説明

ヘアスタイリング剤組成物

【課題】髪型をつくることや一度つくられた髪型を修正することを容易にできて髪型を保つ力にも優れたヘアスタイリング剤組成物を提供する。
【解決手段】平均粒子径0.1nm〜20μmの疎水性シリカと、疎水性シリカを分散させる非水系分散液とを含むヘアスタイリング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪のスタイリング(髪型づくり)に使用するヘアスタイリング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活の中で、身だしなみとして髪型を整えるときや、ファッションの1アイテムとして髪型を自在に形づくるときには、ヘアスタイリング剤(整髪料)を使用する。
【0003】
ヘアスタイリング剤には、高分子樹脂を用いるタイプと、固形もしくはペースト状の油脂を用いるタイプがあり、これらの2つのタイプは、髪を束ねる、髪を立てる、あるいは髪をねじるなどの髪型のつくり方や、髪に艶を与えるあるいは髪にボリューム感を出すなどの髪型の特徴に応じて使い分けられている。
【0004】
高分子樹脂を用いるタイプのヘアスタイリング剤は、はじめは液体になっており、この液体のヘアスタイリング剤をスプレーによる噴霧などの方法で髪に塗布したときに、液体の状態から固化して樹脂フィルムに変わる(例えば、特許文献1)。この樹脂フィルムは、硬く、さらに複数本の髪を埋め込んだかたちで形成されるために、例えば、複数本の髪の束を頭頂部から針のように立ち上げた髪型であってもつくることができる。また、このヘアスタイリング剤から形成された樹脂フィルムは、くしを通すなどの行為によって壊されない限り、形を保つことができる。したがって、高分子樹脂を用いるタイプのヘアスタイリング剤は、髪型を保つ力(髪型のセット力)に優れている。
【0005】
油脂を用いるタイプのヘアスタイリング剤は、髪の表面を覆い、ときには髪の内部に浸透させて用いる。このタイプのヘアスタイリング剤には、油脂成分の凝固を利用したものがある。例えば、ヘアスタイリング剤を付けて髪を曲げたときに、髪の表面を覆った油脂成分が液体の柔らかい状態から固体の硬い状態に変化すると、この髪は、蝋によって包まれた髪のように、手ぐしによって変形できる程度の柔軟性を有しながら、曲げられた状態をそのまま保つ(例えば、特許文献2)。このタイプのヘアスタイリング剤は、髪型の修正などが容易であることに加え、髪に自然な質感を与えることや、スタイリング剤を使用した後でも指通りのよい状態に髪を仕上げることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−96776号公報
【特許文献2】特開2009−13125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、高分子樹脂を用いるタイプのヘアスタイリング剤は、髪型をつくった後にくしを通すと、髪を埋め込んだ樹脂フィルムが破壊されしまうために、ヘアスタイリング剤の追加使用なしに再び髪型をつくることができない。また、油脂を用いるタイプのヘアスタイリング剤は、高分子樹脂を用いるタイプのものに比べて、髪型を保つ力(髪型のセット力)が弱い。
【0008】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、髪型をつくることや一度つくられた髪型を修正すること容易にできて髪型を保つ力にも優れたヘアスタイリング剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために完成するに至ったものであり、以下に示すヘアスタイリング剤組成物である。
【0010】
[1] 平均粒子径0.1nm〜20μmの疎水性シリカと、前記疎水性シリカを分散させる非水系分散液と、を含むヘアスタイリング剤組成物。
【0011】
[2] 前記疎水性シリカの平均粒子径が0.1nm〜5μmである前記[1]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0012】
[3] 前記非水系分散液が、無水低級アルコールである前記[1]または[2]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0013】
[4] すべり剤を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0014】
[5] 前記すべり剤が、シリコーンオイル、シリコーンパウダーおよび水添ポリイソブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む前記[4]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0015】
[6] 前記シリコーンオイルが、デカメチルシクロペンタシロキサンである前記[5]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0016】
[7] 前記シリコーンパウダーが、ビニルジメチコンである前記[5]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0017】
[8] 育毛成分を含む前記[1]〜[7]のいずれかに記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0018】
[9] 前記育毛成分が、セファランチン、ビタミンE、グリチルリチン酸ジカリウム、センブリエキス、D−パントテニアルアルコール、フィナステリド、ジオウエキス、天草由来エキス、朝鮮人参エキス、イチョウエキス、ブリレングリコール、ニコチン酸ベンジル、塩化カルプロニウム、ソファラ抽出エキス、ニコチン酸アミド、ハッカエキス、クララエキス、センキュウエキス、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、ローヤルゼリーエキス、ヨウ化ニンニクエキス、チクセツニンジン、酵母エキス、ヒノキチオール、l−メントール、エンメイソウエキス、レゾルシン、β−グリチルレチン酸、ローズマリー、シソエキス、サルチル酸、ビタミンB6、カシュウ、塩酸ジフェンヒドラミン、オドリコソウエキス、柑橘系抽出エキス、テンチャエキス、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ボタンピエキス、冬虫夏草エキス、フラボステロン、ホップエキス、エストラジオール、クマザサエキス、プロリンアルギニン、クエン酸ナトリウム、およびシアル酸からなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上を含む前記[8]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【0019】
[10] 前記育毛成分が、油溶性の物質である前記[8]に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、髪型をつくることや一度つくられた髪型を修正することを容易にできて髪型を保つ力にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
1.ヘアスタイリング剤組成物:
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、平均粒子径0.1nm〜20μmの疎水性シリカと、疎水性シリカを分散させる非水系分散液とを含むものであり、髪に付けて髪型をつくるために使用することができる。
【0023】
本発明のヘアスタイリング剤組成物を髪全体に付けた後、髪に付いたヘアスタイリング剤組成物の成分のうちの非水系分散液が揮発すると、髪の表面は、多数の疎水性シリカの粒子に覆われた状態になる。その結果、髪にこしが与えられ、髪型をつくりやすくする。また、疎水性シリカの粒子同士は結合しやすい。そのため、異なる髪に付着した疎水性シリカの粒子同士が結合することで、複数本の髪を束にまとめることもできる。
【0024】
さらに、疎水性シリカは、疎水性シリカの凝集によってもたらされる作用を効果的に発揮させる観点から、平均粒子径0.1nm〜5μmであることがより好ましい。
【0025】
本発明のヘアスタイリング剤組成物を髪全体に付けた後、髪に付いたヘアスタイリング剤組成物の成分のうちの非水系分散液が揮発すると、髪の表面には、多数の疎水性シリカの粒子が互いに近接しながら付着した状態がつくられる。このように疎水性シリカの粒子同士が接近した状態にあるときには、疎水性シリカの粒子同士の間に働く分子間力や静電気付着力によって疎水性シリカの粒子が互いに引き寄せられて、疎水性シリカの粒子が凝集した状態になる。このように髪の表面上で疎水性シリカが凝集する現象は、疎水性シリカの平均粒子径が0.1nm〜5μmであることによってより生じやすくなる。
【0026】
また、無数の疎水性シリカの粒子が髪の表面全体に付着した場合には、疎水性シリカの粒子の凝集したもの同士がさらに繋がり、結果として、網目状に凝集した疎水性シリカが髪の表面全体を覆った状態になる。疎水性シリカの凝集によって作られた網目の構造は、疎水性シリカ粒子同士の間の分子間力や静電気付着力のために、変形することなく保たれる。そのため、この疎水性シリカの網目構造が、髪の曲げられた形や髪の立ち上げられた形を支えて保たせる骨組みとして働く。例えば、髪を曲げた状態のときに疎水性シリカが凝集して網目構造を作った場合には、この疎水性シリカの網目構造が、髪を曲げた状態をそのまま支えて保持する。また、疎水性シリカの粒子が髪のキューティクルの間に入り込むことで髪どうしの摩擦力を高めることによって、髪型をつくったときにできる髪同士の接触した状態や髪同士の絡み合あった状態をそのまま保ちやすくする。その結果、つくりあげた髪型が保たれる。
【0027】
さらに、本発明のヘアスタイリング剤組成物を髪に付けた後に複数本の髪を束ねたときには、異なる髪に付着した疎水性シリカの粒子同士が凝集することによって、髪同士が結合した状態になり、その結果、複数本の髪を束ねた髪型がそのまま保持される。
【0028】
また、上記のように髪を束にする際に働く疎水性シリカの粒子同士の間の分子間力や静電気付着力は、くしを入れたときに髪同士の結合状態が全く解かれないほどの強さではない。そのため、本発明のヘアスタイリング剤組成物を用いてつくった髪の束にくしを通したとき、髪同士の接着が解かれ、複数本の髪が束になった状態から一本一本の髪がばらばらになった状態になる場合もある。さらに、くしを通して髪をばらした後でも、それぞれの髪の表面上に残っている疎水性シリカの働きによって、再び髪型を作ることも可能となる。したがって、本発明のヘアスタイリング剤組成物は、髪型を一度つくった後に、ヘアスタイリング剤組成物を追加使用することなく、髪型の変更や髪型の修正を可能にする。
【0029】
一般に髪の表面は、油脂に覆われて疎水性の状態となっている。そのため、疎水性シリカは、髪の表面に付着できる度合いの疎水性を少なくとも有しているものとする。疎水性シリカには、シリカ粒子の表面に現れたヒドロキシル基(−OH)をジメチルシリル化やトリメチルシル化するなどによって、疎水性の粒子の表面を持つようにしたシリカを挙げることができる。なお、上記のジメチルシリル化などを例に挙げた説明は、疎水性シリカを製法の点から限定するものではない。
【0030】
疎水性シリカの市販品としては、アエロジルR812(AEROSIL R812、エボック社)、アエロジルR812S(AEROSIL R812S、エボック社)、アエロジルR8200(AEROSIL R8200、エボック社)、アエロジルR805(AEROSIL R805、エボック社)、VM−2270 Aerogel Fine Particles(ダウ・コーニング社)、9701 COSMETIC POWDER(ダウ・コーニング社)、HDK H2000(旭化成ワッカーシリコーン社)などを挙げることができる。
【0031】
疎水性シリカの平均粒子径は、疎水性シリカの一次粒径をBET法によって測定したものである。
【0032】
本発明のヘアスタイリング剤組成物では、疎水性シリカの含有量が、通常0.001〜5.0質量%である。疎水性シリカの含有量が0.001質量%以上であることによって、髪型をつくるために必要な量の疎水性シリカを髪に付けることができる。疎水性シリカの含有量が0.001質量%以上であることによって、上記した疎水性シリカの凝集物が網目状に髪の表面上を覆った状態をつくることができ、その結果として、髪型がつくりやすくなる。また、疎水性シリカの含有量が5.0質量%以下であることによって、くし通りを妨げるほどに過剰な量の疎水性シリカを髪に付けなくて済むようになる。
【0033】
さらに、上記の疎水性シリカの含有量が、0.5〜1.5質量%であることが好ましい。疎水性シリカの含有量が0.5質量%以上であることによって、疎水性シリカの凝集による働きを確実に発揮させることができるため、髪型の保つ力(髪型のセット力)をより強めることができる。また、疎水性シリカの含有量が1.5質量%以下であることによって、髪の表面に付いた油脂に比べて疎水性シリカの量が過多にならないために、髪に付いた疎水性シリカの大半が髪に付着した油脂に馴染むことができ、その結果として、髪に付いた疎水性シリカが透明性を保ち、また、疎水性シリカが髪の表面で粉をふきにくくなる。
【0034】
疎水性シリカの平均粒子径が0.1nm〜5μmであるときには、非水系分散液中で疎水性シリカが沈降しにくい。また、疎水性シリカの平均粒子径が0.1nm〜5μmであるときには、ヘアスタイリング剤組成物を長期間にわたり静置したために非水系分散液中に疎水性シリカが沈降していた場合であっても、ヘアスタイリング剤組成物を激しく振ることによって、非水系分散液中で疎水性シリカを再び分散させることができる。
【0035】
非水系分散液は、全く水を含まない液体、あるいは疎水性シリカをゲル化させない程度で極めて少量の水を含んだ液体である。非水系分散液には、疎水性シリカを変性させない性質を持ち、かつ髪に付けた後に揮発することが可能な有機溶媒などを挙げることができる。
【0036】
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、例えば、疎水性シリカを分散させた非水系分散液の液滴を霧状に噴霧することによって髪に付けることができる。このように疎水性シリカを非水系分散液中に閉じ込めた状態で使用されるため、疎水性シリカの粉体のみを成分とするヘアスタイリング剤と比べ、使用時に疎水性シリカの飛散を抑えることができる。また、疎水性シリカの飛散を抑えたことで、噴霧したヘアスタイリング剤組成物の量に基づいて、実際に髪に付いた疎水性シリカの量をより正しく見積もることができる。
【0037】
また、非水系分散液の液滴中は、疎水性シリカの粒子同士が凝集しにくい環境にある。したがって、髪に付いた非水系分散液の液滴中では、多くの疎水性シリカが一次粒子の状態で分散している。そのため、非水系分散液が揮発していった後に、髪の表面に残された疎水性シリカは、一次粒子の状態のまま髪の表面に付きやすくなる。このような過程を経て疎水性シリカが髪の表面に付いたときには、疎水性シリカの一次粒子が髪の表面をむらなく付着した状態にもなりやすく、引き続く疎水性シリカの凝集も生じやすくなるため、結果として、髪型づくりを容易にし、髪型を保つ力も強まる。
【0038】
また、本発明のヘアスタイリング剤組成物は、水を全く含まないまたは水を極めて少量しか含まないため、油脂に覆われて疎水性となっている髪の表面にはじかれずよく馴染んで付着する。
【0039】
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、ここまでに述べた特徴を備えた上で、下記の特徴を備えた実施形態として適用することも可能である。
【0040】
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、非水系分散液が無水低級アルコールであることが好ましい。無水低級アルコールは、液滴で噴霧するなどの、髪に付ける際のハンドリングを容易する。また、無水低級アルコールは、揮発性が高い。そのため、疎水性シリカを分散させた無水アルコールの液滴を髪に付けたとき、この液滴中で疎水性シリカの粒子同士の凝集を進行させる前に、無水アルコールが髪の表面から消滅することができる。その結果、疎水性シリカは、髪の表面に一次粒子の状態で残され、一次粒子のままで髪の表面に付きやすくなる。
【0041】
無水低級アルコールには、揮発性が高くかつ疎水性シリカを良好に分散させることができるという物性の観点からは、例えば、無水エタノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、メタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどの炭素数の少ないアルコールを挙げることができる。また、人体への毒性などの影響を考慮すると、上に列挙した化合物の中では無水エタノールや2−プロパノールを用いると好ましい。
【0042】
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、ヘアスタイリング剤組成物を付けた後の髪のくし通りを良くする観点から、すべり剤を含んだものであることが好ましい。一般に、髪のくし通りは、髪の表面の摩擦力を下げることや髪同士をくっつける力を弱めることによって良好になる。したがって、すべり剤には、髪に付着して髪の表面の摩擦力を低減する物質や、髪の表面に付いた疎水性シリカに付着して髪の表面を覆う疎水性シリカの粒子の表面の摩擦力を下げる物質を用いる。あるいは、すべり剤には、疎水性シリカに作用して疎水性シリカの凝集力(疎水性シリカの粒子同士が結合する力)を下げる物質を用いる。
【0043】
また、すべり剤は、物質の種類が異なると、髪の表面の摩擦力を低減する作用の度合いや疎水性シリカの凝集力(疎水性シリカの粒子同士が結合する力)を下げる作用の度合いも異なってくる。髪の表面の摩擦力や疎水性シリカの凝集力が髪型を保つ力(髪型のセット力)にも影響を与えるため、すべり剤の種類を適宜選択することによって、髪型を保つ力(髪型のセット力)を調整できる(髪型のセット力を強めたり弱めたりすることができる)(実施例の表1における各種のすべり剤を含んだ場合の「髪型のセット力」の評価を参照)。
【0044】
すべり剤は、全く水を含まない、あるいは疎水性シリカをゲル化させない程度で極めて少量の水を含む物質であるとともに、非水系分散液に溶解する物質または非水系分散液に分散しやすい物質であることが望ましい。
【0045】
さらに、上記のすべり剤は、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、および水添ポリイソブデンよりなる群の中から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。シリコーンオイルやシリコーンパウダーや水添ポリイソブテンは、髪に馴染みやすく、また、人体に害を与える危険性が少ない。
【0046】
すべり剤としてのシリコーンオイルは、髪の表面に付いた疎水性シリカの作用効果を最大限引き出すことができる観点から、揮発性シリコーンオイルであることがより好ましい。さらに、この揮発性シリコーンオイルは、非水系分散液よりも揮発しにくいものであることがより好ましい。揮発性シリコーンオイルが非水系分散液よりも揮発しにくい場合、ヘアスタイリング剤組成物を髪に付けたときには、第1段階として非水系分散液が揮発して髪の表面に疎水性シリカと揮発性シリコーンオイルが残り、続いて、第2段階として揮発性シリコーンオイルが揮発して疎水性シリカのみが髪の表面に残る。上記の第1段階は、揮発性シリコーンオイルの働きによって髪のくし通り良いために、髪型をつくりやすい。そして、上記の第2段階は、疎水性シリカのみが髪の表面に残されたことで、疎水性シリカの粒子同士を凝集させる力が高まって、髪型を保つ力(セット力)が強まる。すべり剤として揮発性シリコーンオイルを含んだ実施形態では、例えば、疎水性シリカの含有量を多くすることによって第2段階での髪型を保つ力(セット力)を一層強めた実施形態のときであっても、第1段階では揮発性シリコーンオイルの働きによって疎水性シリカの凝集力を緩和して髪型つくりを容易にできるようにすることも可能である。
【0047】
揮発性シリコーンオイルには、デカメチルシクロペンタシロキサンなどを挙げることができる。
【0048】
すべり剤としてのシリコーンパウダーには、ビニルジメチコンなどを挙げることができる。
【0049】
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、髪型をつくることと並行して育毛促進の処置をするという観点から、育毛成分を含んだものであることが好ましい。髪型のセットは、日常生活中でほぼ毎日行われるものの、日課のようにとりわけて意識された状況では行われていない。そのため、このヘアスタイリング剤を使用した場合には、育毛促進の処置を忘れないように毎日意識しなければならないという負担を減らしながらも、育毛促進の処置を毎日確実に行うことを可能にする。
【0050】
育毛成分は、セファランチン、ビタミンE(酢酸−トコフェロール、トコトリエノールなどを含む)、グリチルリチン酸ジカリウム、センブリエキス、D−パントテニアルアルコール、フィナステリド、ジオウエキス、天草由来エキス、朝鮮人参エキス、イチョウエキス、ブリレングリコール、ニコチン酸ベンジル、塩化カルプロニウム、ソファラ抽出エキス、ニコチン酸アミド、ハッカエキス、クララエキス、センキュウエキス、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、ローヤルゼリーエキス、ヨウ化ニンニクエキス、チクセツニンジン、酵母エキス、ヒノキチオール、l−メントール、エンメイソウエキス、レゾルシン、β−グリチルレチン酸、ローズマリー、シソエキス、サルチル酸、ビタミンB6、カシュウ、塩酸ジフェンヒドラミン、オドリコソウエキス、柑橘系抽出エキス、テンチャエキス、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ボタンピエキス、冬虫夏草エキス、フラボステロン、ホップエキス、エストラジオール、クマザサエキス、プロリンアルギニン、クエン酸ナトリウム、およびシアル酸からなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上を含むものであることが好ましい。
【0051】
また、育毛成分は、育毛成分を非水系分散液に溶解させるまたは非水系分散液に育毛成分を均一に分散させるという観点から、油溶性の物質であることが好ましい。
【0052】
2.ヘアスタイリング剤組成物の使用方法:
本発明のヘアスタイリング剤組成物は、収容するための容器や保存時の剤型や使用時の髪への塗布の方法などには特に制限はない。
【0053】
例えば、ヘアスタイリング剤組成物を収容する容器の中に攪拌球を入れた場合には、疎水性シリカが非水性分散液中に沈降したときにも、疎水性シリカを非水性分散液中に容易に分散させることができる。したがって、長期間の保存後に使用する場合であっても、ヘアスタイリング剤組成物を素早く使用可能な状態にできる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(1)ヘアスタイリング剤組成物の調製
実施例および比較例にて、ヘアスタイリング剤組成物の調製に用いた原材料を下記に示す。
【0056】
(a)疎水性シリカ:
アエロジルR812(AEROSIL R812、デグサ社、平均粒子径7nm)、
アエロジルR812S(AEROSIL R812S、デグサ社、平均粒子径7nm)、
アエロジルR805(AEROSIL R805、デグサ社、平均粒子径12nm)、
アエロジルR8200(AEROSIL R8200、デグサ社、平均粒子径12nm)。
【0057】
(b)親水性シリカ:
SUNSPHERE NP30(旭硝子社、粒子径3.0〜5.0μm)。
【0058】
(c)非水系分散液:
無水エタノール(日本アルコール社、一般アルコール95度合成)。
【0059】
(d)すべり剤:
デカメチルシクロペンタシロキサン(モメンィブ・P・W・J社、TSF405)、
ビニルジメチコン(信越化学(株)、KSP−105)、
水添ポリイソブテン(出光石油化学社、IPソルベント1620)。
【0060】
(実施例1〜17、比較例1〜3)
実施例1〜17および比較例1〜3のヘアスタイリング剤組成物は、上記の各物質を表1に示す組成で配合させて得られたものである。
【0061】
【表1】

【0062】
(2)ゲル化の有無の観察
上記の方法で調製した実施例1〜17および比較例1〜3のヘアスタイリング剤組成物について、シリカがゲル化したか否かを観察した。結果を表1に示す。
【0063】
(3)ヘアスタイリング剤組成物の髪への塗布
実施例1〜17および比較例1〜3のヘアスタイリング剤組成物をそれぞれスプレーで髪に塗布した。
【0064】
(4)髪の立ち上がりの評価
上記の方法で実施例1〜17および比較例1〜3のうちのいずれか1つのヘアスタイリング剤組成物を塗布した後、頭頂部から生えた髪を束ねて、髪の束を頭頂部から上に向かって立ち上げた。
【0065】
髪の束を髪の根元から先に向かって撫上げただけで、髪の束から手を離しても髪の束が立ち上がった状態のまま維持されたとき、髪の立ち上がりを「優」とした。前記ように髪の束を髪の根元から先に向かって撫上げたのみでは足りず、撫上げた後にさらに髪の束を立たせた状態にしたまま数秒間にわたり髪の束を掴むことによって、髪の束から手を離しても髪の束が立ち上がった状態のまま維持できたとき、髪の立ち上がりを「良」とした。上記の髪の束を立たせた状態で髪の束を掴むことを数秒間では足りず30秒間することよって、手を髪の束から離しても髪の束が立ち上がった状態のまま維持できたとき、髪の立ち上がりを「可」とした。髪の束を立たせた状態で30秒間にわたり髪の束を掴んでも、髪の束から手を離すと髪の束が立ち上がった状態にならなかったとき、髪の立ち上がりを「不可」とした。実施例1〜17および比較例1〜3のヘアスタイリング剤組成物について髪の立ち上がりを評価した結果を表1に示す。
【0066】
(5)髪型のセット力の評価
上記の「髪の立ち上がりの評価」で髪の束を立ち上げることができた実施例1〜17について、上記の「髪の立ち上がりの評価」で行った方法で髪の束を立ち上げた状態とした。そして、髪の束を立ち上げてから8時間を経過したときの、髪の束の形状を観察することによって、髪型のセット力の評価を行った。髪の束を立ち上げて8時間経過後に、髪の束が先まで真っすぐ立った状態のまま維持されたときを、髪型のセット力が「かなり強い」とした。髪の束を立ち上げて8時間経過後に、髪の束の先の部分のみが萎れたときを、髪型のセット力が「強い」とした。髪の束を立ち上げて8時間経過後に、髪の束をつくっていた髪同士の結合が解けて、髪の束を立ち上げた状態が全く観察できなかったときを、髪型のセット力が「普通」とした。結果を表1に示す。
【0067】
(6)くし通りの評価
上記の「髪の立ち上がりの評価」で髪の束を立ち上げることができた実施例1〜17について、上記の「髪の立ち上がりの評価」で示した方法で髪の束を立ち上げた。さらに、髪の束に対して根元から先に向かってくしをしていくことで、くし通りの評価をした。くしが引っ掛かることなく髪の束を根元から先まで通ったときを、くし通りが「優」とした。くしが数回だけ引っ掛かりながら髪の束を髪の束を根元から先まで通ったときを、くり通りが「良」とした。くしが終始引っ掛かったために抵抗を受けながら、くしが髪の束を根元から先まで通ったときを、くり通りが「可」とした。くしが髪の束を髪の束を根元から先まで通していくことができなかったときを、「不可」とした。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、髪のスタイリング(髪型づくり)に使用するヘアスタイリング剤組成物として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.1nm〜20μmの疎水性シリカと、
前記疎水性シリカを分散させる非水系分散液と、を含むヘアスタイリング剤組成物。
【請求項2】
前記疎水性シリカの平均粒子径が0.1nm〜5μmである請求項1に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項3】
前記非水系分散液が、無水低級アルコールである請求項1または2に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項4】
すべり剤を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項5】
前記すべり剤が、シリコーンオイル、シリコーンパウダーおよび水添ポリイソブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む請求項4に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項6】
前記シリコーンオイルが、デカメチルシクロペンタシロキサンである請求項5に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項7】
前記シリコーンパウダーが、ビニルジメチコンである請求項5に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項8】
育毛成分を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項9】
前記育毛成分が、セファランチン、ビタミンE、グリチルリチン酸ジカリウム、センブリエキス、D−パントテニアルアルコール、フィナステリド、ジオウエキス、天草由来エキス、朝鮮人参エキス、イチョウエキス、ブリレングリコール、ニコチン酸ベンジル、塩化カルプロニウム、ソファラ抽出エキス、ニコチン酸アミド、ハッカエキス、クララエキス、センキュウエキス、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、ローヤルゼリーエキス、ヨウ化ニンニクエキス、チクセツニンジン、酵母エキス、ヒノキチオール、l−メントール、エンメイソウエキス、レゾルシン、β−グリチルレチン酸、ローズマリー、シソエキス、サルチル酸、ビタミンB6、カシュウ、塩酸ジフェンヒドラミン、オドリコソウエキス、柑橘系抽出エキス、テンチャエキス、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ボタンピエキス、冬虫夏草エキス、フラボステロン、ホップエキス、エストラジオール、クマザサエキス、プロリンアルギニン、クエン酸ナトリウム、およびシアル酸からなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上を含む請求項8に記載のヘアスタイリング剤組成物。
【請求項10】
前記育毛成分が、油溶性の物質である請求項8に記載のヘアスタイリング剤組成物。

【公開番号】特開2011−246352(P2011−246352A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117662(P2010−117662)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(596149051)株式会社 菊星 (23)
【Fターム(参考)】