説明

プーリ

【課題】プーリを簡単な構成で水や粉塵が転がり軸受内に入り込むのを確実に防ぐものとする。
【解決手段】玉軸受7の外輪8をプーリ本体5の円筒状のボス部2に嵌め込み、内輪9における表面側に円環状の第1ダストカバー11を嵌め込む。ボス部2の軸方向高さh1を玉軸受7の軸方向高さh2よりも高くし(h1>h2)、第1ダストカバー11の半径方向内側を内輪9の内周面9a側に装着し、この第1ダストカバー11の外周端をボス部2の内周面2a近傍まで伸ばす。ボス部2の外周に円環状の第2ダストカバー12を設けて第1ダストカバー11を、その表面側から覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリを取り付けるプーリ取付部に対し、それを覆うように取り付けられるプーリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オートテンショナのブラケット等に取り付けられるアイドラプーリが知られている。このようなアイドラプーリは、図3に示すように、ボス部202の軸方向高さh1と軸受207の軸方向高さh2とが同等(h1≒h2)であり、軸受207の内輪209の表面側に装着したダストカバー211によって軸受207の表面側が覆われていた。
【0003】
しかしながら、このようなアイドラプーリ201では、軸受207の内輪209側へ水や粉塵が入り込むことは防ぐことができたものの、軸受207の外輪208側から水や粉塵が入り込むのを十分に防ぐことはできず、軸受シール部214まで水や粉塵が入り込むという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に示す樹脂プーリでは、ボス部の表面側及び裏面側に全周にわたって突条を設け、この突条の近傍まで軸受内輪に嵌合したダストカバーを延長し、このダストカバーの外周端と突条との間の隙間でラビリンスシールを形成している。
【0005】
また、例えば特許文献2では、ボス部の端部を半径方向内側へ延長し、プーリを被取付部に固定する取付ボルトを締め付けるフランジ付きナットとの隙間でラビリンスシールを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−174683号公報
【特許文献2】特開2003−83405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のプーリでは、ダストカバーが内輪に固定されているので、プーリと共に回転せず、一度ダストカバー上にのった粉塵や水滴が軸受に浸入しやすいという問題があった。
【0008】
一方、上記特許文献2のプーリでは、プーリのボス部を延長してダストシールを形成していることから、ダストシール側に付着した粉塵や水は遠心力で飛ばされて軸受内に入りにくいが、内輪と共にプーリ被取付部に固定されるフランジ付きナットに付着した粉塵や水が、ナットのフランジとダストシールの内周面との間を通って軸受内に入り込むという問題は解決されていない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で水や粉塵が転がり軸受内に入り込むのを確実に防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、内輪に設けた第1ダストカバーを、その表面側から覆う円環状の第2ダストカバーをプーリ本体側に設けた。
【0011】
具体的には、第1の発明では、
プーリ被取付部に対し、該プーリ被取付部を覆うように取り付けられ、
内輪及び外輪を有する転がり軸受と、
上記外輪が嵌め込まれる円筒状のボス部、ベルトが当接する円環状の外周部及びボス部と外周部とを結ぶリブ部を備えたプーリ本体と、
上記内輪における表面側に嵌め込まれる円環状の第1ダストカバーとを備えたプーリを対象とする。
【0012】
そして、上記ボス部の軸方向高さは、上記転がり軸受の軸方向高さよりも高く、
上記第1ダストカバーの半径方向内側が上記内輪の内周面側に装着され、該第1ダストカバーの外周端が上記ボス部の内周面近傍まで伸び、
上記ボス部の外周に上記第1ダストカバーを該第1ダストカバーの表面側から覆う円環状の第2ダストカバーが設けられている。
【0013】
上記の構成によると、内輪に嵌合させた第1ダストカバーを、その表面側からさらにプーリ本体のボス部外周に設けた第2ダストカバーで覆っているので、転がり軸受の軸方向だけでなく、半径方向からも水や粉塵が入り込みにくくなる。しかも、水や粉塵が掛かりやすい第2ダストカバーは、プーリ本体と共に回転するので、第2ダストカバーに掛かった水や粉塵は、遠心力によって半径方向外側へ飛ばされる。このため、プーリの回転により、さらに水や粉塵が入り込みにくくなる。さらに、第2ダストカバーをプーリ本体と別体としているので、ボス部に転がり軸受を嵌め込んだ後に第2ダストカバーをボス部の外周に嵌め込めばよく、組立が容易である。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、
上記プーリ本体は、鋳鉄よりなり、
上記第2ダストカバーは、冷間圧延鋼板よりなる。
【0015】
上記の構成によると、鋳鉄の線膨張係数と、冷間圧延鋼板の線膨張係数とはほぼ等しく、プーリに熱が加わった場合でも、ボス部外周と第2ダストカバーとの間で隙間が広がることはなく、第2ダストカバーが緩むことはない。また、冷間圧延鋼板は、鋳鉄に比べてプレス加工や曲げ加工等が容易なので、第1ダストカバー等との隙間管理が容易である。
【0016】
第3の発明では、プーリ被取付部に対し、該プーリ被取付部を覆うように取り付けられ、
内輪及び外輪を有する転がり軸受と、
上記外輪が嵌め込まれる円筒状のボス部、ベルトが当接する円環状の外周部及びボス部と外周部とを結ぶリブ部を備えたプーリ本体と、
上記内輪における表面側に嵌め込まれる円環状の第1ダストカバーとを備えたプーリを対象とする。
【0017】
そして、上記ボス部の軸方向高さは、上記転がり軸受の軸方向高さよりも高く、
上記第1ダストカバーの半径方向内側が上記内輪の内周面側に装着され、該第1ダストカバーの外周端が上記ボス部の内周面近傍まで伸び、
上記ボス部の内周に設けた溝に上記第1ダストカバーを表面側から覆う円環状の第2ダストカバーが嵌め込まれている。
【0018】
上記の構成によると、内輪に嵌合させた第1ダストカバーを、その表面側からさらにプーリ本体のボス部内周の溝に嵌め込んだ第2ダストカバーで覆っているので、転がり軸受の軸方向だけでなく、半径方向からも水や粉塵が入り込みにくくなる。しかも、水や粉塵が掛かりやすい第2ダストカバーは、プーリ本体と共に回転するので、第2ダストカバーに掛かった水や粉塵は、遠心力によって半径方向外側へ飛ばされる。このため、プーリの回転により、さらに水や粉塵が入り込みにくくなる。さらに、第2ダストカバーをプーリ本体と別体としているので、ボス部に転がり軸受を嵌め込んだ後に第2ダストカバーをボス部内周の溝に嵌め込めばよく、組立が容易である。
【0019】
第4の発明では、第3の発明において、
上記プーリ本体は、鋳鉄よりなり、
上記第2ダストカバーは、樹脂成形品よりなる。
【0020】
上記の構成によると、樹脂の線膨張係数は、鋳鉄の線膨張係数に比べると大きく、プーリに熱が加わった場合に第2ダストカバーの外径が大きくなり、ボス部内周との間で締め代が増加して抜け止め効果が倍増する。また、樹脂成形品は、鋳鉄に比べて成形が容易なので、第1ダストカバー等との隙間管理が容易である。
【0021】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記第1ダストカバーは、上記内輪を覆う部分よりも、上記外輪を覆う部分の方が軸方向で高い位置にある構成とする。
【0022】
上記の構成によると、仮に第1ダストカバーの内輪を覆う側(半径方向内側)に水が浸入しても、外輪を覆う部分の方が軸方向で高い位置にあるので、表面張力により、さらに水が外輪側へ流れ込みにくくなり、軸受シール側への水の浸入が防止される。
【0023】
第6の発明では、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、
上記内輪は、該内輪の中心を通る取付ボルトで上記プーリ被取付部に取り付けられ、
上記取付ボルトの頭部は、小径部と大径部とを有する段付きの円板状頭部を備え、
上記小径部の上記プーリ被取付部側が上記第1ダストカバーの表面に当接した状態で、上記大径部が上記第2ダストカバーの少なくとも一部を該第2ダストカバーの表面側から覆い、該小径部の外周面と上記第2ダストカバーの内周面との間及び上記大径部の上記プーリ被取付部側の面と該第2ダストカバーの表面との間にラビリンスシールが形成されている。
【0024】
上記の構成によると、第2ダストカバーの半径方向内側をさらに取付ボルトの円板状頭部で覆うことで、円板状頭部と第1ダストカバー及び第2ダストカバーとの間でラビリンスシールが形成されるため、水や粉塵が一段と転がり軸受内部に入りにくくなる。
【0025】
第7の発明では、第6の発明において、
上記小径部は、大径部とは別体の座金よりなるものとする。
【0026】
上記の構成によると、取付ボルトの成形が容易となる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、内輪の内周面側に装着する第1ダストカバーの外周端をボス部の内周面近傍まで伸ばし、その第1ダストカバーを表面側から覆う円環状の第2ダストカバーをボス部に設けたことにより、簡単な構成で水やダストが転がり軸受内に入り込むのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1にかかるプーリを拡大して示す断面図である。
【図2】実施形態2にかかるプーリを拡大して示す断面図である。
【図3】従来技術にかかるプーリを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1のプーリ1を示し、このプーリ1は、オートテンショナのブラケット等を構成する円柱状のプーリ被取付部50に対し、このプーリ被取付部50を覆うように取り付けられる。詳細は図示しないが、プーリ1は、例えば、自動車のエンジンの取付面に取り付けるオートテンショナのブラケットに取り付けられる。このため、地面に対して特定の方向に取り付けられるわけではない。以降、プーリ被取付部50を、その取付方向(図1の上方)から見たときを基準として、表面側、裏面側等の表現で方向を示す。
【0031】
このプーリ1は、円筒状のボス部2と、図示しないVリブドベルトなどのベルトが当接する円環状の外周部3と、これらボス部2及び外周部3を結ぶリブ部4とを備えたプーリ本体5を備えている。外周部3は、例えば、Vリブドベルトのリブが嵌合するV字溝3aが複数平行に形成されている。このプーリ本体5は、例えば、FC250などの鋳鉄よりなり、ボス部2の内周面2aは機械加工により切削されている。本実施形態では、ボス部2の裏面側は一部小径となった外輪抜止め部2bが形成されている。
【0032】
ボス部2の内周面2aには、転がり軸受としての玉軸受7の外輪8が圧入され、外輪8の裏面側が外輪抜止め部2bに当接して裏面側に抜けないようになっている。玉軸受7はさらに内輪9を備え、これら内輪9及び外輪8の間に転動体であるボール10が配置されている。ボス部2の外輪抜け止め部2bを除く軸方向高さh1は、玉軸受7の軸方向高さh2よりも高くなっている(h1>h2)。また、ボール10は、外輪8と内輪9とに連結された一対の円環状の軸受シール14で覆われている。
【0033】
そして、内輪9の表面側には、円環状の第1ダストカバー11が嵌め込まれている。具体的には、第1ダストカバー11は、例えばSPCC(冷間圧延鋼板)よりなり、その半径方向内側の円筒部が、内輪9の内周面9a側に圧入されている。そして、第1ダストカバー11の外周端は、ボス部2の内周面2a近傍まで伸びている。第1ダストカバー11の外周端とボス部2の内周面2aとの間の隙間は、プーリ1の回転中に両者が接触しない程度に保たれていれば、できるだけ小さい方がよく、例えば、0.5mm〜1.0mm程度とする。この第1ダストカバー11は、内輪9を覆う半径方向内側部11aよりも、外輪8を覆う半径方向外側部11bの方が軸方向で高い位置にあるようにプレス加工等により成形されている。
【0034】
そして、ボス部2の外周端には、第1ダストカバー11をその表面側から覆う円環状の第2ダストカバー12が嵌め込まれている。例えば第1ダストカバー11の表面と第2ダストカバー12裏面との間の隙間は、0.5mm〜1.0mm程度とする。第2ダストカバー12は、例えば、SPCCよりなる。SPCCの線膨張係数は11.7×10−6 /℃であり、プーリ本体5(FC250)の線膨張係数である11.8×10−6 /℃とほぼ等しいことから、プーリ1に熱が加わった場合でも、ボス部2外周と第2ダストカバー12との間で隙間が広がることはなく、第2ダストカバー12が緩むことはない。
【0035】
一方、内輪9の裏面側には、円環状の第3ダストカバー13が嵌め込まれている。具体的には、この第3ダストカバー13も、例えばSPCCよりなり、その半径方向内側円筒部が、内輪9の内周面9a側に装着されている。そして、第3ダストカバー113の半径方向中間部は、裏面側に第1ダストカバー11に比べてさらに大きく折れ曲がり、外周端はボス部2の裏面側を超え、ボス部2の裏面側全体を覆うようにリブ部4側に折れ曲がっている。
【0036】
第1ダストカバー11、第2ダストカバー12及び第3ダストカバー13をそれぞれSPCCで成形しているので、鋳鉄に比べてプレス加工や曲げ加工等が容易であり、隙間管理が容易となっている。
【0037】
また、内輪9は、この内輪9の中心を通る取付ボルト15でプーリ被取付部50に取り付けられている。この取付ボルト15は、六角穴付きの円板状頭部16を備え、この六角穴付きの円板状頭部16は、六角穴が凹陥された大径部16aと、この大径部16aよりも径の小さい小径部16bとが一体成形された段付きボルトよりなる。なお、小径部16bに替え、この円板状頭部16の大径部16aに相当する部分と第1ダストカバー11との間に小径部16bと同等の外径を有する座金を嵌め込んでもよい。一体型であれば部品点数が減って組立が容易であり、別体型であれば取付ボルト15の成形が容易となる。
【0038】
このように構成されるプーリ1は、例えば次のような手順で組み立てられる。
【0039】
ます、ボス部2の表面側から玉軸受7を圧入し、玉軸受7の内輪9の表面側から第1ダストカバー11を、裏面側から第3ダストカバー13をそれぞれ圧入する。
【0040】
次いで、ボス部2の表面側から、その外周に第2ダストカバー12を圧入する。これにより、プーリ1の組立が完成する。このとき、第2ダストカバー12をプーリ本体5と別体としているので、玉軸受7をボス部2に嵌め込んだ後に第2ダストカバー12をボス部2の外周に嵌め込めばよく、組立が容易となっている。
【0041】
次いで、このプーリ1をプーリ被取付部50に取り付けるには、まず、プーリ被取付部50の表面側に第3ダストカバー13の裏面を当接させてプーリ1を載置した状態で、プーリ被取付部50のネジ穴に取付ボルト15を締結する。これにより、小径部16bの裏面側が第1ダストカバー11の表面に当接し、プーリ1がプーリ被取付部50に取り付けられる。
【0042】
この取付状態で、大径部16aが第2ダストカバー12の半径方向内側表面との間に0.5mm〜1.0mm程度の隙間を保ったまま、この第2ダストカバー12をその表面側から覆っている。このことで、小径部16bの外周面と第2ダストカバー12の内周面との間及び大径部16aの裏面と第2ダストカバー12の表面との間に0.5mm〜1.0mm程度の隙間よりなるラビリンスシール17が形成される。
【0043】
次に、本実施形態にかかるプーリ1の作用について説明する。
【0044】
上記取付状態では、内輪9に嵌合させた第1ダストカバー11を、その表面側からさらにプーリ本体5のボス部2外周に設けた第2ダストカバー12で覆っているので、玉軸受7の軸方向だけでなく、半径方向からも水や粉塵が入り込みにくくなる。
【0045】
しかも、水や粉塵が掛かりやすい第2ダストカバー12は、プーリ本体5と共に回転するので、この第2ダストカバー12の表面に掛かった水や粉塵は、遠心力によって半径方向外側へ飛ばされる。このため、プーリ1の回転により、さらに水や粉塵が入り込みにくくなる。
【0046】
また、第1ダストカバー11は、内輪9を覆う半径方向内側部11aよりも、外輪8を覆う半径方向外側部11bの方が軸方向で高い位置にあるので、プーリ本体5に力が加わって上下にずれた外輪8が第1ダストカバー11に接触しないだけでなく、仮に第1ダストカバー11の半径方向内側部11a側に水が浸入しても、半径方向外側部11bが軸方向で高い位置にあるので、表面張力により、さらに水が外輪8側へ流れ込みにくくなり、軸受シール側への水の浸入が確実に防止される。
【0047】
また、第2ダストカバー12の少なくとも一部をさらに取付ボルト15の円板状頭部16で覆うことで、円板状頭部16と第1ダストカバー11及び第2ダストカバー12との間でさらにラビリンスシール17が形成されているため、水や粉塵が一段と玉軸受7内部に入りにくくなる。
【0048】
しかも、第3ダストカバー13の外周端がボス部2の裏面側を超えてボス部2の裏面側全体を覆っているので、玉軸受7の裏面からも玉軸受7内に水や粉塵が入り込みにくい。
【0049】
したがって、本実施形態にかかるプーリ1によると、内輪9の内周面9a側に装着する第1ダストカバー11の外周端をボス部2の内周面2a近傍まで伸ばし、その第1ダストカバー11を表面側から覆う円環状の第2ダストカバー12をボス部2に設けたことにより、簡単な構成で水やダストが玉軸受7内に入り込むのを確実に防ぐことができる。
【0050】
(実施形態2)
図2は本発明の実施形態2を示し、第2ダストカバー112の構成が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、本実施形態では、図1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0051】
すなわち、本実施形態のプーリ101では、ボス部2の表面側の内周面2aには、全周にわたって溝部2cが形成されている。この溝部2cには、第1ダストカバー11の外周側を表面側から覆う円環状の第2ダストカバー112が嵌め込まれている。この第2ダストカバー112は、例えば、66ナイロンのガラス繊維強化プラスチックよりなり、その線膨張係数は、40.0×10−6 /℃となっている。第2ダストカバー12の線膨張係数は、プーリ本体5の線膨張係数に比べると大きくなっている。
【0052】
例えば、オートテンショナは、自動車のエンジンに取り付けられるので、高温の環境下に曝されることが多い。このような場合にプーリ101に熱が加わると、第2ダストカバー112の線膨張係数は、プーリ本体5の線膨張係数に比べると大きいので、第2ダストカバー112が膨らんで、その外径が大きくなろうとする。第2ダストカバー112は、溝部2cにしっかりと嵌り込んでいるので緩むことなく、むしろ溝部2cとの間で締め代が増加して抜け止め効果が倍増する、という効果を奏する。
【0053】
そして、本実施形態においても、第2ダストカバー112をプーリ本体5と別体としているので、ボス部2に玉軸受7を嵌め込んだ後に第2ダストカバー112をボス部2の溝部2cに嵌め込めばよく、組立が容易である。
【0054】
したがって、本実施形態でも、簡単な構成で水やダストが玉軸受7内に入り込むのを確実に防ぐことができる。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0056】
すなわち、上記実施形態では、プーリ1は、オートテンショナ用のプーリとしたが、これに限定されず、プーリ被取付部50に対し、このプーリ被取付部50を覆うように取り付けられる、転がり軸受を備えたプーリであればよい。
【0057】
上記実施形態では、転がり軸受は玉軸受7としたが、ころ軸受等でもよい。
【0058】
上記実施形態では、プーリ本体5をFC250としたが、これに限定されず、ダクタイル鋳鉄等の鋳物としてもよい。また、鋳造品以外の他の金属製品を使用してもよく、その場合には、第2ダストカバー12,112との線膨張係数の差が第2ダストカバー12,112を緩める方向に作用しないように適宜材料を設定すればよい。
【0059】
また、上記実施形態では、第1ダストカバー11、第2ダストカバー12及び第3ダストカバー13をSPCCとしたが、他の金属材料や強化繊維プラスチックで構成してもよい。
【0060】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 プーリ
2 ボス部
2a 内周面
2c 溝部
3 外周部
4 リブ部
5 プーリ本体
7 玉軸受(転がり軸受)
8 外輪
9 内輪
9a 内周面
11 第1ダストカバー
11a 半径方向内側部
11b 半径方向外側部
12 第2ダストカバー
15 取付ボルト
16 円板状頭部
16a 大径部
16b 小径部
17 ラビリンスシール
50 プーリ被取付部
112 第2ダストカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリ被取付部に対し、該プーリ被取付部を覆うように取り付けられ、
内輪及び外輪を有する転がり軸受と、
上記外輪が嵌め込まれる円筒状のボス部、ベルトが当接する円環状の外周部及びボス部と外周部とを結ぶリブ部を備えたプーリ本体と、
上記内輪における表面側に嵌め込まれる円環状の第1ダストカバーとを備えたプーリであって、
上記ボス部の軸方向高さは、上記転がり軸受の軸方向高さよりも高く、
上記第1ダストカバーの半径方向内側が上記内輪の内周面側に装着され、該第1ダストカバーの外周端が上記ボス部の内周面近傍まで伸び、
上記ボス部の外周に上記第1ダストカバーを該第1ダストカバーの表面側から覆う円環状の第2ダストカバーが設けられている
ことを特徴とするプーリ。
【請求項2】
請求項1に記載のプーリにおいて、
上記プーリ本体は、鋳鉄よりなり、
上記第2ダストカバーは、冷間圧延鋼板よりなる
ことを特徴とするプーリ。
【請求項3】
プーリ被取付部に対し、該プーリ被取付部を覆うように取り付けられ、
内輪及び外輪を有する転がり軸受と、
上記外輪が嵌め込まれる円筒状のボス部、ベルトが当接する円環状の外周部及びボス部と外周部とを結ぶリブ部を備えたプーリ本体と、
上記内輪における表面側に嵌め込まれる円環状の第1ダストカバーとを備えたプーリであって、
上記ボス部の軸方向高さは、上記転がり軸受の軸方向高さよりも高く、
上記第1ダストカバーの半径方向内側が上記内輪の内周面側に装着され、該第1ダストカバーの外周端が上記ボス部の内周面近傍まで伸び、
上記ボス部の内周に設けた溝に上記第1ダストカバーを表面側から覆う円環状の第2ダストカバーが嵌め込まれている
ことを特徴とするプーリ。
【請求項4】
請求項3に記載のプーリにおいて、
上記プーリ本体は、鋳鉄よりなり、
上記第2ダストカバーは、樹脂成形品よりなる
ことを特徴とするプーリ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のプーリにおいて、
上記第1ダストカバーは、上記内輪を覆う部分よりも、上記外輪を覆う部分の方が軸方向で高い位置にある
ことを特徴とするプーリ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のプーリにおいて、
上記内輪は、該内輪の中心を通る取付ボルトで上記プーリ被取付部に取り付けられ、
上記取付ボルトの頭部は、小径部と大径部とを有する段付きの円板状頭部を備え、
上記小径部の上記プーリ被取付部側が上記第1ダストカバーの表面に当接した状態で、上記大径部が上記第2ダストカバーの少なくとも一部を該第2ダストカバーの表面側から覆い、該小径部の外周面と上記第2ダストカバーの内周面との間及び上記大径部の上記プーリ被取付部側の面と該第2ダストカバーの表面との間にラビリンスシールが形成されている
ことを特徴とするプーリ。
【請求項7】
請求項6に記載のプーリにおいて、
上記小径部は、上記大径部とは別体の座金よりなる
ことを特徴とするプーリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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