説明

ヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】被記録媒体に印刷する解像度を高めながらも、被記録媒体に所望の形状をずれを抑えて印刷することが可能なヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体Wを吐出する複数の液体噴射孔45が形成されたノズルプレートと、液体が貯留される複数の溝部48を有し、これら複数の溝部中の液体を複数の液体噴射孔側へ向けてそれぞれ押圧する複数の圧電アクチュエータ49a、49bと、を有するヘッドチップ26において、ノズルプレートと複数の圧電アクチュエータとの間に設けられ、液体を複数の液体噴射孔へそれぞれ導く複数の流路54を備え、複数の液体噴射孔は1直線C上に列設されており、複数の液体噴射孔と複数の溝部とは、複数の流路を介してそれぞれ連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドチップのノズル(液体噴射孔)から液体、例えばインクを噴射し被記録媒体にインク滴を着弾させ、文字や画像等を印刷するインクジェット記録装置等の液体噴射装置が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
この液体噴射装置では、被記録媒体に印刷される文字や画像等の形状の解像度を高めるために、被記録媒体に対向するように配置された液体噴射ヘッドが被記録媒体上を走査する走査方向に直交する方向に配置されたノズル列が、走査方向に2列設けられている。そして、各ノズルの位置が走査方向に重ならないように構成されている。
各ノズルには圧電アクチュエータに形成されインクが充填されたチャンネル(溝部)がそれぞれ連結され、チャンネルを形成する隔壁に設けられた金属電極に通電することにより、チャンネルの隔壁が変形してインクを押し出してノズルからインク滴を吐出し被記録媒体に印刷していた。
【0003】
そして、この2列設けられたノズル列で被記録媒体に所望の形状を印刷するには、液体噴射ヘッドの走査方向の前方に位置するノズル列からインク滴を吐出させた後で、一定時間遅らせて走査方向の後方に位置するノズル列からインク滴を吐出させるように制御する必要がある。このインク滴の吐出を遅らせる一定時間は、液体噴射ヘッドが走査する速度や、ノズルから被記録媒体までの距離により変化する。
【特許文献1】特開2001−315333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、解像度を高めるためにノズル列が走査方向に2列設けられた従来の液体噴射装置では、液体噴射ヘッドが走査する速度が変化する場合には、走査方向の各位置においてインク滴の吐出を遅らせる時間を求めるために多大な計算を行う必要がある。このため、被記録媒体に印刷される形状が所望の形状からずれてしまう恐れがあった。また、走査方向において液体噴射孔から被記録媒体までの距離が変化する場合も同様の問題が生じていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、被記録媒体に印刷する解像度を高めながらも、被記録媒体に所望の形状をずれを抑えて印刷することが可能なヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のヘッドチップは、液体を吐出する複数の液体噴射孔が形成されたノズルプレートと、前記液体が貯留される複数の溝部を有し、これら複数の溝部中の前記液体を前記複数の液体噴射孔側へ向けてそれぞれ押圧する複数の圧電アクチュエータと、を有するヘッドチップにおいて、前記ノズルプレートと前記複数の圧電アクチュエータとの間に設けられ、前記液体を前記複数の液体噴射孔へそれぞれ導く複数の流路を備え、前記複数の液体噴射孔は1直線上に列設されており、前記複数の液体噴射孔と前記複数の溝部とは前記複数の流路を介してそれぞれ連通されていることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、1直線上に列設された複数の液体噴射孔と複数の溝部とは複数の流路を介してそれぞれ連通されている。このため、例えば隣接する複数の溝部の間隔を小さくできない場合であっても、複数の流路の複数の液体噴射孔側の間隔を小さくすることで、この複数の液体噴射孔を1直線に沿う方向にコンパクトに配置し被記録媒体に印刷する解像度を高めることができる。
また、複数の液体噴射孔が1直線上に列設されているので、ノズル列が走査方向に複数列配置されている場合のようにインク滴の吐出を遅らせる時間を計算する必要が無く、被記録媒体に所望の形状をずれを抑えて印刷することが可能となる。
【0008】
また、前記複数の流路は、前記ノズルプレートと前記複数の圧電アクチュエータとの間に配設された板状の流路形成板に形成されていることがより好ましい。
この発明によれば、複数の流路を板状の流路形成板に形成するので、流路形成板の加工が容易になるとともに、ヘッドチップを液体が吐出される方向にコンパクトに構成することができる。
【0009】
また、前記複数の流路は、前記ノズルプレートに対向する側から見たときに、前記1直線に対し、隣接するもの同士が前記1直線で仕切られる一方の側と他方の側から各液体噴射孔に達するようにそれぞれ形成されていることがより好ましい。
この発明によれば、隣接する液体噴射孔に達する流路同士が干渉するのをより確実に防止することが可能となり、複数の液体噴射孔を1直線に沿う方向にコンパクトに配置して被記録媒体に印刷する解像度をさらに高めることができる。
【0010】
また、前記複数の流路の長さは、それぞれ略等しく構成されていることがより好ましい。
この発明によれば、複数の流路の長さはそれぞれ略等しく構成されているので、それぞれの流路の入口から出口まで液体の圧力変化を伝達するのに要する時間がほぼ等しくなる。このため、複数の溝部を同時に変形させ各流路の入口に溝部の形状変化による液体の圧力変化を略同時に与えることで、各流路の出口において液体の圧力変化がほぼ同時に伝達され、複数の液体噴射孔からほぼ同時に液体を吐出することができる。これにより、被記録媒体に印刷する時のずれをより効果的に抑えることができる。
【0011】
また、前記複数の溝部は、前記液体が充填される吐出用溝部と、前記液体が充填されない補助用溝部とが交互に並ぶように設けられ、前記吐出用溝部には該吐出用溝部へ前記液体を供給するための連結部が連通し、前記液体噴射孔は前記吐出用溝部にだけ連通するように形成されていることがより好ましい。
この発明によれば、連結部が形成されているので、複数の溝部のうち、吐出用溝部だけに液体を導入することができる。そして、例えば各溝部に駆動電極を設けて電圧を印加することで、吐出用溝部に充填された液体を、液体噴射孔から吐出することができる。
特に、複数の溝部が1つおきに吐出用溝部として機能するので、導電性を有する液体を用いたとしても、吐出用溝部の側壁部に形成された駆動電極と、補助用溝部の側壁部に形成された駆動電極とを、液体を介して導通させることなく電気的に切り離した状態で使い分けることができる。従って、導電性の液体を利用して印刷等の記録を確実に行うことができる。加えて、利用できる液体の選択幅が広がるので、ヘッドチップの付加価値を高めることができる。
【0012】
また、本発明の液体噴射ヘッドは、上記のいずれかに記載のヘッドチップを備えることがより好ましい。
この発明によれば、被記録媒体に印刷する解像度を高めながらも、被記録媒体に所望の形状をずれを抑えて印刷することができる。
【0013】
また、本発明の液体噴射装置は、上記のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えることがより好ましい。
この発明によれば、上記と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置によれば、被記録媒体に印刷する解像度を高めながらも、被記録媒体に所望の形状をずれを抑えて印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る液体噴射装置の実施形態を、図1から図8を参照しながら説明する。なお、この実施形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェット記録装置を例に挙げて説明する。この場合、液体噴射装置が吐出する液体はインクとなる。
図1に示すように、インクジェット記録装置1はインクジェットヘッド3が主走査方向に移動するいわゆるシリアル型のインクジェット記録装置であって、本体としての装置本体部2と、色ごとに設けられた複数のインクジェットヘッド3とを備えている。
装置本体部2は、略直方体形状の筐体6を備えている。筐体6内には、この幅方向(長手方向)Eに延びる一対のガイドレール8が設けられている。これらガイドレール8には、複数のインクジェットヘッド3が固定されたキャリッジ7が設けられている。すなわち、キャリッジ7は、ガイドレール8によって幅方向Eに往復動可能に支持されている。
【0016】
キャリッジ7は、平板状の基台7aを備えている。基台7aには、複数のインクジェットヘッド3が固定されている。
また、筐体6内の幅方向Eの一端部には、モータ11が設けられている。モータ11の出力軸は、筐体6の奥行方向(短手方向)Dに向けられている。モータ11の出力軸には、プーリ12が設けられている。一方、筐体6内の幅方向Eの他端部にもプーリ13が対向配置されている。そして、プーリ12、13にわたって、タイミングベルト14が巻回されている。タイミングベルト14には、キャリッジ7が固定されている。
このような構成のもと、モータ11を駆動すると、プーリ12、13およびタイミングベルト14を介して、キャリッジ7が幅方向Eに往復動するようになっている。
【0017】
また、筐体6内の他端部には、水性のインクWを供給するインクカートリッジ17が設けられている。インクカートリッジ17は、キャリッジ7に取り付けられたインクジェットヘッド3に、フレキシブルチューブからなるインク供給管18を介して接続されている。そして、インクカートリッジ17から、インク供給管18を介して、インクジェットヘッド3に各種インクを供給するようになっている。
【0018】
さらに、筐体6の奥行方向Dの一方の面及び他方の面には、互いに対向して配置された不図示の開口部が形成されている。筐体6内の一方の面の開口部に対向する位置には、長手方向Eに延びる一対の搬出ローラ22が設けられている。一方、他方の面に形成された開口部に対向する位置には、長手方向Eに延びる一対の搬入ローラ21が設けられている。
このような構成のもと、他方の面の開口部から用紙Sが挿入され、搬入ローラ21および搬出ローラ22を駆動することにより、用紙Sが一方の面の開口部から排出されるようになっている。
【0019】
図2に示すように、インクジェットヘッド3は、長方形状の取付基盤25を備えている。取付基盤25は、キャリッジ7の基台7aに図示しないネジを介して取り付けられている。取付基盤25の上面には、後述するインクジェットヘッドチップ(ヘッドチップ)26が取り付けられている。インクジェットヘッドチップ26の上面には、その長手方向の全長にわたって延びる長方形状の流路部材27が設けられている。流路部材27の上面のうち、その長手方向の中央部には、連結部30が設けられている。
また、取付基盤25には、この取付基盤25から立ち上げられた板状のベースプレート31が設けられている。ベースプレート31は、アルミニウムなどで形成されている。
ベースプレート31の一方の主面(インクジェットヘッドチップ26側に配された主面)には、配線基板35が設けられている。そして、インクジェットヘッドチップ26はフレキシブルプリント配線(FPC)36により配線基板35と接続されている。
【0020】
また、ベースプレート31の上端には、一方の主面側に延びる支持部37が設けられている。支持部37には、インクを貯留する図示しない貯留室を有する圧力緩衝器38が設けられている。圧力緩衝器38の下部には、貯留室と連通するインク連通管39が設けられている。インク連通管39は、図示しないOリングを介して、流路部材27の連結部30に連結されている。
一方、圧力緩衝器38の上部には、貯留室と連通するインク取込口42が設けられている。インク取込口42には、インク供給管18が取り付けられている。
このような構成のもと、インクカートリッジ17からインク供給管18を介して、インクが供給されると、このインクは、インク取込口42を介して圧力緩衝器38内の貯留室に取り込まれ、さらに、所定量のインクが、インク連通管39および流路部材27を介して、インクジェットヘッドチップ26に供給されるようになっている。
【0021】
図3及び図4に示すように、インクジェットヘッドチップ26は、インクWを吐出する複数の液体噴射孔45が形成されたノズルプレート46と、インクWが貯留される複数の溝部48を有し、これら複数の溝部48中のインクWを複数の液体噴射孔45側へ向けてそれぞれ押圧する積層された第一の圧電アクチュエータ49a及び第二の圧電アクチュエータ49bと、複数の溝部48の一部を覆う第一のカバープレート51a及び第二のカバープレート51bと、ノズルプレート46と2つの圧電アクチュエータ49a、49bとの間に配設され、インクWを複数の液体噴射孔45へそれぞれ導く矩形状の断面を有する複数の流路54が形成された板状の流路形成板55と、流路形成板55を支持するノズル支持プレート57と、を備えている。
複数の流路54の長さは、それぞれ略等しくなるように構成されている。
そして、ノズルプレート46に形成された複数の液体噴射孔45は、1直線C上に列設されている。
圧電アクチュエータ49a、49bは、それぞれが略直方体の形状を有し、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)から成るものである。複数の溝部48は、圧電アクチュエータ49a、49bの一方の面に横断面が矩形状になるようにそれぞれ形成されて、圧電アクチュエータ49a、49bの1直線Cに沿う方向の幅の略全幅にわたってそれぞれ形成されている。
【0022】
圧電アクチュエータ49a、49bは、それぞれに形成された溝部48の向きが互いに平行になるように、各圧電アクチュエータ49a、49bの一方の面と反対側の他方の面同士を接合されている。そして、各圧電アクチュエータ49a、49bを接合したものの両側から複数の溝部48の一部を覆うように、第一のカバープレート51a及び第二のカバープレート51bがそれぞれ接合されている。すなわち、第一の圧電アクチュエータ49aと第一のカバープレート51a、第二の圧電アクチュエータ49bと第二のカバープレート51bは、各々が対をなすように接合されている。
さらに、カバープレート51a、51bに接合されたノズル支持プレート57に、流路形成板55を介してノズルプレート46が接合されてインクジェットヘッドチップ26が構成されている。
【0023】
図5に、図3における切断線A−Aの断面図を示す。なお、図6及び図7に図5における断面図をそれぞれ示すが、説明の便宜のためにインクWを省略して示している。
図5から図7に示すように、2つの圧電アクチュエータ49a、49bは、ノズルプレート46に対向する側から見たときに、1直線Cを中に挟んで、1直線Cにより仕切られる一方の側及び他方の側にそれぞれ1つずつ設けられている。
各圧電アクチュエータ49a、49bにおいて、溝部48は、インクWが充填され液体噴射孔45に接続される吐出用溝部48aと、インクWが充填されず液体噴射孔45に接続されない補助用溝部48bとが1直線Cに沿う方向に交互に並ぶように配置されて構成されている。また、吐出用溝部48aと補助用溝部48bとは、1直線Cを挟んで互いに対向するように配置されている。そして、液体噴射孔45は、溝部48を介して吐出用溝部48aにだけ連通するように形成されている。
【0024】
このように、ノズルプレート46に対向する側から見たときに、1直線Cに対し、隣接する流路54同士が1直線Cで仕切られる一方の側と他方の側から各液体噴射孔45に達するように形成されている。すなわち、各液体噴射孔45は、1直線Cに沿う方向において、第一の圧電アクチュエータ49aに形成された吐出用溝部48aと、第二の圧電アクチュエータ49bに形成された吐出用溝部48aとが交互になるように接続されている。
各圧電アクチュエータ49a、49bにおける、隣り合う溝部48に挟まれる側壁部58には板状でインクWが吐出される方向に延びる駆動電極部59がそれぞれ設けられている。この駆動電極部59は図示しない配線によりフレキシブルプリント配線36を通じて配線基板35に接続されて制御される。そして、圧電アクチュエータ49a、49bの1直線Cに沿う方向の両端部には、2つの圧電アクチュエータ49a、49Bの接合面に直交する積層方向Fに延びる第一の貫通孔61a、第二の貫通孔61bがそれぞれ形成され互いに連通している。
【0025】
第一のカバープレート51aの第一の圧電アクチュエータ49aに接している面と反対側の面には1直線Cに沿う方向に延びる穴である第一の分配部63が形成されていて、この面は流路部材27に覆われている。そして、第一のカバープレート51aには、この第一の分配部63を起点として積層方向Fに第一の圧電アクチュエータ49aの各吐出用溝部48aまで延びる第一の連結部64と、1直線Cに沿う方向の両端部から積層方向Fに延びて第一の圧電アクチュエータ49aの第一の貫通孔61aと連結される一対の孔である第二の連結部65と、がそれぞれ形成されている。
一方、第二のカバープレート51bには、第二の圧電アクチュエータ49bの第二の貫通孔61bに連結され第二の圧電アクチュエータ49bに接している面から第二のカバープレート51bの内部まで積層方向Fに延びる一対の穴である第三の連結部67と、一対の第三の連結部67の第二のカバープレート51bの内部まで延びた部分を連結し1直線Cに沿う方向に延びる穴である第二の分配部68と、この第二の分配部68を起点として積層方向Fに流路部材27の反対側に配置された第二の圧電アクチュエータ49bの各吐出用溝部48aまで延びる第四の連結部69と、がそれぞれ形成されている。
【0026】
そして、図6及び図7に示すように、インクカートリッジ17から流路部材27に供給されたインクWは、流路部材27に取付けられ微細な開口が複数開いたメッシュ状のフィルタ70を通り、所定サイズ以上の異物を除去されて第一のカバープレート51aの第一の分配部63に供給される。
【0027】
このような構成のもと、流路部材27を介してインクジェットヘッドチップ26の第一のカバープレート51aの第一の分配部63に供給されたインクWは、第一の連結部64を通って流路部材27側に配置された第一の圧電アクチュエータ49aの吐出用溝部48aにそれぞれ供給される。一方、インクWは、第一のカバープレート51aの一対の第2の連結部65、第一の圧電アクチュエータ49aの第一の貫通孔61a、第二の圧電アクチュエータ49bの第二の貫通孔61b、及び、第二のカバープレート51bの一対の第三の連結部67を通って第二の分配部68に充填され、さらに第四の連結部69を通って流路部材27と反対側に配置された第二の圧電アクチュエータ49bの吐出用溝部48aにそれぞれ供給される。
【0028】
次に、以上のように構成されたインクジェット記録装置1の作用について説明する。特に、インクジェットヘッドチップ26からインクWを吐出する点を中心に説明する。
まず、図1に示すように、筐体6の他方の面の開口部から用紙Sを挿入し、搬入ローラ21および搬出ローラ22を駆動して用紙Sを筐体6の所定の位置にセットする。
次に、インクカートリッジ17からインク供給管18を介して、図5に示すインクジェットヘッドチップ26にインクWを供給し、2つの圧電アクチュエータ49a、49bの各吐出用溝部48aをインクWでそれぞれ充填する。
続いて、図8に示すように、各吐出用溝部48aを挟むように配置された2つの側壁部58の間隔が一旦広がるように、配線基板35により駆動電極部59に電圧を印加し、再び電位差をなくし側壁部58の変形が元に戻るように動作させる。具体的には、各吐出用溝部48aの両側面に配置された2つの駆動電極部59を図示しない配線によりアース電位に接地させた状態で、この2つの駆動電極部59を挟むように配置された2つの駆動電極部59に互いに異なる極性の電圧を印加して2つの側壁部58の間隔を広げ吐出用溝部48aの容積を増大させ、再び側壁部58を元の形状に戻す際に吐出用溝部48a内の圧力を増加させる。
こうして、吐出用溝部48a内のインクWを押圧し、液体噴射孔45からインク滴を吐出することで用紙Sを印刷する。
【0029】
こうして、本発明の実施形態のインクジェット記録装置1によれば、1直線C上に列設された複数の液体噴射孔45と複数の溝部48とは複数の流路54を介してそれぞれ連通されている。このため、例えば隣接する複数の溝部48の間隔を小さくできない場合であっても、複数の流路54の複数の液体噴射孔45側の間隔を小さくすることで、この複数の液体噴射孔45を1直線Cに沿う方向にコンパクトに配置し用紙Sに印刷する解像度を高めることができる。
また、ノズルプレート46に対向する側から見たときに、1直線Cに対し、隣接する流路54同士が1直線Cで仕切られる積層方向Fの一方の側と他方の側から各液体噴射孔45に達するように形成されている。従って、隣接する液体噴射孔45に達する流路54同士が干渉するのを確実に防止することが可能となり、複数の液体噴射孔45を1直線C方向にコンパクトに配置し用紙Sに印刷する解像度を高めることができる。
【0030】
また、複数の流路54の長さは、それぞれ略等しくなるように構成されている。従って、それぞれの流路54の入口から出口までインクWの圧力変化を伝達するのに要する時間がほぼ等しくなる。このため、複数の溝部48を同時に変形させ各流路54の入口に溝部48の形状変化によるインクWの圧力変化を略同時に与えることで、各流路54の出口においてインクWの圧力変化がほぼ同時に伝達され、複数の液体噴射孔45からほぼ同時にインクWを吐出することができる。これにより、用紙Sに印刷する時のずれをより効果的に抑えることができる。
【0031】
また、第一のカバープレート51a及び第二のカバープレート51bには、それぞれ第一の連結部64と第四の連結部69とがそれぞれ形成されているので、複数の溝部48のうち、吐出用溝部48aだけにインクWを導入することができる。そして、各溝部48に駆動電極部59を設けて電圧を印加し吐出用溝部48aの容積を変化させることで、吐出用溝部48aに充填されたインクWを、液体噴射孔48から吐出することができる。
特に、複数の溝部48が1つおきに吐出用溝部48aとして機能するので、導電性を有するインクWを用いたとしても、吐出用溝部48aの側壁部58に形成された駆動電極部59と、補助用溝部48bの側壁部58に形成された駆動電極部59とを、インクWを介して導通させることなく電気的に切り離した状態で使い分けることができる。従って、導電性のインクWを利用して印刷等の記録を確実に行うことができる。加えて、利用できるインクWの選択幅が広がるので、ヘッドチップ26の付加価値を高めることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、圧電アクチュエータの数を2つとしたが、圧電アクチュエータの数は3つ以上であってもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、流路54は板状の流路形成板55に形成されているとした。しかし、流路54はインクWを吐出する方向に厚い直方体状等の部材に形成されていてもよい。このように構成することでより複雑な流路を形成することができ、圧電アクチュエータをより多く備えた場合でも、この部材に形成された流路によりそれらの圧電アクチュエータに形成された溝部から1直線上に列設された液体噴射孔にインクを供給することが可能となる。
また、上記実施形態では、流路部材27により第一の圧電アクチュエータ49a側から供給されたインクWを、流路部材27の反対側に配置された第二の圧電アクチュエータ49bに圧電アクチュエータ49a、49bに形成された第一の貫通孔61a、第二の貫通孔61bを通して供給した。しかし、2つの圧電アクチュエータ49a、49bに達する前に流路部材27等により予めインクWの流れを2系統に分岐させておき、2つの圧電アクチュエータ49a、49bにそれぞれ直接インクWを供給してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、ノズルプレート46に対向する側から見たときに、2つの圧電アクチュエータ49a、49bは1直線Cを中に挟むように設けられず、例えば2つの圧電アクチュエータ49a、49bが1直線Cの片側に設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、用いるインクを水性としたが油性であってもよい。この場合、圧電アクチュエータに補助用溝部48bを設ける必要が無くなり、全ての溝部48にインクが貯留される構成となるが、上記実施形態と同様に2つの圧電アクチュエータの溝部48を1直線Cに沿う方向に互い違いに配置することで、上記と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドチップの一部を破断した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドチップの一部を破断した分解斜視図である。
【図5】図3における切断線A−Aの断面図である。
【図6】図5における切断線B1−B1の断面図である。
【図7】図5における切断線B2−B2の断面図である。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 インクジェット記録装置(液体噴射装置)
26 インクジェットヘッドチップ(ヘッドチップ)
45 液体噴射孔
46 ノズルプレート
48 溝部
49a 第一の圧電アクチュエータ
49b 第二の圧電アクチュエータ
54 流路
55 流路形成板
C 1直線
W インク(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の液体噴射孔が形成されたノズルプレートと、前記液体が貯留される複数の溝部を有し、これら複数の溝部中の前記液体を前記複数の液体噴射孔側へ向けてそれぞれ押圧する複数の圧電アクチュエータと、を有するヘッドチップにおいて、
前記ノズルプレートと前記複数の圧電アクチュエータとの間に設けられ、前記液体を前記複数の液体噴射孔へそれぞれ導く複数の流路を備え、
前記複数の液体噴射孔は1直線上に列設されており、前記複数の液体噴射孔と前記複数の溝部とは前記複数の流路を介してそれぞれ連通されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドチップにおいて、
前記複数の流路は、前記ノズルプレートと前記複数の圧電アクチュエータとの間に配設された板状の流路形成板に形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップにおいて、
前記複数の流路は、前記ノズルプレートに対向する側から見たときに、前記1直線に対し、隣接するもの同士が前記1直線で仕切られる一方の側と他方の側から各液体噴射孔に達するようにそれぞれ形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のヘッドチップにおいて、
前記複数の流路の長さは、それぞれ略等しく構成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のヘッドチップにおいて、
前記複数の溝部は、前記液体が充填される吐出用溝部と、前記液体が充填されない補助用溝部とが交互に並ぶように設けられ、
前記吐出用溝部には該吐出用溝部へ前記液体を供給するための連結部が連通し、
前記液体噴射孔は前記吐出用溝部にだけ連通するように形成されていることを特徴とするヘッドチップ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のヘッドチップを備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−5806(P2010−5806A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164660(P2008−164660)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】