説明

プロピレンオキサイド製造プロセスの改良

【課題】残留熱がスチーム発生により反応器冷媒から回収され、運転者の注意を必要としない補助冷媒凝縮系により追加のスチームが製造される改善されたプロピレンオキサイド製造プロセスを提供すること。
【解決手段】プロピレンの酸素での接触酸化によるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、a)反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通して、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部をボイラー供給水との熱交換によって凝縮させてスチームを発生させ、それにより蒸気−液体冷媒混合物が生ずる工程と、b)前記第1の冷媒凝縮器からの前記蒸気−液体冷媒混合物を気液分離器に通し、そこから分離された蒸気を少なくとも1つの第2の冷媒凝縮器に通して、そこで蒸気の少なくとも一部をボイラー供給水との熱交換により凝縮させて前記第1の冷媒凝縮器にて発生するスチームより低圧のスチームを発生させる工程とを含む、改良された方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留熱がスチーム発生により反応器冷媒から回収され、運転者の注意を必要としない補助冷媒凝縮系により追加のスチームが製造される改善されたプロピレンオキサイド製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンオキサイド製造プラントは、通常個々のプロピレンオキサイド触媒に対して設計される。改善された触媒がより低い最適操作温度を必要とすると、プラントは改善の利点を充分に利用することができず、プラントの運転に必要充分な中圧または低圧スチームを発生できないことがある。スチームはプロピレンオキサイド製造プラントにおける種々の装置の熱源として利用される。反応器中の運転温度がより低いと、冷媒凝縮器中の冷媒の温度もより低くなり、スチーム発生器中の冷媒と発生スチームの温度差(ΔT)は低下する。冷媒凝縮器の表面積は個々の触媒に対して設計される慣用のプロピレンオキサイド製造プラントでは固定されている。従って、発生する中圧スチームの量は、ΔTの低下に伴って減少する。
プラント設計段階にて対象とした触媒より低い最適運転温度を有する触媒を用いる場合、スチーム発生器を追加する費用を避けるためには、冷媒温度を充分な中圧スチームを発生させるに足るΔTを提供する温度に上げるために、反応器を最適運転温度より高い温度で運転しなければならなくなる。反応が触媒の最適温度で操作されないため、選択率の低下速度が速く、結局、触媒寿命の後期にプロピレンオキサイド製造量を低下させることになる。
【0003】
エチレンオキサイドの製造に関して、以下の関連技術が知られている。
US4074660には、シェルが2つのセクションに分けられている連続管を有するシェル・アンド・チュープ熱交換器中で高温度反応流出物を冷却することにより、それからの熱回収を増大させる該流出物の冷却方法が記載されている。第1のセクションにおいて、流出物は中圧スチームを発生する圧力で水により冷却される。第2のセクションにおいて、流出物は低圧スチームを発生するか、または蒸発無しに単に予熱を行なう圧力で水により冷却される。この系はスチレン製造用エチルベンゼン脱水素反応器からの流出物のような高温度流出物からの廃熱回収に使用するために記載されている。該流出物の温度は少なくとも約260℃、一般には約316℃〜約1093℃のオーダーである。該特許は冷媒凝縮器を備えた現在の慣用のエチレンオキサイド製造プラント中で充分なスチームを発生させつつ、260℃より低い温度の冷媒から熱を回収する問題を解決していない。
EP139601には、水蒸気蒸留とそれに続く直列に連結された熱交換器での多段階凝縮によるエチレンオキサイド溶液の凝縮方法が記載されている。そこに記載された熱交換器はエチレンオキサイド反応器用冷媒からスチームを発生させるためではなく、エチレンオキサイド溶液の凝縮のために設計されている。
【0004】
特許文献1には、残留熱がスチーム発生により反応器冷媒から回収され、運転者の注意を必要としない補助冷媒凝縮系により追加のスチームが製造される改善されたエチレンオキサイドの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−149778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、残留熱がスチーム発生により反応器冷媒から回収され、運転者の注意を必要としない補助冷媒凝縮系により追加のスチームが製造される改善されたプロピレンオキサイド製造プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため検討した結果、以下に示す本発明を完成した。
[1] プロピレンの酸素での接触酸化によるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、
a)反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通して、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部をボイラー供給水との熱交換によって凝縮させてスチームを発生させ、それにより蒸気−液体冷媒混合物が生ずる工程と、
b)前記第1の冷媒凝縮器からの前記蒸気−液体冷媒混合物を気液分離器に通し、そこから分離された蒸気を少なくとも1つの第2の冷媒凝縮器に通して、そこで蒸気の少なくとも一部をボイラー供給水との熱交換により凝縮させて前記第1の冷媒凝縮器にて発生するスチームより低圧のスチームを発生させる工程とを含む、
改良された方法。
【0008】
[2] 前記反応器が(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒で充填される[1]記載の方法。
[3] 前記気液分離器から液体冷媒がUトラップを経て冷媒サージタンクに流れ、
該Uトラップは冷媒蒸気が第2の冷媒凝縮器へ流れるに充分な高さを有し、反応が暴走した場合には反応器中の圧力の急速な解放を可能にする、[1]又は[2]記載の方法。
[4] 前記冷媒が、ASTMD86による約156℃初留点〜174℃終点の蒸留範囲を有するパラフィン炭化水素である、[1]〜[3]のいずれか記載の方法。
[5] 前記気液分離器がサイクロンを含む、[1]〜[4]のいずれか記載の方法。
【0009】
[6] (a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を使用してプロピレンを酸素で接触酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通す工程、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部がボイラー供給水との熱交換によって凝縮してスチームが発生する工程、およびそれによって液体−蒸気冷媒混合物が生ずる工程を含むプロセスによって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、
前記第1の冷媒凝縮器から出る蒸気−液体混合物を気液分離器に通す工程、それによって液体冷媒を蒸気冷媒から分離し、Uトラップを経て少なくとも1つの冷媒サージドラムへ送り、蒸気冷媒を少なくとも1つの第2の冷媒凝縮器へ通す工程、そこで蒸気冷媒がボイラー供給水との熱交換によって凝縮して前記第1の冷媒凝縮器にて発生するものよりも低圧のスチームを発生する工程とを含み、
前記Uトラップは冷媒蒸気が前記第2の冷媒凝縮器へ上向きに流れることを確実にするのに充分な高さを有する、
改良された[2]〜[5]のいずれか記載の方法。
【0010】
[7] (a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を使用してプロピレンを酸素で接触酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通す工程、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部がボイラー供給水との熱交換によって凝縮してスチームが発生する工程、およびそれによって液体−蒸気冷媒混合物が生ずる工程を含むプロセスによって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、
前記第1の冷媒凝縮器から出る蒸気−液体混合物をサイクロン操作気液分離器に通す工程、そこで液体冷媒を蒸気冷媒から分離し、Uトラップを経て少なくとも1つの冷媒サージドラムへ送り、蒸気冷媒を第2の冷媒凝縮器へ通す工程、そこで蒸気冷媒がボイラー供給水との熱交換によって凝縮して前記第1の冷媒凝縮器にて発生するスチームよりも低圧のスチームを発生する工程とを含み、
前記Uトラップは冷媒蒸気が前記第2の冷媒凝縮器へ上向きに流すために充分な高さを有し、反応器が暴走した場合に反応器内の圧力の急速な解放を可能にする、
改良((a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を用いて冷媒からの残余の熱をスチームの形で回収することが設計されたプラントは、その(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒の最適運転温度よりも低い最適運転温度を有する改善された金属触媒を用いても運転することを、本改良は可能にする)された[2]〜[5]のいずれか記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、補助冷媒凝縮装置を設けることで第2の低圧スチームを発生させることができ、またより軽い冷媒への変換を可能にする。追加で発生した低圧スチームは、低い温度でも充分な他のプロセスに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】破線の囲み内に示された本発明の補助冷媒系を有するプロピレンオキサイド冷媒系の概念フロー線図である。
【図2】本発明の重要な面を含む補助冷媒凝縮系を説明する図1内の破線で囲まれたセクションの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明が適用できるプロピレンオキサイドの接触酸化方法としては、例えば、金属酸化物等を含有するような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法等が挙げられる。このような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法については、例えば、WO2011/075458、WO2011/075459、WO2012/005822、WO2012/005823、WO2012/005824、WO2012/005825、WO2012/005831、WO2012/005832、WO2012/005835、WO2012/005837、WO2012/009054、WO2012/009059、WO2012/009058、WO2012/009053、WO2012/009057、WO2012/009055、WO2012/009052、WO2012/009055等に記載されている。その製法において用いる触媒としては、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)及び(q)からなる群から選ばれる少なくとも2種を含む触媒が挙げられる。
(a)銅酸化物
(b)ルテニウム酸化物
(c)マンガン酸化物
(d)ニッケル酸化物
(e)オスミウム酸化物
(f)ゲルマニウム酸化物
(g)クロミウム酸化物
(h)タリウム酸化物
(i)スズ酸化物
(j)ビスマス酸化物
(k)アンチモン酸化物
(l)レニウム酸化物
(m)コバルト酸化物
(n)オスミウム酸化物
(o)ランタノイド酸化物
(p)タングステン酸化物
(q)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分
好ましくは(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒であり、より好ましくは(a)銅酸化物、(b)ルテニウム酸化物及び(q)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分を含有する触媒である。
【0014】
本発明は、プロピレンオキサイド反応器からの冷媒により運ばれる熱からスチームを発生させると同時に該冷媒を冷却するプロセスを改善する。冷媒は反応器から少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通され、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部はボイラー供給水との熱交換により凝縮し、該水は中圧スチームに転換される。第1の冷媒凝縮器から出る蒸気−液体2相流は気液分離器へ流入し、そこで冷媒蒸気は液体冷媒から分離され、該冷媒蒸気は少なくとも1つの第2の冷媒凝縮器に通され、そこで蒸気はボイラー供給水との熱交換により凝縮し、該水は第1の凝縮器により発生するスチームより低い圧力でスチームに転換される。該第1の冷媒凝縮器または第2の冷媒凝縮器の各々は単一の凝縮器であるか、または複数の凝縮器の組み合わせであってもよい。
本発明の好ましい態様においては、該気液分離器から出る液体冷媒は冷媒サージドラムに流入する前に、Uトラップを通る。Uトラップは冷媒蒸気が第2の冷媒凝縮器へ流れるために充分な高さを有し、反応が暴走した場合に反応器内の圧力を急激に解放して装置損傷を生ずる過剰圧力から系を守る。
【0015】
特に、本発明は設計段階にて対象となったものよりも活性が高く、最適運転温度が低い触媒を使用して運転することができ、同時にプラントの効率的な運転に必要なスチーム量を満たす追加(低圧)スチームを発生させるプロピレンオキサイド製造プラントの改良を提供する。慣用のプラントは1個の冷媒凝縮系を使用する。本発明の改良は、低い温度および圧力でプロセスにおいて使用される充分な低圧スチームを提供するために冷媒凝縮装置を追加で設けることに基づく。この2段階のスチーム発生系は、冷媒系の蒸気側の計装を必要とせず、合計スチーム量を増大させることができる。
本発明は最小冷媒温度を8℃も低下させることができ、同時に触媒活性低下速度を1/2倍に減少させ、平均プロピレンオキサイド生産速度を5%増大させることができる。
本発明はまた触媒が劣化し、冷媒温度が上昇するに従い、温度変化を自動的に補償する改善された冷媒凝縮法を提供する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく述べるために、図1および2に基づいて具体的な実施態様を説明する。しかし本発明はこの実施態様のみに本発明の範囲を限定するものでない。なお、図1および2を通じて、同じ参照番号は同じ目的に使用されており、そして本発明を理解する目的に必要ではない、弁、ポンプおよび制御計器等の付属品は(全部は)示されていない。
図1を参照して、プロピレンオキサイド製造反応器1は金属触媒を充填した数千の反応器管を含む大きな固定されたチューブシート熱交換器として構成される。適当な触媒は(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を含む。反応熱はシェル側で冷媒を沸騰させることによって除去され、それによってシェル中に2相混合物を維持する。ISOPAR(登録商標)H(ASTMD86蒸留範囲は174℃初留点〜189℃終点、EXXONにより市販されている)のような燈油に似た炭化水素が冷媒として通常使用される。
【0017】
シェルから出る蒸発した冷媒はその重量の数倍の液体と共に冷媒分離器に流れ、そこで蒸気−液体混合物は分離装置を通過して、液体冷媒が分離され、反応器シェルに戻される。分離された冷媒蒸気5は、その後、第1の冷媒凝縮器7に流れる。
冷媒蒸気は冷媒凝縮器7中でスチームドラム9から循環する水により凝縮される。補充水は流れ6を経て供給される。そこで中圧スチーム10が製造される。このスチームはプロピレンオキサイド製造プラント中の種々の装置部分で熱源として使用される。熱源としてスチームを必要とする装置の例は特開平1−149778のエチレンオキサイド製造法に記載されているようにプロピレンオキサイド放散塔、プロピレンオキサイド精製塔および二酸化炭素放散塔等である。
慣用のプラントでは、冷媒凝縮器7を出る液体冷媒凝縮液および存在すれば非凝縮性物11は冷媒サージドラム14へ流れ、そこで液体冷媒は非凝縮性物から分離される。そこからの管路15および21中の液体冷媒はその後冷媒ポンプ20によって冷媒分離器3および反応器1に戻される。非凝縮性物はベント式凝縮器17へ流れ、そこからの液体冷媒18はサージドラム14へ戻され、非凝縮性蒸気19は排気される。
【0018】
特定の触媒に対して設計された慣用のプロピレンオキサイド製造プラント中の反応器管により高い活性およびより低い最適運転温度を有する改善された触媒が充填された場合、冷媒凝縮器7中の冷媒の温度は、前記特定の触媒での運転温度より低くなる。また、冷媒蒸気5と発生スチーム10との温度差(ΔT)は低下する。特定の触媒に対し設計された慣用のプロピレンオキサイド製造プラントでは凝縮器7の凝縮表面積は固定されているため、発生する中圧スチーム10の量は減少する。スチーム発生器を追加する費用を避けるには、充分なΔTを提供するに足るだけ冷媒温度を高く上げ、それによって充分な中圧スチームを発生させるように、反応器1を改普された触媒の最適運転温度より高い温度で運転しなければならなくなる。反応器が触媒の最適温度で運転されない場合、選択率の低下速度が速く、平均プロピレンオキサイド製造速度は有意に減少する。
【0019】
本発明の改善された方法では、前記第1の冷媒凝縮器7から出る蒸気−液体2相流11はセクション12に配置された補助冷媒凝縮系に通される。
図1中の破線で囲まれたセクション12の拡大図である図2を参照して、蒸気−液体流11は気液分離器22へ流れる。分離された液体冷媒28はUトラップを経て冷媒サージタンク14へ流れ、冷媒蒸気23は第2の冷媒凝縮器24へ通される。そこからの蒸気は低圧スチームドラム26へ流れる。該第2の冷媒凝縮器24からの凝縮液は前記冷媒サージ14へ流れる。
【0020】
気液分離器22は液体冷媒を冷媒蒸気から効果的に分離するいかなる型のノックアウトドラムであってもよい。それは垂直にまたは水平に位置さてよい。それはサイクロン、遠心分離器またはデミスタ付分離器とすることができるが、それらに限定されない。
分離器22中で圧力降下(ΔT)が生ずる。Uトラップ29は冷媒蒸気を該第2の冷媒凝縮器24へ上向に流れさせるに充分な底部32と頂部31の間の高さ(ΔH)を有する。高さ(ΔH)は次の関係により決定される。
ΔH(メートル)=102.09×ΔP÷冷媒の比重
ここで、102.09はヘッド(流れ系中で異なる高さに位置する2点間のポテンシャルの差)のMPaをメートルに変換するための換算係数である。
補助冷媒系12の加入で反応器をより低いそして最適の温度で運転しうる。より少ない中圧スチーム10が発生するが、この方法はより低い温度で充分なプロピレンオキサイド製造プラント中の分別分離装置プロセスの加熱に使用しうる低圧スチーム27を提供する。より低い温度を必要とする分別分離装置の例は、プロピレンオキサイド分散塔、プロピレンオキサイド精製塔および二酸化炭素放散塔等を含む。低圧スチームの補足でプロピレンオキサイド製造プラントの全スチーム必要量を満たすことができる。
【0021】
第1の凝縮器から発生する中圧スチーム10の絶対圧力は典型的には約1.1〜約1.9MPa、好ましくは約1.5〜約1.8MPaである。発生する中圧スチームの対応温度は典型的には185℃〜208℃、好ましくは191℃〜202℃である。
第2の冷媒凝縮器から発生する低圧スチーム27の絶対圧力は典型的には約0.5〜約1.2MPa、好ましくは0.8〜1.1MPaである。発生する低圧スチームの対応温度は典型的には148℃〜185℃、好ましくは148℃〜182℃である。
無改良では、冷媒蒸気が冷媒凝縮器7に入った時凝縮し始める温度である露点温度(DPT)(228℃)は典型的には約221℃〜約231℃であり、従ってそれは充分な中圧スチームを発生させるに充分なΔTを提供するであろう。
本発明の改良では、露点温度は典型的には約204℃〜約221℃に保たれる。
分離器22中のΔPは典型的には約7kPa〜約14kPa、好ましくは約8kPa〜約12kPaである。
Uトラップの高さは典型的には約1.5m〜約5m、好ましくは約2m〜約3mである。
該改良は最小冷媒温度を8℃も下げることをも可能にする。使用冷媒はより低沸点の炭化水素に変えうる。通常、プロピレンオキサイドプラントは冷媒として蒸留範囲が典型的には174℃初留点〜189℃終点(ASTMD86)の燈袖またはバラフイン炭化水素を使用する。本発明の特定の態様では、冷媒はISOPAR(登録商標)G(ASTMD86蒸留範囲は156℃初留点〜174終点:EXXONにより市販されている)に変えられる。
【0022】
触媒は最適温度で運転されるので、選択率の低下速度が遅く、従って平均プロピレンオキサイド製造速度がより高いことを意味する。
前述のように、プロピレンオキサイド製造用触媒は徐々に活性が低下する傾向がある。活性低下は収率低下を伴い、所望のプロピレンオキサイド製造速度を維持するために、冷媒温度および圧力を徐々に上げる必要がある。冷媒温度は、例えば触媒の寿命を通して40℃まで上げなければならないことがある。冷媒蒸気温度が上がると、第1の冷媒凝縮器はますます多くの負荷を与える。補助冷媒凝縮器は次第にスチーム発生が減少し、最後には無負荷になりえる。新鮮な触媒に対する条件から老化した触媒に対する条件へ移行し、凝縮系の運転は自動的で大きな注意は必要でなく、冷媒系蒸気側計器または制御器は不要である。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲で定めた範囲および限定は本発明を特に指摘し、明瞭に請求すると信じられるものである。しかし、実質的に同じ機能を実質的に同じやり方で行なって、同じまたは実質的に同じ結果を得る他の範囲および限定は本明細書および特許請求の範囲により定められた本発明の範囲内にあると意図されることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の方法によって、残留熱がスチーム発生により反応器冷媒から回収され、運転者の注意を必要としない補助冷媒凝縮系により追加のスチームが製造される改善されたプロピレンオキサイド製造プロセスが提供される。
【符号の説明】
【0025】
1:反応器
2:管路
3:冷媒分離器
4:流量調整弁
5:冷媒蒸気
6:ボイラー供給水
7:第1冷媒凝縮器
8:管路
9:スチームドラム
10:中圧スチーム
11:蒸気−液体冷媒混合物
12:補助冷媒系
13:管路
14:サージドラム
15:管路
16:管路
17:ベント式凝縮器
18:液体冷媒
19:非凝縮性蒸気
20:冷媒ポンプ
21:管路
22:気液分離器
23:冷媒蒸気
24:第2冷媒凝縮器
25:管路
26:低圧スチームドラム
27:低圧スチーム
28:液体冷媒
29:Uトラップ
31:頂部
32:底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンの酸素での接触酸化によるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、
a)反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通して、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部をボイラー供給水との熱交換によって凝縮させてスチームを発生させ、それにより蒸気−液体冷媒混合物が生ずる工程と、
b)前記第1の冷媒凝縮器からの前記蒸気−液体冷媒混合物を気液分離器に通し、そこから分離された蒸気を少なくとも1つの第2の冷媒凝縮器に通して、そこで蒸気の少なくとも一部をボイラー供給水との熱交換により凝縮させて前記第1の冷媒凝縮器にて発生するスチームより低圧のスチームを発生させる工程とを含む、
改良された方法。
【請求項2】
前記反応器が(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒で充填される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記気液分離器から液体冷媒がUトラップを経て冷媒サージタンクに流れ、
該Uトラップは冷媒蒸気が第2の冷媒凝縮器へ流れるに充分な高さを有し、反応器が暴走した場合には反応器中の圧力の急速な解放を可能にする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記冷媒が、ASTMD86による約156℃初留点〜174℃終点の蒸留範囲を有するパラフィン炭化水素である、請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
前記気液分離器がサイクロンを含む、請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を使用してプロピレンを酸素で接触酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通す工程、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部がボイラー供給水との熱交換によって凝縮してスチームが発生する工程、およびそれによって液体−蒸気冷媒混合物が生ずる工程を含むプロセスによって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、
前記第1の冷媒凝縮器から出る蒸気−液体混合物を気液分離器に通す工程、それによって液体冷媒を蒸気冷媒から分離し、Uトラップを経て少なくとも1つの冷媒サージドラムへ送り、蒸気冷媒を少なくとも1つの第2の冷媒凝縮器へ通す工程、そこで蒸気冷媒がボイラー供給水との熱交換によって凝縮して前記第1の冷媒凝縮器にて発生するものよりも低圧のスチームを発生する工程とを含み、
前記Uトラップは冷媒蒸気が前記第2の冷媒凝縮器へ上向きに流すために充分な高さを有する、
改良された請求項2〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を使用してプロピレンを酸素で接触酸化することによるプロピレンオキサイドの製造方法であって、反応器からの冷媒を少なくとも1つの第1の冷媒凝縮器に通す工程、そこで冷媒蒸気の少なくとも一部がボイラー供給水との熱交換によって凝縮してスチームが発生する工程、およびそれによって液体−蒸気冷媒混合物が生ずる工程を含むプロセスによって、反応器を冷却するための冷媒によって運ばれる熱からスチームを発生させる方法において、
前記第1の冷媒凝縮器から出る蒸気−液体混合物をサイクロン操作気液分離器に通す工程、そこで液体冷媒を蒸気冷媒から分離し、Uトラップを経て少なくとも1つの冷媒サージドラムへ送り、蒸気冷媒を第2の冷媒凝縮器へ通す工程、そこで蒸気冷媒がボイラー供給水との熱交換によって凝縮して前記第1の冷媒凝縮器にて発生するスチームよりも低圧のスチームを発生する工程とを含み、
前記Uトラップは冷媒蒸気が前記第2の冷媒凝縮器へ上向きに流すために充分な高さを有し、反応器が暴走した場合に反応器内の圧力の急速な解放を可能にする、
改良((a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒の最適運転温度よりも低い最適運転温度を有する改善された金属触媒を用いても、その(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒を用いて冷媒からの残余の熱をスチームの形で回収することが設計されたプラントを運転することを、本改良は可能にする)された請求項2〜5のいずれか記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82683(P2013−82683A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−176931(P2012−176931)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】