説明

ヘッド支持機構及びそれを用いた磁気ディスク装置

【課題】
導波路を備えたヘッド支持機構において、ヘッドを傾かずに取り付ける。
【解決手段】
磁気ヘッド2をその端部に有するスライダ3が搭載されるスライダ接合面62をその一部に有する板状の弾性支持部材6を備えたヘッド支持機構において、弾性支持部材であるフレクシャ6のスライダ接合面62中央に、導波路4をスライダ接合面62の長手方向に沿って配置し、導波路4は磁気ヘッド2とは反対側の一方端から延伸する構成とし、導波路4と同じ厚さの補助部材12a,12bを導波路4に対し平行に且つスライダ接合面62の長手方向両側端部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置に係り、特に、レーザー光をヘッドと一体で形成されている磁気ヘッド内の近接場光学素子に導く導波路を備えたヘッド支持機構及び磁気ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置の記録密度を飛躍的に向上させる技術の一つとして、熱アシスト記録が挙げられる。熱アシスト記録とは、ディスク上の数十nm×数十nm程度の微小領域に200℃以上の熱と磁場を加えることで、ディスク上にデータを記録するものである。この微小領域を加熱する機構として、記録磁極近傍に配置した近接場光学素子でレーザー光を近接場光に変換して利用することが考えられている。
【0003】
また、通常、磁気ディスク装置のサスペンションは、フレクシャとロードビームから成る。フレクシャはヘッドと直接接合される薄い板状の部材であり、ヘッドの姿勢を拘束しない形になっている。ロードビームは、フレクシャを介してディスク面に押し付ける方向にヘッドに荷重を加えるための板状の部材である。フレクシャとロードビームは溶接により接合されている。
【0004】
従来、この種のヘッド支持機構としては、例えば、特開2003−6912号公報(特許文献1)がある。特許文献1によるヘッド支持機構においては、フレクシャに相当する部分が導波路で形成されており、この導波路は光が通る高屈折率のコアを低屈折率のクラッドで覆い形成されている。コアの端面を導波路の途中、かつ、ヘッドとの固定面に設けることで、光をクラッドの中で一旦拡大させ、その後、反射面でヘッド側に反射させる。反射した光束をマイクロレンズで集光した上で、近接場光学素子に照射させることで、ヘッドの姿勢によらず高強度の光を近接場光学素子に光を導くことを可能としている。
【0005】
また、他のヘッド支持機構に係わるものとして、例えば、特開2001−101704号公報(特許文献2)がある。特許文献2によるヘッド支持機構においては、フレクシャのヘッド接続面の裏面に導波路が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−6912号公報
【特許文献2】特開2001−101704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常のサスペンションでは、フレクシャにエッチングでパターンを切り、スライダ接合部を柔軟に支持する構造になっている。これによりヘッドは、エアベリングサーフェス(ABS)で発生する正圧力及び負圧力とディンプルを介してロードビームから伝わる押付荷重が釣合う浮上量及び姿勢でディスク上を安定浮上し、ディスクの面振れやうねりにも追随している。また、これにより外部から衝撃を受けた場合やディスク及びディスク上の異物に接触した場合でも、クラッシュすることなく浮上することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるヘッド支持機構では、導波路がスライダ接合部全体を覆う構造となっている。そのため、導波路の表面に接着剤を塗布あるいはヘッドの接合面に接着剤を塗布することによりヘッドと導波路を接合する場合、接着剤の厚さのばらつきにより、スライダ接合面に対してヘッドが傾いて取り付き、ヘッドの浮上量や姿勢に大きく影響を及ぼすようになり、ヘッドの安定浮上に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0009】
また、特許文献2に開示されるヘッド支持機構では、導波路がフレクシャのスライダ接合面の裏側に配置されており、導波路端の光の出口からヘッドまでの距離が長く、光の結合損失が大きくなる恐れがある。
【0010】
本発明の目的は、導波路とヘッドとの光の結合損失を小さくし、且つヘッドの安定浮上を実現し得るヘッド支持機構及びそれを備えた磁気ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導波路を、スライダを弾性支持する弾性支持部材のスライダ接合面の中央部であって、スライダ接合面の長手方向に沿って配置すると共に、スライダ接合面の前記磁気ヘッドとは反対側の一方端から延伸し、回路材のスライダ接合面の磁気ヘッドとは反対側端の一方端側から延伸した部分が弾性支持部材または回路材に接続され、スライダ接合面に回路部材の一部とほぼ同じ厚さを有する補助部材を設けたを設けたことを特徴とする。
【0012】
尚、補助部材は、スライダ接合面の長手方向両側端部に導波路と平行に配置され、導波路とほぼ同じ厚さを有することを特徴とする。
【0013】
これにより、スライダを接着剤により弾性支持部材のスライダ接合面に接合する場合において、接着剤がスライダと導波路との間及びスライダと第1の補助部材の間に充填され、スライダ接合面に対し精度良くスライダを接合することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端部に磁気ヘッドが形成されたスライダを、弾性支持部材のスライダ接合面に傾かずに取り付けることができ、浮上量や姿勢に与える影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるヘッド支持機構を搭載した磁気ディスク装置の斜視図。
【図2】本発明の一実施例であるスライダが搭載された状態でのヘッド支持機構の先端拡大図。
【図3】本発明の一実施例であるスライダ搭載前のヘッド支持機構の先端拡大図。
【図4】図2におけるA−A´断面図。
【図5】本発明の一実施例である導波路4を有さないヘッド支持機構の先端拡大図。
【図6】図5のヘッド支持機構のスライダ搭載前の状態を示す図。
【図7】本発明の実施例2の効果を示すヘッド支持機構の振動特性図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を以下図面を用いて説明する。
図1は、本発明によるヘッド支持機構を搭載した磁気ディスク装置の斜視図である。
【0017】
図1において、磁気記録媒体であるディスク1は回転可能に支持されている。近接場光発生素子を備えた磁気ヘッド2はスライダ3の端面に一体で形成されており、スライダ3は、ディスク1の記録面上を所定の間隔で浮上している。スライダ3は、導波路4(図2以降で説明)を備えたサスペンション5に支持されている。サスペンション5は、ロードビーム7と弾性支持部材としてのフレクシャ6から成り、スライダ3は、その姿勢が拘束されない状態でフレクシャ6に柔軟に支持されている。ロードビーム7は、フレクシャ6を介して、ディスク1に押し付ける方向にスライダ3に荷重を加えている。サスペンション5はキャリッジアーム8に支持されており、キャリッジアーム8はピボット9を回転軸として揺動可能に支持されている。
【0018】
ボイスコイルモータ10を駆動させることにより、ピボット9を回転軸として、キャリッジアーム8を揺動させ、回転するディスク1に対して、近接場光発生素子を備えた磁気ヘッド2をディスク1上の所望のトラック上に移動させ、情報の記録,再生を行う。
【0019】
以下では、図面を用いてヘッド支持時機構を中心に説明する。
【実施例1】
【0020】
図2は本発明の一実施例であるスライダが搭載された状態でのヘッド支持機構の先端拡大図、図3は本発明の一実施例であるスライダ搭載前のヘッド支持機構の先端拡大図、図4は図2におけるA−A´断面図である。
【0021】
ロードビーム7と共にサスペンション5を構成するフレクシャ6は、例えば薄肉のステンレス製板材を用いてその一部に切り欠きを設けることで形成される。そして図3に示めされるように、フレクシャ6は、ステンレス基板61と、ステンレス基板61と両持ち梁にて連続するスライダ接合面62からなっている。フレクシャ6上には、回路材63,導波路4,導波路4と同じ厚さの補助部材12a,12bが形成されている。ここで回路材63とは、例えばポリイミド,銅配線,ポリイミドの順に積層形成された配線部材である。フレクシャ6のスライダ接合面62の中央には導波路4が配置され、更に導波路4に平行にスライダ接合面62の長手方向両側端部近傍には導波路4と同じ厚さの補助部材12aが、また、導波路4とほぼ直交するようにスライダ接合面62の一方端部近傍には導波路4と同じ厚さの補助部材12bが配置されている。スライダ3は接着剤(図示なし)によって、フレクシャ6のスライダ接合面62に接続されるが、接着剤(図示なし)は、フレクシャ6のスライダ接合面62の中央に配置された導波路4と導波路4と同じ厚さの補助部材12a,12bの間の空間に盛られる。具体的には、当初、接着剤(図示なし)は導波路4より高く盛られるが、スライダ3を押し付けることにより、スライダ3と導波路4,スライダ3と補助部材12a,12bの間に流れ込み、その結果、スライダ3とスライダ接合面62は隙間無く接続され、スライダ3は、スライダ接合面62に傾くことなく精度よく接続できる。
【0022】
熱アシスト記録用磁気ヘッド2としては、例えば「Flying demonstration and analysis of pico slider with optical waveguide for heat assisted magnetic recording」(The 19th Magnetic Recording Conference (TMRC) 2008, Singapore, July 29-31, 2008)に開示されるように、スライダ3の磁気ヘッド2付近から光を導入する構造になっているものもある。このような構造のスライダ3を用いた場合において、本実施例によれば、上述のとおり導波路4がスライダ3の先端部に一体形成された磁気ヘッド2まで延伸する構造であり、かつ、導波路4とスライダ3が直接接続されるので、導波路4から磁気ヘッド2に光を導入入れるときのロスを小さくすることが可能となる。
【実施例2】
【0023】
本実施例は、従来の磁気記録方式、すなわち、熱アシスト方式を用いない磁気ディスク装置用ヘッド支持機構であり、実施例1における導波路4を有していない。
【0024】
図5は本発明の一実施例である導波路4を有さないヘッド支持機構の先端拡大図、図6は図5のヘッド支持機構のスライダ搭載前の状態を示す図である。図中実施例1と同一のものには同一の符号を付している。
【0025】
本実施例の基本構成は実施例1と同じであるが、実施例1の導波路4の代わりに回路材63の一部を用い、実施例1の導波路4と同じ厚さの補助部材12の代わりに回路材63と同じ厚さの補助部材13a及び13bを用いている。図5において回路材63のアーム631は、フレクシャ6のステンレス基板のアーム611と重なる部分を除いては、フレクシャ6のステンレス基板61と重なっていない。そのため、フレクシャ6のスライダ接合面62は、フレキシブルな動きが可能となっている。図6を用いて具体的に説明すると、フレクシャ6のスライダ接合面62の中央には回路材63の一部632が延伸され配置され、更に回路材63の一部632に平行にスライダ接合面62の長手方向両側端部近傍には、回路材63の一部6324と同じ厚さの補助部材13a,13bが配置されている。
【0026】
図7は、実施例2の効果を示すヘッド支持機構の振動特性図であり、図5と同一構成のヘッド支持機構を回転円板間に配置したときの、スライダ3の短手方向(紙面縦方向)の振動、すなわちヘッドの流体起因振動の測定結果を示している。横軸は、ヘッド支持機構取り付け面から円板までの距離である。本実施例によるヘッド支持機構の振動特性14に対し、回路材63の一部632を有さない従来のヘッド支持機構の振動特性15は大きい。これは回路材63の一部632によりフレクシャ6のスライダ接合面62とロードビーム7の相対振動が抑制されるためである。
【0027】
尚、本実施例においても実施例1と同様に、スライダ3を、スライダ接合面62に傾くことなく精度よく接続することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、端部に磁気ヘッドが形成されたスライダを、弾性支持部材のスライダ接合面に傾かずに取り付けることができ、浮上量や姿勢に与える影響を小さくしたヘッド支持機構及び磁気ディスク装置を実現できる。
【符号の説明】
【0029】
1 ディスク
2 磁気ヘッド
3 スライダ
4 導波路
5 サスペンション
6 フレクシャ
7 ロードビーム
8 キャリッジアーム
9 ピボット
10 ボイスコイルモータ
12 導波路4と同じ厚さの補助部材
13 回路材63と同じ厚さの補助部材
61 フレクシャ6のステンレス基板
62 フレクシャ6のスライダ接合面
63 回路材
611 フレクシャ6のステンレス基板61のアーム
631 回路材63のアーム
632 回路材63の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも情報を記録する磁気記録媒体と、
磁気記録媒体への情報の書き込みまたは読み出しを行う磁気ヘッドをその端部に有するスライダと、
一部に前記スライダが搭載されるスライダ接合面を有する弾性支持部材と、前記ヘッドに電気的に接続される回路材を前記弾性支持部材上に有するヘッド支持機構を備えた磁気ディスク装置において、
前記回路部材の一部を、前記スライダ接合面の中央部であって、前記スライダ接合面の長手方向に沿って配置し、
かつ、前記スライダ接合面の前記磁気ヘッドとは反対側の一方端から延伸し、
かつ、前記回路材の前記スライダ接合面の前記磁気ヘッドとは反対側端の一方端側から延伸した部分が前記弾性支持部材または前記回路材に接続され、
前記スライダ接合面に前記回路部材の一部とほぼ同じ厚さを有する補助部材を設けたことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気ディスク装置において、前記補助部材は、前記スライダ接合面の長手方向両側端部に前記回路部材の一部と平行に配置され、前記回路部材の一部とほぼ同じ厚さを有する第一の補助部材であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気ディスク装置において、前記スライダ接合面の短手方向であって、搭載されるスライダの前記磁気ヘッドとは反対側の一方端に前記回路部材の一部に直交するよう配置され、前記回路部材の一部とほぼ同じ厚さを有する第二の補助部材を設けたことを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−238380(P2012−238380A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177690(P2012−177690)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2008−303374(P2008−303374)の分割
【原出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】