ってプロコン200が受信する伝文である。すなわち、「ステータス情報伝文」は製鋼工程上の設備のON/OFFを定義し、「合金銘柄アサイン情報伝文」、「合金鉄切出順位情報伝文」等は「ステータス情報伝文」で定義される各タイミングでプロコン200が受信する具体的な伝文を定義する。
【0027】
例えば「定周期情報伝文」を登録するときは、図3に示すプロコン受信伝文登録画面30において、格納フォルタ指定ボタン31により、「定周期情報伝文」の仕様書(図8を参照)のファイル300が格納されているフォルダを指定する。そして、選択ウィンドウ32で「定周期情報伝文」を選択して、受信伝文登録ボタン33を押下することにより、「定周期情報伝文」の仕様書のファイル300を記憶装置160から読み込んで登録することができる。
【0028】
また、「ステータス情報伝文」を登録するときは、図3に示すプロコン受信伝文登録画面30において、選択ウィンドウ32で「ステータス情報伝文」を選択すると、図4に示す設備ステータス伝文登録画面40に移る。なお、この設備ステータス伝文登録画面40には、図2に示すメニュー画面20のステータス伝文登録画面ボタン22を押下することでも移ることができる。そして、図4に示す設備ステータス伝文登録画面40において、格納フォルタ指定ボタン41により、「ステータス情報伝文」の仕様書のファイル300(図9を参照)が格納されているフォルダを指定する。そして、選択ウィンドウ42で「ステータス情報伝文」を選択して、ステータス伝文登録ボタン43を押下することにより、「ステータス情報伝文」の仕様書のファイル300を記憶装置160から読み込んで登録することができる。
【0029】
ここで、定周期でプロコン200が受信する「定周期情報伝文」であれば、プロコン200に対してテスト支援装置100からテストデータを定周期で送信すればよい。一方、製鋼工程上の設備の稼動状況に応じてプロコン200が受信する「ステータス情報伝文」の場合、プロコン200に対してテスト支援装置100からテストデータを送信するタイミングを設定する必要がある。
【0030】
「ステータス情報伝文」についてテストデータを送信するタイミングは、図5に示す設備ステータスイベント項目情報登録画面50で設定することができる。図示例にあるように、選択欄51で「ステータス情報伝文」を選択すると、現在登録されている「ステータス情報伝文」のデータ項目等の一覧52が表示される。
【0031】
一覧52では、各データ項目に変更タイミング設定欄53が設定されており、この変更タイミング設定欄53においてテストデータを送信するタイミングを設定することができる。ここでは、テストデータを送信するタイミングをカウンタ値で設定するようになっている。テスト支援装置100は、テストの開始とともにカウントを始め、所定のカウンタ値に達するとテストを終了する。1カウンタが実プロセスでいう何秒程度に相当するかは予め定められており、また、システム開発者は、実プロセスにおける製鋼工程上の各設備の稼動タイミングを把握している。したがって、テストの開始から終了(所定のカウント値に達するまで)を実プロセスに対応させることにより、各設備の稼動タイミングをカウンタ値として設定することができる。図示例では、製鋼工程において鍋上昇開始はカウンタ値が「15」になったときにデータ値を「1」に変更するとして設定している。変更タイミング設定欄53では、データ値を変更する単一のタイミング(単一のカウンタ値)だけでなく、「100、200、300」のように複数のタイミング(複数のカウンタ値)を設定したり、「34−235」のように期間(カウンタ値の範囲)を設定したりすることができる。
【0032】
また、一覧52では、各データ項目に編集ボタン54が設定されており、編集ボタン54を押下すると、別ウィンドウのイベント項目詳細情報設定画面55が表示される。イベント項目詳細情報設定画面55では、対応するイベント項目名が表示されるとともに、データ値変更タイミングでのプロコン受信伝文(「合金銘柄アサイン情報伝文」、「合金鉄切出順位情報伝文」等)を選択設定することができる。
【0033】
(テスト支援装置100によるテストの実行)
図1のテスト実行部103は、ユーザからの指示に応じてテストを開始する。本実施形態では、図2に示すGOTシミュレータ画面ボタン24を押下すると、図6に示すGOTシミュレータ画面60に移り、次に図6に示すGOTシミュレータ画面60において、開始ボタン61を押下すると、テストが開始される。テスト実行部103は、テストの開始とともにカウントを始め、所定のカウンタ値に達するとテストを終了する。カウンタ値表示欄65には現在のカウンタ値が表示され、進行状況表示バー66にはテストの進行状態が表示される。なお、終了ボタン62を押下することによりテストを途中で終了させることができる。また、中断ボタン63を押下することによりテストを中断させ、再開ボタン64を押下することによりテストを再開させることができる。
【0034】
テスト実行部103は、テストを開始すると、受信伝文登録部101で登録されたプロコン受信伝文及びタイミング設定部102で設定されたタイミングに従ってテストデータをプロコン200に送信する。
【0035】
例えば上述した「定周期情報伝文」については、定周期で各データ項目のテストデータをプロコン200に送信する。このとき、データ種別が「瞬時値」であれば、上下限の範囲内の乱数をテストデータとして送信する。また、データ種別が「積算値」であれば、例えば単位カウンタ値あたりの増加量をユーザが予め設定しておき、テストの開始後から送信のタイミングまでのカウンタ値に応じて求めた積算値をテストデータとして送信する。また、データ種別が「処理時間」であれば、上述したように1カウンタが実プロセスでいう何秒程度に相当するかを把握することができるので、カウンタ値から算出した処理時間をテストデータとして送信する。
【0036】
また、例えば上述した「ステータス情報伝文」については、設備ステータスイベント項目情報登録画面50で設定されたタイミングで各項目データのテストデータをプロコン200に送信する。図5の例でいえば、データ項目「鍋上昇開始」については、カウンタ値が「15」になったときにデータ値「1」をテストデータとして送信する。また、データ項目「真空排気中」については、カウンタ値が「28―234」の間、データ値「1」をテストデータとして送信する。そして、「合金銘柄アサイン情報伝文」、「合金鉄切出順位情報伝文」等、データ値変更タイミングでのプロコン受信伝文が設定されていれば、そのテストデータをプロコン200に送信する。「瞬時値」、「積算値」、「処理時間」のテストデータの生成については「定周期情報伝文」と同様である。
【0037】
なお、GOTシミュレータ画面60において、図示は省略するが、例えば「ステータス情報伝文」の所望のデータ項目についてテストデータ送信ボタンを設定できるようにしてもよい。テストデータ送信ボタンは、それを押下したタイミングで、当該データ項目のテストデータをプロコン200に送信するためのものである。この場合、設備ステータスイベント項目情報登録画面50で設定されたタイミングでないときにも、ユーザが任意のタイミングでテストデータ送信ボタンを押下して、当該データ項目のテストデータをプロコン200に送信することができる。
【0038】
(テストデータのデータログ記録)
データログ記録部104は、テスト実行部103によりプロコン200に送信したテストデータのデータログを記録する。図7に示す送信データログ選択画面70において、送信伝文データ設定欄71で参照したい送信伝文(テストデータ)を選択し、送信伝文データの期間指定欄72で参照したい送信伝文(テストデータ)の期間を指定することができる。そして、登録ボタン73を押下すると、図10に示すように送信伝文(テストデータ)を時系列に並べた一覧が表示される。
【0039】
以上説明したように、プロコン200に送信するテストデータを簡単に登録でき、しかも既設計算機とは運転状況が異なる場合や既設計算機がない場合でもテストを効率的に行うことができる。また、一旦構成したテスト支援装置100を類似の製鋼工程のプロコン20のテスト支援へ適用することが容易である。
【0040】
上記実施形態では、プロコン200が一つの製鋼工程のプロセスを制御、管理する例を説明したが、プロコン200が複数の製鋼工程のプロセスを制御、管理することもある。この場合も、プロコン受信伝文の登録の仕方については同様である。また、例えば図6に示すGOTシミュレータ画面60において、製鋼工程を選択する選択ボタンを設定しておき、総合テストを行う製鋼工程を選択した上で、開始ボタン61を押下すると、テストが開始されるようにすればよい。
【0041】
なお、本発明を適用したテスト支援装置は、具体的にはCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムにより構成することができ、CPUがプログラムを実行することによって実現される。また、本発明を適用したテスト支援装置は、一つの装置から構成されても、複数の機器から構成されてもよい。
【0042】
また、本発明の目的は、上述したようにプロコン200のテストを支援する機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
100:テスト支援装置
101:受信伝文登録部
102:タイミング設定部
103:テスト実行部
104:データログ記録部
105:I/O部
150:表示装置
160:記憶装置
200:プロセス制御用計算機(プロコン)
201:I/O部
202:AP処理部
300:プロコン受信伝文の仕様書のファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストを支援するテスト支援装置であって、
前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する受信伝文登録手段と、
前記受信伝文登録手段で登録された伝文のうち、前記生産ライン上の設備の稼動状況に応じて前記プロセス制御用計算機が受信する伝文について、前記プロセス制御用計算機にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定手段と、
テストの開始後に、前記受信伝文登録手段で登録された伝文及び前記タイミング設定手段で設定されたタイミングに従ってテストデータを前記プロセス制御用計算機に送信するテスト実行手段とを備えたことを特徴とするプロセス制御用計算機のテスト支援装置。
【請求項2】
前記受信伝文登録手段は、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文の仕様書のファイルに基づいて、前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録することを特徴とする請求項1に記載のプロセス制御用計算機のテスト支援装置。
【請求項3】
前記テスト実行手段はユーザからの指示に応じてテストを開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のプロセス制御用計算機のテスト支援装置。
【請求項4】
前記テスト実行手段により前記プロセス制御用計算機に送信したテストデータのデータログを記録するデータログ記録手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス制御用計算機のテスト支援装置。
【請求項5】
前記テスト実行手段は、前記受信伝文登録手段で登録された伝文のうち、瞬時値については乱数をテストデータとして送信することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス制御用計算機のテスト支援装置。
【請求項6】
前記テスト実行手段は、前記受信伝文登録手段で登録された伝文のうち、積算値についてはテストの開始後からの経過時間に応じて求めた積算値をテストデータとして送信することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプロセス制御用計算機のテスト支援装置。
【請求項7】
生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストをテスト支援装置により支援するテスト支援方法であって、
前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する受信伝文登録手順と、
前記受信伝文登録手順で登録された伝文のうち、前記生産ライン上の設備の稼動状況に応じて前記プロセス制御用計算機が受信する伝文について、前記プロセス制御用計算機にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定手順と、
テストの開始後に、前記受信伝文登録手順で登録された伝文及び前記タイミング設定手順で設定されたタイミングに従ってテストデータを前記プロセス制御用計算機に送信するテスト実行手順とを有することを特徴とするプロセス制御用計算機のテスト支援方法。
【請求項8】
生産ラインのプロセスを制御、管理するプロセス制御用計算機のテストを支援するためのプログラムであって、
前記プロセス制御用計算機が受信する伝文を登録する受信伝文登録処理と、
前記受信伝文登録処理で登録された伝文のうち、前記生産ライン上の設備の稼動状況に応じて前記プロセス制御用計算機が受信する伝文について、前記プロセス制御用計算機にテストデータを送信するタイミングを設定するタイミング設定処理と、
テストの開始後に、前記受信伝文登録処理で登録された伝文及び前記タイミング設定処理で設定されたタイミングに従ってテストデータを前記プロセス制御用計算機に送信するテスト実行処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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