説明

プロトン勾配を有する燃料電池用のプロトン伝導膜およびこれらの膜の調製方法

【課題】良好なプロトン伝導を示す膜を提供すること。
【解決手段】本発明は、主鎖と、少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基を含むグラフトとを含むグラフト(コ)ポリマーを含む、燃料電池用プロトン交換膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン勾配を示す燃料電池用のプロトン伝導膜、これらの膜を製造する方法、およびこの種の膜を含む燃料電池デバイスに関する。
そのため、本発明の適用分野は、燃料電池、より詳細には電解質としてプロトン伝導膜を含む燃料電池、例えばPEMFC燃料電池(プロトン交換膜燃料電池)の分野である。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般に、個々のセルの積層体を含み、そのセル内では連続的に導入される2つの反応体間で電気化学反応が生じる。水素/酸素混合物を用いて作動する燃料電池に関しては水素、またはメタノール/酸素混合物を用いて作動する燃料電池に関してはメタノールのような燃料はアノードと接触するが、酸化体、一般には酸素はカソードと接触する。アノード及びカソードは、イオン伝導膜形態の電解質によって分離される。電気化学反応は、その反応に由来するエネルギーが電気エネルギーに変換されるが、2つの半反応に分解される:
−アノード/電解質界面にて生じ、水素燃料電池の場合には、電解質を通過してカソードの方向に進むプロトンH+、および電気エネルギーの生成に寄与するために外部回路と再結合する電子が生成する燃料の酸化;
−電解質/カソード界面で生じ、水素燃料電池の場合には水の生成を伴う酸化体の還元。
【0003】
電気化学反応は、正確に言えば、膜電極アセンブリ内で生じる。
膜電極アセンブリは、非常に薄いアセンブリであり、その厚さはミリメートルスケールであり、各電極には、例えば波形プレートによってガスが供給される。
イオン伝導膜は、一般に、水の存在下で、水素の酸化によってアノードで生成したプロトンを伝導できるイオン性基を含有する有機膜である。
この膜の厚さは、一般に50〜150μmであり、機械的強度とオーム損失とのトレードオフの結果である。この膜はまた、ガスを分離することができる。これらの膜の化学および電気化学抵抗によって、一般に、1000時間を越える期間にわたる燃料電池での作動が可能になる。
そのため、膜を構成するポリマーは、以下で定義する条件を含む、その機械的、物理化学的および電気的特性に関連する特定数の条件を満たさなければならない。
【0004】
ポリマーは、まず、緻密で欠陥のない、50〜150マイクロメートルの薄膜を得ることができなければならない。機械的特性、弾性率、破断応力および延性によって、例えば金属枠間のクランプ操作を含むアセンブリ操作に対してポリマーを適合性となるようにしなければならない。
これらの特性は、乾燥状態から湿潤状態への移行中も保持されなければならない。
ポリマーは、加水分解に対して高い熱安定性を有していなければならず、還元および酸化に対して高い抵抗性を示さなければならない。この熱機械的安定性は、イオン抵抗性における変動により、および機械的特性の変動により評価される。
最後にポリマーは高いイオン伝導率を有していなければならず、この伝導率は、ポリマー鎖に結合したカルボン酸、リン酸またはスルホン酸基のような酸基によって提供される。
【0005】
数十年間にわたって、燃料電池膜を構成するために使用できる異なる種類のプロトン伝導性ポリマーが提案されてきた。
まず初めに、フェノール−ホルムアルデヒドポリマーのような重縮合生成物をスルホン化することによって調製されるスルホン化フェノール性樹脂が使用された。
これらの生成物で調製された膜は安価であるが、長期間の適用に関して50〜60℃での水素に対する安定性が十分でない。
次いで、スルホン化ポリスチレン誘導体が注目され、その安定性はスルホン化フェノール性樹脂の場合よりも大きいが、50〜60℃超過では使用できない。
【0006】
現在、許容可能な性能特性は、ペルフッ素化線状主鎖およびスルホン酸基を保持する側鎖で構成されたポリマーを基にして得られる。
これらの最もよく知られたポリマーの中で、市販されているものとして、Du Pont de Nemours社からのNafion(登録商標)ブランド名で登録されているポリマーを挙げることができる。
しかし、現在使用されている膜、特にNafion(登録商標)膜は、90℃のオーダーの運転温度限界を有し、3000〜4000時間の運転後に経年現象を示し、最後にはプロトン伝導が不適切になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に本発明者らが対処する問題は、前述の欠点を取り除く膜、より詳細にはNafion(登録商標)膜のような既存の膜よりも良好なプロトン伝導を示す膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明者らは、特定のグラフトを含むグラフト(コ)ポリマーに基づくプロトン伝導膜を提供するが、これらのグラフト(コ)ポリマーの機能的特徴は、プロトン勾配の創製に寄与し、その勾配が膜内でのプロトン循環の駆動力を生じることであり、こうした膜は燃料電池に特に好適である。
従って、本発明は、主鎖およびその主鎖に共有結合したグラフトを含むグラフト(コ)ポリマーを含む燃料電池のプロトン伝導膜を提供し、このグラフトは少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基を含む。
少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基のグラフトが存在するため、これら2つの基間でプロトン交換が生じ、結果として膜内でのプロトン循環を促進する駆動力になり、それにより良好なプロトン伝導を導く。
【0009】
本発明の説明をより詳細に行なう前に、本発明者らは次の定義を提案する。
(コ)ポリマーは、同じ繰り返し単位を含むポリマーまたは異なる繰り返し単位を含むコポリマーである。
グラフトは、(コ)ポリマーの主鎖に共有結合した側鎖であり、このグラフトがプロトン受容基およびプロトン供与基の両方を含む。
プロトン受容基は、プロトンと結合できる基であり、この結合は、プロトンと前記基の原子との孤立電子対の共有により生じるか、または負に荷電した基の静電引力によって生じる。換言すれば、プロトン受容基は孤立電子対を保持する原子を含有するおよび/または負に荷電される。化学的観点から、プロトン受容孤立電子対を保持する基は、アミン基、例えば一級アミン基(−NH)または二級アミン基(−NH−)であることができ、それが線状炭化水素鎖に含まれる、またはイミダゾールもしくはグアニジン基に含有される。負に荷電したプロトン受容基は、カルボン酸COH、スルホン酸−SOHおよびホスホン酸−PO機能の塩、または−Oもしくは−S機能であることができる。
【0010】
プロトン供与基は、プロトンの放出を伴って解離できる基である。化学的観点から、これらの基は、線状炭化水素鎖に含有されるまたはイミダゾールまたはグアニジン基のような基に含有される酸基−COH、−SOHまたはPO、−OHまたはSH基、アミン基の塩、例えば一級アミン(−NH)または二級アミン(−NH−)塩であることができる。
理論には全く束縛されないが、プロトン受容基およびプロトン供与基は、それぞれ、水中のpK(解離定数)値によって特徴付けられる共役酸/塩基対の構成要員である。所与のグラフトにおいて、本発明によれば、プロトン受容基は塩基性の形態で存在するが、プロトン供与基は酸性の形態で存在し、それはpK値の点では、プロトン受容基のpKがプロトン供与基のpKより小さいことを意味する。
【0011】
概して、プロトン受容基の水中のpK値は−15〜6(好ましくは3〜5)の範囲であるが、プロトン供与基の水中のpK値は8〜15(好ましくは8〜11)の範囲である。有利なことに、供与基のpK値と受容基のpK値との差は少なくとも0.5、典型的には5である。この差は、プロトン供与基からプロトン受容基へのプロトン移動に現れ、それによりプロトン勾配が生じる。
前述のグラフトは、O、NおよびSのような1以上のヘテロ原子を含有してもよく、ハロゲン原子、例えばフッ素によるなどして任意に置換される飽和または不飽和の環式または非環式炭化水素基に対応させることができるが、ただしこの炭化水素基は、少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基の両方を含有する。
例えば、グラフトは、1以上のフッ素原子によって任意に置換される、有利なことには1〜22個の炭素原子、好ましくは6〜16個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基、例えばアルキル基に対応させることができる。1以上の酸素原子−O−をこの鎖内に挿入することもでき、この鎖の場合はポリエーテル鎖と称することができる。
【0012】
グラフトはまた、任意に1以上のヘテロ原子、例えばO、NおよびSを含有する1以上の芳香族環を含む芳香族炭化水素基に対応させることができる(この場合、鎖は複素環式鎖と称することができる)。
グラフトは、式−NHCO−のアミド連結の少なくとも1つの基を含んでいてもよい。
あらゆる場合において、グラフトはまた、少なくとも1つのプロトン受容基と少なくとも1つのプロトン供与基との両方を含有することが十分理解される。
本発明に従う特定のグラフトは、アミノ酸残基またはペプチド配列であってもよい。
【0013】
アミノ酸は、従来通り、有機酸の機能とアミン機能との両方を含有する炭化水素化合物であり、最も良く知られた代表例は、天然α−アミノ酸(カルボキシル機能−COHおよびアミン機能−NHを保持する)である。それらはまた、カルボキシル機能に類似する機能(例えば、−SOH、−PO)を保持し、アミノ機能−NHを保持するアミノ酸であってもよい。
アミノ酸残基は、アミド連結を形成するためのアミノ酸の−NH機能と別の化合物のカルボキシル機能または類似機能との反応(他の化合物とは、現在のところ、本件においてグラフト前の(コ)ポリマーの主鎖である)、あるいはアミド連結を形成するための−COHまたは類似機能と別の化合物のアミンまたは類似機能の反応(他の化合物とは、現在のところ、本件においてグラフト前の(コ)ポリマーの主鎖である)から得られるアミノ酸残基である。
【0014】
アミド化反応後、本発明に従うグラフトをアミノ酸残基の形態で形成できるアミノ酸として次の天然α−アミノ酸;アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリシンを含むのが有利であり、これらのアミノ酸は、グラフト後に、全てが、プロトン受容基(ここではアミン基)およびプロトン供与基(ここでカルボキシル基)との両方を保持するアミノ酸残基を構成する。この条件に適合させるために、アミド連結は、アミノ酸のNH基(アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジンおよびリシンの場合)またはアミノ酸の−COH基(アスパラギン酸およびグルタミン酸の場合)の反応によって構成できる。
グラフトはまた、カルボキシル機能以外の酸機能を含有する非天然アミノ酸から得られるアミノ酸残基を含み、それは次のアミノ酸から選択できる:
【化1】

ただし、グラフト後、アミノ酸残基は、プロトン受容基およびプロトン供与基の両方を含有する。
【0015】
本発明に従うグラフトを形成できるアミノ酸は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンが有利であり、この場合グラフトは以下の式(I)〜(III)のアミノ酸残基に対応する:
【化2】

上記で与えられた定義に従うグラフトに加えて、グラフト(コ)ポリマーは、上記で与えられた定義に合わない(すなわち、プロトン受容基およびプロトン供与基の両方を含有しない)他のグラフトを含んでいてもよい。上記で与えられる定義に合わないグラフトは、システイン、プロリン、セリン、トレオニンおよびチロシンのようなアミノ酸、次の式のような非天然アミノ酸から得られるアミノ酸残基であってもよく:
【化3】

または次の式の化合物であってもよく:
【化4】

【0016】
これらの化合物は、それぞれ、3メチル−2,4−ジスルホペンタンニ酸、2−スルホ−プロパン酸および2,3−ジスルホプロパン酸である。
より詳細には、グラフト(コ)ポリマーは、タウリンから得られるアミノ酸残基に対応するグラフトを含んでいてもよく、このグラフトは以下の式(IV)に適合する:
【化5】

グラフトはまた、ペプチド配列に対応させることができ、すなわち、アミド化反応によって特に天然α−アミノ酸のアミド連結で連結したアミノ酸残基の連接から生じた配列に対応させることができるが、ただしペプチド配列は、少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基を含む。
このペプチド配列の一部を形成できるアミノ酸は、上記で列挙したアミノ酸、特にリシン、アスパラギン酸、ヒスチジンおよびアルギニンから選択されてもよい。
【0017】
本発明に従うペプチド配列に対応するグラフトは、次の式の1つに適合してもよく:
【化6】

式(V)のペプチド配列はアスパラギン酸−ヒスチジン−リシンアミノ酸の連接から生じるが、式(VI)のペプチド配列は、アルギニン−ヒスチジン−アスパラギン酸−リシン−アスパラギン酸−ヒスチジン−リシンアミノ酸の連接から生じる。
本発明の膜を構成するグラフト(コ)ポリマーの主鎖は、1以上のヘテロ原子、例えばO、N、S、ハロゲン原子、好ましくはフッ素を任意に含有する脂肪族または芳香族炭化水素鎖であってもよい。
骨格は、上記で定義されるグラフトが全体または部分的に共有結合する複素環式繰り返し単位を含む骨格であるのが有利な場合がある。
そのため、骨格はポリピロール骨格であってもよい。
【0018】
より詳細には、本発明の膜を構成するコポリマーは、次の繰り返し単位を含んでいてもよい:
【化7】

式中、Rは、上記で与えられた定義に適合するグラフトを示す。
次の表示:
【化8】

は、基Rが次のようにピロール環に結合してもよいことを意味すると規定する:
【化9】

【0019】
故に、本発明に従う特定の膜は、次の膜のうちの1つであってもよい:
−ポリピロール骨格と、式(I)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、式(II)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、式(III)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、式(I)、(II)および(III)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、式(I)、(II)、(III)および(IV)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、式(V)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、式(VI)のグラフトとを含むコポリマーで構成される膜。
【0020】
これらの膜は、ポリピロール骨格の電子伝導率およびグラフトのプロトン伝導率の両方を併せ持つ点で特に有利である。さらに、これらの膜は、例えばNafion(登録商標)で構成された膜に比べて、90℃を超える熱安定性、および水のような溶媒の存在下で安定な機械的特性を示す。
骨格は、アクリル酸およびビニルアミンのようなビニルモノマーの重合から得られる繰り返し単位で構成されてもよく、それはグラフト前に、それらのペンダント−COOHおよび−NH機能により、アミノ酸残基またはペプチド配列タイプのグラフトと共有アミド連結を形成できる。上述のビニルモノマーは、1以上のフッ素原子を含むのが有利な場合があり、この利点は、この種のモノマーの重合から得られた骨格が腐食に対して抵抗性を示し、良好な機械的特性および低いガス透過性を示すことである。
【0021】
第1の実施形態によれば、本発明の膜は、上記で定義されたようなグラフト(コ)ポリマーだけで構成されてもよい。
第2の実施形態によれば、本発明の膜は、貫通孔を含むポリマー支持マトリックスを含み、この孔は上記で定義されたようなグラフト(コ)ポリマーで充填される。
ポリマー支持マトリックスは、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネートおよび/またはポリエチレンテレフタレートから選択されるポリマーで構成されるのが有利であり、これらのポリマーはフッ素化、さらにはペルフッ素化されるのが有利である。好適な場合もあるフッ素化(コ)ポリマーとしては、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−テトラフルオロプロピレンコポリマー(略記FEPで知られる)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(略記ETFEで知られる)、ヘキサフルオロプロペン−ビニリデンフルオライドコポリマー(略記HFP−co−VDFで知られる)が挙げられる。フッ素化(コ)ポリマーで構成される支持マトリックスは、それらが耐腐食性、良好な機械的特性および低いガス透過性を示す点で特に有利である。そのため、それらは、燃料電池膜の組成物に含まれるのに特に好適である。より詳細には、ポリビニリデンフルオライドは、化学的に不活性であり(特に腐食に対して抵抗性である)、良好な機械的特性を有し、結晶相に依存した−42℃〜−38℃のガラス転位温度を有し、170℃の融点および1.75g/cmの密度を有する。このポリマーは、容易に押出成形され、結晶配向に応じて特に2つの結晶形態:α相およびβ相で存在でき、β相は特に圧電特性によって特徴付けられる。
【0022】
支持マトリックスの貫通孔は、上記で示される通り、上記で定義されたグラフトコポリマーで充填され、支持マトリックスの2つの対抗面と結び付く。通常、それらは、実質的に円筒形態である。それらは、50〜100μmの直径を有することができ、この場合それらは微細孔と記載できる。それらはまた、10〜100nmの直径を有することができ、この場合それらはナノ細孔と記載できる。
従来通り、支持マトリックスは、cmあたり5×10〜5×1010、好ましくは5×10〜5×10の孔を含有することができる。
第1または第2の実施形態のいずれかにおいて、本発明の膜は、従来通り、100μmオーダーの厚さ、より詳細には1〜50μmの厚さを有する。
上述のグラフト(コ)ポリマーは、多数の変形実施形態に従って調製できる。
【0023】
故に、第1の変形例によれば、グラフト(コ)ポリマーは、ペンダント機能Xを含むベース(コ)ポリマーと、ペンダント機能Xと反応して共有結合を形成できる機能Aを含む少なくとも1つのグラフト前駆体との反応工程を含む方法によって調製でき、このグラフトは、この反応の結果、ベースコポリマーと結合する。
例えば、ペンダント機能Xは、例えばスクシンイミドエステルの形態の、任意に活性化されたカルボキシル機能−COHであってもよく、一方で機能Aはアミン機能−NHであってもよい。
グラフトが、アミノ酸残基またはペプチド配列であり、ペンダント機能Xがカルボキシル機能−COHである場合、グラフト前駆体は、任意に活性化されたカルボキシル機能と反応してアミド連結を形成できる遊離のNH機能を含むアミノ酸またはペプチド配列である。アミノ酸またはペプチド配列は、適切な場合には、二次反応を防止するために、保護基によって保護される他の−NH機能を含む。−NH機能は、例えばBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)またはFmoc(9−フルオレニルメチルオキシ−カルボニル)タイプの保護基によって、保護されてもよい。
【0024】
膜が、ポリピロール骨格およびアミノ酸残基またはペプチド配列からなるグラフトを含むコポリマーで構成される場合、方法は、骨格が次式の少なくとも1つの繰り返し単位:
【化10】

式中、Xは上記で定義した通りである、
および任意に次式の繰り返し単位を含むベースコポリマーと:
【化11】

上記で定義された機能Aを含む少なくとも1つのアミノ酸またはペプチド配列とを反応させる工程を含むことができ、このアミノ酸またはペプチド配列は、任意に、基Xと反応できる機能が保護される。
そのため方法は、グラフトが行なわれたときに、保護基の脱保護工程を含んでいてもよい。
【0025】
従って、次の繰り返し単位を含むコポリマーに基づく膜を調製するために:
【化12】

式中、Rは上記で定義されたような式(I)〜(VI)の少なくとも1つに適合するグラフトを示す、
第1段階において、次の繰り返し単位を含むベースコポリマーと:
【化13】

式中、Xは−COH基を表す、
それぞれ、次のアミノ酸またはペプチド配列:
【化14】

および/または
【化15】

式中、頭文字OtBu、Pbf、TrtおよびBocは、それぞれ次の基:O−tert−ブチル、N−ω−ジメチル−N−ω’−2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル、トリチルおよびtert−ブチルオキシカルボニルに対応する、
の少なくとも1つとを反応させ、続いて保護された機能を遊離させるために脱保護工程を想定でき、この脱保護工程は、グラフトコポリマーとトリフルオロ酢酸の溶液とを接触させることからなることができる。
【0026】
第2の変形実施形態によれば、グラフト(コ)ポリマーは、上述のグラフトに対応する少なくとも1つの側鎖を保持する少なくとも1つのモノマーを重合させる工程を含む方法によって調製できる。
グラフトコポリマーは、次の繰り返し単位を含むポリピロールコポリマーである:
【化16】

このコポリマーの調製は次のモノマーを共重合することからなることができる:
【化17】

式中、Rは少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基を含むグラフトを表し、より詳細にはRがアミノ酸残基またはペプチド配列であることができ、さらにより詳細には、Rが上記で定義されたような式(I)〜(VI)の1つに適合するグラフトであることができる。好ましくはRは環の3位にある、換言すれば次の通りである:
【化18】

【0027】
上述の(コ)ポリマーを形成するために反応できるモノマーは次の式に適合する:
【化19】

式中、Rは、アミノ酸残基またはペプチド配列を表し、より詳細には、Rが上記で定義されたような式(I)〜(VI)の基を表すことができ、好ましくはRは上記で定義されたように3位にある。
これらのモノマーは、次式の化合物と:
【化20】

遊離の−NH機能を含有するアミノ酸またはペプチド配列とのアミド化反応によって従来通り調製される。
【0028】
第3の変形実施形態によれば、グラフト(コ)ポリマーは、ラジオグラフティングによって調製でき、グラフトは、フリーラジカル中心を生成するために予め照射されたポリマーとのフリーラジカル反応によって生成され、このポリマーは従来通り、膜の形態をとる。
ポリマー(ベースポリマーと称される)は、ベースポリマーを電子ビーム(電子照射)または重イオンビームに供することによって照射されてもよい。
電子照射により、フリーラジカル中心をベース膜の体積全体を通して創製できる。故に、この種の照射を用いて、グラフトのフリーラジカルグラフト化を行なうことができ、膜の体積全体にわたるプロトン勾配を介してプロトン伝導を確実にする。しかし、ベース膜の厚さが相当量である場合、グラフト組成の一部を形成する化合物(例えばモノマー)の拡散が困難であることが判明しているので、ベース膜をそのコアに至るまでグラフトするのは困難な場合がある。この場合、膜がそのコアを含む体積全体にわたって浸透されるように、好適な溶媒を適切に選択することが重要である。
重イオンでの照射は、グラフトがグラフトできる照射跡(irradiation tracks)においてのみベース膜を変性する。
【0029】
照射の方法とは独立して、グラフト組成の一部を形成できる化合物(例えばモノマー)は、照射により膜中にフリーラジカル中心が生じた位置(すなわち、重イオンでの照射に関しては照射跡にて、および電子照射に関しては膜の体積にて)でのみグラフト化を行なうことができることに留意する。
プロトン勾配は、ベース膜にグラフトされるべき分子(例えばアミノ酸または同様の分子)の適切な選択により生じる。そのため、こうした分子のグラフト化は、分子パッキングによるベース膜のパターニングに対応すると考えることができ、分子は、膜中のこの分子の局所濃度により、プロトン勾配を導くように膜に配置される。
プロトン勾配は、膜の塊全体を通して生じさせることができ、この場合は、ベース膜の電子照射に続く適切な分子のグラフト化から生じる。
例として、電子照射によりプロトン勾配現象を得るために、ベース膜を次の分子でラジオグラフティングすることによる操作を考慮できる:
【0030】
−ベース膜の体積全体を通して広がり、グラフトされる酸性度定数pKaを有する第1の分子;
−ベース膜の面の一方にグラフトされる酸性度定数pKaを有する第2の分子であって、この面が第2の分子に曝される唯一の面である、分子;
−第2の分子がグラフトされた面と反対の面にグラフトする、酸性度定数pKaを有する第3の分子であって、この反対の面が第3の分子に曝される唯一の面である、分子。
pKas(pKa、pKaおよびpKa)は、例えば一方の面から他方の面へのプロトン交換を可能にし、それによってプロトン勾配が生じるように選択される。
プロトン勾配はまた、重イオンのビーム経路によって残る潜跡(latent tracks)に適切な分子をグラフトすることによって生じさせてもよい。
【0031】
従って、潜跡への分子のグラフト化は、次のスキームに従って図示できる:
【化21】

ここで、1、2、3およびnで記号化される分子はそれぞれ、pKa>pKa>pKa>pKaである酸性度定数pKa、pKa、pKaおよびpKaを有する。
潜跡における分子のグラフト化は次のスキームに従って図示することもできる:
【化22】

ここで、1、2、3およびnで記号化される分子はそれぞれ、pKa>pKa>pKa>pKaである酸性度定数pKa、pKa、pKaおよびpKaを有する。
【0032】
最後に、潜跡への分子のグラフト化は、次のスキームに従って図示することもできる:
【化23】

ここで、1、2、3およびnで記号化される分子はそれぞれ、pKa>pKa>pKa>pKaである酸性度定数pKa、pKa、pKaおよびpKaを有する。
本発明の膜が上述のグラフト(コ)ポリマーのみで構成される場合、この膜を調製する方法は、従来通り、第1の変形、第2の変形または第3の変形実施形態に従って設定されるように、前記コポリマーを調製する方法に対応する。
ラジオグラフティングにより膜を製造する利点は、選択的なグラフト化が可能であることであり、特にこのグラフト化を対象とするためにマスクを用いることもできることである。あるいはこうした膜の調製方法は、次の工程を含んでいてもよい:
【0033】
−前記グラフト(コ)ポリマーを製造する工程であって、より詳細には第1の変形または第2の変形に従って、ポリマー支持マトリックスの貫通孔にて製造する工程;
−ポリマー支持マトリックスを除去する工程。
支持マトリックスは、本発明の膜を構成するグラフト(コ)ポリマーに有害とならない選択的試薬を用いる破壊により、従来通り除去できる。
本発明の膜が、上述のグラフト(コ)ポリマーで充填された貫通孔を含むポリマー支持マトリックスを含む場合、この膜の調製方法は、上述のグラフト(コ)ポリマーを支持マトリックスの貫通孔にて製造する方法を実施する工程を含む。
【0034】
支持マトリックスは、組織化された多孔性を生成するためにベース膜の照射により予め調製されることができ、この多孔性は、膜の調製が支持マトリックスの多孔性内で行なわれる限り、本発明の後続膜のモルホロジー特徴を決定する。照射工程には、支持マトリックスのパターニングを完結させるために、化学エッチング工程が続いてもよい。
照射工程は、イオン衝撃、例えばキセノンを用いる衝撃によって行なわれてもよい。
支持マトリックスは、ポリカーボネート(PC)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される材料で構成されてもよい。
【0035】
グラフトコポリマーが第1の変形(換言すればベースポリマーの機能化)によって製造される場合、支持マトリックスの貫通孔は、第1の段階で、上記で定義されたようなペンダント機能Xを含むベース(コ)ポリマーでコーティングされ、次いで第2段階では、マトリックスが上記で定義されたような機能Aを含むグラフト前駆体と接触される。
グラフトコポリマーが第2の変形に従って製造される場合、支持マトリックスは、適切なモノマーを含有する溶液と接触され、支持マトリックスの貫通孔がブロックされるまで、一般にはガス透過性が低くなる、好ましくは孔を含有しない膜または10%以下の多孔性もしくは通常5%に等しい多孔性を有する膜の透過率に近づくまで、重合を行なう。マトリックスの孔での重合に関するさらなる詳細は、特許出願FR 2 770 150に見出すことができる。
【0036】
上述したように、本発明の膜は、他の品質の中でも、従来から使用される膜、例えばNafion(登録商標)膜に比べて改善されたプロトン伝導性を示す。故に、無論、これらの膜は燃料電池デバイスに組み込むことができる。
従って本発明はさらに、上記で定義された少なくとも1つの膜を含む燃料電池デバイスを提供する。
このデバイスは、1以上の膜電極アセンブリを含む。
こうしたアセンブリの調製に関して、膜は、例えば触媒に含浸した炭素紙で構成された2つの電極間に配置されてもよい。
このアセンブリは、続いて、電極と膜との間に有効な接着をもたらすために適切な温度で加圧される。
【0037】
得られた膜電極アセンブリは、続いて、電気伝導を与え、電極に試薬を供給する2つのプレート間に配置される。これらのプレートは、一般にバイポーラプレートと称される。
ここで、本発明を以下の実施例を参照して説明するが、その実施例は例示のために与えられ、限定するためのものではない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の実施例は、繰り返しポリピロール単位と、アミノ酸残基グラフト(実施例1、2、3、4および5)またはペプチド配列グラフト(実施例6および7)とで構成されるベース骨格を含む膜の調製を例示する。
これらの実施例において、次の頭文字を使用する:
Ac:アセチル;AcOH:酢酸;Arg:アルギニン;Asp:アスパラギン酸;Boc:tert−ブチルオキシカルボニル;DCM:ジクロロメタン;Dde:1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)エチル;DIEA:ジイソプロピルエチルアミン;DMF:ジメチルホルムアミド;EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩;Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル;His:ヒスチジン;HBTU:N−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ジメチルアミノ]メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート;HOBt:N−ヒドロキシベンゾトリアゾール;Lys:リシン;MeOH:メタノール;NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド;ONS:O−N−スクシンイミド;OtBu:O−tert−ブチル;Pbf:N−ω−ジメチル−N−ω’−2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル;PC:ポリカーボネート;Pmc:2,2,5,7,8−ペンタジメチルクロマン−6−スルホニル;TFA:トリフルオロ酢酸;TIS:トリイソプロピルシラン;Trt;トリチル。
【実施例1】
【0039】
この実施例は、ポリピロール骨格と、リシンから誘導されるグラフトとを含む、次の式のグラフトコポリマーで構成される膜の調製を例示する:
【化24】

こうして調製されたコポリマーは、次の単位配列を含む:
【化25】

式中、nは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、mは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示す。この角括弧間の単位は鎖内にてランダムに配置され得ることを理解する。
このコポリマーの調製に関して、反応スキームは次の通りである:
【化26】

式中、Rはリシンから誘導されるグラフトを表し、その式は上記で与えられ、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、ペプチド配列のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護されたアミノ酸リシンであり、アミノ酸の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0040】
この場合、保護されたアミノ酸リシンは、次の式:H−Lys(Boc)−OH、または次の構造式に対応する:
【化27】

膜の2つの実施形態は、支持マトリックスを出発として使用するかしないかに依存して、以下に示す。
a)支持マトリックスを用いる本発明の膜の製造
官能化されたポリピロールコポリマーは、ポリカーボナート支持マトリックス上の2区間セルにて製造される。カルボキシル化ポリピロールベースコポリマー(ピロールおよび3−カルボキシピロール単位を含む)がポリカーボネート支持マトリックスに堆積する。
【0041】
EDC(0.08M)およびNHS(0.16M)を水性媒体に溶解する。セルの2つの区画は、10mlの溶液で充填され、混合物は4℃に冷却される。この温度で1時間の撹拌後、反応混合物を周囲温度で3時間撹拌する。活性化された膜を蒸留水で2回洗浄する。保護されたリシンアミノ酸(461.24mg;1.69mmol)およびDIEA(588μl,3.38mmol)を水性媒体に溶解し、2つの区画に添加する。得られた溶液を周囲温度で12時間撹拌する。膜を水で洗浄し、乾燥し、TFA/HO/TIS(9.5:0.25:0.25)の溶液をそれら区画に添加する。周囲温度で3時間後、TFA溶液を除去し、水酸化ナトリウム水溶液(2N)を添加する。
80℃で2時間後、PCマトリックスを除去した最終膜を再び新しい水で洗浄し、周囲温度で注意深く乾燥する。
b)支持マトリックスを用いない膜の製造
【0042】
この実施形態によれば、ピロールおよび3−カルボキシピロール単位を含む膜を、EDC(0.08M)およびNHS(0.16M)と反応させる。
4℃で1時間撹拌後、混合物を周囲温度で3時間撹拌する。膜を水で2回洗浄する。保護されたリシンアミノ酸(416.24mg,1.69mmol)およびDIEA(588μl,3.38mmol)を水性媒体に溶解し、2つの区画に添加する。得られた溶液を周囲温度で12時間撹拌する。膜を水で洗浄し、乾燥して、TFA/HO/TIS(9.5:0.25:0.25)溶液を区画に添加する。周囲温度で3時間後、得られた膜を新しい水で再び洗浄し、周囲温度で注意深く乾燥する。
【実施例2】
【0043】
この実施例は、ポリピロール骨格と、アルギニンから誘導されるグラフトとを含む、以下の式のグラフトコポリマーで構成される膜の調製を例示する:
【化28】

こうして調製されたコポリマーは次の単位配列を含む:
【化29】

式中、nは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、mは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示す。
このコポリマーの調製に関して、反応スキームは次の通りである:
【化30】

式中、Rはアルギニンから誘導されるグラフトを表し、その式は上記で与えられ、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、アミノ酸のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護されたアミノ酸アルギニンであり、アミノ酸の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0044】
この場合、保護されたアミノ酸アルギニンは、次の式:H−Arg(Pmc)−OH、または次の構造式に対応する:
【化31】

膜の2つの実施形態をこの実施例の状況において使用した:
−支持マトリックスを用いる1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたリシンの代わりに、保護されたアミノ酸アルギニンを(744.61mg,1.69mmolの量にて)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態:
−支持マトリックスを用いない1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたリシンの代わりに保護されたアミノ酸アルギニンを(744.61mg,1.69mmolの量にて)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態。
【実施例3】
【0045】
この実施例は、ポリピロール骨格と、ヒスチジンから誘導されるグラフトとを含む、次の式のグラフトコポリマーで構成される膜の調製を例示する:
【化32】

こうして調製されたコポリマーは次の単位配列を含む:
【化33】

式中、nは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、mは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示す。この角括弧間の単位は鎖内にてランダムに配置され得ることを理解する。
このコポリマーの調製に関して、反応スキームは次の通りである:
【化34】

式中、Rはヒスチジンから誘導されるグラフトを表し、その式は上記で与えられ、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、アミノ酸のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護されたアミノ酸ヒスチジンであり、アミノ酸の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0046】
この場合、保護されたアミノ酸ヒスチジンは、次の式:H−His(Trt)−OH、または次の構造式に対応する:
【化35】

膜の2つの実施形態をこの実施例の状況において使用した:
−支持マトリックスを用いる1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたリシンの代わりに、保護されたアミノ酸ヒスチジンを(671.77mg,1.69mmolの量にて)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態:
−支持マトリックスを用いない1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたリシンの代わりに保護されたアミノ酸ヒスチジンを(671.77mg,1.69mmolの量にて)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態。
【実施例4】
【0047】
この実施例は、ポリピロール骨格と、リシン、アルギニンおよびヒスチジン(1:1:1の割合で)から誘導されるグラフトとを含む、次の式のグラフトコポリマーで構成される膜の調製を例示する:
【化36】

こうして調製されたコポリマーは次の単位配列を含む:
【化37】

式中、nは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、mは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、Rはリシンから誘導されるグラフト、アルギニンから誘導されるグラフトおよびヒスチジンから誘導されるグラフトを等しく表し、3つの種類のグラフトは1:1:1の割合でコポリマー中に存在する。
【0048】
このコポリマーの調製に関して、反応スキームは次の通りである:
【化38】

式中、Rは上記で定義される通りであり、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、アミノ酸のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護されたアミノ酸リシン、アミノ酸ヒスチジンおよびアミノ酸アルギニンであり、アミノ酸の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
この場合、保護されたアミノ酸アルギニンは、次の式:H−Arg(Pmc)−OH、または次の構造式に対応する:
【化39】

【0049】
保護されたアミノ酸リシンは、次の式:H−Lys(Boc)−OH、または次の構造式に対応する:
【化40】

保護されたアミノ酸ヒスチジンは、次の式:H−His(Trt)−OH、または次の構造式に対応する:
【化41】

膜の2つの実施形態をこの実施例の状況において使用した:
−支持マトリックスを用いる1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたアミノ酸リシンを単独で用いる代わりに、保護されたアミノ酸リシン、アルギニン、およびヒスチジンを次のそれぞれの割合で(138.66mg,5.63×10−4mol;248.05mg,5.63×10−4mol;223.79mg,5.63×10−4mol)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態:
−支持マトリックスを用いない1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたアミノ酸リシンを単独で用いる代わりに、保護されたアミノ酸リシン、アルギニン、およびヒスチジンを次のそれぞれの割合で(138.66mg,5.63×10−4mol;248.05mg,5.63×10−4mol;223.79mg,5.63×10−4mol)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態。
【実施例5】
【0050】
この実施例は、ポリピロール骨格と、リシン、アルギニン、ヒスチジンおよびタウリン(1:1:1:1の割合で)から誘導されるグラフトとを含む、次の式のグラフトコポリマーで構成される膜の調製を例示する:
【化42】

こうして調製されたコポリマーは次の単位配列を含む:
【化43】

式中、nは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、mは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、Rはリシンから誘導されるグラフト、アルギニンから誘導されるグラフト、ヒスチジンから誘導されるグラフト、およびタウリンから誘導されるグラフトを等しく表す。
【0051】
このコポリマーの調製に関して、反応スキームは次の通りである:
【化44】

式中、Rは上記で定義される通りであり、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、アミノ酸のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護されたアミノ酸リシン、アミノ酸ヒスチジンおよびアミノ酸アルギニン、ならびにアミノ酸タウリンであり、アミノ酸の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0052】
この場合、保護されたアミノ酸アルギニンは、次の式:H−Arg(Pmc)−OH、または次の構造式に対応する:
【化45】

保護されたアミノ酸リジンンは、次の式:H−Lys(Boc)−OH、または次の構造式に対応する:
【化46】

保護されたアミノ酸ヒスチジンは、次の式:H−His(Trt)−OH、または次の構造式に対応する:
【化47】

膜の2つの実施形態をこの実施例の状況において使用した:
−支持マトリックスを用いる1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたアミノ酸リシンを単独で用いる代わりに、保護されたアミノ酸リシン、アルギニン、およびヒスチジンならびにアミノ酸タウリンを次のそれぞれの割合で(104mg,4.225×10−4mol;186.15mg,4.225×10−4mol;167.9mg,4.225×10−4mol;52.8mg,4.225×10−4mol)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態:
【0053】
−支持マトリックスを用いない1つの実施形態であって、この実施形態は、保護されたアミノ酸リシンを単独で用いる代わりに、保護されたアミノ酸リシン、アルギニン、およびヒスチジンならびにアミノ酸タウリンを次のそれぞれの割合で(104mg,4.225×10−4mol;186.15mg,4.225×10−4mol;167.9mg,4.225×10−4mol;52.8mg,4.225×10−4mol)導入する以外、実施例1の状況にて設定されたものと同一である実施形態。
【実施例6】
【0054】
この実施例は、ポリピロール骨格と、次の式のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜の調製を例示する:
【化48】

ここで、この基は、以降、接頭辞−Rによって表される。
こうして調製されたコポリマーは、次の単位配列を含む:
【化49】

式中、nは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示し、mは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示す。
【0055】
このコポリマーを調製するために、反応スキームは次の通りである:
【化50】

式中、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、ペプチド配列のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護された適切なペプチド配列であり、ペプチド配列の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
この場合、保護されたペプチド配列は、次の式:H−Asp(OtBu)−His(Trt)−Lys(Boc)−OHまたは次の構造式に対応する:
【化51】

【0056】
上記1および2で標識された工程の実施の前に、保護されたペプチド配列を、上記式によって示されるように調製する。
保護されたペプチド配列の調製プロトコルを以下に示す。
このペプチド配列の調製に必要なアミノ酸は次の通りである:
−次式のH−Lys(Boc)−2−クロロトリチル樹脂:
【化52】

−次式のFmoc−His(Trt):
【化53】

−次式のFmoc−Asp(OtBu):
【化54】

H−Lys(Boc)−2−クロロトリチル樹脂(0.25mmol)0.5gを、次のアミノ酸(Fmoc−His(Trt),Fmoc−Asp(OtBu))とカップリングさせるが、このアミノ酸は、過剰量(10部)で存在し、HBTUおよびDIEAの存在下、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステルの形態で−COOH機能を有する。得られたペプチド樹脂は、フリットフィルタを含むシリンジ体に置かれる。乾燥ジクロロメタン中のTFA1%溶液を添加する。混合物を2分間作用させ、得られた溶液をろ過する。後続ろ過を伴うTFA反応工程を10回繰り返す。残った保護ペプチド配列は、樹脂から分離するために、連続的に3×30mlのジクロロメタン、3×30mlのメタノール、2×30mlのジクロロメタンおよび3×30mlのメタノールで洗浄される。全てのろ液を合わせ、減圧下でその体積の5%までエバポレートする。冷水40mlを添加すると、白色沈殿物が生じる。生成物をろ過により単離し、冷水で3回洗浄する。
【0057】
機能化ポリピロールコポリマーは、ポリカーボネート支持マトリックス上の2区画セル中にて製造される。カルボキシル化ポリピロールベースコポリマーは、ポリカーボネート支持マトリックス上に堆積する。
EDC(0.08M)およびNHS(0.16M)を水性媒体に溶解する。セルの2つの区画は、10mlの溶液で充填され、混合物を4℃に冷却する。この温度で1時間攪拌後、反応混合物を周囲温度で3時間攪拌する。活性化された膜を蒸留水で2回洗浄する。予め調製されたペプチド配列(15.9mg;0.02mmol)およびDIEA(173.9μl,1mmol)を水性媒体中に溶解し、2つの区画に添加する。得られた溶液を周囲温度で12時間攪拌する。膜を水で洗浄し、乾燥し、TFA/HO/TIS(9.5:0.25:0.25)溶液を区画に添加する。周囲温度にて3時間後、TFA溶液を除去し、水酸化ナトリウム水溶液(2N)を添加する。80℃で2時間後、ポリカーボネートマトリックスから除去された最終膜を再び新しい水で洗浄し、周囲温度で注意深く乾燥する。
【実施例7】
【0058】
この実施例は、ポリピロール骨格と、次の式のグラフトとで構成される膜の調製を例示する:
【化55】

式中、この基は、以降、接頭辞−Rによって表される。
こうしてこの実施例で調製されたコポリマーは次の単位配列を含む:
【化56】

式中、nおよびmは角括弧間の単位の繰り返し単位数を示す。
このコポリマーを調製するために、反応スキームは次の通りである:
【化57】

式中、工程1の反応体は,1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)および水の存在下で、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)であるが、工程2の反応体は、ペプチド配列のグラフト化に関してはジイソプロピルエチルアミン(DIEA)および水の存在下で、特定の機能に関して保護された適切なペプチド配列であり、ペプチド配列の保護された機能の脱保護に関しては水およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下で、トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0059】
この場合、保護されたペプチド配列は、次の式Ac−Arg(Pbf)−His(Trt)−Asp(OtBu)−Lys−Asp(OtBu)−His(Trt)−Lys(Boc)−OHに対応する。
この保護されたペプチド配列の構造式は次の通りである:
【化58】

上記1および2で標識された工程の実施の前に、保護されたペプチド配列を、上記式によって示されるように調製する。
保護されたペプチド配列の調製プロトコルを以下に示す。
【0060】
このペプチド配列の調製に必要なアミノ酸は次の通りである:
−次式のH−Lys(Boc)−2−クロロトリチル樹脂:
【化59】

−次式のFmoc−His(Trt):
【化60】

−次式のFmoc−Asp(OtBu):
【化61】

−次式のFmoc−Lys(Dde):
【化62】

−次式のFmoc−Arg(Pbf):
【化63】

H−Lys(Boc)−2−クロロトリチル樹脂(0.25mmol)0.5gを、次のアミノ酸(Fmoc−His(Trt),Fmoc−Asp(OtBu),Fmoc−Lys(Dde),Fmoc−Asp(OtBu),Fmoc−His(Trt),Fmoc−Arg(Pbf))とカップリングさせるが、このアミノ酸は、過剰量(10部)で存在し、N−[(1H−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステルの形態で−COOH機能を有する。得られたペプチド樹脂は、フリットフィルタを含むシリンジ体に置かれる。
【0061】
平行して、AcOH(14.2μl,0.25mmol)、HOBt(33.7mg,0.25mol)およびPyBOP(130mg,0.25mmol)をDMF(5ml)中に溶解する。過剰のDIEA(100μl,0.57mmol)を添加し、反応混合物を周囲温度で4時間攪拌する。得られた溶液を上記で調製されたペプチド樹脂に添加し、周囲温度で12時間攪拌する。樹脂を、3×30mlのジクロロメタン、3×30mlのメタノール、および2×30mlのジクロロメタンで洗浄する。Kaiserテストを行ない、一級アミンが全く検出されないことを示す。
得られた樹脂を、ジクロロメタン中の2%ヒドラジン一水和物の溶液中に再懸濁する(20ml/g樹脂)。それを注意深く手動で攪拌しながら3分間反応させ、完全な反応を確実にするためにヒドラジン処理を2回繰り返す。樹脂を、連続的に、2×20mlのジメチルホルムアミド、2×20mlのジクロロメタン、20mlのメタノール、および20mlのジクロロメタンで洗浄し、乾燥する。
乾燥ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸1%溶液を添加する。混合物を2分間反応させ、得られた溶液をろ過する。この工程を10回繰り返す。残った保護ペプチド配列は、3×30mlのジクロロメタン、3×30mlのメタノール、2×30mlのジクロロメタンおよび3×30mlのメタノールで洗浄することによって樹脂から分離される。全てのろ液を合わせ、減圧下でその体積の5%までエバポレートする。冷水40mlを添加すると、白色沈殿物が生じる。生成物をろ過により単離し、冷水で3回洗浄する。
【0062】
機能化ポリピロールコポリマーは、ポリカーボネート支持マトリックス上の2区画セル中にて製造される。カルボキシル化ポリピロールベースコポリマーは、ポリカーボネート支持マトリックス上に堆積する。
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩EDC(0.08M)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(0.16M)を水性媒体に溶解する。セルの2つの区画は、10mlの溶液で充填され、混合物を4℃に冷却する。この温度で1時間攪拌後、反応混合物を周囲温度で3時間攪拌する。活性化された膜を蒸留水で2回洗浄する。予め調製されたペプチド配列(15.9mg;0.02mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(173.9μl,1mmol)を水性媒体中に溶解し、2つの区画に添加する。得られた溶液を周囲温度で12時間攪拌する。膜を水で洗浄し、乾燥し、TFA/HO/TIS(9.5:0.25:0.25)溶液を区画に添加する。3時間後、周囲温度にて、TFA溶液を除去し、水酸化ナトリウム水溶液(2N)を添加する。
【0063】
80℃で2時間後、ポリカーボネートマトリックスから除去された最終膜を再び新しい水で洗浄し、周囲温度で注意深く乾燥する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖と、この主鎖に共有結合したグラフトとを含むグラフト(コ)ポリマーを含む燃料電池用プロトン伝導膜であって、このグラフトが、少なくとも1つのプロトン受容基および少なくとも1つのプロトン供与基を含む燃料電池用プロトン伝導膜。
【請求項2】
前記プロトン受容基が孤立電子対を保持する原子を含有するおよび/または負に荷電している、請求項1に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項3】
前記孤立電子対を保持する原子を含有するプロトン受容基がアミン基である、請求項2に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項4】
前記アミン基が一級アミン基−NHまたは二級アミン基−NH−である、請求項3に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項5】
前記二級アミン基−NH−が、線状炭化水素鎖に含まれるか、またはイミダゾール基もしくはグアニジン基に含有される、請求項4に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項6】
前記負に荷電したプロトン受容基が、カルボン酸−COHの塩、硫酸−SOHの塩、またはホスホン酸POの塩、または−Oもしくは−S機能である、請求項2に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項7】
前記プロトン供与基が、酸基−COH、−SOHまたは−PO、またはアミン基の塩、または−OHもしくは−SH基である、請求項1に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項8】
前記グラフトが、1以上のヘテロ原子、例えばO、NおよびSを含有することができ、任意に置換される飽和または不飽和の環式または非環式炭化水素基に対応する、先行する請求項のいずれか1項に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項9】
前記炭化水素基が、1〜22個の炭素原子、好ましくは6〜16個の炭素原子を含有する脂肪族基、例えばアルキル基である、請求項8に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項10】
前記炭化水素基が、任意に1以上のヘテロ原子、例えばO、NおよびSを含む1以上の芳香族環を含む芳香族基である、請求項8に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項11】
前記グラフトがアミノ酸残基に対応する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項12】
前記アミノ酸残基が、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリシンから選択される天然α−アミノ酸から得られる、請求項11に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項13】
前記アミノ酸残基が、以下の式(I)〜(III)のリシン、アルギニンおよびヒスチジン残基である、請求項11に記載の燃料電池用プロトン交換膜:
【化1】

【請求項14】
前記アミノ酸残基が次から選択されるアミノ酸から得られる、請求項11に記載の燃料電池用プロトン交換膜:
【化2】

【請求項15】
先行する請求項に与えられる定義に合わないグラフトをさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項16】
請求項15に記載のグラフトが、システイン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシンから選択されるアミノ酸から得られるアミノ酸残基、次の式のアミノ酸から選択される非天然アミノ酸残基:
【化3】

または次の式の化合物の残基である、請求項15に記載の燃料電池用プロトン交換膜:
【化4】

【請求項17】
前記グラフトが以下の式(IV)のアミノ酸残基に対応する、請求項15または16のいずれか1項に記載の燃料電池用プロトン交換膜:
【化5】

【請求項18】
前記グラフトがペプチド配列に対応する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項19】
前記ペプチド配列が、請求項12および14に記載のアミノ酸連接からなる、請求項18に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項20】
前記グラフトが次式の1つに適合する、請求項18または19のいずれか1項に記載の燃料電池用プロトン交換膜:
【化6】

【請求項21】
前記主鎖が、任意に1以上のヘテロ原子、例えばO、N、S、ハロゲン原子を含む脂肪族または芳香族炭化水素鎖に対応する、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロトン交換膜。
【請求項22】
前記主鎖が、先行する請求項のいずれか1項に記載のグラフトと全体的または部分的に共有結合した複素環式繰り返し単位を含む、請求項21に記載のプロトン交換膜。
【請求項23】
前記主鎖がポリピロール鎖である、請求項22に記載のプロトン交換膜。
【請求項24】
次の膜から選択される、請求項23に記載のプロトン交換膜:
−ポリピロール骨格と、請求項13に記載の式(I)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、請求項13に記載の式(II)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、請求項13に記載の式(III)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、請求項13に記載の式(I)、(II)および(III)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、請求項13および17に記載の式(I)、(II)、(III)および(IV)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、請求項20に記載の式(V)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜;
−ポリピロール骨格と、請求項20に記載の式(VI)のグラフトとを含むグラフトコポリマーで構成される膜。
【請求項25】
請求項1に記載のグラフト(コ)ポリマーだけで構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロトン交換膜。
【請求項26】
貫通孔を含むポリマー支持マトリックスを含み、この孔が請求項1に記載のグラフト(コ)ポリマーで充填される、請求項1〜24のいずれか1項に記載のプロトン交換膜。
【請求項27】
前記ポリマー支持マトリックスが、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、任意にフッ素化されたこれらのポリマーから選択されるポリマーで構成される、請求項26に記載のプロトン交換膜。
【請求項28】
前記グラフト(コ)ポリマーが、ペンダント機能Xを含むベース(コ)ポリマーと、ペンダント機能Xと反応して共有結合を形成できる機能Aを含む少なくとも1つのグラフト前駆体とを反応させることによって調製され、このグラフトが、この反応の結果として、ベースコポリマーに結合する、請求項25に記載のプロトン交換膜の調製方法。
【請求項29】
前記ペンダント機能Xがカルボキシル機能−COHであり、前記機能Aがアミン機能−NHである、請求項28に記載の調製方法。
【請求項30】
前記膜が、ポリピロール骨格と、アミノ酸残基またはペプチド配列からなるグラフトとを含むコポリマーで構成される場合、この骨格が次式の少なくとも1つの繰り返し単位:
【化7】

Xは請求項28または29に記載の通りである、
および任意に次式の繰り返し単位を含むベースコポリマーを:
【化8】

請求項28または29に記載の機能Aを含む少なくとも1つのアミノ酸またはペプチド配列と反応させる工程を含む、請求項28または29に記載の調製方法。
【請求項31】
請求項1に記載のグラフトに対応する少なくとも1つの側鎖を保持する少なくとも1つのモノマーを重合する工程を含む、請求項25に記載のプロトン伝導膜を調製する方法。
【請求項32】
前記グラフト(コ)ポリマーがラジオグラフティングによって調製される、請求項25に記載のプロトン伝導膜を調製する方法。
【請求項33】
次の工程を含む、請求項25に記載のプロトン伝導膜を調製する方法:
−ポリマー支持マトリックスの貫通孔にて前記グラフト(コ)ポリマーを製造する工程;
−前記ポリマー支持マトリックスを除去する工程。
【請求項34】
前記グラフト(コ)ポリマーが、ポリマー支持マトリックスの貫通孔に製造される、請求項26に記載のプロトン伝導膜を調製する方法。
【請求項35】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の少なくとも1つの膜を含む燃料電池デバイス。

【公表番号】特表2011−501856(P2011−501856A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526273(P2010−526273)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062726
【国際公開番号】WO2009/040362
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】