説明

ベルカップ洗浄システムおよび洗浄方法

スプレーアプリケータ洗浄システムおよび洗浄方法は、交互の噴出により空気および溶剤を空気整流ノズル(60、62、94)に放出する弁および制御手段(12)と、コーティング供給管(34)と、アプリケータ(10)に専用の洗浄ノズル(94)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年8月25日に出願された米国仮特許出願第60/840083号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、概してコーティング材料アプリケータに関し、さらに詳細には、本発明は塗料および他のコーティング材料を塗布するのに使用される回転霧化式アプリケータを洗浄するための洗浄システムおよび洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スプレー式アプリケータは、製造時において対象物に対し様々なタイプのコーティング材料を塗布するのに使用されている。一般に自動車の本体は、スプレー式アプリケータを備えるロボット装置を使用して塗装される。そのロボットは一連の操作および修正を行うようプログラムされ、それによって、自動車本体の部品は最小限のコーティング時間により迅速な手順で適切にかつ正確に覆われるようになる。
【0004】
噴霧式アプリケータはスプレーの塗り過ぎを減らすため、そしてさらに無駄を減らすために使用されている。公知の噴霧式アプリケータにおいては、ベルカップが高速で回転し、コーティング材料例えば塗料がそのベルカップの内部に供給される。遠心力の結果として、塗料または他のコーティング材料は外側に向かって移動し、ベルカップの面から離れ、コーティング材料は細かい霧状に噴霧され、塗装される対象物に指向される。噴霧された霧を電位により帯電させて塗装される物体に下塗りすることにより、コーティング材料がその対象物に引き寄せられ、さらにスプレーの重ね塗りを減少させ、不規則な形をした対象物体上の範囲を改善して無駄を最小限にすることが知られている。
【0005】
対象物に対してコーティング材料を特定の方向に向けて制限するために、アプリケータから指向された気流を使用することが知られている。噴霧されたスプレーを整流する所望のスプレーパターンを提供するために、開口部および流路は様々な直径および長さを有している。開口部は、スプレーガンのエアキャップの一部または回転噴霧器の空気整流(shaping air)マニホールドの一部であってもよい。空気整流開口部はある長さの小さい径を有しているので、開口部および流路は汚れまたは塗料により詰まり易く、そのため気流と所望する空気整流の作用とを変更する可能性がある。開口部は、破片を取除くために小ピックで開口部を探ることにより、手動で洗浄することができる。しかしながら、手動による洗浄は、縁部や径の面を損傷する場合があり、不完全か所望しない空気整流の流動の原因になる。さらに、探りながら手動により洗浄することは時間がかかるので、かなりの期間コーティング作業を停止する必要がある。
【0006】
ベルキャップの内側および外側の両方は周期的に洗浄する必要がある。ある製造手順、例えば自動車の車体の製造手順において、製造ラインに沿って進む、不規則な色が連続する部分があることが知られている。従って、塗装される対象物毎に、先行する対象物に使用された色から、コーティングに使用される色に変更しなければならない場合がある。そのため、コーティング材料の変更がなされる時に、アプリケータの少なくともいくつかの表面を洗浄しなければならない。
【0007】
ベルカップの外側の表面は、塗布されるコーティング材料に直接的に接触しないが、外側の表面は、コーティング室に漂う霧状のコーティング材料により汚されるおそれがある。コーティング材料の残量がベルカップの外側表面に蓄積されると、蓄積した塗料が剥離して後続するコーティングを汚す場合があり、ベルカップの外側の縁に沿って指向される空気整流の流れに干渉する等、アプリケータの作用を不利に変更するおそれがある。洗浄ステーションを設けて、特定の間隔でアプリケータを洗浄ステーションに移動させ、ベルカップの裏側を洗浄することが知られている。専用の洗浄場所に移動させることは時間を消費し、洗浄ステーションの洗浄は洗浄溶剤を浪費するおそれがある。
【0008】
洗浄に必要な時間を最小限にすることが望ましい。製造ラインに沿って移動する部品はほんの数秒の間隔でのみ離間している場合があり、通常の分離時間内にアプリケータを洗浄して準備することが望ましく、それにより、洗浄動作は組立ライン全体の速度を大きく落とすことがなくなる。いくつかのコーティング材料に必要な洗浄剤は、使用するのに非常に高価である場合がある。従って、洗浄するのに必要な洗浄剤の量を最小限にすることが望ましい。洗浄に必要な時間を減少することと必要な洗浄剤の量を削減することとは、大きくコストを下げると共に、コーティング動作の生産性を向上させる可能性がある。しかしながら、迅速にコーティング材料を乾燥させつつ洗浄することは困難であると思われる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、効果的におよび敏速に洗浄するベルカップ洗浄システムおよび方法を提供する。
【0010】
その一態様として、本発明は、アプリケータ本体と、その本体の一端に噴霧ヘッドとを有するコーティング材料アプリケータを提供する。そのヘッドは、底端部、前端部、内側面および外側面を有するベルカップを含む。さらに、内側面および外側面に流体を供給するために、溶剤供給源、圧縮空気供給源および流体放出口がベルカップの内側および外側に設けられている。流体制御システムは、溶剤供給源からの溶剤の流れと、空気供給源からの空気の流れとを、流体放出口まで制御するための弁を含む。コントローラは、ベルカップの内側面とベルカップの外側面とのうち少なくとも一つに対する、制御された空気および溶剤の交互のパルスのために、少なくとも弁のいくつかを開閉する。
【0011】
別の一態様として、本発明は、コーティング材料アプリケータを洗浄するための方法であって、コーティング材料アプリケータはベルカップを含む噴霧ヘッドを有し、ベルカップは、その内側および外側に底端部、前端部、内側面、外側面および流体放出口を有する、方法を提供する。その方法は、溶剤供給源から溶剤の流動を供給する工程と、圧縮空気供給源から空気の流動を供給する工程と、流動制御手段を操作して、制御された空気および溶剤の交互の放出のために、溶剤供給源からの溶剤と空気供給源からの空気との流動を、少なくともいくつかの流体放出口まで制御する工程と、を含む。
【0012】
本発明の利点は、最小限の時間ですることが必要とされる迅速で効果的な工程において、流体ノズル、ベルカップの流路、内面および外面を洗浄する、回転噴霧アプリケータのための洗浄システムおよび方法を提供することである。
【0013】
本発明のもう一つの利点は、塗布工程間において、製造および組立工程を大きく減速させることなく、実行し操作することができるベルカップの洗浄システムおよび方法を提供することである。
【0014】
さらに、本発明のもう一つの利点は、最小限の洗浄剤の量により効果的で敏速に洗浄し、コーティング材料を取除くのが難しいものでも除去することができる回転噴霧アプリケータ洗浄システムおよび方法を提供することである。
【0015】
さらに、本発明のもう一つの利点は、敏速および完全に流路を洗浄するために、強力な洗浄作用を提供する、ベルカップ洗浄システムおよび方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、同様の番号が同様の構成要素を示すのに使用されている、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、図面により、当業者に対して明らかになるであろう。
【0017】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の記述において示された、または図面に示された構成要素の構造の詳細および配置に限定されるものではないと理解すべきである。本発明は、様々な方法により、他の実施形態をとることができると共に、実行または実施することができる。さらに、明細書中使用される表現および用語は説明することを目的としており、限定するものとして見なされるべきではない。本明細書中の「含む」、「備える」およびそれらの別の表現の使用は、後に記載された要素およびそれと同等のものと共に、追加の要素およびそれと同様のものを含むことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による洗浄システムを有する回転噴霧アプリケータを示した立面図である。
【図2】図1に示すアプリケータを示した端面図である。
【図3】図1および図2に示すアプリケータを示した部分拡大断面図であり、本発明による流体制御システムを図的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面、特に図1を参照してより具体的に示すように、10は本発明によるベルカップの洗浄において協動する流体制御システム12(図3参照)を有する回転噴霧アプリケータを示している。当業者であれば、示された典型的なアプリケータ10を、製造工程において一連の対象物を適切にかつ着実に塗装する、制御された一連の操作を実行するロボット(図示しない)に取付けて操作することができることを、容易に理解するであろう。例えば、そのようなアプリケータは、自動車の車体を塗装するのに使用されている。しかしながら、この型のアプリケータは、塗料および他のコーティング材料を用いて、様々な異なる対象物を塗装することに使用することも可能である。さらに、本発明は、アプリケータの異なる方式および型に対してもより適切に動作し、示されたアプリケータ10はそのような装置の単なる一例に過ぎないと理解されるべきである。例えば、本発明は手動式のまたはロボット以外の操作方法によるアプリケータに使用することができる。
【0020】
アプリケータ10は主本体部14を備えており、主本体部14はその前端部に噴霧ヘッド16を有している。噴霧ヘッド16は、コーティング材料の塗布において他と協動する、回転式ベルカップ18および空気整流システム20(図2参照)を備えており、さらに詳細については後述するものとする。さらに、アプリケータ10はアプリケータ10の操作のために連結アーム22を備えており、連結アーム22により、様々な電気式、空気式および/または他の方式によるシステムおよび供給装置が、ロボット(図示しない)に、またはロボットから接続されている。様々なシステムがアプリケータ10に接続していることを、24により概略的に示される電線および導管により示す。
【0021】
図3を参照してより具体的に示すように、回転式ベルカップ18は、空気タービン32の端部30に配置されている。空気タービン32は、圧縮空気により高速に回転するよう駆動され、それにより端部30を介してベルカップ18を高速に回転させる。コーティング材料供給管34は、空気タービン32を通じて伸びており、ベルカップ18において放出口36を有し、それにより、コーティング材料例えば塗料が供給装置(図示しない)から供給され、ベルカップ18に放出される。分散器本体、飛散プレート、または他の適した構造または構造物38および設備は、供給管の放出口36に対向または付随してまたは他の構成でベルカップ18に設けられる。これらの設備は供給管34からコーティング材料を受取るため、そしてベルカップ18において均一にコーティング材料を分散するために用いられる。空気タービン32、供給管34の構造および操作並びにベルカップ18へのコーティング材料の供給および処理を含む、アプリケータ10の一般的な構成および操作は当業者には公知であるので、本明細書ではそのことについてさらに詳細には説明しない。
【0022】
典型的な実施形態において示されるベルカップ18は、軸線回りに回転可能なカップまたは椀状の本体である。ベルカップ18は、内側面40と外側面42とを有している。典型的なベルカップ18のカップ状の形体は相対的に狭い底端部44と、前方縁部48において広がっている前端部46を備えている。しかしながら、ベルカップは他の形状、例えば概ね円筒形の形状であってもよく、本発明と組み合わせることにより有利に使用されてもよい。内側面40は概ね滑らかであり、底端部44から前方縁部48まで外側に広がっている。外側面42もまた滑らかであり、底端部44から外側に広がっている。
【0023】
空気整流システム20は、外側面42の底端部44の近くに指向された環状に並ぶ空気整流内側ノズル60と、前方に向かって前端部46の付近に指向された環状に並ぶ空気整流外側ノズル62とを含む。内側ノズル60は、ベルカップ18の後方、底端部44の近くに配置され、そして内側ノズル60は、内側流体流64の最初のパターンが底端部44の後方からベルカップ18に向けられるよう、指向されている。示された典型的な装置において、内側ノズル60は等間隔を開けた概ね円形のパターンにより、底端部44の後方であって少し外側に設けられている。内側ノズル60から放出された内側流体流64は、外側面42に近づき、前端部46および前方縁部48に向かって外側面42に沿って進むよう外側面42に張り付く。内側流体流64が進む際、それぞれの流れが張り付いて表面を進み、前方縁部48において外側面42を離れる。
【0024】
外側ノズル62は、ベルカップ18の後方に、そしてそこから半径方向外向きに配置されている。外側ノズル62は、内側流体流64が前方縁部48から分離する部分に対して外側流体流66のパターンが前方に指向されるよう向けられている。
【0025】
流体制御システム12は、ベルカップ18の内側および外側への洗浄液の流動を制御するための流量制御手段である。流体制御システム12は、空気供給部80、溶剤供給部82およびコントローラ84を含む。空気供給部80、溶剤供給部82およびコントローラ84は、内側空気整流弁セット86、外側空気整流弁セット88、コーティング材料供給弁セット90および専用のノズル洗浄弁セット92に接続している。一つ以上の洗浄ノズル94がベルカップ18の後方に配置されており、洗浄液スプレー96を外側面42に指向している。典型的な実施形態において、スプレー96は、前端部46よりも底端部44に近い部分に向けられている。しかしながら、当業者は、スプレー96を外側面42に沿った他の位置に向けることができ、さらに二つ以上の洗浄ノズル94を外側面42の異なった場所に向けて使用することができることを理解するであろう。
【0026】
空気供給部80は圧縮空気の供給源であり、その圧縮空気の供給源は空気タービン32を駆動するのに使用される圧縮空気と同じ供給源であってもよく、および/またはノズル60、62に供給される空気整流のための圧縮空気の供給源であってもよい。あるいは、空気供給部80は異なった圧縮空気の供給源であってもよい。空気供給部80は、内側空気整流弁セット86において、導管100および空気供給弁102を通じて内側ノズル60に連通している。空気供給部80は、外側空気整流弁セット88において、導管104および空気供給弁106を通じて外側ノズル62に連通している。さらに、空気供給部80は、コーティング材料供給弁セット90において、空気供給弁108を介してコーティング材料供給管34に連通している。その上、空気供給部80は、ノズル洗浄弁セット92において、空気供給弁112を介して導管110を通じて洗浄ノズル94に連通している。
【0027】
溶剤供給部82は、コーティング材料が接触するアプリケータ10の表面からコーティング材料を希釈して除去するために、アプリケータ10により塗布されるコーティング材料に適している溶剤の供給源である。溶剤供給部82は、内側空気整流弁セット86において、導管100および溶剤供給弁120を通じて内側流体ノズル60に連通している。溶剤供給部82は、外側空気整流弁セット88において、導管104および溶剤供給弁122を通じて外側流体ノズル62に連通している。さらに、溶剤供給部82は、コーティング材料供給弁セット90において、溶剤供給弁124を介してコーティング材料供給管34に連通している。その上、溶剤供給部82は、ノズル洗浄弁セット92において、溶剤弁126を介して導管110を通じて洗浄ノズル94に連通している。
【0028】
空気供給弁102、106、108および112並びに溶剤供給弁120、122、124および126のそれぞれは、それらからの供給物から、内側ノズル60、外側ノズル62、管放出口36および洗浄ノズル94まで、空気と溶剤の流量のそれぞれを制御する。流体、空気または溶剤がその供給源から下流のノズル60、62、94および放出口36まで流れるのを可能にするか妨げるために、コントローラ84からの操作信号により、各弁を他の弁とは無関係に開閉することができる。コントローラ84は、空気供給弁102、106、108および112並びに溶剤供給弁120、122、124および126を選択的に開閉するための、論理ベースのアナログまたはデジタルのコントローラ若しくは単純な電気制御であっても構わない。従って、コントローラ84は、信号線130、132、134、136、138、140、142および144を介して、空気供給弁102、106、108および112並びに溶剤供給弁120、122、124および126のそれぞれに接続している。当業者は、コントローラ84から空気供給弁102、106、108および112並びに溶剤供給弁120、122、124および126まで送られる信号が、電気信号、気体や流体に合わせた流体信号または他の圧力信号あるいは同種の形式であってもよく、信号線130、132、134、136、138、140、142および144は、電気的または他の信号を伝達するワイヤーのような信号線、流体の管路または他の信号を送るのに適したものでもよいことを、容易に理解するであろう。さらに、コントローラ84に接続している送信機から、弁が付設されている受信機まで、無線通信が使用されてもよい。
【0029】
公知の方法では、コーティング材料を塗布する間、ベルカップ18はタービン32の駆動により高速で回転している。コーティング材料、例えば塗料は、供給管34を介してその供給源(図示しない)からベルカップの内側まで供給され、内側面40に供給される。コーティング材料に作用している遠心力によって、そのコーティング材料が内側面40に沿って前方縁部48に向かって移動するようになっている。コーティング材料が、前方縁部48から前進して、コーティング材料はベルカップ18に対して前方および外側に向けて加速される。
【0030】
空気整流システム20は、前方縁部48から放出されるコーティング材料のスプレーパターンを制限するよう操作され、それによって塗装される対象物に塗布されるコーティング材料の転送効率を向上させる。当業者に知られているように、圧縮空気は導管100および導管104を介して、内側ノズル60および外側ノズル62のそれぞれに供給される。内側ノズル60からの空気から成る流体流64は、外側面42に近づきそして張り付いて、外側面42に沿って前方縁部48の方に進む。それによって内側の流体流64がコーティング材料に対して直ちに作用し、コーティング材料が前方縁部48を離れるようになる。スプレーパターンは直ちに制限されて制御される。空気流64は、スプレーパターンのさらに外側への広がりに対する障壁または抵抗をベルカップ18の前方に設ける。さらに圧縮空気は外側ノズル62に供給され、外側ノズル62からベルカップ18の前端部46に指向された空気から成る外側流体流66は、塗装される対象物に向かって進むコーティング材料のパターンを制御、制限および整流するために内側の空気流64からの制御を補強する。
【0031】
必要に応じて、本発明に従って洗浄が実施される。洗浄はビルドアップを最小にするために定期的に実行されてもよく、あるいは、コーティング材料が変更された場合に、前のコーティング材料からの残留物が新しいコーティング材料に混入するのを防止するために、洗浄が実行されてもよい。洗浄操作を実行するために、供給管34へのコーティング材料の供給が終了する。空気供給部80および溶剤供給部82からの空気および溶剤は、弁セット86、88、90および92を介して、洗浄目的のためにそれぞれ供給される。後述する洗浄工程が同時にまたは連続して実行されてもよく、外側面42の洗浄は必要に応じて内側面40の洗浄より少ない頻度で実行されてもよい。
【0032】
内側面40を洗浄するために、弁108および弁124は、コントローラ84からの制御を介して操作され、空気および溶剤を交互に放出する。空気および溶剤は混合されないが、噴出またはパルスによりかわるがわる供給される。フィルムコーティング材料の希釈は溶剤によって行われ、希釈された材料は、後続の空気の噴射によって押し退けられる。空気および溶剤の付加的な放出が、所望の洗浄を行うのに続けられてもよい。本明細書においては「空気/溶剤の断続噴射(air/solvent chop)」と称される、このような空気および溶剤のパルスは、供給管34において振動を起こす場合がある。通常「ハンマリング(hammering)」と呼ばれ、これらの振動は、コーティング材料の硬化したまたは厚くなった堆積物を取除くのに役立ち、それによって、供給管34の流路、分散器本体38および内側面40の表面を洗浄する強力な洗浄動作を行う。
【0033】
同様に、内側空気整流弁セット86の空気供給弁102および溶剤供給弁120は、内側整流ノズル60への導管100を通じて、空気と溶剤の交互の噴出またはパルスを供給するために、コントローラ84からの信号を介して、空気/溶剤の断続噴射においてパルジングする。空気および溶剤の交互の噴出は内側整流ノズル60を洗浄する。内側整流ノズル60の周囲および内部においては、コーティング材料が蓄積して、整流する気流に干渉する可能性がある。空気/溶剤の断続噴射のハンマリング効果は、内側整流ノズル60に蓄積する可能性があるコーティング材料を取除く。その上、内側整流ノズル60から放出される空気と溶剤は、外側面42に付着する可能性があるコーティング材料を洗浄するために、外側面42に張り付いて進む。
【0034】
外側流体ノズル62も同様の方法により洗浄される。弁106および弁122は、空気/溶剤の断続噴射において空気および溶剤の連続した交互の噴出またはパルスを供給するために、コントローラ84の制御により開閉される。空気および溶剤の交互の噴出は外側流体ノズル62を洗浄する。外側流体ノズル62の周囲や内部においては、コーティング材料が蓄積して、整流する気流に干渉する可能性がある。空気/溶剤の断続噴射のハンマリング効果は、外側流体ノズル62に蓄積する可能性があるコーティング材料を取除く。その上、外側流体ノズル62から放出された空気および溶剤は、前方縁部48近くの前端部46に張り付いて洗浄し、それにより、前方縁部48から流れ去り前方縁部48の付近にある流体流動は、コーティング材料の蓄積物によって逆に影響を受けないようになる。
【0035】
内側ノズル60および外側ノズル62に空気および溶剤を供給することによって、ノズルの開放と洗浄状態とを維持し、それによりコーティング作業の間、整流空気の所望のパターンが放出されるようになる。望ましいコーティングパターンの制御は、流体ノズル60、62および前方縁部48を洗浄し堆積物のない状態に保つことによって、維持される。空気/溶剤の断続噴射による効果的な洗浄により、最小限の時間のみを必要して実施することが可能である。外側面42がさらに洗浄を必要とする場合、空気および溶剤のスプレー96を追加して導管110を介して専用の洗浄ノズル94から放出してもよい。弁112および弁126は、空気/溶剤の断続噴射において空気および溶剤の連続した交互の噴出を供給するために、コントローラ84の制御により開閉される。ある一つの有利な装置において、洗浄ノズル94は底端部44の近くに配置され、外側面42に扇状のスプレーを供給する。しかしながら、一つ以上のノズルが設けられてもよく、単数または複数のノズルが、例えば前端部46により近い外側面42の他の位置において、空気と溶剤とを供給するために配置されてもよいことを理解すべきである。さらに、洗浄ノズルからの他の放出パターンが使用されてもよい。示された特定の装置は単に例を示したに過ぎない。
【0036】
一つの空気/溶剤の断続噴射の周期間における空気および溶剤の時間は、最適な洗浄をするために洗浄工程において使用される周期の数と同様に、変更することが可能である。一周期における「空気放出中」の割当時間は、多くの場合その周期における「溶剤放出中」の割当時間よりも短い時間であることが予想される。しかし、その「空気放出中」の割当時間は等しい時間であっても良く、また同様に「空気放出中」の割当時間はより長い時間であってもよい。例えば、いくつかの塗料では、一周期における「溶剤放出中」の割当時間は、約1.7秒間続くことができ、そして、その周期における「空気放出中」の割当期間は約0.4秒間続くことができると考えられている。そして、その3または4つ周期が使用される。さらに、いくつかの状況においては、その周期における空気および溶剤の重複時間が使用される場合も考えられる。しかしながら、空気/溶剤の断続噴射が洗浄する周期の間において、その周期の主たる時間は空気または溶剤のどちらかであろう。空気/溶剤の断続噴射の周期のハンマリング効果は、アプリケータの近くに弁セット86、88、90、92を配置することにより最適化されてよく、それによってそのハンマリング効果は、洗浄される流路または開口部に達する前に、大きく弱められることがない。洗浄する動作を強化するために、弁セットをアプリケータに内蔵することは有利となるだろう。
【0037】
単一の周期および空気/溶剤の断続噴射は、開口部を通してまたは表面を離れてコーティング材料を押しのけるために、空気の噴出から始まってもよく、あるいは、その周期は即時の希釈と洗浄のために溶剤の噴出から始まり、浄化するために空気噴射が後に続いてもよいことを理解すべきである。洗浄工程の一部として、流体制御システム12は、空気および溶剤の混合物を、管34、分散器本体38および外側面42のより緩やかな洗浄のために供給するよう操作されてもよい。
【0038】
前述の実施形態の変形および変更は、本発明の範囲内である。本明細書に開示され明示された発明は、本文および/または図面により言及または明らかにされた、二つ以上の独立した特徴の他の全ての組合せに及ぶものと理解される。これら異なる組合せの全ては、さまざまな本発明の他の態様を構成する。本発明において示された実施形態は、本発明を実施するうえで最もよい方法を説明し、他の当業者は本発明を利用することができるであろう。特許請求の範囲は、先行技術より可能になる範囲まで他の実施形態を含むものと解釈されるべきである。
【0039】
本発明のさまざまな特徴を特許請求の範囲に記述している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケータ本体と、
前記アプリケータ本体の一端にある噴霧ヘッドであって、底端部、前端部、内側面および外側面を有するベルカップを含む、噴霧ヘッドと、
溶剤供給源と、
圧縮空気供給源と、
前記内側面および前記外側面に流体を供給する、前記ベルカップの内側および外側にある流体放出口と、
前記溶剤供給源からの溶剤と前記空気供給源からの空気との流動を、前記流体放出口まで制御する弁と、前記ベルカップの前記内側面と前記ベルカップの外側面とのうち少なくとも一つに対する、制御された空気および溶剤の交互パルスのために、前記弁の少なくともいくつかを開閉するコントローラと、を含む流体制御システムと、
を備えた、コーティング材料アプリケータ。
【請求項2】
前記流体制御システムは、前記制御された空気および溶剤の交互パルスを、前記内側面に供給するよう構成されている、請求項1に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項3】
前記流体制御システムは、前記制御された空気および溶剤の交互パルスを、前記外側面に供給するよう構成されている、請求項1に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項4】
前記ベルカップの前記底端部より前記ベルカップの前端部に近い位置にある、前記ベルカップの外側面に流体を指向する洗浄ノズルを含み、前記制御システムは、前記制御された空気および溶剤の交互パルスを前記洗浄ノズルに供給するよう構成されている、請求項3に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項5】
前記ベルカップの前記前端部より前記ベルカップの底端部に近い位置にある、前記ベルカップの前記外側面に流体を指向する洗浄ノズルを含み、前記制御システムは、前記制御された空気および溶剤の交互パルスを前記洗浄ノズルに供給するよう構成されている、請求項3に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項6】
前記外側面に沿って流体を指向する複数の空気整流ノズルを有する空気整流システムを含み、前記流体制御システムは、前記空気整流ノズルのいくつかのうちの少なくとも一つを通じて、制御された空気および溶剤の交互パルスを供給するよう構成されている、請求項1に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項7】
前記空気整流システムは、環状に並ぶ内側ノズルと環状に並ぶ外側ノズルとを含み、前記流体制御システムは、前記内側ノズルの少なくともいくつかと前記外側ノズルの少なくともいくつかとを通じて制御された空気および溶剤の交互パルスを供給するよう構成されている、請求項6に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項8】
コーティング材料供給管を含み、該コーティング材料供給管を通じて前記アプリケータにより塗布されるコーティング材料が前記ベルカップの内側面に供給され、前記流体制御システムは、前記コーティング材料供給管を通じて、制御された空気および溶剤の交互パルスを供給するよう構成されている、請求項7に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項9】
前記ベルカップの底端部より前記ベルカップの前記前端部に近い位置にある、前記ベルカップの前記外側面に流体を指向する洗浄ノズルを含み、前記流体制御システムは、前記制御された空気および溶剤の交互パルスを前記洗浄ノズルに供給するよう構成されている、請求項8に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項10】
前記ベルカップの前端部より前記ベルカップの前記底端部に近い位置にある、前記ベルカップの前記外側面に流体を指向する洗浄ノズルを含み、前記流体制御システムは、前記制御された空気および溶剤の交互パルスを前記洗浄ノズルに供給するよう構成されている、請求項8に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項11】
コーティング材料供給管を含み、該コーティング材料供給管を通じて前記アプリケータにより塗布されるコーティング材料が前記ベルカップの内側面に供給され、前記流体制御システムは、前記コーティング材料供給管を通じて、制御された空気および溶剤の交互パルスを供給するよう構成されている、請求項1に記載のコーティング材料アプリケータ。
【請求項12】
ベルカップを含む噴霧ヘッドを有するコーティング材料アプリケータの洗浄方法であって、前記ベルカップは、該ベルカップの内側および外側に、底端部、前端部、内側面、外側面および流体放出口を有し、
溶剤の供給源から溶剤の流動を供給する工程と、
圧縮空気の供給源から空気の流動を供給する工程と、
流動制御手段を操作して、前記ベルカップの前記内側面および前記ベルカップの前記外側面のうち少なくとも一方に対する制御された空気および溶剤の交互の放出のために、前記流体放出口の少なくともいくつかに対して前記溶剤供給源からの溶剤と前記圧縮空気供給源からの空気との流動を制御する工程と、を備える洗浄方法。
【請求項13】
前記流動制御手段を操作して、前記内側面に制御された空気および溶剤の交互の放出を供給する工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項14】
前記流動制御手段を操作して、前記外側面に制御された空気および溶剤の交互の放出を供給する工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項15】
専用の洗浄ノズルを通じて、前記ベルカップの底端部より前記ベルカップの前端部に近い位置に、前記ベルカップの外側面に流体を指向する工程と、前記洗浄ノズルに、制御された空気および溶剤の交互の放出を供給する工程と、を含む請求項14に記載の洗浄方法。
【請求項16】
専用の洗浄ノズルを通じて、前記ベルカップの前端部より前記ベルカップの底端部に近い位置に、前記ベルカップの外側面に流体を指向する工程と、前記洗浄ノズルに、制御された空気および溶剤の交互の放出を供給する工程と、を含む請求項14に記載の洗浄方法。
【請求項17】
前記流動制御手段を操作して、制御された空気および溶剤の交互の放出を、前記アプリケータの空気整流ノズルのいくつかに供給する、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項18】
前記ベルカップの前記内側面にコーティングを指向する供給管を通じて、制御された空気および溶剤の交互の放出を供給する工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項19】
後続する放出を始める前に先行する放出を終了することにより、個別の独立した放出として、制御された空気および溶剤の交互の放出を供給する工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項20】
直前の放出を完全に終了させる前に、後続する放出を開始することによって、制御された空気および溶剤の交互の放出を重複させる工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項21】
前記空気の放出より長い時間で前記溶剤の放出を供給する工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項22】
複数の周期を提供する工程であって、それぞれの周期は溶剤の放出と空気の放出とを含む、請求項12に記載の洗浄方法。
【請求項23】
さらに、空気および溶剤を同時に放出することにより、前記流体放出口の少なくともいくつかに溶剤および空気の混合物を供給するよう、前記流動制御手段を操作する工程を含む、請求項12に記載の洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−501339(P2010−501339A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525743(P2009−525743)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/076460
【国際公開番号】WO2008/024804
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】