説明

プロバイオティック送達システム

【課題】生存微生物を含むプロバイオティック送達システムを利用した食品を提供する。
【解決手段】プロバイオティック3(生存微生物)のほかに、賦形剤、結合剤、可塑剤、その他の機能性構成成分のような任意的な又は望ましい構成要素と、コーティングとを含んでいる圧縮ペレット1を半湿り食品、湿り食品または半乾燥食品に添加することにより、プロバイオティック3を長い期間にわたって生存可能な状態のままに維持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生存微生物(viable micro-organisms)とコーティングを含むペレット、プロバイオティックス(probiotics)の送達システム、食品(food product)の中でのプロバイオティックスの送達システムとしての該ペレットの使用、および、食品類に補足するための送達システムを得る方法に関する。本発明はまた、該ペレットを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティック微生物(以後、プロバイオティックス)は一定数を経口摂取されたときに基礎栄養を越えて健康効果を発揮する生きた微生物である。プロバイオティックスが誘発する有益な効果は多数あり、そして当業者の知識の一部を成している。幾つかの例としては、乳糖不耐性(lactose intolerance)の軽減、病原性の細菌および寄生虫の抑制、下痢の軽減、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)を抑える作用、結腸ガンの予防、便秘症の改善または予防、ビタミンの自然産生、血液脂質の調整、および宿主免疫機能の変調を挙げることができるであろう。
【0003】
上記の有益な効果は哺乳類たとえばペットのような随伴動物やヒトの腸に移入して増殖する微生物の非常に特異な菌株について概して有効である。
【0004】
従って、食料の中にプロバイオティックスを含有させることにはかなりの関心がもたれている。たとえば、プロバイオティックスを含有している、ヨーグルトのような、多数の発酵乳製品が商業的に入手可能である。
【0005】
同様に、動物用には、プロバイオティックスを動物用飼料の中に含有させることに関心がもたれている。このことはペットフードのためばかりでなく少なくとも家畜類を目的とした飼料にとってもそのとおりである。
【0006】
多くのプロバイオティックスはそれらが生きているときに主にそれらの有益な効果を示す。従って、食品に添加される場合には、プロバイオティックスは食品の保存寿命を超えて、そして更には食品の消費時にも移入増殖の場所まで胃腸管の中を通過しても、生き残らなければならない。
【0007】
従って、この技術分野はプロバイオティックスを食料および/またはペットフードと一緒に供給しそして添加プロバイオティックスの長い寿命を与えるという問題に関心を持つ状況にある。特に、プロバイオティックスはたとえば0.2未満の水分活性(water activity)(a)を特徴とする乾燥環境の中では比較的安定であるが、湿り食品または半乾燥食品の中にあるときには温度と湿気に非常に敏感である。従って、先行技術は周囲温度およびそれより高い温度において、湿潤環境、湿り環境または更には液体環境の中でも生きたバイオマス(biomass)を維持することに関心を持っている。
【0008】
EP 0 862863はプロバイオティックを含むコーティングまたはフィリング(filling)を含めてのα化澱粉マトリックス(gelatinized starch matrix)を含むすぐ食べられる穀物製品を提供している。従って、噴霧乾燥されたプロバイオティックスは水、脂肪または蛋白質熟成物であってもよいキャリヤー基質(carrier substrate)の中に混入され、そしてその混合物は次いで本質的には穀物製品の上に吹き付けられる。勿論、プロバイオティックスの長い寿命を確保するために、穀物製品はそれ自体が低い水分活性を有していなければならない。
【0009】
EP 0 70416はより詳しくは湿気食品の中での乳酸菌の保存に関係している。脂肪と発酵乳粉と糖類を含む組成物に噴霧乾燥細菌が添加される。次いで、この組成物は菓子製品のフィリングとして意図される。この発明は脂肪または油に富むマトリックスの中にプロバイオティックスを埋め込むことによって水の有害な影響を回避しており、従って、食品のバランスのよい栄養組成を良くない方へシフトさせる危険を冒している。
【0010】
EP 0 180743は、油相中に懸濁されていて、そして水溶性(セルロースまたは澱粉の水溶性誘導体、ガムまたはペクチン)である少なくとも一つ保護層によって包まれている、微生物を開示している。
【0011】
マイクロカプセル形態での良好な安定性の微生物はスイスのルガーノ(Lugano)のビオフェルメント(Bioferment)のセルビオス−ファルマ社(Cerbios-Pharma SA)からたとえばLBCME10の製品名で商業的に入手可能である。小カプセル(直径約700μm)の断面の顕微鏡観察は、担体(carrier)に付着したプロバイオティックスはプロバイオティックスを保護する数層の薄い層によって被覆されていることを示している。これら製品は湿気環境中でも比較的高い安定性を特徴としているが、マイクロカプセル剤の中に水が入り込むのを避けるために数層を付加しなければならないので製造に経費がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP 0 862863
【特許文献2】EP 0 70416
【特許文献3】EP 0 180743
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、現行の先行技術を考慮すると、液体環境、湿り環境または半湿り環境の中でのプロバイオティックスの寿命期間を延長させるプロバイオティックス送達システムが必要とされている。
【0014】
特に、本発明の挑戦は、食品自体はプロバイオティックスが生き残るための最適値を越すa値を有しているそのような食品に添加される安定なプロバイオティックスまたはプロバイオティック送達システムを提供することである。更に、プロバイオティックスは好ましくは、実質的にそれらが添加される食品と違ったり又は食品を(栄養上および器官感覚受容性(organoleptic)の観点から)悪化させたりしない形態で提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
注目すべきことには、乾燥微生物を乾燥食料素材から成ってもよいマトリックスと一緒に圧縮することによって、そしてこのペレットを食品級モイスチャーバリア(food-grade moisture barrier)で被覆することによって、貯蔵時間にわたる優れた安定性が得られるということが判明した。
【0016】
結局、第一の局面においては、本発明は、圧縮されたインナーマトリックス(compacted inner matrix)と少なくとも一つのコーティングを含むペレットであって、インナーマトリックスが生存微生物を含み、そしてコーティングがモイスチャーバリアを含み、ペレットが少なくとも0.02cmの体積を有することを特徴とする、前記ペレットを提供する。
【0017】
第二の局面においては、本発明は食品の中のペレットを提供し、ペレットは本発明によるペレットであり、そしてペレットのインナーマトリックスは食品の少なくとも一つの構成要素(component)を含んでいる。
【0018】
第三の局面においては、本発明は本発明のペレットを含んでいるプロバイオティックス送達システムを提供する。
【0019】
第四の局面においては、本発明は、本発明のペレットの、湿り食品、半湿り食品または半乾燥食品の中でのプロバイオティックス送達システムとしての使用を提供する。
【0020】
第五の局面においては、本発明は食品に生存微生物を補うためのペレットを得る方法を提供し、この方法は微生物調製品(a preparation)と更なる構成要素とを混合し、この混合物を0.3未満のaに乾燥し、この混合物を圧力下で圧縮して少なくとも0.02cmの体積を成すペレットを得、そしてこのペレットをモイスチャーバリアで被覆する諸工程を含む。
【0021】
第六の局面においては、本発明は、本発明のペレットを含む食品であって、この食品とペレットのインナーマトリックスとが少なくとも一つの構成要素(component)、構成成分(ingredient)または成分(constituent)を分け合っている(share)、前記食品を提供する。
【0022】
最後の局面においては、本発明は、一方が本発明のプロバイオティックペレットである少なくとも2つのタイプの粒子の混合物からなる粒子状の食品、食品添加物、サプリメントまたは医薬品を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の利点は、本発明は半乾燥および/または湿潤の粒子状食料の中に適用されたプロバイオティック微生物の安定性を有意に改善する、ということである。
【0024】
本発明の別の利点は加工が容易であり且つ簡単であるということである。
【0025】
本発明の更に別の利点は、転じて本発明のペレットの物理化学的特徴を改良してもよい更なる機能性構成成分特にプレバイオティック繊維質類(prebiotic fibers)のための適する送達ビヒクルを提供することである。
【0026】
(図において、)
図1は本発明によるペレット(1)の例を概略的に図解している。ペレット(1)はプロバイオティックス(3)を含んでいるインナーマトリックス(2)を含む。ペレット(1)はさらにモイスチャーバリア(4)を含む。図1aと図1bは異なる態様を区別しており、プロバイオティックスは均質に分散されている(図1a)か、又は中心に集積されている(図1b)。形状およびコーティングとインナーマトリックスとプロバイオティック製剤の間の厚さ比率は恣意的であってこの図は例示目的だけにかなっているということに留意すべきである。
【0027】
図2は30℃および70%RH(相対湿度)で貯蔵されたエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の貯蔵安定性(貯蔵時間に対するcfu/gの回収%)を示す。この図はSF68の名でスイスのルガーノのセルビオス−ファルマ社から得た商業的に入手可能なマイクロカプセル剤で得た値(黒三角)と本発明によるコーテッドペレットで得た値(黒菱形)を区別している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1aはプロバイオティックスが均質に分散されている場合の本発明によるペレットの例を示す概略図であり、図1bはプロバイオティックスが中心部に集積されている場合の本発明によるペレットの例を示す概略図である。
【図2】温度30℃および相対湿度70%で貯蔵されたときのエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の貯蔵安定性(貯蔵時間に対するcfu/gの回収%)を示すグラフであり、黒菱形のプロットは本発明によるコーテッドペレットの場合であり、黒三角のプロットは市販のマイクロカプセル剤の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細)
本発明の文脈の中では、用語「〜を含む」は「ほかにもあるが〜を含む」ことを意味するために用いられている。それは「〜だけからなる」と解釈されることを意図していない。
【0030】
本発明の文脈の中では、用語「食品」はいずれの消費物質をも包含することを意図している。従って、それはヒトによる消費を意図された製品であってもよいが、この用語は動物、たとえば、イヌ、ネコ、ウサギ、テンジクネズミ、マウス、ラット、鳥類(たとえば、オウム)、爬虫類および魚(たとえば、ゴールドフィッシュ)、によって消費されるべき製品をも包含する。しかしながら、この用語はまた、他の家畜化された動物によって消費されるべき食物、たとえば、家畜類(たとえば、牛、馬、豚、羊、山羊、水牛、駱駝など)のための飼料製品を包含する。
【0031】
本発明の文脈の中では、用語「ペレット」は何ら特殊な形態を称することを意図していない。反対に、本発明の観念においては、「ペレット」は圧縮によって得ることが可能ないかなる形態を想定している。たとえば、ペレットは球体、立方体、角錐、タブレットまたはなんらかの古典的な又は変形された又は複雑な三次元形状の形態を有していてもよい。さらには、もっとおもしろい形態が考えられてもよい。たとえば、ペレットがペットフード向けのプロバイオティック送達システムとして意図されているならば、それらは骨の形状、細い棒、輪、動物たとえばマウスの形状、またはその他の対象物の形状を有してもよい。今日の圧縮技術は殆どすべての三次元構造の製造を可能にする。
【0032】
本発明の文脈の中では、用語「プロバイオティック」はそれがその消費者に与えるであろう何らかの有益な効果のために消費されることを望まれているいずれの微生物をも称することを意図されている。
【0033】
本発明の文脈の中では、用語「モイスチャーバリア」は、上記の通りペレットを被覆するのに使用されてもよいそして被覆されるべきペレットによる吸水を抑えるのに有効であるいずれの物質をも称している。
【0034】
本発明の文脈の中では、「湿気(moisture)」を規定するのに、次のようなa値が実用的な手法として使用されている:湿り(moist)は0.7またはそれ以上のaを、半湿り(semi-moist)は0.5〜0.7のaを、そして半乾燥(semi-dry)は0.3〜0.5のaを、表わす。
【0035】
本発明の文脈の中では、表現「インナーマトリックス」の中の用語「マトリックス」はなんらかの特殊な構成要素または構成要素の選択に限定されることを意図していない。勿論、それは通常、その消費が栄養的に安全である食品級構成成分を含む。しかしながら、本発明の利点の一つはマトリックスに関して当業者が与えられる著しい融通性である。マトリックスはプロバイオティックスのための担体として、場合によっては結合剤と一緒に、役立ってもよい。
【0036】
本発明の文脈の中では、用語「結合剤」は他の食品構成成分(food ingredient)に被圧縮能力を付与する性質を有するいずれの食品級物質を称してもよい。一般に、結合剤は圧縮中に可塑的に変形される能力を有していてそれによって十分に耐久性のあるタブレット構造を生じさせると理解されている。加えて、結合剤は接着質、にかわ質、または粘着質の諸性質を有してもよい。
【0037】
本発明の文脈の中では、用語「可塑剤」は、圧縮ペレットを製造するのに使用されるその他の構成成分の一つまたはそれ以上を軟化させる性質を有するいずれの食品級物質を称してもよい。好ましくは、インナーマトリックスのその他の構成要素の表面を濡らす又は湿潤させる能力を有する可塑剤が使用され、そしてこのやり方によってインナーマトリックスの圧縮を低い水分活性においてさえ支援する。
【0038】
本発明の文脈の中では、用語「機能性食品(functional food)」は基礎栄養を超える何らかの利益を消費者に付与するいずれの食品またはいずれの食品構成成分をも称している。宿主の腸微生物叢の組成および代謝活性に及びその免疫システムに有益な効果を有してもよいプロバイオティックス(上記参照)が例として有用であろう。同様に、プレバイオティックス、繊維質、ビタミン、抗酸化剤、精神興奮作用性分子たとえばカフェインは、可能な「機能性食品」構成成分の純粋に恣意的な、代表的な、しかし例示の選択として有用であろう。
【0039】
インナーマトリックスの更なる構成要素の文脈の中で、用語「更なる構成要素」は細菌以外の全ての構成要素を称する。細菌が特別の担体に付着されている場合には、この担体は同じく「更なる構成要素」の部分(part)ではない。
【0040】
この説明の中に与えられたペレットまたはプロバイオティック送達システムの構成成分または部分の全リストは非排他的リストとみなされる。これらリストの一つまたは全部の中の構成成分または物質のいずれかの組合せを選択することは強制ではないが常に可能であろう。
【0041】
パーセンテージは別に指示されていない限り重量による。好ましくは、一態様においては、本発明のペレットは0.01〜100cm、好ましくは0.02〜50cm、より好ましくは0.125〜30cm、そして最も好ましくは0.3〜8cm、の範囲の体積を有する。たとえば、体積は0.4〜6cm、0.5〜3cm、または0.6〜2.25cm、の範囲にあってもよい。
【0042】
本発明による別の態様においては、本発明によるペレットのインナーマトリックスはコーティングの前には又は後間もなくは0.3未満の水分活性を特徴としている。好ましくは、水分活性は0.2未満、より好ましくはほぼ0.1以下である。たとえば、水分活性は0.01〜0.09の範囲にある。
【0043】
更なる態様においては、本発明によるペレットのインナーマトリックスは0.8g/cmより大きいエンベロープ密度(envelope density)を有する。好ましくは、それは1.1g/cmを超す、より好ましくは1.3g/cmを超す、エンベロープ密度を有する。
【0044】
エンベロープ密度は表面の平面までの細孔空間を含めての対象物の比重を表わす測定値である。この量はタブレットまたは圧縮体(compacted entities)のためには特に適しており、そしてたとえばマイクロメリティックス(Micromeritics)(登録商標)ゲオ・ピク(Geo Pyc)1360装置によって求められてもよい。
【0045】
圧縮体の比重を表わす別の手法はたとえば絶対密度(absolute density)である。コートされてないペレットの絶対密度は好ましくは1g/cmを超す、より好ましくは1.2g/cmを超す、そして最も好ましくは1.5g/cmを超す。絶対密度はたとえばマイクロメリティックス(登録商標)アキュ・ピク(Accu Pyc)1330装置によって求められてもよい。
【0046】
エンベロープ密度および絶対密度の定義は当業者には既知であるが、たとえば、次のものに由来してもよい:Webb, PA; Orr, C. Analytical methods in fine particle technology,Micromeritics Instrument Corporation, Norcross, GA, 1997。
【0047】
一般に、エンベロープ密度は表面の平面までの閉鎖細孔と開放細孔を含めてのその体積から測定されたときの本体の全体密度である。絶対密度は閉鎖細孔を含めての(しかし開放細孔を除いての)その体積から測定されたときの本体の密度である。マトリックス実密度(上記態様には示されていない)は開放細孔と閉鎖細孔の両方を除いてのマトリックスの体積によって測定されたときの本体の密度である。
【0048】
一般に、未コートのペレットのエンベロープ密度はインナーマトリックスの未コートかつ未圧縮の構成要素の絶対密度の約50%〜100%、好ましくは70%〜100%、そしてより好ましくは80%〜100%である。
【0049】
更に別の態様においては、本発明によるペレットは10〜1012の生存微生物(cfu)を含む。好ましくは、それは10〜1011cfu、より好ましくは10〜1010のcfuを含む。たとえば、本発明のペレットは10〜10のcfuを含んでもよい。
【0050】
上記値はペレットのサイズおよび添加されるcfuの数に依存する。cfuの推奨値はペレットのサイズに関係なくペレットのgで表わしてもよい。従って、本発明によるペレットは好ましくは10〜10のcfu/g、より好ましくは10〜10のcfu/gを含む。
【0051】
更に別の態様においては、本発明によるペレットのインナーマトリックスはさらに、消化性澱粉類(digestible starches)、耐性澱粉類(resistant starches)、その他の繊維質、製粉した穀物類、乾燥し微粉砕した野菜類、セルロースおよびセルロース誘導体類、ペットフード、マルトデキストリン、チコリ粉(chicory flour)、蛋白質単離体類、酵母エキス類およびそれらの混合物類からなる群から選ばれた構成成分を含む。
【0052】
更に別の態様においては、本発明によるペレットのコーティングは食品級モイスチャーバリアを含む。
【0053】
本発明による方法の態様においては、更なる構成要素は食品の構成成分の少なくとも一部を含む。
【0054】
理論的に拘束するつもりはないが、乾燥プロバイオティックスを食料素材または特殊な食品級構成成分に添加し、乾燥し、それらを比較的大きな粒子またはペレット(≧0.02cm)に圧縮し、次いでそれらをモイスチャーバリアとして役立つ素材によって被覆することによって、封入されたプロバイオティックスの高い安定性が達成されるということが考えられる。これはある程度その通りであろう、何故ならば、体積と表面の比率は従来知られている封入または乾燥されたプロバイオティックスにおけるよりもはるかにうまく活用されるからである。さらに、圧縮とモイスチャーバリアはこの最適化された比率を支持しており、そして以前には達成されなかった湿気環境中でのプロバイオティックスの貯蔵安定性を可能にさせている。
【0055】
本発明によるペレットを製造するためには、様々な可能性のある微生物の単独または混合物と、インナーマトリックスの更なる構成要素と、疎水性物質とが選択されてもよい。
【0056】
微生物としては、いずれの微生物が選択されてもよい。好ましくは、ヒトまたは動物、たとえば、ペットたとえばネコやイヌ、家畜動物たとえば豚、牛、水牛、羊または山羊、の健康および繁栄に有益な効果を及ぼす微生物が選択される。好ましくは、微生物はプロバイオティック微生物である。
【0057】
文献は本発明を実施するのに使用されてもよい微生物のいくつかに言及している、たとえば、EP0 862863 A2、特に、第2頁。
【0058】
適するプロバイオティック微生物の例は次のものを包含する:酵母、たとえば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、デバリオミセス属(Debaromyces)、カンジダ属(Candida)、ピチア属(Pichia)およびトルロプシス属(Torulopsis)、カビ、たとえば、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rhizopus)、ムコール属(Mucor)、およびペニシリウム属(Penicillium)およびトルロプシス属、および細菌、たとえば、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、メリソコッカス属(Melissococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、コキュリア属(Kocuria)、スタフィロコッカス属(Staphyrococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、バチルス属(Bacillus)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ワイセラ属(Weissella)、アエロコッカス属(Aerococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)およびラクトバチルス属(Lactobacillus)。適するプロバイオティック微生物の具体例は次の通りである:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・レンタス(B. lentus)、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルス・メセンテリカス(B. mesentericus)、バチルス・プミルス(B. pumilus)、枯草菌(B. subtilis)、バチルス・ナットー(B. natto)、バクテロイデス・アミロフィルス(Bacteroides amylophilus)、バクテロイデス・カピローサス(Bac. capillosus)、バクテロイデス・ルミノコーラ(Bac. ruminocola)、バクテロイデス・スイス(Bac. suis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンチス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(B. animalis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)、ビフィズス菌(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B. lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・プソイドロンガム(B. pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(B. thermophilum)、カンジダ・ピントレペシイ(Candida pintolepesii)、酪酸菌(Clostridium butyricum)、エンテロコッカス・クレモリス(Enterococcus cremoris)、エンテロコッカス・ジアセチラクチス(E. diacetylactis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・インテーミディウム(E. intermedium)、エンテロコッカス・ラクチス(E. lactis)、エンテロコッカス・ムントディ(E. muntdi)、エンテロコッカス・テルモフィルス(E. thermophilus)、大腸菌(Escherichia coli)、クリーベロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、アシドフィルス乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アリメンタリウム(L. alimentarium)、ラクトバチルス・アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバチルス・クリスパタス(L. crispatus)、ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス・カセイ(L. casei)、ラクトバチルス・カルバタス(L. curvatus)、ラクトバチルス・セロビオサス(L. cellobiosus)、デルブロイキイ半ブルガリア乳酸桿菌(L. delbrueckii ss. bulgaricus)、ラクトバチルス・ファルシミニス(L. farciminis)、ラクトバチルス・フェルメンタム(L. fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(L. gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(L. helveticus)、乳酸桿菌(L. lactis)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(L. johnsonii)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus)、ラクトバチルス・サケイ(L. sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(L. salivarius)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ペジオコッカス・セレヴィシエ(P. cereviseae)(ダムノサス(damnosus))、ペジオコッカス・アシジラクティシー(Pediococcus acidilactici)、ペジオコッカス・ペントーサセウス(P. pentosaceus)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒイ(Propionibacterium freudenreichii)、プロピオニバクテリウム・シェルマニイ(Prop. shermanii)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomycescereviseae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staph. xylosus)、ストレプトコッカス・インファンタリウス(Streptococcus infantarius)、ストレプトコッカス・サリバリウス/テルモフィルス半々(Strep. salivarius ss. thermophilus)、ストレプトコッカス・テルモフィルス(Strep. thermophilus)、乳連鎖球菌(Strep. lactis)。
【0059】
たとえば、プロバイオティック菌株(単数または複数)は次のものを含む群から選ばれてもよい:たとえば、バチルス・リヘニフォルミス(Bacillus licheniformis)(DSM5749)、枯草菌(DSM5750)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)(DSM20215)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の菌株(たとえば、NCIMB10415;NCIMB11181;NCIMB30098;DSM3520;DSM4788;DSM4789;DSM5464;DSM7134;CECT4515)、エンテロコッカス・ムンドッティイ(E. mundtii)(CNCM MA27/4E)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomycescereviseae)の菌株(たとえば、BCCM/MUCL39885;CBS49394;CNCM I−1077;CNCMI−1079;NCYC Sc47)、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)(NCIMB30096)、ラクトバチルス・ファルシミニス(CNCM MA67/4R)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(I−1225CNCM)、ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)(I−2116CNCM)、ラクトバチルス・プランタラム(CNCMI−840)、ラクトバチルス・ラムノサス(DSM7133)、ペジオコッカス・アシジラクティシー(P. acidilactici)(CNCMMA18/5M)、ストレプトコッカス・インファンタリウス(CNCM I−841)、ストレプトコッカス・テルモフィルス(Streptococcusthermophilus)(TH4、Chr. Hansen、デンマーク)、およびそれらの混合物。
【0060】
本発明による種の代表的な付着菌株をもったプロバイオティック種の更なる例は次のものを含む群から選ばれてもよい:ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(CNCMI−2452、CNCM I−2448、CNCM I−2450、CNCMI−2451)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillusrhamnosus)(CNCM I−2449)、アシドフィルス乳酸桿菌(CNCM I−2453)、およびそれらの混合物。この段落の中に言及された菌株は特にペット向けに適するであろう。
【0061】
微生物は好ましくは、乾燥形態にあるか、又は、例えば胞子を形成する微生物については胞子形態にある。発酵による産生の後での微生物の乾燥は当業者には既知である。たとえば、粉末化の乾燥方法を記載しているEP0 818529(ソシエティ・デス・プロダクツ・ネスレ(SOCIETE DES PRODUCTS NESTLE)、またはWO0144440(INRA)。通常、細菌性微生物は培養液から濃縮され、そして噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥(lyophilisationまたはfreeze drying)または別の適切な乾燥方法によって乾燥される。たとえば、微生物は乾燥中または乾燥前に、担体材料、たとえば、炭水化物、たとえば、ショ糖、乳糖またはマルトデキストリン、脂質または蛋白質、たとえば、粉ミルク、と混合される。担体材料が使用される場合には、それはインナーマトリックスの一部を形成してもよい。
【0062】
しかしながら、微生物は必ずしも最初から乾燥形態で存在している必要はない。それらを発酵後に直接にインナーマトリックスの更なる構成要素(下記参照)と混合しそしてその後で乾燥過程を行うこともしてもよい。かかる手法はWO02/065840(ソシエティ・デス・プロダクツ・ネスレ)から演繹できる。
【0063】
好ましい態様においては、微生物は少なくとも100μmの、好ましくは少なくとも200μmの、より好ましくは少なくとも300μmの、粒子サイズをもつ粒子の形態である。たとえば、粒子サイズは約1mmであってもよい。これら数字は粒子の平均直径をさしている。
【0064】
好ましくは、粒子は有意量の不活性非晶質炭水化物を含んでいて、その中に微生物が埋め込まれている。好ましくは、粒子は乾燥物全体の重量%で10〜90%の、好ましくは30〜80%の、より好ましくは40〜70%の、不活性炭水化物を含んでいる。不活性炭水化物の例はマルトデキストリン、澱粉、低分子量の糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖、マンニトール、など)およびヒドロコロイド類(ペクチン、グアー、キサンタン、アカシアガム(gum acacia))である。
【0065】
微生物と不活性炭水化物を含んでいる粒子は、微生物が後続の圧縮に対してより感受性でなくなり従ってより良好な生き残りを得られるので、好ましい。
【0066】
適する粒子は、微生物を発酵後に不活性炭水化物と混合しそしてこの混合物を当業者に既知の確立された手順に従って噴霧乾燥または流動床乾燥することによって、得られる。噴霧乾燥および流動床乾燥についての従来技術の状況はたとえば次の文献に記載されている:K. Masters, Spray Drying Handbook, 5th ed. Longman, Harlow (1991)、およびK.Dewettinck and A. Huyghebaert, Fluidized bed coating in food technology, TrendsFood Sci. Technol. 10, 163-168 (1999) およびそこに含まれている文献。
【0067】
さらに、インナーマトリックスの更なる構成要素が選択されてもよい。本発明の利点の一つはインナーマトリックスの更なる構成要素に関しての高い融通性と多様性である。この高い多様性はインナーマトリックスに添加されてもよい可能な分子または機能のリストに反映されている。
【0068】
従って、更なる構成要素は「フィルアップ(fill-up)」または「賦形剤(filler)」構成要素として考えられてもよく、そしてそれらの選択は殆ど恣意的でありそして自由に選択される資格がある。微生物が更なる構成成分たとえば担体材料または保護剤と既に混合されている場合には、更なる構成要素が選択されてはならないことさえ可能ではある。
【0069】
一般に、インナーマトリックスの更なる構成要素が選択される場合には、高い吸湿容量(hygrocapacity)をもつ物質は一般に、コーテッドペレットの内部水分活性(internal water activity)の増加を遅延させる能力に関して有利である。ペレットのインナーマトリックスによって水が吸収されるとしても、インナーマトリックスの高い湿気吸収容量のせいで水分活性は比較的低いままである。
【0070】
好ましくは、インナーマトリックスの更なる構成要素はインナーマトリックスの圧縮が可能である仕方で選択されてもよい。一般に、これは適する結合剤および/または可塑剤によって達成されてもよい。
【0071】
便宜上、およびインナーマトリックスの更なる構成要素の選択における高い多様性または選抜に照らして混乱を回避するために、これらは例示的に賦形剤、機能性構成成分、潤滑剤、可塑剤および結合剤として論じてある。これらクラスは完全に異なる構成成分をカバーしているのではなく、実質的に重なり合ってさえいることが理解される。たとえば、いくつかの可塑剤は結合剤として作用するかもしれないし、又は賦形剤はたとえば繊維質のような機能性構成成分を含んでいてもよい。
【0072】
体積を増やす助けにもなる賦形剤は、澱粉;耐性澱粉、低分子量の糖類、たとえば、乳糖、麦芽糖、ショ糖、および/またはマンニトール、微結晶質セルロース、変性澱粉、たとえば、アミロデキストリン水素オクテニルブタンジオエート;および/またはスターチn−オクテニルスクシネート、蛋白質、たとえば、ミルク−、エンドウ豆−、大豆−、獣肉−、家禽肉−、グルテン−蛋白質、ヒドロコロイド類、製粉した穀物類、乾燥し微粉砕した野菜、動物性ミール(animal meal)、粉乳(milk powder)、ココアパウダー、微粉砕ビスケット、またはそれらの混合物を含む群から選ばれてもよい。
【0073】
機能性構成成分は本発明によるペレットまたは送達システムに更なる利益を付与するために選択されてもよい。それらは、プロバイオティックスを別にして、たとえば、プレバイオティック繊維質類、たとえば、フルクト−オリゴ糖類(fructo-oligosaccharides)(FOS)、ポリフルクトース類、たとえば、イヌリン(inulin)またはレバン(levan)、耐性澱粉類、たとえば、老化澱粉(retrograded starch)、デキストラン類、アラビノガラクタン類(arabinogalactans)、たとえば、アカシアガム、ガラクトマンナン類(galactomannans)、たとえば、グアー、ガラクトオリゴ糖類、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、マルトデキストリン類、およびそれらの混合物を含んでもよい。
【0074】
繊維質は可溶性と不溶性の繊維質に区別されてもよい。可溶性繊維質の例はイヌリン、ペクチン、6−グルカン類(小さなセルロースタイプの枝分れグルコースポリマー類)、アラビアガム、トラガント(tragacanth)、粘液質類(mucilages)、グアーおよびローカストビーンガム(locust bean gum)、寒天、カラジーナン類(carageenans)、アルギネート類、キサンタンなどを含む。これら可溶性繊維質の殆どはたいてい発酵性である。不溶性繊維質の例はセルロース(たとえば、オート麦外皮、大豆類、穀物ヌカから誘導された)およびヘミセルロース(大抵は枝分れしたアラビノ−キシラン類(arabino-xylans)またはガラクタン類(galactans)、たとえば、穀類、ジャガイモまたは大豆からの)を含む。これら不溶性繊維質の殆どは部分発酵性または非発酵性である。
【0075】
機能性構成成分は微量元素、ミネラル、ビタミン、抗酸化物質、ステロール、抗酸化物質、脂肪酸、蛋白質たとえば酵素、および/またはその他の機能性分子を含んでもよい。
【0076】
ビタミンおよび/または抗酸化物質の例はカロテノイド、たとえば、リコペン、α−、β−またはγ−カロチン、キサントフィル類、ビタミンA1、ビタミンA2、トコフェロール類、たとえば、ビタミンE、ビタミンC、およびそれらの混合物を含む群から選ばれてもよい。
【0077】
脂肪酸の例は、たとえば、長鎖、中鎖の飽和または不飽和の、モノ−、ジ−またはトリ−アシルグリセロール類、およびそれらの混合物を含む群から選ばれてもよい。
【0078】
酵素の例は、たとえば、プロテアーゼ、ペプチターゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、およびそれらのカクテルを含む群から選ばれてもよい。
【0079】
その他の機能性分子は、たとえば、バクテリオシン類(bacteriocins)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、大豆イソフラボン類、ヌクレオチド類、ヌクレオシド類、イソチオシアネート類、アブラナ科のエキス類(cruciferous extracts)、たとえば、ブロッコリから、スルフロラファン(sulfloraphane)、およびそれらの混合物の群から選ばれてもよい。
【0080】
その他の機能を有する構成成分または分子がインナーマトリックスに添加されてもよい。これら構成成分または分子は腸管機能を向上させ、皮膚無欠性を維持し又は向上させ、皮膚損傷(たとえば、UVで誘発される)およびストレス応答を防止し、外被(coat)状態を改善し、感染を予防し、口腔健康を維持または改善し、視力を向上させ及び/又は維持し、アレルギーを予防し、免疫機能を調整し、肥満を予防し、体重コントロールを与え、糖尿病および/または動脈硬化症の危険性を低下させ、血液および組織の中のトリグリセリドをコントロールし、栄養吸収を向上させ、脳発育を改善し、そして認識機能を向上させ及び/又は維持し、血管疾病たとえば心臓発作またはショックを予防してもよい。
【0081】
加えて又は代わりに、腎臓、肝臓および膵臓機能を維持および改善し、関節の健康を改善し、関節炎を予防し、成長中の骨発育を改善し、成年時代における骨質量の維持を改善し又は向上させ、食物からのミネラル(たとえばカルシウム)およびビタミンの吸収および利用を増大させ、骨粗鬆症を予防および/または遅くし、筋肉の成長、性能および/または回復を改善し、抗炎症性を有し、呼吸を改善し、免疫機能を向上させ、抗病原活性および抑制活性を有する、構成成分または分子が与えられてもよい。
【0082】
インナーマトリックスの構成要素の圧縮特性を改良するために必要ならば、インナーマトリックスの構成要素に結合剤および/または可塑剤が添加されてもよい。しかしながら、更なる構成要素および/または微生物はそれら自体が圧縮を可能にするように十分に「粘着性」または接着性であってもよい。この場合には、特別の「結合用構成要素」は省略されてもよい。しかしながら、圧縮によるペレットの形成を支援するために一つまたは幾つかの結合剤および/または可塑剤が添加される場合には、好ましくは食品級の構成成分が使用される。
【0083】
可塑剤の例はポリオール類(たとえば、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール)、アルコール類(たとえば、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ブタンジオール)を含む群から選ばれてもよい。
【0084】
結合剤の例は、たとえば、澱粉類(天然澱粉、蝋質トウモロコシ澱粉、水解澱粉、マルトデキストリン、α化澱粉(pregelatinized starch))、ポリフルクトース類(チコリ粉、イヌリン)、ヒドロコロイド類、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む群から選ばれてもよい。
【0085】
潤滑剤は、タブレット、ペレットまたは練り固め物を成形するための型からのペレットの離型を、ペレットと成形用型および関連するならば打錠用パンチとの間の摩擦を減少させることによって、促進する目的を果たすであろう。さらに、それらはホッパーの中での及びタブレット成形用またはペレット成形用の型の中でのペレットプレミックスの流動を促進してもよい。潤滑剤の例はステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸誘導体、タルク、ポリエチレングリコール、界面活性剤およびワックスを含む群から選ばれてもよい。
【0086】
本発明の目的は食品にペレットを添加することであるので、インナーマトリックスがペレットを添加される食品の一つ又は幾つか又は全ての構成要素を含んでいてもよいということは顕著な利点である。
【0087】
例えば、ペレットをペットフードに添加すべき場合には、インナーマトリックスはペレットを添加されるペットフードによって部分的に又は全体的に支給されてもよい。従って、ペットフードを調理済み又は未調理どちらかの状態でまさに微粉砕しそして/または乾燥してそうしてペレットのインナーマトリックスの一部(たとえば、賦形剤)として使用してもよい。
【0088】
従って、ペレットが朝食用穀類に添加される場合には、インナーマトリックスは穀類を含んでもよい。ペレットが例えばチップとしてスナック添加される場合には、インナーマトリックスはチップ製造に使用されるジャガイモ澱粉またはその他の構成成分たとえばフレーバーを含んでもよい。
【0089】
また、インナーマトリックスの圧縮された構成要素を被覆するモイスチャーバリアが選ばれてもよい。主に、撥水性または水不浸透性を有するいずれの食品級物質が選ばれてもよい。通常、当業者は適するモイスチャーバリアの一つまたは混合物を選択することを手に入れることができる。それでも、例示のための下記のリストが与えられており、そこから少なくとも一つまたは混合物が選択されてもよい。
【0090】
ゆえに、適するモイスチャーバリアは次のものであってもよい:たとえば、ワックス(パラフィンワックス、蜜蝋(ホワイトおよびイエロー)、カルナバ蝋、カンデリラ蝋、微結晶ワックス、コメヌカワックス、セチルエステルワックス、シェラック(shellac)、乳化用ワックス、ラノリン、水素化ヒマシ油、ホホバ油(jojoba oil))、脂肪酸(たとえば、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸)およびそれらの塩(たとえば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム);脂肪酸誘導体(たとえば、セチルパルミテート、アセチック、ラクチック、シトリックおよびタータリック−モノおよびジグリセリド脂肪酸、ラウリル硫酸ナトリウム)、脂肪酸のエステル(たとえば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル)、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド(たとえば、MCTオイル、ヤシ/パーム核油に基づくトリグリセリド)、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの誘導体(たとえば、脂肪酸のポリグリセリックエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、植物性のオイルおよび脂肪(たとえば、ナタネ、ゴマ、トウモロコシ、ナッツ、綿実、落花生、ヒマワリ、アマニ、オリーブ、大豆、カカオバター)、水素化または枝分れした植物性のオイルおよび脂肪、分別された植物性のオイルおよび脂肪、動物起源のオイルおよび脂肪(たとえば、牛、家禽、豚、羊;たとえば、ビーフタロウ(beef tallow)、ラード)、動物起源の水素化または硬化されたオイルおよび脂肪、動物起源の分別されたオイルおよび脂肪、乳脂肪(dairy fats)(たとえば、乳脂(milkfat)、分別された乳脂、バター脂)、蛋白質(たとえば、グルテン、ゼイン(zein)、カゼイン酸ナトリウムおよびカルシウム)、リン脂質(たとえば、レシチン)、炭水化物(たとえば、セルロースおよびセルロース誘導体(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、ヒドロキシプロピル化澱粉、カラジーナン)、ソルビタンエステル(たとえば、モノ−オレエート、−パルミテート、−ステアレート、トリオレエート)、ミネラルオイルおよび脂肪(たとえば、パラフィン)、チョコレートポリビニルアルコール、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(乳酸)、医薬品用グレーズ(glaze)、ラテックス、メタクリル酸コポリマー、ポロキサマー(poloxamer)、ポリオキシエチレン誘導体、トコフェロール、ステロール、カロテノイド、ジメチコン、脂肪酸のショ糖エステルおよびスクログリセリド。
【0091】
好ましい態様においては、モイスチャーバリアは脂質系コーティングである。
【0092】
上記の構成成分の混合物およびラミネートはたとえば次のものを含む:カゼイン−アセチル化モノグリセリド、ステアリン酸、蜜蝋;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ゼイン−脂肪酸アミロースエステル;ゼイン、卵白、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白−植物性オイル;ニトロセルロース−ワックス;ゼイン/植物性ワックス−オイルラミネート。
【0093】
微生物と、インナーマトリックスの更なる構成要素を選択した後の、ペレット製造はいずれの適するやり方で行われてもよい。タブレット圧縮の技術と素材の科学の最近の技術状態のレビューは次の文献に示されている:“Phermaceutical Powder CompactionTechnology”, Alderborn G and Nystroem C, eds, Marcel Dekker, New York (1996)。
【0094】
ペレット製造の幾つかの主な工程は通常、「混合、乾燥、圧縮およびコーティング」の諸工程を含んでもよい。これら工程の順序は常識に対応する仕方で変更されてもよい。たとえば、上記順序は「混合、圧縮、乾燥およびコーティング」に変更されてもよい。
【0095】
変型としては、湿っている賦形剤、場合によっては結合剤または機能性構成成分をプロバイオティックスの他に含むインナーマトリックスの構成成分を混合しそして圧縮してもよく、それによって、比較的高い含水量が圧縮を支援する。その後で、この圧縮ペレットを乾燥し、そして被覆する。
【0096】
これら工程の大部分、たとえば、「混合」および「乾燥」は、たとえば、「構成成分の幾つかだけを混合し、それらを乾燥し、この混合物に他の構成成分を添加し、圧縮し、再び乾燥し、そして被覆する」ように更に分割されてもよい。
【0097】
以上説明した通り、本発明によるペレットの製造は非常に融通性がある。しかしながら、圧縮済みインナーマトリックスを被覆する直前または被覆する瞬間には、インナーマトリックスが比較的低い水分活性(a)、たとえば、0.3未満の、好ましくは0.2未満の、より好ましくは0.15未満のaを有していることが好ましい。
【0098】
たとえば、微生物と更なる構成要素とのドライミックスは全ての構成要素を混合することによって調製される。それから、このミックスは0.3未満の、好ましくは0.2未満の、より好ましくは0.15未満の、そして最も好ましくは0.1以下のaに乾燥されてもよい。可能性のある乾燥装置は少し挙げるとすると、熱対流炉、ベルト乾燥器、減圧乾燥器、流動床乾燥器、回転乾燥器を含む。
【0099】
ペレットを得る方法における乾燥の時期は臨界的ではない。たとえば、僅かに湿った構成要素をもって圧縮がより容易であるのであれば、乾燥は圧縮のあとに行われてもよい。しかしながら、上記に指示されたa値は、この低いa値がコーテッドペレットの内部で維持されるためには、好ましくはコーティング前に達成されている。
【0100】
インナーマトリックスのプレミックスに添加される生存細胞(viable cells)(cfu)の数は1日当りの意図したペレット消費量に依存し、それは転じてペレットのサイズおよび/または食品に添加されるペレットの数に依存する。更なる変数は幾つか挙げるならば、ペレットが最終的に食品の中で有するであろう密度または存在量、乾燥形態での微生物の濃度、食品の給与サイズ(serving size)である。
【0101】
当業者はプロバイオティックスの1日量が消費されるということを意識することによって混合物に添加されるべきcfuの数を算出する。
【0102】
1個のペレットが丸1日分の全プロバイオティックスを含むことを意図されている場合には、又は1個のペレット以外にプロバイオティックスを含む他の食事を消費することが意図されていない場合には、該ペレットは好ましくは1日量のプロバイオティックスを含む。この場合には、1個のペレットが約10〜1014の、好ましくは10〜1013の、より好ましくは10〜1011のcfu/日を含む。
【0103】
代わりに、ペレットの予想される1日の消費が2〜10ペレット/日を構成するならば、ペレット1個当りのcfuの上記範囲は対応する数で分割されてもよい。
【0104】
望ましくは、添加される微生物の量は、有効量の微生物はペレットが添加されるであろう個々の食品の1給与または2給与または場合によっては3給与を消費することによって消費されるであろうというやり方で、算出される。
【0105】
結合剤、潤滑剤および/または可塑剤が使用される場合には、それは上記のリストから選択されてもよい。たとえば、グリセロールはインナーマトリックス構成要素の表面およびプロバイオティックス製剤の上に、インナーマトリックスの総重量として算出された0.15〜20%の範囲で、好ましくは0.5〜10%の範囲で、吹きつけられてもよい。
【0106】
任意に結合剤、潤滑剤および/または可塑剤を添加し(乾燥工程の前にプレミックスに既に添加してもよい)、得られたミックスをたとえば十分な圧縮圧力で圧縮してもよい。非常に高い圧力、たとえば、実質的に10’000バールを超す圧力は微生物が破壊されるかも知れないので避けるべきであるということが通常考えられるであろう。しかしながら、(プロバイオティック)細菌はそれらの状態(乾燥されているか、濡れているか、担体上にあるのか)に依存して様々な圧力に耐えるであろう。
【0107】
圧縮圧力の下限はインナーマトリックスの「圧縮」特性に依存する。一般原則としては、圧縮圧力はペレットの妥当なコンシステンシーおよび/または安定性が圧縮によって得られるという判定基準に従って調節されてもよい。
【0108】
上限は主として限定されていないが、食品が噛み砕かれることを意図している場合には、圧縮圧力は好ましくは、圧縮ペレットが硬過ぎて歯の損傷を避けられないということにならないように選択される。
【0109】
圧縮圧力が広い範囲から選ばれてもよいということの他に、圧力は100〜10’000バール、好ましくは200〜9000バール、そしてより好ましくは300〜8000バールの範囲にあることが判明した。たとえば、圧縮は600〜8000バールの範囲の圧力で行われてもよい。上記圧力は微生物の状態に強く依存する。それらがまだ湿っている場合には、4500バールを超す圧力はそれらを破壊するかも知れない。しかしながら、プロバイオティックスが胞子の形態にある場合には、それよりはるかに高い圧力が適用されてもよい。
【0110】
圧縮はいずれか適する圧縮装置によって達成されてもよい。その例は、たとえば、回転式タブレット成形機、偏心式タブレット成形機、シングルおよびダブルパンチ式タブレット成形機、単層および多層タブレット成形機、練固め用ミル、ペレットミルである。
【0111】
ペレットは上記通りの体積を有していてもよく、そしていずれか適する妥当な又は所望の形態を有していてもよい。たとえば、それらは球体、立方体、角錐、タブレット、またはいずれか古典的な又は変形された又は複雑な三次元形状の形態を有していてもよい。さらに、それらはペレットが添加される食品に相応する形態を有していてもよい。たとえば、ペレットがイヌ用ペットフードに添加される場合には、それらは骨、動物、ネコ、または食品とよく合致するその他形態の形状を有していてもよい。
【0112】
微生物を伴う構成要素に依存して、混合物を圧縮するための一般的方法は自由に改造、追加および調節されてもよい。
【0113】
圧縮されたマトリックスのaが十分に低い(上記に与えられた値を参照)ところまでいっていない場合には、後続のコーティング工程の前に乾燥工程が導入されるべきである(上記を参照)。
【0114】
次いで、インナーマトリックスを含む圧縮済みペレットは食品の保存寿命中の後からの吸湿の有害な影響から微生物を防護するために被覆されてもよい。コーティングはいずれか適するコーティング技術、幾つか挙げるとすると、たとえば、スプレー、溶融または溶剤塗布装置、流動床コーター、ドラムコーターまたはパンコーターによって行われてもよい。ペレットはモイスチャーバリアで被覆されてもよく、モイスチャーバリアは好ましくは、先に例示したように食品級である。
【0115】
好ましくは、コーティングの量は未コートのペレットの2〜30%、好ましくは5〜20%、より好ましくは8〜18%を与えてもよい。
【0116】
本発明のためには、上記コーティング過程が1段階または多段階どちらで行うこともできるということ、及び、用語「モイスチャーバリア」が前記バリア特性をもった一つの化合物もしくは化合物の混合物の単層または一つ以上の化合物の多層どちらをも称しているということが理解される。
【0117】
コーティングと、インナーマトリックスの構成要素の殆どまたは全ての乾燥と、圧縮のせいで、ペレットの低いaは長期間にわたって維持されるのであろう。
【0118】
その後、本発明のペレットの十分な量をもって食品にプロバイオティックスが補われる。食品はペレットのaよりも有意に高い湿分を有していてもよい。たとえば、≧0.2、≧0.4、≧0.5、または≧0.6のaをもつ食品にペレットが添加されても、長い保存期間にわたって驚くほど高い生存率が達成される。
【0119】
食品はプロバイオティックスの有益な作用を付加されることを望んでいるいずれの食品であってもよい。たとえば、それはトリート(treat)を含めてペットフードであってもよい。しかしながら、それはどの動物用に意図されたどの食品であってもよい。たとえば、食品は粒子状の食品または食品構成成分、たとえば、或る種の半乾燥ペットフーズ、朝食用穀類、朝食用−フレーク類、−クリスプ類(crisps)、−パフ類(puffs)、スナック類、チップ類、ディップ類(dips)、ビスケット類、キャンディ類、菓子類、チョコレート、バー類(bars)、ミュースリ(muesli)、タブレットまたはペレット形態のインスタント飲料、ブイヨンキューブ、タブレットまたはペレット形態のインスタントスープおよびソース、リップ用化粧品、であってもよい。勿論、食品はたとえば圧縮された粒子状構成成分からなる或る種のバー類のような粒子状構成成分をもって製造されている食品であってもよい。
【0120】
上記に提案されている通り、食品に添加される予定のペレットの数/重量は幾つかの因子、なかでも、(I)ペレットのcfu/g、(II)食品の給与サイズ、および(III)「有効用量」すなわち所期効果を得るために好ましくは消費されるcfuの量、に依存する。多くの動物に関して多くのプロバイオティックスの有効な1日量は1日および個体当り10〜1010cfuの範囲にあり、たとえば、10〜10cfuである。
【0121】
たとえば、ペレットは排他的に使用されてもよい、すなわち、ペレットが食品全体たとえばトリートまたはサプリメントを形成していてもよい。粒子状ペットフードの場合には、これはフードの全ての粒子が本発明によるペレットによって構成されていることを意味するのである。
【0122】
別の例においては、ペレットは食品に1〜70%の量で、好ましくは3〜50%、より好ましくは5〜30%、そして最も好ましくは8〜20%の量で食品に添加されてもよい。これらパーセントはたとえばペットフードあらびき穀物粒(pet food kibbles)のような粒子の重量または数によるものであってもよい。
【0123】
下記の実施例は単に本発明を例証するつもりで与えられており、本発明の主要事項を制限するものとして解釈されるべきでない。本発明の要旨はペレットのインナーマトリックスを形成するのに非限定的な多様な食品構成成分を使用できることにあるということをここに繰り返して主張する。パーセントおよび部数は別に指示されていない限り重量による。
【実施例】
【0124】
実施例1 ペットフード用ペレットの製造
ペレットは粉末マトリックスの圧縮によって製造され、そして高いモイスチャーバリアを与える食品級構成要素で被覆される。全体の混合物はチコリ粉と、マルトデキストリン(DE2−6)と、フリスキーズ・バイタリティ(FRISKIES Vitality)(登録商標)、商業的に入手可能であるイヌ用半湿りペットフード、食品級結合剤と、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)菌株の乾燥細菌製剤を含む。
【0125】
まず、プレミックスを、チコリ粉(プレミックスの50%)と粉末フリスキーズ・バイタリティ(登録商標)(プレミックスの25%)から調製した。このプレミックスを熱対流炉の中でゼロに近い水分活性(a<0.01)に乾燥し、そして湿りマルトデキストリン(約0.3のa、プレミックスの25%)を混入させてプレミックスを完成させた。
【0126】
このプレミックス粉末の表面上にグリセロール(プレミックスの重量の3%)を吹き付けて粉末粒子の表面を可塑化した。
【0127】
細菌製剤の添加によって、混合物を完成させた。
【0128】
この混合物を、実験室用のシングルパンチ油圧プレス機(ベックマン(Beckmann)PT16)によって、わずかに凸状の上面と底面をもった円筒状ペレット(直径1cm、高さ約1cm)に圧縮した。圧縮圧力は3トン/cmであった。このペレットの水分活性は25℃で0.084であった。
【0129】
半分のペレットを脂肪系モイスチャーバリア(ウィトカン(Witocan)42/44パスチレン(pastillen)、コーンデア(Condea)、フランス)によって被覆した。コーティング層はペッレトをバリア材料の溶融体(温度約50℃)の中に浸漬することによって適用された。コーティングの総量は未被覆ペレットの約15%であった。
【0130】
コーテッドペレットの概略図が図1に示されている。
【0131】
実施例2 湿度への曝露後の微生物回収
約5×10E+10cfu/gを含んでいる、セルビオス−ファルマ(Cerbios-Pharma)社(ルガーノ(Lugano)、スイス)から得たマイクロカプセル化されたエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)NCIMB10415(LBC−ME10として商品化されている)の安定性と、実施例1によるコーテッドペレットの安定性を比較した。このマイクロカプセル剤は、ショ糖コアの上にプロバイオティック菌株を含み、次いでそれが、はっきりしない物質(食品級モイスチャーバリア)の数層で被覆されたものであり、このマイクロカプセル剤を得る方法は一般には知られていない。このマイクロカプセル剤は半湿り環境中で長期間存続することが知られており、そして市場で現在入手できる最良の製品であると考えられる。
【0132】
従って、実施例1によるコーテッドペレットとマイクロカプセル化されたエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)NCIMB10415は60日間にわたって30℃および湿り環境(相対湿度70%)に曝された。様々な時間間隔の後に、サンプルを採取し、そしてペレットの中に及びマイクロカプセルの中に含有されたエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)NCIMB10415の生菌数(viable cell counts)を測定した。
【0133】
図2には、両サンプルの中のエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)SF68の回収率(生菌数の%で)が示されている。
【0134】
明らかに、圧縮ペレットは市販のマイクロカプセル剤よりも良好な性能であった。特に、20日の貯蔵後にはそうであった。市販の製品においては回収率が絶えず大幅に減少し続けたのに、本発明によるペレットでは微生物の回収率の低下は著しく遅い。
【0135】
実施例3 インナーマトリックス構成要素とコーティングと微生物を変動させることによる様々なペレットの製造
本発明によるペレットは、インナーマトリックス構成要素、コーティングおよび細菌の菌株を変更することによって、製造された。
【0136】
(ペレットの中に使用された細菌の菌株)
1.マイクロカプセル化されたエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)NCIMB10415(LBC−ME10として商品化されたもの)。*
2.ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)(CNCM−1225)、凍結乾燥されたもの、15%の非晶質炭水化物を含有。
3.ビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)(DSM20215)、噴霧乾燥されたもの。**
4.エス.ボウラルディイ(S. boulardii)SB20、レビュセル(Levucell)SB20として市販されたもの。**
*スイスのルガーノ(Lugano)のセルビオ−ファルマ(Cerbio-Pharma)から得た。
**デンマークのクリスチャン・ハンセン・バイオシステムズ(CristianHansen BioSystems)A/B(CHL)(10-12 Boge Alle, P. O. Box 407, DK-2970 Horsholm)から得た。
【0137】
(インナーマトリックス組成とペレット製造)
マトリックス1
A.商業的に入手可能なチコリ粉(50重量%)、B.バイタリティ(登録商標)(25%、実施例1参照)、C.マルトデキストリンDE3(25%)(セレスター(Crestar)、フランス)。構成要素AとBをオーブンで水分活性<0.1に乾燥する。スプレーノズルを使用して、グリセロール(1〜5重量%)を、グリセロールの均質分散を確保するために乾燥粉末をドラムブレンダーの中で攪拌しながら、吹きつける。構成要素Cを通常の湿分レベル(0.25<a<0.5)で添加する。細菌製剤を添加する(通常、マトリックス全体に対して0.1〜5重量%、ペレットの中の最終用量10CFU/g)。この混合物を0.5トン/cmの圧力で、実施例1に示した方法に従って圧縮する。
【0138】
マトリックス2
セレスターDC93000直接圧縮可能澱粉(セレスター、フランス)
澱粉をaw<0.15に乾燥する。この乾燥粉末をドラムブレンダーの中で攪拌しながら、高圧ノズルを使用してグリセロール(1〜5重量%)を吹きつける。細菌製剤を添加する(通常、マトリックス全体に対して0.1〜5重量%、ペレットの中の最終用量10CFU/g)。細菌培養株の添加後に、混合物を圧縮圧力<0.5トン/cmで圧縮する。
【0139】
マトリックス3
乳糖(50重量%)(ファルマトース(Pharmatose)DCL15、DMVインターナショナル、オランダ)、マルトデキストリンDE12(50重量%)(セレスター、フランス)。
マルトデキストリンをaw<0.15に乾燥し、そこに乳糖を混入させる。細菌製剤を導入(通常、マトリックス全体に対して0.1〜5重量%、ペレットの中の最終用量10CFU/g)した後に、混合物を圧縮する(グリセロール1〜2重量%の添加に相当)。
【0140】
(ペレットのコーティング)
コーティング1:ウィトカン(Witocan)42/44(実施例1参照)(脂質系コーティング)
コーティング2:セピフィルム(Sepifilm)LP010(セピック(Seppic)、フランス)
【0141】
コーティングはグラット(Glatt)GPGC−3コーターを使用しての、ペレットの流動床コーティングによって適用される。セピフィルムは15%水溶液として、あらびき穀物素材(kibble mass)上のセピフィルムの総量=7〜15%で適用される。スプレー圧は1.5バール、乾燥温度は50℃、コーティングと乾燥の時間は45〜90分。
【0142】
(結果および結論)
約30〜60日の貯蔵期間後の最もよい回収は細菌の菌株が粒子状形態で存在したときに得られた。脆い細菌培養株、たとえば、炭水化物の添加なしで凍結乾燥された製剤、の使用は、高い圧縮圧力(>4トン/cm)で圧縮されたあらびき穀物の中に適用されたときには生存率の大幅な減損が観察されたのであまり推奨されない。顆粒状製剤、たとえば、有意量の炭水化物を噴霧乾燥細菌製剤の中に含有しているもの、は非常によく作用する。
【0143】
一般に、全てのインナーマトリックスは同じようにうまく作用して、インナーマトリックスの構成要素の選択について可能な高度の多様性が確認された。モイスチャーバリアに関しては、最良の結果が脂肪系モイスチャーバリアによって得られたが、他のタイプのモイスチャーバリアも満足な結果を与える。
【0144】
コーティングは適切に適用される必要がある。コーティングの中のなんらかの亀裂または構造的欠陥はキブルによる急速な吸湿と、それに付随して貯蔵中の微生物生存率の大幅な減損を導くので、コーティングの品質と完全な状態(integrity)を保証することは非常に重要なことである。
【符号の説明】
【0145】
1 ペレット
2 インナーマトリックス
3 プロバイオティックス
4 モイスチャーバリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮インナーマトリックスと少なくとも一つのコーティングを含むペレットであって、インナーマトリックスが生存微生物を含み、そしてコーティングがモイスチャーバリアを含み、ペレットが少なくとも0.02cmの体積を有することを特徴とする、前記ペレット。
【請求項2】
コーティング前の又は後間もなくのインナーマトリックスが0.3未満の水分活性を特徴とする、請求項1のペレット。
【請求項3】
インナーマトリックスが0.8g/cmより大きいエンベロープ密度を有する、請求項1のペレット。
【請求項4】
10〜1014の生存微生物を含む、請求項1のペレット。
【請求項5】
インナーマトリックスがさらに、賦形剤、機能性構成成分、潤滑剤、可塑剤、食品級結合剤、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた少なくとも一つの構成要素を含む、請求項1のペレット。
【請求項6】
インナーマトリックスがさらに、消化性澱粉、耐性澱粉、その他の繊維質、製粉した穀物、乾燥し微粉砕した野菜、セルロースおよびセルロース誘導体、ペットフード、マルトデキストリン、チコリ粉、蛋白質単離体、酵母エキス、およびそれらの混合物からなる群から選ばれた構成成分を含む、請求項1のペレット。
【請求項7】
コーティングが食品級モイスチャーバリアを含む、請求項1のペレット。
【請求項8】
ペレットが請求項1〜7のいずれか一項のペレットであり、そしてペレットのインナーマトリックスが後記の食品の少なくとも一つの構成要素を含んでいる、食品の中のペレット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項のペレットを含む、プロバイオティックスの送達システム。
【請求項10】
湿り食品、半湿り食品または半乾燥食品の中のプロバイオティックスの送達システムとしての、請求項1〜8のいずれか一項のペレットの使用。
【請求項11】
生存微生物を食品に補うためのペレットを得る方法であって、微生物の調製物と更なる構成要素を混合し、この混合物を0.3未満のaに乾燥し、この混合物を圧力下で圧縮して少なくとも0.02cmの体積を含むペレットを得、そしてペレットをモイスチャーバリアで被覆する諸工程を含む、前記方法。
【請求項12】
更なる構成要素が食品の構成成分の少なくとも一部を含む、請求項12の方法。
【請求項13】
食品とペレットのインナーマトリックスとが少なくとも一つの構成要素、構成成分または成分を分け合っている、請求項1〜7のいずれか一項のペレットを含む食品。
【請求項14】
一方が請求項1〜8のいずれか一項のプロバイオティックペレットである少なくとも2つのタイプの粒子の混合物からなる粒子状の食品、食品添加物、サプリメントまたは医薬品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−55832(P2011−55832A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204628(P2010−204628)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2003−573962(P2003−573962)の分割
【原出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【出願人】(590002013)ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】