説明

ヘッドマウント装置

【課題】画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニットを、観察者が眼鏡を装着している状態で、観察者の頭部に装着するために使用されるヘッドマウント装置であって、眼鏡を必要とする観察者にとって使い勝手の良いものを提供する。
【解決手段】ヘッドマウント装置10を、観察者の頭部に装着されるフレーム16であって投影ユニット12が搭載されるものと、そのフレーム16に設けられた支持部202,202であって、観察者に装着されている眼鏡14のフロント部220の、左右両側レンズの上側にそれぞれ位置する部分の上面に載置されるものと、フレーム16に設けられた額当て部204であって、支持部202,202が眼鏡14のフロント部220の上面に載置されている状態において観察者の額に接触可能であるものとを含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニットを観察者の頭部に装着するために使用されるヘッドマウント装置に関するものであり、特に、前記投影ユニットを、観察者が眼鏡を装着している状態で、観察者の頭部に装着するために使用される形式のヘッドマウント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像を光学的に表示する技術の一種として、画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニットを観察者の頭部に装着し、その装着状態で投影ユニットを起動させ、それにより、画像を観察者に表示する方式が既に存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の技術を実現するためには、前記投影ユニットを観察者の頭部に装着することが必要であり、そのために、観察者は、自身の頭部にヘッドマウント装置を装着し、そのヘッドマウント装置を用いて前記投影ユニットを観察者の頭部に装着することが必要である。そのヘッドマウント装置は、一般に、観察者の両耳にかけられる状態で観察者の頭部に装着されるフレームを主体として構成される。そのフレームに、前記投影ユニットが搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−176096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自分の視力を矯正するために眼鏡を必要とする観察者は、前記投影ユニットによる表示画像を観察するために、眼鏡と一緒に前記フレームを自身の頭部に装着しようとするのが通常である。
【0006】
しかし、従来のフレームは、眼鏡と一緒に観察者の頭部に装着されるという使用態様を想定して設計されていない。そのため、この使用態様においては、従来、種々の不都合、例えば、観察者が自身の頭部にフレームを装着する作業が困難であるという不都合や、フレームを観察者の頭部に対して正確に位置合わせすることが困難であるという不都合などがあった。そのため、従来のフレームは、眼鏡を必要とする観察者にとっては、使い勝手が不十分であった。
【0007】
以上説明した事情を背景として、本発明は、画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニットを、観察者が眼鏡を装着している状態で、観察者の頭部に装着するために使用されるヘッドマウント装置であって、眼鏡を必要とする観察者にとって使い勝手の良いものを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載するが、このように、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することにより、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能となる。
【0009】
(1) 画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニットを、観察者が眼鏡を装着している状態で、観察者の頭部に装着するために使用されるヘッドマウント装置であって、
観察者の両耳にかけられる状態で観察者の頭部に装着されるフレームであって、前記投影ユニットが搭載されるものと、
前記フレームに設けられた支持部であって、観察者に装着されている前記眼鏡のフロント部の、左右両側レンズの上側にそれぞれ位置する部分の上面に、前記フロント部に対して前後方向に相対移動可能な状態で載置され、それにより、前記フレームが当該支持部を介して前記眼鏡のフロント部によって支持されるものと、
前記フレームに設けられた額当て部であって、前記支持部が前記眼鏡のフロント部の上面に載置されている状態において観察者の額に接触可能であるものと
を含むヘッドマウント装置。
【0010】
(2) 前記支持部は、互いに分離された一対の支持部として構成され、
それら一対の支持部は、前記フレームが観察者の頭部に装着されている状態において、観察者の鼻を前後方向に通過する垂直面上に位置するすきまを隔てて左右方向において並んでいる(1)項に記載のヘッドマウント装置。
【0011】
(3) 前記一対の支持部は、前記眼鏡が観察者に装着されていない状態で前記フレームが観察者に装着される誤使用状態において、前記一対の支持部が観察者の鼻に接触しない間隔を有して左右方向に並んでいる(2)項に記載のヘッドマウント装置。
【0012】
(4) 前記支持部および前記額当て部は、それらに共通のサブフレームに設けられて、前記フレームとは別体である支持ユニットを構成しており、
その支持ユニットは、前記フレームに装着される(1)ないし(3)項のいずれかに記載のヘッドマウント装置。
【0013】
(5) 前記支持部および前記額当て部は、前記サブフレームとは異なる材料によって形成されている(4)項に記載のヘッドマウント装置。
【0014】
(6) 前記支持部および前記額当て部は、前記サブフレームより柔らかい材料によって形成されている(5)項に記載のヘッドマウント装置。
【0015】
(7) 前記支持部は、前記フレームの下方に配置され、前記額当て部は、前記フレームの後方に配置され、それにより、それら支持部および額当て部が、前記フレームの上方の空間を占有しない(1)ないし(6)項のいずれかに記載のヘッドマウント装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、観察者は、これから装着しようとするフレームにおける支持部を、フレームが観察者の両耳にかけられた状態で、眼鏡のフロント部の上面に載せれば、フレームが観察者の頭部に装着される。よって、本発明によれば、観察者が自身の頭部にフレームを装着する作業が簡単化され、それにより、フレームの使い勝手が向上する。
【0017】
さらに、本発明によれば、観察者は、フレームに設けられた額当て部を観察者の額に接触させれば、観察者の頭部に対するフレームの、前後方向における相対位置が決まる。よって、本発明によれば、フレームを観察者の頭部に対して正確に位置合わせする作業も簡単化され、それにより、フレームの使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に従うヘッドマウント装置を投影ユニットと共に示す斜視図である。
【図2】図1に示すヘッドマウント装置および投影ユニットを、眼鏡を装着している観察者の頭部に装着されている状態で示す斜視図である。
【図3】図1に示すヘッドマウント装置および投影ユニットを制御ユニットと共に示す平面図である。
【図4】図3に示す投影ユニットおよび制御ユニットのそれぞれの構成を概念的に表すブロック図および光路図である。
【図5】図1に示すヘッドマウント装置を眼鏡と共に、観察者の頭部への装着状態で示す側面断面図である。
【図6】図5に示す支持ユニットの一変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の例示的ないくつかの実施形態のうちの一つを図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1には、本発明の一実施形態に従うヘッドマウント装置10が斜視図で示され、図2には、このヘッドマウント装置10が使用状態で斜視図で示されている。このヘッドマウント装置10は、画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニット12を、観察者が眼鏡14を装着している状態で、観察者の頭部に装着するために使用される。
【0021】
このヘッドマウント装置10は、フレーム16を有し、そのフレーム16は、観察者の両耳にかけられる状態で観察者の頭部に装着される。このフレーム16の一部に、アタッチメント装置18を介して投影ユニット12が着脱可能かつ位置・角度調節可能に搭載される。ヘッドマウント装置10の構造については、後に詳述する。
【0022】
次に、図3および図4を参照することにより、投影ユニット12およびその投影ユニット12を制御するための制御ユニット20を説明する。
【0023】
まず、投影ユニット12の概略を説明する。図3には、この投影ユニット12がヘッドマウント装置10と共に平面図で示されている。この投影ユニット12は、単眼式であり、画像を表す画像光を観察者の片眼に投影して前記画像を観察者に表示する。さらに、投影ユニット12は、網膜走査型であり、光源からの光束を観察者の網膜上に投射するとともに、その投射した光束を網膜上において走査することにより、観察者が画像を虚像として観察することを可能にする。さらに、投影ユニット12は、シースルー型であり、表示画像を観察者が現実外界に重ねて観察することを可能にする。
【0024】
なお付言するに、本実施形態においては、投影ユニット12が単眼式、網膜走査型およびシースルー型であるが、両眼式に変更したり、光源からの面状の光を、LCD(液晶ディスプレイ)等、空間変調素子を用いて、各画素ごとに空間的に変調し、その変調された光を観察者の網膜に投影する型式に変更したり、表示画像の観察と並行して現実外界を観察することができないクローズド型に変更することが可能である。
【0025】
次に、制御ユニット20の概略を説明する。図3および図4に示すように、投影ユニット12に制御ユニット20が、図1に示すように、複数本のケーブルを介して接続されている。それらケーブルは、制御信号を供給する制御ラインと、電力を供給するパワーラインと、光を伝送する光ファイバ82(後に詳述する)とを含んでいる。投影ユニット12が観察者の頭部に装着されるのに対し、制御ユニット20は、観察者のうち、頭部以外の部分(例えば、腰)に装着される。
【0026】
図4に示すように、制御ユニット20は、線状の画像光(例えば、RGBカラーレーザビーム)を発生させて出射する光源部24を備えている。その光源部24の構成は、後に詳述する。この制御ユニット20は、外部入出力端子26と、その外部入出力端子26に接続された制御部28と、その制御部28に接続されたコンテンツ記憶部30とを備えている。コンテンツ記憶部30は、例えば、ハードディスク等、磁気記録媒体としたり、CD−R等、光学記録媒体としたり、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリとすることが可能である。
【0027】
外部入出力端子26には、パーソナルコンピュータ等、外部機器(図示しない)が接続され、その外部機器から、外部入出力端子26を介して、投影ユニット12によって再生されるべき画像データ(例えば、映像データ等、静止画像コンテンツまたは動画像コンテンツを表すデータ)が入力される。
【0028】
その入力された画像データは、制御部28により、必要に応じて、コンテンツ記憶部30に保存されるが、いずれにしても、制御部28は、前記外部機器から入力された画像データを画像信号に変換する。
【0029】
図4に示すように、光源部24は、信号処理回路32を備えている。その信号処理回路32は、制御部28に接続されていて、その制御部28から画像信号を供給される。
【0030】
信号処理回路32は、画像光を成分光(RGB)ごとに強度変調するために、制御部28から供給された画像信号から、赤色(R)レーザビーム(成分画像光)の輝度を表すR輝度信号と、緑色(G)レーザビーム(成分画像光)の輝度を表すG輝度信号と、青色(B)レーザビーム(成分画像光)の輝度を表すB輝度信号とを生成する。
【0031】
この制御部28は、さらに、後述の水平走査および垂直走査の基準となる水平同期信号および垂直同期信号も生成する。
【0032】
次に、図4を参照することにより、光源部24を詳細に説明する。光源部24は、3個のレーザ34,36,38と、3個のコリメータレンズ40,42,44と、3個のダイクロイックミラー50,52,54と、結合光学系56とを備えている。
【0033】
3個のレーザ34,36,38は、赤色レーザビームを発生させるRレーザ34と、緑色レーザビームを発生させるGレーザ36と、青色レーザビームを発生させるBレーザ38とである。
【0034】
いずれのレーザ34,36,38も、例えば、半導体レーザとして構成したり、固体レーザとして構成することが可能である。ただし、半導体レーザは、それ自体で強度変調が可能であるのに対し、固体レーザはそれが不可能であるため、各レーザ34,36,38を固体レーザとして構成する場合には、強度変調器を追加することが必要である。
【0035】
3個のコリメータレンズ40,42,44は、3個のレーザ34,36,38から出射した3色のレーザビームをそれぞれコリメートするレンズである。3個のダイクロイックミラー50,52,54は、それら3個のコリメータレンズ40,42,44から出射した3色のレーザビームを互いに結合するために、それら3色のレーザビームに対して波長選択的に反射および透過を行う。
【0036】
それら3色のレーザビームは、ダイクロイックミラー50,52,54を代表する1個の代表ダイクロイックミラーにおいて互いに結合される。本実施形態においては、その代表ダイクロイックミラーとしてダイクロイックミラー50が選定されている。このダイクロイックミラー50において結合されたレーザビームは、合成レーザビーム(合成画像光)として結合光学系56に入射して集光される。
【0037】
図4に示すように、3個のレーザ34,36,38はそれぞれ、3個のレーザドライバ70,72,74を経て信号処理回路32に電気的に接続されている。その信号処理回路32は、R輝度信号、G輝度信号およびB輝度信号に基づき、各レーザ34,36,38から出射するレーザビームの強度を、対応するレーザドライバ70,72,74を介して変調する。
【0038】
図4に示すように、結合光学系56から出射したレーザビーム(合成画像光。以下、単に「レーザビーム」という。)は、光伝送媒体としての光ファイバ82を介して、表示ユニット22におけるコリメータレンズ84に伝送される。そのコリメータレンズ84においてコリメートされて出射したレーザビームは、表示ユニット22における走査部88に入射する。
【0039】
次に、図4を参照することにより、表示ユニット22を説明する。図4に示すように、その表示ユニット22は、走査部88を有しており、その走査部88は、水平走査装置90と垂直走査装置92とを含んでいる。
【0040】
水平走査装置90は、入射したレーザビームを偏向するとともに、その偏向光を水平方向に走査するために往復揺動させられる偏向面(例えば、反射面)94を有する共振型の偏向素子96と、信号処理回路32から供給された水平同期信号に基づき、偏向素子96を駆動する水平走査駆動回路98とを備えている。
【0041】
同様に、垂直走査装置92は、入射したレーザビームを偏向するとともに、その偏向光を上下方向に走査するために往復揺動させられる偏向面(例えば、反射面)100を有する非共振型の偏向素子102と、信号処理回路32から供給された垂直同期信号に基づく鋸波形状の駆動信号により、偏向素子102を強制駆動する垂直走査駆動回路104とを備えている。
【0042】
図4に示すように、水平走査装置90から出射したレーザビームは、第1リレー光学系106を介して、かつ、それによって収束させられた後に、垂直走査装置92に入射する。
【0043】
走査部88によって走査されたレーザビームは、第2リレー光学系108を介して、かつ、それによって収束させられた後に、表示ユニット22の出射口から出射する。図3に示すように、表示ユニット22のハウジング110にハーフミラー112が装着されている。
【0044】
表示ユニット22から出射したレーザビームは、図3および図4に示すように、ハーフミラー112に入射する。その入射したレーザビームは、ハーフミラー112において反射した後、観察者の片眼の眼球120内の瞳孔122を通過し、最終的に網膜124に入射する。
【0045】
網膜124に入射したレーザビームは、その網膜124上において走査され、その結果、レーザビームが、面状の画像光に変換される。それにより、観察者が2次元画像を虚像として観察することが可能となる。観察者の片眼には、ハーフミラー112において反射した画像光のみならず、現実外界からの光(外光)がハーフミラー112を透過して入射する。その結果、観察者は、画像光によって表示される画像の観察と並行して現実外界を観察することが可能となる。
【0046】
次に、図1および図2を参照することにより、ヘッドマウント装置10を詳細に説明する。
【0047】
図1に示すように、ヘッドマウント装置10は、フレーム16を備えている。そのフレーム16は、観察者への装着状態において左右に延びるフロント部130と、左右一対のヨロイ部132,132と、左右一対のテンプル部134,134とを有している。フロント部130の両端部に一対のヨロイ部132,132の基端部がそれぞれ固定的に取り付けられ、また、一対のヨロイ部132,132の自由端部に一対のテンプル部134,134が、ヒンジ136,136まわりに、水平面上において折り畳み可能に連結されている。
【0048】
図1から明らかなように、各テンプル部134は、対応するヨロイ部132との連結部であるヒンジ136の位置より観察者の前方に延長された延長部144を有している。その延長部144が、アタッチメント装置18の取付穴内に挿入され、それにより、アタッチメント装置18がフレーム16に着脱可能に取り付けられる。
【0049】
図1に示すように、ヘッドマウント装置10は、フレーム16とは別体である支持ユニット200を備えている。その支持ユニット200は、観察者に装着されている眼鏡14によってフレーム16を支持することを容易にするために、フレーム16に装着される。
【0050】
以下、この支持ユニット200を詳細に説明する。この支持ユニット200は、一対の支持部202,202および額当て部204が、それらに共通のサブフレーム206に取り付けられることにより、構成されている。
【0051】
サブフレーム206は、一対の水平板部210,210と、それら水平板部210,210を互いに連結する1つの垂直板部212とを有し、概してL字状を成す縦断面を有している。一対の水平板部210,210の下面にそれぞれ、一対の支持部202,202が接着剤、締結具等を用いて固定的に取り付けられ、同様にして、垂直板部212の後面に額当て部204が接着剤、締結具等を用いて固定的に取り付けられている。
【0052】
図1に示すように、支持ユニット200は、一対の水平板部210,210の上面がフレーム16のフロント部130の下面に固定的に取り付けられることにより、フレーム16に装着されている。本実施形態においては、一対の支持部202,202は、フレーム16の下方に配置され、額当て部204は、フレーム16の後方に配置されている。それにより、それら一対の支持部202,202および額当て部204が、フレーム16の上方の空間を占有しない。
【0053】
図2および図5に示すように、一対の支持部202,202は、互いに分離されていて、観察者に装着されている眼鏡14のフロント部220の、左右両側レンズの上側にそれぞれ位置する部分の上面に、そのフロント部220に対して前後方向に相対移動可能な状態で載置され、それにより、フレーム16が一対の支持部202,202を介して眼鏡14のフロント部220によって支持される。その結果、フレーム16の上下方向位置が、眼鏡14の装着位置によって決まる。眼鏡14のフロント部220の上面は、一般的に、完全に平坦であるか、そうではないとしても、概して平坦であるため、フロント部220の上面に一対の支持部202,202をフィットさせることが可能である。
【0054】
図2に示すように、一対の支持部202,202は、フレーム16が観察者の頭部に装着されている状態において、観察者の鼻を前後方向に通過する垂直面上に位置するすきまを隔てて左右方向において並んでいる。具体的には、一対の支持部202,202は、眼鏡が観察者に装着されていない状態でフレーム16が観察者に装着される誤使用状態において、一対の支持部202,202が観察者の鼻に接触しない間隔を有して左右方向に並んでいる。
【0055】
なお付言するに、一対の支持部202,202の、左右方向における接近限度は、観察者の鼻の、左右方向における標準的な寸法によって決まる。これに対し、左右方向における離間限度は、例えば、フレーム16のフロント部130の下面を、左右方向に見た場合の形状(例えば、本実施形態においては、図1および図2に示すように、フレーム16のフロント部130の下面が、両端部においてのみ顕著に突出するというように、非一様な下面形状を有する)などによって決まる。
【0056】
図2および図5に示すように、額当て部204は、フレーム16が観察者の頭部に装着されている状態において観察者の額に接触可能であり、それにより、フレーム16が観察者の頭部に接近する限度位置を規定する。その結果、フレーム16の前後方向位置が、観察者の額の位置によって決まる。
【0057】
一対の支持部202,202および額当て部204は、サブフレーム206とは異なる材料によって形成されている。具体的には、一対の支持部202,202および額当て部204は、サブフレーム206より柔らかい材料によって形成されている。一対の支持部202,202は、観察者が使用している眼鏡14に接触するから、その接触によって眼鏡14が損傷することがないように、柔らかい材料(例えば、エラストマ)で形成される。また、額当て部204は、観察者の額に接触するから、額に痛みや傷が生じないように、柔らかい材料(例えば、エラストマ)で形成される。
【0058】
これに対し、サブフレーム206は、一対の支持部202,202および額当て部204を、両者間の相対位置が変化しないように保持することが要求されるため、硬い板材(例えば、金属、セラミックやプラスチック)で形成される。
【0059】
なお付言するに、一対の支持部202,202の下面は、前述のように、観察者に装着されている眼鏡14のフロント部220の上面に、そのフロント部220に対して前後方向に相対移動可能な状態で接触する。一対の支持部202,202は、それ自身、フレーム16の、前後方向における位置を規定する機能を有しておらず、額当て部204のおかげで、フレーム16の、観察者の頭部への、前後方向における接近限度位置(後方への移動限度)が規定されるのみである。
【0060】
そのため、観察者は、意図的に、フレーム16を、観察者の頭部から離れる方向に、眼鏡14に対して相対的に移動させることが可能である。これは、眼鏡14を装着している観察者が、眼鏡14は装着したままにして、フレーム16のみ観察者の頭部から取り外すことを可能にするために、好都合である。
【0061】
しかし、フレーム16の、観察者の頭部から離れる方向の相対移動が過剰に容易に発生したのでは、観察者が投影ユニット12を用いて画像を観察している際に、観察者の頭部の動きなどに起因して、フレーム16のみが、観察者の意に反して、観察者の頭部から離脱してしまう可能性がある。もっとも、実際には、フレーム16が観察者の頭部に装着されている状態において、一対のテンプル部134,134が観察者の頭部を左右から圧迫している。そのため、その圧迫に起因して観察者の頭部と一対のテンプル部134,134との間に摩擦力が発生し、その摩擦力により、フレーム16が観察者の頭部から、意に反して離脱してしまう可能性はそれほど大きくはない。
【0062】
フレーム16が観察者の頭部から、意に反して離脱してしまう可能性をさらに軽減することが必要である場合には、例えば、一対の支持部202,202の下面と眼鏡14のフロント部220の上面との間に発生する摩擦力を増加させることが望ましい。その摩擦力増加のため、例えば、一対の支持部202,202の下面の粘着性を増加させたり、その下面に凹凸(例えば、梨地、複数本の溝、複数個のディンプルなど)を形成するなどして、その下面の摩擦係数を増加させることが望ましい。
【0063】
図6には、図5に示す支持ユニット200の一変形例が支持ユニット240として側面図で示されている。この支持ユニット240は、支持ユニット200と同様に、一対の支持部242,242および額当て部204がサブフレーム206に固着されて構成されている。各支持部242は、図5に示す各支持部202と同様に、水平板部210の下面に配置されている。
【0064】
各支持部202は、図5に示すように、水平板部210の下面から後方にはみ出ないように、水平板部210に配置されている。これに対し、各支持部242は、図6に示すように、水平板部210の下面から後方にはみ出て、垂直板部212のうちの下部に及ぶ延出部244を有している。すなわち、各支持部242は、サブフレーム206のうち、水平板部210と垂直板部212とが互いに接合するアングル部(L字状部)246の外面(凸面)を覆うように、サブフレーム206に装着されているのである。
【0065】
図6に示す支持ユニット240によれば、アングル部246の外面であって、観察者の額に対向する部分が、サブフレーム206より柔らかく、クッション性が高い材料より成る各支持部242によって覆われる。したがって、この支持ユニット240によれば、観察者の額がアングル部246の外面に接近しようとしても、観察者の額がアングル部246の外面に直に接触せずに済み、その代わりに、観察者の額は、痛みをほとんど伴うことなく、各支持部242に優しく接触することになる。
【0066】
本実施形態によれば、種々の効果が得られるため、以下、説明する。
【0067】
1.第1の効果:フレーム16の装着し易さの向上
本実施形態によれば、観察者は、これから装着しようとするフレーム16における一対の支持部202,202を、フレーム16が観察者の両耳にかけられた状態で、眼鏡14のフロント部220の上面に単に載せれば(場合によっては、眼鏡14のフロント部220の上面に対するフレーム16の前後方向スライドを伴う)、フレーム16が観察者の頭部に装着される。この際、観察者の頭部に対するフレーム16の、上下方向における相対位置が眼鏡14の位置によって決まる。
【0068】
よって、本実施形態によれば、観察者が自身の頭部にフレーム16を装着する作業が簡単化され、それにより、フレーム16の使い勝手が向上する。
【0069】
2.第2の効果:フレーム16の位置合わせ作業の容易化
本実施形態によれば、観察者は、フレーム16に設けられた額当て部204を観察者の額に単に接触させれば(場合によっては、眼鏡14のフロント部220の上面に対するフレーム16の前後方向スライドを伴う)、観察者の頭部に対するフレーム16の、前後方向における相対位置が決まる。
【0070】
よって、本実施形態によれば、上述の、上下方向位置合わせ作業の簡単化と相俟って、フレーム16を観察者の頭部に対して正確に位置合わせする作業も簡単化され、それにより、フレーム16の使い勝手が向上する。その結果、本実施形態によれば、フレーム16を観察者の頭部に対して正確に位置合わせするために、観察者の頭部に対するフレーム16の位置を鏡に写して確認する作業が不可欠ではなくなる。
【0071】
したがって、本実施形態によれば、フレーム16の位置を鏡で見て確認することなく、フレーム16を眼鏡14のフロント部220の上面に載せるとともに額当て部204が観察者の額に当るようにフレーム16を観察者の頭部に装着すれば、観察者の頭部および眼に対するフレーム16の位置、ひいては、投影ユニット12の位置が最適化され、観察者は、表示画像を視認し易い位置に投影ユニット12を位置決めすることが容易となる。
【0072】
3.第3の効果:フレーム16の位置ずれ防止
さらに、本実施形態によれば、額当て部204が観察者の額に接触している状態においては、その額当て部204と観察者の額との間に摩擦力が発生する。よって、本実施形態によれば、そのような額当て部204が存在しない場合に比較し、フレーム16が観察者の頭部に対して予定外にずれてしまうことが抑制される。したがって、本実施形態によれば、投影ユニット12による表示画像の観察中、投影ユニット12が、表示画像を視認し易い位置から予定外にずれてしまうことが抑制される。
【0073】
4.第4の効果:フレーム16の姿勢安定性の向上
さらに、本実施形態によれば、フレーム16に設けられた一対の支持部202,202が、観察者の鼻を前後方向に通過する垂直面上に位置するすきまを隔てて左右方向において並んでいるため、その垂直面上に位置する1つの支持部によってフレーム16を支持する場合より、装着後におけるフレーム16の姿勢安定性(傾斜防止性)が向上する。
【0074】
5.第5の効果:フレーム16の誤使用状態の早期発見
前述のように、本実施形態においては、一対の支持部202,202が、眼鏡14が観察者に装着されていない状態でフレーム16が観察者に装着される誤使用状態において、一対の支持部202,202が観察者の鼻に接触しない間隔を有して左右方向に並んでいる。したがって、本実施形態によれば、前記誤使用状態において、フレーム16が正常使用位置から下方にずれることが促進される。それにより、眼鏡14を装着せずにフレーム16を使用した観察者は、そのフレーム16の、観察者に対する動きから、現在、誤使用状態にあることを早期に認識することが可能となり、その結果、誤使用状態が長時間続くことが防止される。
【0075】
6.第6の効果:フレーム16の上方空間の有効利用性
本実施形態においては、前述のように、一対の支持部202,202および額当て部204が、フレーム16の上方の空間を占有しないように、フレーム16に取り付けられている。よって、本実施形態によれば、支持ユニット200との干渉なしで、フレーム16の上方に、特定の対象物(例えば、観察者の前方を撮影するためのカメラ)を設置するなどして、フレーム16の上方空間を有効に利用することが可能である。
【0076】
なお付言するに、前記(1)項における「支持部」は、眼鏡14のフロント部220のうち、左右両側にそれぞれ位置する2つの部分の上面にそれぞれ載置される2つの位置を有するように構成されれば足りる。よって、「支持部」は、それら2つの位置をそれぞれ有する一対の部材(それら部材は、互いに分離している)として構成しても、それら2つの位置を有する単一の部材として構成してもよい。そして、本実施形態における一対の支持部202,202は、前記(1)項における「支持部」が「一対の部材」として構成される一例を構成していると考えることが可能である。「支持部」が「単一の部材」として構成される一例は、左右方向に延びる基材と、その基材に一体的に形成された一対の支持部であって左右方向に離れたものとを含むように構成される。
【0077】
さらに付言すれば、本明細書を通じて、「ある部分を別の部分に設ける」なる用語は、互いに別部材として構成された2つの部分を互いに取り付け、接着しまたは連結する態様と、ある部分を別の部分に一体的に形成し、それら2つの部分が単一の部材を構成する態様との双方を含むように解釈すべきである。
【0078】
さらに付言すれば、本実施形態においては、眼鏡14のフロント部220が、左眼用レンズの外周を少なくとも部分的に包囲して保持する左眼用リムと、右眼用レンズの外周を少なくとも部分的に包囲して保持する右眼用リムと、それら一対のリムの間に位置してそれらリムを連結するブリッジとを含む態様で構成されている。この態様においては、各リムのうちの上側の部分が、前記(1)項における「左右両側レンズの上側にそれぞれ位置する部分」の一例を構成する。
【0079】
ただし、眼鏡14のフロント部220は、例えば、リムを有しない態様で構成することが可能である。この態様においては、眼鏡14の各レンズのうちの上側の部分が、前記(1)項における「左右両側レンズの上側にそれぞれ位置する部分」の一例を構成する。
【0080】
以上、本発明の実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表す画像光を観察者の眼に投影する投影ユニットを、観察者が眼鏡を装着している状態で、観察者の頭部に装着するために使用されるヘッドマウント装置であって、
観察者の両耳にかけられる状態で観察者の頭部に装着されるフレームであって、前記投影ユニットが搭載されるものと、
前記フレームに設けられた支持部であって、観察者に装着されている前記眼鏡のフロント部の、左右両側レンズの上側にそれぞれ位置する部分の上面に、前記フロント部に対して前後方向に相対移動可能な状態で載置され、それにより、前記フレームが当該支持部を介して前記眼鏡のフロント部によって支持されるものと、
前記フレームに設けられた額当て部であって、前記支持部が前記眼鏡のフロント部の上面に載置されている状態において観察者の額に接触可能であるものと
を含むヘッドマウント装置。
【請求項2】
前記支持部は、互いに分離された一対の支持部として構成され、
それら一対の支持部は、前記フレームが観察者の頭部に装着されている状態において、観察者の鼻を前後方向に通過する垂直面上に位置するすきまを隔てて左右方向において並んでいる請求項1に記載のヘッドマウント装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記眼鏡が観察者に装着されていない状態で前記フレームが観察者に装着される誤使用状態において、前記支持部が観察者の鼻に接触しない間隔を有して左右方向に並んでいる請求項1または2に記載のヘッドマウント装置。
【請求項4】
前記支持部および前記額当て部は、それらに共通のサブフレームに設けられて、前記フレームとは別体である支持ユニットを構成しており、
その支持ユニットは、前記フレームに装着される請求項1ないし3のいずれかに記載のヘッドマウント装置。
【請求項5】
前記支持部および前記額当て部は、前記サブフレームとは異なる材料によって形成されている請求項4に記載のヘッドマウント装置。
【請求項6】
前記支持部および前記額当て部は、前記サブフレームより柔らかい材料によって形成されている請求項5に記載のヘッドマウント装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記フレームの下方に配置され、前記額当て部は、前記フレームの後方に配置され、それにより、それら支持部および額当て部が、前記フレームの上方の空間を占有しない請求項1ないし6のいずれかに記載のヘッドマウント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−60616(P2012−60616A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204870(P2010−204870)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】