説明

ヘッジホッグ経路モジュレーターとしての化合物および組成物

本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性を調節するための方法を提供する。特に、本発明は、十分な量の式Iの化合物を細胞と接触させることを含む、Ptc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型のような表現型による異常な増殖状態を抑制するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互関連
本出願は2004年10月28日に出願された米国仮特許出願番号60/623,444の優先権を主張する。この出願のすべての開示はその全体として、かつすべての目的に関して出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性を調節するための方法を提供する。特に、本発明は、十分な量の式Iの化合物を細胞と接触させることを含む、Ptc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド(smoothened)機能獲得型またはGli機能獲得型のような表現型による異常な増殖状態を抑制するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
胚発生過程において、ヘッジホッグシグナル伝達経路は細胞増殖、分化および組織パターンニングの制御のような多数の過程に必須である。しかし、例えば活性化増強の結果としてのヘッジホッグシグナル伝達経路の異常な活性は、病的結果を引き起こし得る。この点において、成体組織におけるヘッジホッグ経路の活性化は、限定されないが、脳、筋肉および皮膚の癌、膵臓腺癌ならびに小細胞肺癌を含む特定の型の癌をもたらし得る。ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化の増強は多くの疾患の病状および/または症状の原因となる。したがって、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性を調節する分子はこのような疾患の処置における治療剤として有用である。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約
本発明は、例えば、異常な増殖状態を逆転するかまたは制御するために、正常Ptc活性をアゴナイズするか、正常ヘッジホッグ活性に拮抗するか、またはスムーゼンド活性に拮抗するために十分な量の式Iの化合物を細胞と接触させることを含む、例えば、Ptc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型のような表現型による異常な増殖状態を抑制するために、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化を抑制するために利用できる方法および化合物を作製した。
【0005】
定義
基および他の基の構造成分としての“アルキル”、例えばハロ置換アルキルおよびアルコキシは、直鎖または分岐鎖であり得る。C1−4−アルコキシはメトキシ、エトキシなどを含む。ハロ置換アルキルはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどを含む。
【0006】
“アリール”は6から10個の環炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。例えば、アリールはフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。“アリーレン”はアリール基から生じる二価のラジカルを意味する。
【0007】
“ヘテロアリール”は1個またはそれ以上の環員がヘテロ原子であるときの上記アリールを定義するとおりのものである。例えば、ヘテロアリールはピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含む。
【0008】
“シクロアルキル”は示された環原子の数を含む飽和または部分的に不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0009】
“ヘテロシクロアルキル”は本明細書に定義のとおりのシクロアルキルであるが、ただし、示された1個またはそれ以上の環炭素は−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−から選択される部分により置換されており、ここでRは水素、C1−4アルキルまたは窒素を保護する基である。例えば、本発明の化合物を記載するために本明細書で使用されるC3−8ヘテロシクロアルキルはモルホリノ、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン(piperidinylone)、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デカ−8−イルなどを含む。
【0010】
“ハロゲン”(またはハロ)は好ましくはクロロまたはフルオロを示すが、またブロモまたはヨードであり得る。
【0011】
“ヘッジホッグ機能獲得型”は、ヘッジホッグタンパク質と細胞との接触に似ている表現型、例えばヘッジホッグ経路の異常な活性化をもたらす、Ptc遺伝子、ヘッジホッグ遺伝子、もしくはスムーゼンド遺伝子の異常な変異もしくは突然変異、またはこのような遺伝子の発現レベルの減少(または喪失)を言及する。機能獲得型は、Gli遺伝子、例えばGli1、Gli2およびGli3の発現レベルを統制するPtc遺伝子生成物の能力の減少を含み得る。“ヘッジホッグ機能獲得”なる用語はまた、限定すべきでないが、ヘッジホッグ自身の変異もしくは突然変異を含む、ヘッジホッグシグナル伝達経路のどこかの場所の改変のため起こる、すべての同様の(例えば、過増殖を示す)細胞表現型を言及するために本明細書で使用する。たとえヘッジホッグがその細胞において突然変異していなくても、例えばヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化のため異常な高増殖速度である腫瘍細胞は、“ヘッジホッグ機能獲得型”表現型を有するであろう。
【0012】
“パッチド(patched)機能喪失型”は、ヘッジホッグタンパク質と細胞との接触に似ている表現型、例えばヘッジホッグ経路の異常な活性化をもたらす、Ptc遺伝子の異常な変異もしくは突然変異、または該遺伝子の発現レベルの減少を言及する。機能喪失は、Gli遺伝子、例えばGli1、Gli2およびGli3の発現レベルを統制するPtc遺伝子生成物の能力の喪失を含み得る。
【0013】
“Gli機能獲得型”は、ヘッジホッグタンパク質と細胞との接触に似ている表現型、例えばヘッジホッグ経路の異常な活性化をもたらす、Gli遺伝子の異常な変異もしくは突然変異、または該遺伝子の発現レベルの増加を言及する。
【0014】
“スムーゼンド機能獲得型”は、ヘッジホッグタンパク質と細胞との接触に似ている表現型、例えばヘッジホッグ経路の異常な活性化をもたらす、Smo遺伝子の異常な変異もしくは突然変異、または該遺伝子の発現レベルの増加を言及する。
【0015】
“処置する”、“処置し”および“処置”は、疾患および/またはそれに付随する症状を緩和するまたは和らげる方法を言及する。
【0016】
好ましい態様の記載
本発明は、ヘッジホッグ、パッチド(Ptc)、gliおよび/またはスムーゼンドにより統制されるシグナル伝達経路が式Iの化合物により調節できるとの発見に関する。
【0017】
1つの態様は、式I:
【化1】

[式中、
nは0、1、2および3から選択され;
YはNRおよびS(O)0−2から選択され;ここでRは水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
Lは−Z−NR−、−Z−NRC(O)−および−C(O)NRN=CH−から選択され;ここでRは水素およびC1−4アルキルから選択され;ここでZはC5−10ヘテロアリールであり;
は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシおよび−NHC(O)Rから選択され;ここでRは水素およびC1−4アルキルから選択されるか;またはRおよびRが結合している原子と一緒にRおよびRは所望により1から3個の独立して選択されるRラジカルで置換されたイミダゾ[1,2−a]ピリジンを形成し;ここでRはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシ、−NRC(O)Rおよび−NR−から選択される;ここでRは独立して水素およびC1−4アルキルから選択される。]
の化合物ならびにそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護されている誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;ならびにこのような化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば水和物)を細胞と接触させることを含む、細胞のヘッジホッグ経路を調節するための方法を提供する。
【0018】
第2の局面において、本発明は、1種またはそれ以上の適当な賦形剤との混合物中の式Iの化合物もしくはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
別の態様において、式Iの化合物に関して、化合物が式Ia、Ib、IcおよびId:
【化2】

[式中、mは0、1および2から選択される]
から選択される化合物である。
【0020】
別の態様において、式Iの化合物は:N−[2−(4−エトキシ−フェニルアミノ)−4’−メチル−[4,5’]ビチアゾリル−2’−イル]−プロピオンアミド;N−[2−(4−メトキシ−フェニルアミノ)−4’−メチル−[4,5’]ビチアゾリル−2’−イル]−プロピオンアミド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(4−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(4−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド;[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−(4−エトキシ−フェニル)−アミン;4−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェノール;[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−(2,4−ジメチル−フェニル)−アミン;(4−クロロ−フェニル)−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;(2,4−ジブロモ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;(2,4−ジメチル−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;N−{4−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;4−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェノール;N−{4−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;(4−クロロ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;およびN−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−ベンズアミドから選択される。
【0021】
したがって、具体的に、ヘッジホッグ、Ptc、またはスムーゼンドシグナル伝達活性の局面を妨げる式Iの化合物は同様に、正常細胞および/またはパッチド機能喪失型表現型、ヘッジホッグ機能獲得型表現型、スムーゼンド機能獲得型表現型またはGli機能獲得型表現型を有する細胞の増殖(または他の生物学的結果)を抑制することができるであろうことが考慮される。したがって、ある態様において、これらの化合物は、例えば、ヘッジホッグ経路を活性化する遺伝子突然変異を有さない正常細胞のヘッジホッグ活性を抑制するために有用であり得ることが考慮される。好ましい態様において、化合物は好ましくは特に標的細胞のヘッジホッグタンパク質の少なくともいくつかの生物学的活性を抑制することができる。
【0022】
したがって、本発明の方法は、例えば正常細胞、組織、および臓器、ならびにPtc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型の表現型を有する細胞、組織、および臓器を含む、様々な細胞、組織、および臓器の修復および/または機能的働きの調整において、スムーゼンドまたはシグナル経路の下流成分の活性化を抑制することにより、ヘッジホッグシグナル伝達のPtc阻害をアゴナイズする式Iの化合物の使用を含む。例えば、主題の方法は神経組織、骨および軟骨の形成および修復の調整、精子形成の調整、平滑筋の調整、肺、肝臓および原腸から生じる他の臓器の調整、造血機能の調整、皮膚および発毛の調整などの範囲における治療的および美容的適用を有する。さらに、主題の方法は培養において提供される細胞(インビトロ)、または完全な動物において提供される細胞(インビボ)で行い得る。
【0023】
別の態様において、主題の方法は、Ptc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型の表現型を有する上皮細胞を処置することができる。例えば、主題の方法は基底細胞癌腫または他のヘッジホッグ経路関連障害の処置または予防において使用され得る。
【0024】
ある態様において、式Iの化合物はスムーゼンドまたはその下流のタンパク質に結合することによりヘッジホッグ経路の活性化を抑制できる。ある態様において、主題のアンタゴニストはパッチドに結合することによりヘッジホッグ経路の活性化を抑制し得る。
【0025】
別の好ましい態様において、主題方法は悪性髄芽腫および他の原発性CNS悪性神経外胚葉腫瘍のための処置レジメンの一部として使用され得る。
【0026】
別の局面において、本発明は、インビボにおいて、Ptc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型の増殖または他の生物学的結果を抑制するために十分な量で処方された、ヘッジホッグシグナル伝達モジュレーター、例えば式Iの化合物、Ptcアゴニスト、スムーゼンドアンタゴニスト、または本明細書に記載のとおりのヘッジホッグ経路下流のタンパク質アンタゴニストを活性成分として含む、医薬製剤を提供する。
【0027】
式Iの化合物、パッチドアゴニスト、スムーゼンドアンタゴニスト、またはヘッジホッグ経路下流のタンパク質アンタゴニストを使用する主題の処置は、ヒトおよび動物対象のために有用であり得る。本発明が適用できる動物は、ペットとしてまたは商業目的のために飼養されている動物および家畜にまで拡大される。例はイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、およびヤギである。
【0028】
薬理学的有用性
本発明は、例えば、異常な増殖状態を逆転するかまたは制御するために、正常Ptc活性をアゴナイズするか、正常ヘッジホッグ活性に拮抗するか、スムーゼンド活性に拮抗するか、またはGli活性に拮抗するための十分な量の式Iの化合物を細胞と接触させることを含む、例えば、Ptc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型のような表現型による異常な増殖状態を抑制するためのヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化を抑制するために利用できる方法および化合物を作製する。
【0029】
シグナル伝達分子のヘッジホッグファミリーメンバーは、脊椎動物発生中の多数の重要な短期的および長期的パターンニング工程を介在する。パターン形成は、胚細胞が分化した組織の規則正しい空間的配置を形成する活動である。高等生物の身体の複雑さは、細胞固有の系統および細胞非固有のシグナル伝達の相互作用を介して胚発生中に生じる。誘導的相互作用は、ボディープランの最初の構築から脊椎動物発生における胚のパターンニングのため、臓器系のパターンニングのため、組織分化中の異なった細胞型の発生のために必須である。発生の細胞相互作用の効果は変化する:応答細胞は細胞分化の1つの道から応答細胞の非誘導および誘導状態で異なる誘導細胞により別の道へ向かう(誘導)。ときどき細胞は隣接細胞が該細胞自身のように分化するのを誘導する(同質(homeogenetic)誘導);別の場合には細胞は隣接細胞が該細胞自身のように分化するのを抑制する。初期発生における細胞の相互作用は、2つの細胞型間の初期相互作用が多様性の漸進的な拡大をもたらすように連続して起こり得る。さらに、誘導的相互作用は胚だけでなく成体細胞でも同様に起こり、そして形態形成パターンの構築および維持のためならびに分化の誘導のために作用できる。
【0030】
脊椎動物のヘッジホッグ遺伝子のファミリーは、哺乳類においてDesert(Dhh)、Sonic(Shh)およびIndian(Ihh)ヘッジホッグとして既知の3つのメンバーを含み、これらすべては分泌タンパク質をコードする。これらの様々なヘッジホッグタンパク質は、シグナルペプチド、高度に保存されたN末端領域、およびさらに異なっているC末端ドメインからなる。生化学的試験でHh前駆物質タンパク質の自己タンパク分解的切断が内部チオエステル中間体を介して進行し、次いでそれは求核置換反応において切断されることが示された。該求核原子は、共有結合的にNペプチドのC末端と結合し、細胞表面につながれるようになる小さな疎水性分子である可能性がある。生物学的意義は奥深い。つながれている結果として、N末端ヘッジホッグペプチドの高い局所濃度がヘッジホッグ生産細胞の表面において発生する。このN末端ペプチドは、短期的および長期的ヘッジホッグシグナル伝達活性のために必要であり、十分である。
【0031】
不活性なヘッジホッグシグナル伝達経路は、膜貫通タンパク質受容体パッチド(Ptc)が7回膜貫通タンパク質のスムーゼンド(Smo)の活性を抑制している場所である。Hhシグナル伝達の下流成分である転写因子Gliは、FusedおよびSuppressor of fused(Sufu)を含む細胞質タンパク質との相互作用を介して、核への侵入を妨げる。結果として、ヘッジホッグ標的遺伝子の転写活性化は抑制される。経路の活性化は、3種の哺乳類リガンド(Dhh、ShhまたはIhh)のいずれかのPtcへの結合を介して起こる。リガンド結合はSmoの抑制の反転をもたらし、それによって転写因子Gliの活性型の核への移動をもたらすカスケードを活性化する。核のGliは、PtcおよびGliそれ自身を含む標的遺伝子発現を活性化する。
【0032】
ヘッジホッグシグナル伝達レベルの増加は癌形成が起こるために十分であり、そして腫瘍生存に必要である。これらの癌は限定されないが、前立腺癌(“Hedgehog signalling in prostate regeneration, neoplasia and metastasis”, Karhadkar SS, Bova GS, Abdallah N, Dhara S, Gardner D, Maitra A, Isaacs JT, Berman DM, Beachy PA., Nature. 2004 Oct 7;431(7009):707-12; “Inhibition of prostate cancer proliferation by interference with SONIC HEDGEHOG-GLI1 signaling”, Sanchez P, Hernandez AM, Stecca B, Kahler AJ, DeGueme AM, Barrett A, Beyna M, Datta MW, Datta S, Ruiz i Altaba A., Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Aug 24;101(34):12561-6)、乳癌(“Hedgehog signaling pathway is a new therapeutic target for patients with breast cancer”, Kubo M, Nakamura M, Tasaki A, Yamanaka N, Nakashima H, Nomura M, Kuroki S, Katano M., Cancer Res. 2004 Sep 1;64(17):6071-4)、髄芽腫(“Medulloblastoma growth inhibition by hedgehog pathway blockade”, Berman DM, Karhadkar SS, Hallahan AR, Pritchard JI, Eberhart CG, Watkins DN, Chen JK, Cooper MK, Taipale J, Olson JM, Beachy PA., Science. 2002 Aug 30;297(5586):1559-61)、基底細胞癌腫(“Identification of a small molecule inhibitor of the hedgehog signaling pathway: effects on basal cell carcinoma-like lesions”, Williams JA, Guicherit OM, Zaharian BI, Xu Y, Chai L, Wichterle H, Kon C, Gatchalian C, Porter JA, Rubin LL, Wang FY., Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Apr 15;100(8):4616-21;“Activating Smoothened mutations in sporadic basal-cell carcinoma”, Xie J, Murone M, Luoh SM, Ryan A, Gu Q, Zhang C, Bonifas JM, Lam CW, Hynes M, Goddard A, Rosenthal A, Epstein EH Jr, de Sauvage FJ., Nature. 1998 Jan 1;391(6662):90-2)、膵臓癌(“Hedgehog is an early and late mediator of pancreatic cancer tumorigenesis”, Thayer SP, di Magliano MP, Heiser PW, Nielsen CM, Roberts DJ, Lauwers GY, Qi YP, Gysin S, Fernandez-del Castillo C, Yajnik V, Antoniu B, McMahon M, Warshaw AL, Hebrok M., Nature. 2003 Oct 23;425(6960):851-6;“Widespread requirement for Hedgehog ligand stimulation in growth of digestive tract tumours”, Berman DM, Karhadkar SS, Maitra A, Montes De Oca R, Gerstenblith MR, Briggs K, Parker AR, Shimada Y, Eshleman JR, Watkins DN, Beachy PA., Nature. 2003 Oct 23;425(6960):846-51)、および小細胞肺癌(“Hedgehog signalling within airway epithelial progenitors and in small-cell lung cancer”, Watkins DN, Berman DM, Burkholder SG, Wang B, Beachy PA, Baylin SB., Nature. 2003 Mar 20;422(6929):313-7)を含む。
【0033】
前記にしたがって、本発明はさらに、治療有効量(下記の“投与および医薬組成物”を参照)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、処置を必要とする対象における上記記載のいずれかの疾患または障害を予防または処置するための方法を提供する。上記使用のいずれかのために、必要な用量は投与経路、処置すべき特定の状態および所望の効果に依存して変化する。
【0034】
投与および医薬組成物:
一般に、本発明の化合物は単独でまたは1種もしくはそれ以上の治療剤との組合せのいずれかで当分野で既知の通常のおよび許容される形式のいずれかを介して、治療有効量を投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康度、使用される化合物の有効性および他の要素に依存して広く変化し得る。一般に、満足な結果は体重あたり約0.03から2.5mg/kgの1日投与量で全身に得られることが示される。大型哺乳動物、例えばヒトにおいて指示される1日投与量は、例えば1日に4回までの分割用量でまたは遅延形で都合良く投与される約0.5mgから約100mgの範囲である。経口投与のための適当な単位用量形は約1から50mgの活性成分を含む。
【0035】
本発明の化合物は任意の慣用の経路、特に経腸的に、例えば経口的に、例えば錠剤形もしくはカプセル形で、または非経腸的に、例えば注射溶液形もしくは懸濁液形で、局所的に、例えばローション形、ゲル形、軟膏形もしくはクリーム形で、または経鼻形もしくは坐薬形で医薬組成物として投与できる。少なくとも1種の薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と一緒に遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物を含む医薬組成物を、混合、造粒または被覆方法による慣用の方法で製造できる。例えば、経口組成物は、活性成分とa)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤のためにまたc)結合剤、例えば、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤を一緒に含む錠剤またはゼラチンカプセルであり得る。注射組成物は、等張水溶液または懸濁液であり得、そして座薬は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造し得る。該組成物は滅菌し得そして/またはアジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩および/またはバッファーを含む。加えて、それらはまた、治療に有効な他の物質を含み得る。適当な経皮投与用製剤は有効量の本発明の化合物を担体と含む。担体は宿主の皮膚を介する輸送を助けるために、薬理学的に許容される吸収性溶媒を含み得る。例えば、経皮デバイスは裏当て部分、化合物と所望により担体を含む貯蔵部、所望により長時間にわたって制御されたおよびあらかじめ決められた速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための速度制御バリア、および皮膚にデバイスを固定するための手段を含む、バンデージ形である。マトリックス経皮製剤もまた使用され得る。例えば、皮膚および眼への、適当な局所投与用製剤は、当分野で既知の好ましくは水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。このような製剤は、可溶化剤、安定化剤、等張増加剤、バッファーおよび保存剤を含み得る。
【0036】
本発明の化合物は、治療有効量の1種またはそれ以上の治療剤との組合せ(薬学的組合せ剤)で投与され得る。例えば、相乗効果が、免疫調節剤もしくは抗炎症剤または他の抗腫瘍治療剤と一緒に生じ得る。本発明の化合物が他の治療と一緒に投与されるとき、共投与される化合物の用量は、もちろん使用される共薬剤の型、使用される特定の薬剤、処置される状態などに依存して変化する。
【0037】
本発明はまた、a)遊離形または薬学的に許容される塩形の本明細書に記載のとおりの本発明の化合物である第1の薬剤、およびb)少なくとも1つの共薬剤を含む薬学的組合せ剤、例えばキットを提供する。該キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0038】
本明細書で利用される“共投与”または“組合せ投与”などの用語は、個々の患者に選択された治療剤を投与することを含むことを意味し、そして必ずしも薬剤が同じ投与経路によりまたは同時に投与されない処置レジメンを含むことを意図する。
【0039】
本明細書で使用される“薬学的組合せ剤”なる用語は、1種を超える活性成分の混合または組合せから生じる生産物を意味し、そして活性成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤の両方を含む。“固定された組合せ剤”なる用語は、活性成分、例えば式Iの化合物、および共薬剤両方が、単一の存在物形または調剤形で同時に患者に投与されることを意味する。“固定されていない組合せ剤”なる用語は、活性成分、例えば式Iの化合物、および共薬剤両方が、同時に、共にまたは特定の時間制限なしに連続してのいずれかで、別々の物として、治療有効量の2つの化合物を患者の体内に投与することを意味する。後者は、カクテル治療、例えば3つまたはそれ以上の活性成分の投与にも適用する。
【0040】
本発明の化合物の製造方法
本発明はまた、本発明の化合物の製造方法を含む。記載されている反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を、これらが最終産物において望ましいとき、これらの望ましくない反応の参加を避けるために保護することが必要であり得る。慣用の保護基は、標準的技法にしたがって使用し得る、例えばT.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991参照。
【0041】
Lが−ZNR−(例えば、Zはチアゾルである)である式Iの化合物を、下記の反応スキームIのとおりに進行させることにより製造できる:
反応スキームI:
【化3】

[式中、n、Y、R、R、RおよびRは、発明の要約における式Iで定義のとおりである。]。
【0042】
式Iの化合物を、適当な溶媒(例えばエタノールなど)の存在下、約50から約100℃の温度範囲で式2の化合物を式3の化合物と反応させることにより製造できる。該反応は完了するために約20時間までかかり得る。これらの反応条件はまた、Lが−ZNRC(O)−であるときの本発明の化合物を合成するために使用できる。
【0043】
Lが−C(O)NRN=CH−である式Iの化合物を、下記の反応スキームIIのとおりに進行させることにより製造できる:
反応スキームII:
【化4】

[式中、n、Y、R、R、RおよびRは、発明の要約における式Iで定義のとおりである。]。
【0044】
最初に、式6の化合物を、適当な溶媒(例えばジクロロメタンなど)の存在下、約10から約40℃の温度範囲で式4の化合物を式5の化合物と反応させることにより製造できる。次に、式Iの化合物を、適当な溶媒(例えばTHFなど)、適当な強塩基(例えば水素化リチウムなど)の存在下、式6の化合物を式7の化合物と反応させることにより製造できる。該反応は約0から約10℃の温度範囲で進行し、そして完了するために約5時間までかかり得る。
【0045】
式Iの化合物の合成の詳細な例は下記実施例において見ることができる。
【0046】
本発明の化合物のさらなる製造方法
本発明の化合物を、遊離塩基形の化合物を薬学的に許容される無機酸または有機酸と反応させることにより薬学的に許容される酸付加塩として製造できる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を、遊離塩基形の化合物を薬学的に許容される無機塩基または有機塩基と反応させることにより製造できる。
【0047】
あるいは、塩形の本発明の化合物を出発物質または中間体の塩を使用し製造できる。
【0048】
遊離酸形または遊離塩基形の本発明の化合物を、対応する塩基付加塩形または酸付加塩形、各々から製造できる。例えば酸付加塩形の本発明の化合物は、適当な塩基(例えば水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)と処理することにより対応する遊離塩基に変換できる。塩基付加塩形の本発明の化合物は、適当な酸(例えば塩酸など)と処理することにより対応する遊離酸に変換できる。
【0049】
非酸化形の本発明の化合物を適当な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、ジオキサン溶液など)中で、0から80℃で還元剤(例えば硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物など)と処理することにより本発明の化合物のN−オキシドから製造できる。
【0050】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を当業者に既知の方法で製造できる(例えばさらなる詳細のためにSaulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985参照のこと)。例えば、適当なプロドラッグを本発明の非誘導化合物を適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなど)と反応させることにより製造できる。
【0051】
本発明の化合物の保護されている誘導体を当業者に既知の方法で製造できる。保護基の創造およびその除去に適用できる技術の詳細な説明はT. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999において見ることができる。
【0052】
本発明の化合物を、本発明の工程中に溶媒和物(例えば水和物)として都合良く製造または形成できる。本発明の化合物の水和物を、有機溶媒、例えばジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールを使用し、水性/有機溶媒混合物から再結晶することにより都合良く製造できる。
【0053】
本発明の化合物を、化合物のラセミ混合物を光学的に活性な分割剤と反応させ、一組のジアステレオマー化合物を形成し、該ジアステレオマーを分離し、そして光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、それらの個々の立体異性体として製造できる。エナンチオマーの分離は本発明の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を使用し行い得るが、分離できる複合体が好ましい(例えば、結晶のジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは異なる物理的性質(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、そしてこれらの相違を利用して容易に分離できる。ジアステレオマーをクロマトグラフィー、または好ましくは溶解度の差異に基づく分割/分離技術により分割できる。次いで光学的に純粋なエナンチオマーを、ラセミ化をもたらさないであろう実用的手段により分割剤と一緒に回収する。ラセミ混合物から化合物の立体異性体の分離に適用できる技術のより詳細な説明はJean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981において見ることができる。
【0054】
手短に言えば、式Iの化合物を下記の工程により作製できる:
(a)反応スキームIおよびIIの工程;ならびに
(b)所望により本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換すること;
(c)所望により塩形の本発明の化合物を非塩形に変換すること;
(d)所望により本発明の化合物の非酸化形を薬学的に許容されるN−オキシドに変換すること;
(e)所望により本発明の化合物のN−オキシド形を非酸化形に変換すること;
(f)所望により異性体の混合物から本発明の化合物の個々の異性体に分離すること;
(g)所望により本発明の非誘導化合物を薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換すること;および
(h)所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体をその非誘導形に変換すること。
【0055】
出発物質の製造において特に記載のない限り、化合物は既知であるか、または当分野で既知の方法に準じてもしくは下記の実施例に記載のとおりに製造できる。
【0056】
当業者は、上記変換は本発明の化合物の製造法の代表例のみであり、そして他の既知の方法を同様に使用できることを理解できよう。
【実施例】
【0057】
本発明は、本発明による式Iの化合物の製造を説明する下記実施例により限定されることなくさらに例示する。
【0058】
実施例1
(4−エトキシ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン
【化5】

CS(10mL)中の2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン(1.0g、7.0mmol)の混合物にAlCl(2.9g)および塩化クロロアセチル(1.1mL)を加える。混合物を4時間還流し、そして一晩室温で撹拌する。砕いた氷および水を混合物に加え、そして反応物をNaHCOで中和する。混合物をCHCl(5×50mL)に抽出し、そして有機層を混合し、真空下で乾燥させる。得られた固体をCHCl/エーテルでの再結晶により精製し、褐色固体としてクロロケトン(0.95g、65%)を得る。208mgのクロロケトンを15mLのエタノールに溶解する。400mgのp−エトキシフェニルチオ尿素を混合物に加える。反応混合物を3時間還流し、そして最終生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/MeOH=20/1)により精製し、(4−エトキシ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミンを得る:1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 9.04 (d, J = 7.0 Hz), 7.58-7.54 (m, 3H), 7.40-7.37 (m, 1H), 7.01-6.95 (m, 3H), 6.90 (s, 1H), 4.09 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 2.64 (s, 3H), 1.45 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。
【0059】
適当な出発物質を使用し上記実施例に記載の手段を繰り返すことにより、表1において同定するとおりの式Iの下記の化合物を得る。
【表1】

【表2】

【表3】

【0060】
本発明の化合物を、ヘッジホッグシグナル伝達経路を抑制する能力を評価するためにアッセイする。
【0061】
Hh経路阻害に対するGli−Lucレポーターアッセイ
マウス胚中胚葉繊維芽細胞、C3H10T1/2細胞(American Type Culture Collection, ATCC, Manassas, VAから得た)を、37℃で5%のCOの空気雰囲気下で、10%熱不活化FBS(Gibco/Invitrogen, Carlsbad, CA)、50単位/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシン(Gibco/Invitrogen, Carlsbad, CA)を補ったMEM−α培地(Gibco/Invitrogen, Carlsbad, CA)で培養する。10cm皿中のC3H10T1/2細胞を、製造業者のプロトコールにしたがって8μgのGli−レポータープラスミドおよび2μgのウミシイタケルシフェラーゼ制御レポーター(Promega, Madison, WI)と30μLのFuGENE6(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)と共に共トランスフェクトする。12時間後、細胞をトリプシン処理し、そして2%のFBSを補ったMEM−α培地を有する96−ウェルプレートに再びまき、そして組み換えマウスShhタンパク質(E.coliで発現された、2μg/mL)および異なる濃度の本発明の化合物で処理する。48時間後、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性をDual−GloTMルシフェラーゼアッセイ系(Promega, Madison, WI)でアッセイする。ホタルルシフェラーゼ活性はウミシイタケルシフェラーゼ活性に標準化する。EC50は、化合物の効果がルミネセンスシグナルを50%減少するときに測定される。
【0062】
式Iの化合物は、好ましくは500nM以下、より好ましくは200nM以下のEC50を有する。例えば、(4−エトキシ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン(実施例1)はShh介在経路の活性化を阻止するために30nMのEC50を有する。
【0063】
細胞毒性アッセイ
細胞毒性アッセイを下記の手段にしたがって髄芽腫細胞(Daoy細胞)、基底細胞癌腫細胞(TE354.T細胞)および対照細胞(ヒト正常繊維芽細胞)における本発明の化合物の効果を比較して行う:
【0064】
Daoy細胞(髄芽腫細胞系)をATCCから購入し、そして37℃で5%のCOの空気雰囲気下で、2mMのL−グルタミンおよび1.5g/Lの重炭酸ナトリウムを含むように調節されたEarle’s BSS、0.1mMの非必須アミノ酸および1.0mMのピルビン酸ナトリウムならびに10%のFBSを有する最小必須培地(Eagle)において培養する。
【0065】
TE354.T細胞(ATCCから)を4mMのL−グルタミン(L-glutamine fetal bovine serum)および10%のFBSを有するダルベッコ改変イーグル培地において培養する。
【0066】
正常なヒト皮膚繊維芽細胞(Clonetics)を繊維芽細胞培養培地(Clonetics)において培養する。
【0067】
上記細胞系の各々を独立して96ウェルプレートにまき、そして5,000−10,000細胞/ウェルの密度にまで培養する。異なる濃度で本発明の化合物を細胞培養に加える。2日間後、細胞の生存を製造業者のプロトコールにしたがってCell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assay Kit(Promega)で評価する。細胞の生存を発光シグナリングにより直接測定し、そしてEC50は、該シグナルを50%抑制するときに測定される。
【0068】
式Iの化合物は、好ましくは500nM以下、より好ましくは200nM以下のEC50を有する。例えば、(4−エトキシ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン(実施例1)は、正常なヒト皮膚繊維芽細胞(対照)において毒性効果を示さず、Daoy細胞の増殖に対して30nMのEC50を有する。
【0069】
本明細書に記載の実施例および態様は説明の目的のみであること、および、それに照らした様々な変更または変化は当業者に示唆され、そしてそれはこの出願および特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく包含されるべきであることと理解される。本明細書に引用されたすべての出版物、特許および特許出願はすべての目的のために出典明示により本明細書に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
nは0、1、2および3から選択され;
YはNRおよびS(O)0−2から選択され;ここでRは水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
Lは−Z−NR−、−Z−NRC(O)−および−C(O)NRN=CH−から選択され;ここでRは水素およびC1−4アルキルから選択され;ここでZはC5−10ヘテロアリールであり;
は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシおよび−NHC(O)Rから選択され;ここでRは水素およびC1−4アルキルから選択されるか;またはRおよびRが結合している原子と一緒にRおよびRは所望により1から3個の独立して選択されるRラジカルで置換されたイミダゾ[1,2−a]ピリジンを形成し;ここでRはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシ、−NRC(O)Rおよび−NR−から選択され;ここでRは独立して水素およびC1−4アルキルから選択される。]
の化合物ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および異性体を細胞と接触させることを含む、細胞のヘッジホッグ経路を抑制するための方法。
【請求項2】
化合物が式Ia、Ib、IcおよびId:
【化2】

[式中、mは0、1および2から選択される。]
から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物がN−[2−(4−エトキシ−フェニルアミノ)−4’−メチル−[4,5’]ビチアゾリル−2’−イル]−プロピオンアミド;N−[2−(4−メトキシ−フェニルアミノ)−4’−メチル−[4,5’]ビチアゾリル−2’−イル]−プロピオンアミド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(4−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(4−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド;[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−(4−エトキシ−フェニル)−アミン;4−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェノール;[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−(2,4−ジメチル−フェニル)−アミン;(4−クロロ−フェニル)−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;(2,4−ジブロモ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;(2,4−ジメチル−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;N−{4−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;4−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェノール;N−{4−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;(4−クロロ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;およびN−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−ベンズアミドから選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞がPtc機能喪失型、ヘッジホッグ機能獲得型、スムーゼンド機能獲得型またはGli機能獲得型の表現型を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
インビボまたはインビトロにおいて細胞がヘッジホッグアンタゴニストと接触している請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物を治療適用の一部として動物に投与する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
治療適用が膵臓癌、前立腺癌、髄芽腫、基底細胞癌腫および小細胞肺癌から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項8】
式I:
【化3】

[式中、
nは0、1、2および3から選択され;
YはNRおよびS(O)0−2から選択され;ここでRは水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
Lは−Z−NR−、−Z−NRC(O)−および−C(O)NRN=CH−から選択され;ここでRは水素およびC1−4アルキルから選択される;ここでZはC5−10ヘテロアリールであり;
は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシおよび−NHC(O)Rから選択され;ここでRは水素およびC1−4アルキルから選択されるか;またはRおよびRが結合している原子と一緒にRおよびRは所望により1から3個の独立して選択されるRラジカルで置換されたイミダゾ[1,2−a]ピリジンを形成し;ここでRはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキルおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシ、−NRC(O)Rおよび−NR−から選択され;ここでRは独立して水素およびC1−4アルキルから選択される。]
の化合物ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および異性体を細胞と接触させることを含む、細胞の望ましくない増殖を抑制するための方法。
【請求項9】
化合物が式Ia、Ib、IcおよびId:
【化4】

[式中、mは0、1および2から選択される。]
から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
化合物が:N−[2−(4−エトキシ−フェニルアミノ)−4’−メチル−[4,5’]ビチアゾリル−2’−イル]−プロピオンアミド;N−[2−(4−メトキシ−フェニルアミノ)−4’−メチル−[4,5’]ビチアゾリル−2’−イル]−プロピオンアミド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(4−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(4−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジド;2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−カルボン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンジリデン)−ヒドラジド;[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−(4−エトキシ−フェニル)−アミン;4−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェノール;[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−(2,4−ジメチル−フェニル)−アミン;(4−クロロ−フェニル)−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;(2,4−ジブロモ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;(2,4−ジメチル−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;N−{4−[4−(2,7−ジメチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;4−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェノール;N−{4−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イルアミノ]−フェニル}−アセトアミド;(4−クロロ−フェニル)−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−アミン;およびN−[4−(2−メチル−イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)−チアゾル−2−イル]−ベンズアミドから選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞が膵臓癌、前立腺癌、髄芽腫、基底細胞癌腫および小細胞肺癌から選択される請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2008−518954(P2008−518954A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539294(P2007−539294)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039442
【国際公開番号】WO2006/050351
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【Fターム(参考)】