説明

ベニヤ単板の乾燥方法及びベニヤ単板の乾燥装置

【課題】熱盤式の乾燥装置を用いるベニヤ単板の乾燥方法の実用性を向上させて、能率的で、且つ、省エネルギー化が図り得る乾燥処理を実現する。
【解決手段】多段状に備えた熱盤3の上側の加熱面に適数条の収容溝3aを穿設すると共に、上側に多数の突刺体1aが並立的に凸設された適宜長さを有する略長鋸状の単板移送部材1を、前記収容溝3aに収容し、単板aを載せた単板移送部材1を熱盤3の左右へ往復移動させて、単板aを熱盤3の間隔の内外へ交互に移送するよう構成した乾燥装置を用い、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の左前側の搬入口から搬入した単板aを、熱盤3の熱圧により乾燥して、乾燥装置の左後側の搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の右前側の搬入口から搬入した単板aを、熱盤3の熱圧により乾燥して、乾燥装置の右後側の搬出口へ搬出する操作とを交互に実施して、殆ど間断なく単板aを乾燥処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベニヤ単板の乾燥方法及びベニヤ単板の乾燥装置に関するものであり、詳細には、多段熱盤式の乾燥装置を用いてベニヤ単板を乾燥する乾燥方法と、該乾燥方法の実施に用い得る多段熱盤式のベニヤ単板の乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1〜特許文献3等に開示される如く、ベニヤ単板(以下、単に単板と称す)の乾燥に用いる乾燥装置として、加熱蒸気・加熱油・電熱器等の適宜の熱源によって適温に加熱した熱盤の間に、単板を挟んで熱圧する、所謂、熱盤式の乾燥装置が公知であり、該熱盤式の乾燥装置を用いる乾燥方法は、単板に熱風を吹き付けて乾燥する、所謂、熱風循環式の乾燥装置を用いる乾燥方法に比べて、理論的には熱効率が良いとされているものの、乾燥装置の能率性、処理容量、占有容積等々に、種々の弱点・難点があることから、現実として、広く汎用化されるには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭62−32390号公報
【特許文献2】特公昭62−2678号公報
【特許文献3】特公平2−32961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、特許文献1に開示される発明の如く、複数段の熱盤の一側方に離脱体を兼ねる細棒状の移送体を往復移動可能に備え、該移送体を介して、各熱盤の一側方から単板を出し入れする形式の乾燥装置を用いる乾燥方法にあっては、樹脂類等の溶融によって熱盤に貼着している乾燥済みの単板を、前記移送体によって熱盤から離脱させてから取出し、次に乾燥する単板を開放した熱盤の間に挿入するまでに、単板を乾燥していない空白時間が少なからず浪費されるので、たとえ熱盤を多段状に備えたとしても、総じて処理の能率性が悪く、また開放した熱盤からの放熱時間も長いので、熱効率も低下し易い不具合があり、実用化の阻害要因となっている。
【0005】
また、特許文献2に開示される発明の如く、上下一対の熱盤の加熱面に適数条の凹溝を穿設すると共に、適宜間隔毎に単板を突刺する多数の突刺体を有する無端帯を、前記熱盤の凹溝内へ走行可能に配設し、該無端帯によって単板を刺着して、各熱盤の一方の側方から他方の側方へ単板を搬送する形式の乾燥装置を用いる乾燥方法にあっては、たとえ乾燥済みの単板が熱盤に貼着していても、単に無端帯によって単板を搬送するだけで、強制的に離脱させることができ、而も、単板を乾燥していない空白時間を、最少限度に削減できるので、能率性や熱効率は比較的良いのであるが、上下一対の熱盤によって乾燥処理できる単板の処理量は僅かであるから、総じて処理容量が不足する弱点があり、仮に、上下一対の熱盤を、前後に直列的に数組並設したとしても、間歇的な搬送が不可欠であるから、装置全体の占有容積の著大化に見合うほどの、処理容量の増量化が期待できないことも、実用化の阻害要因となっている。
【0006】
また、特許文献3に開示される発明の如く、多数段の熱盤の加熱面に適数条の凹溝を穿設すると共に、適宜間隔毎に単板を突刺する多数の突刺体を有する無端帯を、前記熱盤の凹溝内へ走行可能に配設し、該無端帯によって単板を刺着して、各熱盤の一方の側方から他方の側方へ単板を搬送する形式の乾燥装置を用いる乾燥方法にあっては、特許文献2の発明と同様に能率性や熱効率は比較的良く、また処理容量の不足も、熱盤の多段化によって、ある程度はカバーできるが、この形式の乾燥装置に於て、熱盤を多段化すると、単板を突刺していない部位の無端帯を復帰走行させる必要性から、少なくとも最上段及び最下段以外の熱盤に、無端帯の全体を収容するに足る深い凹溝を余分に穿設することが必須となるから、該当する熱盤の厚さが過剰に厚くなる難点があり、加熱面以外の四周の側面からの放熱が増大して熱効率が劣化する不具合の他に、該当する厚い(重い)多段の熱盤を昇降させる昇降機構を含めて、必然的に装置が巨大化し易い難点や、装置の稼働に要する動力の消費量が増大する不具合もあり、実用化の阻害要因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、斯様な従来の発明の弱点・難点・不具合等々を解消すべく開発したものであって、具体的には、上下方向に並設された多数枚の熱盤が、最上位又は最下位の熱盤に係合する昇降作動部材の作動と、各熱盤に係合する連結機構の規制とを得て、相互に接近及び平均的に離隔すべく、適宜の昇降作動部材と適宜の連結機構とを、前記所要の各熱盤に係合させると共に、上側に加熱面を有する熱盤の上面の左右方向に延在し、且つ、前後方向に適宜の間隔を隔てて平行状に穿設された、適宜深さを有する複数条の収容溝に、該収容溝の長さの2倍よりも適宜寸法だけ長い長さと、収容溝の深さ未満の高さとを有し、且つ、上側の適宜部位に、前記収容溝から突出する高さを有する多数の突刺体を並立的に凸設した略長鋸状の単板移送部材の複数本を並列的に収容し、而も、各段の単板移送部材を一斉に左右方向に往復移動させるべく、適宜の往復移動機構を各段の単板移送部材に係合させ、更に、左右方向への移動に伴って各収容溝から熱盤の左右両側にはみ出す単板移送部材の近傍に、単板を単板移送部材の移動方向と直交方向へ搬送する単板搬送部材を、熱盤の昇降に伴って追従的に昇降する単板移送部材に対して上下方向へ入れ替り可能に配設して成る多段熱盤式の乾燥装置を用いて単板を乾燥する乾燥方法であって、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から搬入した単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させた後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の左側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から搬入した単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させ後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の右側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の右後側に設定した搬出口へ搬出する操作とを交互に実施することを特徴とする単板の乾燥方法(請求項1)を、基礎的な発明として提案する。
【0008】
また、前記基本的な発明の実施に用い得る乾燥装置として、上下方向に並設された多数枚の熱盤が、最上位又は最下位の熱盤に係合する昇降作動部材の作動と、各熱盤に係合する連結機構の規制とを得て、相互に接近及び平均的に離隔すべく、適宜の昇降作動部材と適宜の連結機構とを、前記所要の各熱盤に係合させると共に、上側に加熱面を有する熱盤の上面の左右方向に延在し、且つ、前後方向に適宜の間隔を隔てて平行状に穿設された、適宜深さを有する複数条の収容溝に、該収容溝の長さの2倍よりも適宜寸法だけ長い長さと、収容溝の深さ未満の高さとを有し、且つ、上側の適宜部位に、前記収容溝から突出する高さを有する多数の突刺体を並立的に凸設した略長鋸状の単板移送部材の複数本を並列的に収容し、而も、各段の単板移送部材を一斉に左右方向に往復移動させるべく、適宜の往復移動機構を各段の単板移送部材に係合させ、更に、左右方向への移動に伴って各収容溝から熱盤の左右両側にはみ出す単板移送部材の近傍に、単板を単板移送部材の移動方向と直交方向へ搬送する単板搬送部材を、熱盤の昇降に伴って追従的に昇降する単板移送部材に対して上下方向へ入れ替り可能に配設して成る多段熱盤式の乾燥装置であって、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から搬入した単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させた後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の左側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から搬入した単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させ後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の右側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の右後側に設定した搬出口へ搬出する操作とを交互に実施するように、前記各機器類の作動を制御する制御機構を備えたことを特徴とする単板の乾燥装置(請求項2)と、複数本の単板移送部材の間隔内に平行状に配設した、適数本のロール状の単板搬送部材を用いて成る請求項2記載の単板の乾燥装置(請求項3)と、前記各熱盤が相互に接近する際の最少間隔が、前記収容溝から突出する部分の突刺体の高さよりも、適宜寸法だけ広くなるように規制する規制部材を備えて成る請求項2又は請求項3記載の単板の乾燥装置(請求項4)と、少なくとも下側に加熱面を有する熱盤の下面に、下方に位置する熱盤の各収容溝に収容された単板移送部材の突刺体の突出部分のみの介入を許容する逃げ溝を、前記各収容溝と対称的に穿設して成る請求項2又は請求項3記載の単板の乾燥装置(請求項5)とを提案する。
【発明の効果】
【0009】
前記請求項1に係る単板の乾燥方法によれば、述上の如き構成で成る多段熱盤式の乾燥装置を用いて、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の左前側の搬入口から搬入した単板を、熱盤の熱圧により乾燥して、乾燥装置の左後側の搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の右前側の搬入口から搬入した単板を、熱盤の熱圧により乾燥して、乾燥装置の右後側の搬出口へ搬出する操作とを交互に実施して、殆ど間断なく単板を乾燥処理するものであるから、先記従来のいずれの発明と比べても、同等以上に能率的な乾燥処理が行い得るのは勿論のこと、単板移送部材を往復移動させて、単板を熱盤の間隔の内外へ交互に移送するので、収容溝は原則的に熱盤の上面側のみで足り、熱盤の厚さを過剰に厚くする必要はないので、加熱面以外の四周の側面からの放熱を軽減して、熱効率の劣化を阻止できると共に、総じて、装置の小型化や、所要動力の低減化が図り得るので有効である。而して、請求項1に係る単板の乾燥方法の実施には、請求項2に係る単板の乾燥装置が適する。
【0010】
また、請求項3に係る単板の乾燥装置の如く、複数本の単板移送部材の間隔内に平行状に配設した、適数本のロール状の単板搬送部材を用いれば、比較的簡単な構成を以って、安定的に単板の搬入・搬出が行い得る。
【0011】
また、前記乾燥方法の実施に際して、多段状のいずれの段に於ても、常に単板の搬入を怠らないように配慮すれば、述上の如き構成で成る乾燥装置に問題が発生する虞は全くないが、仮に、誤っていずれかの段への単板の搬入が欠如すると、各熱盤を相互に接近させた際に、単板を突刺していない単板移送部材の突刺体と、該突刺体に対向する上位の熱盤とが当接して、双方が損傷する虞が生じることから、請求項4又は請求項5に係る単板の乾燥装置の如く、前記当接を回避し得る構成を付加するのが安全である。
【0012】
即ち、請求項4に係る単板の乾燥装置は、各熱盤が相互に接近する際の最少間隔が、収容溝から突出する部分の突刺体の高さよりも、適宜寸法だけ広くなるように規制する規制部材を備えるものであって、仮に、誤っていずれかの段への単板の搬入が欠如することがあっても、単板を突刺していない単板移送部材の突刺体と、該突刺体に対向する上位の熱盤とが当接する虞はない。因に、単板の搬入が欠如した段の熱盤が密着しないことによって、放熱が若干増えることがあっても、単板の搬入の欠如は、少数の例外的事項であるから、実用的に格別問題はない。
【0013】
一方、請求項5に係る単板の乾燥装置は、少なくとも下側に加熱面を有する熱盤(最下位の熱盤を除く、上位の熱盤)の下面に、下方に位置する熱盤の各収容溝に収容された単板移送部材の突刺体の突出部分のみの介入を許容する逃げ溝を、前記各収容溝と対称的に穿設するものであり、当然ながら、誤っていずれかの段への単板の搬入が欠如することがあっても、単板を突刺していない単板移送部材の突刺体と、該突刺体に対向する上位の熱盤とが当接する虞がない。因に、前記逃げ溝は、突刺体の突出部分のみの介入を許容するに足る浅い溝で差支えないから、該当する熱盤の厚さを過度に厚くする必要はなく、而も、誤って単板の搬入が欠如した場合には、該当する熱盤の密着が保障されるので、放熱の増大に伴う熱効率の劣化も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る乾燥装置の正面説明図である。
【図2】図1に例示した乾燥装置の側面説明図である。
【図3】図1に例示した乾燥装置の一部破断平面説明図である。
【図4】単板移送部材の正面説明図である。
【図5】連結部材の斜視説明図である。
【図6】熱盤の部分斜視説明図である。
【図7】図1〜図3に例示した乾燥装置の正面作動説明図である。
【図8】図1〜図3に例示した乾燥装置の側面作動説明図である。
【図9】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図10】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図11】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図12】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図13】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図14】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図15】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図16】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図17】図1〜図3に例示した乾燥装置の平面作動説明図である。
【図18】熱盤の異なる実例の一部破断側面説明図である。
【図19】本発明に係る乾燥装置の異なる実施例の正面説明図である。
【図20】図19に例示した乾燥装置の側面説明図である。
【図21】図19に例示した乾燥装置の平面説明図である。
【図22】図19〜図21に例示した乾燥装置の正面作動説明図である。
【図23】図19〜図21に例示した乾燥装置の側面作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、乾燥装置の各種部材を作動させる作動部材・作動機構の態様には特段の制約はなく、種々の公知態様の作動部材・作動機構を用いることが可能であるから、図面を見やすく簡素化する便宜上、必要最少限度の図示に留め、併せて、各作動部材・作動機構の作動を制御する制御機構及び制御系回路(配線等)についても、その構成に特段の制約はないので、同様に、図示を省略することとした。また、各実施例に共通する部材については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明に係る乾燥装置の正面説明図であり、図2は、図1に例示した乾燥装置の側面説明図であり、図3は、図1に例示した乾燥装置の一部破断平面説明図であり、図4は、単板移送部材の正面説明図であり、図5は、連結部材の斜視説明図であり、図6は、熱盤の部分斜視説明図であり、図7は、図1〜図3に例示した乾燥装置の正面作動説明図であり、図8は、図1〜図3に例示した乾燥装置の側面作動説明図である。図中、1は、後述する熱盤3の収容溝3aの夫々に収容された、略長鋸状の単板移送部材であって、各々が前記収容溝3aの長さの2倍よりも適宜寸法だけ長い長さと、収容溝3aの深さ未満の高さ(後記鍔状部1a・突刺体1cを除いた高さ)とを有し、而も、両端部には、連結用の鍔状部1aを、また、両端部の鍔状部付近と中央部のゆとり部分以外の部分には、前記収容溝3aから突出する高さを有する多数の突刺体1cを夫々備えており、図示しない制御機構の制御に基づき、後述する往復移動機構7の作動を得て、適時、左右方向へ一斉に移動せしめられ、各熱盤3の間隔内と間隔外へ交互に単板aを移送する。
【0017】
2は、各段の熱盤3の収容溝3aに収容された複数本(図示例は、3本)の単板移送部材1を、両端部に於て連結する連結部材の具体例である連結軸であって、該単板移送部材1、及び転動用の軸受2bの取付け位置を規制する複数個の環状の鍔2aと、後述する往復移動機構7の可動部材7bと係合する2個の糸巻状の係合部材2bとを備えており、前記可動部材7bの作動を、各単板移送部材1に伝達する。
【0018】
3は、加熱蒸気・加熱油・電熱器等の適宜の熱源によって適温に加熱される熱盤であって、断熱材付の座金4を介して後述する昇降作動部材10に固着された、最上位の熱盤3を除く、上側に加熱面を有する下位の熱盤3の上面には、前記単板移送部材1を収容すべく、適宜深さを有して左右方向に延在する複数条(図示例は、3条)の収容溝3aが、前後方向に適宜の間隔を隔てて平行状に穿設されている。また、各熱盤3は、最上位の熱盤3に固着された前後一対の支持杆5、最上位の熱盤3を除く下位の各熱盤3に固着された前後一対の連結杆6、前記各支持杆5及び各連結杆6に付設された連結螺子6a等を介して、相互に均等的に接近及び離隔自在に連結されており、前記単板移送部材1を介して、間隔内に単板aが移送される都度、図示しない制御機構の制御に基づき、後述する昇降作動部材10の作動を得て、相互に接近せしめられる際に、単板aを熱圧して乾燥させる。また更に、各連結杆6に付設された規制螺子6bの規制作用を得た際には、相互に接近する際の最少間隔が、前記収容溝3aから突出する部分の突刺体1aの高さよりも、適宜寸法だけ広くなるように規制され、仮に、誤っていずれかの段への単板aの搬入が欠如した場合でも、突刺体1aの先端が上位の熱盤3に当接しないように予防されている。
【0019】
7は、基台11に固着された前後左右複数対のガイドレール7a、該ガイドレール7aの夫々へ左右方向に移動自在に嵌装された長丸窓付柱状の可動部材7b、螺子・チェーン等から成る移動用部材、及び減速機付電動機等から成る駆動源等を備えた移動機構(図示省略)等を有する往復移動機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、適時、前記可動部材7b、係合部材2b、連結軸2等介して、前記単板移送部材1を一斉に左右方向へ交互に移動させる。
【0020】
9は、単板搬送部材の実例である複数本のロール9a、基台11に固着された軸受部材9b、最下位及び下方から二番目の連結杆6に夫々固着された、前記軸受2b用の案内部材を兼用する軸受部材9c、各段毎の最後位のロール9aに付設された減速機付電動機等から成る駆動源9d等を有する左右一対の搬送機構であって、各熱盤3の昇降作動に伴って、各段毎のロール9aが、図1・図2の状態と、図7・図8の状態とに変位し、各段毎の単板移送部材1に対して、高さ方向に入れ替ることにより、単板aを相互に移乗させるよう備えられており、更に、図示しない制御機構の制御を得て、適時、駆動せしめられ、乾燥装置の左前側及び右前側に夫々設定した搬入口から個別に搬入した未乾燥の単板aを、単板移送部材1に適合する位置まで搬送する作用と、単板移送部材1による刺着を解除した乾燥済み単板aを、乾燥装置の左後側及び右後側に夫々設定した搬出口から搬出する作用とを成す。
【0021】
10は、基端側が、機枠・天井等に、可動端側が、断熱材付の座金4を介して、最上位の熱盤3aに夫々固着された、流体シリンダ等から成る昇降作動部材であって、図示しない制御機構の制御を得て、適時、作動せしめられ、複数段の熱盤3を相互に均等的に接近(図7・図8参照)及び離隔(図1・図2参照)させる。
【0022】
尚、乾燥装置には、前記各機器類の他に、制御機構も配備されており、前記各機器類の作動を適切に制御するが、制御機構の制御態様は、極めて多岐に亘り、而も、各機器類の作動状態と密接に関連させながら、順を追って制御することが肝要であるので、以下、図9〜図17に例示した前記乾燥装置の平面作動説明図を併用しつつ、前記乾燥装置の作動態様と各機器類の作動態様とを併せて説明する。
【0023】
本発明に係る単板の乾燥方法は、例えば前記の如き各機器類を以って構成した乾燥装置を用いて実施することが可能であり、当初、各熱盤3は、相互に接近させた待機位置(図7・図8参照)で待機させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御し、また、各単板移送部材1は、左右いずれか片側、例えば左側の待機位置(図1・図3参照)で待機させるように、制御機構を介して、往復移動機構7の作動を制御する。尚、当初は、各熱盤3の間に単板aが挿入されていないので、各熱盤3は、図7・図8の状態よりも若干余分に接近するが、先記規制螺子6bの規制作用によって、最少間隔が規制されている故に、いずれの突刺体1aの先端も、上位の熱盤3に当接する虞はない。
【0024】
而して、各単板移送部材1が、左側の待機位置で待機している際には、左側の搬送機構9を作動させると共に、ロールフィーダー等の適宜の挿入機構を介して、図9に例示する如く、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から単板a1、a2、a3を搬入し、該単板a1、a2、a3を、点線で示す移乗位置まで搬送してから、搬送を停止するように、制御機構を介して、搬送機構9の作動を制御する。尚、単板搬送の停止時期を定める信号の発信手段としては、例えば搬送機構9の各段毎に、反射型光電管スイッチ等から成る単板検知器(図示省略)を備えて、単板の先端の到来を検知し、所要の信号を発信する手段、或は例えば挿入機構の単板挿入動作と、搬送機構の搬送速度とを関連づけて、時限的に所要の信号を発信する手段等が挙げられるが、その形態について特に制約はなく、要は、所要の信号を発信し得る手段であれば足りる。
【0025】
然る後に、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の上昇に伴って、左側の搬送機構9のロール9a上に在った単板a1、a2、a3が、単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので(図1参照)、次に、図10に例示する如く、制御機構及び往復移動機構7を介して、単板移送部材1を右側へ移動させることにより、単板a1、a2、a3を、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各単板a1、a2、a3が、各熱盤3によって熱圧される(図8参照)。その際、熱盤の収容溝3aから突出している突刺体1aの先端側の部分は、各単板a1、a2、a3に突刺される。
【0026】
次に、図11に例示する如く、制御機構を介して、右側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から単板a4、a5、a6を搬入し、該単板a4、a5、a6を、点線で示す移乗位置まで搬送してから、搬送を停止するように、制御機構を介して、右側の搬送機構9の作動を制御する。尚、単板搬送の停止時期を定める信号の発信手段としては、前記段落「0024」の記載に準ずる。
【0027】
そして次に、所定の熱圧時間が経過したら、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の上昇に伴って、右側の搬送機構9のロール9a上に在った単板a4、a5、a6が、単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、図12に矢印で示する如く、単板移送部材1を左側へ移動させることにより、図13に例示する如く、単板a1、a2、a3を、各熱盤3の間隔外へ移送すると共に、単板a4、a5、a6を、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各単板a4、a5、a6が、各熱盤3によって熱圧されると共に、単板a1、a2、a3は、左側の搬送機構9のロール9aに当接することにより、移送部材1の突刺体1aによる刺着が解除され、左側の搬送機構9のロール9a上に移乗される(図7参照)。
【0028】
そこで更に、図13に例示する如く、制御機構を介して、左側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から単板a7、a8、a9を搬入し、先記移乗位置まで搬送してから、搬送を停止することと併せて、図14に例示する如く、乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ、乾燥済みの単板a1、a2、a3を搬出する。
【0029】
そして次に、所定の熱圧時間が経過したら、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の上昇に伴って、左側の搬送機構9のロール9a上に在った単板a7、a8、a9が、単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、図14に矢印で示する如く、単板移送部材1を右側へ移動させることにより、図15に例示する如く、単板a4、a5、a6を、各熱盤3の間隔外へ移送すると共に、単板a7、a8、a9を、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各単板a7、a8、a9が、各熱盤3によって熱圧されると共に、移送部材1の突刺体1aによる刺着が解除された単板a4、a5、a6が、右側の搬送機構9のロール9a上に移乗される。
【0030】
そこで更に、図15に例示する如く、制御機構を介して、右側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から単板a10、a11、a12を搬入し、先記移乗位置まで搬送してから、搬送を停止することと併せて、図16に例示する如く、乾燥装置の右後側に設定した搬出口へ、乾燥済みの単板a4、a5、a6を搬出する。
【0031】
そして次に、所定の熱圧時間が経過したら、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の上昇に伴って、右側の搬送機構9のロール9a上に在った単板a10、a11、a12が、単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、図16に矢印で示する如く、単板移送部材1を左側へ移動させることにより、図17に例示する如く、単板a7、a8、a9を、各熱盤3の間隔外へ移送すると共に、単板a10、a11、a12を、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各単板a10、a11、a12が、各熱盤3によって熱圧されると共に、移送部材1の突刺体1aによる刺着が解除された単板a7、a8、a9が、左側の搬送機構9のロール9a上に移乗される(図7参照)。
【0032】
そこで再び、制御機構を介して、左側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から単板a13、a14、a15を、図17に矢印で示す如く搬入し、先記移乗位置まで搬送してから、搬送を停止することと併せて、乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ、乾燥済みの単板a7、a8、a9を搬出する。以下、順次同様の操作を繰り返すことによって、殆ど間断なく単板を乾燥処理することができる。
【0033】
述上の如き単板の乾燥方法によれば、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の左前側の搬入口から搬入した単板を、熱盤の熱圧により乾燥して、乾燥装置の左後側の搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の右前側の搬入口から搬入した単板を、熱盤の熱圧により乾燥して、乾燥装置の右後側の搬出口へ搬出する操作とを交互に実施して、殆ど間断なく単板を乾燥処理するものであるから、先記従来のいずれの発明と比べても、同等以上に能率的な乾燥処理が行い得るのは勿論のこと、単板移送部材を往復移動させて、単板を熱盤の間隔の内外へ交互に移送するので、収容溝は原則的に熱盤の上面側のみで足り、熱盤の厚さを過剰に厚くする必要はないので、加熱面以外の四周の側面からの放熱を軽減して、熱効率の劣化を阻止できると共に、総じて、装置の小型化や、所要動力の低減化が図り得るので有効である。
【0034】
尚、前記実施例に例示する如く、適数本のロール状の単板搬送部材を、複数本の単板移送部材の間隔内に平行状に配設して成る乾燥装置は、比較的簡単な構成を以って、安定的に単板の搬入・搬出が行い得るので好都合であるが、単板搬送部材の形態としては、ロール状に限定するものではなく、図示は省略したが、例えば適数条の鍔付軸、或は例えば適数条の無端鎖等々、要は、単板を所望の方向へ搬入・搬出する形態の単板搬送部材であれば足りる。
【0035】
また、前記実施例に例示する如き規制螺子を備えて、各熱盤が相互に接近する際の最少間隔を規制して成る乾燥装置は、誤っていずれかの段への単板の搬入が欠如することがあっても、単板を突刺していない単板移送部材の突刺体と、該突刺体に対向する上位の熱盤とが当接する虞がないので好都合であり、処理する単板の厚さが変わる場合には、螺子の作用で、最少間隔を変えることも容易であるが、前記最少間隔の規制に用いる規制部材の形態としては、規制螺子に限るものではなく、図示は省略したが、例えば処理する単板の厚さが一定である場合であれば、規制間隔も一定で支障ないから、単なる棒状・柱状・板状等であっても差支えなく、要は、所望の最少間隔に規制できる形態であれば足りる。
【0036】
次に、図18は、熱盤の異なる実例の一部破断側面説明図であって、図中、3bは、少なくとも下側に加熱面を有する熱盤(最下位の熱盤を除く、上位の熱盤)3の下面に穿設された逃げ溝であって、下方に位置する熱盤3の各収容溝3aと対称的な位置に在り、而も、各収容溝3aに収容された単板移送部材1の突刺体1cの突出部分のみの介入を許容する深さを有している。
【0037】
述上の如き逃げ溝3bを有する熱盤3を具備した乾燥装置を用いる場合には、誤っていずれかの段(図示例は、中央の段)への単板aの搬入が欠如することがあっても、単板aを突刺していない単板移送部材1の突刺体1cと、該突刺体1cに対向する上位の熱盤3とが当接する虞はなく、当然ながら、前記規制部材の配設は無用となる。
【0038】
また一方、図19は、本発明に係る乾燥装置の異なる実施例の正面説明図であり、図20は、図19に例示した乾燥装置の側面説明図であり、図21は、図19に例示した乾燥装置の平面説明図である。図中、15は、断熱材付の座金4を介して機枠・天井等に固着される最上位の熱盤3に付設された前後一対の支持杆であって、先記実施例と同様の構成で成る連結杆6、連結螺子6a、規制螺子6b等を介して、下位の複数枚の熱盤3を、接近及び平均的に離隔可能に支持すると共に、各段毎の単板移送部材1を、左右方向へ往復移動させる為に、先記実施例と同様の構成で成る往復移動機構7を具備している。
【0039】
21は、基端側が基台・床等に固着された流体シリンダ等から成る昇降作動部材10の先端側に付設された昇降盤であって、断熱材付の座金4と、先記実施例と同様の構成で成る、左右一対の搬送機構9とを具備しており、図示しない制御機構の制御を得て、昇降作動部材10が上昇作動する際に、座金4を介して、各熱盤3を均等的に上昇させる。
【0040】
述上の如く構成して成る乾燥装置を用いても、本発明に係る単板の乾燥方法を実施することが可能であって、当初、各熱盤3は、相互に接近させた待機位置(図22・図23参照)で待機させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御し、また、各単板移送部材1は、左右いずれか片側、例えば左側の待機位置で待機させるように、制御機構を介して、往復移動機構7の作動を制御する。尚、先記実施例と同じく、当初は、各熱盤3の間に単板aが挿入されていないので、各熱盤3は、図22・図23の状態よりも若干余分に接近するが、やはり規制螺子6bの規制作用によって、最少間隔が規制されている故に、突刺体1aの先端が上位の熱盤3に当接する虞はない。
【0041】
而して、各単板移送部材1が、左側の待機位置で待機している際には、左側の搬送機構9を作動させると共に、適宜の挿入機構を介して、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から各段毎に単板aを搬入し、該各段毎の単板aを、図21に於て点線で示す移乗位置まで搬送してから、搬送を停止するように、制御機構を介して、搬送機構9の作動を制御し、次いで、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の下降に伴って、左側の搬送機構9のロール9a上に在った単板aが、各段毎に単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので(図19参照)、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、単板移送部材1を右側へ移動させることにより、各段毎の単板aを、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各段毎の単板aが、各熱盤3によって熱圧される(図22・図23参照)。
【0042】
次に、制御機構を介して、右側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から各段毎に単板aを搬入し、該各段毎の単板aを、図21に於て点線で示す移乗位置まで搬送してから、搬送を停止するように、制御機構を介して、右側の搬送機構9の作動を制御し、次いで、所定の熱圧時間が経過したら、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の下降に伴って、右側の搬送機構9のロール9a上に在った単板aが、各段毎に単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、単板移送部材1を左側へ移動させることにより、各熱盤3の間隔内に在る単板aを、各熱盤3の間隔外へ移送すると共に、各熱盤3の右側に在る単板aを、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の間隔内に在る単板aが、各熱盤3によって熱圧されると共に、各熱盤3の左側に移送された単板aは、左側の搬送機構9のロール9aに当接して、移送部材1の突刺体1aによる刺着が解除され、左側の搬送機構9のロール9a上に移乗される。
【0043】
そこで、制御機構を介して、左側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から各段毎に新たに処理する単板aを搬入し、先記移乗位置まで搬送してから、搬送を停止すると共に、乾燥済みの単板aを、乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ搬出するように、制御機構を介して、左側の搬送機構9の作動を制御し、次いで、所定の熱圧時間が経過したら、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の下降に伴って、左側の搬送機構9のロール9a上に在った単板aが、各段毎に単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、単板移送部材1を右側へ移動させることにより、各熱盤3の間隔内に在る単板aを、各熱盤3の間隔外へ移送すると共に、各熱盤3の左側に在る単板aを、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の間隔内に在る単板aが、各熱盤3によって熱圧されると共に、各熱盤3の右側に移送された単板aは、右側の搬送機構9のロール9a上に移乗される。
【0044】
そこで、制御機構を介して、右側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から各段毎に新たに処理する単板aを搬入し、先記移乗位置まで搬送してから、搬送を停止すると共に、乾燥済みの単板aを、乾燥装置の右後側に設定した搬出口へ搬出するように、制御機構を介して、右側の搬送機構9の作動を制御し、次いで、所定の熱圧時間が経過したら、各熱盤3を、相互に隔離させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の下降に伴って、右側の搬送機構9のロール9a上に在った単板aが、各段毎に単板移送部材1の突刺体1aの上に移乗されるので、次に、制御機構及び往復移動機構7を介して、単板移送部材1を左側へ移動させることにより、各熱盤3の間隔内に在る単板aを、各熱盤3の間隔外へ移送すると共に、各熱盤3の右側に在る単板aを、各熱盤3の間隔内へ移送し、次いで、各熱盤3を、相互に接近させるように、制御機構を介して、昇降作動部材10の作動を制御すると、各熱盤3の間隔内に在る単板aが、各熱盤3によって熱圧されると共に、各熱盤3の左側に移送された単板aは、左側の搬送機構9のロール9a上に移乗される。
【0045】
そこで再び、制御機構を介して、左側の搬送機構9を作動させ、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から各段毎に新たに処理する単板aを搬入し、先記移乗位置まで搬送してから、搬送を停止すると共に、乾燥済みの単板aを、乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ搬出する。以下、順次同様の操作を繰り返すことによって、先記実施例の場合と同様に殆ど間断なく単板を乾燥処理することができる。
【0046】
尚、単板搬送の停止時期を定める信号の発信手段、熱盤の最少間隔の規制手段等に関する設計変更例については、先記実施例の場合と同様に、所望の機能を奏し得る範囲で適宜に変更して差支えない。また、本発明に係る乾燥装置に用いる昇降作動部材としては、図示例の如き流体シリンダが簡便であるが、要は、複数枚の熱盤を均等的に昇降させる機能を奏し得る部材であれば足り、必ずしも流体シリンダに限定するものではない。
【0047】
また、単板移送部材を収容する収容溝の条数や穿設間隔については、処理する単板の厚さや大きさに対応させて、実験に基づいて定めれば良い。また、単板移送部材の長さについては、収容溝の長さの2倍よりも更に長い長さが必要であり、左右両端の連結用の鍔状部や中央部のゆとり部分の長さを含めて、乾燥装置全体の設計寸法に応じて適宜に設定すれば差支えない。更に、単板移送部材に凸設する突刺体の形態につては、形成の容易性からして、前記実施例に例示する如き楔状が適当ではあるが、要は、樹脂等の接着作用に起因して、熱盤に貼着することがある単板を、強制的に離脱し得る程度に刺着可能な形態であれば足りるので、楔状以外の形態に設計変更しても差支えない。
【0048】
また、単板移送部材の突刺体は、熱盤に貼着することがある単板を、強制的に離脱させる作用の他に、単板の乾燥に伴う全体的な収縮を規制する作用も併せて成し、結果的に、刺着した部分に、本来の刺着跡よりも幾分広い小割れを残存させて(該小割れは、突刺体が刺着した面とは反対側の面まで拡大的に到達する例も多いが、前記図示例に於ては、図示を省略してある)、単板の柔軟性を増大させる効果も奏するので、斯様な効果を期待する観点から、単板移送部材の配設本数や、突刺体の形態、突刺体の凸設間隔、突刺体の突刺深さ等を、実験に基づいて定めるのも有意義である。
【0049】
また、単板移送部材の収容溝は、単板の乾燥に伴って発生する蒸気を、外方へ誘導して排出する作用も成し、単板の内部に蒸気が滞留することに起因して、熱圧の開放時に、単板が爆発的に損壊する虞を予防する効果も併せて奏するが、必要に応じては、図示は省略したが、各熱盤の加熱面に、蒸気排出用の極く浅い排出溝を、別途に穿設しても差支えなく、特に、単板移送部材の収容溝を有しない最上位の熱盤の加熱面には、優先的な穿設を推奨する。
【0050】
また、前記いずれの実施例の態様であっても、当然、熱盤の増設が可能であって、必要に応じては、支持杆及び上位の熱盤に付設する連結杆の剛性を増強したり、連結螺子の本数を増やすなどの、補強処置を施すのが適切である。また、図19〜図21に例示した実施例の如く、最上位の熱盤を固定し、下位の熱盤を昇降させる形式に限っては、前記連結螺子に代えて、公知の合板用のホットプレスと同様に、熱盤層の周辺(例えば、四隅のすぐ外側)に、又は乾燥装置自体の周辺に、適宜形状の支持柱を立設すると共に、適宜形状の複数個のストッパーを、前記支持柱に階段状に付設して、各熱盤(及び単板搬送部材を付設した連結杆)を、均等的に離隔させる際に、下方周辺から個別に均等間隔を以って支持するよう構成しても差支えなく、斯様な支持形態を採れば、熱盤等の総重量を、前記支持柱によって一段と安定的に支持することが可能となるから、公知の合板用のホットプレスと同等程度の多段式とすることも容易である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上明らかな如く、本発明は、未だ広く汎用化されるには至っていない熱盤式の乾燥装置を用いる乾燥方法の実用性を著しく向上させて、能率的で省エネルギーにも適した乾燥処理を実現するものであり、更に、単板に類似する他の板状体の乾燥にも転用し得る可能性を有するもので、斯界に於ける本発明の実施効果は多大である。
【符号の説明】
【0052】
1 :単板移送部材
1a :突刺体
2 :連結軸
3 :熱盤
3a :単板移送部材の収容溝
3b :逃げ溝
4 :断熱材付の座金
5、15 :支持杆
6 :連結杆
6a :連結螺子
6b :規制螺子
7 :往復移動機構
9 :搬送機構
9a :ロール
10 :昇降作動部材
11 :基台
21 :昇降盤
a :単板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に並設された多数枚の熱盤が、最上位又は最下位の熱盤に係合する昇降作動部材の作動と、各熱盤に係合する連結機構の規制とを得て、相互に接近及び平均的に離隔すべく、適宜の昇降作動部材と適宜の連結機構とを、前記所要の各熱盤に係合させると共に、上側に加熱面を有する熱盤の上面の左右方向に延在し、且つ、前後方向に適宜の間隔を隔てて平行状に穿設された、適宜深さを有する複数条の収容溝に、該収容溝の長さの2倍よりも適宜寸法だけ長い長さと、収容溝の深さ未満の高さとを有し、且つ、上側の適宜部位に、前記収容溝から突出する高さを有する多数の突刺体を並立的に凸設した略長鋸状の単板移送部材の複数本を並列的に収容し、而も、各段の単板移送部材を一斉に左右方向に往復移動させるべく、適宜の往復移動機構を各段の単板移送部材に係合させ、更に、左右方向への移動に伴って各収容溝から熱盤の左右両側にはみ出す単板移送部材の近傍に、ベニヤ単板を単板移送部材の移動方向と直交方向へ搬送する単板搬送部材を、熱盤の昇降に伴って追従的に昇降する単板移送部材に対して上下方向へ入れ替り可能に配設して成る多段熱盤式の乾燥装置を用いてベニヤ単板を乾燥する乾燥方法であって、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から搬入したベニヤ単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させた後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の右側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の右後側に設定した搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から搬入したベニヤ単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させ後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の左側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ搬出する操作とを交互に実施することを特徴とするベニヤ単板の乾燥方法。
【請求項2】
上下方向に並設された多数枚の熱盤が、最上位又は最下位の熱盤に係合する昇降作動部材の作動と、各熱盤に係合する連結機構の規制とを得て、相互に接近及び平均的に離隔すべく、適宜の昇降作動部材と適宜の連結機構とを、前記所要の各熱盤に係合させると共に、上側に加熱面を有する熱盤の上面の左右方向に延在し、且つ、前後方向に適宜の間隔を隔てて平行状に穿設された、適宜深さを有する複数条の収容溝に、該収容溝の長さの2倍よりも適宜寸法だけ長い長さと、収容溝の深さ未満の高さとを有し、且つ、上側の適宜部位に、前記収容溝から突出する高さを有する多数の突刺体を並立的に凸設した略長鋸状の単板移送部材の複数本を並列的に収容し、而も、各段の単板移送部材を一斉に左右方向に往復移動させるべく、適宜の往復移動機構を各段の単板移送部材に係合させ、更に、左右方向への移動に伴って各収容溝から熱盤の左右両側にはみ出す単板移送部材の近傍に、ベニヤ単板を単板移送部材の移動方向と直交方向へ搬送する単板搬送部材を、熱盤の昇降に伴って追従的に昇降する単板移送部材に対して上下方向へ入れ替り可能に配設して成る多段熱盤式の乾燥装置であって、多段状のいずれの段に於ても、乾燥装置の右前側に設定した搬入口から搬入したベニヤ単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させた後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の右側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の右後側に設定した搬出口へ搬出する操作と、乾燥装置の左前側に設定した搬入口から搬入したベニヤ単板を、単板搬送部材を介して単板移送部材へ移乗させ後に、単板移送部材を介して熱盤の間隔内へ移送し、次いで、熱盤の熱圧による乾燥後に、単板移送部材を介して熱盤の左側方へ移送し、更に、単板移送部材から単板搬送部材へ移乗させて乾燥装置の左後側に設定した搬出口へ搬出する操作とを交互に実施するように、前記各機器類の作動を制御する制御機構を備えたことを特徴とするベニヤ単板の乾燥装置。
【請求項3】
複数本の単板移送部材の間隔内に平行状に配設した、適数本のロール状の単板搬送部材を用いて成る請求項2記載のベニヤ単板の乾燥装置。
【請求項4】
前記各熱盤が相互に接近する際の最少間隔が、前記収容溝から突出する部分の突刺体の高さよりも、適宜寸法だけ広くなるように規制する規制部材を備えて成る請求項2又は請求項3記載のベニヤ単板の乾燥装置。
【請求項5】
少なくとも下側に加熱面を有する熱盤の下面に、下方に位置する熱盤の各収容溝に収容された単板移送部材の突刺体の突出部分のみの介入を許容する逃げ溝を、前記各収容溝と対称的に穿設して成る請求項2又は請求項3記載のベニヤ単板の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−121235(P2011−121235A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279599(P2009−279599)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】