説明

ベニヤ板用生単板の含水率補正脱水方法

【課題】複数の生単板から水分を絞る際に含水率のばらつきを補正しつつ脱水できる方法を提供する。
【解決手段】 高含水率で方形に形成された多数枚のベニヤ板用生単板を上下に積層することにより4角柱状の積層状生単板とし、その積層状生単板の互いに対向する2側面が上下方向の小口集合面を形成するように、該積層集合体を上下の盤部材の間に位置させる。さらに上下の盤部材を相対的に接近移動させることにより、前記積層状生単板を押圧し、その押圧により各小口面から押し出された水が積層状生単板の上下方向の小口集合面を伝って下方に滴り落ちる状態で、積層状生単板に加えていた押圧力を解除又は緩和することにより、各ベニヤ板用生単板の小口面及び内部の繊維が原形方向へ拡がって負圧状態となるようにし、その負圧により該小口面から内部への吸引作用を生じさせて、相対的に繊維内の含水率が低い生単板の繊維内へ水を吸引させる。これによって含水率のばらつきが小さくなるように補正しつつ脱水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベニヤ板用の多数の生単板を上下に積層した状態で、その積層状生単板を上下方向に加圧・圧縮することにより積層状生単板の水分を絞ってその含水率を減少させるベニヤ板用生単板の含水率補正脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベニヤ板を製造する工程において、原木を回転させながらレース(鉋)で薄い帯板状に切削し、その帯板状の剥き材を所定の寸法に切断して生単板を得、その生単板を乾燥してから、複数枚を接合してベニヤ板とすることが多い。しかし、生単板を直接乾燥すると乾燥に時間がかかるため、乾燥に先立ち、生単板を加圧して生単板の水分を絞る(脱水する)ことが行われる。
【0003】
生単板の脱水絞り処理後、積層された複数の生単板間、及び1枚の生単板の領域間において、含水率はなるべく均一化されることが望ましい。含水率に大きなばらつきがあると、後の乾燥に余分な時間を要し、また均一な乾燥がしにくく、そのために乾燥後の各単板間又は1枚の単板の領域間で水分量のばらつきが解消されず、その状態で複数の単板を積層してベニヤ板とすると、反りや歪が生じやすい。
【0004】
原木の外側層を剥いた辺材と中心部を剥いた芯材とを比較すると、生単板の絞り処理前の含水率には大きな隔たりがある。例えば含水率が低い芯材に対して、辺材の含水率は2〜3倍に達する。また、単独では単板にならない不完全材を繋いで補正単板とする場合、芯材部と辺材部を組み合わせたものでは、1枚の補正単板の領域間で2〜3倍の含水率の差が生じうる。さらに、1枚の生単板であっても、異なる部位で数十%を超える含水率の差が出る場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−166403号公報
【特許文献2】特開2010−197004号公報
【0006】
先行技術として、特許文献1は、個々の生単板を順次絞りローラ間で狭圧しつつ走行させる際に生単板の水分を絞るローラ式の絞り装置を開示する。しかし、生単板を1枚ずつ絞るので、全体の工程時間が長くなり、また個々の生単板をローラ間で同じように狭圧するため、各単板間の含水率のばらつきを是正する機能は生じない。
【0007】
特許文献2は、積層状態にした生単板を上から加圧して絞る積層一括圧縮方式の脱水絞り装置を開示する。この方式では、一括して圧縮するから絞り効率は向上するが、各単板間又は1単板の領域間において含水率のばらつきを是正する効果は期待できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の課題は、複数の生単板から水分を絞る際に含水率のばらつきが小さくなるように補正しつつ生単板を絞って脱水できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
この発明は、高含水率で方形に形成された多数枚のベニヤ板用生単板を上下に積層することにより4角柱状の積層状生単板とし、かつ各ベニヤ生板用生単板の繊維方向と交差する端面である小口面を上下方向において揃え、該積層状生単板の互いに対向する2側面が上下方向の小口集合面を形成するように、該積層状生単板を上下の盤部材の間に位置させ、その上下の盤部材を相対的に接近移動させることにより、前記積層状生単板である積層状態の多数枚のベニヤ板用生単板を押圧し、これにより各ベニヤ生単板の水分を各小口面から押し出してその水が各ベニヤ生単板の小口面の集合である上下方向の前記小口集合面を伝って下方に滴り落ちるようにし、
かつこの水の滴り落ちる状態で、該積層状生単板に加えていた押圧力を解除又は緩和することにより、各ベニヤ板用生単板の小口面及び内部の繊維が原形方向へ拡がって負圧状態となるようにし、その負圧により該小口面から内部への吸引作用を生じさせて、相対的に繊維内の含水率が低いベニヤ板用生単板の繊維内へ前記小口集合面を伝って下方に移行する水のを吸引させ、これによって前記積層状生単板における各ベニヤ板用生単板間の含水率の差及び任意の1枚のベニヤ板用生単板の領域間における含水率の部分差を減少させるように補正しつつ、前記積層状生単板の全体としての含水率を低下させることを特徴とする。
【0010】
このように、積層状生単板を上下の盤部材間で加圧(押圧)して水分を絞り、積層状生単板の小口面(垂直壁)に沿って水分が垂下している最中に、積層状生単板に対する加圧を解除又は緩和することにより、圧縮されていた積層状生単板が自身の弾性により膨張し、その際に単板繊維内に負圧が生じ、その負圧により前記垂下する水分が生単板の繊維内へ吸引される。これによって相対的に含水率の低い生単板又はその領域に、含水率の高い単板又は領域から絞り出された水分が移動し、生単板間又は単板領域間における含水率のばらつきが小さくなるように補正されつつ脱水されていく。そのため、後の乾燥を比較的短時間で効率的に行うことができ、さらには複数枚の単板を接合してベニヤ板にする際に、含水率のばらつきが単板間及び単板の領域間で小さいから、ベニヤ板となった製品に反りや歪が生じにくい。
【0011】
また、本発明は、上下の盤部材による前記積層状生単板に対する押圧と押圧解除又は緩和を、その押圧により絞り出される水が上下方向の前記小口集合面を伝って下方に滴り落ちている状態で複数回繰り返すことを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、相対的に含水率の低い生単板又はその領域に、含水率の高い単板又は領域から絞り出された水分が移動し、さらに再度の加圧で再び圧縮されて繊維内の水分が押し出され、言うなれば水分を吐いて、吸って、吐いて吸ってを繰り返すことにより、生単板間又は単板領域間における含水率のばらつきが一層効率的に小さくなるように補正しつつ脱水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の補正脱水方法の実施に好適な装置の一例を簡略かつ概念的に示す正面図。
【図2】その装置の一作動に併せて本発明に係る方法の一工程を示す図1に対応する正面図。
【図3】図2に続く作動及び方法の工程を同様の正面図。
【図4】図3に続く作動及び方法の工程を示す同様の正面図。
【図5】図4に続く作動及び方法の工程を示す同様の正面図。
【図6】図5に続く作動及び方法の工程を示す同様の正面図。
【図7】図6に続く作動及び方法の工程を示す同様の正面図。
【図8】図7に続く作動及び方法の工程を示す同様の正面図。
【図9】図8に続く作動及び方法の工程を示す同様の正面図。
【図10】図9に続く作動を方法の工程を示す同様の正面図。
【図11】図4から図5に対応する作動及び方法の工程を示す平面図。
【図12】図11の効果を説明する平面図。
【図13】図11の効果を説明する別の平面図。
【図14】図11の効果を説明する簡略な正面図。
【図15】図7に対応する作用を示す積層状生単板B1の正面図。
【図16】図15の側面図。
【図17】図15の斜視図。
【図18】積層状生単板B1における水分の移動を説明する概念図。
【図19】補正生単板の一例を示す平面図。
【図20A】図19の補正生単板の水分の移動を示す平面図。
【図20B】図20Aの正面図。
【図21】図6〜図8に対応する生単板内の水分の排出及び吸引のメカニズムを説明する概念図。
【図22】本発明の補正脱水方法による効果を確認するグラフ。
【図23】本発明の方法を実施するのに好適な別の装置の一例を示す油圧系統図。
【図24】図23の制御系統図。
【図25】引上げシリンダを含む作動を示す模式的な正面図。
【図26】図25の装置をより具体的に示す正面図。
【図27】図26の側面図。
【図28】図26の下側部分の平面図。
【図29】図26〜図28における横移動部材と規制部材の作動を簡略に示す模式的な説明図。
【図30】本発明の方法の実施に使用される別の装置を示す図1に対応する正面図。
【図31】図30に続く工程を示す正面図。
【図32】図31に続く工程を示す正面図。
【図33】水が滴り落ちている状態を検出する方法の第一例を示す簡略な正面図。
【図34】同じく第2例を示す正面図。
【図35】同じく第3例を示す正面図。
【図36】同じく第4例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に従い説明する。まずは本発明の方法の実施に好適な含水率補正絞り装置を説明し、その後、かかる装置の作動の説明に併せて本発明の方法の実施例を説明する。図1は、ベニヤ板用の多数の生単板を上下に積層した状態で、その積層状生単板を上下方向に加圧・圧縮することにより積層生単板の水分を絞ってその含水率を減少させる生単板脱水絞り装置1である。この装置1は、積層状生単板を支持する定盤2と、その定盤2の上方に設けられ、定盤2に対して接近・離間可能な加圧部材としての加圧盤3と、加圧盤3を駆動して積層状生単板に押し付ける加圧シリンダ4と、定盤2に対して上下方向に移動可能に設けられ、定盤2から上方に向かって起立して積層状生単板の少なくとも対向する2辺の垂直壁に接触又はごく近接し、加圧盤3による加圧時の積層状生単板の移動又は延伸を規制するとともに、その加圧盤3の下降行程において加圧盤3を当接させ、その当接後は加圧盤3の下降に伴ってそれと一体的に下降する一対の規制部材5と、その規制部材5を下降させ、かつ前記起立した位置へ上昇させる昇降手段としての昇降シリンダ6と、加圧盤3を駆動する加圧シリンダ4を制御する制御手段としての加圧制御部7とを備える。定盤2と加圧盤3が上限の盤部材に相当する。
【0015】
定盤2、加圧シリンダ4及び昇降シリンダ6はフレーム8に固定される。フレーム8は箱型状に骨組みされ、定盤2はこのフレーム8を水平方向に横切るように位置する。定盤2の一方の側には積層状生単板B1を定盤2へ搬入する搬入コンベア11が接続され、他方の側には圧縮絞りによる脱水処理が終わった積層状生単板B2を搬出する搬出コンベア12が接続される。
【0016】
一対の規制部材5は、積層状生単板B1の互いに対向する2辺の垂直壁に対面する面状(板状)の部材であり、互いに平行に起立する。生単板は方形(通常は長方形)であり、特に上記2辺の垂直壁は、生単板を繊維に沿った繊維方向と繊維交差方向とに区別したとき、繊維方向と平行な壁面である。よって、一対の規制部材5は生単板の繊維交差方向において互いに対向し、図1において紙面に直交する方向において、生単板の繊維の端面が露出する。この端面が各生単板の小口面が集合した小口集合面となる。
【0017】
一対の規制部材5のうちの一方を他方に向かって相対的に移動させる横移動装置として、横移動シリンダ13、13が各規制部材5に接続されている。それらの横移動シリンダ13は昇降ベース14に固定され、それのピストンロッド15が各規制部材5に連結される。一対の規制部材5は定盤2に形成された移動空間16を経て上方へ起立状態で突出し、それぞれ移動空間16の範囲内で起立状態を保って昇降ベース14に対し水平方向へ移動可能である。少なくも一方の横移動シリンダ15の駆動により、相対的に一方の規制部材5を他方の規制部材5に向かって横移動させると、積層状生単板B1を繊維方向と交差する方向の両側から挟むこととなる。
【0018】
各昇降ベース14は垂直方向に設置された昇降シリンダ6、6のピストンロッド17に連結され、各規制部材5は横移動シリンダ13を支持する昇降ベース14を介して昇降シリンダ6に連結されることとなる。各昇降シリンダ6は、各規制部材5の上端が定盤2から積層状生単板B1の高さを超えて上方へ突出した起立位置と、定盤2の上面以下に引き下がった退避位置との間で、各規制部材5を昇降させるスロークを有し、また各規制部材5の昇降を直接ガイドする、又は規制部材5と一体的な付属部材を介して間接的にガイドする、図示しない垂直方向のガイド部が設けられる。図1において搬入コンベア11側の規制部材5のみが定盤2の上面以下に没した退避位置にあるとき、積層状生単板B1が定盤2上へ搬入され、少なくとも搬出コンベア12側の規制部材5が定盤2の上面以下に没した退避位置にあるとき、脱水絞り後の積層状生単板B2が定盤2外へ搬出される。
【0019】
定盤2には、その上面から浮き上がる程度に昇降可能な定盤内コンベア20が組み込まれ、そのコンベア20は例えば定盤2の両端側に設けられたスプロケット21、22に支持されて駆動されるチェーンコンベアであり、昇降装置23(例えば昇降シリンダ)により定盤2の上面から僅かに浮き上がった搬送位置と、その上面より下に下がった退避位置とに移動する。そのコンベア20が浮き上がった搬送位置において駆動されることにより、搬入コンベア11で運ばれてくる積層状生単板B1を継続してさらに定盤2上へ導き、退避位置へ下がることにより積層状生単板B1を定盤2の上面に載置する。脱水絞りが終了した積層状生単板B2は、定盤内コンベア20が昇降装置23により上昇することにより若干持ち上げられ、そのコンベア20によって定盤2上から搬出コンベア12の側へ搬送され、搬出コンベア12に受け渡される。
【0020】
加圧シリンダ4を制御する加圧制御部7は、加圧盤3により積層状生単板B1を1次加圧する工程において、積層状生単板B1から水分が排出されている途中でその加圧盤3による加圧を解除又は軽減して1次加圧が停止されるように加圧シリンダ4を制御する1次加圧停止手段と、加圧盤3による2次加圧を行うために積層状生単板B1に対する加圧が再開されるように加圧シリンダ4を制御する2次加圧開始手段とを備える。具体的には、加圧制御部7は加圧シリンダの加圧パターンを制御する、CPUによって実行されるシーケンスプログラム25、加圧及び解放の時間を計測するタイマ26を少なくとも備え、この制御部7が加圧シリンダ4の圧力を検出する圧力センサ28、加圧シリンダ29への流体圧(通常は油圧)を制御する電磁弁29、さらに必要に応じて油圧ポンプ30等の加圧源と接続される。ここではシーケンスプログラム25及びタイマ26を含んで1次加圧停止手段及び2次加圧開始手段が構成される。
【0021】
次に、以上のような脱水絞り装置1の作動を説明する。この説明の一部は加圧制御部7のシーケンスプログラム25の内容となり、かつ本発明に係る含水率補正脱水方法の一実施例の説明となる。
【0022】
まず、図1において搬入コンベア11により積層状生単板B1が搬送されてくると、図2に示すように搬入コンベア11側の規制部材5が定盤2の上面以下の退避位置まで昇降シリンダ6により下降し、他方、搬出コンベア12側の規制部材5は積層状生単板B1の高さを超える位置まで起立した状態に維持される。
【0023】
次に、図1の定盤内コンベア20が駆動して、搬入コンベア11から積層状生単板B1が定盤内コンベア20に受け渡され、図3のように積層状生単板B1が定盤2上に位置する。このとき定盤内シリンダ20は定盤2から僅かに浮き上がった状態にあり、積層状生単板B1はそのコンベア20により浮動状態にある。その後、定盤2より下まで下がっていた規制部材5が、図4のように昇降シリンダ6により上昇して、定盤2から積層状生単板B1の高さと同等又はそれより少し高い位置まで突き出た状態となる。
【0024】
その状態から、図5に示すように搬送コンベア11側の規制部材5が、横移動シリンダ13により反対側の規制部材5の側へ小距離だけ接近するように横移動する。その結果、積層状生単板B1の繊維方向の一方の1辺である垂直壁が、その反対側の規制部材5の内面に押し当たるかごく接近し、同じく繊維に平行な他方の1辺である垂直壁が横移動した規制部材5の内面に当たった状態で、積層状生単板B1が両側から一対の規制部材5で挟まれた状態となる。その後、図1の定盤内コンベア20が定盤2より低い位置へ昇降装置23により下げられることにより、積層状生単板B1が定盤2の上面に着座し、そこに載置される。
【0025】
その後、図6に示すように、加圧シリンダ4の駆動により加圧盤3が下降する。その下降の過程で加圧盤3が積層状生単板B1の上面より上方へ突き出ている一対の規制部材5の上端に当接する。加圧シリンダ4の駆動圧力は、規制部材5の昇降シリンダ6の圧力(保持圧)より大きいため、その当接後は、加圧シリンダ4が昇降シリンダ6のピストンを押し下げつつ、一対の規制部材5を下方へ押し戻す。
【0026】
図7に示すように、その過程で加圧盤3が積層状生単板B1の上面(最上位にある生単板)に当たると、そこから積層状生単板B1に対する加圧・圧縮が始まり、加圧盤3は加圧シリンダ4の駆動により、一対の規制部材5を下方へ沈み込ませつつ積層状生単板B1に対する加圧を所定の時間継続する。
【0027】
その加圧により積層状生単板B1は垂直方向に圧縮され、その高さを多少減少させるとともに、生単板の繊維方向の端面(図7等における正面の垂直壁)から、各生単板内に存在する水分が押し出され、滴り落ちるように垂下する。この状態下で(絞りの途中で)、図8のように加圧シリンダ4の駆動を停止し、加圧盤3の積層状生単板B1に対する加圧を解除(圧力をゼロにする)か、加圧力を低圧な状態に軽減する。これが1次加圧工程の、水分の垂下が継続中での停止となる。
【0028】
加圧停止を短時間継続した後、図9に示すように、加圧シリンダ4を再駆動して加圧盤3により積層状生単板B1を再加圧する2次加圧工程に移行する。
その2次加圧工程を所定の短時間継続した後、積層状生単板B1に対する脱水絞りを終了するか、あるいは2次加圧により生単板の繊維内から押し出された水分が滴り落ちるように垂下する状態で、2次加圧を停止して、その後3次加圧工程に移行するかは、適宜選択することができ、N次加圧(Nは2以上の整数)が終了した後、図10に示すように加圧シリンダ4が戻し駆動され、加圧盤3が上昇して、脱水絞り後の積層状単板B2の上面及び一対の規制部材5の上端から離間する。
【0029】
この状態で、少なくとも排出コンベア12側の規制部材5がその上端が定盤2の上面以下となる退避位置まで昇降シリンダ6により下降する。また図1の定盤内コンベア20が昇降装置23により上昇し、脱水絞り後の積層状単板B2を定盤2上から持ち上げてそのコンベア20で搬送可能な状態とし、そのコンベア20の駆動により積層状生単板B2が定盤2上から移動して、搬出コンベア12に継走され、所定の場所へ搬出される。
【0030】
以上のようなN次加圧工程の加圧シリンダの作動は、図1の加圧制御部7におけるシーケンスプログラム25の実行により制御される。そこでタイマ26は各加圧工程の加圧継続時間、並びに加圧解除時間を決定する要素となり、タイマ26で計測される時間が、シーケンスプログラムで設定されている加圧継続、加圧解除の各時間に達すれば、加圧制御部7から電磁弁29や必要に応じて加圧源30へ信号を送って、加圧シリンダ4の作動を停止したり再開したりする。また、圧力センサ28から得られる加圧シリンダ4の圧力と、タイマ26による時間との双方を加圧継続、加圧解除のタイミングを決定するパラメータとする場合は、計測されるその圧力と時間とが予め設定した値又は範囲内となったときのアンド条件又はオア条件等により加圧継続、加圧解除がなされることとなる。
【0031】
図4から図5の一方の規制部材5の横移動により、図11の平面図に示すように、積層状生単板B1が一対の規制部材5により両側から挟まれた状態となる。これにより加圧工程での積層状生単板B1の傾きや崩れ等の移動が抑制・阻止されることはもちろんであるが、図12に示すように、生単板の繊維方向と交差する方向において積層状生単板B1が両側から挟まれた状態では、加圧に伴う繊維交差方向の、特に生単板の端末部の伸び(延伸)が抑制又は阻止される。
【0032】
もし、この端末部の自由な伸びが許容されると、図13に示すように生単板の端末部(積層状生単板B1の端末部と言える)に繊維方向の割れが生じやすいが、図14にも示すように、その伸びひいては割れが一対の規制部材5によって防止することが可能となる。
【0033】
図7から図8の1次加圧工程の実行とその停止、さらに図9に至る2次加圧工程の開始・実行の局面に対応して生じる状況を、図15〜図18、図21に概念(イメージ)で示す。図15、図16に示すように、1次加圧工程で積層状生単板B1を加圧・圧縮すると、各生単板の繊維内部から水分が押し出され、積層状生単板B1の垂直壁を伝って滴り落ちるように垂下する。図21の(a)は加圧前の状態を、(b)は加圧時の状態を概念的に示している。このように水分が垂下する状態下で、加圧を解除すると(圧力緩和も含め)、図21の(b)から(c)に示すように、いったん圧縮された生単板の繊維が元に戻ろうと膨らみ、それによって生単板の内部の繊維に負圧が生じ、その積層状生単板B1の壁面を垂下する又はその壁面に残留する水分を自身の繊維内に吸引する。この負圧・吸引作用は、当初から含水率が低い生単板又は同領域において、当初から含水率が高い生単板又は同領域より、顕著に生じる。
【0034】
したがって、図17、図18に示すように、積層された各生単板b1の繊維間、並びに1枚の生単板の繊維領域間で、含水率の高い生単板から低い生単板へ、また1枚の生単板における含水率の高い領域から低い別の領域へ水分の移動が生じる。言い換えれば、水分が押し出されている途中で行う加圧解除による、いわば生単板自体の負圧ポンプ作用により、積層状生単板B1の全体において含水率がより均一化の方向へ向かう。
【0035】
ここで、1枚の生単板内では含水率のばらつきは少ないとも考えられるが、1枚では生単板として使えない不完全材(例えば原木を剥いたときに原木の空洞、節、外周部の凹凸等により、剥き材に穴や裂け目が生じたり、剥き材が断片になったりした不良材)の有効利用のために、複数の不完全材をテープ等で繋ぎ合わせて補正単板を形成し、これを通常の単板と同様にベニヤ板の素材として使用する場合がある。例えば図19に示す補正単板b11は、スギの辺材(外側層の剥き材)A、赤身(中間層の剥き材)B、辺材C、芯材(中心部の剥き材)Dを繋いだものであるが、含水率が高い辺材A,Cと低い芯材Dとでは、約2〜3倍の含水率の差があり、赤身Bではその中間的な含水率の差がある。よって、加圧・解除・加圧のサイクルによる負圧ポンプ作用により、1枚の補正単板b11において、含水率の差がある領域間ほど大きな水分の移動が生じ、これが1枚の補正単板b11における含水率の均一化につながる。また、補正単板でなく、1枚の生単板であっても、例えば杉の生単板の異なる部位で20〜150%もの含水率の差が生じる場合があり、この含水率のばらつきが緩和される。
【0036】
以上のような含水率均一化の効果は、加圧により生単板から水分が押し出されている途上における加圧解除を繰り返すほど、より高まるから、1次加圧、水分流出下での加圧解除、2次加圧、水分流出下での加圧解除、3次加圧、水分流出下での加圧解除・・・というように、複数回のポンプ作用(負圧吸引作用)を生じさせることが望ましい。
【0037】
ただし、脱水絞り処理の工程時間の短縮による脱水効率を高めることも考慮すると、その加圧及び加圧解除の繰返し回数と、1つの積層状生単板B1に要する脱水絞りの時間との調和を図ることとなる。その場合、脱水絞り時間をできるだけ短くするには、1次加圧、同加圧解除、2次加圧の最少3工程で、1つの積層状生単板B1に対する脱水絞りを終了することも一法である。
【0038】
図22は、以上説明した積層状生単板B1に対する脱水絞りの効果(特に絞り後の残留含水率を均一化する効果)を説明するグラフである。例えば辺材について上記手法で行った脱水絞り試験において、A1に示すように初期(脱水絞り前)には含水率が低いもので約100%から、高いもので約300%であって、含水率の差が203%あったが、A2のように本件の脱水絞りによる脱水後にはそのばらつきの範囲が95%に小さくなり、さらにA3のように脱水に続く乾燥後には、含水率のばらつきの範囲が5%に収まった。
【0039】
杉の芯材に関しては、B1のように、初期(脱水前)では含水率が低いもので約50%から、高いもので約150%であって、含水率の差が99%あったが、同様に脱水後にはB2のようにこれが70%に縮小し、乾燥後にはB3のように含水率のばらつきが7%に収まった。
【0040】
次に、本発明の別の実施例を図23〜図29に示す装置を参照して説明する。
この実施例に使用される装置では、図23の油圧系統図から明らかなように、積層状生単板B1を上方から加圧する複数(この例では4本)の加圧シリンダ50が、加圧部材としての加圧盤51に連結され、各シリンダ50はそれぞれの電磁弁52を介して油圧源53(コンプレッサ又は油圧ポンプ等)に接続されている。また加圧盤51には、複数(例えば加圧盤51の両側に2本ずつ計4本)の引上げシリンダ54が加圧シリンダ50と平行に、かつ加圧シリンダ50の外側に位置するように連結され、これらの引上げシリンダ54が共通の電磁弁55を介して油圧源53に接続される。図24に示すように、複数の加圧シリンダ50の各電磁弁56はコントローラ(油圧制御部)57に接続され、また複数の引上げシリンダ54の電磁弁55もコントローラ57に接続される。
【0041】
図25に示すように、各引上げシリンダ54には、そのストローク(作動)距離(ピストンロッド54aの伸長距離)を計測する計測手段としてリニヤエンコーダ58がそれぞれ内蔵又は付属され、各エンコーダ58はコントローラ57に接続される。4本の引上げシリンダ54は、加圧シリンダ50が加圧盤51を介して積層状生単板B1を押圧するために伸長する際は、その加圧盤51の下降に追従してそのピストンロッド50aが伸長し、その伸長の過程で各引上げシリンダ54のストローク距離(ピストンロッド54aの伸長距離)L1、L2、L3、L4が各リニヤエンコーダ58でそれぞれ計測され、その計測出力がコントローラ57へ送られる。
【0042】
コントローラ57は、各エンコーダ58の出力値の差(偏差ΔL)により、又はその出力値の偏差ΔLから演算した加圧盤51の三次元的な傾きΔθにより、偏差ΔL又は傾きΔθが可及的に解消されるように、各加圧シリンダ50の各電磁弁52(図23、図24)を制御し、各加圧シリンダの作動圧力P1〜P4を個別に制御する。これにより、積層状生単板B1に対する加圧盤51の傾きが是正される。この前提として、図25における各引上げシリンダ54のそれぞれのピストンロッド54aは、加圧盤51に対し相対的な回動(小角度内の)が許容される状態で連結される。なお、加圧シリンダ51のピストンロッド50aは、図示しない引掛け部等を介して加圧盤51に当たる構造とすることができる。
【0043】
加圧シリンダ50による積層状生単板B1への加圧、絞りが終了して加圧盤51を上昇端位置へ上昇させる際には、加圧シリンダ50は駆動せず、複数の引上げシリンダ54のみ作動させて(電磁弁55を介して圧力源53から流体圧を供給し)、加圧盤51を上昇端位置(原位置)まで引き上げる。この際、複数の加圧シリンダ50は引上げシリンダ54の作動に追従して自身のピストンロッド50aが収縮する。加圧盤51の引上げには、加圧盤51を持ち上げるのに足りる力があればよく、加圧盤1の重量に打ち勝つシリンダ圧を付与すればよいから、これを大出力の加圧シリンダ50で行うとすれば、大重量のピストンを駆動する大きな圧力を必要とするが、加圧シリンダ50より低出力・小型の引上げシリンダ54によってこれを行わせれば、小さいシリンダ圧で容易に、かつ低エネルギーで加圧盤51を元の原位置へ引上げ、復帰させることができる。
【0044】
しかも、このような引上げシリンダ54を、加圧シリンダ50の駆動(加圧盤51の下降)に追従して伸長させ、その各ストークを各エンコーダ58でプロットすることにより、偏差ΔL又は傾きΔθをパラメータとして、各加圧シリンダ50を個別制御する結果、特別な機構を付加することなく、引上げシリンダ54を利用して加圧盤51の加圧時の傾きを是正し、ひいては積層状生単板B1の高さを水平に保ちながら均一な脱水ができる。
【0045】
図26、図27は、加圧シリンダ50と引上げシリンダ54との位置関係をより具体的に示しており、加圧シリンダ50は装置の固定部材であるフレーム60にその内側において固定され、引上げシリンダ54はフレーム60にその外側において固定される。図27において、引上げシリンダ54のピストンロッド54aは、ピン54bにより(例えばX軸及びY軸の少なくとも1軸により二次元的又は三次元的に回動可能な状態で)加圧盤51に連結される。
【0046】
図26に示すように、定盤61の上面が、載置される積層状生単板B1の支持面61aとなり、この支持面61aと平行にチェーンコンベア(定盤内コンベア)62が設けられる。このコンベア62は、支持面61aの直下に隠れるように設けられた2列の無限軌道(例えばチェーン)63と、そのチェーン63を巡回可能に支持する巡回スプロケット64、65及びチェーン63に作用する荷重を受ける複数の支持スプロケット66と、それらスプロケット64〜66を支持するコンベアフレーム67と、そのフレーム67に支持されてチェーン63を駆動する駆動装置としてのモータ68と、上記構成要素の全体をフレーム67を介して昇降させるコンベア昇降シリンダ69とを備える。
【0047】
図28に示すように、定盤61の上面(支持面61a)には、チェーン63が通るチェーン溝(スリット)70が形成され、2列の各チェーン63はそれらのチェーン溝70内において、定盤61の上面より幾分高く支持される搬送位置と、その上面より引っ込んだ待機位置との間で、コンベア昇降シリンダ69により昇降する。積層状生単板B1を加圧する行程ではチェーン63が退避位置にあり、積層状生単板B1を定盤61上へ搬入するとき、及び定盤61上から搬出するときは、チェーン63がコンベア昇降シリンダ69により搬送位置へ持ち上げられる。2列のチェーン63を同期して巡回させるために、図26に示す伝導軸(スプロケット)71が設けられ、モータ68の回転がチェーン等の伝導機構を介してスプロケット65及び71へ伝えられ、それにより各チェーン63が同期して駆動される。
【0048】
図26において積層状生単板B1の対向する2辺(2面)の位置を規制する規制部材72は、図29に模式的に示すように、垂直方向に立てた姿勢で設けられた横移動部材73に対し、昇降ガイド74を介して上下方向に昇降可能に支持される。横移動部材73には規制部材72を昇降させる昇降シリンダ75が固定され、そのピストンロッド75aが規制部材72に連結される。横移動部材73は横移動シリンダ(横移動機構)76を介して装置のフレーム60によって支持され、その横移動シリンダ76の作動により、規制部材72、横移動部材73及び昇降シリンダ75の全体が横方向(水平方向)において一定距離範囲で移動する。
【0049】
また、昇降シリンダ75の作動(伸長)により、横移動部材73の昇降ガイド74に案内されつつ、規制部材72が上昇し、図26に示すように、対向する一対の規制部材72により、積層状生単板B1の対向する2つの端面の位置が規制される。この際、図29に示すように、横移動シリンダ76により横移動部材73を介して規制部材72が水平方向に移動することにより、前記チェーンコンベア62に支持された浮動状態の積層状生単板B1が双方の規制部材72で挟まれた状態となる。
【0050】
図28は、図29の模式的な構成を、実際に即して具体的に示す平面図である。なお、この図の左右で、上下方向の異なる位置における要素に着目して図示しているが、実際の装置は左右対称と考えてよい。規制部材72の昇降軌跡には前述のチェーンコンベア62のチェーン63が位置するため、規制部材72にはそれとの干渉を回避する垂直方向の逃げ溝(スリット)77が、昇降部材72の昇降ストロークに足りる長さ分形成されている。また、装置のフレーム60から側部外方へ突出するように、定盤61の奥行方向の前後に横移動シリンダ76がフレーム60に固定され、これらのシリンダ76に垂直方向に起立した横移動部材73が連結される。
【0051】
規制部材72は横移動部材73の内側、つまりその部材73とフレーム60との間に位置し、昇降ガイド74を介して横移動部材73により昇降可能に支持され、横移動シリンダ76により図28の左右へ移動する。図28の左側にも、図示は省略されているが右側と同様に横移動シリンダ76があり、同様の作動をなす。その左側に図示されている横移動ガイド78は、定盤61の奥行方向の前後において、横移動シリンダ76とは異なる高さ位置でフレーム60と横移動部材73を連結し、横移動部材73の図中左右方向の移動をガイドするリニヤガイドとして機能する。図28の右側にも図示は省略するが、同様の横移動ガイドがあり、右側の横移動部材73の水平移動を案内する。
【0052】
図27に示すように、規制部材72は角パイプ材等により枠状に構成される、縦枠部79,80と、それらの上下間を繋ぐ横枠部81,82と、それら枠部材79〜82の内部の空間、又はその空間を塞ぐ板部83とを備え、上述の昇降方向の逃げ溝(スリット)77は、縦枠部79,80に2列のチェーン63に対応してそれぞれ形成され、また横移動部材73に固定された昇降シリンダ75のピストンロッド75aは、上側の縦枠部81の下面に連結されている。
【0053】
なお、図27に示すように、加圧盤51の昇降はフレーム60に形成された昇降ガイド82により案内される。ここで、加圧盤51の下面に一対の上部ストッパ51a(ストッパ部)を、一対の規制部材72の外側間隔に対応する内側間隔で設け(その長さは、例えば図27に示すように規制部材72の幅寸法に対応する程度)、加圧盤51が下降して一対の規制部材72の上端に当たる際に、一対の上部ストッパ51aが各規制部材72の外側面にごく近接し、押圧時において一対の規制部材72が外側へ開くことを防止することができる。
【0054】
以上の実施例においても、原理的には図1〜図21で説明した実施例と同様に、図26において左側の規制部材72が定盤61から突出し、右側の規制部材72が定盤61から引っ込んだ状態で、モータ68で駆動されるチェーンコンベア62により積層状生単板B1が定盤61に運ばれた後、右側の規制部材72が定盤61から突き出される。その規制部材72が横移動シリンダ76により左側の規制部材72側へ横移動することにより、積層状生単板B1がこれらの規制部材72で挟まれ、その状態で、コンベア昇降シリンダ69がチェーンコンベア62を降ろすことにより、積層状生単板B1が定盤61の上面(支持面)61a上に載置される。
【0055】
次に、加圧シリンダ50が駆動されて加圧盤51が下降し、一対の規制部材72の上端に当接した後、加圧盤51は加圧シリンダ50の駆動によりそれらの規制部材72を下方に押し戻しながら、積層状生単板B1を圧縮し、それに内在する水分を絞る。この行程で、加圧シリンダに追従する複数の引上げシリンダ54の個々のストローク距離L1〜L4がプロットされ、加圧盤51が傾かないように、言い換えば、積層状生単板B1の高さが水平に保たれるように、複数の加圧シリンダ50が個別制御される。
【0056】
そして、加圧シリンダ50の押圧力が解除又は緩和されると、各生単板の繊維管が圧縮された状態から膨張に転じ、そこに負圧が生じて積層状生単板B1の中の垂直壁を伝って垂下する水分が、相対的に含水率の低い部分又は生単板に吸引されることから、生単板内並びに積層状生単板B1の全体で、含水率がより均一化される。またその規制部材72が生単板の繊維と交差する方向の端末部の伸びを規制するため、その端部における割れが抑制される。
【0057】
その加圧シリンダ50による加圧と解放(又は減圧)を適数回(例えば、1〜3回程度)行って、含水率を均一化する脱水が完了したら、図26の双方の規制部材72が昇降シリンダ75により下降端位置まで下降し、チェーンコンベア62がコンベア昇降シリンダ69により上昇して、脱水後の積層状生単板B2を定盤61の支持面61a上から持ち上げ、モータ68により駆動されるチェーンコンベア62がその積層状生単板B2を定盤61から搬出する。その後、次の積層状生単板B1の脱水のための工程が繰り返される。
【0058】
以上の実施例においても、図22で示したような含水率のばらつきを少なくする効果が得られた。
【0059】
図1,図25,図26等に示した装置は、規制部材5,72並びに規制部材5,72を昇降させる昇降シリンダ6,75や横移動させる横移動シリンダ13,76、さらには引上げシリンダ74を備え、この装置を使用した脱水絞り方法では、規制部材5,72で積層状生単板B1を挟んだ状態で上方から押圧したが、図30に示すように、かかる規制部材5,72並びに規制部材5,72を昇降させる昇降シリンダ6,75や横移動させる横移動シリンダ13,76、引上げシリンダ54を備えない、定盤2と加圧盤3を主体とするシンプルな脱水絞り装置1’(その他の構成は図1,図25,図26等と同じ)を用いて、本発明の方法を実施することもできる。
【0060】
この装置1’を用いると、定盤2上に積層状生単板B1が載置された後、図31に示すように、加圧盤3が加圧シリンダ4により下降して積層状生単板B1を押圧する。その押圧(加圧)により積層状生単板B1の小口面から水分が押し出され、下方に滴り落ちていく最中で、加圧シリンダ4の加圧を解除ないし減圧することにより、積層状生単板B1の小口面に負圧が生じ、その下方に滴り垂下する水分を繊維内部に吸引し、その後、図32に示すように、好ましくは再度の加圧(2次加圧)が行われ、含水率のばらつきを小さくするように補正しつつ積層状生単板B1を脱水する。それが終了すると、加圧盤3は上昇端位置へ復帰し、脱水後の積層状生単板B2が排出されて、次の積層状生単板B1に対し、同様の脱水工程が実施される。
【0061】
以上の実施例では、積層状生単板B1が押圧されることにより水分が押し出され、その水分が滴り落ちている最中に、加圧盤3による加圧を解放ないし軽減するために、図1,図30のタイマ26を用い、例えば予め実施した実験値から、経験則上、加圧開始から時間t1以内であれば、水分が滴り落ちている最中であると予測し、その時間t1のタイムアップの信号をトリガとして加圧シリンダ4の駆動圧を解除ないし減圧していたが、それはタイマ26に限られるのではない。
【0062】
図33に示すように、タイマに代えて、例えば撮像カメラ80を積層状生単板B1の小口集合面(垂直壁)に近接して設置し、そのカメラ80の映像データをコントローラ7(加圧制御部)7へ送り、その画像データから水が垂下するデータ、言い換えば下方に変位する撮像(動画)データが抽出されれば、加圧により押し出された水が下方へ垂下しているものと加圧制御部7が判断し、その垂下の継続中に加圧シリンダ4の駆動圧を解除又は軽減する信号を加圧シリンダ4(厳密には電磁弁)へ供給することができる。なお、積層状生単板B1の側面を滴り落ちる水は、定盤2等に形成された通水路81を経て樋部材82に回収され、その樋部材82を介して排水される。
【0063】
あるいは図34に示すように、積層状生単板B1の小口集合面に対向して光センサ等の反射センサ83を配置し、水が垂下している最中であれば、その水膜、水滴ないしは水流により反射センサ83から出て積層状生単板B1の小口集合面の水膜等により反射して戻る反射信号を加圧制御部7へ送り、加圧制御部7でその反射信号のレベルが所定の閾値以上であれば、水が積層状生単板B1の小口集合面を垂下している最中と判断して、加圧シリンダ4の駆動圧を解除ないし減圧する信号を加圧シリンダ4の電磁弁へ供給することができる。
【0064】
さらに図35に示すように、積層状生単板B1の小口集合面(垂直壁)に近接して、音響センサ84及び温度センサ85の少なくも一方を配置し、水が滴り落ちている状態では、水の滴り落ちる音を拾って音響センサ84の出力レベルが一定値以上となり、また温度センサ85も水の垂下による温度変化ないし所定範囲の温度域の出力が保持され、加圧制御部7では、これら音響センサ84及び温度センサ85の少なくとも一方の出力信号を参照して、加圧シリンダ4の駆動圧を解除ないし減圧することが可能である。
【0065】
また、図36に示すように、積層状生単板B1の小口集合面を伝って滴り落ちる水が、定盤2の通水路81を経て容器86で受けられるようにし、その水を収容する容器86の重量の増加をウエイトセンサ(重量計)87で測定し、水が滴り落ちている状態であれば、その水を収容する容器86の重量が増加していくため、そのウエイトセンサ87の信号が供給される加圧制御部7が、そのウエイトセンサ87の信号に基づき、容器86に収容される水量が増加しているかどうかを判定し、増加しているのであれば、その増加中に加圧シリンダ4に対する駆動圧を解除ないし減圧する信号を出力して、積層状生単板B1が圧縮から原形復帰(膨張)に転じるようにし、その膨張による負圧吸引作用により、前述の生単板の繊維内への水分の吸収が生じるようにすることができる。
【0066】
なお、以上の図33〜図36では、積層状生単板B1の互いに平行に対向する各小口集合面にそれぞれ、水が滴り落ちるのを検出する検出手段(80〜87)が設けられていたが、いずれか一方の小口集合面にのみ対応して、かかる検出手段(80〜87)を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 脱水絞り装置
2,61 定盤
3,51 加圧盤(加圧部材)
4,50 加圧シリンダ
5,72 規制部材
6,75 昇降シリンダ(昇降手段)
7,57 加圧制御部(制御手段)
8,60 フレーム
11 搬入コンベア
12 搬出コンベア
13,76 横移動シリンダ(横移動手段)
14 昇降ベース
20 定盤内シリンダ
25 シーケンスプログラム
26 タイマ
28 圧力センサ
29,52 電磁弁
30,53 油圧ポンプ(加圧源)
54 引上げシリンダ
58 リニヤエンコーダ
62 チェーンコンベア(定盤内コンベア)
73 横移動部材
74 昇降ガイド
77 逃げ溝(スリット)
80 撮像カメラ
83 反射センサ
84 音響センサ
85 温度センサ
86 水収容の容器
87 ウエイトセンサ
B1 積層状生単板
B2 脱水絞り後の積層状生単板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水率で方形に形成された多数枚のベニヤ板用生単板を上下に積層することにより4角柱状の積層状生単板とし、かつ各ベニヤ生板用生単板の繊維方向と交差する端面である小口面を上下方向において揃え、該積層状生単板の互いに対向する2側面が上下方向の小口集合面を形成するように、該積層状生単板を上下の盤部材の間に位置させ、その上下の盤部材を相対的に接近移動させることにより、前記積層状生単板である積層状態の多数枚のベニヤ板用生単板を押圧し、これにより各ベニヤ生単板の水分を各小口面から押し出してその水が各ベニヤ生単板の小口面の集合である上下方向の前記小口集合面を伝って下方に滴り落ちるようにし、
かつこの水の滴り落ちる状態で、該積層状生単板に加えていた押圧力を解除又は緩和することにより、各ベニヤ板用生単板の小口面及び内部の繊維が原形方向へ拡がって負圧状態となるようにし、その負圧により該小口面から内部への吸引作用を生じさせて、相対的に繊維内の含水率が低いベニヤ板用生単板の繊維内へ前記小口集合面を伝って下方に移行する水を吸引させ、これによって前記積層状生単板における各ベニヤ板用生単板間の含水率の差及び任意の1枚のベニヤ板用生単板の領域における含水率の部分差を減少させるように補正しつつ、前記積層状生単板の全体としての含水率を低下させることを特徴とするベニヤ板用生単板の含水率補正脱水方法。
【請求項2】
前記上下の盤部材による前記積層状生単板に対する押圧と押圧解除又は緩和を、その押圧により絞り出される水が上下方向の前記小口集合面を伝って下方に滴り落ちている状態で複数回繰り返す請求項1に記載のベニヤ板用生単板の含水率補正脱水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−139911(P2012−139911A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294034(P2010−294034)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【特許番号】特許第4783863号(P4783863)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000148818)株式会社太平製作所 (37)
【Fターム(参考)】