説明

ヘッドレストおよびアクティブヘッドレスト装置

【課題】 より広い上下範囲でより均等に乗員の頭部を支持することが可能なヘッドレストおよびアクティブヘッドレスト装置を、よりコンパクトな構成として得る。
【解決手段】 車両シート用のヘッドレスト6に、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を上方向または下方向に拡大可能なエアバッグ9U,9Dを内蔵させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シート用のヘッドレストおよびアクティブヘッドレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の追突を検知した際に、車両用シートのヘッドレストを前方に移動させたり、膨出させたりして、乗員の頭部とヘッドレストとの距離を短くする所謂アクティブヘッドレスト装置が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−142910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のアクティブヘッドレスト装置によれば、固定式のヘッドレストに比べて、乗員の頭部や頸部への負担を大幅に軽減することができるが、乗員の頭部とヘッドレストとの高さ位置が所期の範囲を超えて上下に大きくずれていると、負担の軽減度が僅かに低くなるおそれがある。
【0004】
とはいえ、より広い上下範囲について、ヘッドレストを膨出させたり前方に移動させたりしようとすると、ヘッドレスト自体を上下に大きくしたり、ヘッドレストを前方に膨出させる範囲を上下に大きくとったりすることが必要となり、装置構成が大型化して、重量増や製造コスト増大の原因になってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、より広い上下範囲でより均等に乗員の頭部を支持することが可能なヘッドレストおよびアクティブヘッドレスト装置を、よりコンパクトな構成として得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる車両シート用のヘッドレストあっては、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を上方向または下方向に拡大可能なエアバッグを内蔵したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアバッグの膨張展開領域を上方向または下方向に拡大する範囲を、ガス供給量によってより容易にかつより適切に可変設定することができるため、より広い上下範囲でより均等に乗員の頭部を支持することが可能なヘッドレスト、ひいてはアクティブヘッドレスト装置を、よりコンパクトな構成として得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置の概略構成を示す側面図、図2は、アクティブヘッドレスト装置の概略構成を示す正面図、図3は、アクティブヘッドレスト装置のガス供給ユニットの斜視図、図4は、ヘッドレストの支持脚の端部の断面図であって、(a)はガスが導入されていない状態、(b)はガスが導入されている状態を示す図、図5は、ヘッドレストの支持脚内に挿入される逆止弁ユニットを示す斜視図、図6は、ヘッドレストに内臓されるエアバッグの斜視図であって、(a)は展開膨張前の状態、(b)は展開膨張後の状態を示す図、図7は、ヘッドレストの高さ位置に応じたアクティブヘッドレスト装置の動作状態を示す側面図であって、(a)はヘッドレストの高さ位置が最も高い場合、(b)は中間位置にある場合、(c)は最も低い位置にある場合を示す図である。
【0009】
ヘッドレスト6は、二つの支持脚5L,5Rを有し、その支持脚5L,5Rをシートバック1の上端に設けられた筒状のホルダ4の貫通孔4b内に差し込んだ状態で固定される。ホルダ4と支持脚5L,5Rとは、図示しない係合機構を備えており、ヘッドレスト6は、このホルダ4(すなわちシートバック1)に対して、複数段の高さ位置で支持固定されるようになっている。
【0010】
このヘッドレスト6は、上下に並べて配置された二つのエアバッグ9U,9Dを内蔵しており、加速度センサ等によって車両の追突が検知されたときに、これら二つのエアバッグ9U,9Dを少なくとも前方に膨張展開させてヘッドレスト6と乗員の頭部との距離を短くし、乗員の頭部および頸部の保護を図る、所謂アクティブヘッドレストとして構成されている。本実施形態では、エアバッグ9Uが第一のエアバッグに相当し、エアバッグ9Dが第二のエアバッグに相当する。なお、7は前側のクッション、8は後側のクッションであり、前側のクッション7は、エアバッグの展開状態に追従して適宜に変形できるように構成してある。
【0011】
支持脚5L,5Rは、本実施形態では、一本のパイプ5を折り曲げて構成される。ただし、中央部5mでパイプ5を潰し、パイプ5内の空間を左右に二分して隔絶するとともに、端部を蓋17(図4)で塞ぐことにより、支持脚5L,5R内にそれぞれ独立したガス供給通路20を形成している。そして、これら左右のガス供給通路を、それぞれ別のエアバッグ9U,9Dにガスを供給する通路として用いる。本実施形態では、左側の支持脚5L内のガス供給通路を、孔5uおよびガス導入ポート10Uを介して上側のエアバッグ9U内に接続する一方、右側の支持脚5R内のガス供給通路を、孔5dおよびガス導入ポート10Dを介して下側のエアバッグ9Dに接続している。すなわち、本実施形態では、支持脚5Lが第一の支持脚に相当し、支持脚5Rが第二の支持脚に相当する。
【0012】
一方、シートバック1内には、シートバックアッパフレーム2が車幅方向に沿って横架されており、このシートバックアッパフレーム2に、二つのホルダ4およびガス供給ユニット3が取り付けられる。
【0013】
ガス供給ユニット3は、横方向(車幅方向)に長い基体部3bと、基体部3bから前方側に突出する突出部3aと、シートバックアッパフレーム2に取り付けるためのブラケット3dとを備え、基体部3bの横方向一端部には、ガス発生機構としてのインフレータ11が装着されている。突出部3aには、支持脚5L,5Rを嵌挿する脚挿入孔3cが形成されており、この脚挿入孔3cの内壁に、ガス供給口3eが形成されている。追突検知時にワイヤ12を介してインフレータ11が通電されると、インフレータ11はガスを発生し、発生したガスは、ガス供給ユニット3(基体部3bおよび突出部3a)内に形成されたガス通路を介してガス供給口3eに至り、このガス供給口3eに連通するガス導入口13,14から支持脚5L,5R内のガス供給通路に導入される。
【0014】
ガス導入口13,14は、複数段に設定されたヘッドレスト6の各高さ位置に対応して、ガス供給口3eと連通するように設けられている。すなわち、ガス導入口13,14は、支持脚5L,5Rの外壁に、軸方向に沿って複数並べて設けられ、ヘッドレスト6の高さ位置に応じて、各列のガス導入口13,14のうちのいずれか一つが、ガス供給口3eと連通するようになっている。
【0015】
ここで、本実施形態では、支持脚5Lでは、上側のガス導入口13ほど開口面積が大きく、下側のガス導入口13ほど開口面積が小さくしてある一方、支持脚5Rでは、これとは逆に、上側のガス導入口14ほど開口面積が小さく、下側のガス導入口14ほど開口面積が大きくしてある。なお、ガス供給口3eの開口面積は、ガス導入口13,14の最大の開口面積以上に設定してある。
【0016】
そして、ヘッドレスト6が最も高い位置に保持されているとき、支持脚5L側では、最も下に位置する開口面積が最小のガス導入口13がガス供給口3eに対向し、支持脚5R側では、最も下に位置する開口面積が最大のガス導入口14がガス供給口3eに対向するように設定してある。この場合、ガス導入口13におけるガスの流通抵抗は、ガス導入口14におけるガスの流通抵抗に比べて大きくなる。よって、この状態で、インフレータ11で発生したガスは、ガス導入口14側、すなわち支持脚5R内のガス供給通路側により多く導入されることになる。
【0017】
また、ヘッドレスト6が最も低い位置に保持されているとき、支持脚5L側では、最も上に位置する開口面積が最大のガス導入口13がガス供給口3eに対向し、支持脚5R側では、最も上に位置する開口面積が最小のガス導入口14がガス供給口3eに対向するように設定してある。この場合、ガス導入口13におけるガスの流通抵抗は、ガス導入口14におけるガスの流通抵抗に比べて小さくなる。よって、この状態で、インフレータ11で発生したガスは、ガス導入口13側、すなわち支持脚5L内のガス供給通路側により多く導入されることになる。
【0018】
さらに、ヘッドレスト6が中間位置に保持されているときには、各ガス供給口3eには、それぞれ同じ開口面積のガス導入口13,14が対向することになるため、支持脚5L側と支持脚5R側とで、ガス導入口13,14におけるガスの流通抵抗が同じになり、支持脚5L内のガス供給通路と、支持脚5R内のガス供給通路とで、ほぼ同じ量のガスが導入されることになる。
【0019】
すなわち、本実施形態では、ヘッドレスト6の高さ位置に応じてガス供給口3eに連通するガス導入口13,14の開口面積が変化する上記構成により、ヘッドレスト6の高さ位置に応じて、支持脚5L内のガス供給通路および支持脚5R内のガス供給通路に供給するガスの配分比率、すなわち、エアバッグ9Uおよび9Lに供給するガスの配分比率を可変設定可能なガス分配機構が構築されている。
【0020】
なお、ガス導入口13,14には、ガス供給通路内へのガスの流入を許容し、かつガス供給通路からのガスの流出を抑制する逆止弁16を設け、ガス供給口3eに連通せず、突出部3aの外側に露出したガス導入口13,14からガスが流出するのを抑制している。具体的には、支持脚5L,5R内に、薄い外壁を略コ字状にくり抜いて板状の逆止弁16を形成した樹脂製の筒状体15を嵌挿することで、ガス導入口13,14の内周壁の表面を、逆止弁16で覆うようにしている。ここで、本実施形態では、逆止弁16の大きさをガス導入口13,14の開口面積に合わせて変化させ、ガス導入口13,14の開口面積が小さく、ガス供給量が少ない場合にも、ガスの圧力によって逆止弁16の開度が十分に確保されるようにしている。なお、図4および図5では、左側の支持脚5Lに対応する構造のみ示しているが、右側の支持脚5Rについても同様の構成とすることができるのは、容易に理解できよう。
【0021】
そして、本実施形態では、上側に配置したエアバッグ9Uは、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を上方向に拡大することができるように構成する一方、下側に配置したエアバッグ9Dは、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を下方向に拡大することができるように構成している。図6に一例として示すエアバッグ9Uでは、略矩形の二枚のシートの外周を合わせるようにして袋状に形成するとともに、中央部にもシート同士を結合する線状の縫製部18を複数箇所(図6では6箇所)略平行に設けている。なお、縫製部18の延伸方向は、エアバッグ9Uをヘッドレスト6内に配置したときに略水平方向となるように設定しておく。さらに、上側に配置されるエアバッグ9Uの場合、装着した状態で上側となる縫製部18の複数箇所(図6では4箇所)については、その縫製部18の両端を、シートの両端まで延長するように、シート同士を結合する低強度縫製部19を設けている。このとき、縫製部18は、供給されたガスの圧力によって二枚のシートの結合が解除されない強度に設定しておく一方、低強度縫製部19は、供給されたガスの圧力によって二枚のシートの結合が解除される強度に設定しておく。かかる構成により、低強度縫製部19が設けられていないエアバッグ9Uの下部領域(最も下側の低強度縫製部19より下側の領域)を、ガスが供給された場合には常に膨張展開する領域(通常膨張領域)9sとし、低強度縫製部19が設けられたエアバッグ9Uの上部領域を、供給されたガスの量が多い場合に拡大して膨張展開する領域(拡大膨張領域)9eとすることができる。ただし、このとき、ガス導入ポート10Uを、通常膨張領域9sに臨ませるとともに、ガス分配機構によって配分された最も少ないガス量では、丁度、通常膨張領域9sが膨張展開し、最も多いガス量では、通常膨張領域9sに加えて拡大膨張領域9eの全てが膨張展開するように各部を設定しておく。なお、本実施形態では、通常膨張領域9sおよび拡大膨張領域9eともに、前方への膨出高さは一定となるように構成されている。
【0022】
さらに、本実施形態のように、ガス導入口13,14の開口面積に応じて、拡大膨張領域9eが段階的に拡大するように構成するのが好適である。すなわち、ガス供給口3eに開口面積が最小のガス導入口13,14が対向している場合には、通常膨張領域9sのみが膨張展開し、ガス供給口3eに開口面積が二番目に小さいガス導入口13,14が対向している場合には、通常膨張領域9sに隣接する低強度縫製部19の結合のみが解除され、拡大膨張領域9eが一段のみ拡大するというようにして、開口面積が大きくなるにつれて、拡大膨張領域9eが一段ずつ拡大するようにすればよい。こうすることで、より膨張展開領域の拡大量をより緻密に制御することができるようになる。なお、図6では、上側のエアバッグ9Uについて示したが、下側のエアバッグ9Dについても、全く同様の構成とすることができる。ただし、本実施形態では、エアバッグ9Dは、エアバッグ9Uと上下逆に配置されており、通常膨張領域9sが上側に、拡大膨張領域9eが下側に配置される。
【0023】
そして、本実施形態では、上述したように、支持脚5Lでは、上側のガス導入口13ほど開口面積が大きく、下側のガス導入口13ほど開口面積が小さくしてある一方、支持脚5Rでは、これとは逆に、上側のガス導入口14ほど開口面積が小さく、下側のガス導入口14ほど開口面積が大きくしてある。
【0024】
したがって、ヘッドレスト6が最も高い位置に保持されているとき、支持脚5L側では、最も上に位置する開口面積が最大のガス導入口13がガス供給口3eに対向し、支持脚5R側では、最も上に位置する開口面積が最小のガス導入口14がガス供給口3eに対向することになるが、この場合、上側のエアバッグ9Uには通常膨張領域9sのみが膨張展開する量のガスが供給され、下側のエアバッグ9Dには通常膨張領域9sおよび拡大膨張領域9eの全てが膨張展開する量のガスが供給される。よって、図7の(a)に示すように、上側のエアバッグ9Uの膨張展開領域の上方向への拡大量は最小となり、下側のエアバッグ9Dの膨張展開領域の下方向への拡大量は最大となる。
【0025】
また、ヘッドレスト6が最も低い位置に保持されているとき、支持脚5L側では、最も上に位置する開口面積が最大のガス導入口13がガス供給口3eに対向し、支持脚5R側では、最も上に位置する開口面積が最小のガス導入口14がガス供給口3eに対向することになるが、この場合、上側のエアバッグ9Uには通常膨張領域9sおよび拡大膨張領域9eの全てが膨張展開する量のガスが供給され、下側のエアバッグ9Dには通常膨張領域9sのみが膨張展開する量のガスが供給される。よって、図7の(c)に示すように、上側のエアバッグ9Uの膨張展開領域の上方向への拡大量は最大となり、下側のエアバッグ9Dの膨張展開領域の下方向への拡大量は最小となる。
【0026】
また、ヘッドレスト6が中間位置に保持されているとき、各ガス供給口3eには、それぞれ同じ開口面積のガス導入口13,14が対向することになるが、この場合、上側のエアバッグ9Uおよび下側のエアバッグ9Dともに、通常膨張領域9sおよび拡大膨張領域9eの一部が膨張展開する量のガスが供給される。よって、図7の(b)に示すように、上側のエアバッグ9Uの膨張展開領域の上方向への拡大量と、下側のエアバッグ9Dの膨張展開領域の下方向への拡大量とがほぼ等しくなり、その拡大量は、それぞれ最大拡大量のほぼ半分となる。
【0027】
図7の(a)〜(c)を比較すると、上記構成により、内蔵したエアバッグ9U,9Dが拡大した状態では、ヘッドレスト6の高さ位置によらず、シートバック1の上端付近から所定の高さ位置までのほぼ一定の上下範囲について、ヘッドレスト6を前方に膨出できることがわかる。これは、上記ガス分配機構によってインフレータ11から発生したガスを所定の比率で配分することで、上側のエアバッグ9Uの膨張展開領域の上方向への拡大量と下側のエアバッグ9Dの膨張展開領域の下方向への拡大量とを相反的に可変設定できるようにするとともに、ヘッドレスト6の高さ位置が高いほど上側のエアバッグ9Uの拡大量を多くし、ヘッドレスト6の高さ位置が低いほど下側のエアバッグ9Dの拡大量を多くしたことによるものである。
【0028】
以上の本実施形態によれば、ガス供給量によってエアバッグ9U,9Dの膨張展開領域を上方向または下方向に拡大する範囲を適宜に可変設定することができるため、前面をより広い上下範囲でより均等に前方に膨出させて乗員の頭部を支持することが可能なヘッドレスト、ひいてはアクティブヘッドレスト装置を、よりコンパクトな構成として得ることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、ヘッドレスト6に、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を上方向に拡大可能なエアバッグ9Uと、このエアバッグ9Uより下方に設置され、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を下方向に拡大可能なエアバッグ9Dと、を内蔵させたため、より多様なパターンでヘッドレスト6を上下に拡大させることができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、上側および下側のエアバッグ9U,9Dへのガスの配分を可変設定可能なガス分配機構を備え、上側のエアバッグ9Uの膨張展開領域の上方向への拡大量と下側のエアバッグ9Dの膨張展開領域の下方向への拡大量とを相反的に可変設定できるようにしたため、ヘッドレスト6を上下に拡大するパターンを制御することができるとともに、拡大するパターンによらずヘッドレスト6が上下に拡大された長さをほぼ一定値にすることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、ヘッドレスト6の高さ位置を可変設定可能に構成し、ガス分配機構は、ヘッドレスト6の高さ位置が高いほど下側のエアバッグ9Dへのガスの分配量を多くし、ヘッドレスト6の高さ位置が低いほど上側のエアバッグ9Uへのガスの分配量を多くするようにしたため、ヘッドレスト6の追突前の高さ位置によらず、ヘッドレスト6をほぼ一定の上下範囲で拡大させて前方に膨出させることができる。これにより、乗員の頭部とヘッドレスト6との高さ位置に多少のずれがあったとしても、ヘッドレスト6による衝撃吸収性能をより高めることができる上、無駄なガスを発生させる必要が無い分、インフレータ11その他を含めて、装置をよりコンパクトに構成することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、ガス分配機構として、脚挿入孔3cの各々の内壁にガス供給口3eを形成するとともに、二つの支持脚5L,5Rの外壁に、ヘッドレスト6の複数段の高さ位置に対応して、当該ガス供給口3eに連通してガス供給通路内にガスを導入するガス導入口13,14を複数形成し、上側のエアバッグ9Uへのガス供給通路を備える支持脚5Lでは、上側のガス導入口13ほど開口面積を大きくする一方、下側のエアバッグ9Dへのガス供給通路を備える支持脚5Rでは、下側のガス導入口14ほど開口面積を大きくしたため、上記ガス分配機構、ならびにアクティブヘッドレスト装置の一部を、ヘッドレスト6の支持脚5L,5Rを利用した比較的簡素な機械的な構成として具現化することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、ガス導入口13,14に、ガス供給通路内へのガスの流入を許容し、かつガス供給通路からのガスの流出を抑制する逆止弁16を設けたため、ガス供給口3eに連通せず、突出部3aの外側に露出したガス導入口13,14からガスが流出するのを抑制することができる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ガス分配機構を、ガスを二方向に分配する弁(例えばスプール弁、バタフライ弁等)として構成してもよいし、所定のセンサ等でヘッドレストの高さ位置を検出し、検出された高さ位置に応じてアクチュエータ(例えばソレノイドやモータ等)を制御して弁体(例えばスプール弁の場合、ポートに対する弁体の位置、バタフライ弁の場合には弁板の回動角度等)を制御するようにしてもよい。また、ヘッドレストに内蔵させるエアバッグの数を三つ以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置の概略構成を示す側面図。
【図2】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置の概略構成を示す正面図。
【図3】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置のガス供給ユニットの斜視図。
【図4】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置で用いられるヘッドレストの支持脚の端部の断面図であって、(a)はガスが導入されていない状態、(b)はガスが導入されている状態を示す図。
【図5】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置で用いられるヘッドレストの支持脚内に挿入される逆止弁ユニットを示す斜視図。
【図6】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置で用いられるヘッドレストに内臓されるエアバッグの斜視図であって、(a)は展開膨張前の状態、(b)は展開膨張後の状態を示す図。
【図7】本発明の実施形態にかかるアクティブヘッドレスト装置で用いられるヘッドレストの高さ位置に応じたアクティブヘッドレスト装置の動作状態を示す側面図であって、(a)はヘッドレストの高さ位置が最も高い場合、(b)は中間位置にある場合、(c)は最も低い場合を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1 シートバック
3 ガス供給ユニット
3c 脚挿入孔
3e ガス供給口
5L 支持脚(第一の支持脚)
5R 支持脚(第二の支持脚)
6 ヘッドレスト
9D エアバッグ(第二のエアバッグ)
9U エアバッグ(第一のエアバッグ)
13,14 ガス導入口
16 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を上方向または下方向に拡大可能なエアバッグを内蔵したことを特徴とする車両シート用のヘッドレスト。
【請求項2】
供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を上方向に拡大可能な第一のエアバッグと、該第一のエアバッグより下方に設置され、供給されたガスの量に応じて膨張展開領域を下方向に拡大可能な第二のエアバッグと、を内蔵したことを特徴とする車両シート用のヘッドレスト。
【請求項3】
請求項2に記載の車両シート用のヘッドレストと、
第一および第二のエアバッグに供給されるガスの配分を可変設定可能なガス分配機構と、
を備え、
前記ガス分配機構により、第一のエアバッグの膨張展開領域の上方向への拡大量と第二のエアバッグの膨張展開領域の下方向への拡大量とを相反的に可変設定できるようにしたことを特徴とする車両シート用のアクティブヘッドレスト装置。
【請求項4】
前記ヘッドレストの高さ位置を可変設定可能に構成し、
前記ガス分配機構は、前記ヘッドレストの高さ位置が高いほど第二のエアバッグへのガスの分配量を多くし、前記ヘッドレストの高さ位置が低いほど第一のエアバッグへのガスの分配量を多くすることを特徴とする請求項3に記載の車両シート用のアクティブヘッドレスト装置。
【請求項5】
前記ヘッドレストをシートバックに複数段の高さ位置で固定可能に構成し、
前記ヘッドレストに二本の支持脚を設け、当該二本の支持脚のうち第一の支持脚の内部に、第一のエアバッグへのガス供給通路を形成する一方、第二の支持脚の内部に、第二のエアバッグへのガス供給通路を形成し、
シートバック内に、第一および第二の支持脚をそれぞれ嵌挿する脚挿入孔が形成されたガス供給ユニットを設け、
前記ガス分配機構として、脚挿入孔の各々の内壁にガス供給口を形成するとともに、第一および第二の支持脚の外壁に、ヘッドレストの複数段の高さ位置に対応して、当該ガス供給口に連通してガス供給通路内にガスを導入するガス導入口を複数形成し、前記第一の支持脚では、上側のガス導入口ほど開口面積を大きくする一方、前記第二の支持脚では、下側のガス導入口ほど開口面積を大きくしたことを特徴とする請求項4に記載の車両シート用のアクティブヘッドレスト装置。
【請求項6】
前記ガス導入口に、ガス供給通路内へのガスの流入を許容し、かつガス供給通路からのガスの流出を抑制する逆止弁を設けたことを特徴とする請求項5に記載の車両シート用のアクティブヘッドレスト装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−297997(P2006−297997A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118405(P2005−118405)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】