説明

プロトン伝導性膜およびその使用

【課題】新規なポリアゾール、プロトン伝導性膜およびこれらを含む他の成形体、ならびにこれらの用途の提供。
【解決手段】新規なポリアゾール、これらのポリアゾールに基づくプロトン伝導性ポリマー膜、およびPEM燃料電池用の膜電極ユニットを製造するためのポリマー電解質膜(PEM)としてのその使用、およびこのようなポリアゾールを含む他の成形体。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、その優れた化学的および熱的性質のために、様々な目的のために使用することができ、特にPEM燃料電池内のポリマー電解質膜(PEM)として適している、ポリアゾールに基づく新規なプロトン伝導性ポリマー膜に関する。
【0002】
ポリアゾール、例えばポリベンゾイミダゾール(Celazole(登録商標))は、かなり以前から知られてきた。このようなポリベンゾイミダゾール(PBI)は、一般に3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニルを、イソフタル酸もしくはジフェニルイソフタル酸またはこれらのエステルと溶融状態で反応させることによって調製される。得られたプレポリマーは反応容器内で凝固し、その後機械的に粉砕される。その後粉状のプレポリマーを400°Cまでの温度で固相重合法により完全に重合させ、所望のポリベンゾイミダゾールを得る。
【0003】
ポリマーフィルムを生成するために、PBIを、さらなる工程において、極性、非プロトン溶媒、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解し、フィルムを従来方法によって生成する。
【0004】
プロトン伝導性、すなわち酸ドープ型の、PEM燃料電池に使用するためのポリアゾール膜が既に知られている。基本的なポリアゾールフィルムに、濃リン酸または硫酸をドープすると、ポリマー電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)におけるプロトン伝導体およびセパレータとして機能する。
【0005】
ポリアゾールポリマーの優れた性質のために、上記ポリマー電解質膜を、膜電極ユニット(MEU)を製造する際に、100°Cを越える温度、特に120°Cを越える温度で長時間作動する燃料電池の中で使用することができる。この長期間にわたる高い作動温度は、膜電極ユニット(MEU)中に存在する貴金属に基づく触媒の活性を増加させる。特に、炭化水素の改質油を使用する際、著しい量の一酸化炭素が改質ガス中に存在し、これらは費用のかかるガス処理またはガス精製によって取り除かなければならない。この作動温度を上昇させる能力は、CO不純物の著しく高い濃度を長期間にわたって許容可能にする。
【0006】
ポリアゾールポリマーに基づくポリマー電解質膜の使用は、第1に、費用のかかるガス処理またはガス精製をいくつかの場合において省略することができ、第2に、膜電極ユニット内に担持する触媒を減少させる。両者は、PEM燃料電池の大規模使用のために必要不可欠である。さもなければPEM燃料電池系の費用が高騰してしまう。
【0007】
既に知られたポリアゾールに基づく酸ドープポリマー膜は好ましい性質を示す。しかしながら、PEM燃料電池のために望まれる適用のために、特に、自動車部門、および分散化電力および熱生成(ステーショナリー部門)において、これらは全体として改善される必要がある。さらに、既に知られたポリマー膜は、既知の乾燥方法によって完全に除去することができないジメチルアセトアミド(DMAc)の高い含量をもつ。ドイツ特許出願No.10109829.4は、ポリアゾールに基づくポリマー膜を示し、その中でDMAc汚染を除去している。このようなポリマー膜は向上した機械的性質を示すが、比伝導率は0.1 S/cm(140℃)を越えない。
【0008】
本発明の目的は、第1に、ポリアゾールに基づくポリマー膜の使用利点を有し、第2に、特に100℃を越える作動温度で高い比伝導率をもち、燃料ガスのさらなる加湿を伴わずにポリアゾールに基づく酸含有ポリマー膜を提供することである。
【0009】
我々は、親モノマーをリン酸中に懸濁または溶解させ、ドクターブレードによって薄層状に広げ、リン酸中で重合させると、ポリアゾールに基づいたプロトン伝導性膜を得ることができることを見出した。
【0010】
この新規な膜の場合では、ドイツ特許出願No.10109829.4に記載されている特別の後処理、ポリマー溶液のさらなる調製と後のフィルムのドーピングを不要にすることができる。ドープされたポリマー膜は著しく改善されたプロトン伝導性を示す。
【0011】
本発明は、ポリアゾールに基づくプロトン伝導性ポリマー膜であって、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)の混合物を使用して層を支持体または電極に塗布する(application)工程と、
D)工程C)で形成された膜を処理する工程と(それが自己支持性になるまで)
を含むプロセスによって得られうるプロトン伝導性ポリマー膜を提供する。
【0012】
本発明によって使用される芳香族およびヘテロ芳香族テトラアミノ化合物は、好ましくは3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、2,3,5,6-テトラアミノピリジン、1,2,4,5-テトラアミノベンゼン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルメタンおよび3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルジメチルメタンおよびこれらの塩、特に一塩酸塩、二塩酸塩、三塩酸塩および四塩酸塩誘導体である。
【0013】
本発明により使用される芳香族カルボン酸は、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらのエステルまたはこれらの無水物またはこれらの酸塩化物である。さらに、芳香族カルボン酸という用語は、ヘテロ芳香族カルボン酸を含む。芳香族ジカルボン酸は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、5-アミノイソフタル酸、5-N,N-ジメチルアミノイソフタル酸, 5-N,N-ジエチルアミノイソフタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、2,6-ジヒドロキシイソフタル酸、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸、2,3-ジヒドロキシフタル酸、2,4-ジヒドロキシフタル酸、3,4-ジヒドロキシフタル酸、3-フルオロフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8-ジヒドロキシナフタレン-3,6-ジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、4-トリフルオロメチルフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-スチルベンジカルボン酸、4-カルボキシ桂皮酸、またはこれらのCl-C20アルキルエステルもしくはC5-C12アリールエステル、またはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物である。芳香族トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらのCl-C20アルキルエステルまたはC5-C12アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物は、好ましくは1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、(2-カルボキシフェニル)イミノ二酢酸、3,5,3’-ビフェニルトリカルボン酸、3,5,4’-ビフェニルトリカルボン酸である。
【0014】
芳香族テトラカルボン酸またはこれらのC1-C20アルキルエステル、C5-C12アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物は、好ましくは3,5,3’,5’-ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸である。
【0015】
本発明によって使用されるヘテロ芳香族カルボン酸は、ヘテロ芳香族ジカルボン酸およびトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらのエステルまたはこれらの無水物である。本発明の目的のために、ヘテロ芳香族カルボン酸は、少なくとも1つの窒素、酸素、硫黄またはリン原子が芳香環の中に存在する芳香族系である。好ましくは、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン2,4-ジカルボン酸、4-フェニル-2,5-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピラゾール-ジカルボン酸、2,6-ピリミジンジカルボン酸、2,5-ピラジンジカルボン酸、2,4,6-ピリジントリカルボン酸、ベンゾイミダゾール-5,6-ジカルボン酸、およびまたこれらのC1-C20アルキルエステルまたはC5-C12アリールエステル、またはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物が与えられる。
【0016】
トリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含量(使用されたジカルボン酸に基づいた)は、0〜30 mol%、好ましくは0.5〜20 mol%、特に1〜20 mol%の範囲にある。
【0017】
本発明によって使用される芳香族およびヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸は、好ましくはジアミノ安息香酸およびその一塩酸塩および二塩酸塩誘導体である。
【0018】
好ましくは、少なくとも2つの異なる芳香族カルボン酸の混合物を、工程A)において使用する。特に好ましくは、芳香族カルボン酸だけでなくヘテロ芳香族カルボン酸をも含む混合物を使用する。芳香族カルボン酸とヘテロ芳香族カルボン酸との混合比は、1:99〜99:1、好ましくは1:50〜50:1である。
【0019】
これらの混合物は、特に、N-ヘテロ芳香族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸の混合物である。限定のない例は、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、2,6-ジヒドロキシイソフタル酸、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸、2,3-ジヒドロキシフタル酸、2,4-ジヒドロキシフタル酸、3,4-ジヒドロキシフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル酸、1,8-ジヒドロキシナフタレン-3,6-ジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、4-トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、ピリジン2,6-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、4-フェニル-2,5-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2,6-ピリミジンジカルボン酸、2,5-ピラジンジカルボン酸である。
【0020】
工程A)において使用されるリン酸は、例えばRiedel-de Haenから入手可能な商業的なリン酸である。
【0021】
一般に85%の濃度をもつ濃縮リン酸H3P04が好ましい。より高い濃縮リン酸も使用可能であるが、これらはポリリン酸Hn+2PnO3n+1(n≧2)を含まない。
【0022】
工程A)において生成された混合物は、リン酸と全てのモノマーの合計との重量比が1:10000〜10000:1, 好ましくは1:1000〜1000:1、特に1:100〜100:1である。
【0023】
工程A)からの混合物の重合を、工程B)において行う。この目的のために、混合物を350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度、特に250℃までの温度に加熱する。前記混合物を好ましくは密閉反応器中で加熱し、200℃超で水を除去することによって、リン酸が二リン酸(H4P207)、すなわちポリリン酸Hn+2PnO3n+1(n=2)の最も単純な形態に転換しないようにする。重合は、個々の温度での水蒸気の分圧下で行う。1変形例では、重縮合によって形成された水を、完全にまたは部分的に除去することができる。これは水の除去または無水物の使用によって行うことができる。
【0024】
工程B)で形成されたポリアゾールに基づくポリマーは、一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または (XXII)の繰り返しアゾール単位を含む。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0025】
(式中、
Ar基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る四価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0026】
Ar1基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0027】
Ar2基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0028】
Ar3基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0029】
Ar4基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0030】
Ar5基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る四価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0031】
Ar6基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0032】
Ar7基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0033】
Ar8基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0034】
Ar9基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価または三価または四価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0035】
Ar10基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0036】
Ar11基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
【0037】
X基は、同一または異なり、各々酸素、硫黄もしくは水素原子を有するアミノ基、1〜20炭素原子を有する基、好ましくは枝分れしたもしくは枝分れしていないアルキルもしくはアルコキシ基、またはさらなる基としてアリール基である。
【0038】
R基は、同一または異なり、各々水素、アルキル基または芳香族基である。
【0039】
n, mは、各々10以上、好ましくは100以上の整数である。)。
【0040】
好ましい芳香族またはヘテロ芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェントチアジン、アクリジジン(acridizine)、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレン(これらは置換されていてもよい)から誘導される。
【0041】
Ar1、Ar4、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11は任意の置換パターンをとることができる;フェニレンの場合では、Ar1、Ar4、Ar6、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11は、例えばオルト-、メタ-またはパラ-フェニレンになり得る。特に好ましい基は、ベンゼンおよびビフェニレン(これらは置換されていてもよい)から誘導される。
【0042】
好ましいアルキル基は、1〜4炭素原子をもつ短鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、n-またはi-プロピルおよびt-ブチル基である。
【0043】
好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基および芳香族基が置換されていてもよい。
【0044】
好ましい置換基は、ハロゲン原子、例えばフッ素、アミノ基、ヒドロキシ基または短鎖アルキル基、例えばメチルまたはエチル基である。
【0045】
好ましくは、繰り返し単位内のXが同一である、式(I)の繰り返し単位をもつポリアゾールが与えられる。
【0046】
ポリアゾールは、基本的には例えばそれらのX基が異なる、異なる繰り返し単位をもつ。しかしながら、好ましくは同一のX基のみが繰り返し単位に存在する。
【0047】
さらに、好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)およびポリ(テトラザピレン)である。
【0048】
本発明のさらなる実施形態において、繰り返しアゾール単位を含むポリマーは、互いに異なる式(I)と(XXII)の少なくとも2つの単位を含むコポリマーまたはブレンドである。前記ポリマーは、ブロックコポリマー(2ブロック、3ブロック)、ランダムコポリマー、周期性コポリマーおよび/または交互ポリマーの形態になり得る。
【0049】
本発明の特に好ましい実施形態において、繰り返しアゾール単位を含むポリマーは、式(I)および/または(II)の単位のみを含むポリアゾールである。
【0050】
ポリマー中の繰り返しアゾール単位の数は、好ましくは10以上である。特に好ましいポリマーは少なくとも100繰り返しアゾール単位を含む。
【0051】
本発明の目的のために、繰り返しベンゾイミダゾール単位を含むポリマーが好ましい。繰り返しベンゾイミダゾール単位を含む特に有利なポリマーのいくつかの例は、次の式によって表わされる。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【0052】
(式中、n, mは、各々10以上、好ましくは100以上の整数である。)
上述したプロセスによって得られうるポリアゾール、特にポリベンゾイミダゾールは、大きな分子量をもつ。固有の粘度として測定されたとき、それは少なくとも1.4 dl/gであり、商業的なポリベンゾイミダゾールの粘度(IV<1.1 dl/g)を有意に上回る。
【0053】
また、架橋結合可能なトリカルボン酸および/またはテトラカルボン酸が工程A)において得られた混合物中に存在する場合、これらは形成されるポリマーの枝分れ/架橋結合を行わせる。これは形成された膜の機械的性質の向上に貢献する。特に、いずれか存在有するトリカルボン酸またはテトラカルボン酸による架橋の結果として、膜がより迅速に自己支持性となり、工程D)の処理を短縮することができる。架橋結合が可能なトリカルボン酸またはテトラカルボン酸の含量が非常に高い場合、後処理は完全に省略することができる。
【0054】
さらに、芳香族ジカルボン酸(もしくはヘテロ芳香族ジカルボン酸)、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸、2,6-ジヒドロキシイソフタル酸、ジフェン酸、1,8-ジヒドロキシナフタレン-3,6-ジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、4-トリフルオロメチルフタル酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、4-フェニル-2,5-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピラゾール-ジカルボン酸、2,6-ピリミジンジカルボン酸、2,5-ピラジンジカルボン酸を使用するときに、工程B)における温度が、300℃までの範囲、好ましくは100℃〜250℃が好ましいということを見出した。
【0055】
工程C)における層形成を、ポリマーフィルム生成のための先行技術からそれ自体知られた手段(ドクターブレードによるキャスト、噴霧、塗布)によって行う。
【0056】
可能な支持体は、特に、選択された条件下で不活性な支持体である。しかしながら、これらの不活性な支持体とは別に、不活性でないポリマーフィルムで構成された支持体を使用することもできる。この群の中では、ポリアゾールに基づくポリマーフィルムが特に好ましい。
【0057】
粘度を調節するために、その溶液を、適切な場合、リン酸(濃縮リン酸、85%)と混合することができる。このような場合において、粘度を所望の値に設定することができ、膜の形成をより簡単にすることができる。
【0058】
工程C)で生成された層は、20〜4000μm、好ましくは30〜3500μm、特に50〜3000μmの厚みをもつ。
【0059】
工程C)において現われる分子内および分子間構造は、形成された膜に特別な性質を与える秩序立った膜形成を導く。
【0060】
工程D)における膜の処理は、それを自己支持性にさせる。本発明の目的のために、「自己支持性」とは、形成された膜を損傷を伴わずに支持体から分離することができ、望ましくは、続けて直接的にさらなる処理に供することができることを意味する。
【0061】
工程D)における後処理は、大気酸素の存在下で熱を作用させて行う。これは架橋を誘導し、膜が自己支持性になる。
【0062】
工程D)における後処理はまた、熱の作用だけで行うこともできる。この変形例が選択されるのは、工程B)において選択された温度が、存在するトリカルボン酸またはテトラカルボン酸を架橋結合させないかまたはそれらを完全には架橋結合させないときである。温度は220℃から400℃までの範囲、好ましくは250℃から380℃までの範囲で選択される。処理時間は5秒から10時間までである。
【0063】
工程Dにおける後処理の他の形態では、処理は、硫酸、特に希硫酸を使用して行うことができる。この処理は、保護服のためのポリベンゾイミダゾール繊維の生成について知られている。この目的のために、処理すべき表面を硫酸または希硫酸で湿らせ、その後に550℃までの温度で短期間加熱する。これは膜の架橋結合を確実にし、膜は自己支持性となる。処理時間は0.5秒から10分である。この処理は、一般に前記膜をある加熱表面と接触させることによって行われる。
【0064】
後処理または架橋結合はまた、IRまたはNIR(lR=赤外線、すなわち700nmを越える波長をもつ光; NIR=近IR、すなわち、約700から2000nmまでの範囲にある波長または約0.6から1.75eVまでの範囲にあるエネルギーをもつ光の作用によって行うことができる。さらなる方法は、β線での照射である。その照射量は5〜200kGyの範囲にある。
【0065】
本発明によれば、リン酸の濃度は、ポリマーの繰り返し単位1モル当たりの酸のモル数として報告される。本発明の目的のために、10〜50、特に12〜40(式(III)すなわちポリベンゾイミダゾールの繰り返し単位1モル当りのリン酸のモル数)の濃度が好ましい。このような高い程度のドーピング(濃度)は、商業的に入手可能なオルト-リン酸を使って予め生成されたポリアゾールフィルムをドーピングすることによっては得ることが困難である。機械的強度の減少が観察されるからである。
【0066】
本発明のポリマー膜は、既知のドープされたポリマー膜と比較して向上した材料性質を示す。特に、それは既知のドープされたポリマー膜と比較して向上した電力を示す。これは向上したプロトン伝導性によるものである。120℃の温度で、これは、少なくとも0.1 S/cm、好ましくは少なくとも0.11 S/cm、特に少なくとも0.12 S/cmである。
【0067】
使用特性における更なる改良を達成するために、フィラー、特にプロトン伝導性フィラー、および追加の酸を膜に添加することができる。この添加は工程A)または工程B)において、または工程B)の重合後のいずれかで行うことができる。
【0068】
プロトン伝導性フィラーの限定のない例は、
硫酸塩、例えば CsHSO4, Fe(S04)2, (NH4)3H(S04)2, LiHSO4, NaHSO4,
KHSO4, RbSO4, LiN2H5SO4, NH4HSO4,
リン酸塩、例えば Zr3(P04)4, Zr(HPO4)2, HZr2(P04)3, U02PO4 3H20,
H8U02P04, Ce(HPO4)2, Ti(HP04)2, KH2PO4, NaH2PO4,
LiH2PO4, NH4H2PO4, CsH2PO4, CaHPO4, MgHPO4,
HSbP2O8, HSb3P2O14, H5Sb5P2O20,
ポリ酸、例えば H3PW12O40 nH2O (n=21-29), H3SiW12O40 nH2O (n=2I-29),
HxWO3, HSbWO6, H3PMo12O40, H2S.b4011, HTaWO6,
HNbO3, HTiNbO5, HT1TaO5, HSbTeO6, H5Ti4O9, HSbO3,
H2MoO4,
亜セレン酸塩および砒化物、例えば (NH4)3H(Se04)2, UO2AsO4, (NH4)3H(Se04)2,
KH2AsO4, Cs3H(Se04)2, Rb3H(Se04)2,
酸化物、例えば Al203, Sb205, Th02, Sn02, Zr02, MoO3,
珪酸塩、例えば ゼオライト、ゼオライト(NH4+)、シート状珪酸塩、
立体網状珪酸塩、H-ソーダ沸石、H-モルデン沸石、
NH4-アナルシン(analcines)、NH4-方ソーダ石、
NH4-没食子酸塩、H-モンモリロナイト
酸、例えば HClO4, SbF5,
フィラー、例えば 炭化物、特にSiC, Si3N4, 繊維, 特にガラス繊維、
ガラス粉末および/またはポリマー繊維、
好ましくはポリアゾールに基づくもの
さらに、この膜は過フッ素化スルホン酸添加物(0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、非常に特に好ましくは0.2〜10重量%)をさらに含むことができる。これらの添加物は、電力の増大、カソードの近傍における酸素の溶解性と酸素の拡散性の増加、および白金上でのリン酸とリン酸塩の吸着の減少をもたらす(リン酸燃料電池用の電解質添加物 Gang, Xiao; Hjuler, H. A.;Olsen, C.; Berg, R. W.; Bjerrum, N. J. Chem. Dep. A, Tech. Univ. Denmark, Lyngby, Den. J. Electrochem. Soc. (1993), 140(4), 896-902 および リン酸燃料電池における過フッ素スルホンイミド添加物 Razaq, M.; Razaq, A.; Yeager, E.; DesMarteau, Darryl, D.; Singh, S. Case Cent. Electrochem. Sci., Case West, Reserve Univ., Cleveland, OH, USA. J. Electrochem. Soc. (1989), 136(2), 385-90.)。
【0069】
過フッ素化添加物の限定のない例は:
トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸トリエチルアンモニウム、パーフルオロスルホンイミドおよびナフィオン(Nafion)である。
【0070】
さらに、膜は、操作中に酸素の還元中で生成される遊離の過酸化物ラジカルを掃去する添加物(一次酸化防止剤)またはこれを破壊する添加物(二次酸化防止剤)を含むことができ、これによって、JP 2001-118591 A2に記載されたような膜と膜電極ユニットとの寿命および安定性を向上させる。このような添加物の作用および分子構造の態様は、F. Gugumus in Plastics Additives, Hanser Verlag, 1990; N.S. Allen, M. Edge Fundamentals of Polymer Degradation and Stability, Elsevier, 1992; またはH. Zweifel, Stabilization of Polymeric Materials, Springer, 1998.に記載されている。
【0071】
このような添加物の限定のない例は:
ビス(トリフルオロメチル)ニトロキシド、2,2,-ジフェニル-1-ピクリニルヒドラジル、フェノール、アルキルフェノール、立体障害アルキルフェノール、例えばIrganox、芳香族アミン、立体障害アミン、例えばChimassorb; 立体障害ヒドロキシルアミン、立体障害アルキルアミン、立体障害ヒドロキシルアミン、立体障害ヒドロキシルアミンエーテル、亜リン酸塩、例えばIrgafos、ニトロソベンゼン、メチル-2-ニトロソプロパン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒド tert-ブチルニトロン、システアミン、メラニン、酸化鉛、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルトである。
【0072】
本発明のドープされたポリマー膜の使用の可能な分野は、特に、燃料電池、電気分解、コンデンサー、バッテリー系における使用を含む。これらの特性のために、ドープされたポリマー膜は好ましくは燃料電池に使用する。
【0073】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのポリマー膜を含む膜電極ユニットを提供する。膜電極ユニットについてのさらなる情報のために、専門文献、特に特許US-A-4,191,618, US-A-4,212,714およびUS-A-4,333,805を参照に挙げる。構造および膜電極ユニットの製造および電極、ガス拡散層および選択される触媒に関する上述した参照文献[US-A-4,191,618, US-A-4,212,714およびUS-A-4,333,805]の開示は、本願明細書に参照によって組み込まれる。
【0074】
本発明の1変形例において、工程C)における膜形成を、支持体ではなく電極上に直接行うことができる。工程D)による処理は、これに対応して短縮化される。なぜなら膜が自己支持性にある必要性が無くなるからである。このような膜はまた本発明によって提供される。
【0075】
本発明は、ポリアゾールに基づくプロトン伝導性ポリマー被覆であって、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)の混合物を使用して層を電極に塗布する工程と、
D)適切な場合、工程C)で形成された膜を処理する工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマー被覆を備える電極を提供する。
【0076】
また、上述した変形例および好ましい実施形態もこの構成要件に適用される。従ってこの部分については繰り返さない。
【0077】
工程C)後の被覆は、2〜3000μm、好ましくは3〜2000μm、特に5〜1500μmの厚みをもつ。
【0078】
工程D)における後処理は、依然として存在する任意のオリゴマーを完全に重合させる目的で行われる。
【0079】
このような被覆された電極は、適切な場合、本発明による少なくとも1つの極性膜をもつ膜電極ユニットに取り付けられる。
【0080】
さらなる変形例では、触媒的に活性な層を、本発明による膜に塗布する(applied)ことができ、この触媒的に活性な層を、ガス拡散層と連結することができる。この目的のために、工程A)〜D)に従って膜が形成され、触媒が塗布される。このような構造も本発明によっても提供される。
【0081】
さらに、工程A)〜D)による膜の形成を、触媒が予め塗布されている支持体または支持フィルム上で行うこともできる。支持体または支持フィルムの除去後、触媒が本発明による膜上に留まる。このような構造も本発明によって提供される。
【0082】
本発明は、ポリアゾールに基づくポリマーフィルムであって、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)の混合物を使用して層を支持体に塗布する工程と、
D)自己支持性になるまで、工程C)において形成された膜を処理する工程と、
E)工程C)において形成された膜を支持体から剥離する工程と、
F)存在するリン酸を除去および乾燥する工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマーフィルムを提供する。
【0083】
工程E)に続いて、ポリマーフィルムに存在するリン酸を、工程F)において除去する。これは、室温(20℃)から処理液体の沸点(大気圧)までの温度範囲において処理液体によって行う。
【0084】
本発明の目的および工程F)の目的のために使用される処理液体は、室温[すなわち20℃]で液体であり、アルコール、ケトン、アルカン(脂肪族および脂環式)、エーテル(脂肪族および脂環式)、グリコール、エステル、カルボン酸(群の上記構成員はハロゲン化され得る)、水およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
C1-C1Oアルコール、C2-C5ケトン、C1-C10アルカン(脂肪族および脂環式)、C2-C6エーテル(脂肪族および脂環式)、C2-C5エステル、C1-C3カルボン酸、ジクロロメタン、水およびこれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0086】
工程F)において導入された処理液体を、続けて再び除去する。これは、処理液体の蒸気分圧の関数として選択された温度および圧力で乾燥することによって達成するのが好ましい。乾燥は、一般に大気圧および20℃〜200℃の範囲の温度で行う。さらに、ゆるやかな乾燥を減圧下で行うこともできる。乾燥工程の時点では、膜を軽く叩いて過剰な処理液体を遊離させることができる。その順序は重要ではない。
【0087】
工程F)による処理に続き、大気酸素の存在下で熱の作用によってポリマーフィルムの表面上にさらに架橋を施すことができる。このフィルム表面の硬化は、性質におけるさらなる向上を達成する。この処理は、部分的または完全に上記の乾燥工程と置き換えることができ、あるいはこれと組み合わせることができる。
【0088】
架橋結合はまた、上述したように、IRもしくはNIR光の作用によってまたはβ線によって行うことができる。
【0089】
さらに、工程F)による処理に続いて、上述したような硫酸を用いて熱後処理を行うことができる。これは、表面の使用特性における更なる改善をもたらす。
【0090】
本発明のポリマーフィルムは、既知のポリマーフィルムと比較して向上した材料性質を示す。
【0091】
さらに、本発明のポリマーフィルムは、ポリアゾールに基づく分離膜の既知の利点、例えば高熱安定性および化学物質耐性を示すだけでなく、本発明による分離膜は、長期の安定性と寿命、および向上した分離性能をもたらすより大きな分子量の結果として向上した機械的性質を示す。
【0092】
このような分離膜は、高密度フィルム、多孔質中空繊維膜、多孔質連通気泡型ポリマーフィルムとして、望ましくはコンパクトなカバーリング層とともに生成することができる。
【0093】
多孔質膜を生成するために、工程A)からのポリマー溶液は、さらに気孔形成剤、例えばグリセロールを含むことができる。工程F)の処理において、既知の多孔質構造が、溶剤の置き換えによって形成される。沈殿剤の選択された組成によって、この方法において分離膜の異なる形態を得ることができる。次の構造が分離用途には好ましい:i) 対称的な多孔質構造、ii) 1膜表面に近い高密度ポリマーをもつ非対称的な多孔質構造。
【0094】
このような特に好適なポリベンゾイミダゾール膜の構造の走査型電子顕微鏡写真が、Journal of Membrane Science, Volume 20, 1984, pages 147-66.に開示されている。
【0095】
このような相逆転膜および構造は、当業者に知られている。対称的な多孔性構造をもつ膜は、空気およびガスのろ過または液体の微細濾過または限外濾過のための分離またはろ過膜として使用される。非対称的多孔質構造をもつ膜は、逆浸透性のために様々な用途、特に水の淡水化、ガスの透析または処理において使用することができる。
【0096】
特に有利な用途は、多孔質金属支持体と組み合わせたガス混合物からの水素および二酸化炭素の分離である。CO2分離のための代替の技術は、ポリマー膜のその低い熱安定性のために150℃までガスの冷却を必要とし、その結果効率が減少してしまう。本発明のポリアゾールに基づいた分離膜は、400℃までの温度で連続的に操作することができ、収量の増加と費用の減少を導く。
【0097】
ポリアゾールに基づいた分離膜上のさらなる情報のために、専門文献として特に、特許WO 98/14505; US-A-4693815; US-A-4693824; US-A-375262; US-A-3737042; US-A-4512894; US-A-448687; US-A-3841492を参照してもよい。分離膜の構造および製造に関する上述した参照の開示は、本明細書中に参照によって組み込まれる。特に、このような分離膜は、平坦なフィルムの形状で製造することができ、あるいは中空の繊維膜として製造することができる。
【0098】
使用性質のさらなる向上を達成するために、ポリマーフィルムにフィラーを添加することができる。この添加は、工程A)および/または工程B)中で、あるいは重合反応(工程B)の後に行うことができる。
【0099】
このようなフィラーの限定のない例は、
酸化物、例えば Al203, Sb2O5, Th02, Sn02, Zr02, MoO3
珪酸塩、例えば ゼオライト、ゼオライト(NH4+)、シート状珪酸塩、
立体網状珪酸塩、H-ソーダ沸石、H-モルデン沸石、
NH4-アナルシン(analcines)、NH4-方ソーダ石、
NH4-没食子酸塩、H-モンモリロナイト
フィラー、例えば 炭化物、特にSiC, Si3N4, 繊維, 特にガラス繊維、
ガラス粉末および/またはポリマー繊維、
好ましくはポリアゾールに基づいたもの
さらに、ポリマーフィルムはまた、ガスろ過の使用中に生成される任意のフリーラジカルを取り除きまたは破壊する添加剤を含んでいてもよい。
【0100】
このような添加剤の限定のない例は:
ビス(トリフルオロメチル)ニトロ酸化物, 2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、フェノール、アルキルフェノール、立体障害アルキルフェノール、例えばIrganox、芳香族アミン、立体障害アミン、例えばChimassorb; 立体障害ヒドロキシルアミン、立体障害アルキルアミン、立体障害ヒドロキシルアミン、立体障害ヒドロキシルアミンエーテル、リン酸塩、例えばIrgafos、ニトロソベンゼン、メチル-2-ニトロソプロパン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒドtert-ブチルニトロン、システアミン、メラニン、酸化鉛、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルトである。
【0101】
本発明のポリマーフィルムの使用の可能な分野は、特にガスろ過および分離またはガス精製、および逆浸透におけるろ過媒体、およびフレキシブルな電気回路のための基体、バッテリー分離、電気ケーブル用の保護ケーブル、電気部品および装置(例えば、コンデンサー)における絶縁体、金属表面および他の表面のための保護フィルムとしての使用を含む。
【0102】
従って、本発明はまた、上記形態のようにポリアゾールに基づくポリマーを提供する。固有粘度が少なくとも1.4dl/gであるとしてその分子量が表わされ、次の工程
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)において形成されたポリマーを沈殿し、得られたポリマー粉末を単離および乾燥させる工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマーに関する。
【0103】
工程A)およびB)のための好ましい実施形態は上述したとおりなのでこの点は繰り返さない。
【0104】
工程C)における沈殿は、工程B)からの材料を沈殿槽中に導入することによって達成することができる。この導入は、一般に室温(20℃)から沈殿液体の沸点(大気圧)までの温度範囲で行われる。
【0105】
本発明の目的および工程C)の目的のために使用される沈殿液体は、室温[すなわち20°C]で液体である溶媒であり、アルコール、ケトン、アルカン(脂肪族および脂環式)、エーテル(脂肪族および脂環式)、エステル、カルボン酸(群の上記構成員はハロゲン化され得る)、水およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0106】
C1-C1Oアルコール、C2-C5ケトン、C1-C1Oアルカン(脂肪族および脂環式)、C2-C6エーテル(脂肪族および脂環式)、C2-C5エステル、C1-C3カルボン酸、ジクロロメタン、水およびこれらの混合物を使用することが好ましい。
【0107】
ついで、沈殿したポリマーを、再び沈殿液体から遊離させる。これは好ましくは沈殿液体の蒸気分圧の関数として選択される温度および圧力で乾燥することによって達成される。乾燥は、通常は大気圧および20℃〜200℃の範囲の温度で行う。ゆるやかな乾燥を減圧下で行うことができる。乾燥方法はあらゆる限定を受けない。
【0108】
上述したプロセスによって得られうるポリアゾール、特にベンゾイミダゾールは大きな分子量をもつ。固有の粘度として測定すると、これは、少なくとも1.4 dl/g、好ましくは少なくとも1.5 dl/gであり、商業ポリベンゾイミダゾール(IV<1.1 dl/g)の粘度を有意に上回る。
【0109】
このようにして得られたポリマー粉末は、特に成形体、特にフィルムおよび繊維を製造するための原料として適している。
【0110】
本発明はさらにポリアゾールに基づくポリマー繊維を提供し、固有粘度が少なくとも1.4 dl/gであるとしてその分子量が表わされ、次の工程
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)繊維を形成するために、工程B)において形成されたポリアゾールポリマーを押出す工程と、
D)工程C)において形成された繊維を液槽内へ導入する工程と、
E)得られた繊維を単離および乾燥させる工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマー繊維を提供する。
【0111】
工程A)およびB)のための好ましい実施形態は上述したのでこの点については繰り返さない。
【0112】
工程C)の押出しは、全ての既知の繊維形成方法によって行うことができる。形成される繊維は、連続的なフィラメントとすることができ、あるいは繊維形成が「溶融吹付け方法」と類似の方法によって行われる場合、短繊維の特徴をもつ。形成された繊維の厚みに何の制限も与えないと、単繊維、すなわちワイヤ様繊維を生成することができる。これとは別に、中空繊維を生成することができる。所望の厚みは、繊維の使用目的によって決定する。形成された繊維の全体の操作は既知の繊維技術によって行うことができる。
【0113】
工程C)における押出し後、形成された繊維を沈殿槽に導入する。この導入は、室温(20℃)から沈殿液体の沸点(大気圧)までの範囲の温度で行う。
【0114】
本発明の目的および工程C)の目的のために使用される沈殿液体は、室温[すなわち20℃]で液体である溶媒であり、アルコール、ケトン、アルカン(脂肪族および脂環式)、エーテル(脂肪族および脂環式)、エステル、カルボン酸(群の上記構成員はハロゲン化され得る)、水およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0115】
C1-C1Oアルコール、C2-C5ケトン、C1-C1Oアルカン(脂肪族および脂環式)、C2-C6エーテル(脂肪族および脂環式)、C2-C5エステル、C1-C3カルボン酸、ジクロロメタン、水およびこれらの混合物を使用することが好ましい。
【0116】
繊維を、続けて再び沈殿液体から遊離させる。これは、好ましくは沈殿液体の蒸気分圧の関数として選択された温度および圧力で乾燥させることによって達成される。乾燥は、通常は20℃〜200℃の範囲の大気圧および温度で行われる。ゆるやかな乾燥は減圧下で行うことができる。乾燥方法は如何なる限定をも受けない。
【0117】
沈殿槽における処理は、多孔質構造の形成を誘導することができる。用途によって、これらは後続の使用のために望ましい。
【0118】
一般的な測定方法:
IECについての測定方法
膜の伝導性は、イオン交換能力(IEC)として表わされる酸基の含量に強く依存する。イオン交換能力を測定するために、直径3cmの試験片を型打ちし、100mlの水を含むガラスビーカー中に置く。遊離した酸を0.1M NaOHで滴定する。続いて試料を取り出し、過剰な水を軽く叩き落し、試料を160℃で4時間にわたって乾燥させる。乾燥重量m0を、0.1mgの精度で重量測定によって決定する。その後、イオン交換能力を、第1滴定終点(mlでのV1)までの0.1M NaOHの消費量と乾燥重量(mgでのmo)から、以下の式に基づいて計算する。
【0119】
IEC = V1*300/mo
比伝導率についての測定方法
白金電極(ワイヤー、0.25mmの直径)を使用して、定電圧モードにおける4極配列のインピーダンススペクトル分析によって比伝導率を測定する。集電電極間の距離は2cmである。得られたスペクトルを、オーム抵抗とコンデンサーとの並列配列を含む単純モデルを使用して評価する。リン酸でドープされた膜の試料断面は、試料のマウント前に速やかに測定する。温度依存性を測定するために、測定セルをオーブン内で所望の温度に至らせ、試料の最も近くに位置するPt-100抵抗温度計によって温度を制御する。所定の温度に達した後、測定の開始10分前から試料をこの温度に維持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアゾールに基づくプロトン伝導性ポリマー膜であって、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)の混合物を使用して層を支持体に塗布する工程と、
D)工程C)で形成された膜を処理する工程と
を含むプロセスによって得られうるプロトン伝導性ポリマー膜。
【請求項2】
3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、2,3,5,6-テトラアミノピリジン、1,2,4,5-テトラアミノベンゼン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルメタンおよび3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルジメチルメタンが、芳香族テトラアミノ化合物として使用されることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項3】
イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、5-アミノイソフタル酸、5-N,N-ジメチルアミノイソフタル酸、5-N,N-ジエチルアミノイソフタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、2,5-ジヒドロキシイソフタル酸、2,3-ジヒドロキシイソフタル酸、2,3-ジヒドロキシフタル酸、2,4-ジヒドロキシフタル酸、3,4-ジヒドロキシフタル酸、3-フルオロフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、1,8-ジヒドロキシナフタレン-3,6-ジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル) エーテル、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、4-トリフルオロメチルフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-スチルベンジカルボン酸、4-カルボキシ桂皮酸、またはこれらのC1-C20アルキルエステルまたはC5-C12アリールエステル、またはこれらの酸無水物または酸塩化物が、芳香族ジカルボン酸として使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トリカルボン酸、テトラカルボン酸またはこれらのC1-C20アルキルエステルまたはC5-C12アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物、好ましくは1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸); 1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリト酸); (2-カルボキシフェニル)イミノ二酢酸、3,5,3’-ビフェニルトリカルボン酸; 3,5,4’-ビフェニルトリカルボン酸および/または2,4,6-ピリジントリカルボン酸が、芳香族カルボン酸として使用されることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項5】
テトラカルボン酸、これらのC1-C20アルキルエステルまたはC5-C12アリールエステルまたはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物、好ましくはベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸; ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、3,5,3’,5’-ビフェニルテトラカルボン酸; ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸が、芳香族カルボン酸として使用されることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項6】
トリカルボン酸およびテトラカルボン酸の含量(使用されたジカルボン酸に基づく)が0.5〜20 mol%であることを特徴とする請求項4に記載の膜。
【請求項7】
芳香族中に少なくとも1つの窒素、酸素、硫黄またはリン原子を含むヘテロ芳香族ジカルボン酸およびトリカルボン酸およびテトラカルボン酸、好ましくはピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、4-フェニル-2,5-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2,6-ピリミジンジカルボン酸、2,5-ピラジンジカルボン酸、2,4,6-ピリジントリカルボン酸、ベンゾイミダゾール5,6-ジカルボン酸、およびこれらのC1-C20アルキルエステルまたはC5-C12アリールエステル、またはこれらの酸無水物またはこれらの酸塩化物が、ヘテロ芳香族カルボン酸として使用されることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項8】
一般式(I)および/または(II)および/または(Ill)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII)の繰り返しアゾール単位を含むポリアゾールに基づくポリマーを、工程B)において形成することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式中、
Ar基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る四価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar1基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar2基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar3基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar4基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar5基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る四価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar6基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar7基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar8基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar9基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価または三価または四価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar10基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
Ar11基は、同一または異なり、各々単環式または多環式であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基である。
X基は、同一または異なり、各々酸素、硫黄もしくは水素原子を有するアミノ基、1〜20炭素原子を有する基、好ましくは枝分れしたもしくは枝分れしていないアルキルもしくはアルコキシ基、またはさらなる基としてアリール基である。
R基は、同一または異なり、各々水素、アルキル基または芳香族基である。
n, mは、各々10以上、好ましくは100以上の整数である。)。
【請求項9】
ポリベンゾイミダゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾールおよびポリ(テトラザピレン)からなる群から選択されるポリマーが、工程B)において形成されることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項10】
次の式の繰り返しベンゾイミダゾール単位を含むポリマーを、工程B)において形成することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

(式中、nおよびmは、各々10以上、好ましくは100以上の整数である。)。
【請求項11】
工程B)の後で工程C)の前にリン酸を加えることによって粘度を調整することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項12】
20〜4000μm、好ましくは30〜3500μm、特に50〜3000μmの厚みをもつ層を、工程C)において生成することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項13】
膜が自己支持性となり、これを損傷を与えずに支持体から剥離できるようになるまで、工程C)において生成された膜を工程D)において処理することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項14】
大気酸素の存在下において熱の作用によって、工程C)において生成された膜を工程D)において処理することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項15】
工程C)において生成された膜が、工程D)において架橋結合されたトリカルボン酸またはテトラカルボン酸をなお含むことを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項16】
工程C)において生成された膜を、工程D)において硫酸による処理によって架橋結合させることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項17】
工程C)において生成された膜を、工程D)においてIRもしくはNIR光の作用によってまたはβ線の照射によって架橋結合させることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項18】
膜が、触媒的に活性な成分を含む層をもつことを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項19】
工程A)〜D)による膜の形成を、触媒が存在する支持体または支持体フィルム上で行い、前記支持体または支持体フィルムを取り除いた後に、前記触媒を本発明による膜上に配置させることを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項20】
工程A)〜D)に記載の膜の形成を、電極を支持体として行うことを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項21】
ポリアゾールに基づくプロトン伝導性ポリマー被覆であって、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)の混合物を使用して層を電極に塗布する工程と、
D)適切な場合、工程C)で形成された膜を処理する工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマー被覆を備える電極。
【請求項22】
被覆が、2〜3000μm、好ましくは3〜2000μm、特に5〜1500μmの範囲の厚みをもつ請求項21に記載の電極。
【請求項23】
少なくとも1つの電極と請求項1ないし20のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜とを含む膜電極ユニット。
【請求項24】
請求項21または22に記載の少なくとも1つの電極と請求項1ないし20のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜とを含む膜電極ユニット。
【請求項25】
請求項22または23に記載の1以上の膜電極ユニットを含む燃料電池。
【請求項26】
ポリアゾールに基づくポリマーフィルムであって、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)の混合物を使用して層を支持体に塗布する工程と、
D)自己支持性になるまで、工程C)において形成された膜を処理する工程と、
E)工程C)において形成された膜を支持体から剥離する工程と、
F)存在するリン酸を除去および乾燥する工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマーフィルム。
【請求項27】
工程F)におけるリン酸の除去を、処理液体によって行うことを特徴とする請求項25に記載のポリマーフィルム。
【請求項28】
ガスおよび/または液体のろ過および/または分離のための、あるいは逆浸透における請求項25または26に記載のポリマーフィルムの使用。
【請求項29】
請求項8ないし10に記載されたポリアゾールに基づくポリマーであって、固有粘度として表わされた分子量が少なくとも1.4 dl/gであり、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)工程B)において形成されたポリマーを沈殿させ、得られたポリマー粉末を単離および乾燥させる工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマー。
【請求項30】
請求項18に記載されたポリマーを含む成形物。
【請求項31】
ポリアゾールに基づくポリマーフィルムであって、固有粘度として表された分子量が少なくとも1.4dl/gであり、
A)溶液および/または分散液を形成するために、リン酸中で、1種以上の芳香族テトラアミノ化合物とカルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1種以上の芳香族カルボン酸またはそのエステルとを混合する工程、または、1種以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族ジアミノカルボン酸を混合する工程と、
B)ポリアゾールポリマーを形成するために、工程A)で得られた溶液および/または分散液を、350℃までの温度、好ましくは280℃までの温度で加熱する工程と、
C)繊維を形成するために、工程B)において形成されたポリアゾールポリマーを押出す工程と、
D)工程C)において形成された繊維を液槽内へ導入する工程と、
E)得られた繊維を単離および乾燥させる工程と
を含むプロセスによって得られうるポリマー繊維。
【請求項32】
工程C)において形成された繊維を沈殿槽内に導入することを特徴とする請求項30に記載のポリマー繊維。

【公開番号】特開2011−68889(P2011−68889A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−204822(P2010−204822)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2004−538814(P2004−538814)の分割
【原出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【出願人】(510244525)ビーエーエスエフ・フュエル・セル・リサーチ・ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】BASF Fuel Cell Research GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl−Bosch−Strasse 38, 67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】