ヘッドチップ、ヘッドチップの製造方法、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置
【課題】両端部分に位置するノズル孔における吐出速度の遅れを抑制し、複数のノズル孔から均一な吐出速度で液体を吐出させることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の吐出チャネル145のうち、吐出チャネル145の矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル145aのポンプ長P1が、中央に位置する吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成されていることを特徴とする。
【解決手段】複数の吐出チャネル145のうち、吐出チャネル145の矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル145aのポンプ長P1が、中央に位置する吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル孔より液体を吐出して被記録媒体に画像や文字を記録するヘッドチップ、このヘッドチップを有する液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の1つとして、記録紙等の被記録媒体にインク(液体)を吐出して画像や文字等の記録を行うインクジェット方式の記録装置(例えば、プリンタやファックス等)が提供されている。この記録装置は、インクタンクからインク供給管を介してインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを供給し、インクジェットヘッドに備えられたヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録を行っている。
【0003】
上述したヘッドチップは、アクチュエータプレートとカバープレートとを貼り合せるとともに、これらの端面にノズルプレートを貼着させた構成からなる。
アクチュエータプレートは、圧電材料で形成されたプレートであり、その表面には、側壁でそれぞれ区切られた複数のチャネルが並列に形成されている。チャネルは、インクが流れ込んで溜まる断面視凹形状の溝であり、チャネルの延在方向一端は、アクチュエータプレートの端面において開放されている。チャネルの両側の側壁には、それぞれ延在方向に沿って延びた板状の駆動電極が斜方蒸着等によって形成されている。これら駆動電極には、制御手段によって駆動電圧が印加される。カバープレートは、チャネルを覆うプレートであり、アクチュエータプレートの表面(チャネルが形成された面)に接着材を介して貼着されている。また、このカバープレートには、チャネルにインクを導入させる導入口が形成され、インクジェットヘッドに供給されたインクは導入口を通ってチャネルに供給される。ノズルプレートは、チャネルに連通するノズル孔が形成されたプレートであり、貼り合わされたアクチュエータプレートとカバープレートとの端面に接着材を介して貼着されている。
【0004】
上述したヘッドチップでは、アクチュエータプレートに対してカバープレートやノズルプレートを貼着させる接着材の量が少ないと、接着不良を起してインク漏れが生じる虞があるため、接着材を多少多めに塗布する必要がある。このため、接着材を介してアクチュエータプレートにカバープレートやノズルプレートを貼り付けたとき、余剰な接着材がはみ出てチャネル内に流れ込み、この余剰接着材によってチャネルの容量が小さくなる。
【0005】
チャネルへの余剰接着材の流れ込みの対策として、チャネルの開口縁に切り欠きを形成したヘッドチップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このヘッドチップでは、アクチュエータプレートとカバープレートとを貼り合せたときにはみ出た余剰接着材が切り欠き内に保持されるため、余剰接着材によってチャネルの容量が小さくなるのを防止できるとされている。
【0006】
ここで、通常のアクチュエータプレートは、その両端部分(チャネルの配列方向の両端部分)の接着面が中央部分の接着面よりも広くなっているため、両端に近いチャネルほど余剰な接着材が流れ込み易い。
しかしながら、上述した特許文献1記載のヘッドチップでは、複数のチャネルが同一形状を成しているため、余剰接着材によって両端部分のチャネルの容量が中央部分のチャネルに比べて小さくなり、両端部分のチャネルによるインク吐出の吐出速度が遅くなるという問題が生じる。また、上述したヘッドチップでは、チャネルの開口縁に切り欠きを形成しているため、隣り合うチャネルの間に配置された側壁における上面の幅が狭くなり、カバープレートに対して接着される面積が小さくなる。その結果、アクチュエータプレートとカバープレートとの接着性が低下する。また、側壁の上面は応力が集中する箇所であるため、この側壁上面が小さくなると、ヘッドチップの耐久性が低下する。
また、アクチュエータプレートのチャネルを形成する際に、上述した切り欠きを形成しなければならず、製造工程が増加し、生産性が低下するという問題がある。さらに、アクチュエータプレートにノズルプレートを貼着させたときの余剰接着材がチャネルに流れ込み、チャネルの容量が小さくなるという問題がある。
【0007】
そこで、例えば特許文献2では、複数のチャネルのうち、チャネルの配列方向の両端側に位置するチャネルの容積(幅または深さ)を、配列方向の中央に位置するチャネルの容積よりも大きく形成する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−230045号公報
【特許文献2】特開2010−143110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したインクジェットヘッドにおいて、インクを吐出するには、まずインクを吐出するチャネルを形成する2つの側壁の駆動電極に対して駆動電圧を印加し、各側壁を、インクを吐出させるチャネルに隣接しているチャネル側へ突出するように変形させる。具体的には、インクを吐出するチャネルを形成する側壁を、高さ方向略半分の位置で屈曲させ、チャネルがあたかも膨らむように変形させる。
これにより、チャネルの容積が増大し、インクが導入口からチャネルに誘導される。その後、駆動電極に印加した駆動電圧をゼロにすることで、側壁の変形が元に戻り、一旦増大したチャネルの容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出するチャネルの内部の圧力が増加し、インクが加圧され、インクがチャネル内から吐出される。
【0010】
この場合、側壁を高さ方向略半分の位置で効率的に屈曲させるためには、側壁の上端から高さ方向の半分程度の位置まで駆動電極を形成することが好ましい。
しかしながら、上述した特許文献2に示す構成のうち、両端におけるチャネルの深さを深くすると、深くしたチャネルを形成する側壁だけが他の側壁に比べて高くなる。この場合、駆動電極は上述した斜方蒸着等によって各側壁に対して一括して形成するため、一部分(深くしたチャネルを形成する側壁の駆動電極)だけ長く形成することが難しい。したがって、全ての側壁において高さ方向略半分の位置まで駆動電極を形成することが難しい。
そのため、深くしたチャネルを形成する側壁では、側壁の高さに対して駆動電極が短くなる。その結果、側壁を効率的に屈曲させることができず、駆動効率が低下するという課題がある。
【0011】
また、チャネルの幅を広くした場合には、側壁における上面の幅が狭くなり、上述したようにアクチュエータプレートとカバープレートとの接着性が低下する。
【0012】
本発明は、上述した従来の問題が考慮されたものであり、両端部分に位置するノズル孔における吐出速度の遅れを抑制し、複数のノズル孔から均一な吐出速度で液体を吐出させることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るヘッドチップは、液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さよりも長く形成されていることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、両端のチャネルの延在方向における長さ(以下、チャネル長)を、中央のチャネルのチャネル長よりも長く形成することで、両端のチャネルの容積を中央のチャネルよりも大きくできる。この場合、上述したように接着時において、両端のチャネル内には中央のチャネル内に比べて大量の余剰な接着剤が流れ込むため、両チャネル間での容積が略均等になる。すなわち、両端のチャネルを中央のチャネルに比べて予め大きく形成しておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各チャネル間での容積のバラツキを抑制できる。その結果、両端のチャネルでの液体吐出速度の遅れを抑制して、各噴射孔から噴射される液体の噴射速度のバラツキを抑えることができる。よって、複数の噴射孔から均一な噴射速度で液体を噴射させることができる。
特に、チャネルの深さ方向において、従来のように各チャネル間での深さを変えることがないので、各チャネルを形成する側壁の側面に、同一工程で同一の高さ分(略半分の位置)だけ駆動電極を一括して形成することができる。これにより、全てのチャネルを形成する側壁を効率的に屈曲させることができ、駆動効率を維持できる。
また、従来のように、側壁の幅が狭くなることもないので、アクチュエータプレートとカバープレートとの接着性も維持できる。
【0015】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、最端のチャネルについてだけ他のチャネルと異なる加工を施すので、アクチュエータプレートを容易に作成できる。
【0016】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、複数のチャネルの容積がより均一となり、複数のチャネルによる液体噴射速度のバラツキを低減できる。
【0017】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴としている。
両端に近いチャネルほど余剰接着材が流れ込み易いが、この構成によれば、チャネルの容積が中央から両端に向かって漸次増大することで、余剰接着材の流れ込みが多いチャネルほどその容積が大きくなり、複数のチャネルの容量がより均一となる。
【0018】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、余剰な接着剤が流れ込んだ後の、各チャネル間の容積差を確実に縮小できるため、複数のチャネルによる液体噴射速度のバラツキを低減できる。
【0019】
また、本発明に係るヘッドチップは、液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さよりも長く形成されていることを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、両端のチャネルの延在方向におけるカバープレートとの接着領域の長さ(以下、ポンプ長という)を、中央のチャネルのポンプ長よりも長く形成することで、両端のチャネルの駆動領域を長くできる。すなわち、両端のチャネルのポンプ長を中央のチャネルに比べて予め長くしておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各チャネル間での駆動領域のバラツキを抑制できる。これにより、チャネルの容積を変えることなく、剰接着材の流れ込みによる両端のチャネルでの液体噴射速度の遅れを抑制できる。その結果、各噴射孔から噴射される液体の噴射速度のバラツキを抑え、複数の噴射孔から均一な噴射速度で液体を噴射させることができる。
特に、チャネルの深さ方向において、従来のように各チャネル間での深さを変えることがないので、各チャネルを形成する側壁の側面に、同一工程で同一の高さ分(略半分の位置)だけ駆動電極を一括して形成することができる。これにより、全てのチャネルを形成する側壁を効率的に屈曲させることができ、駆動効率を維持できる。
また、従来のように、側壁の幅が狭くなることもないので、アクチュエータプレートとカバープレートとの接着性も維持できる。
【0021】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記接着領域が長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、最端のチャネルについてだけ他のチャネルと異なる加工を施すので、アクチュエータプレートを容易に作成できる。
【0022】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記接着領域の長さが長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、複数のチャネル間での液体噴射速度のバラツキを確実に低減できる。
【0023】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴としている。
両端に近いチャネルほど余剰接着材が流れ込み易いが、この構成によれば、チャネルのポンプ長を中央から両端に向かって漸次増大させることで、余剰接着材の流れ込みが多いチャネルほどその駆動領域が長くなる。これにより、複数のチャネル間での液体噴射速度のバラツキを確実に低減できる。
【0024】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、余剰な接着剤が流れ込んだ後において、各チャネル間での液体噴射速度のバラツキを低減できる。
【0025】
また、本発明に係るヘッドチップの製造方法は、液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップの製造方法であって、円板状のダイスカッターを用いて前記アクチュエータプレートに前記チャネルを形成するチャネル形成工程を有し、前記チャネル形成工程では、前記複数のチャネルのうち、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルを、第1ダイスカッターを用いて形成する第1ダイシング工程と、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルを、前記第1ダイスカッターよりも外径が大きい第2ダイスカッターを用いて形成する第2ダイシング工程と、を有していることを特徴としている。
この構成によれば、第1ダイスカッター及び第2ダイスカッターによりチャネルを形成する際に、それぞれ同一の走行量に設定した場合であっても、チャネル長の長さを変更できる。すなわち、ダイシングのプログラムの数値等を変更することなく、ダイスカッターの外径を変更するだけで、簡単に両端のチャネルにおけるチャネル長を長くできる。
【0026】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、上記本発明のヘッドチップと、前記液体を前記導入口に供給する供給手段と、前記駆動電極に前記駆動電圧を印加する制御手段と、を備えることを特徴としている。
このような特徴により、供給手段によってヘッドチップの導入口に液体が供給され、制御手段によって駆動電極に駆動電圧を印加することでヘッドチップ内の液体がノズル孔から噴射される。このとき、上述したヘッドチップによって余剰接着材の流れ込みによる両端のチャネルでの液体噴射速度の遅れが抑制されるので、中央のノズル孔と同じ噴射速度で両端のノズル孔から液体を噴射させることができる。
【0027】
また、本発明に係る液体噴射装置は、被記録媒体を予め決められた搬送方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された前記被記録媒体の表面に対して前記ノズル孔が対向する向きに配置された上記本発明の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、を備えることを特徴としている。
このような特徴により、搬送手段によって被記録媒体を搬送するとともに、移動手段によって液体噴射ヘッドを往復移動させながらノズル孔から被記録媒体に向けて液体を噴射させることで被記録媒体に画像や文字等が記録される。このとき、中央のノズル孔と同じ噴射速度で両端のノズル孔から液体が噴射されるので、両端のノズル孔から被記録媒体の所定位置に正確に液体を当てることができ、高品質の記録を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るヘッドチップ、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法によれば、両端部分に位置するノズル孔における噴射速度の遅れを抑制し、複数のノズル孔から均一な噴射速度で液体を噴射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】インクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】ヘッドチップの斜視図である。
【図4】ヘッドチップの分解斜視図である。
【図5】ヘッドチップの分解斜視図である。
【図6】図3のA−A線に沿うヘッドチップの断面図である。
【図7】(a)は図6のB−B線に沿う断面図であり、(b)はC−C線に沿う断面図である。
【図8】アクチュエータ基板の平面図である。
【図9】(a)は図8のE−E線に沿う断面図、(b)は図8のD−D線に沿う断面図である。
【図10】アクチュエータ基板とカバー基板とを接合させた接合体を、カバー基板側から見た平面図である。
【図11】アクチュエータプレートの他の構成を示す平面図である。
【図12】アクチュエータプレートの他の構成を示す平面図である。
【図13】第2実施形態におけるヘッドチップの断面図であり、(a)は図6のB−B線に相当する断面図、(b)はC−C線に相当する断面図である。
【図14】第2実施形態におけるヘッドチップの製造方法を説明するための図であり、アクチュエータ基板とカバー基板とを接合させた接合体を、カバー基板側から見た平面図である。
【図15】図6相当する図であり、第3実施形態におけるヘッドチップの断面図である。
【図16】ヘッドチップの他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、液体噴射装置の一例として、インク(液体)Wを利用して記録を行うインクジェットプリンタ1を例に挙げて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
(インクジェットプリンタ)
まず、第1実施形態について説明する。図1は、インクジェットプリンタの斜視図である。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、インクWを吐出する複数のインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)2と、記録紙(被記録媒体)Pを予め決められた矢印L1方向(搬送方向)に搬送する搬送手段3と、前記搬送方向に直交する矢印L2方向(走査方向)に複数のインクジェットヘッド2を往復移動させる移動手段4と、を備えている。
【0032】
つまり、このインクジェットプリンタ1は、記録紙Pを矢印L1方向に搬送しながら、矢印L1方向に直交する矢印L2方向にインクジェットヘッド2を移動させて、記録紙Pに文字や画像を記録する、いわゆるシャトルタイプのプリンタである。
なお、本実施形態では、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー)のインクWを吐出する4つのインクジェットヘッド2を備えている場合を例にしている。なお、これら4つのインクジェットヘッド2は、同一構成とされている。
【0033】
これら4つのインクジェットヘッド2は、略直方体形状の筐体5内に組み込まれたキャリッジ6に搭載されている。
このキャリッジ6は、複数のインクジェットヘッド2を載置する平板状の基台6aと、この基台6aから垂直に立ち上げられた壁部6bと、で構成されている。そして、キャリッジ6は、矢印L2方向に沿って配置されたガイドレール7によって往復移動可能に支持されている。また、キャリッジ6は、ガイドレール7に支持された状態で一対のプーリ8に巻回された搬送ベルト9に連結されている。一対のプーリ8のうち、一方のプーリ8はモータ10の出力軸に連結され、モータ10からの回転駆動力を受けて回転するようになっている。これにより、キャリッジ6は、矢印L2方向に向けて往復移動できるようになっている。
すなわち、これら一対のガイドレール7、一対のプーリ8、搬送ベルト9及びモータ10は、上述した移動手段4として機能する。
【0034】
また、筐体5には、一対のガイドレール7と同じ矢印L2方向に沿って一対の搬入ローラ15と、一対の搬送ローラ16と、が間隔を空けて並設されている。一対の搬入ローラ15は、筐体5の背面側に設けられ、一対の搬送ローラ16は筐体5の前面側に設けられている。そして、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、図示しないモータによって記録紙Pを間に挟んだ状態で回転するようになっている。これにより、筐体5の背面側から前面側に向かう矢印L1方向に沿って記録紙Pを搬送することができる。
すなわち、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、上述した搬送手段3として機能する。
【0035】
図2は、インクジェットヘッドの斜視図である。
図2に示すように、各インクジェットヘッド2は、図1に示すキャリッジ6の基台6aに図示しないネジを介して取り付けられる矩形状の固定板20と、この固定板20の上面に固定されたヘッドチップ21と、このヘッドチップ21の後述する共通インク室17にインクWを供給する供給手段22と、後述する駆動電極37に駆動電圧を印加する制御手段23と、を主に備えている。これら各インクジェットヘッド2は、搬送手段3によって搬送された記録紙Pの表面に対して後述するノズル孔33aが対向する向きに配置されている。
【0036】
図3はヘッドチップの斜視図であり、図4はヘッドチップの分解斜視図である。
図3,図4に示すように、ヘッドチップ21は、アクチュエータプレート30、カバープレート31、支持プレート32及びノズルプレート33で主に構成されている。そして、アクチュエータプレート30に図示せぬ接着材を介してカバープレート31が重ね合わされているとともに、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31の端面に図示せぬ接着材を介してノズルプレート33が貼着された構成からなる。
【0037】
図5はヘッドチップの分解斜視図であり、図6は図3のA−A線に沿うヘッドチップの断面図である。
アクチュエータプレート30は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されたプレートであり、その分極方向が厚さ方向(矢印L2方向)に沿って一方向に設定されている。このアクチュエータプレート30のカバープレート31側の面(表面)には、図3〜図6に示すように、矢印L3方向(延在方向)に延びたチャネル35が矢印L1方向(配列方向)に一定間隔をあけて並列に複数形成されている。すなわち、複数のチャネル35は、側壁36によってそれぞれ区分けされるとともに、カバープレート31側の面に開口部50を有する断面凹形状の溝である。また、チャネル35は、カバープレート31により閉塞されてインクWが流入しないように構成されたダミーチャネル46と、カバープレート31の後述するスリット(導入孔)19に連通してインクWが充填される吐出チャネル45と、が矢印L1方向に沿って交互に形成されている。
【0038】
各チャネル35のうち、ダミーチャネル46は、矢印L3方向に沿って深さが一様に形成され、アクチュエータプレート30の両端側で開口している。
【0039】
また、各チャネル35のうち、吐出チャネル45は、矢印L3方向において、矩形チャネル51と、円弧チャネル52と、を有している。
矩形チャネル51は、一端側(先端側)がアクチュエータプレート30の先端面(ノズルプレート33側の端面)において開口している。一方で、矩形チャネル51の他端部(基端部)は、矢印L3方向に沿ってアクチュエータプレート30の途中まで延びている。
円弧チャネル52は、一端(先端)が矩形チャネル51の内側に向けて開口し、他端(基端)は後述する浅溝部53の内側に向けて開口している。円弧チャネル52の底面は、基端側(ノズルプレート33とは反対側)に向かうにしたがって漸次深さが浅くなるように形成されている。具体的に、円弧チャネル52の底面は、後述する製造工程で用いるダイスカッター215(図9参照)の外径に倣った曲率半径を有する円弧状に形成されている。
【0040】
円弧チャネル52の基端側には、矢印L2方向において矩形チャネル51よりも浅く形成された浅溝部53が形成されている。浅溝部53は、矢印L3方向に沿って円弧チャネル52の基端からアクチュエータプレート30の基端面(ノズルプレート33側反対側の端面)まで延びている。この浅溝部53は矩形チャネル51の延長線上に形成され、その一端(先端)は円弧チャネル52の内側に向けて開口している。浅溝部53の他端(基端)はアクチュエータプレート30の基端面において開口し、図示しない封止手段によって封止されている。
【0041】
図7における(a)は図6のB−B線に沿う断面図であり、(b)はC−C線に沿う断面図である。
図7に示すように、複数の吐出チャネル45のうち、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)の両端に位置する吐出チャネル45aの矢印L3方向における長さ、具体的には矩形チャネル51及び円弧チャネル52を合わせた長さ(以下、チャネル長K1という)が、矢印L1方向中央に位置する吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くなっている。すなわち、両端の吐出チャネル45aの容積は、中央の吐出チャネル45bの容積よりも大きくなっている。具体的に、矢印L1方向両側の最端の吐出チャネル45aのチャネル長K1のみが、他の吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くなっており、矢印L1方向両側の最端の吐出チャネル45aの容積のみが他の吐出チャネル45bの容積よりも大きくなっている。
【0042】
この場合、アクチュエータプレート30にカバープレート31やノズルプレート33を貼着させたときに、最端の吐出チャネル45aに流れ込む余剰な接着材の流入量と、他の吐出チャネル45bに流れ込む余剰な接着材の流入量と、の差を算出し、その差の分だけ容積が拡大するように、最端の吐出チャネル45aのチャネル長K1を、他の吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くしている。例えば両側(最端)の吐出チャネル45aのチャネル長K1は、中央(他)の吐出チャネル45bのチャネル長K2と比べて2%〜10%程度長く形成されている。なお、矢印L1方向における各チャネル35(吐出チャネル45及びダミーチャネル46)の幅、及び矢印L2方向における深さは、各チャネル35間でそれぞれ同一に形成されている。
【0043】
また、複数のチャネル35の側壁36には、駆動電極37が形成されている。駆動電極37は、矢印L3方向において、側壁36の全域に亘って形成されている。また、駆動電極37は、矢印L2方向において、側壁36におけるカバープレート31側の表面から中央部に亘って、側壁36の略半分程度の領域に形成されている。また、浅溝部53の底面には接続電極39が形成されている、そして、上述した駆動電極37と、後述するフレキシブル基板27の引き出し電極27aと、が接続電極39を介して電気的に接続されるようになっている。
駆動電極37は、駆動電圧が印加されたときに、圧電厚み滑り効果により側壁36を変形させることでチャネル35内の圧力を高め、充填されたインクWを吐出チャネル45内から吐出させる働きをしている。
【0044】
なお、駆動電極37と引き出し電極27aとの接続について、吐出チャネル45及びダミーチャネル46の両方を対象として、詳細に説明する。
まず、電気的な接続状態は、吐出チャネル45がGND電位(接地電位)に接続され、ダミーチャネル46に駆動電圧が供給される。吐出チャネル45をGND電位にしたのは、導電性インクを使用した場合に、スリット19を介して隣り合う吐出チャネル45の駆動電極37同士が導通してしまうことを防止するためである。駆動電極37同士が導通してしまうと、駆動電極37が電気分解を起こし腐食してしまう問題や、個別に駆動することができなくなる問題がある。
【0045】
本実施形態では、吐出チャネル45に関して、図5に示すように、個別に引き出し電極27aを形成することが可能である。また、全ての吐出チャネル45がGND電位であるため、フレキシブル基板27上で、全ての吐出チャネル45の接続電極39に対応する引き出し電極27aを共通化し、全ての接続電極39を当該引き出し電極27aと接触させ、GND電位とすることも可能である。もしくは、アクチュエータプレート30の表面(L2方向の面)で、非導電材を介してダミーチャネル46の駆動電極37を跨いで、吐出チャネル45の接続電極39同士を共通化し、当該接続電極39の一部を引き出し電極27aと接触させ、GND電位とすることも可能である。
【0046】
また、ダミーチャネル46の駆動電極37は、吐出チャネル45の駆動電極37と側壁36を介して対向する駆動電極37が二枚一組となっている。この二枚の駆動電極37に同じ駆動電圧を同時に供給することによって、二枚の側壁36を同時に変形させている。そのため、図5に示すように、個別に同じ駆動電圧を同時に与えることも可能である。また、フレキシブル基板27上でこれら二枚の駆動電極37に対応する引き出し電極27aを共通化することも可能である。もしくは、アクチュエータプレート30の表面(L2方向の面)で、吐出チャネル45の駆動電極37または接続電極39を跨いで、ダミーチャネル46の接続電極39同士を共通化し、当該接続電極39の一部を引き出し電極27aと接触させ、駆動電圧が供給されることも可能である。
【0047】
なお、図5に図示していないが、ダミーチャネル46は、矢印L3方向に沿って深さが一様に形成され、アクチュエータプレート30の両端側で開口しているため、駆動電極37と引き出し電極27aとの接続が困難である。このため、駆動電極37をアクチュエータプレート30の表面(L2方向の面)まで形成し、その上から被さるように引き出し電極27aを配置することが可能である。この場合、アクチュエータプレート30の表面まで形成された駆動電極37が接続電極39としての役割を担う。これによって、駆動電極37と引き出し電極27aとの電気的な接続を高精度に実施することができる。また、矢印L1方向の両側最端のダミーチャネル46における外側の壁に形成された駆動電極37には、電圧が印加されないため、この駆動電極37に対応する引き出し電極27aは形成しても、形成しなくても構わない。
さらに、最端のダミーチャネル46の駆動電極37は、吐出チャネル45と隣り合う駆動電極37のみ電気的に接続すればよい。つまり、図6に示す全てのチャネル35のうち、最左の駆動電極37は電気的に接続されていない。これは、側壁36を駆動するために使用されないためである。同様に、図6に図示しないが、全てのチャネル35のうち、最右の駆動電極37も電気的に接続されていない。
【0048】
図3,図4に示すように、カバープレート31は、例えばセラミックス等で形成されたプレートである。カバープレート31は、各浅溝部53の基端側、及びダミーチャネル46の基端側を露出させた状態で、アクチュエータプレート30の表面に接着材を介して重ね合わせて貼着されている。また、カバープレート31は、アクチュエータプレート30とは反対側の表面に形成された凹状の共通インク室17と、共通インク室17及び吐出チャネル45をそれぞれ連通させる複数のスリット(導入孔)19と、を有している。
【0049】
共通インク室17は、チャネル35の基端側において、チャネル35の延在方向(矢印L3方向)に直交するように延在する矢印L1方向に長い長方形の開口である。共通インク室17には、供給手段22から供給されるインクWが貯留される。
スリット19は、例えば矢印L3方向を長軸とする楕円形状の孔であり、共通インク室17から各吐出チャネル45に向けてインクWが流通するように構成されている。
【0050】
そして、アクチュエータプレート30にカバープレート31が接着された状態では、チャネル35の開口部50がカバープレート31によって閉塞される。これにより、独立した複数のチャネル35(吐出チャネル45及びダミーチャネル46)が形成されている。
【0051】
支持プレート32は、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持しているとともに、ノズルプレート33を支持している。支持プレート32には、矢印L1方向に延在する嵌合孔32aが形成されている。そして、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31が、支持プレート32の嵌合孔32a内に嵌め込まれた状態で支持プレート32に支持されている。この際、支持プレート32の先端側の表面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と面一となっている。
【0052】
ノズルプレート33は、厚みが50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状のプレートである。ノズルプレート33は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着材を介して貼着されている。つまり、ノズルプレート33の一方の面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着される接着面となっている。一方で、ノズルプレート33の他方の面は、図1に示す記録紙Pに対向する対向面となっている。なお、ノズルプレート33の対向面には、インクWの付着等を防止するための撥水性を有する撥水膜がコーティングされている。
【0053】
また、このノズルプレート33には、矢印L1方向に間隔を空けて複数のノズル孔33aが形成されている。これら複数のノズル孔33aは、少なくとも吐出チャネル45に対向する位置にそれぞれ形成されており、この吐出チャネル45内に連通するようになっている。具体的に説明すると、図6に示すように、ノズル孔33aの中心は、吐出チャネル45の中心に配置され、吐出チャネル45のピッチと同間隔で形成されている。
また、各ノズル孔33aは、外形輪郭線が円形を描くように円状に形成されている。しかも、ノズル孔33aは、接着面側から対向面側に向かうに従い漸次縮径されたテーパ孔であり、接着面側の入口径(ノズル孔33aの外形輪郭線の直径)が対向面側の出口径よりも大きくなっている。なお、ノズル孔33aは、エキシマレーザ装置等を用いて形成されている。
さらに、図6において、ノズル孔33aは各吐出チャネル45だけでなく、ダミーチャネル46にも設けられるように示した。もちろん、ノズル孔33aは、少なくとも吐出チャネル45に設けられていればよく、ダミーチャネル46に設けられていなくてもよい。
【0054】
上述した構成のヘッドチップ21は、図2に示すように、上述したように固定板20の上面に固定されている。この固定板20の上面には、アルミニウム等で形成された矩形状のベースプレート24が垂直に立ち上がった状態で固定されているとともに、ヘッドチップ21の共通インク室17にインクWを供給する流路部材22aが固定されている。この流路部材22aの上方には、インクWを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器(ダンパ)22bがベースプレート24に支持された状態で配置されている。この圧力緩衝器22bと流路部材22aとは、インク連結管22cを介して連結されている。また、圧力緩衝器22bの上部には、インクWが供給されてくる供給チューブ40が取り付けられている。
このように構成されているので、供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bにインクWが供給されると、このインクWは圧力緩衝器22b内の貯留室に一旦貯留される。そして、圧力緩衝器22bは、貯留されたインクWのうち、所定量のインクWをインク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21の共通インク室17に供給するようになっている。
すなわち、流路部材22a、圧力緩衝器22b及びインク連結管22cは、上述した供給手段22として機能する。
【0055】
なお、供給チューブ40は、図1に示すように、筐体5内に組み込まれたインクタンク41に連結されている。これにより、インクタンク41に貯留されている色の異なるインクWが、4つのインクジェットヘッド2にそれぞれ供給されるようになっている。
【0056】
また、図2に示すように、ベースプレート24には、ヘッドチップ21を駆動するための集積回路等の駆動回路25が搭載されたIC基板26が固定されている。この駆動回路25とヘッドチップ21の駆動電極37とは、フレキシブル基板27を介して電気的に接続されている。
フレキシブル基板27は、図5に示すように、カバープレート31の基端側に露出された浅溝部53の基端側部分に嵌合される複数の引き出し電極27aがプリント配線されている。引き出し電極27aは、接続電極39(上述したアクチュエータプレート30の表面まで形成された場合のダミーチャネル46の駆動電極37を含む)に接触して電気的に接続されることで、接続電極39を介して駆動電極37に接続されている。そして、駆動回路25は、フレキシブル基板27を介して駆動電極37に駆動電圧を印加して、インクWの吐出を行わせている。
すなわち、駆動回路25及びフレキシブル基板27は、上述した制御手段23として機能する。
【0057】
(ヘッドチップの製造方法)
ここで、上述した構成のヘッドチップ21の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、圧電材料からなるアクチュエータ基板200と、セラミックス等からなるカバー基板201と、を接合した後、接合した接合体202をヘッドチップ21の形成領域ごとに切断線Mに沿って切断することで、複数のヘッドチップ21を同時に製造する方法について説明する。図8はアクチュエータ基板の平面図であり、図9の(a)は図8のE−E線に沿う断面図、(b)は図8のD−D線に沿う断面図である。なお、図8においては図面を分かり易くするため、浅溝部53の記載を省略する。
【0058】
まず、図8,図9に示すように、アクチュエータ基板200を用意する。アクチュエータ基板200は、複数のアクチュエータプレート30(図3参照)が矢印L3方向に沿って連なって形成されたものである。そして、このアクチュエータ基板200を切削し、アクチュエータ基板200に複数のチャネル35(吐出チャネル45及びダミーチャネル46)及び浅溝部53を、矢印L1方向に沿って並列に形成する(チャネル形成工程)。
【0059】
以下の説明では、上述したチャネル形成工程において、各チャネル35のうち、吐出チャネル45及び浅溝部53を形成する場合について説明する(吐出チャネル形成工程)。吐出チャネル形成工程では、円板状のダイスカッター215を矢印L3方向に沿って走行させて行う。この際、浅溝部53の形成領域においては、加工深さ(矢印L2方向の深さ)を浅くした状態でダイスカッター215を矢印L3方向に沿って走行させる。これにより、浅溝部53の形成領域に第1ダイシングライン210(図9参照)が形成される。
その後、ダイスカッター215が吐出チャネル45の形成領域に差し掛かった時点で、矢印L2方向に沿って加工深さを深くし、この状態でダイスカッター215を矢印L3方向に沿って走行させる(図9中矢印参照)。これにより、吐出チャネル45の形成領域には、第1ダイシングライン210よりも矢印L2方向に深い第2ダイシングライン211が形成される。
そして、この動作を矢印L3方向に沿って繰り返し、アクチュエータ基板200上に第1ダイシングライン210及び第2ダイシングライン211を交互に形成していく。これにより、第1ダイシングライン210及び第2ダイシングライン211が、矢印L3方向に沿って連続的に延在する第3ダイシングライン213が形成される。そして、この第3ダイシングライン213を、矢印L1方向で間隔を空けて複数形成していく。
【0060】
この場合、第2ダイシングライン211の両端部(浅溝部53の形成領域との境界部分)には、円弧チャネル52となる部分がダイスカッター215の外径に倣った曲率半径に形成される。すなわち、第2ダイシングライン211は、隣接するアクチュエータプレート30のチャネル35の2つ分の長さに形成されている。また、各第1ダイシングライン210は、浅溝部53の2つ分の長さに形成されている。
【0061】
ここで、本実施形態では、吐出チャネル形成工程において、各第3ダイシングライン213のうち、配列方向中央部に位置する第3ダイシングライン213は、外径φ1の第1ダイスカッター215aを用いて形成する(第1ダイシング工程)。
一方で、各第3ダイシングライン213のうち、配列方向両端に位置する第3ダイシングライン213は、第1ダイスカッター215aよりも外径が大きい第2ダイスカッター215b(外径φ2(φ2>φ1))を用いて形成する(第2ダイシング工程)。
【0062】
これにより、第1ダイスカッター215a及び第2ダイスカッター215bにより第2ダイシングライン211を形成する際に、それぞれ同一の走行量に場合した状態であっても、両端の第2ダイシングライン211の長さ(チャネル長)を長くできる。すなわち、ダイシングのプログラムの数値を変更することなく、ダイスカッター215の外径を変更するだけで、簡単に第2ダイシングライン211の長さを変更できる。なお、第2ダイスカッター215bで形成した第2ダイシングライン211の両端部における底面の曲率半径は、第1ダイスカッター215aで形成した第2ダイシングライン211の両端部における底面の曲率半径に比べて大きく形成される。
【0063】
次に、各チャネル35のうち、ダミーチャネル46を形成する場合について説明する(ダミーチャネル形成工程)。ダミーチャネル形成工程では、アクチュエータ基板200上の矢印L3方向に沿って円板状のダイスカッター(不図示)を走行させる。この際、アクチュエータ基板200における矢印L3方向の全域に亘って、加工深さ(矢印L2方向の深さ)を一定にした状態でダイスカッターを走行させる。これにより、アクチュエータ基板200上には、矢印L3方向の両端で開口する第4ダイシングライン216が形成される。すなわち、アクチュエータ基板200上には、吐出チャネル45及び浅溝部53に相当する第3ダイシングライン213と、ダミーチャネル46に相当する第4ダイシングライン216と、が矢印L1方向に沿って交互に形成される。
【0064】
なお、第3ダイシングライン213及び第4ダイシングライン216は、矢印L1方向に沿って順に形成していってもよく、第3ダイシングライン213(または第4ダイシングライン216)の形成後、隣接する第3ダイシングライン213(または第4ダイシングライン216)間に第4ダイシングライン216(または第3ダイシングライン213)を形成しても構わない。
【0065】
次に、アクチュエータ基板200に駆動電極37及び接続電極39をそれぞれパターン形成する(電極形成工程)。具体的には、公知の斜方蒸着等により、アクチュエータ基板200の表面に対して斜め方向から蒸着材料(例えば、アルミ等)を飛散させる。これにより、第1ダイシングライン210(浅溝部53)内に接続電極39を形成する。また、第2ダイシングライン211の側壁36の側面上に駆動電極37を形成する。この時、第2ダイシングライン211の底面から側壁36の矢印L2方向中途部までは駆動電極37は形成されない。
【0066】
また、本実施形態において、上述した電極の共通化など、アクチュエータ基板200の表面(L2方向の面)に所望の電極部材を形成する場合は、リフトオフ法などを用いるのが一般的である。リフトオフ法では、吐出チャネル形成工程及びダミーチャネル形成工程の後にドライフィルムから、感光性樹脂膜をアクチュエータ基板200の表面(L2方向の面)に形成する。次に、露光及び現像工程を通して感光性樹脂膜を選択的に除去し、図示しない樹脂膜のパターンを形成する。樹脂膜のパターンは、アクチュエータ基板200の表面に、所望の電極部材等の電極パターンをリフトオフ法により形成するために設けており、電極を形成する領域からは樹脂膜を除去し、電極を形成しない領域には樹脂膜を残す。
【0067】
図10はアクチュエータ基板とカバー基板とを接合させた接合体を、カバー基板側から見た平面図である。
一方、図10に示すように、カバー基板201に共通インク室17及びスリット19を形成する(カバー基板形成工程)。具体的には、サンドブラスト等により、カバー基板201に共通インク室17を形成した後、上述したアクチュエータ基板200上における吐出チャネル45(図6参照)に対応する位置にスリット19を形成する。
【0068】
次に、アクチュエータ基板200にカバー基板201を貼着する。具体的には、アクチュエータ基板200またはカバー基板201に接着材を塗布し、その後、アクチュエータ基板200とカバー基板201とを重ね合わせる。これにより、アクチュエータ基板200とカバー基板201とが接着材を介して接合される。
【0069】
次に、アクチュエータ基板200とカバー基板201とが接合されてなる接合体202を、ヘッドチップ21毎(図10中切断線M参照)に切断する。具体的には、矢印L3方向において、第1ダイシングライン210における中間位置、及び第2ダイシングライン211における中間位置からそれぞれ矢印L1方向に沿ってダイスカッター(不図示)を走行させ、接合体202を切断する。これにより、一枚の接合体202から複数のアクチュエータプレート30及びカバープレート31が貼り合わされた状態で切り出される。
【0070】
次に、貼り合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持プレート32に取り付ける。具体的には、貼り合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持プレート32の嵌合孔32aの内側に挿入する。この状態で、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面を、支持プレート32の先端側の表面と面一にして固定する。
【0071】
次に、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面に、ノズルプレート33を貼着する。具体的には、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面及び支持プレート32の先端側の表面、またはノズルプレート33の裏面に接着材を塗布する。その後、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面、及び支持プレート32の先端側の表面にノズルプレート33を重ね合わせる。これにより、ノズルプレート33が、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面に接着材を介して貼着される。
【0072】
上述したようにアクチュエータプレート30に接着材を介してカバープレート31やノズルプレート33を貼着させたとき、両側最端の吐出チャネル45aには中央の吐出チャネル45bよりも多量の余剰な接着材が流れ込む。ところが、本実施形態では、両側最端の吐出チャネル45aは、中央の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長くなっているため(K1>K2)、インクWが充填される両側最端の吐出チャネル45aの容量が確保される。すなわち、両側最端の吐出チャネル45aの容量は、余剰な接着材が流れ込むことで中央の吐出チャネル45bの容量と略均等になる。
【0073】
次に、上述したように構成されたインクジェットプリンタ1を利用して、記録紙Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、4つのインクタンク41にはそれぞれ異なる色のインクWが十分に封入されているものとする。また、インクタンク41内のインクWが供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bに供給された状態となっている。そのため、所定量のインクWが、インク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21の共通インク室17に供給され、共通インク室17からスリット19を介して吐出チャネル45内に充填された状態となっている。
【0074】
このような初期状態のもと、インクジェットプリンタ1を作動させると、一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16が回転して記録紙Pを搬送方向(矢印L1方向)に向けて搬送する。また、これと同時にモータ10がプーリ8を回転させて搬送ベルト9を動かす。これにより、キャリッジ6がガイドレール7でガイドされながら走査方向(矢印L2方向)に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド2のヘッドチップ21より4色のインクWを記録紙Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。特に、シャトル方式であるので、記録紙Pの所望する範囲に対して正確に記録を行うことができる。
【0075】
ここで、各インクジェットヘッド2の動きについて、以下に詳細に説明する。
キャリッジ6によって往復移動が開始されると、駆動回路25は、フレキシブル基板27を介して駆動電極37に駆動電圧を印加する。より詳しくは、インクWを吐出する吐出チャネル45の両側の2つの側壁36にそれぞれ設けられている駆動電極37に駆動電圧を印加し、この2つの側壁36を、吐出チャネル45に隣接しているダミーチャネル46側へ突出するように変形させる。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート30は分極方向が一方向であり、駆動電極37が側壁36の側面の矢印L2方向における中間位置までしか形成されていないため、駆動電圧を印加することで、側壁36の矢印L2方向中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル45があたかも膨らむように変形する。
【0076】
このように、2つの側壁36の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出チャネル45の容積が増大する。そして、吐出チャネル45の容積が増大したことにより、共通インク室17内に貯留されたインクWがスリット19から吐出チャネル45内に誘導される。そして、吐出チャネル45の内部に誘導されたインクWは圧力波となって吐出チャネル45の内部を通過し、この圧力波がノズル孔33aに到達したタイミングで、駆動電極37に印加した駆動電圧をゼロにする。これにより、側壁36の変形が元に戻り、一旦増大した吐出チャネル45の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル45の内部の圧力が増加し、インクWが加圧される。その結果、インクWが吐出チャネル45内から吐出される。
【0077】
吐出されたインクWは、ノズル孔33aを通って外部に吐出される。しかもノズル孔33aを通過する際に、インクWは液滴状、すなわちインク滴となって吐出される。その結果、上述したように、記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
特に、本実施形態のノズル孔33aは、断面テーパ状であるので、インク滴を速い速度で真っ直ぐに直進性良く吐出することができる。よって、高画質に記録を行うことができる。
【0078】
このように、本実施形態では、複数の吐出チャネル45のうち、矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル45aのチャネル長K1(矢印L3方向における長さ)を、中央に位置する吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長く形成する構成とした。
この構成によれば、両端の吐出チャネル45aは中央の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長く形成されているため、両端の吐出チャネル45aの容積を中央の吐出チャネル45bよりも大きくできる。この場合、上述したように接着時において、両端の吐出チャネル45a内には中央の吐出チャネル45b内に比べて大量の余剰な接着剤が流れ込むことで、両吐出チャネル45a,45b間での容積が略均等になる。
【0079】
すなわち、両端の吐出チャネル45aを中央の吐出チャネル45bに比べて予め大きく形成しておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各吐出チャネル45間での容積のバラツキを抑制できる。その結果、両端の吐出チャネル45aでの液体吐出速度の遅れを抑制して、複数のノズル孔33aから均一な吐出速度でインクWを吐出させることができる。この際、両側(最端)の吐出チャネル45aのチャネル長K1を、中央(他)の吐出チャネル45bのチャネル長K2に対して2%以上長く形成することで、余剰接着剤が流れ込んだ後の、各吐出チャネル45間の容積差を確実に縮小できるため、複数の吐出チャネル45によるインクWの吐出速度のバラツキを低減できる。
したがって、上述したインクジェットヘッド2を備えるインクジェットプリンタ1によれば、両端のノズル孔33aから記録紙Pの所定位置に正確にインクWが当てることができ、高品質の記録を実現することができる。
【0080】
特に、従来のように各吐出チャネル45間において矢印L2方向での深さを変えることがないので、各吐出チャネル45を形成する側壁36の側面に、同一工程で同一の高さ分(略半分の位置)だけ駆動電極37を一括して形成することができる。これにより、全ての吐出チャネル45を形成する側壁36を効率的に屈曲させることができ、駆動効率を維持できる。
また、各吐出チャネル45間において、矢印L1方向での幅を変えることもないので、アクチュエータプレート30とカバープレート31との接着性も維持できる。
【0081】
しかも、上述したヘッドチップ21では、両端の吐出チャネル45aのチャネル長K1を、中央の吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くするだけなので、従来の製作工程と略同一の工程でアクチュエータプレート30を作成することが可能である。具体的に、本実施形態では、両端の吐出チャネル45aと、中央の吐出チャネル45bと、でダイスカッター215の外径を変更するだけで、ダイスカッター215の走行量を変更させずに、簡単にチャネル長の長さを変化させることができる。そのため、生産性を低下させることなく、アクチュエータプレート30にチャネル長の異なる吐出チャネル45a,45bを形成することができる。
【0082】
この場合、上述したヘッドチップ21では、複数の吐出チャネル45のうち、両側最端の吐出チャネル45aのみが他の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長くなっているので、両側最端の吐出チャネル45aを切削するときだけダイスカッター215の外径を変更すればよい。そのため、アクチュエータプレート30を容易に作成することができ、生産性の低下を更に抑えることができる。
【0083】
ところで、上述した実施形態では、チャネル35のうち、矢印L1方向の両側最端のチャネル35をダミーチャネル46に設定し、この両側最端のダミーチャネル46を基準に吐出チャネル45及びダミーチャネル46を矢印L1方向に沿って交互に形成する構成について説明した。
このようにした理由は、矢印L1方向における両側最端のチャネル35の吐出効率の悪さに起因する。すなわち、両側最端のチャネル35は一方(矢印L1方向内側)が側壁36によって仕切られており、他方(矢印L1方向外側)が側壁36ではなくアクチュエータプレート30によって形成される外壁である。この場合、上述した斜方蒸着により外壁にも駆動電極37は形成されるものの、外壁は側壁36よりも矢印L1方向における幅が広いため、屈曲変形するものではない。そのため、両側最端のチャネル35は一方の側壁36のみが駆動する片壁駆動となる。このような片壁駆動には、使用可能(吐出できる)なインクと、使用不可能(吐出しない)なインクと、が存在する。
【0084】
これに対して、本実施形態では、矢印L1方向の両側最端のチャネル35を、ダミーチャネル45として設定しているため、吐出チャネル45のうち、最端の吐出チャネル45aであっても、両側は側壁36で囲まれることになる。そのため、インクWの種類を問わず、上述の効果を奏することができる。
【0085】
なお、上述した実施形態では、複数の吐出チャネル45のうちの両側最端の吐出チャネル45aだけが他の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長くなっていたが、これに限らず、図11に示すように、複数の吐出チャネル45のうち、配列方向両側の最端から複数の吐出チャネル45aのチャネル長が他の吐出チャネル45bよりも長くなっていてもよい。
通常、両端に近い吐出チャネル45ほど余剰な接着材が流れ込み易い。ここで、上述した構成にすることにより、複数の吐出チャネル45の容量がより均一となり、複数の吐出チャネル45による液体吐出速度のバラツキが低減される。これにより、より均一な吐出速度でインクWを吐出させることができ、さらに高品質の記録を実現することができる。
【0086】
また、図12に示すように、複数の吐出チャネル45aのチャネル長が矢印L1方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成しても構わない。
上述したように両端に近い吐出チャネル45ほど余剰な接着材が流れ込み易い。ここで、上述した構成では、吐出チャネル45のチャネル長が中央から両端に向かって漸次増大されていることで、余剰接着材の流れ込みが多い吐出チャネル45ほどその容積が大きくなり、複数の吐出チャネル45の容量がより均一となり、複数の吐出チャネル45による液体吐出速度のバラツキが低減される。これにより、より均一な吐出速度でインクWを吐出させることができ、さらに高品質の記録を実現することができる。なお、図11,図12はアクチュエータプレートの平面図であるが、図中では説明を分かり易くするために浅溝部の記載を省略している。
【0087】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図13の(a)は図6のB−B線に相当する断面図であり、(b)はC−C線に相当する断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
図13に示すように、本実施形態では複数の吐出チャネル145のうち、吐出チャネル145の矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル145aのポンプ長P1(図13(a)参照)が、中央に位置する吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成されている。ポンプ長とは、アクチュエータプレート30とカバープレート31との接着領域の長さであり、矢印L3方向における吐出チャネル145の駆動領域の長さである。すなわち、本実施形態におけるポンプ長とは、矢印L3方向においてヘッドチップ21の先端からスリット19までの長さを示している。
【0089】
本実施形態では、最端の吐出チャネル145aに流れ込む余剰な接着材の流入量と、他の吐出チャネル145bに流れ込む余剰な接着材の流入量と、の差の分だけ駆動領域の容積が拡大するように、両側最端の吐出チャネル145aのポンプ長P1を他の吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成する。例えば両側(最端)の吐出チャネル145aのポンプ長P1は、中央(他)の吐出チャネル145bのポンプ長P2と比べて2%〜10%程度長く形成されている。なお、矢印L1方向における各吐出チャネル145の幅、矢印L2方向における長さ、及び矢印L3方向におけるチャネル長は、各吐出チャネル145間でそれぞれ同一に形成されている。
【0090】
ここで、両側の吐出チャネル145aのポンプ長P1を、中央の吐出チャネル145bのポンプ長P2と比べて長く形成するためには、図14に示すように、ヘッドチップ21の製造工程において、カバー基板201に形成するスリット119のうち、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて小さく形成する。さらに、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて第2ダイシングライン211の矢印L3方向における外側に形成する。これにより、両側最端の吐出チャネル145aのポンプ長P1が、中央の吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成される。
【0091】
なお、両側の吐出チャネル145aのポンプ長P1を中央の吐出チャネル145bのポンプ長P2に比べて長く形成するためには、上述した方法のうち、何れか一方のみを採用しても構わない。例えば、各スリット119のうち、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて、矢印L3方向における内側(ノズル孔31側)から小さく形成してもよい。
また、スリット119a,119bの大きさは変えず、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて矢印L3方向における外側に配置してもよい。
【0092】
本実施形態によれば、吐出チャネル145の矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル145aのポンプ長P1を、中央に位置する吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成することで、矢印L3方向における吐出チャネル145の駆動領域を長くできる。すなわち、両端の吐出チャネル145aの駆動領域を、中央の吐出チャネル145bに比べて予め長く形成しておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各吐出チャネル145間での駆動領域のバラツキを抑制できる。これにより、吐出チャネル145の容積を変えることなく、余剰接着材の流れ込みによる両側最端の吐出チャネル145aによる液体吐出速度の遅れを抑制できる。その結果、複数のノズル孔33aから均一な吐出速度でインクWを吐出させることができる。この際、両側(最端)の吐出チャネル145aのポンプ長P1を、中央(他)の吐出チャネル145bのポンプ長P2に対して2%以上長く形成することで、余剰接着剤が流れ込んだ後の、各吐出チャネル145間の駆動領域差を確実に縮小できるため、複数の吐出チャネル145によるインクWの吐出速度のバラツキを低減できる。
【0093】
なお、上述した実施形態では、複数の吐出チャネル145のうちの両側最端の吐出チャネル145aのポンプ長P1だけが、他の吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長くなっているが、これに限らず、配列方向両側の最端から複数の吐出チャネル145aが他の吐出チャネル145bのポンプ長よりも長くなっていてもよい。
また、複数の吐出チャネル145のポンプ長が配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなっていてもよい。
【0094】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図15は図6に相当する図であり、第3実施形態におけるヘッドチップの断面図である。なお、以下の説明では、第1及び第2実施形態の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図15に示すように、矢印L1方向に沿って配列されたチャネル235のうち、矢印L1方向両側から複数のチャネル235を吐出チャネル245としない(ダミーチャネル246とする)点で、上述した第1実施形態と相違している。
【0095】
具体的には、各チャネル235のうち、矢印L1方向両側の最端のチャネル235から中央に向かって並んだ複数(例えば、3つ)のチャネル235は、カバープレート31により閉塞されている。すなわち、アクチュエータプレート30の矢印L1方向両側は、複数のダミーチャネル246が並んだダミー領域R1を構成している。
一方、矢印L1方向中央部(ダミー領域R間)では、インクWが充填される吐出チャネル245と、インクWが流入しないように構成されたダミーチャネル246と、が矢印L1方向に沿って交互に配列された吐出領域R2を構成している。
【0096】
そして、吐出チャネル245のうち、吐出領域R2において矢印L1方向両側に位置する吐出チャネル245aのチャネル長K1やポンプ長P1を、矢印L1方向中央部に位置する吐出チャネル245bよりも長くすることで、両端の吐出チャネル245aでの液体吐出速度の遅れをより一層抑制できる。なお、ダミー領域R1におけるダミーチャネル246の数は、3つに限らず、適宜設計変更が可能である。また、図15においては、ノズル孔33aが各チャネル235に対応して設けられている場合について説明したが、これに限らず、少なくとも吐出チャネル245に対応して設けられていればよい。
【0097】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した各実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0098】
また、上述した各実施形態では、複数のノズル孔33aが配列方向に直線状に一列に配列されているが、本発明は、複数のノズル孔33aが直線状に配列されてなく、縦方向(矢印L2方向)にずらして配列されていてもよい。例えば、複数のノズル孔33aが斜めに配列されていてもよく、或いは、千鳥状に配列されていてもよい。
また、ノズル孔33aの形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
【0099】
さらに、上述した実施形態では、チャネル長及びポンプ長の何れかを調整する場合について説明したが、これに限らず、チャネル長及びポンプ長の双方を調整しても構わない。
【0100】
また、上述した実施形態では、スリット19を介してインクWが供給される吐出チャネル45と、インクWが供給されないダミーチャネル46とを交互に形成した場合について説明したが、これに限られない。すなわち、例えば非水性のインクWを利用する場合等は、スリット19を設けずに、各吐出チャネル345と共通インク室17とを連通させても構わない。例えば図16に示すように、矢印L1方向に沿って配列されたチャネル335のうち、矢印L1方向の最端のチャネル335を、カバープレート31により閉塞してダミーチャネル346とする。そして、ダミーチャネル346よりも矢印L1方向で内側に配列されたチャネル335を、共通インク室17に連通する吐出チャネル345とする。
この場合、各吐出チャネル345のうち、矢印L1方向の最端の吐出チャネル345aに連通する部分の共通インク室17を、矢印L3方向で狭く、かつ基端側に形成することで、最端の吐出チャネル345aのポンプ長を中央の吐出チャネル345bのポンプ長に比べて長く形成できる。なお、ダミーチャネル346に相当する部分にノズル孔33aを形成しなければ、仮にダミーチャネル346と共通インク室17とが連通したとしても、ダミーチャネル346からインクが吐出されることはない。
【0101】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…インクジェットプリンタ(液体噴射装置) 2…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド) 3…搬送手段 4…移動手段 19…スリット(導入孔) 21…ヘッドチップ 22…供給手段 23…制御手段 30,130…アクチュエータプレート 31,131…カバープレート 33…ノズルプレート 33a…ノズル孔 35,235,335…チャネル 36…側壁 37…駆動電極 45,45a,45b,145,145a,145b,245,245a,245b,345a,345b…吐出チャネル(チャネル) 46,146,246,346…ダミーチャネル P…記録紙(被記録媒体) W…インク(液体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル孔より液体を吐出して被記録媒体に画像や文字を記録するヘッドチップ、このヘッドチップを有する液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の1つとして、記録紙等の被記録媒体にインク(液体)を吐出して画像や文字等の記録を行うインクジェット方式の記録装置(例えば、プリンタやファックス等)が提供されている。この記録装置は、インクタンクからインク供給管を介してインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)にインクを供給し、インクジェットヘッドに備えられたヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録を行っている。
【0003】
上述したヘッドチップは、アクチュエータプレートとカバープレートとを貼り合せるとともに、これらの端面にノズルプレートを貼着させた構成からなる。
アクチュエータプレートは、圧電材料で形成されたプレートであり、その表面には、側壁でそれぞれ区切られた複数のチャネルが並列に形成されている。チャネルは、インクが流れ込んで溜まる断面視凹形状の溝であり、チャネルの延在方向一端は、アクチュエータプレートの端面において開放されている。チャネルの両側の側壁には、それぞれ延在方向に沿って延びた板状の駆動電極が斜方蒸着等によって形成されている。これら駆動電極には、制御手段によって駆動電圧が印加される。カバープレートは、チャネルを覆うプレートであり、アクチュエータプレートの表面(チャネルが形成された面)に接着材を介して貼着されている。また、このカバープレートには、チャネルにインクを導入させる導入口が形成され、インクジェットヘッドに供給されたインクは導入口を通ってチャネルに供給される。ノズルプレートは、チャネルに連通するノズル孔が形成されたプレートであり、貼り合わされたアクチュエータプレートとカバープレートとの端面に接着材を介して貼着されている。
【0004】
上述したヘッドチップでは、アクチュエータプレートに対してカバープレートやノズルプレートを貼着させる接着材の量が少ないと、接着不良を起してインク漏れが生じる虞があるため、接着材を多少多めに塗布する必要がある。このため、接着材を介してアクチュエータプレートにカバープレートやノズルプレートを貼り付けたとき、余剰な接着材がはみ出てチャネル内に流れ込み、この余剰接着材によってチャネルの容量が小さくなる。
【0005】
チャネルへの余剰接着材の流れ込みの対策として、チャネルの開口縁に切り欠きを形成したヘッドチップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このヘッドチップでは、アクチュエータプレートとカバープレートとを貼り合せたときにはみ出た余剰接着材が切り欠き内に保持されるため、余剰接着材によってチャネルの容量が小さくなるのを防止できるとされている。
【0006】
ここで、通常のアクチュエータプレートは、その両端部分(チャネルの配列方向の両端部分)の接着面が中央部分の接着面よりも広くなっているため、両端に近いチャネルほど余剰な接着材が流れ込み易い。
しかしながら、上述した特許文献1記載のヘッドチップでは、複数のチャネルが同一形状を成しているため、余剰接着材によって両端部分のチャネルの容量が中央部分のチャネルに比べて小さくなり、両端部分のチャネルによるインク吐出の吐出速度が遅くなるという問題が生じる。また、上述したヘッドチップでは、チャネルの開口縁に切り欠きを形成しているため、隣り合うチャネルの間に配置された側壁における上面の幅が狭くなり、カバープレートに対して接着される面積が小さくなる。その結果、アクチュエータプレートとカバープレートとの接着性が低下する。また、側壁の上面は応力が集中する箇所であるため、この側壁上面が小さくなると、ヘッドチップの耐久性が低下する。
また、アクチュエータプレートのチャネルを形成する際に、上述した切り欠きを形成しなければならず、製造工程が増加し、生産性が低下するという問題がある。さらに、アクチュエータプレートにノズルプレートを貼着させたときの余剰接着材がチャネルに流れ込み、チャネルの容量が小さくなるという問題がある。
【0007】
そこで、例えば特許文献2では、複数のチャネルのうち、チャネルの配列方向の両端側に位置するチャネルの容積(幅または深さ)を、配列方向の中央に位置するチャネルの容積よりも大きく形成する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−230045号公報
【特許文献2】特開2010−143110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したインクジェットヘッドにおいて、インクを吐出するには、まずインクを吐出するチャネルを形成する2つの側壁の駆動電極に対して駆動電圧を印加し、各側壁を、インクを吐出させるチャネルに隣接しているチャネル側へ突出するように変形させる。具体的には、インクを吐出するチャネルを形成する側壁を、高さ方向略半分の位置で屈曲させ、チャネルがあたかも膨らむように変形させる。
これにより、チャネルの容積が増大し、インクが導入口からチャネルに誘導される。その後、駆動電極に印加した駆動電圧をゼロにすることで、側壁の変形が元に戻り、一旦増大したチャネルの容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出するチャネルの内部の圧力が増加し、インクが加圧され、インクがチャネル内から吐出される。
【0010】
この場合、側壁を高さ方向略半分の位置で効率的に屈曲させるためには、側壁の上端から高さ方向の半分程度の位置まで駆動電極を形成することが好ましい。
しかしながら、上述した特許文献2に示す構成のうち、両端におけるチャネルの深さを深くすると、深くしたチャネルを形成する側壁だけが他の側壁に比べて高くなる。この場合、駆動電極は上述した斜方蒸着等によって各側壁に対して一括して形成するため、一部分(深くしたチャネルを形成する側壁の駆動電極)だけ長く形成することが難しい。したがって、全ての側壁において高さ方向略半分の位置まで駆動電極を形成することが難しい。
そのため、深くしたチャネルを形成する側壁では、側壁の高さに対して駆動電極が短くなる。その結果、側壁を効率的に屈曲させることができず、駆動効率が低下するという課題がある。
【0011】
また、チャネルの幅を広くした場合には、側壁における上面の幅が狭くなり、上述したようにアクチュエータプレートとカバープレートとの接着性が低下する。
【0012】
本発明は、上述した従来の問題が考慮されたものであり、両端部分に位置するノズル孔における吐出速度の遅れを抑制し、複数のノズル孔から均一な吐出速度で液体を吐出させることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るヘッドチップは、液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さよりも長く形成されていることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、両端のチャネルの延在方向における長さ(以下、チャネル長)を、中央のチャネルのチャネル長よりも長く形成することで、両端のチャネルの容積を中央のチャネルよりも大きくできる。この場合、上述したように接着時において、両端のチャネル内には中央のチャネル内に比べて大量の余剰な接着剤が流れ込むため、両チャネル間での容積が略均等になる。すなわち、両端のチャネルを中央のチャネルに比べて予め大きく形成しておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各チャネル間での容積のバラツキを抑制できる。その結果、両端のチャネルでの液体吐出速度の遅れを抑制して、各噴射孔から噴射される液体の噴射速度のバラツキを抑えることができる。よって、複数の噴射孔から均一な噴射速度で液体を噴射させることができる。
特に、チャネルの深さ方向において、従来のように各チャネル間での深さを変えることがないので、各チャネルを形成する側壁の側面に、同一工程で同一の高さ分(略半分の位置)だけ駆動電極を一括して形成することができる。これにより、全てのチャネルを形成する側壁を効率的に屈曲させることができ、駆動効率を維持できる。
また、従来のように、側壁の幅が狭くなることもないので、アクチュエータプレートとカバープレートとの接着性も維持できる。
【0015】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、最端のチャネルについてだけ他のチャネルと異なる加工を施すので、アクチュエータプレートを容易に作成できる。
【0016】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、複数のチャネルの容積がより均一となり、複数のチャネルによる液体噴射速度のバラツキを低減できる。
【0017】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴としている。
両端に近いチャネルほど余剰接着材が流れ込み易いが、この構成によれば、チャネルの容積が中央から両端に向かって漸次増大することで、余剰接着材の流れ込みが多いチャネルほどその容積が大きくなり、複数のチャネルの容量がより均一となる。
【0018】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、余剰な接着剤が流れ込んだ後の、各チャネル間の容積差を確実に縮小できるため、複数のチャネルによる液体噴射速度のバラツキを低減できる。
【0019】
また、本発明に係るヘッドチップは、液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さよりも長く形成されていることを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、両端のチャネルの延在方向におけるカバープレートとの接着領域の長さ(以下、ポンプ長という)を、中央のチャネルのポンプ長よりも長く形成することで、両端のチャネルの駆動領域を長くできる。すなわち、両端のチャネルのポンプ長を中央のチャネルに比べて予め長くしておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各チャネル間での駆動領域のバラツキを抑制できる。これにより、チャネルの容積を変えることなく、剰接着材の流れ込みによる両端のチャネルでの液体噴射速度の遅れを抑制できる。その結果、各噴射孔から噴射される液体の噴射速度のバラツキを抑え、複数の噴射孔から均一な噴射速度で液体を噴射させることができる。
特に、チャネルの深さ方向において、従来のように各チャネル間での深さを変えることがないので、各チャネルを形成する側壁の側面に、同一工程で同一の高さ分(略半分の位置)だけ駆動電極を一括して形成することができる。これにより、全てのチャネルを形成する側壁を効率的に屈曲させることができ、駆動効率を維持できる。
また、従来のように、側壁の幅が狭くなることもないので、アクチュエータプレートとカバープレートとの接着性も維持できる。
【0021】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記接着領域が長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、最端のチャネルについてだけ他のチャネルと異なる加工を施すので、アクチュエータプレートを容易に作成できる。
【0022】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記接着領域の長さが長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、複数のチャネル間での液体噴射速度のバラツキを確実に低減できる。
【0023】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記複数のチャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴としている。
両端に近いチャネルほど余剰接着材が流れ込み易いが、この構成によれば、チャネルのポンプ長を中央から両端に向かって漸次増大させることで、余剰接着材の流れ込みが多いチャネルほどその駆動領域が長くなる。これにより、複数のチャネル間での液体噴射速度のバラツキを確実に低減できる。
【0024】
また、本発明に係るヘッドチップは、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、余剰な接着剤が流れ込んだ後において、各チャネル間での液体噴射速度のバラツキを低減できる。
【0025】
また、本発明に係るヘッドチップの製造方法は、液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップの製造方法であって、円板状のダイスカッターを用いて前記アクチュエータプレートに前記チャネルを形成するチャネル形成工程を有し、前記チャネル形成工程では、前記複数のチャネルのうち、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルを、第1ダイスカッターを用いて形成する第1ダイシング工程と、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルを、前記第1ダイスカッターよりも外径が大きい第2ダイスカッターを用いて形成する第2ダイシング工程と、を有していることを特徴としている。
この構成によれば、第1ダイスカッター及び第2ダイスカッターによりチャネルを形成する際に、それぞれ同一の走行量に設定した場合であっても、チャネル長の長さを変更できる。すなわち、ダイシングのプログラムの数値等を変更することなく、ダイスカッターの外径を変更するだけで、簡単に両端のチャネルにおけるチャネル長を長くできる。
【0026】
また、本発明に係る液体噴射ヘッドは、上記本発明のヘッドチップと、前記液体を前記導入口に供給する供給手段と、前記駆動電極に前記駆動電圧を印加する制御手段と、を備えることを特徴としている。
このような特徴により、供給手段によってヘッドチップの導入口に液体が供給され、制御手段によって駆動電極に駆動電圧を印加することでヘッドチップ内の液体がノズル孔から噴射される。このとき、上述したヘッドチップによって余剰接着材の流れ込みによる両端のチャネルでの液体噴射速度の遅れが抑制されるので、中央のノズル孔と同じ噴射速度で両端のノズル孔から液体を噴射させることができる。
【0027】
また、本発明に係る液体噴射装置は、被記録媒体を予め決められた搬送方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された前記被記録媒体の表面に対して前記ノズル孔が対向する向きに配置された上記本発明の液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、を備えることを特徴としている。
このような特徴により、搬送手段によって被記録媒体を搬送するとともに、移動手段によって液体噴射ヘッドを往復移動させながらノズル孔から被記録媒体に向けて液体を噴射させることで被記録媒体に画像や文字等が記録される。このとき、中央のノズル孔と同じ噴射速度で両端のノズル孔から液体が噴射されるので、両端のノズル孔から被記録媒体の所定位置に正確に液体を当てることができ、高品質の記録を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るヘッドチップ、液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置、並びにヘッドチップの製造方法によれば、両端部分に位置するノズル孔における噴射速度の遅れを抑制し、複数のノズル孔から均一な噴射速度で液体を噴射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】インクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】ヘッドチップの斜視図である。
【図4】ヘッドチップの分解斜視図である。
【図5】ヘッドチップの分解斜視図である。
【図6】図3のA−A線に沿うヘッドチップの断面図である。
【図7】(a)は図6のB−B線に沿う断面図であり、(b)はC−C線に沿う断面図である。
【図8】アクチュエータ基板の平面図である。
【図9】(a)は図8のE−E線に沿う断面図、(b)は図8のD−D線に沿う断面図である。
【図10】アクチュエータ基板とカバー基板とを接合させた接合体を、カバー基板側から見た平面図である。
【図11】アクチュエータプレートの他の構成を示す平面図である。
【図12】アクチュエータプレートの他の構成を示す平面図である。
【図13】第2実施形態におけるヘッドチップの断面図であり、(a)は図6のB−B線に相当する断面図、(b)はC−C線に相当する断面図である。
【図14】第2実施形態におけるヘッドチップの製造方法を説明するための図であり、アクチュエータ基板とカバー基板とを接合させた接合体を、カバー基板側から見た平面図である。
【図15】図6相当する図であり、第3実施形態におけるヘッドチップの断面図である。
【図16】ヘッドチップの他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、液体噴射装置の一例として、インク(液体)Wを利用して記録を行うインクジェットプリンタ1を例に挙げて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
(インクジェットプリンタ)
まず、第1実施形態について説明する。図1は、インクジェットプリンタの斜視図である。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、インクWを吐出する複数のインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)2と、記録紙(被記録媒体)Pを予め決められた矢印L1方向(搬送方向)に搬送する搬送手段3と、前記搬送方向に直交する矢印L2方向(走査方向)に複数のインクジェットヘッド2を往復移動させる移動手段4と、を備えている。
【0032】
つまり、このインクジェットプリンタ1は、記録紙Pを矢印L1方向に搬送しながら、矢印L1方向に直交する矢印L2方向にインクジェットヘッド2を移動させて、記録紙Pに文字や画像を記録する、いわゆるシャトルタイプのプリンタである。
なお、本実施形態では、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー)のインクWを吐出する4つのインクジェットヘッド2を備えている場合を例にしている。なお、これら4つのインクジェットヘッド2は、同一構成とされている。
【0033】
これら4つのインクジェットヘッド2は、略直方体形状の筐体5内に組み込まれたキャリッジ6に搭載されている。
このキャリッジ6は、複数のインクジェットヘッド2を載置する平板状の基台6aと、この基台6aから垂直に立ち上げられた壁部6bと、で構成されている。そして、キャリッジ6は、矢印L2方向に沿って配置されたガイドレール7によって往復移動可能に支持されている。また、キャリッジ6は、ガイドレール7に支持された状態で一対のプーリ8に巻回された搬送ベルト9に連結されている。一対のプーリ8のうち、一方のプーリ8はモータ10の出力軸に連結され、モータ10からの回転駆動力を受けて回転するようになっている。これにより、キャリッジ6は、矢印L2方向に向けて往復移動できるようになっている。
すなわち、これら一対のガイドレール7、一対のプーリ8、搬送ベルト9及びモータ10は、上述した移動手段4として機能する。
【0034】
また、筐体5には、一対のガイドレール7と同じ矢印L2方向に沿って一対の搬入ローラ15と、一対の搬送ローラ16と、が間隔を空けて並設されている。一対の搬入ローラ15は、筐体5の背面側に設けられ、一対の搬送ローラ16は筐体5の前面側に設けられている。そして、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、図示しないモータによって記録紙Pを間に挟んだ状態で回転するようになっている。これにより、筐体5の背面側から前面側に向かう矢印L1方向に沿って記録紙Pを搬送することができる。
すなわち、これら一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16は、上述した搬送手段3として機能する。
【0035】
図2は、インクジェットヘッドの斜視図である。
図2に示すように、各インクジェットヘッド2は、図1に示すキャリッジ6の基台6aに図示しないネジを介して取り付けられる矩形状の固定板20と、この固定板20の上面に固定されたヘッドチップ21と、このヘッドチップ21の後述する共通インク室17にインクWを供給する供給手段22と、後述する駆動電極37に駆動電圧を印加する制御手段23と、を主に備えている。これら各インクジェットヘッド2は、搬送手段3によって搬送された記録紙Pの表面に対して後述するノズル孔33aが対向する向きに配置されている。
【0036】
図3はヘッドチップの斜視図であり、図4はヘッドチップの分解斜視図である。
図3,図4に示すように、ヘッドチップ21は、アクチュエータプレート30、カバープレート31、支持プレート32及びノズルプレート33で主に構成されている。そして、アクチュエータプレート30に図示せぬ接着材を介してカバープレート31が重ね合わされているとともに、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31の端面に図示せぬ接着材を介してノズルプレート33が貼着された構成からなる。
【0037】
図5はヘッドチップの分解斜視図であり、図6は図3のA−A線に沿うヘッドチップの断面図である。
アクチュエータプレート30は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されたプレートであり、その分極方向が厚さ方向(矢印L2方向)に沿って一方向に設定されている。このアクチュエータプレート30のカバープレート31側の面(表面)には、図3〜図6に示すように、矢印L3方向(延在方向)に延びたチャネル35が矢印L1方向(配列方向)に一定間隔をあけて並列に複数形成されている。すなわち、複数のチャネル35は、側壁36によってそれぞれ区分けされるとともに、カバープレート31側の面に開口部50を有する断面凹形状の溝である。また、チャネル35は、カバープレート31により閉塞されてインクWが流入しないように構成されたダミーチャネル46と、カバープレート31の後述するスリット(導入孔)19に連通してインクWが充填される吐出チャネル45と、が矢印L1方向に沿って交互に形成されている。
【0038】
各チャネル35のうち、ダミーチャネル46は、矢印L3方向に沿って深さが一様に形成され、アクチュエータプレート30の両端側で開口している。
【0039】
また、各チャネル35のうち、吐出チャネル45は、矢印L3方向において、矩形チャネル51と、円弧チャネル52と、を有している。
矩形チャネル51は、一端側(先端側)がアクチュエータプレート30の先端面(ノズルプレート33側の端面)において開口している。一方で、矩形チャネル51の他端部(基端部)は、矢印L3方向に沿ってアクチュエータプレート30の途中まで延びている。
円弧チャネル52は、一端(先端)が矩形チャネル51の内側に向けて開口し、他端(基端)は後述する浅溝部53の内側に向けて開口している。円弧チャネル52の底面は、基端側(ノズルプレート33とは反対側)に向かうにしたがって漸次深さが浅くなるように形成されている。具体的に、円弧チャネル52の底面は、後述する製造工程で用いるダイスカッター215(図9参照)の外径に倣った曲率半径を有する円弧状に形成されている。
【0040】
円弧チャネル52の基端側には、矢印L2方向において矩形チャネル51よりも浅く形成された浅溝部53が形成されている。浅溝部53は、矢印L3方向に沿って円弧チャネル52の基端からアクチュエータプレート30の基端面(ノズルプレート33側反対側の端面)まで延びている。この浅溝部53は矩形チャネル51の延長線上に形成され、その一端(先端)は円弧チャネル52の内側に向けて開口している。浅溝部53の他端(基端)はアクチュエータプレート30の基端面において開口し、図示しない封止手段によって封止されている。
【0041】
図7における(a)は図6のB−B線に沿う断面図であり、(b)はC−C線に沿う断面図である。
図7に示すように、複数の吐出チャネル45のうち、チャネル35の配列方向(矢印L1方向)の両端に位置する吐出チャネル45aの矢印L3方向における長さ、具体的には矩形チャネル51及び円弧チャネル52を合わせた長さ(以下、チャネル長K1という)が、矢印L1方向中央に位置する吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くなっている。すなわち、両端の吐出チャネル45aの容積は、中央の吐出チャネル45bの容積よりも大きくなっている。具体的に、矢印L1方向両側の最端の吐出チャネル45aのチャネル長K1のみが、他の吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くなっており、矢印L1方向両側の最端の吐出チャネル45aの容積のみが他の吐出チャネル45bの容積よりも大きくなっている。
【0042】
この場合、アクチュエータプレート30にカバープレート31やノズルプレート33を貼着させたときに、最端の吐出チャネル45aに流れ込む余剰な接着材の流入量と、他の吐出チャネル45bに流れ込む余剰な接着材の流入量と、の差を算出し、その差の分だけ容積が拡大するように、最端の吐出チャネル45aのチャネル長K1を、他の吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くしている。例えば両側(最端)の吐出チャネル45aのチャネル長K1は、中央(他)の吐出チャネル45bのチャネル長K2と比べて2%〜10%程度長く形成されている。なお、矢印L1方向における各チャネル35(吐出チャネル45及びダミーチャネル46)の幅、及び矢印L2方向における深さは、各チャネル35間でそれぞれ同一に形成されている。
【0043】
また、複数のチャネル35の側壁36には、駆動電極37が形成されている。駆動電極37は、矢印L3方向において、側壁36の全域に亘って形成されている。また、駆動電極37は、矢印L2方向において、側壁36におけるカバープレート31側の表面から中央部に亘って、側壁36の略半分程度の領域に形成されている。また、浅溝部53の底面には接続電極39が形成されている、そして、上述した駆動電極37と、後述するフレキシブル基板27の引き出し電極27aと、が接続電極39を介して電気的に接続されるようになっている。
駆動電極37は、駆動電圧が印加されたときに、圧電厚み滑り効果により側壁36を変形させることでチャネル35内の圧力を高め、充填されたインクWを吐出チャネル45内から吐出させる働きをしている。
【0044】
なお、駆動電極37と引き出し電極27aとの接続について、吐出チャネル45及びダミーチャネル46の両方を対象として、詳細に説明する。
まず、電気的な接続状態は、吐出チャネル45がGND電位(接地電位)に接続され、ダミーチャネル46に駆動電圧が供給される。吐出チャネル45をGND電位にしたのは、導電性インクを使用した場合に、スリット19を介して隣り合う吐出チャネル45の駆動電極37同士が導通してしまうことを防止するためである。駆動電極37同士が導通してしまうと、駆動電極37が電気分解を起こし腐食してしまう問題や、個別に駆動することができなくなる問題がある。
【0045】
本実施形態では、吐出チャネル45に関して、図5に示すように、個別に引き出し電極27aを形成することが可能である。また、全ての吐出チャネル45がGND電位であるため、フレキシブル基板27上で、全ての吐出チャネル45の接続電極39に対応する引き出し電極27aを共通化し、全ての接続電極39を当該引き出し電極27aと接触させ、GND電位とすることも可能である。もしくは、アクチュエータプレート30の表面(L2方向の面)で、非導電材を介してダミーチャネル46の駆動電極37を跨いで、吐出チャネル45の接続電極39同士を共通化し、当該接続電極39の一部を引き出し電極27aと接触させ、GND電位とすることも可能である。
【0046】
また、ダミーチャネル46の駆動電極37は、吐出チャネル45の駆動電極37と側壁36を介して対向する駆動電極37が二枚一組となっている。この二枚の駆動電極37に同じ駆動電圧を同時に供給することによって、二枚の側壁36を同時に変形させている。そのため、図5に示すように、個別に同じ駆動電圧を同時に与えることも可能である。また、フレキシブル基板27上でこれら二枚の駆動電極37に対応する引き出し電極27aを共通化することも可能である。もしくは、アクチュエータプレート30の表面(L2方向の面)で、吐出チャネル45の駆動電極37または接続電極39を跨いで、ダミーチャネル46の接続電極39同士を共通化し、当該接続電極39の一部を引き出し電極27aと接触させ、駆動電圧が供給されることも可能である。
【0047】
なお、図5に図示していないが、ダミーチャネル46は、矢印L3方向に沿って深さが一様に形成され、アクチュエータプレート30の両端側で開口しているため、駆動電極37と引き出し電極27aとの接続が困難である。このため、駆動電極37をアクチュエータプレート30の表面(L2方向の面)まで形成し、その上から被さるように引き出し電極27aを配置することが可能である。この場合、アクチュエータプレート30の表面まで形成された駆動電極37が接続電極39としての役割を担う。これによって、駆動電極37と引き出し電極27aとの電気的な接続を高精度に実施することができる。また、矢印L1方向の両側最端のダミーチャネル46における外側の壁に形成された駆動電極37には、電圧が印加されないため、この駆動電極37に対応する引き出し電極27aは形成しても、形成しなくても構わない。
さらに、最端のダミーチャネル46の駆動電極37は、吐出チャネル45と隣り合う駆動電極37のみ電気的に接続すればよい。つまり、図6に示す全てのチャネル35のうち、最左の駆動電極37は電気的に接続されていない。これは、側壁36を駆動するために使用されないためである。同様に、図6に図示しないが、全てのチャネル35のうち、最右の駆動電極37も電気的に接続されていない。
【0048】
図3,図4に示すように、カバープレート31は、例えばセラミックス等で形成されたプレートである。カバープレート31は、各浅溝部53の基端側、及びダミーチャネル46の基端側を露出させた状態で、アクチュエータプレート30の表面に接着材を介して重ね合わせて貼着されている。また、カバープレート31は、アクチュエータプレート30とは反対側の表面に形成された凹状の共通インク室17と、共通インク室17及び吐出チャネル45をそれぞれ連通させる複数のスリット(導入孔)19と、を有している。
【0049】
共通インク室17は、チャネル35の基端側において、チャネル35の延在方向(矢印L3方向)に直交するように延在する矢印L1方向に長い長方形の開口である。共通インク室17には、供給手段22から供給されるインクWが貯留される。
スリット19は、例えば矢印L3方向を長軸とする楕円形状の孔であり、共通インク室17から各吐出チャネル45に向けてインクWが流通するように構成されている。
【0050】
そして、アクチュエータプレート30にカバープレート31が接着された状態では、チャネル35の開口部50がカバープレート31によって閉塞される。これにより、独立した複数のチャネル35(吐出チャネル45及びダミーチャネル46)が形成されている。
【0051】
支持プレート32は、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持しているとともに、ノズルプレート33を支持している。支持プレート32には、矢印L1方向に延在する嵌合孔32aが形成されている。そして、重ね合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31が、支持プレート32の嵌合孔32a内に嵌め込まれた状態で支持プレート32に支持されている。この際、支持プレート32の先端側の表面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と面一となっている。
【0052】
ノズルプレート33は、厚みが50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなるシート状のプレートである。ノズルプレート33は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着材を介して貼着されている。つまり、ノズルプレート33の一方の面は、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面と、支持プレート32の先端側の表面と、に接着される接着面となっている。一方で、ノズルプレート33の他方の面は、図1に示す記録紙Pに対向する対向面となっている。なお、ノズルプレート33の対向面には、インクWの付着等を防止するための撥水性を有する撥水膜がコーティングされている。
【0053】
また、このノズルプレート33には、矢印L1方向に間隔を空けて複数のノズル孔33aが形成されている。これら複数のノズル孔33aは、少なくとも吐出チャネル45に対向する位置にそれぞれ形成されており、この吐出チャネル45内に連通するようになっている。具体的に説明すると、図6に示すように、ノズル孔33aの中心は、吐出チャネル45の中心に配置され、吐出チャネル45のピッチと同間隔で形成されている。
また、各ノズル孔33aは、外形輪郭線が円形を描くように円状に形成されている。しかも、ノズル孔33aは、接着面側から対向面側に向かうに従い漸次縮径されたテーパ孔であり、接着面側の入口径(ノズル孔33aの外形輪郭線の直径)が対向面側の出口径よりも大きくなっている。なお、ノズル孔33aは、エキシマレーザ装置等を用いて形成されている。
さらに、図6において、ノズル孔33aは各吐出チャネル45だけでなく、ダミーチャネル46にも設けられるように示した。もちろん、ノズル孔33aは、少なくとも吐出チャネル45に設けられていればよく、ダミーチャネル46に設けられていなくてもよい。
【0054】
上述した構成のヘッドチップ21は、図2に示すように、上述したように固定板20の上面に固定されている。この固定板20の上面には、アルミニウム等で形成された矩形状のベースプレート24が垂直に立ち上がった状態で固定されているとともに、ヘッドチップ21の共通インク室17にインクWを供給する流路部材22aが固定されている。この流路部材22aの上方には、インクWを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器(ダンパ)22bがベースプレート24に支持された状態で配置されている。この圧力緩衝器22bと流路部材22aとは、インク連結管22cを介して連結されている。また、圧力緩衝器22bの上部には、インクWが供給されてくる供給チューブ40が取り付けられている。
このように構成されているので、供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bにインクWが供給されると、このインクWは圧力緩衝器22b内の貯留室に一旦貯留される。そして、圧力緩衝器22bは、貯留されたインクWのうち、所定量のインクWをインク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21の共通インク室17に供給するようになっている。
すなわち、流路部材22a、圧力緩衝器22b及びインク連結管22cは、上述した供給手段22として機能する。
【0055】
なお、供給チューブ40は、図1に示すように、筐体5内に組み込まれたインクタンク41に連結されている。これにより、インクタンク41に貯留されている色の異なるインクWが、4つのインクジェットヘッド2にそれぞれ供給されるようになっている。
【0056】
また、図2に示すように、ベースプレート24には、ヘッドチップ21を駆動するための集積回路等の駆動回路25が搭載されたIC基板26が固定されている。この駆動回路25とヘッドチップ21の駆動電極37とは、フレキシブル基板27を介して電気的に接続されている。
フレキシブル基板27は、図5に示すように、カバープレート31の基端側に露出された浅溝部53の基端側部分に嵌合される複数の引き出し電極27aがプリント配線されている。引き出し電極27aは、接続電極39(上述したアクチュエータプレート30の表面まで形成された場合のダミーチャネル46の駆動電極37を含む)に接触して電気的に接続されることで、接続電極39を介して駆動電極37に接続されている。そして、駆動回路25は、フレキシブル基板27を介して駆動電極37に駆動電圧を印加して、インクWの吐出を行わせている。
すなわち、駆動回路25及びフレキシブル基板27は、上述した制御手段23として機能する。
【0057】
(ヘッドチップの製造方法)
ここで、上述した構成のヘッドチップ21の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、圧電材料からなるアクチュエータ基板200と、セラミックス等からなるカバー基板201と、を接合した後、接合した接合体202をヘッドチップ21の形成領域ごとに切断線Mに沿って切断することで、複数のヘッドチップ21を同時に製造する方法について説明する。図8はアクチュエータ基板の平面図であり、図9の(a)は図8のE−E線に沿う断面図、(b)は図8のD−D線に沿う断面図である。なお、図8においては図面を分かり易くするため、浅溝部53の記載を省略する。
【0058】
まず、図8,図9に示すように、アクチュエータ基板200を用意する。アクチュエータ基板200は、複数のアクチュエータプレート30(図3参照)が矢印L3方向に沿って連なって形成されたものである。そして、このアクチュエータ基板200を切削し、アクチュエータ基板200に複数のチャネル35(吐出チャネル45及びダミーチャネル46)及び浅溝部53を、矢印L1方向に沿って並列に形成する(チャネル形成工程)。
【0059】
以下の説明では、上述したチャネル形成工程において、各チャネル35のうち、吐出チャネル45及び浅溝部53を形成する場合について説明する(吐出チャネル形成工程)。吐出チャネル形成工程では、円板状のダイスカッター215を矢印L3方向に沿って走行させて行う。この際、浅溝部53の形成領域においては、加工深さ(矢印L2方向の深さ)を浅くした状態でダイスカッター215を矢印L3方向に沿って走行させる。これにより、浅溝部53の形成領域に第1ダイシングライン210(図9参照)が形成される。
その後、ダイスカッター215が吐出チャネル45の形成領域に差し掛かった時点で、矢印L2方向に沿って加工深さを深くし、この状態でダイスカッター215を矢印L3方向に沿って走行させる(図9中矢印参照)。これにより、吐出チャネル45の形成領域には、第1ダイシングライン210よりも矢印L2方向に深い第2ダイシングライン211が形成される。
そして、この動作を矢印L3方向に沿って繰り返し、アクチュエータ基板200上に第1ダイシングライン210及び第2ダイシングライン211を交互に形成していく。これにより、第1ダイシングライン210及び第2ダイシングライン211が、矢印L3方向に沿って連続的に延在する第3ダイシングライン213が形成される。そして、この第3ダイシングライン213を、矢印L1方向で間隔を空けて複数形成していく。
【0060】
この場合、第2ダイシングライン211の両端部(浅溝部53の形成領域との境界部分)には、円弧チャネル52となる部分がダイスカッター215の外径に倣った曲率半径に形成される。すなわち、第2ダイシングライン211は、隣接するアクチュエータプレート30のチャネル35の2つ分の長さに形成されている。また、各第1ダイシングライン210は、浅溝部53の2つ分の長さに形成されている。
【0061】
ここで、本実施形態では、吐出チャネル形成工程において、各第3ダイシングライン213のうち、配列方向中央部に位置する第3ダイシングライン213は、外径φ1の第1ダイスカッター215aを用いて形成する(第1ダイシング工程)。
一方で、各第3ダイシングライン213のうち、配列方向両端に位置する第3ダイシングライン213は、第1ダイスカッター215aよりも外径が大きい第2ダイスカッター215b(外径φ2(φ2>φ1))を用いて形成する(第2ダイシング工程)。
【0062】
これにより、第1ダイスカッター215a及び第2ダイスカッター215bにより第2ダイシングライン211を形成する際に、それぞれ同一の走行量に場合した状態であっても、両端の第2ダイシングライン211の長さ(チャネル長)を長くできる。すなわち、ダイシングのプログラムの数値を変更することなく、ダイスカッター215の外径を変更するだけで、簡単に第2ダイシングライン211の長さを変更できる。なお、第2ダイスカッター215bで形成した第2ダイシングライン211の両端部における底面の曲率半径は、第1ダイスカッター215aで形成した第2ダイシングライン211の両端部における底面の曲率半径に比べて大きく形成される。
【0063】
次に、各チャネル35のうち、ダミーチャネル46を形成する場合について説明する(ダミーチャネル形成工程)。ダミーチャネル形成工程では、アクチュエータ基板200上の矢印L3方向に沿って円板状のダイスカッター(不図示)を走行させる。この際、アクチュエータ基板200における矢印L3方向の全域に亘って、加工深さ(矢印L2方向の深さ)を一定にした状態でダイスカッターを走行させる。これにより、アクチュエータ基板200上には、矢印L3方向の両端で開口する第4ダイシングライン216が形成される。すなわち、アクチュエータ基板200上には、吐出チャネル45及び浅溝部53に相当する第3ダイシングライン213と、ダミーチャネル46に相当する第4ダイシングライン216と、が矢印L1方向に沿って交互に形成される。
【0064】
なお、第3ダイシングライン213及び第4ダイシングライン216は、矢印L1方向に沿って順に形成していってもよく、第3ダイシングライン213(または第4ダイシングライン216)の形成後、隣接する第3ダイシングライン213(または第4ダイシングライン216)間に第4ダイシングライン216(または第3ダイシングライン213)を形成しても構わない。
【0065】
次に、アクチュエータ基板200に駆動電極37及び接続電極39をそれぞれパターン形成する(電極形成工程)。具体的には、公知の斜方蒸着等により、アクチュエータ基板200の表面に対して斜め方向から蒸着材料(例えば、アルミ等)を飛散させる。これにより、第1ダイシングライン210(浅溝部53)内に接続電極39を形成する。また、第2ダイシングライン211の側壁36の側面上に駆動電極37を形成する。この時、第2ダイシングライン211の底面から側壁36の矢印L2方向中途部までは駆動電極37は形成されない。
【0066】
また、本実施形態において、上述した電極の共通化など、アクチュエータ基板200の表面(L2方向の面)に所望の電極部材を形成する場合は、リフトオフ法などを用いるのが一般的である。リフトオフ法では、吐出チャネル形成工程及びダミーチャネル形成工程の後にドライフィルムから、感光性樹脂膜をアクチュエータ基板200の表面(L2方向の面)に形成する。次に、露光及び現像工程を通して感光性樹脂膜を選択的に除去し、図示しない樹脂膜のパターンを形成する。樹脂膜のパターンは、アクチュエータ基板200の表面に、所望の電極部材等の電極パターンをリフトオフ法により形成するために設けており、電極を形成する領域からは樹脂膜を除去し、電極を形成しない領域には樹脂膜を残す。
【0067】
図10はアクチュエータ基板とカバー基板とを接合させた接合体を、カバー基板側から見た平面図である。
一方、図10に示すように、カバー基板201に共通インク室17及びスリット19を形成する(カバー基板形成工程)。具体的には、サンドブラスト等により、カバー基板201に共通インク室17を形成した後、上述したアクチュエータ基板200上における吐出チャネル45(図6参照)に対応する位置にスリット19を形成する。
【0068】
次に、アクチュエータ基板200にカバー基板201を貼着する。具体的には、アクチュエータ基板200またはカバー基板201に接着材を塗布し、その後、アクチュエータ基板200とカバー基板201とを重ね合わせる。これにより、アクチュエータ基板200とカバー基板201とが接着材を介して接合される。
【0069】
次に、アクチュエータ基板200とカバー基板201とが接合されてなる接合体202を、ヘッドチップ21毎(図10中切断線M参照)に切断する。具体的には、矢印L3方向において、第1ダイシングライン210における中間位置、及び第2ダイシングライン211における中間位置からそれぞれ矢印L1方向に沿ってダイスカッター(不図示)を走行させ、接合体202を切断する。これにより、一枚の接合体202から複数のアクチュエータプレート30及びカバープレート31が貼り合わされた状態で切り出される。
【0070】
次に、貼り合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持プレート32に取り付ける。具体的には、貼り合わされたアクチュエータプレート30及びカバープレート31を支持プレート32の嵌合孔32aの内側に挿入する。この状態で、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面を、支持プレート32の先端側の表面と面一にして固定する。
【0071】
次に、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面に、ノズルプレート33を貼着する。具体的には、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面及び支持プレート32の先端側の表面、またはノズルプレート33の裏面に接着材を塗布する。その後、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面、及び支持プレート32の先端側の表面にノズルプレート33を重ね合わせる。これにより、ノズルプレート33が、アクチュエータプレート30及びカバープレート31の先端側の端面に接着材を介して貼着される。
【0072】
上述したようにアクチュエータプレート30に接着材を介してカバープレート31やノズルプレート33を貼着させたとき、両側最端の吐出チャネル45aには中央の吐出チャネル45bよりも多量の余剰な接着材が流れ込む。ところが、本実施形態では、両側最端の吐出チャネル45aは、中央の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長くなっているため(K1>K2)、インクWが充填される両側最端の吐出チャネル45aの容量が確保される。すなわち、両側最端の吐出チャネル45aの容量は、余剰な接着材が流れ込むことで中央の吐出チャネル45bの容量と略均等になる。
【0073】
次に、上述したように構成されたインクジェットプリンタ1を利用して、記録紙Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、4つのインクタンク41にはそれぞれ異なる色のインクWが十分に封入されているものとする。また、インクタンク41内のインクWが供給チューブ40を介して圧力緩衝器22bに供給された状態となっている。そのため、所定量のインクWが、インク連結管22c及び流路部材22aを介してヘッドチップ21の共通インク室17に供給され、共通インク室17からスリット19を介して吐出チャネル45内に充填された状態となっている。
【0074】
このような初期状態のもと、インクジェットプリンタ1を作動させると、一対の搬入ローラ15及び一対の搬送ローラ16が回転して記録紙Pを搬送方向(矢印L1方向)に向けて搬送する。また、これと同時にモータ10がプーリ8を回転させて搬送ベルト9を動かす。これにより、キャリッジ6がガイドレール7でガイドされながら走査方向(矢印L2方向)に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド2のヘッドチップ21より4色のインクWを記録紙Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。特に、シャトル方式であるので、記録紙Pの所望する範囲に対して正確に記録を行うことができる。
【0075】
ここで、各インクジェットヘッド2の動きについて、以下に詳細に説明する。
キャリッジ6によって往復移動が開始されると、駆動回路25は、フレキシブル基板27を介して駆動電極37に駆動電圧を印加する。より詳しくは、インクWを吐出する吐出チャネル45の両側の2つの側壁36にそれぞれ設けられている駆動電極37に駆動電圧を印加し、この2つの側壁36を、吐出チャネル45に隣接しているダミーチャネル46側へ突出するように変形させる。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート30は分極方向が一方向であり、駆動電極37が側壁36の側面の矢印L2方向における中間位置までしか形成されていないため、駆動電圧を印加することで、側壁36の矢印L2方向中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル45があたかも膨らむように変形する。
【0076】
このように、2つの側壁36の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出チャネル45の容積が増大する。そして、吐出チャネル45の容積が増大したことにより、共通インク室17内に貯留されたインクWがスリット19から吐出チャネル45内に誘導される。そして、吐出チャネル45の内部に誘導されたインクWは圧力波となって吐出チャネル45の内部を通過し、この圧力波がノズル孔33aに到達したタイミングで、駆動電極37に印加した駆動電圧をゼロにする。これにより、側壁36の変形が元に戻り、一旦増大した吐出チャネル45の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル45の内部の圧力が増加し、インクWが加圧される。その結果、インクWが吐出チャネル45内から吐出される。
【0077】
吐出されたインクWは、ノズル孔33aを通って外部に吐出される。しかもノズル孔33aを通過する際に、インクWは液滴状、すなわちインク滴となって吐出される。その結果、上述したように、記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
特に、本実施形態のノズル孔33aは、断面テーパ状であるので、インク滴を速い速度で真っ直ぐに直進性良く吐出することができる。よって、高画質に記録を行うことができる。
【0078】
このように、本実施形態では、複数の吐出チャネル45のうち、矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル45aのチャネル長K1(矢印L3方向における長さ)を、中央に位置する吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長く形成する構成とした。
この構成によれば、両端の吐出チャネル45aは中央の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長く形成されているため、両端の吐出チャネル45aの容積を中央の吐出チャネル45bよりも大きくできる。この場合、上述したように接着時において、両端の吐出チャネル45a内には中央の吐出チャネル45b内に比べて大量の余剰な接着剤が流れ込むことで、両吐出チャネル45a,45b間での容積が略均等になる。
【0079】
すなわち、両端の吐出チャネル45aを中央の吐出チャネル45bに比べて予め大きく形成しておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各吐出チャネル45間での容積のバラツキを抑制できる。その結果、両端の吐出チャネル45aでの液体吐出速度の遅れを抑制して、複数のノズル孔33aから均一な吐出速度でインクWを吐出させることができる。この際、両側(最端)の吐出チャネル45aのチャネル長K1を、中央(他)の吐出チャネル45bのチャネル長K2に対して2%以上長く形成することで、余剰接着剤が流れ込んだ後の、各吐出チャネル45間の容積差を確実に縮小できるため、複数の吐出チャネル45によるインクWの吐出速度のバラツキを低減できる。
したがって、上述したインクジェットヘッド2を備えるインクジェットプリンタ1によれば、両端のノズル孔33aから記録紙Pの所定位置に正確にインクWが当てることができ、高品質の記録を実現することができる。
【0080】
特に、従来のように各吐出チャネル45間において矢印L2方向での深さを変えることがないので、各吐出チャネル45を形成する側壁36の側面に、同一工程で同一の高さ分(略半分の位置)だけ駆動電極37を一括して形成することができる。これにより、全ての吐出チャネル45を形成する側壁36を効率的に屈曲させることができ、駆動効率を維持できる。
また、各吐出チャネル45間において、矢印L1方向での幅を変えることもないので、アクチュエータプレート30とカバープレート31との接着性も維持できる。
【0081】
しかも、上述したヘッドチップ21では、両端の吐出チャネル45aのチャネル長K1を、中央の吐出チャネル45bのチャネル長K2よりも長くするだけなので、従来の製作工程と略同一の工程でアクチュエータプレート30を作成することが可能である。具体的に、本実施形態では、両端の吐出チャネル45aと、中央の吐出チャネル45bと、でダイスカッター215の外径を変更するだけで、ダイスカッター215の走行量を変更させずに、簡単にチャネル長の長さを変化させることができる。そのため、生産性を低下させることなく、アクチュエータプレート30にチャネル長の異なる吐出チャネル45a,45bを形成することができる。
【0082】
この場合、上述したヘッドチップ21では、複数の吐出チャネル45のうち、両側最端の吐出チャネル45aのみが他の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長くなっているので、両側最端の吐出チャネル45aを切削するときだけダイスカッター215の外径を変更すればよい。そのため、アクチュエータプレート30を容易に作成することができ、生産性の低下を更に抑えることができる。
【0083】
ところで、上述した実施形態では、チャネル35のうち、矢印L1方向の両側最端のチャネル35をダミーチャネル46に設定し、この両側最端のダミーチャネル46を基準に吐出チャネル45及びダミーチャネル46を矢印L1方向に沿って交互に形成する構成について説明した。
このようにした理由は、矢印L1方向における両側最端のチャネル35の吐出効率の悪さに起因する。すなわち、両側最端のチャネル35は一方(矢印L1方向内側)が側壁36によって仕切られており、他方(矢印L1方向外側)が側壁36ではなくアクチュエータプレート30によって形成される外壁である。この場合、上述した斜方蒸着により外壁にも駆動電極37は形成されるものの、外壁は側壁36よりも矢印L1方向における幅が広いため、屈曲変形するものではない。そのため、両側最端のチャネル35は一方の側壁36のみが駆動する片壁駆動となる。このような片壁駆動には、使用可能(吐出できる)なインクと、使用不可能(吐出しない)なインクと、が存在する。
【0084】
これに対して、本実施形態では、矢印L1方向の両側最端のチャネル35を、ダミーチャネル45として設定しているため、吐出チャネル45のうち、最端の吐出チャネル45aであっても、両側は側壁36で囲まれることになる。そのため、インクWの種類を問わず、上述の効果を奏することができる。
【0085】
なお、上述した実施形態では、複数の吐出チャネル45のうちの両側最端の吐出チャネル45aだけが他の吐出チャネル45bよりもチャネル長が長くなっていたが、これに限らず、図11に示すように、複数の吐出チャネル45のうち、配列方向両側の最端から複数の吐出チャネル45aのチャネル長が他の吐出チャネル45bよりも長くなっていてもよい。
通常、両端に近い吐出チャネル45ほど余剰な接着材が流れ込み易い。ここで、上述した構成にすることにより、複数の吐出チャネル45の容量がより均一となり、複数の吐出チャネル45による液体吐出速度のバラツキが低減される。これにより、より均一な吐出速度でインクWを吐出させることができ、さらに高品質の記録を実現することができる。
【0086】
また、図12に示すように、複数の吐出チャネル45aのチャネル長が矢印L1方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成しても構わない。
上述したように両端に近い吐出チャネル45ほど余剰な接着材が流れ込み易い。ここで、上述した構成では、吐出チャネル45のチャネル長が中央から両端に向かって漸次増大されていることで、余剰接着材の流れ込みが多い吐出チャネル45ほどその容積が大きくなり、複数の吐出チャネル45の容量がより均一となり、複数の吐出チャネル45による液体吐出速度のバラツキが低減される。これにより、より均一な吐出速度でインクWを吐出させることができ、さらに高品質の記録を実現することができる。なお、図11,図12はアクチュエータプレートの平面図であるが、図中では説明を分かり易くするために浅溝部の記載を省略している。
【0087】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図13の(a)は図6のB−B線に相当する断面図であり、(b)はC−C線に相当する断面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
図13に示すように、本実施形態では複数の吐出チャネル145のうち、吐出チャネル145の矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル145aのポンプ長P1(図13(a)参照)が、中央に位置する吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成されている。ポンプ長とは、アクチュエータプレート30とカバープレート31との接着領域の長さであり、矢印L3方向における吐出チャネル145の駆動領域の長さである。すなわち、本実施形態におけるポンプ長とは、矢印L3方向においてヘッドチップ21の先端からスリット19までの長さを示している。
【0089】
本実施形態では、最端の吐出チャネル145aに流れ込む余剰な接着材の流入量と、他の吐出チャネル145bに流れ込む余剰な接着材の流入量と、の差の分だけ駆動領域の容積が拡大するように、両側最端の吐出チャネル145aのポンプ長P1を他の吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成する。例えば両側(最端)の吐出チャネル145aのポンプ長P1は、中央(他)の吐出チャネル145bのポンプ長P2と比べて2%〜10%程度長く形成されている。なお、矢印L1方向における各吐出チャネル145の幅、矢印L2方向における長さ、及び矢印L3方向におけるチャネル長は、各吐出チャネル145間でそれぞれ同一に形成されている。
【0090】
ここで、両側の吐出チャネル145aのポンプ長P1を、中央の吐出チャネル145bのポンプ長P2と比べて長く形成するためには、図14に示すように、ヘッドチップ21の製造工程において、カバー基板201に形成するスリット119のうち、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて小さく形成する。さらに、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて第2ダイシングライン211の矢印L3方向における外側に形成する。これにより、両側最端の吐出チャネル145aのポンプ長P1が、中央の吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成される。
【0091】
なお、両側の吐出チャネル145aのポンプ長P1を中央の吐出チャネル145bのポンプ長P2に比べて長く形成するためには、上述した方法のうち、何れか一方のみを採用しても構わない。例えば、各スリット119のうち、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて、矢印L3方向における内側(ノズル孔31側)から小さく形成してもよい。
また、スリット119a,119bの大きさは変えず、両側の吐出チャネル145aに対応するスリット119aを、中央の吐出チャネル145bに対応するスリット119bに比べて矢印L3方向における外側に配置してもよい。
【0092】
本実施形態によれば、吐出チャネル145の矢印L1方向の両端に位置する吐出チャネル145aのポンプ長P1を、中央に位置する吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長く形成することで、矢印L3方向における吐出チャネル145の駆動領域を長くできる。すなわち、両端の吐出チャネル145aの駆動領域を、中央の吐出チャネル145bに比べて予め長く形成しておくことで、余剰接着材の流れ込みによる各吐出チャネル145間での駆動領域のバラツキを抑制できる。これにより、吐出チャネル145の容積を変えることなく、余剰接着材の流れ込みによる両側最端の吐出チャネル145aによる液体吐出速度の遅れを抑制できる。その結果、複数のノズル孔33aから均一な吐出速度でインクWを吐出させることができる。この際、両側(最端)の吐出チャネル145aのポンプ長P1を、中央(他)の吐出チャネル145bのポンプ長P2に対して2%以上長く形成することで、余剰接着剤が流れ込んだ後の、各吐出チャネル145間の駆動領域差を確実に縮小できるため、複数の吐出チャネル145によるインクWの吐出速度のバラツキを低減できる。
【0093】
なお、上述した実施形態では、複数の吐出チャネル145のうちの両側最端の吐出チャネル145aのポンプ長P1だけが、他の吐出チャネル145bのポンプ長P2よりも長くなっているが、これに限らず、配列方向両側の最端から複数の吐出チャネル145aが他の吐出チャネル145bのポンプ長よりも長くなっていてもよい。
また、複数の吐出チャネル145のポンプ長が配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなっていてもよい。
【0094】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図15は図6に相当する図であり、第3実施形態におけるヘッドチップの断面図である。なお、以下の説明では、第1及び第2実施形態の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図15に示すように、矢印L1方向に沿って配列されたチャネル235のうち、矢印L1方向両側から複数のチャネル235を吐出チャネル245としない(ダミーチャネル246とする)点で、上述した第1実施形態と相違している。
【0095】
具体的には、各チャネル235のうち、矢印L1方向両側の最端のチャネル235から中央に向かって並んだ複数(例えば、3つ)のチャネル235は、カバープレート31により閉塞されている。すなわち、アクチュエータプレート30の矢印L1方向両側は、複数のダミーチャネル246が並んだダミー領域R1を構成している。
一方、矢印L1方向中央部(ダミー領域R間)では、インクWが充填される吐出チャネル245と、インクWが流入しないように構成されたダミーチャネル246と、が矢印L1方向に沿って交互に配列された吐出領域R2を構成している。
【0096】
そして、吐出チャネル245のうち、吐出領域R2において矢印L1方向両側に位置する吐出チャネル245aのチャネル長K1やポンプ長P1を、矢印L1方向中央部に位置する吐出チャネル245bよりも長くすることで、両端の吐出チャネル245aでの液体吐出速度の遅れをより一層抑制できる。なお、ダミー領域R1におけるダミーチャネル246の数は、3つに限らず、適宜設計変更が可能である。また、図15においては、ノズル孔33aが各チャネル235に対応して設けられている場合について説明したが、これに限らず、少なくとも吐出チャネル245に対応して設けられていればよい。
【0097】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した各実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0098】
また、上述した各実施形態では、複数のノズル孔33aが配列方向に直線状に一列に配列されているが、本発明は、複数のノズル孔33aが直線状に配列されてなく、縦方向(矢印L2方向)にずらして配列されていてもよい。例えば、複数のノズル孔33aが斜めに配列されていてもよく、或いは、千鳥状に配列されていてもよい。
また、ノズル孔33aの形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
【0099】
さらに、上述した実施形態では、チャネル長及びポンプ長の何れかを調整する場合について説明したが、これに限らず、チャネル長及びポンプ長の双方を調整しても構わない。
【0100】
また、上述した実施形態では、スリット19を介してインクWが供給される吐出チャネル45と、インクWが供給されないダミーチャネル46とを交互に形成した場合について説明したが、これに限られない。すなわち、例えば非水性のインクWを利用する場合等は、スリット19を設けずに、各吐出チャネル345と共通インク室17とを連通させても構わない。例えば図16に示すように、矢印L1方向に沿って配列されたチャネル335のうち、矢印L1方向の最端のチャネル335を、カバープレート31により閉塞してダミーチャネル346とする。そして、ダミーチャネル346よりも矢印L1方向で内側に配列されたチャネル335を、共通インク室17に連通する吐出チャネル345とする。
この場合、各吐出チャネル345のうち、矢印L1方向の最端の吐出チャネル345aに連通する部分の共通インク室17を、矢印L3方向で狭く、かつ基端側に形成することで、最端の吐出チャネル345aのポンプ長を中央の吐出チャネル345bのポンプ長に比べて長く形成できる。なお、ダミーチャネル346に相当する部分にノズル孔33aを形成しなければ、仮にダミーチャネル346と共通インク室17とが連通したとしても、ダミーチャネル346からインクが吐出されることはない。
【0101】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…インクジェットプリンタ(液体噴射装置) 2…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド) 3…搬送手段 4…移動手段 19…スリット(導入孔) 21…ヘッドチップ 22…供給手段 23…制御手段 30,130…アクチュエータプレート 31,131…カバープレート 33…ノズルプレート 33a…ノズル孔 35,235,335…チャネル 36…側壁 37…駆動電極 45,45a,45b,145,145a,145b,245,245a,245b,345a,345b…吐出チャネル(チャネル) 46,146,246,346…ダミーチャネル P…記録紙(被記録媒体) W…インク(液体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、
前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、
前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、
前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、
前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、
前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さよりも長く形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項2】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記複数のチャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴とする請求項3記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、
前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、
前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、
前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、
前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、
前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さよりも長く形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項7】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記接着領域が長く形成されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドチップ。
【請求項8】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記接着領域の長さが長く形成されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドチップ。
【請求項9】
前記複数のチャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドチップ。
【請求項10】
前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴とする請求項6から請求項9の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項11】
液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、
前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、
前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、
前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、
前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップの製造方法であって、
円板状のダイスカッターを用いて前記アクチュエータプレートに前記チャネルを形成するチャネル形成工程を有し、
前記チャネル形成工程は、
前記複数のチャネルのうち、配列方向の中央に位置する前記チャネルを、第1ダイスカッターを用いて形成する第1ダイシング工程と、
前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルを、前記第1ダイスカッターよりも外径が大きい第2ダイスカッターを用いて形成する第2ダイシング工程と、を有していることを特徴とするヘッドチップの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のヘッドチップと、
前記液体を前記導入孔に供給する供給手段と、
前記駆動電極に前記駆動電圧を印加する制御手段と、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項13】
被記録媒体を予め決められた搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記被記録媒体の表面に対して前記噴射孔が対向する向きに配置された請求項12に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、
前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、
前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、
前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、
前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、
前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さよりも長く形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項2】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記延在方向における長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記複数のチャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴とする請求項3記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、
前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、
前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、
前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、
前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップであって、
前記複数のチャネルのうち、前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記延在方向における前記カバープレートとの接着領域の長さよりも長く形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項7】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端の前記チャネルのみが、他の前記チャネルよりも前記接着領域が長く形成されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドチップ。
【請求項8】
前記複数のチャネルのうち、配列方向両側の最端から複数の前記チャネルが、他の前記チャネルよりも前記接着領域の長さが長く形成されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドチップ。
【請求項9】
前記複数のチャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央から両端に向かって漸次長くなるように形成されていることを特徴とする請求項6記載のヘッドチップ。
【請求項10】
前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さが、前記配列方向の中央に位置する前記チャネルの前記接着領域の長さに対して2%以上長く形成されていることを特徴とする請求項6から請求項9の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項11】
液体が充填されるチャネルが間隔をあけて並列に複数形成されるとともに、前記チャネルの延在方向における一端側が端面において開放されたアクチュエータプレートと、
前記チャネルの側壁に形成された駆動電極と、
前記チャネルが形成された前記アクチュエータプレートの表面に接着材を介して貼着されて前記チャネルを覆うとともに、前記チャネル内に前記液体を導入する導入孔を有するカバープレートと、
前記アクチュエータプレートにおける前記端面に接着材を介して貼着され、前記チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートと、を備え、
前記駆動電極に駆動電圧を印加することで、前記側壁を変形させて前記チャネル内の圧力を高め、前記チャネル内の前記液体を前記噴射孔から噴射させるヘッドチップの製造方法であって、
円板状のダイスカッターを用いて前記アクチュエータプレートに前記チャネルを形成するチャネル形成工程を有し、
前記チャネル形成工程は、
前記複数のチャネルのうち、配列方向の中央に位置する前記チャネルを、第1ダイスカッターを用いて形成する第1ダイシング工程と、
前記チャネルの配列方向の両端に位置する前記チャネルを、前記第1ダイスカッターよりも外径が大きい第2ダイスカッターを用いて形成する第2ダイシング工程と、を有していることを特徴とするヘッドチップの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のヘッドチップと、
前記液体を前記導入孔に供給する供給手段と、
前記駆動電極に前記駆動電圧を印加する制御手段と、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項13】
被記録媒体を予め決められた搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された前記被記録媒体の表面に対して前記噴射孔が対向する向きに配置された請求項12に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを前記搬送方向に直交する方向に前記被記録媒体に沿って往復移動させる移動手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−218182(P2012−218182A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83053(P2011−83053)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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