説明

ベルト搬送装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】無端ベルトの蛇行を補正する際の精密なアライメント調整能と、ベルト交換時などの大幅なアライメント調整能とを簡単且つコンパクトな構成で両立させたベルト搬送装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】アライメント調整機構48に用いられるカム53は、単位角度当たりの変位量が0.5mm/45°である45°〜225°の範囲(第1の領域)と、単位角度当たりの変位量が2mm/45°である0°〜45°と225°〜270°の範囲(第2の領域)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトや中間転写ベルトのような無端状ベルトを回転駆動させるベルト搬送装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の画像形成装置が提案されているが、その中に所定方向に回動される無端状の搬送ベルトと、この搬送ベルトに沿って設けられた画像形成部とを備え、搬送ベルトにより搬送されてくる記録媒体上に画像形成部で形成されたトナー像を転写する方式の画像形成装置や、複数の画像形成部により無端状の中間転写ベルト上にトナー像を順次重ね合わせた後、記録媒体上に一度に転写する中間転写方式の画像形成装置がある。
【0003】
上述したような無端状の搬送ベルトを用いた画像形成装置においては、装置本体の歪み等に起因する駆動ローラ或いはテンションローラ等の懸架ローラの整列不良、いわゆるアライメントずれによって搬送ベルトの蛇行や片寄りが発生する場合があった。搬送ベルトの蛇行や片寄りが発生すると、搬送される用紙位置が左右に寄り、転写画像の位置ずれが発生し易くなる。
【0004】
また、複数の画像形成部によって一つの画像を形成するタンデム式カラー画像形成装置の場合、搬送ベルトの蛇行や片寄りにより各画像形成部で形成される各色の画像の位置合わせ具合が悪化し、各色のトナー像の色ずれが発生し易くなる。なお、中間転写方式の画像形成装置においても、中間転写ベルトの蛇行により同様の問題が生じる。
【0005】
従来のベルト搬送装置においては、センサによりベルトの蛇行や片寄りを検出し、蛇行量或いは片寄り量に応じて1つ以上の懸架ローラのアライメント(ベルト表裏方向の角度)を調整することにより、蛇行や片寄りを自動的に補正する方法が行われていた。そして、懸架ローラのアライメントを調整する方法としては、懸架ローラの回転軸に当接する偏心カムの回転角を変更する方法が一般的である。
【0006】
しかし、偏心カムを用いて懸架ローラのアライメントを調整する場合、カムの回転角の変化量に対するカム径の変化量は小径部及び大径部近傍で小さく、小径部から大径部までの領域で大きくなるため、アライメント調整量(ベルト補正量)が可動範囲の中央部で大きく、周辺部で小さくなる。そのため、偏心カムの位置によってアライメント調整のためのカムの回転角を変化させる必要が生じ、補正精度を低下させる原因となっていた。
【0007】
そこで、偏心カムを用いてアライメント調整を精度良く行う方法が提案されており、特許文献1には、カムを回転させるモータの駆動量を、カムの単位角度当たりの変位量に合わせて変更する方法が開示されている。また、特許文献2には、回転角に対してベルトの蛇行速度を一定に増減させる形状のカムを用いて、カムの回転角と蛇行補正量とを常に一致させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−105837号公報
【特許文献2】特許第3082452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、カムを回転させるモータの駆動量を精密に制御する必要があるため、制御機構が複雑になるという問題点があった。また、特許文献2の方法では、カムの回転角に対する蛇行補正量が常に一定であるため、アライメント調整を精度良く行うためには単位角度当たりの変位量を小さくする必要がある。一方、単位角度当たりの変位量が小さいカムを使用すると、ベルトの交換時などアライメントを大幅に変化させる際には大型のカムを用いて回転量を増やす必要があり、調整に時間を要するとともに装置の小型化にも不利であった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、無端ベルトの蛇行を補正する際の精密なアライメント調整能と、ベルト交換時などの大幅なアライメント調整能とを簡単且つコンパクトな構成で両立させたベルト搬送装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、無端ベルトと、該無端ベルトに所定の張力を付与するテンションローラと前記無端ベルトに回転駆動力を付与する駆動ローラとを含む複数の懸架ローラと、前記無端ベルトの蛇行を検知する蛇行検知手段と、該蛇行検知手段の検知結果に基づいて1つ以上の前記懸架ローラの傾きを調整することにより前記無端ベルトの蛇行を補正するアライメント調整機構と、を備えたベルト搬送装置において、前記アライメント調整機構は、前記懸架ローラの一端をベルト表裏方向に揺動させるカムと、該カムを回転させるモータとを有し、前記カムの形状は、単位角度当たりの変位量が一定である第1の領域と、該第1の領域の両側に隣接する第1の領域よりも単位角度当たりの変位量が大きい第2の領域とを有することを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置において、前記第2の領域は、単位角度当たりの変位量が一定であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体を搬送する搬送ベルトであることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体に転写するためのトナー像が順次積層される中間転写ベルトであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の構成によれば、懸架ローラのアライメント調整幅を簡易な構成で2段階に切換可能となる。例えば、通常の蛇行補正を行う場合はカムの第1の領域を使うことで、無端ベルトの蛇行を高精度に補正することができる。また、懸架ローラのアライメントを大幅に変更したい場合はカムの第2の領域を使うことで、カムの回転量を増加させたり必要以上に大径のカムを用いたりすることなく迅速な変更が可能となる。
【0016】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成のベルト搬送装置において、第2の領域における単位角度当たりの変位量を一定とすることにより、第2の領域を用いる場合にもカムの回転角度に対するアライメント調整量が一定となるため、調整精度が向上するとともにモータの回転制御も簡素化できる。
【0017】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成のベルト搬送装置を搭載することにより、簡易な構成でベルト左右でのレジストずれを効果的に抑制できるコンパクトな画像形成装置となる。また、記録媒体に転写するためのトナー像が順次積層される中間転写ベルトを蛇行補正することにより、各色のトナー像を中間転写ベルト上に順次積層してカラー画像を形成した後、転写紙上に一度に転写する方式の画像形成装置において高い色ずれ防止効果を得ることができ、さらにベルト左右における画像歪み防止効果も得ることができる。
【0018】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1又は第2の構成のベルト搬送装置を搭載することにより、簡易な構成でベルト左右でのレジストずれを効果的に抑制できるコンパクトな画像形成装置となる。また、記録媒体を搬送するための搬送ベルトを蛇行補正することにより、画像形成部で形成されるトナー像を記録媒体に転写する際のレジストずれを防止することができ、特にカラー画像形成装置においては各色のトナー像の色重ね精度を確保して色ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のベルト搬送装置を備えた第1実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図
【図2】本発明のベルト搬送装置の外観斜視図
【図3】本発明のベルト搬送装置におけるテンションローラ回転軸周辺の構成を示す斜視図
【図4】本発明のベルト搬送装置におけるテンションローラ回転軸周辺の構成を示す正面図
【図5】テンションローラのアライメント調整機構を示す斜視図
【図6】テンションローラのアライメント調整機構を示す正面図
【図7】アライメント調整機構に用いられるカムの形状の一例を示す正面図
【図8】図7に示したカムの回転角度と中心からの距離との関係を示すグラフ
【図9】本発明のベルト搬送装置を備えた第2実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のベルト搬送装置を備えた第1実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。本実施形態では、タンデム型カラー画像形成装置の中間転写ベルトのベルト搬送装置について説明する。
【0021】
図1の画像形成装置100は以下のような構成になっている。画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0022】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する上記中間転写ベルト8上に順次転写された後、転写ローラ9において転写紙P上に一度に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0023】
トナー像が転写される転写紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ12bを介して転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。
【0024】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像ユニット3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング部5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0025】
ユーザにより画像形成開始が入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像ユニット3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像ユニット3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0026】
そして、中間転写ベルト8に所定の転写電圧で電界が付与された後、中間転写ローラ6a〜6dにより感光体ドラム1a〜1d上のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング部5a〜5dにより除去される。
【0027】
中間転写ベルト8は、上流側の駆動ローラ10と下流側のテンションローラ11とに掛け渡されており、駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ10の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラ12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた転写ローラ9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0028】
また、転写ローラ9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのクリーニングブレード19が配置され、クリーニングブレード19のさらに下流側には中間転写ベルト8の蛇行を検知する蛇行検知センサ21が配置されている。蛇行検知センサ21は、発光部及び受光部(図示せず)が設けられたコ字型の検知部で中間転写ベルト8のエッジ部を表裏から挟むように配置されている。そして、発光部から受光部までの光路をエッジ部が遮光する位置によってエッジ部の位置を検知し、中間転写ベルト8の蛇行方向及び蛇行量を検知可能となっている。
【0029】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラ対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ15によって排出トレイ17に排出される。
【0030】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラ15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラ15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で転写ローラ9に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が転写ローラ9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0031】
図2は、図1に示した画像形成装置のベルト搬送装置の外観斜視図である。図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。なお、図2ではベルト搬送装置を図1の下方向(感光体ドラム1a〜1d側)から見た状態を示している。ベルト搬送装置30は、2枚の支持フレーム31、32の間に駆動ローラ10及びテンションローラ11を含む複数の懸架ローラが支持されており、無端状の中間転写ベルト8が張架されている。また、装置前側の支持フレーム31に沿って側板フレーム33が配置されており、側板フレーム33には駆動ローラ10に駆動力を伝達するベルト駆動モータ35と、テンションローラ11のベルト表裏方向の傾きを調整するためのステッピングモータ37が付設されている。
【0032】
図3及び図4は、図2におけるテンションローラの回転軸周辺の拡大斜視図及び正面図である。支持フレーム31には支点40を中心として揺動可能なアーム部材41が取り付けられている。アーム部材41には水平方向に延びるレール部41aが設けられており、レール部41aにはテンションローラ11の回転軸11aを支持する摺動軸受け43が摺動可能に保持されている。アーム部材41の揺動端側には水平方向に突出する折曲部41bが形成されており、折曲部41bには係合片41cと係合穴41dが形成されている。
【0033】
係合片41cと摺動軸受け43の係合部43aとに第1引っ張りバネ45が掛け渡されており、摺動軸受け43は第1引っ張りバネ45により矢印A方向に付勢されている。また、係合穴41dと支持フレーム31の係合用突起31aとに第2引っ張りバネ47が掛け渡されており、摺動軸受け43はアーム部材41と共に第2引っ張りバネ47により矢印B方向に付勢されている。
【0034】
図5及び図6は、テンションローラのアライメント調整機構を内側から見た拡大斜視図及び正面図である。アライメント調整機構48は、モータ取付板49に固定されたステッピングモータ37と、ステッピングモータ37の駆動出力軸37aに固定されたピニオンギヤ50と、ピニオンギヤ50に噛み合うギヤ歯が外周面の一部を除いて形成された大径ギヤ51と、大径ギヤ51の回転軸51aに固定されたカム53とで構成されている。そして、カム53の外周面がアーム部材41の折曲部41b(図3参照)に下側から接触するように側面フレーム33(図2参照)に固定されている。
【0035】
蛇行検知センサ21により中間転写ベルト8の蛇行が検知されると、検知信号が制御部(図示せず)に送信され、制御部において中間転写ベルト8の蛇行方向及び蛇行量が算出される。そして、制御部からステッピングモータ37に制御信号が送信され、ピニオンギヤ50及び大径ギヤ51を介してカム53を所定方向に所定量だけ回転する。これにより、カム53の回転中心(回転軸51a)から外周面までの距離が変化するため、アーム部材41が支点40を中心に上又は下方向に揺動し、アーム部材41に固定された摺動軸受け43も上又は下方向に所定角度だけ揺動する。
【0036】
従って、テンションローラ11の回転軸11aの一端が摺動軸受け43と共に揺動するため、テンションローラ11に張架された中間転写ベルト8を所定角度傾けて蛇行を補正することができる。また、カム53の駆動源として駆動パルス数により回転量を正確に制御可能なステッピングモータ37を用いることにより、高精度なアライメント調整が容易に且つ低コストで可能となる。
【0037】
例えば、中間転写ベルト8が装置前側(図2の手前側)に蛇行している場合、カム53を図6の時計回りに回転させてテンションローラ11の前側端部を所定量上昇(図1では下降)させてやる。これにより、中間転写ベルト8の傾斜は手前から奥に向かって下り方向(図1では上り方向)となるため、中間転写ベルト8は回動に伴い徐々に奥側にずれ、手前方向への蛇行が補正される。また、中間転写ベルト8が装置奥側に蛇行している場合は、カム53を逆方向(図6の反時計回り)に回転させてテンションローラ11の前側端部を所定量下降(図1では上昇)させ、中間転写ベルト8の傾斜を手前から奥に向かって上り方向(図1では下り方向)とすれば良い。
【0038】
図7は、アライメント調整機構に用いられるカムの形状の一例を示す正面図である。図7に示すように、ギヤ歯の始点55がピニオンギヤ50(図6参照)と噛み合う位置にあるときのカム53の回転角度を0°とする。このとき、アーム部材41の折曲部41b(図3参照)に接触するカム53の中心から外周面までの距離は14.5mmである。
【0039】
そして、図7の状態からカム53を時計回りに45°回転させたとき、カム53の中心から外周面までの距離は12.5mmとなる。同様に、90°、135°、180°、225°、270°回転させたときは、それぞれ12mm、11.5mm、11mm、10.5mm、8.5mmとなる。
【0040】
図8は、図7に示したカムの回転角度と中心からの距離との関係を示すグラフである。図8に示すように、カム53は所定角度(45°)回転させたときの中心から外周面までの距離の変化量が、0°〜45°と225°〜270°の範囲で2mm/45°、45°〜225°の範囲で0.5mm/45°となっている。即ち、カム53は単位角度当たりの変位量が一定である45°〜225°の範囲(以下、第1の領域という)と、単位角度当たりの変位量が第1の領域よりも大きい0°〜45°と225°〜270°の範囲(以下、第2の領域という)を有している。
【0041】
この構成により、テンションローラ11のアライメント調整幅を2段階に切換可能となる。例えば、通常の蛇行補正を行う場合はカム53の45°〜225°の範囲を使うことで、中間転写ベルト8の蛇行を高精度に補正することができる。また、ベルト位置が蛇行検知センサ21の検出範囲外或いは検出範囲の端にあり、テンションローラ11のアライメントを大幅に変化させたい場合は、0°〜45°または225°〜270°の範囲を使うことで、カムの回転量を増加させたり必要以上に大径のカムを用いたりすることなくベルト位置を検出範囲の中央まで迅速に戻すことができる。
【0042】
カム53の回転位置は、ピニオンギヤ50と大径ギヤ51のギヤ歯の始点55とが噛み合う位置(デフォルト位置)からのステッピングモータ37の駆動量に基づいて算出すれば良い。或いは、発光部及び受光部から成る検知部を有するPI(フォトインタラプタ)センサを用い、大径ギヤ51の側面に突設された遮光板が検知部を通過して光路を遮断若しくは開放するタイミングからカム53の回転位置を検知する構成としても良い。
【0043】
なお、高精度なアライメント調整を実現するために、第1の領域は単位角度当たりの変位量を小さく、且つ一定にしておく必要があるが、第2の領域は第1の領域に比べて高い調整精度は要求されない。そのため、第2の領域における単位角度当たりの変位量は必ずしも一定でなくても良い。しかし、図8のように、第2の領域においても単位角度当たりの変位量を一定にしておくことで、ステッピングモータ37の回転制御を簡素化できるため好ましい。
【0044】
図9は、本発明のベルト搬送装置を備えた第2実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。本実施形態では、用紙P上に各色の画像を直接転写するタイプのタンデム型カラー画像形成装置において、用紙Pを各画像形成部Pa〜Pbに順次搬送する搬送ベルト60のベルト搬送装置として用いている。蛇行の検知方法及び蛇行補正方法については第1実施形態と全く同様であるため説明は省略する。
【0045】
本実施形態においても、第1実施形態と同様にテンションローラ11のアライメント調整幅を2段階に切換可能となるため、通常時の蛇行補正を高精度に行うとともに、ベルト交換時等に必要となる大幅な補正を迅速に行うことができる。また、カム径が必要以上に大きくならず、画像形成装置の省スペース化、コンパクト化にも寄与する。
【0046】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記各実施形態においては、蛇行検知センサとして発光部と受光部を備えた光センサを用いているが、例えばベルト表面に光を射出し、反射光を測定する反射型センサ等の他のセンサを用いても良い。また、ベルト表面に蛇行を検知するためのマーキングを施しておいても良い。
【0047】
また、カム53の形状や寸法も一例に過ぎず、第1の領域及び第2の領域における単位角度当たりの変位量は無端ベルトの蛇行補正に必要なアライメント調整幅や調整精度に応じて適宜変更可能である。また、上記各実施形態ではテンションローラ11をアライメント調整用のローラとしたが、無端ベルトが張架される他のローラであっても良い。さらに、アライメント調整機構を複数のローラに設けても良い。
【0048】
また、本発明は上記実施形態のようなタンデム型のカラー画像形成装置に限らず、モノクロ複写機やデジタル複合機、ファクシミリやレーザプリンタ等、搬送ベルトや中間転写ベルトを用いる種々の画像形成装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、搬送ベルトや中間転写ベルトのような無端ベルトを回転駆動させるベルト搬送装置に利用可能であり、アライメント調整機構に用いられるカムを、単位角度当たりの変位量が一定である第1の領域と、該第1の領域の両側に隣接する第1の領域よりも単位角度当たりの変位量が大きい第2の領域とを有する形状とする。
【0050】
これにより、通常の蛇行補正を行う場合はカムの第1の領域を使うことで、無端ベルトの蛇行を高精度に補正することができ、懸架ローラのアライメントを大幅に変更したい場合はカムの第2の領域を使うことで迅速な変更が可能なベルト搬送装置を提供することができる。また、第2の領域における単位角度当たりの変位量を一定とすることにより、第2の領域を使う場合の調整精度が向上するとともにモータの回転制御も簡素化できる。
【0051】
また、本発明のベルト搬送装置を搭載することで、ベルト左右でのレジストずれを効果的に抑制できるコンパクトな画像形成装置となる。特に、カラー画像形成装置の中間転写ベルトや搬送ベルトの蛇行補正に用いた場合、各色のトナー像の色ずれを防止して高画質な画像を形成する画像形成装置の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
Pa〜Pd 画像形成部
8 中間転写ベルト(無端ベルト)
10 駆動ローラ
11 テンションローラ
21 蛇行検知センサ(蛇行検知手段)
31、32 支持フレーム
35 ベルト駆動モータ
37 ステッピングモータ
41 アーム部材
41a レール部
41b 折曲部
43 摺動軸受け
45 第1引っ張りバネ
47 第2引っ張りバネ
48 アライメント調整機構
50 ピニオンギヤ
51 大径ギヤ
53 カム
60 搬送ベルト(無端ベルト)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトと、該無端ベルトに所定の張力を付与するテンションローラと前記無端ベルトに回転駆動力を付与する駆動ローラとを含む複数の懸架ローラと、
前記無端ベルトの蛇行を検知する蛇行検知手段と、
該蛇行検知手段の検知結果に基づいて1つ以上の前記懸架ローラの傾きを調整することにより前記無端ベルトの蛇行を補正するアライメント調整機構と、
を備えたベルト搬送装置において、
前記アライメント調整機構は、前記懸架ローラの一端をベルト表裏方向に揺動させるカムと、該カムを回転させるモータとを有し、前記カムの形状は、単位角度当たりの変位量が一定である第1の領域と、該第1の領域の両側に隣接する第1の領域よりも単位角度当たりの変位量が大きい第2の領域とを有することを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
前記第2の領域は、単位角度当たりの変位量が一定であることを特徴とする請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体に転写するためのトナー像が順次積層される中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のベルト搬送装置を備えた画像形成装置であって、前記無端ベルトは、記録媒体を搬送する搬送ベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−217461(P2010−217461A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63741(P2009−63741)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】