説明

ヘッドレストホルダー構造

【課題】シートバックの上部骨格にホルダーを簡便かつ良好な状態に溶着させられるようにする。
【解決手段】シートバック10の上部骨格を成す鋼管パイプ11に、ヘッドレストステー21の差込み部となるサポート13を装着して保持するためのホルダー12が溶着されたヘッドレストホルダー構造である。ホルダー12は、幅方向に延設された鋼管パイプ11の一部に押し凹ませて形成した凹部11Aに側面があてがえられて溶着されている。上記凹部11Aは、そのホルダー12を受け入れる開口側が末広がりとなる三角形の凹形状に形成されている。ホルダー12は、凹部11Aの三角形の内向する二面にそれぞれ側面があてがえられて溶着された状態とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストホルダー構造に関する。詳しくは、シートバックの上部骨格を成す鋼管パイプに、ヘッドレストステーの差込み部となるサポートを装着して保持するためのホルダーが溶着されたヘッドレストホルダー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、ヘッドレストのステーを、シートバックの上部骨格に接合した筒状のサポート内に差し込んで固定するようにした構造が知られている(特許文献1)。上記サポートは、詳しくは、シートバックの上部骨格に溶着された角筒状のホルダー内に差し込まれて装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−66120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、角筒状のホルダーをシートバックの上部骨格を成す鋼管パイプに溶着するために、鋼管パイプの一部をホルダーの側面にあてがえられる平坦な形にプレス加工していたため、加工に手間がかかる。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバックの上部骨格にホルダーを簡便かつ良好な状態に溶着させられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のヘッドレストホルダー構造は次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックの上部骨格を成す鋼管パイプに、ヘッドレストステーの差込み部となるサポートを装着して保持するためのホルダーが溶着されたヘッドレストホルダー構造である。ホルダーは、幅方向に延設された鋼管パイプの一部に押し凹ませて形成した凹部に側面があてがえられて溶着されている。上記凹部は、そのホルダーを受け入れる開口側が末広がりとなる三角形の凹形状に形成されている。ホルダーは、凹部の三角形の内向する二面にそれぞれ側面があてがえられて溶着された状態とされている。
【0006】
この第1の発明によれば、鋼管パイプに形成する、ホルダーをあてがえて溶着するための凹部を、開口側に広がる三角形の凹形状として設定し、ホルダーをこの三角形の内向する二面にそれぞれあてがえて溶着する構成としたことにより、ホルダーを凹部の二面に亘って広く当接させて溶着することができる。また、上記凹部は、鋼管パイプの一部に縦線状の凹みを入れる態様でプレス加工することにより、この凹まされた部位面を頂点とする末広がりの三角形の凹形状として形成することができるため、その成形を簡単に行うことができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、ホルダーが角筒形状に形成されており、その隣り合う二面が凹部の三角形の内向する二面にそれぞれ面当接された状態として溶着されているものである。
【0008】
この第2の発明によれば、ホルダーを凹部の内向する二面に広く面当接させて、溶接面を広くとった状態として、凹部により強固に溶着することができる。また、ホルダーが角筒状となっていることから、ホルダーを凹部内に嵌め込むことで両者が嵌合するため、嵌め込み位置の位置決めを簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のヘッドレストホルダー構造の概略を示した斜視図である。
【図2】ヘッドレストホルダー構造の平面図である。
【図3】凹部を形成するプレス加工の様子を示した工程図である。
【図4】鋼管パイプの凹部の形状を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
始めに、実施例1のヘッドレストホルダー構造について、図1〜図3を用いて説明する。本実施例のヘッドレストホルダー構造は、図1に示すように、車両用シート1に適用されており、ヘッドレスト20をシートバック10の上部に差込んで固定した状態に保持するための構造を成すものである。具体的には、上記ホルダー構造は、シートバック10の上部骨格を成す鋼管パイプ11の左右2箇所に、角筒状のホルダー12がそれぞれ溶着された構成となっており、これらホルダー12に対して、それぞれ、ヘッドレスト20のステー21を差込みによって装着することのできる筒状のサポート13が装着された構成となっている。ここで、ステー21が、本発明の「ヘッドレストステー」に相当する。
【0012】
上記鋼管パイプ11は、逆U字状の形に曲げ返されて形成されており、その曲げ返された両下端部が、それぞれ、シートバック10の両側部の骨格を成す図示しない縦長状のサイドフレームの上端部に溶着されて結合されている。そして、上記鋼管パイプ11のシート幅方向に延びる中央部の左右2箇所に、それぞれ、上記サポート13の装着部となる角筒状のホルダー12が溶着されている。
【0013】
各サポート13は、合成樹脂製であり、その本体部が各ホルダー12の筒内形状に嵌合する角筒状の形に形成されている。これらサポート13は、各ホルダー12の筒内にシート上方側から差込まれることにより、各ホルダー12に対して回り止めされた状態となって装着されている。これらサポート13の各ホルダー12に対する差込み位置は、各サポート13の上部に形成された台座状の頭部13Aが、各ホルダー12の上面部に当たる位置で係止されるようになっている。また、各サポート13の本体部の下方部位には、径方向の内外に弾性的に撓み変形可能な係止爪13Bが、外側に張り出した状態となって形成されている。これら係止爪13Bは、各サポート13の本体部を各ホルダー12の筒内に差込むことにより、各ホルダー12の筒内に弾性的に押し窄められて入り込んだ後、各ホルダー12を下方側へ抜け出ることで弾性的に拡開変形して、各サポート13が上方側へ抜け出ないように各ホルダー12の下面部に係止するようになっている。
【0014】
上記各サポート13の中心部には、丸孔状の貫通孔がシート高さ方向に貫通して形成されており、これら貫通孔内に上記ヘッドレスト20の各ステー21が差込まれて装着されている。ここで、各ステー21の各サポート13内への差込み位置は、図示右側に配されたサポート13の頭部13A内に設定された図示しない係止板が、同側のステー21に形成された凹状の切欠き部(図示省略)内に入り込むことにより係止されるようになっている。上記係止状態は、上記サポート13の頭部13Aの側方に張り出して形成された押しボタン式のつまみ13A1を頭部13A内に押し込むように操作することにより、上記係止板(図示省略)がステー21の切欠き部(図示省略)から外し出されて解除されるようになっている。上記つまみ13A1は、常時は、頭部13A内に設定された図示しないバネの附勢力により、頭部13Aの側方側に張り出した状態となって保持されており、この附勢力により、上記係止板(図示省略)が、常時、ステー21の切欠き部(図示省略)に入り込む方向に附勢された状態とされている。
【0015】
ヘッドレスト20は、その内部に、逆U字状に曲げ返された形の鋼棒製のステー21が、一部埋め込まれた状態となって設けられた構成となっている。上記ステー21は、その両側の脚部分が、ヘッドレスト20の下面部から下方側に突出した状態とされている。これらステー21を前述した各サポート13の貫通孔内に差込んで固定することにより、ヘッドレスト20がシートバック10の上部に固定された状態として保持される。
【0016】
ところで、前述した角筒状の各ホルダー12は、図2に示すように、シートバック10の鋼管パイプ11にプレス加工された各凹部11Aにそれぞれ嵌め込まれて面当接されて、それぞれの当接面が一体的に溶接されることで結合された状態とされている。詳しくは、各凹部11Aは、各ホルダー12を受け入れるシート前方側の開口側がそれぞれ末広がりとなる三角形の凹形状に形成されており、各ホルダー12は、各凹部11Aの三角形の内向する二つの面11A1にそれぞれ後側の二つの面12Aがそれぞれあてがえられて、一体的に溶着された状態とされている。
【0017】
上記各凹部11Aは、図3に示すように、鋼管パイプ11に丸棒状のパンチPaを押し当てる態様で縦線状の凹みを入れるようにプレス加工することにより、この凹まされた部位面を頂点とする末広がりの三角形の凹形状として形成されている。このように、各凹部11Aを線で凹ませる態様で形成するようにしたことにより、面で凹ませて形成するものと比べて、その成形を簡便に行うことができる。
【0018】
また、上記のような三角形の凹形状に形成した各凹部11Aに各ホルダー12をあてがえて溶接する構成としたことにより、各ホルダー12を各凹部11Aの内向する二面11A1に広く面当接させて、溶接面を広くとった状態として、各凹部11Aにより強固に溶着することができる。詳しくは、各凹部11Aは、図4に示すように、その内向する二面11A1が、共に、鋼管パイプ11の丸断面を凹ませて形成した構成により、その左右の外周縁が湾曲した形となって、各ホルダー12を広く面当接させられるようになっている。したがって、各ホルダー12を各凹部11Aに溶接する際の溶接長を広くとることができ、これらをより強固に溶着することができる。また、各ホルダー12が角筒状となっていることから、各ホルダー12を各凹部11A内に嵌め込むことで両者が嵌合するため、嵌め込み位置の位置決めを簡便に行うことができる。また、図1に示すように、各ホルダー12内に差し込まれて装着される各サポート13のうち、頭部13Aにつまみ13A1が付いているサポート13については、上記つまみ13A1を着座使用者に近い前方斜め側に向けた状態で配することができるため、着座使用者がつまみ13A1の位置を認識しやすくなる。また、つまみ13A1を後方斜め向きに配する設定とすれば、つまみ13A1を着座使用者にとってより邪魔になりにくい位置に設定することができ、着座する側から人差し指で操作しやすい配置とすることができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、ホルダーは、三角形状の凹部に嵌まり込む角筒状でなくてもよく、円筒状のものであっても構わない。円筒状であっても、その二面を、凹部の内向する二面にあてがえて溶着することができるからである。また、角筒の形は、上記実施例で示したような四角以外でも、三角形等の他の多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 車両用シート
10 シートバック
11 鋼管パイプ
11A 凹部
11A1 面
12 ホルダー
12A 面
13 サポート
13A 頭部
13A1 つまみ
13B 係止爪
20 ヘッドレスト
21 ステー(ヘッドレストステー)
Pa パンチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの上部骨格を成す鋼管パイプに、ヘッドレストステーの差込み部となるサポートを装着して保持するためのホルダーが溶着されたヘッドレストホルダー構造であって、
前記ホルダーは、幅方向に延設された前記鋼管パイプの一部に押し凹ませて形成した凹部に側面があてがえられて溶着されており、
前記凹部は、その前記ホルダーを受け入れる開口側が末広がりとなる三角形の凹形状に形成されており、前記ホルダーは、前記凹部の三角形の内向する二面にそれぞれ側面があてがえられて溶着された状態とされていることを特徴とするヘッドレストホルダー構造。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレストホルダー構造であって、
前記ホルダーが角筒形状に形成されており、その隣り合う二面が前記凹部の三角形の内向する二面にそれぞれ面当接された状態として溶着されていることを特徴とするヘッドレストホルダー構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−107573(P2013−107573A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255853(P2011−255853)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】