説明

ベルト支持ローラモニタリングシステム

【課題】簡易で、コストを大幅に低減することのできるベルト支持ローラモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】コンベヤベルト1にセンサユニット2を設け、このセンサユニット2を、ベルト支持ローラ3から受ける物理量を検知するセンサ11と、このセンサ11から得られた測定値に基づいてベルト支持ローラ3の異常を判定する判定手段13と、判定結果を含むデータを格納するメモリ15と、メモリ15に格納されたデータをコンベヤベルト1の外に電波で送信する送信手段16とで構成するともに、コンベヤベルト1の外に、前記送信手段16から送信されたデータを受信する受信ステーション5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの長さ方向に間隔をおいて配置されて、コンベヤベルトを、回転自在に支持するベルト支持ローラの異常をモニタリングするベルト支持ローラモニタリングシステムに関し、特に、効率的に異常をモニタリングできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や鉱石の運搬に用いられるコンベヤベルトは、長い距離を運ぶため、極めて長尺のものが用いられ、そのため、間隔を開けて配置された多数のベルト支持ローラで複数箇所を支持するよう構成されている。このような、ベルト支持ローラはコンベヤベルトの垂直荷重を負担してはいるが、両端をローラベアリング等の軸受けで支持された回転自在なローラが、走行するコンベヤベルトに駆動されて自転し、コンベヤベルトの走行を阻害しないように構成されている。しかしながら、これらは機械的に動くものであるため故障する可能性があり、特に、軸受けが固くなってローラが従動できなくなり、これがコンベヤベルトの故障につながることがあった。
【0003】
従来、このようなベルト支持ローラの回転不良に対しては、各ベルト支持ローラに、故障を検出するセンサと、故障したことの情報を発信する発信手段とを具えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−30588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、ベルト支持ローラの1個1個にセンサ等を設置する必要があり、コスト的にも膨大なものとなり、しかも、ベルト支持ローラが故障したことがわかったとしても、その情報を収集するシステムが不可欠であり、この点においても多大なコストが必要になる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、簡易で、コストを大幅に低減することのできるベルト支持ローラモニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、コンベヤベルトの長さ方向に間隔をおいて配置されて、コンベヤベルトを、回転自在に支持するベルト支持ローラの異常をモニタリングするベルト支持ローラモニタリングシステムにおいて、
コンベヤベルトにセンサユニットを設け、このセンサユニットを、ベルト支持ローラから受ける物理量を検知するセンサと、このセンサから得られた測定値に基づいてベルト支持ローラの異常を判定する判定手段と、判定結果を含むデータを格納するメモリと、メモリに格納されたデータをコンベヤベルトの外に電波で送信する送信手段とで構成するともに、コンベヤベルトの外に、前記送信手段から送信されたデータを受信する受信ステーションを設けてなるベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0007】
<2>は、<1>において、前記判定手段によって異常でないと判定されたベルト支持ローラのデータは、前記送信手段からは送信せず、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータのみを前記送信手段から送信することを特徴とする請求項1に記載のベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0008】
<3>は、<2>において、前記判定手段によって異常でないと判定されたベルト支持ローラのデータは、前記メモリには格納せず、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータのみを前記メモリに格納することを特徴とするベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0009】
<4>は、<3>において、前記物理量を検知する各ベルト支持ローラの、コンベヤベルトの長さ方向に沿った順番を検出するカウンタ手段と、カウンタをクリアするイニシエータとを設け、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータとして、その順番だけをメモリに格納することを特徴とするベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0010】
<5>は、<1>〜<4>のいずれかにおいて、前記センサを、コンベヤベルトの走行中連続して前記物理量を検出するよう構成するとともに、前記物理量として、このセンサがベルト支持ローラを通過する際に変化するものを選択し、前記カウンタ手段は、センサからの測定値が予め定められた第1の閾値を超えたとき、センサがベルト支持ローラの1つを通過したとしてカウンタを1つ進め、前記判定手段は、前記測定値が、予め定められた第2の閾値を超えたとき、このベルト支持ローラが異常であると判定するように構成されてなるベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0011】
<6>は、<1>〜<5>のいずれかにおいて、前記センサユニットにCPUを設け、前記判定手段およびカウンタ手段をこのCPUで構成してなるベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0012】
<7>は、<6>において、前記受信ステーションを、データ送信指令を周期的に発信するよう構成するとともに、前記CPUを、前記データ送信指令を受信したとき、データを受信ステーションに送信するよう送信手段を作動させるものとするベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【0013】
<8>は、<7>において、前記イニシエータとして、カウンタデータを含むデータのクリアを指令する信号を発信する開始信号発信ステーションをコンベヤの外に設け、前記CPUは、開始信号発信ステーションから前記信号を受信したとき、少なくとも前記カウンタ値をクリアするよう構成されてなるベルト支持ローラモニタリングシステムである。
【発明の効果】
【0014】
<1>によれば、コンベヤベルトに設けられたセンサユニットを、ベルト支持ローラから受ける物理量を検知するセンサと、このセンサから得られた測定値に基づいてベルト支持ローラの異常を判定する判定手段と、判定結果を含むデータを格納するメモリと、メモリに格納されたデータをコンベヤベルトの外に電波で送信する送信手段とで構成するともに、コンベヤベルトの外に、前記送信手段から送信されたデータを受信する受信ステーションを設けたので、ベルト支持ローラの各々にセンサや送信手段を設けることなく、センサユニット内にどのベルト支持ローラが故障しているかの情報を保持し、その情報を受信ステーションに渡すことができ、簡易で低コストなシステムでベルト支持ローラの故障をモニタリングすることができる。
【0015】
<2>によれば、前記判定手段によって異常でないと判定されたベルト支持ローラのデータは、前記送信手段からは送信せず、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータのみを前記送信手段から送信するので、必要な情報の伝達を、受信ステーションへの少ない量のデータの送信で済ませることができ、通信時間の短縮によって通信の確実性を向上させることができる。
【0016】
<3>によれば、前記判定手段によって異常でないと判定されたベルト支持ローラのデータは、前記メモリには格納せず、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータのみを前記メモリに格納するので、メモリの容量を小さく抑えることができ、また、メモリに対するデータの入出力時間を短縮することによって通信の確実性をさらに向上させることができる。
【0017】
<4>によれば、前記物理量を検知する各ベルト支持ローラの、コンベヤベルトの長さ方向に沿った順番を検出するカウンタ手段と、カウンタをクリアするイニシエータとを設け、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータとして、その順番だけをメモリに格納するので、どのベルト支持ローラが故障しているかという情報を、最も少ないデータで表すことができる。
【0018】
<5>によれば、前記センサを、コンベヤベルトの走行中連続して前記物理量を検出するよう構成するとともに、前記物理量として、このセンサがベルト支持ローラを通過する際に変化するものを選択し、前記カウンタ手段は、センサからの測定値が予め定められた第1の閾値を超えたとき、センサがベルト支持ローラの1つを通過したとしてカウンタを1つ進め、前記判定手段は、前記測定値が、予め定められた第2の閾値を超えたとき、このベルト支持ローラが異常であると判定するように構成されているので、前記物理量をセンサで測定するだけでベルト支持ローラの特定と、特定されたベルト支持ローラの故障の有無の判定とを行うことができ、どのベルト支持ローラが故障しているかの情報を極めて簡易に収集することができる。
【0019】
<6>によれば、前記センサユニットにCPUを設け、前記判定手段およびカウンタ手段をこのCPUで構成したので、センサユニットをコンパクトに構成することができる。
【0020】
<7>によれば、前記受信ステーションを、データ送信指令を周期的に発信するよう構成するとともに、前記CPUを、前記データ送信指令を受信したとき、データを受信ステーションに送信するよう送信手段を作動させるので、センサユニットが、受信ステーションからの指令信号を受信できる範囲にはいったとき初めてデータを送るので、データの送信を最低限に抑えることができる。
【0021】
<8>によれば、前記イニシエータとして、カウンタデータを含むデータのクリアを指令する信号を発信する開始信号発信ステーションをコンベヤベルトの外に設け、前記CPUは、この信号を受信したとき、少なくとも前記カウンタ値をクリアするよう構成されているので、簡易なしくみでイニシエータを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステムを図を参照して説明する。図1は、この実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステムを示す概念図であり、ベルト支持ローラモニタリングシステム10は、無端のコンベヤベルト1に埋設されたセンサユニット2と、センサユニット2から送信されたデータを受信する受信ステーション5とを具えて構成される。コンベヤベルト10は、両端の駆動および従動のプーリ9によって支持される他、図2に、コンベヤベルト1の概略断面図で示すように、コンベヤベルトの長さ方向に間隔をおいて配置さえた多数のベルト支持ローラ3によって支持されていて、コンベヤベルト1に、垂直荷重に起因する大きなテンションが加わるのを抑えるようになっている。
【0023】
また、センサユニット2は、コンベヤベルトが受ける物理量、例えば、コンベヤベルト表面にかかる長さ方向の剪断応力を連続的に検出し、検出した情報をもとに、各ベルト支持ローラの動作の正常・異常を判定してその結果を電波で受信ステーションに送信する機能を有している。このため、センサユニット2は、ベルト支持ローラ3のコンベヤベルト幅方向にそっれ並ぶ各列に対応して設けられていて、図2に示すものの場合、ベルト支持ローラ3は3列あるので、それに対応するように、センサユニット2は、コンベヤベルト幅方向に3列並んで配置される。なお、符号8は、被搬送物を示す。
【0024】
図3は、センサユニット2の構成を示すブロック線図であり、センサユニット2は、コンベヤベルト1が受ける物理量を検出するセンサ11、ベルト支持ローラ3に対応する位置での前記物理量をもとにそのベルト支持ローラ3が異常であるか否かを判定する判定手段13、ベルト支持ローラの順番の増加をカウントするカウンタ手段14、判定の結果を格納するメモリ15、および、メモリ15に格納されたデータを受信ステーション5(兼、終了信号発信ステーション)に送信する送信手段16を具えて構成される。ここで、判定手段13およびカウンタ手段14はCPU12によって構成されるのが好ましい。
【0025】
また、ベルト支持ローラモニタリングシステム10は、センサユニット2および受信ステーション5の他に、コンベヤベルトの外から、センサユニット2を始動させるとともにカウント手段14によるカウント結果をクリアしてカウントを開始させるための開始信号を発信する開始信号発信ステーション10を具え、一方、センサユニット2には、この開始信号を受信するための受信手段17が設けられる。
【0026】
さらに、センサユニット2を終了させる終了信号を発信する終了信号発信ステーションを受信ステーション5とは別に設けることもできるが、図3に示すように、受信ステーション5が、この終了信号発信ステーションを兼ねるようにしてもよい。
【0027】
そして、センサユニット2の一部をなす送信手段16および受信手段17を、RFIDで構成し、受信ステーション5(兼、終了信号発信ステーション)および開始信号発信ステーション10を、短い周期で、データ送信指令信号(および終了信号)ならびに開始信号をそれぞれ送信するように構成すると好ましく、このことによって、センサユニット2がそれぞれのステーション5、10に近接したときだけ、それらの間で通信が行われるようにすることができる。
【0028】
なお、開始信号発信ステーション4や受信ステーション5にそれぞれ対応する信号の発信を開始させ、もしくは、終了させるには、それらのステーション4、5に接続された遠隔操作手段(図示せず)あるいはコンピュータ7によって、例えば、自動的に1日1回決まった時間だけ開始信号を発信するようにすることもできるし、また、手動によってこれを操作できるようにすることもできる。
【0029】
以上のように構成されたベルト支持ローラモニタリングシステムを用いて、ベルト支持ローラの異常の有無をモニタリングする方法について以下に説明する。センサユニット2は初期状態として、省電力モードを保持するが電波による外部からの信号によって省電力モードからでることができるように構成されていて、コンベヤベルト1の走行に伴って、センサユニット2が、図1におけるFの向きに進み、開始信号を短い周期で発信している開始信号発信ステーション4に近づき、そこからの電波の検知が可能な範囲内に到達すると、センサユニット2のCPU12は受信手段17を介して入力した開始信号に基づいて、センサユニット2の省電力モードを解除させるとともにカウンタ手段14が保持するカウンタ値をクリアしてゼロにする。このとき、CPU12は、メモリ15に保持されたデータもクリアするようにしてもよい。
【0030】
このあと、センサユニット2は、コンベヤベルト1の走行に伴って開始信号発信ステーション4の電波検知範囲から出て、第1のベルト支持ローラ3(3A)上を通過する。センサ11を、例えば、コンベヤベルト表面の、コンベヤベルト長さ方向の剪断応力を検知するよう構成した場合には、センサ11からは、図4、図5に示すような連続的な波形の信号が出力され、この信号はCPU12の一部を構成する判定手段13およびカウンタ手段14に入力される。
【0031】
図4は、横軸に時間を、縦軸に信号の大きさをそれぞれとって、センサ11からの出力信号の変化を示すグラフであり、センサ11がベルト支持ローラ3上を通過すると、コンベヤベルト1の内側の表面には、ベルト支持ローラ3との間の僅かなスリップによる剪断力が作用し、図示のS部ような、剪断力に比例した信号の変化が現れる。このときの出力信号は、ベルト支持ローラ3から遠く離れた部分では第1の閾値Aよりずっと小さく、センサ11がベルト支持ローラ2を通過するときだけ第1の閾値Aを越えるように第1の閾値Aを設定することは可能であり、このように設定することによりセンサ11がベルト支持ローラ2を通過したことを検知することができる。
【0032】
そして、カウンタ手段14を、第1の閾値Aを越えたとき、カウンタを1だけ増加させるように構成することにより、各ベルト支持ローラを順番付けすることができる。すなわち、例えば、センサ11が、ローラ3Aを通過したあと、ローラ3Bにさしかかるまでのカウンタ値は1であり、ローラ3Bを通過したあと、ローラ3Cにさしかかるまでのカウンタ値は2を保持している。
【0033】
図5は、同様に、センサ11がベルト支持ローラ3を通過する際の、センサ11からの出力信号の変化を示すグラフ(図4のS部に対応)であり、実線は正常な場合の変化を表し、破線は異常な場合の変化を表すものとして、もし、ベルト支持ローラ3が、故障して軸受けが正常に作動せずコンベヤベルト1に従動しないときはコンベヤベルト1の表面に大きな摩擦力が作用する。このとき、センサ11からの出力信号は、ベルト支持ローラ3が正常なときには第2の閾値Bより小さく、ベルト支持ローラ3が異常となったとき初めて第2の閾値Bを越えるように閾値Bを設定することができ、このようにして、判定手段13はベルト支持ローラ3の作動の異常の有無を判定することができる。
【0034】
そして、例えば、第1の閾値Aを用いてベルト支持ローラ3の順番付けを行った直後に、ベルト支持ローラの異常の有無の判定を行い、この判定を行ったときの順番を、異常の有無の判定対象となったベルト支持ローラの番号とすることによって、各ベルト支持ローラとそのベルト支持ローラに対する異常の有無とを対応付けることができる。
【0035】
例えば、正常と判定したときの順番が1であり、異常と判定したときの順番が2である場合には、1番目のベルト支持ローラは正常であり、2番目のベルト支持ローラは異常であることを意味している。
【0036】
CPU12の判定手段13およびカウンタ手段14による演算結果はメモリ15に一旦格納される。センサユニット11がさらにコンベヤベルト1の進行方向に進んで受信ステーション5によって短い周期で発信されるデータ送信指令信号の検知範囲に入った後、この信号が受信手段17を介してCPU12に入力されると、CPU12は、メモリ15のデータを送信手段16を介して発信するように作動する。そして、受信ステーション5は、センサユニット2からの信号を受信し、受信ステーション5で受信された、ベルト支持ローラ3の異常の有無に関するデータはこれに接続されているコンピュータ7によって最終的な処理がなされる。
【0037】
ここで、メモリ15に格納するデータとしては、メモリ15の容量を節約するため、正常となるベルト支持ローラ3についてはデータとしてメモリには格納せず、異常に対応する順番だけを格納しておけばメモリの容量を小さく済ませることができる。例えば、メモリ15に、2、8、11というデータが格納されていた場合には、開始信号発信ステーション4から数えて2番目、8番目、11番目のベルト支持ローラ3が異常でありそれ以外のベルト支持ローラ3は正常であることを意味している。
【0038】
メモリ15にこのように格納されたデータは容量の小さく、受信ステーション5へのデータの送信に際しても送信データ量が極めて少なくなるため、通信時間が極めて短くなり、受信ステーション5へのデータの送信を確実に行わせることができる。
【0039】
なお、上記の説明においては、コンベヤベルト1が1回周回すると異常なベルト支持ローラ3の判定を行っているが、複数周回コンベヤベルト1を走行させてデータを収集したときには、検出のばらつき等により異常と判定されたベルト支持ローラ3の順番が、実際の順番と異なる可能性があり、このような場合、最終的な判定として、異常なベルト支持ローラの検出確率が所定の値以上である場合にのみこれを異常と判定するようにすれば、判定の信頼性を向上させることができる。
【0040】
以下にその例を示す。表1は、コンベヤベルト1の第1周目、第2周目、および、第3周目のそれぞれの周回において検出されたベルト支持ローラに対応する順番を示す1次判定結果を表している。この1次判定結果をもとに、各ベルト支持ローラについて、異常と判定された確率を算出したものが表2であり、この確率が50%以上のものを最終判定における異常と判定するものとすると、その結果は、表2に示す通りである。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
先に説明したところにおいて、ベルト支持ローラ3の異常の有無を判定するための第2の閾値として、第1の閾値Aより大きい信号レベルを採用したが、これに代えて、第2の閾値を時間軸上の値とすることもでき、例えば、図6に、実線を正常な波形、破線を異常な波形の場合として示すように、プラス側のピークからマイナス側のピークまでの時間T1に対して第2の閾値Cを設定しておき、実際の波形における時間T1の値C1が第2の閾値Cより大きいときにはこれを正常と判定し実際の波形における時間T1の値C2が閾値Cより小さいときにはこれを異常と判定することもできる。
【0044】
また、時間軸に沿った閾値として、図8に同様にして示すように、プラス側の開始点からマイナス側の終了点までの時間T2に対して第2の閾値Dを設定しておき、実際の波形における時間T2の値D1が第2の閾値Dより大きいときにはこれを正常と判定し実際の波形における時間T2の値D2が閾値Dより小さいときにはこれを異常と判定することもできる。
【0045】
図8は、本発明に係る実施形態の第1の変形例を示す概念図を示し、この変形例のベルト支持ローラモニタリングシステム10Aが、先に説明した実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステム10と異なる点は、外部ステーション6として、ベルト支持ローラモニタリングシステム10における受信ステーション5の機能と開始信号発信ステーション4の機能とを統合して配置した点であり、このことによって、メモリ15に格納したデータを外部に送信するタイミングが遅れる点だけが違っており基本的な機能に違いはない。
【0046】
図9は、本発明に係る実施形態の第2の変形例を示す概念図を示し、この変形例のベルト支持ローラモニタリングシステム10Bが、先に説明した実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステム10とは、一連のベルト支持ローラを複数の群に区切ってそれぞれの群ごとに開始信号発信ステーション4A、4B、4Cと受信ステーション5A、5B、5Cとを設けた点だけが異なっている。ベルト支持ローラ3の数が多いと、センサ11がベルト支持ローラ2を通過しても、第1の閾値Aによって検出できないことが発生する可能性があり、このような場合、実際のベルト支持ローラ3の順番と、検出したベルト支持ローラの順番とが合わない不整合が生じる。
【0047】
そこで、この変形例のベルト支持ローラモニタリングシステム10Bのように、受信ステーションにデータを受け渡す際に対象となるベルト支持ローラの数を減らすことにより、群として不整合が発生する確率を低減することができる。この場合、受信ステーション5A、5B、5Cで受け取ったデータの処理は、各受信ステーション5A、5B、5Cにコンピュータを接続しておいて、それらのコンピュータで個別に処理してもよく、また、各受信ステーション5A、5B、5Cには、データを格納するメモリ(ハードディスクでもよい)だけを接続しておき、別途データをそれらのメモリが取り出すことをおこなってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステムを示す概念図である。
【図2】コンベヤベルトを示す断面図である。
【図3】センサユニットの構成を示すブロック線図である。
【図4】センサの出力信号の変化を示すグラフである。
【図5】センサユニットベルト支持ローラを通過する際のセンサの出力信号の変化と第2の閾値とを示すグラフである。
【図6】センサユニットベルト支持ローラを通過する際のセンサの出力信号の変化と他の第2の閾値とを示すグラフである。
【図7】センサユニットベルト支持ローラを通過する際のセンサの出力信号の変化と他の第2の閾値とを示すグラフである。
【図8】実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステム第1の変形例を示す概念図である。
【図9】実施形態のベルト支持ローラモニタリングシステム第2の変形例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0049】
1 コンベヤベルト
2 センサユニット
3、3A、3B ベルト支持ローラ
4、4A、4B、4C 開始信号発信ステーション
5、5A、5B、5C 受信ステーション
6 外部ステーション
8 被搬送物
9 プーリ
7 コンピュータ
10、10A、10B ベルト支持ローラモニタリングシステム
11 センサ
12 CPU
13 判定手段
14 カウンタ手段
15 メモリ
16 送信手段
17 受信手段
18 RFID

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトの長さ方向に間隔をおいて配置されて、コンベヤベルトを、回転自在に支持するベルト支持ローラの異常をモニタリングするベルト支持ローラモニタリングシステムにおいて、
コンベヤベルトにセンサユニットを設け、このセンサユニットを、ベルト支持ローラから受ける物理量を検知するセンサと、このセンサから得られた測定値に基づいてベルト支持ローラの異常を判定する判定手段と、判定結果を含むデータを格納するメモリと、メモリに格納されたデータをコンベヤベルトの外に電波で送信する送信手段とで構成するともに、コンベヤベルトの外に、前記送信手段から送信されたデータを受信する受信ステーションを設けてなるベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項2】
前記判定手段によって異常でないと判定されたベルト支持ローラのデータは、前記送信手段からは送信せず、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータのみを前記送信手段から送信することを特徴とする請求項1に記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項3】
前記判定手段によって異常でないと判定されたベルト支持ローラのデータは、前記メモリには格納せず、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータのみを前記メモリに格納することを特徴とする請求項2に記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項4】
前記物理量を検知する各ベルト支持ローラの、コンベヤベルトの長さ方向に沿った順番を検出するカウンタ手段と、カウンタをクリアするイニシエータとを設け、異常であると判定されたベルト支持ローラのデータとして、その順番だけをメモリに格納することを特徴とする請求項3に記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項5】
前記センサを、コンベヤベルトの走行中連続して前記物理量を検出するよう構成するとともに、前記物理量として、このセンサがベルト支持ローラを通過する際に変化するものを選択し、前記カウンタ手段は、センサからの測定値が予め定められた第1の閾値を超えたとき、センサがベルト支持ローラの1つを通過したとしてカウンタを1つ進め、前記判定手段は、前記測定値が、予め定められた第2の閾値を超えたとき、このベルト支持ローラが異常であると判定するように構成されてなる請求項1〜4のいずいれかに記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項6】
前記センサユニットにCPUを設け、前記判定手段およびカウンタ手段をこのCPUで構成してなる請求項1〜5のいずれかに記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項7】
前記受信ステーションを、データ送信指令を周期的に発信するよう構成するとともに、前記CPUを、前記データ送信指令を受信したとき、データを受信ステーションに送信するよう送信手段を作動させるものとする請求項6に記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。
【請求項8】
前記イニシエータとして、カウンタデータを含むデータのクリアを指令する信号を発信する開始信号発信ステーションをコンベヤの外に設け、前記CPUは、開始信号発信ステーションから前記信号を受信したとき、少なくとも前記カウンタ値をクリアするよう構成されてなる請求項7に記載のベルト支持ローラモニタリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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