説明

ヘッドマウントディスプレイ

【課題】表示画像を視認する場合でも外界の背景の視認性をできるだけ確保しつつ、画像信号に応じた表示画像を視認し易くすることが可能なシースルー型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を提供する。
【解決手段】HMD1の使用者の前方には液晶ディスプレイ71と外界の風景とが位置している。液晶装置101は第一画像光62を出射する。ハーフミラー8は、第一画像光62の一部を第一方向側に反射し、使用者の眼83に入射させる。液晶ディスプレイ71は所定の偏光角を有する第二画像光63を出射する。所定の偏光角を有する第二画像光63は、第一偏光板60に遮光される。使用者は液晶ディスプレイ71を黒色として視認する。使用者は黒く視認される液晶ディスプレイ71に第一画像光62に基づく画像を重ねて視認できる。外界の背景は第一偏光板60を透過し、使用者に視認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の頭部に配置され、使用者に画像信号に応じた表示画像を外界の背景と重ねて視認させるヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の頭部に配置され、使用者に画像信号に応じた表示画像を外界の背景と重ねて視認させる(このような機能をシースルーと呼ぶ)シースルー型ヘッドマウントディスプレイが知られている。例えば、特許文献1に記載のシースルー型ヘッドマウント型の画像表示装置は、ハーフミラーとバイザー型のシャッターとを備えている。画像表示装置からの画像光は、ハーフミラーにより反射されて使用者の眼に入射する。これによって、使用者は、画像を視認することができる。この場合のシャッターは、回動板と、光を遮断する遮断板とを備えており、使用者は、回動板を回動させることでシャッターを回動させ、ハーフミラーの前方の視界を開放する場合と、遮断板でハーフミラーの前方の視界を遮断する場合とを切り替えることができる。使用者は、シャッターを回動させ、ハーフミラーの前方の視界を開放した場合、画像表示装置からの画像と前方の背景とが重なった合成像を視認できるが、ハーフミラーの前方の視界を遮断板で遮断した場合、前方の背景を視認できないことになる。
【0003】
言い換えれば、特許文献1に記載の画像表示装置のようにハーフミラーの前方の視界を遮断すれば、画像表示装置からの画像は、背景と重ならないため、視界を遮断しない場合に比べて、画像表示装置からの画像を視認し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−276198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像表示装置において、ハーフミラー前方の視界を遮断した場合、遮断板の位置する範囲の全ての視界が遮断される。このため、画像表示装置からの画像を視認し易くなるものの、シースルー型のヘッドマウントディスプレイの特徴でもある外界の背景の視認が、し難くなるという問題点があった。このため、例えば、表示画像を視認しつつ移動することが難しくなる虞があった。
【0006】
近年、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)の画面の表示や、プレゼンテーション用ディスプレイ、機器の操作用ディスプレイなどとして液晶ディスプレイが家庭や職場に多用され、公共の場所でもディジタルサイネージとして大型の液晶ディスプレイが用いられている。このような状況の中で、PCの画像を液晶ディスプレイに表示している状況で、そのPCの操作を補助する目的でHMDを利用したり、全く関係なく別途HMDを利用する場合など、外部の液晶ディスプレイが利用されている環境で、HMDで画像を視聴する場合も増えてきている。しかし、この場合も、同様にシースルーでHMDの画面とこれらのディスプレイの画面が重なると文字や画像など類似の表示内容が重なってしまうのでHMDの画面の内容を非常に視認し難くなる。しかしながら、この場合、背景の画像として入射する光の偏光特性が、液晶ディスプレイでは所定の偏光角に限定されているが、その他の通常の背景画像の光は特に偏光特性が限定されていない点が着目される。
【0007】
本発明の目的は、上述した、背景の画像として入射する外部の液晶ディスプレイからの光が所定の偏光特性しか有していない点に着目して、表示画像を視認する場合でも外界の背景の視認性をできるだけ確保しつつ、画像信号に応じた表示画像を視認し易くすることが可能なシースルー型のヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るヘッドマウンドディスプレイは、使用者の頭部に配置されるヘッドマウントディスプレイであって、第一画像光を出射する画像光出射手段と、前記画像光出射手段によって出射された前記第一画像光の一部を第一方向に反射して使用者の眼に入射させるとともに、前記第一画像光の残りの部分を透過させる板状のビームスプリッタと、前記第一方向の反対方向である第二方向側から入射する所定の偏光角を有する第二画像光が、前記第一画像光を使用者に視認させる前記第一方向側の表示領域の少なくとも一部に透過することを防止するよう設けられており、前記所定の偏光角の光を遮光する偏光特性を有する遮光手段とを備えている。
【0009】
この場合、ビームスプリッタの第一方向側には使用者の眼が位置し、ビームスプリッタの第二方向側には使用者から見た外界の背景が位置する。また、使用者が外界を見る場合には、使用者の視線の方向には、ビームスプリッタと偏光手段とが存在する。使用者は、ビームスプリッタによって反射された第一画像光に基づく画像を視認することができる。また、遮光手段は、所定の偏光角である第二画像光が第一画像光を使用者に視認させる第一方向側の表示領域の少なくとも一部に透過することを防止するように設けられている。また、遮光手段は、第二画像光の偏光角と同一の所定の偏光角の光を遮光する偏光特性を有する。このため、第二画像光は、遮光手段によって遮光される。よって、使用者には、第二画像光に基づく画像が表示される表示面が黒く見える。ここで、使用者が第二画像光に基づく画像が表示される表示面の方向を向いた場合、第一画像光に基づく画像が、黒く視認される表示面に重なる。よって、第一画像光に基づく画像と外界の背景とが重ならず、画像を視認し易くなる。また、第二画像光以外の背景の光には、前記所定の偏光角以外の光も含まれているため、背景の光のうち前記所定の偏光角以外の光は遮光手段とビームスプリッタとを第一方向に透過し、使用者の眼に到達する。このため、外界の背景の視認性を確保することができる。つまり、ヘッドマウントディスプレイは、外界の背景の視認性を確保しつつ、第一画像光に基づく画像を視認し易くすることが可能である。
【0010】
また、前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記遮光手段は、前記所定の偏光角を有する前記第二画像光を遮光し、他の偏光角の光を透過する偏光特性を有する第一偏光板であり、前記第一偏光板は、前記ビームスプリッタの前記第二方向側に位置して前記第二画像光が前記第一方向側の前記表示領域の少なくとも一部に透過することを防止する第一遮光位置にあってもよい。
【0011】
また、前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記第一偏光板は、前記第一遮光位置に着脱可能であってもよい。
【0012】
また、前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記第一偏光板は、前記第一遮光位置に向かって進退可能に設けられてもよい。
【0013】
また、前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記第一偏光板は、前記第一偏光板の板面に直交する方向に沿った軸を中心に回転可能であってもよい。
【0014】
前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記第一偏光板は、前記第一偏光板の一方の板面が前記ビームスプリッタ側に位置する状態と、前記第一偏光板の他の板面が前記ビームスプリッタ側に位置する状態とで、表裏反転可能であってもよい。
【0015】
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記第一偏光板と前記ビームスプリッタとの間、又は前記第一偏光板の前記第二方向側に設けられ、前記第一偏光板が遮光可能な偏光角とは異なる偏光角の光を遮光可能な偏光特性を有する第二偏光板を備えてもよい。
【0016】
前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記遮光手段は、前記所定の偏光角を有する前記第二画像光を反射することで前記第二画像光を遮光する偏光特性を有するPBS(Polarized Beam Splitter、偏光ビームスプリッタ)であり、前記ビームスプリッタは、前記PBSの第二方向側、又は、前記PBSの板面を外側に延ばした方向における前記PBSの周囲に設けられていてもよい。
【0017】
前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記PBSは、前記ビームスプリッタの前記第一方向側に位置して前記第二画像光が前記第一方向側の前記表示領域の少なくとも一部に透過することを防止する第二遮光位置にあってもよい。
【0018】
前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記PBSは、前記第二遮光位置に向かって進退可能に設けられていてもよい。
【0019】
前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記PBSは、前記第二遮光位置に着脱可能であってもよい。
【0020】
前記ヘッドマウントディスプレイにおいて、前記ビームスプリッタの前記第二方向側に、前記PBSとは異なる偏光角の光を遮光可能な偏光特性を有する第三偏光板を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】HMD1の正面図である。
【図2】HMD1の平面図である。
【図3】第一偏光板60が第一遮光位置に進出した状態を示す図である。
【図4】第一偏光板60が第一遮光位置から退出した状態を示す図である。
【図5】図2に示すHMD1のI−I線矢視方向断面図である。
【図6】外界の風景と、液晶ディスプレイ71から出射される第二画像光63に基づく画像72を示す図である。
【図7】液晶装置101から出射される第一画像光62に基づく画像76を示す図である。
【図8】使用者が液晶ディスプレイ71の方向を向いた場合において、第二画像光63に基づく画像72と第一画像光62に基づく画像76とが重なった状態を示す図である。
【図9】使用者が時計74の近辺の方向を向いた場合において、風景に含まれる時計74と画像76とが重なった状態を示す図である。
【図10】第二画像光63が遮光された状態で、使用者が液晶ディスプレイ71の方向を向いた場合を示す図である。
【図11】第一偏光板60が第一遮光位置に進出した状態を示す、変形例に係る図である。
【図12】第一偏光板60が第一遮光位置から退出した状態を示す、変形例に係る図である。
【図13】図11と同一の位置にある第一偏光板60を表裏反転してHMD1に取り付けた状態を示す図である。
【図14】回転可能に構成された第一偏光板601とハーフミラー8とを示す正面図である。
【図15】第二偏光板67を追加した状態を示す、変形例に係る図である。
【図16】PBS40が第二遮光位置に進出した状態を示す図である。
【図17】PBS40が第二遮光位置から退出した状態を示す図である。
【図18】第三偏光板68を追加した状態を示す、変形例に係る図である。
【図19】PBS40の周囲にハーフミラー8を設けた状態を示す、変形例に係る図である。
【図20】PBS40の周囲にハーフミラー8を設けた状態を示す、変形例に係る正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態であるヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以後はHMDとする)1について、図面を参照して説明する。以下説明において、図1の紙面手前方向、奥行き方向、左方向、右方向、上方向、下方向が、夫々、HMD1の前方向、後方向、右方向、左方向、上方向、下方向である。
【0023】
HMD1の概要について説明する。図1に示すように、本実施形態では、使用者の両眼に対応した2つのHMD1が設けられている。2つのHMD1は略同一の構成をしている。HMD1の表示形式は光学透過型である。使用者の眼前の景色の光は、ハーフミラー8(図1参照、後述)を透過することによって使用者の眼に直接導かれる。HMD1の投影形式は虚像投影型である。HMD1が備える液晶装置101(図5参照、後述)から出射された画像の光である第一画像光62(図3参照)は、ハーフミラー8に反射されることによって使用者の眼に導かれる。これによってHMD1は、眼前の景色に、液晶装置101の画像を重ねて使用者に認識させることができる。一般的に、液晶方式のディスプレイは、偏光板を備えており、当該偏光板を介して光が出射される。よって、当該液晶方式のディスプレイから出力される光(液晶装置101から出射される第一画像光62、及び液晶ディスプレイ71から出射される第二画像光63)は、所定の偏光角を有する。なお、本実施形態では、第一画像光62(図3参照)と第二画像光63(図3参照)とは、それぞれ異なる偏光角であるとするが、同一の偏光角であってもよい。
【0024】
図1および図2に示すように、HMD1は筐体2を備える。筐体2は、眼鏡型フレーム91に着脱可能に取り付けられる。眼鏡型フレーム91は使用者の頭部に装着される。これによって、HMD1は、使用者の頭部に配置される。眼鏡型フレーム91は、左フレーム部92(図2参照)、右フレーム部93(図2参照)、中央フレーム部94、およびHMD支持部96を備える。左フレーム部92は使用者の左耳に掛けられる。右フレーム部93は使用者の右耳に掛けられる。中央フレーム部94は、左フレーム部92の前端部と、右フレーム部93の前端部との間に設けられている。中央フレーム部94は、長手方向中央部から右側且つ下側に、眼鏡レンズ81を備えている。中央フレーム部94は、長手方向中央部から左側且つ下側に、眼鏡レンズ82を備えている。眼鏡レンズ81、82は、ディオプトリ値が「0」の透明な平板である。眼鏡レンズ81、82は、筐体2に衝撃が加わった際に、筐体2が使用者の顔へ接触することを防止するために設けられる。勿論、使用者の視力に合わせて、眼鏡レンズ81、82が所定のディオプトリ値を有してもよい。中央フレーム部94は、長手方向中央部に一対の鼻当て部95を備えている。HMD支持部96は、中央フレーム部94の左右の両端部に設けられている。HMD支持部96は下方延出部98(図1参照)を備えている。下方延出部98は上下方向に延びている。
【0025】
筐体2の面のうち眼鏡型フレーム91に対向する面に、被保持部(図示略)が設けられている。被保持部は、上下方向に沿ったU字溝を備える。U字溝には下方延出部98が嵌められる。U字溝の底部には摩擦部材が設けられているため、HMD1の上下方向の位置決めが可能となる。
【0026】
HMD1の筐体2について説明する。左右のHMD1は略同一の構成をしているので、以下の説明では、使用者の左眼の眼前に装着されるHMD1(図2の紙面右側のHMD1)を中心に説明する。筐体2は四角筒状である。図1に示すように、筐体2は、左右略中央から右端までの部分が上下方向に突出している。筐体2の材料は樹脂である。筐体2は、その左部に、ハーフミラー8及び第一偏光板60(図4及び図3参照)を支持する支持部5を備えている。
【0027】
支持部5は上下一対の挟み板6,7(図1参照)を備えている。挟み板6,7はハーフミラー8を上下方向から保持する。ハーフミラー8は、挟み板6,7によって保持されている部分を軸として揺動可能である。使用者は、眼の位置に応じてハーフミラー8の角度を調整することができる。ハーフミラー8は、ビームスプリッタの一種である。本実施形態では、一例として、ハーフミラー8は、ハーフミラー8に到達した光の50%を反射し、50%を透過させる特性を有するとする。以下の説明では、第一画像光62がハーフミラー8に反射されて使用者の眼83に入射する方向を「第一方向」という(図3参照)。本実施形態の場合、第一方向は後方向である(図3参照)。なお、図3では、ハーフミラー8と液晶装置101との間の接眼光学系102(図5参照)などの部材は省略している(図4、図11〜図13、図15〜図19も同様)。
【0028】
支持部5は、第一偏光板60を備えている。第一偏光板60は、外部の液晶ディスプレイ71(図3参照)から出射される第二画像光63の偏光角の光を遮光し、他の偏光角の光を透過する偏光特性を有する。
【0029】
第一偏光板60は、ハーフミラー8の第二方向側に位置して第二画像光63が第一方向側の表示領域の少なくとも一部に透過することを防止する第一遮光位置(図3参照)に向かって進退可能である。なお、本実施形態の場合、表示領域は、ハーフミラー8の第一方向側の面である。本実施形態では、第一偏光板60は、左右方向にスライド移動することによって、第一遮光位置(図3参照)に向かって進退する。支持部5の上面の前端部には、第一偏光板60のスライド移動の範囲に対応する、左右方向に長い開口部が設けられている。開口部50には、第一偏光板60から上方に円柱状に突出する透明な円柱部材51が挿入されている。円柱部材51は、支持部5の上面より上側に突出している。使用者は、円柱部材51を開口部50に沿って左右方向に移動させることで、第一偏光板60を左右方向にスライド移動させる。
【0030】
図3に示すように、第一偏光板60が右側に移動することで第一遮光位置に進出すると、第一偏光板60は、ハーフミラー8の第二方向側に位置する。この場合、第一偏光板60は、外部の液晶ディスプレイ71の第二画像光63が第一方向側に透過することを防止する。よって、使用者には、液晶ディスプレイ71の画面が黒色に見える(図10参照)。
【0031】
図4に示すように、第一偏光板60が左側に移動することで第一遮光位置から退出すると、第一偏光板60は、筐体2の内部に位置する。この場合、ハーフミラー8の第二方向側には、第一偏光板60が存在しない。よって、使用者は、液晶ディスプレイ71に表示された花の画像72を視認することができる(図8参照)。
【0032】
図5を参照し、筐体2の内部構成について説明する。筐体2の内部の左右方向中央部には、投影ユニット10が格納されている。投影ユニット10の左方には、投影ユニット10を電気的に制御する制御基板20が格納されている。
【0033】
投影ユニット10について説明する。投影ユニット10は、右側から左側に向かって順に、レンズホルダ15、液晶ホルダ17、および液晶装置101を備えている。レンズホルダ15は左右方向に延びる略筒状の部材である。レンズホルダ15は、筒状内部の左右略中央から右側部分に接眼光学系102を保持する。レンズホルダ15の左右略中央から左側部分は空洞になっている。接眼光学系102は、複数のレンズ111を備えている。複数のレンズ111の光軸は、筒状内部の中心を左右方向に延びる軸線上に配置されている。複数のレンズ111は左右方向に並べられ、レンズホルダ15に固定されている。
【0034】
液晶ホルダ17は、筒状の周壁部171を備えている。周壁部171の左端に、開口を閉塞する左壁部172が設けられている。左壁部172の中心に、開口窓173が設けられている。左壁部172の右面に液晶装置101が保持されている。液晶装置101は、左面の中心部分に液晶表示部を備えている。液晶装置101には、使用者の眼前の景色に重ねる画像が表示される。すなわち、液晶装置101は、第一画像光62を出射する。ハーフミラー8は、使用者の眼83の正面に配置される(図3参照)。
【0035】
液晶装置101から出射された第一画像光62は、開口窓173を右側に通過し、レンズホルダ15の筒状内部を右方向に向かって進み、複数のレンズ111を通過してハーフミラー8に到達する。ハーフミラー8は、第一画像光62の一部(50%の光)を第一方向(後方)に向けて反射する。反射した第一画像光62は、眼鏡レンズ82(図2参照)を前方から後方に向けて透過し、使用者の眼83に到達し、使用者の眼83の網膜上に結像する(図3参照)。また、第一画像光62の残りの部分(残り50%の光)は、第一方向と直交する方向のうち、右方向に、ハーフミラー8を透過する。
【0036】
使用者の眼前の景色の光の一部(50%の光)は、ハーフミラー8を前方から後方に向けて(第一方向に向けて)透過する。ハーフミラー8を透過した景色の光は、さらに眼鏡レンズ82を透過し、使用者の眼83に到達する。眼83に到達した光は、網膜上に結像する。これによって使用者は、HMD1によって作成された第一画像光62に基づく画像が眼前の景色に重ねられた状態で、双方を同時に視認することができる(図8及び図9参照)。
【0037】
図6〜図10を参照して、使用者に視認される画像及び背景の一例について説明する。図6は、使用者の眼前の背景を表している。使用者は室内にいる。使用者の眼前には、液晶ディスプレイ71、液晶ディスプレイ71を支える支持台73、液晶ディスプレイ71の背後の壁に掛けられた時計74、窓75等が存在する。液晶ディスプレイ71には、複数の花の画像72が表示されている。画像72は、液晶ディスプレイ71から出射された第二画像光63に基づく画像である。
【0038】
図7は、HMD1の液晶装置101に表示され、使用者に視認される犬の画像76である。画像76は、液晶装置101から出射され、ハーフミラー8によって第一方向に反射された第一画像光62に基づく画像である。
【0039】
第一偏光板60が第一遮光位置から退出している場合について説明する。図4に示すように、使用者は、液晶ディスプレイ71の方向を向いているとする。使用者の眼前には、ハーフミラー8が存在しており、第一偏光板60が存在していない。なお、図4では、支持台73、時計74、及び窓75の図示は省略している。
【0040】
この場合、HMD1の液晶装置101から出射された第一画像光62の一部(50%分の光)は、ハーフミラー8で第一方向側に反射され、使用者の眼83に導かれる。また、液晶ディスプレイ71から出射された第二画像光63の一部(50%分の光)は、ハーフミラー8を第一方向側に透過し、使用者の眼83に導かれる。また、液晶ディスプレイ71の周囲の支持台73、時計74、及び窓75等の背景の光の一部(50%分の光)も、ハーフミラー8を第一方向側に透過し、使用者の眼83に導かれる。よって、図8に示すように、HMD1は、使用者の眼前の背景(図6参照)と、液晶ディスプレイ71に表示された第二画像光63に基づく画像72(図6参照)と、液晶装置101に表示された第一画像光62に基づく画像76(図7参照)とを重ねて、使用者に視認させることができる。
【0041】
また、例えば、使用者が顔の向きを変えて、時計74近辺にHMD1を向けた場合、図9に示すように、背景の時計74と、液晶装置101に表示された第一画像光62に基づく画像76とが重なるように使用者に視認される。なお、図8及び図9では特に示していないが、使用者の眼前の背景の光のうち、ハーフミラー8に重なる範囲(本実施形態では、図10の第一偏光板60の外形の範囲と略同じ範囲)の部分の光は、ハーフミラー8によって50%に減衰されて使用者の眼83に到達し、ハーフミラー8に重ならない範囲の部分の光は、使用者の眼83に直接到達している。
【0042】
第一偏光板60が第一遮光位置(図3参照)に進出した場合について説明する。使用者は、液晶ディスプレイ71の方向を向いているとする。この場合、図3に示すように、HMD1が備える液晶装置101から出射された第一画像光62の一部(50%分の光)は、ハーフミラー8で第一方向側に反射され、使用者の眼83に到達する。このため、使用者は第一画像光62に基づく画像76を視認することができる。また、第一偏光板60は、第二画像光63の偏光角の光を遮光する偏光特性を有するので、第二画像光63は第一偏光板60によって遮光され、第一偏光板60の第一方向側には透過しない(第二画像光63の透過は0%)。よって、図10に示すように、使用者には、液晶ディスプレイ71の画像72(より詳細には、画像72のうち、第一偏光板60が重なった部分)が、黒色に見える。図10では、第一偏光板60の外形の範囲を点線で表している。使用者が液晶ディスプレイ71の方向を向いているので、第一画像光62に基づく犬の画像76が、黒色として視認される液晶ディスプレイ71の画面に重なる。よって、外界の背景と、第一画像光62に基づく犬の画像76とが重ならず、使用者は画像76を視認し易くなる。
【0043】
また、液晶ディスプレイ71以外の背景の光には、第一偏光板60が遮光可能な偏光特性(偏光角)以外の光も含まれているため、背景に含まれる支持台73、時計74、及び窓75等の光は、第一偏光板60とハーフミラー8とを第一方向に通過し、使用者の眼83に到達する。より詳細には、支持台73、時計74、及び窓75等の光のうち、第一偏光板60とハーフミラー8とに重なった部分の光のうちの50%が、使用者の眼83に到達する。支持台73、時計74、及び窓75等の光のうち、第一偏光板60とハーフミラー8の範囲外の光は、使用者の眼83に直接到達する。外界の背景の光が第一偏光板60とハーフミラー8とを第一方向に通過し、使用者の眼83に到達するので、図10に示すように、外界の背景の視認性を確保することができる。図10では、時計74の一部と窓75の一部とが第一偏光板60と重なっているが、それらの視認性が確保されている。このように、本実施形態のHMD1は、外界の背景の視認性を確保しつつ、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くすることができる。このため、例えば、第一画像光62に基づく画像76を視認しつつ移動を行うことが容易になる。
【0044】
以上のように、本実施形態におけるHMD1が構成される。本実施形態では、黒色に視認される外部液晶ディスプレイの画像72に重ねて、液晶装置101から第一画像光62に基づく画像76が表示されるので、使用者が視認する液晶装置101からの画像76のコントラストが飛躍的に向上する。よって、使用者は、第一画像光62に基づく画像76をさらに鮮明に視認することができる。また、第一画像光62に基づく画像76が視認し易く、さらにコントラストが向上し鮮明に視認することができるので、本実施形態のHMD1は、例えば、写真のスライドショーや動画等のコンテンツの視聴に適している。
【0045】
また、使用者は、顔の向き(HMD1の向き)を液晶ディスプレイ71以外に向けることで、第一画像光62に基づく画像76と、背景とを重ねて視認することができる。よって、顔の向きを変えるだけで容易に、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くする場合と、外界の背景に重ねて第一画像光62に基づく画像76を視認する場合とを切り替えることができる。
【0046】
また、第一偏光板60は、第一遮光位置に向かって進退可能である(図3及び図4参照)。第一偏光板60が第一遮光位置に向かって進出している場合(図3参照)、使用者には液晶ディスプレイ71の画像72が黒色に見えるため、使用者は画像72を視認できない(図10参照)。また、第一偏光板60が第一遮光位置から退出している場合(図4参照)、使用者は、液晶ディスプレイ71の画像72を視認することが可能である(図8参照)。このように、第一偏光板60が第一遮光位置に向かって進退可能に設けられているので、使用者は、外部液晶ディスプレイの第二画像光63に基づく画像72を視認可能にするか否かを容易に切り替えることができる。
【0047】
また、例えば、液晶シャッターをハーフミラーと重ねて背景画像を視認できるよう設けて、その液晶シャッターを制御することで背景画像を遮光したり、しなかったりした場合、液晶シャッターを駆動させる回路や、液晶シャッターを設ける機構が必要になるため、HMDが大型化したり、HMDの重量が大きくなったり、高価格化する。HMDが大型化し、重量も大きくなるので、HMDの外観が見苦しいものとなる場合がある。本実施形態のHMD1では、第一偏光板60を用いているので、HMD1が大型化することはなく、重量は略変わらず、何よりも安価に構成できる。このため、HMD1を小型・軽量・安価に構成できる。HMD1を小型に構成できるので、本実施形態のHMD1は、使用者がHDM1持ち運ぶ場合に適している。また、HMD1の外観が見苦しいものとはならない。
【0048】
上記実施形態において、液晶装置101が本発明の「画像光出射手段」に相当し、ハーフミラー8が本発明の「ビームスプリッタ」に相当する。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。以下の変形例において、筐体2の形状は、上述の実施形態と異なる場合があるが、筐体2の形状についての説明は省略する。
【0050】
例えば、第一偏光板60は、左右方向にスライドしていたが、これに限定されない。例えば、図11及び図12に示す変形例のように、ハーフミラー8に沿って、スライド可能であってもよい。図11及び図12では、第一実施形態の場合(図3及び図4参照)と比較して、第一偏光板60、開口部50等が、平面視でハーフミラー8に沿って斜めに傾斜している。そして、第一偏光板60が第一遮光位置に進出する場合、ハーフミラー8に沿ってスライド移動し、第一偏光板60は、ハーフミラー8の第二方向側に位置する第一遮光位置に至る(図11参照)。第一偏光板60が第一遮光位置(図11参照)から退出する場合、第一偏光板60は、ハーフミラー8に沿ってスライド移動し、筐体2の内部に入る(図12参照)。本変形例の場合でも、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、第一偏光板60がスライド移動することで、第一遮光位置に移動していたが、これに限定されない。例えば、第一偏光板60が第一遮光位置に固定されていてもよい。また、例えば、第一偏光板60を第一遮光位置に着脱可能に構成してもよい。この場合、第一偏光板60がHMD1に装着されると、図3及び図11に示す場合と同様に、第一偏光板60が第一遮光位置に位置する。そして、第一偏光板60がHMD1から取り外されると、図4及び図12に示す場合と同様に、第一偏光板60がハーフミラー8の第二方向側には位置しない。よって、使用者は、液晶ディスプレイ71の第二画像光63に基づく画像72を視認可能にするか否かを容易に切り替えることができる。
【0052】
第一偏光板60を着脱可能に構成する一例について説明する。例えば、挟み板6,7に、第一偏光板60が移動可能な通路を設ける。通路は、筐体2の端部(例えば、筐体2の右側の端部におけるハーフミラー8より第二方向側)に繋がるように構成する。この場合、通路における筐体2の端部側から第一偏光板60をHMD1に取り付け、第一偏光板60を通路に沿って移動させる。そして、第一偏光板60が第一遮光位置において挟み板6,7によって支持されるようにする。第一偏光板60をHMD1から取り外す場合は、使用者は、通路に沿って第一偏光板60を移動させ、筐体2の端部から第一偏光板60を取り外す。以上のように構成することで、第一偏光板60を着脱可能に構成できる。
【0053】
また、図11に示すように、第一偏光板60の一方の板面607が、ハーフミラー8側にある状態と、図13に示すように、第一偏光板60の他方の板面608が、ハーフミラー8側にある状態とで、表裏反転可能に第一偏光板60が設けられていてもよい。第一偏光板60を表裏反転させる場合、第一偏光板60の偏光特性を決定するスリットの向きが変わる。これによって、第一偏光板60が遮光可能な偏光角を切り替えることができる。よって、第一偏光板60の一方の板面607がハーフミラー8側にある状態にした場合(図11参照)、液晶ディスプレイ71からの第二画像光63は第一偏光板60によって遮光される。また、第一偏光板60の他方の板面608が、ハーフミラー8側にある状態にした場合(図13参照)、第一偏光板60が遮光可能な偏光角が切り替わり、第二画像光63は、遮光されなくなる。このため、図13に示すように、液晶ディスプレイ71からの第二画像光63は第一偏光板60を通過する。そして、第二画像光63の一部(50%の光)は、ハーフミラー8を第二方向側に透過する。このため、図8に示すように、液晶ディスプレイ71の花の画像72を使用者が視認可能になる。このように、使用者は、第一偏光板60を表裏反転させることで、液晶ディスプレイ71の第二画像光に基づく画像72を視認可能にするか否かを容易に切り替えることができる。
【0054】
なお、第一偏光板60を表裏反転可能に構成する一例としては、前述した第一偏光板60が着脱可能な場合の通路等を設け、当該通路に第一偏光板60を装着する場合に、第一偏光板60の表裏を反転させて装着するようにすればよい。その他、第一偏光板60をスライド移動させつつ表裏反転させるようにHMD1を構成してもよい。
【0055】
また、例えば、第一偏光板60が、第一偏光板60の板面に直交する方向に沿った軸を中心に回転可能であってもよい。この場合、例えば、図14に示すように、第一偏光板60を円形に形成した第一偏光板601を設け、挟み板6,7がハーフミラー8と第一偏光板601を保持してもよい。図14に示す例では、円形の第一偏光板601は、ハーフミラー8の第二方向側(図13の紙面手前側)に設けられている。第一偏光板601の径は、ハーフミラー8の上下方向の長さより大きく、ハーフミラー8の左右方向の長さより短い。第一偏光板601の上部及び下部は、挟み板6,7より上方及び下方に突出している。挟み板6,7には、上方及び下方に突出する第一偏光板601の部位602,603の形状に対応する孔部(図示略)が設けられており、当該孔部を介して第一偏光板601が上方及び下方に突出している。
【0056】
使用者は、上方及び下方に突出する第一偏光板601の部位602,603を指で押さえながら、第一偏光板601を回すことができる。使用者が第一偏光板601を回す場合、第一偏光板60は、第一偏光板601の板面に直交する方向(図13の紙面手前側と奥行き側の方向)に沿った軸を中心に回転する。本実施形態の場合、軸は、円形の第一偏光板601の中心である。第一偏光板601は、回転する場合に、周方向(図13の矢印55の方向)に回転する。
【0057】
第一偏光板601は、所定の偏光角の光を遮光するためのスリット604を含んでいる。使用者は第一偏光板601を周方向に回転させることで、スリット604の角度を変え、遮光できる光の偏光角を調整することができる。このため、例えば、使用者が第一偏光板601を回転させて、液晶ディスプレイ71から出射される第二画像光63を遮光できるように、第二画像光63の偏光角の光を遮光可能な状態に第一偏光板601を調整すれば、図10に示すように、使用者は、液晶ディスプレイ71の画面を黒色に視認することができる。よって、HMD1は、外界の背景の視認性を確保しつつ、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くすることができる。また、使用者が第一偏光板601を回転させて遮光できる偏光角を第二画像光63の偏光角以外に調整し、第二画像光63を透過可能な状態にすれば、図8に示すように液晶ディスプレイ71の画像72が視認可能となる。
【0058】
また、例えば、液晶ディスプレイ71とは異なる種類の液晶ディスプレイ(図示外)が存在するとする。そして、当該液晶ディスプレイから出射される第二画像光の偏光角が、第二画像光63の偏光角とは異なる偏光角であるとする。この場合でも、使用者は、第一偏光板601を回転させて液晶ディスプレイ71とは異なる液晶ディスプレイから出射される第二画像光の偏光角を遮光可能な状態に調整することができる。この場合、図10に示す画像72と同様に、使用者は、当該液晶ディスプレイの画面を黒色に視認することができる。このように、HMD1は、第二画像光の偏光角がそれぞれ異なる複数の種類の液晶ディスプレイがある場合に、それぞれの液晶ディスプレイに合わせて遮光可能な偏光角を調整することができる。よって、HMD1は、複数の種類の液晶ディスプレイを利用して、液晶装置101から出射される第一画像光62に基づく画像76を視認し易くすることができる。
【0059】
また、図15に示すように、第一偏光板60に追加して、第一偏光板60が遮光可能な偏光角とは異なる偏光角の光を遮光可能な偏光特性を有する第二偏光板67を設けてもよい。第二偏光板67は、第一偏光板60の第二方向側に設けられている。この場合、例えば、液晶ディスプレイ71の他に、第二画像光63とは偏光角が異なる第二画像光65を出射する液晶ディスプレイ(図示外)が存在する場合に、第二偏光板67の偏光特性を、第二画像光65を遮光可能な特性にする。これによって、図示外の液晶ディスプレイの第二画像光65を遮光することができる(図15参照)。よって、使用者は、図示外の液晶ディスプレイの画面を黒色に視認する。また、第一偏光板60は、液晶ディスプレイ71の第二画像光63を遮光することができる。よって、HMD1は、2種類のディスプレイ(液晶ディスプレイ71、図示外の液晶ディスプレイ)のどちらを使用した場合でも、外界の背景の視認性を確保しつつ、液晶装置101の第一画像光62に基づく画像76(図10参照)を視認し易くすることができる。なお、第二偏光板67を第一偏光板60とハーフミラー8との間に設けても、同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、液晶ディスプレイ71から出射される第二画像光63を遮光するために、第一偏光板60が使用されていたが、これに限定されない。例えば、PBS(Polarized Beam Splitter、偏光ビームスプリッタ)を使用してもよい。以下、PBSを使用した場合におけるHMD1の変形例である第二実施形態について説明する。なお、本実施形態では、液晶装置101から出射される第一画像光62と、液晶ディスプレイ71から出射される第二画像光63とは、共にs偏光の光であるとする。また、図10における点線で示した第一偏光板60の外形は、本実施形態では、PBS40の外形となる。また、本実施形態では、上述の第一偏光板60を使用した場合のHMD1の構成と同様の構成は、同じ符号で示し、詳細の説明は省略する。
【0061】
図16に示すように、第二実施形態におけるHMD1は、板状のPBS40を備えている。PBS40は、第二画像光63(s偏光)を反射することで第二画像光63を遮光し、他の偏光角の光を透過する偏光特性を有する。PBS40の上下左右方向の大きさは、ハーフミラー8より小さい。PBS40は、ハーフミラー8の第一方向側の板面の中央部に位置している。PBS40は、ハーフミラー8の第一方向側に位置して、第二画像光63が第一方向側の表示領域の少なくとも一部に透過することを防止する第二遮光位置(図16参照)に向かって進退可能である(図16及び図17参照)。本実施形態では、左斜め前方向と右斜め後方向とにスライド移動することによって、第二遮光位置(図16参照)に向かって進退する。なお、図17では、PBS40が使用者の眼前から無くなった分、図16に比べて、第一画像光62の眼83への入射位置が紙面右側に移動するため、それに合わせて眼83の位置を右側に移動させている。しかし、実際には、ハーフミラー8の角度を変更することで、眼83の位置を動かすことなく調整すればよい。また、PBS40を薄型に構成すれば、第一画像光62の眼83への入射位置が僅かにしか移動しないため、ハーフミラー8の角度の調整等を行う必要はない。
【0062】
PBS40のスライド移動の範囲に対応する開口部50には、PBS40から上方に延びる透明な円柱部材51が挿入されている。使用者は、円柱部材51を開口部50に沿って移動させることで、PBS40をスライド移動させる。
【0063】
図16に示すように、PBS40が右斜め後方に移動することで第二遮光位置に進出すると、PBS40は、ハーフミラー8の第一方向側に位置する。この場合、図16に示すように、HMD1が備える液晶装置101から出射された第一画像光62(s偏光)の大部分(PBS40に光が吸収される影響があり、反射される光は100%にはならず、例えば、97%〜99%の光)は、PBS40で第一方向側に反射され、使用者の眼83に到達する。このため、使用者は、第一画像光62に基づく画像76を視認することができる。また、PBS40は、第二画像光63の偏光角(s偏光)の光を反射して遮光する偏光特性を有するので、第二画像光63はPBS40によって遮光され、PBS40の第一方向側には透過しない。よって、使用者には、液晶ディスプレイ71の画像72が、黒色に見える。この場合、第一画像光62に基づく犬の画像76が、黒色として視認される液晶ディスプレイ71の画面に重なる(図10参照)。よって、外界の背景と、第一画像光62に基づく犬の画像76とが重ならず、使用者は画像76を視認し易くなる。
【0064】
また、液晶ディスプレイ71以外の背景の光には、PBS40が反射可能なs偏光以外の光も含まれているため、背景に含まれる支持台73、時計74、及び窓75等の光のうちs偏光の以外の光は、PBS40とハーフミラー8とを第一方向に通過し、使用者の眼83に到達する。このため、外界の背景(支持台73、時計74、及び窓75等)の視認性を確保することができる(図10参照)。つまり、HMD1は、外界の背景の視認性を確保しつつ、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くすることができる。
【0065】
以上のように、本実施形態におけるHMD1が構成される。本実施形態では、第一実施形態と同様に、使用者が視認する液晶装置101からの画像76のコントラストが飛躍的に向上する。よって、使用者は、第一画像光62に基づく画像76をさらに鮮明に視認することができる。また、第一実施形態と同様に、顔の向きを変えるだけで容易に、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くする場合と、背景に重ねて第一画像光62に基づく画像76を視認する場合とを切り替えることができる。
【0066】
また、PBS40は、第二遮光位置に向かって進退可能である(図16及び図17参照)。図17に示すようにPBS40を左斜め前方にスライド移動させ、第二遮光位置から退出させると、使用者は第二画像光63に基づく画像72を視認可能になる。よって、使用者は、液晶ディスプレイ71の第二画像光63に基づく画像72を視認可能にするか否かを容易に切り替えることができる。
【0067】
なお、本発明は上記第二実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、PBS40がスライド移動することで、第二遮光位置(図16参照)に移動していたが、これに限定されない。例えば、PBS40が第二遮光位置に固定されていてもよい。また、PBS40が板状で無くてもよい。例えば、PBS40が薄膜であり、ハーフミラー8の第一方向側の面に蒸着されることによって、PBS40が形成されてもよい。
【0068】
また、例えば、前述の第一実施形態の変形例と同様に、PBS40を着脱可能に構成してもよい。この場合、使用者は、液晶ディスプレイ71の第二画像光63に基づく画像72を視認可能にするか否かを容易に切り替えることができる。
【0069】
また、図18に示すように、ハーフミラー8の第二方向側に、PBS40とは異なる偏光角の光を遮光可能な偏光特性を有する第三偏光板68を備えてもよい。この場合、例えば、液晶ディスプレイ71の他に、第二画像光63とは偏光角が異なる第二画像光65を出射する液晶ディスプレイ(図示外)が存在する場合に、第三偏光板68を第二画像光65を遮光可能な偏光特性にする。これによって、図示外の液晶ディスプレイの第二画像光65を遮光することができる(図18参照)。よって、使用者は、図示外の液晶ディスプレイの画面を黒色に視認する。また、PBS40は、液晶ディスプレイ71の第二画像光63を遮光することができる。よって、HMD1は、2種類のディスプレイ(液晶ディスプレイ71、図示外の液晶ディスプレイ)のどちらを使用した場合でも、液晶装置101の第一画像光62に基づく画像76(図10参照)を視認し易くすることができる。
【0070】
また、PBS40がハーフミラー8の第一方向側に設けられていたが、これに限定されない。例えば、図19及び図20に示すように、PBS40の外周の周囲にハーフミラー8が設けられていてもよい。言い換えると、ハーフミラー8は、PBS40の板面401(図20参照)を外側に延ばした方向(図20の紙面上下左右方向)におけるPBS40の周囲に設けられていてもよい。この場合でも、第一画像光62がPBS40によって、第一方向側に反射されて使用者の眼83に到達し、第二画像光63がPBS40によって反射されて使用者の眼83に到達しない。よって、HMD1は、外界の背景の視認性を確保しつつ、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くすることができる。
【0071】
また、PBS40が反射可能な光の偏光角、第一画像光62の偏光角、及び第二画像光63の偏光角は、それぞれs偏光に限定されない。例えば、各画像光62,63をs偏光とは異なる偏光角(例えば、p偏光)にしてもよい。そして、PBS40は、各画像光62,63の偏光角に応じて、s偏光とは異なる偏光角の光を遮光(反射)可能な偏光特性を有していてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態において、液晶ディスプレイ71は、液晶方式のディスプレイであったが、これに限定されない。例えば、所定の偏光角で第二画像光を出射可能な方式であれば、液晶方式で無くてもよい。また、第一偏光板60,601、第二偏光板67、第三偏光板68、PBS40等の位置や大きさは限定されない。第一偏光板60,601、第二偏光板67、第三偏光板68、PBS40等は、第二画像光63が、第一画像光62を使用者に視認させる第一方向側の表示領域の少なくとも一部に透過するような位置、大きさであればよい。
【0073】
また、上記実施形態において示した各実施例を組み合わせてもよい。例えば、図15に示す実施形態において、第一偏光板60や第二偏光板67をスライド移動させたり、表裏回転させたり、着脱可能に構成してもよい。また、例えば、1つの偏光板をHMD1に着脱可能な場合、第一偏光板60を装着する場合と、第二偏光板67を装着する場合とを切替可能であってもよい。この場合、液晶ディスプレイから出射される第二画像光の偏光角に合わせて、遮光特性の異なる偏光板を切り替えることができる。よって、複数の液晶ディスプレイを使用した場合でも、外界の背景の視認性を確保しつつ、第一画像光62に基づく画像76を視認し易くすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 ヘッドマウントディスプレイ
8 ハーフミラー
40 PBS
60,601 第一偏光板
62 第一画像光
63,65 第二画像光
67 第二偏光板
68 第三偏光板
71 液晶ディスプレイ
101 液晶装置
607 板面
608 板面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部に配置されるヘッドマウントディスプレイであって、
第一画像光を出射する画像光出射手段と、
前記画像光出射手段によって出射された前記第一画像光の一部を第一方向に反射して使用者の眼に入射させるとともに、前記第一画像光の残りの部分を透過させる板状のビームスプリッタと、
前記第一方向の反対方向である第二方向側から入射する所定の偏光角を有する第二画像光が、前記第一画像光を使用者に視認させる前記第一方向側の表示領域の少なくとも一部に透過することを防止するよう設けられており、前記所定の偏光角の光を遮光する偏光特性を有する遮光手段と
を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記遮光手段は、前記所定の偏光角を有する前記第二画像光を遮光し、他の偏光角の光を透過する偏光特性を有する第一偏光板であり、
前記第一偏光板は、前記ビームスプリッタの前記第二方向側に位置して前記第二画像光が前記第一方向側の前記表示領域の少なくとも一部に透過することを防止する第一遮光位置にあることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記第一偏光板は、前記第一遮光位置に着脱可能であることを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記第一偏光板は、前記第一遮光位置に向かって進退可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記第一偏光板は、前記第一偏光板の板面に直交する方向に沿った軸を中心に回転可能であることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記第一偏光板は、前記第一偏光板の一方の板面が前記ビームスプリッタ側に位置する状態と、前記第一偏光板の他の板面が前記ビームスプリッタ側に位置する状態とで、表裏反転可能であることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記第一偏光板と前記ビームスプリッタとの間、又は前記第一偏光板の前記第二方向側に設けられ、前記第一偏光板が遮光可能な偏光角とは異なる偏光角の光を遮光可能な偏光特性を有する第二偏光板を備えたことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記遮光手段は、前記所定の偏光角を有する前記第二画像光を反射することで前記第二画像光を遮光する偏光特性を有するPBS(Polarized Beam Splitter、偏光ビームスプリッタ)であり、
前記ビームスプリッタは、前記PBSの第二方向側、又は、前記PBSの板面を外側に延ばした方向における前記PBSの周囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記PBSは、前記ビームスプリッタの前記第一方向側に位置して前記第二画像光が前記第一方向側の前記表示領域の少なくとも一部に透過することを防止する第二遮光位置にあることを特徴とする請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
前記PBSは、前記第二遮光位置に向かって進退可能に設けられていることを特徴とする請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
前記PBSは、前記第二遮光位置に着脱可能であることを特徴とする請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
前記ビームスプリッタの前記第二方向側に、前記PBSとは異なる偏光角の光を遮光可能な偏光特性を有する第三偏光板を備えたことを特徴とする請求項8から11に記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−76959(P2013−76959A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218395(P2011−218395)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】