説明

ベルト装置

【課題】干渉部材からのベルト部の延出位置に拘らずエネルギー吸収部材の変形態様を一様化する。
【解決手段】シートベルト装置10では、車両12の緊急時に、ワイヤ46の一対の干渉板50からの延出量が急激に減少されて、シートベルト28による乗員14の拘束力が増加される。さらに、チューブ56が一対の干渉板50に干渉して圧縮変形されることで、ワイヤ46の移動エネルギーが吸収される。ここで、チューブ56がスペーサ58を介して一対の干渉板50に干渉して圧縮変形される。このため、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置に拘らず、チューブ56の圧縮変形態様を一様化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員にベルト部が装着されることでベルト部が乗員を拘束可能にされたベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト装置としては、ベルト連結要素が先端に結合された張力伝達要素がケーブルデフレクタから延出されると共に、張力伝達要素が管状胴に取り囲まれたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このベルト装置では、張力伝達要素がケーブルデフレクタに引き込まれることで、ケーブルデフレクタによって管状胴が変形されて、張力伝達要素の運動エネルギーが吸収される。
【0004】
ところで、このようなベルト装置において、ケーブルデフレクタからの張力伝達要素の延出方向を変更可能にする場合に、張力伝達要素からケーブルデフレクタへの負荷を少なくするためには、ケーブルデフレクタからの張力伝達要素の延出位置を変更可能にするのが好ましい。
【0005】
ここで、ケーブルデフレクタからの張力伝達要素の延出位置を変更可能にした場合には、ケーブルデフレクタからの張力伝達要素の延出位置に拘らず、張力伝達要素がケーブルデフレクタに引き込まれる際におけるケーブルデフレクタによる管状胴の変形態様を一様化できるのが好ましい。
【特許文献1】特開平10−6925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、干渉部材からのベルト部の延出位置に拘らずエネルギー吸収部材の変形態様を一様化できるベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のベルト装置は、車両の乗員に装着されることで乗員を拘束可能にされたベルト部と、前記ベルト部が延出されると共に、前記ベルト部の延出位置を変更可能にされた干渉部材と、前記干渉部材からの前記ベルト部の延出量を減少させることで前記ベルト部による乗員の拘束力を増加可能にされた減少手段と、前記ベルト部に設けられ、前記減少手段が前記干渉部材からの前記ベルト部の延出量を減少させる際に前記干渉部材に干渉して変形されることで前記ベルト部の移動エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材と、前記干渉部材からの前記ベルト部の延出位置に拘らず、前記干渉部材に前記エネルギー吸収部材が干渉して変形される際における前記エネルギー吸収部材の変形態様を一様化する一様化手段と、を備えている。
【0008】
請求項2に記載のベルト装置は、請求項1に記載のベルト装置において、前記一様化手段は、前記干渉部材と前記エネルギー吸収部材との間に配置され、前記干渉部材に前記エネルギー吸収部材が干渉して変形される際に前記干渉部材と前記エネルギー吸収部材との間に介在されることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載のベルト装置は、請求項2に記載のベルト装置において、前記一様化手段の前記ベルト部に対する移動を制限し、前記干渉部材に前記エネルギー吸収部材が干渉して変形される際に前記一様化手段の前記ベルト部に対する移動を許可する制限手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のベルト装置では、干渉部材からベルト部が延出されており、車両の乗員にベルト部が装着されることで、ベルト部が乗員を拘束可能にされている。
【0011】
また、減少手段が干渉部材からのベルト部の延出量を減少させることで、ベルト部による乗員の拘束力を増加可能にされている。さらに、ベルト部にエネルギー吸収部材が設けられており、減少手段が干渉部材からのベルト部の延出量を減少させる際に、エネルギー吸収部材が干渉部材に干渉して変形されることで、ベルト部の移動エネルギーが吸収される。
【0012】
ここで、干渉部材からのベルト部の延出位置を変更可能にされており、一様化手段が、干渉部材からのベルト部の延出位置に拘らず、干渉部材にエネルギー吸収部材が干渉して変形される際におけるエネルギー吸収部材の変形態様を一様化する。このため、干渉部材からのベルト部の延出位置に拘らず、エネルギー吸収部材の変形態様を一様化することができる。
【0013】
請求項2に記載のベルト装置では、一様化手段が干渉部材とエネルギー吸収部材との間に配置されており、干渉部材にエネルギー吸収部材が干渉して変形される際に一様化手段が干渉部材とエネルギー吸収部材との間に介在される。このため、干渉部材からのベルト部の延出位置に拘らずエネルギー吸収部材の変形態様を一様化する構成を簡単にすることができる。
【0014】
請求項3に記載のベルト装置では、制限手段が一様化手段のベルト部に対する移動を制限している。このため、一様化手段のベルト部に対する移動による異音の発生を抑制できる。
【0015】
さらに、干渉部材にエネルギー吸収部材が干渉して変形される際に、制限手段が一様化手段のベルト部に対する移動を許可する。このため、干渉部材からのベルト部の延出量の減少及び干渉部材へのエネルギー吸収部材の干渉を制限手段が制限することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には、本発明の実施の形態に係るベルト装置としてのシートベルト装置10が適用されて構成された車両12の乗員14(運転手)乗車状態が右方から見た側面図にて示されており、図2には、車両12の乗員14非乗車状態が右方から見た側面図にて示されている。なお。図面では、車両前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示している。
【0017】
本実施の形態における車両12は、車体の右壁及び左壁に略矩形状の開口16が形成されている。開口16は車室18内を車幅方向外側へ開放させており、乗員14は車両12に対し開口16を介して乗車及び降車可能にされている。
【0018】
開口16の車両後側には、後部材としての略矩形筒状のピラー20(センタピラー)が配置されており、ピラー20は、開口16の車両後側面を構成すると共に、上方へ向かうに従い車両後方へ向かう方向へ傾斜されている。ピラー20の下端は、下部材としての略矩形筒状のロッカ22に固定されており、ロッカ22は、車両前後方向へ延伸されて、開口16の下面を構成している。
【0019】
車室18内には、車両右側部分及び車両左側部分において、シート24が設けられており、シート24は、車室18内での設置位置を、車両前後方向へ移動可能にされている。シート24の車幅方向外側には、開口16が配置されており、開口16を介して車両12に乗車した乗員14がシート24に着席可能にされると共に、シート24から離席した乗員14が開口16を介して車両12から降車可能にされている。
【0020】
車両12には、シート24に対応してシートベルト装置10が設けられている。
【0021】
シートベルト装置10には、巻取機構としてのリトラクタ26が設けられており、リトラクタ26はピラー20内の下端に固定されている。リトラクタ26には、ベルト部を構成するベルトとしての長尺帯状のシートベルト28が基端側から巻き取られている。シートベルト28には、リトラクタ26によってリトラクタ26への巻取方向への付勢力が付与されており、シートベルト28は、リトラクタ26から当該付勢力に抗して引き出し可能にされると共に、リトラクタ26に当該付勢力によって巻き取り可能にされている。
【0022】
リトラクタ26には、ロック機構(図示省略)が設けられており、車両12の緊急時(例えば衝突時)には、ロック機構がリトラクタ26からのシートベルト28の引き出しをロック可能にされている。リトラクタ26には、プリテンショナ機構(図示省略)が設けられており、車両12の緊急時には、プリテンショナ機構がリトラクタ26にシートベルト28を急激に巻き取り可能にされている。リトラクタ26には、エネルギー吸収材を有するフォースリミッタ機構(図示省略)が設けられており、車両12の緊急時には、フォースリミッタ機構がシートベルト28へ作用する荷重によるエネルギー吸収材の変形によってリトラクタ26からのシートベルト28の引き出しを許可可能にされている。
【0023】
シートベルト28は、リトラクタ26より先端側において、ロッカ22内から車室18内へ延出されている。シートベルト28は、車室18内配置部分において、上支持部材としてのショルダアンカ30の下側部分に移動可能に挿通されており、ショルダアンカ30は、上端においてロッカ22の上部に車両前後方向へ回動可能に係止されて、シート24の上部の車幅方向外側かつ車両後側に配置されている。
【0024】
シートベルト28は、ショルダアンカ30より先端側において、装着部材としてのタング32に移動可能に挿通されており、タング32は、シートベルト28の所定位置よりも先端側への移動を制限されて、シートベルト28がリトラクタ26に最大量巻き取られた際(図2参照)にショルダアンカ30の近傍に配置可能にされている。
【0025】
タング32は、装着部としてのバックル34に装着及び離脱可能にされている。バックル34は、内支持部材としてのインナアンカ36(ラップインナアンカ)の上部に設けられており、インナアンカ36は、下端において、シート24の車幅方向内側かつ下側における車室18の床部に車両前後方向へ回動可能に係止されている。
【0026】
シートベルト28の先端には、ベルト部を構成する接続部材としてのミニタング38が係止されており、ミニタング38は、図3〜図5に詳細に示す外支持部材及び巻取手段としてのラッププリテンショナ機構40(ラップアウタアンカ)に接続されている。
【0027】
ラッププリテンショナ機構40には、ベルト部を構成する接続部としてのコネクタ42(ラップアウタコネクタ)が設けられており、コネクタ42(ラップアウタコネクタ)の上部には、ミニタング38が係止(接続)されている。
【0028】
コネクタ42の下部には、ベルト部を構成する係止部材としてのジョイントアンカ44の上部が係止されている。ジョイントアンカ44の上下方向中間部には、圧縮部としての円筒状の圧縮筒44Aが設けられると共に、ジョイントアンカ44の下部には、支持部としての円筒状の支持筒44Bが設けられており、支持筒44Bは圧縮筒44Aから下方へ突出している。
【0029】
圧縮筒44Aの内部には、ベルト部を構成する延出部材としての長尺のワイヤ46の先端(上側端)が結合されており、ワイヤ46は、支持筒44B内に挿通されると共に、可撓性を有している。
【0030】
ワイヤ46の基端(下側端)側は、支持部材としてのベースカートリッジ48内に挿入されており、ベースカートリッジ48が上面をシート24の車幅方向外側かつ下側におけるロッカ22の上面に比し低くされた状態でロッカ22に固定されることで、ラッププリテンショナ機構40がロッカ22に固定されている。
【0031】
ベースカートリッジ48の車両後側部分には、干渉部材としての干渉板50が一対設けられており、一対の干渉板50は、それぞれ略半円形板状にされて、車幅方向において対向している。一対の干渉板50間には、ワイヤ46が配置されており、ワイヤ46は、一対の干渉板50から上側へ延出されている。一対の干渉板50の車両前側部分間には、制限部材としての円軸状の制限軸62が架け渡されており、制限軸62は、ワイヤ46の車両前側に配置されている。一対の干渉板50には、車両後側端部において、制限部材としてのタッピンスクリュウ52が螺合されており、タッピンスクリュウ52は、一対の干渉板50間に架け渡されて、ワイヤ46の車両後側に配置されている。ワイヤ46の先端側部分は、一対の干渉板50間において、基端側部分を中心として車両前後方向へ回動可能にされており、これにより、ワイヤ46が制限軸62に当接する位置からタッピンスクリュウ52に当接する位置までの範囲において、ワイヤ46の先端側部分の一対の干渉板50からの延出方向及び延出位置を変更可能にされている。
【0032】
ベースカートリッジ48の車両前側部分には、減少手段を構成する有底円筒状のシリンダ54が設けられており、シリンダ54内には、ワイヤ46の基端が挿入されている。ワイヤ46の基端には、減少手段を構成するピストン(図示省略)が固定されており、ピストンはシリンダ54内に嵌合されている。シリンダ54内は、減少手段を構成するガス発生装置(図示省略)に連通されており、車両12の緊急時には、ガス発生装置が高圧のガスを発生してシリンダ54内に流入させることで、ピストンがシリンダ54内を車両前側へ急激に移動されて、ワイヤ46がベースカートリッジ48内に急激に引き込まれる。これにより、ワイヤ46の一対の干渉板50からの延出量が急激に減少される。
【0033】
ワイヤ46の先端側部分は、エネルギー吸収部材としての円筒状のチューブ56に挿通されており、チューブ56は、エラストマー等の弾性部材であり(金属製又は樹脂製でもよい)、ワイヤ46に対する移動を阻害(制限)されている。
【0034】
ワイヤ46の先端側部分は、チューブ56と一対の干渉板50との間において、一様化手段としての略円環板状のスペーサ58に挿通されており、スペーサ58は、金属製(例えば鉄製)又は樹脂製にされ、かつ、内径がワイヤ46の径より大きくされると共にチューブ56の内径より小さくされている。図6に詳細に示す如く、スペーサ58の内周面には、制限手段としての三角柱状の係合突起60(リブ)が所定数(本実施の形態では8つ)形成されており、所定数の係合突起60は、スペーサ58の周方向へ等間隔に配置されている。所定数の係合突起60はワイヤ46に係合されており、これにより、スペーサ58のワイヤ46に対する移動が阻害(制限)されて、スペーサ58がチューブ56の下端に接触された状態が維持されると共に、ワイヤ46の先端側部分の一対の干渉板50からの延出位置に拘らずスペーサ58が一対の干渉板50に当接することが防止されている。
【0035】
車両12の緊急時に、ワイヤ46の一対の干渉板50からの延出量が急激に減少される際には、スペーサ58の所定数の係合突起60におけるワイヤ46への係合に拘らず、チューブ56及びスペーサ58のワイヤ46に対する移動が許可されて、チューブ56がジョイントアンカ44の支持筒44B内に挿入されて支持されると共にチューブ56及びスペーサ58がジョイントアンカ44の圧縮筒44Aと一対の干渉板50との間に挟持された状態で、チューブ56がスペーサ58を介して一対の干渉板50に干渉して圧縮変形される(潰される)ことで、チューブ56がワイヤ46の移動エネルギーを吸収可能にされている。
【0036】
図1に示す如く、シート24に乗員14が着席した状態で、シートベルト28のタング32がバックル34に装着された際には、シートベルト28のショルダアンカ30とタング32との間の部分であるショルダベルト部28Aが乗員14の車幅方向外側の肩部から腰部の車幅方向外側に装着されると共に、シートベルト28のタング32とミニタング38との間の部分であるラップベルト部28Bが乗員14の腰部に車幅方向へ装着されて、シートベルト28が乗員14に装着される。この際、リトラクタ26によって付与される付勢力によってシートベルト28がリトラクタ26に巻き取られることで、シートベルト28が張られて、ワイヤ46の先端側部分が一対の干渉板50から上方へ向かうに従い車両前方へ向かう方向へ延出される。これにより、シートベルト28及びワイヤ46の先端側部分(ミニタング38、コネクタ42、ジョイントアンカ44及びチューブ56を含む)が開口16内に突出される。
【0037】
図2に示す如く、シートベルト28のタング32がバックル34から離脱された際には、シートベルト28の乗員14への装着が解除される。この際、リトラクタ26によって付与される付勢力によってシートベルト28がリトラクタ26に巻き取られることで、シートベルト28が張られて、ワイヤ46の先端側部分が一対の干渉板50から上方へ向かうに従い車両後方へ向かう方向へ延出される。これにより、シートベルト28及びワイヤ46の先端側部分(ミニタング38、コネクタ42、ジョイントアンカ44及びチューブ56を含む)が、開口16内への突出を解除されて、ピラー20の車幅方向内側へ配置(隠蔽)される。
【0038】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0039】
以上の構成のシートベルト装置10では、シート24に乗員14が着席した状態でシートベルト28のタング32がバックル34に装着されることで、シートベルト28が乗員14に装着される。
【0040】
車両12の緊急時には、リトラクタ26のロック機構がリトラクタ26からのシートベルト28の引き出しをロックすると共に、リトラクタ26のプリテンショナ機構がリトラクタ26にシートベルト28を急激に巻き取ることで、シートベルト28(特にショルダベルト部28A)による乗員14の拘束力が増加される。さらに、リトラクタ26のフォースリミッタ機構が乗員14からシートベルト28へ作用する荷重によるエネルギー吸収材の変形によってリトラクタ26からのシートベルト28の引き出しを許可することで、シートベルト28から乗員14へ作用する荷重が過大になることが抑制される。
【0041】
また、車両12の緊急時には、ラッププリテンショナ機構40において、ワイヤ46がベースカートリッジ48内に急激に引き込まれて、ワイヤ46の一対の干渉板50からの延出量が急激に減少されることで、シートベルト28(特にラップベルト部28B)による乗員14の拘束力が増加される。さらに、チューブ56がジョイントアンカ44の支持筒44B内に挿入されて支持されると共にチューブ56及びスペーサ58がジョイントアンカ44の圧縮筒44Aと一対の干渉板50との間に挟持された状態で、チューブ56がスペーサ58を介して一対の干渉板50に干渉して圧縮変形されることで、チューブ56がワイヤ46の移動エネルギーを吸収して、一対の干渉板50からコネクタ42に大きな衝撃荷重が作用することが抑制され、コネクタ42が保護される。
【0042】
ところで、シート24の設置位置の車両前後方向への移動、シートベルト28を装着する乗員14の体格、及び、ラッププリテンショナ機構40を設置する車両12の車種等によって、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出方向が変更されて、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置が変更されると、車両12の緊急時にチューブ56が干渉する一対の干渉板50の干渉面(スペーサ58が当接する一対の干渉板50の当接面)が変更されて、チューブ56の一対の干渉板50への干渉方向(一対の干渉板50からのワイヤ46の延出方向)とチューブ56が干渉する一対の干渉板50の干渉面との角度が変更される。
【0043】
ここで、車両12の緊急時には、上述の如く、チューブ56がスペーサ58を介して一対の干渉板50に干渉して圧縮変形される。このため、チューブ56の一対の干渉板50への干渉方向とチューブ56が干渉する一対の干渉板50の干渉面との角度が変更されても、チューブ56がスペーサ58の上側面に略垂直に当接することができて、簡単な構成でチューブ56の圧縮変形態様を一様化することができる。これにより、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置に拘らず、スペーサ58によってチューブ56を効率的に圧縮変形させることができ、チューブ56がワイヤ46の移動エネルギーを効果的に吸収できて、一対の干渉板50からコネクタ42に大きな衝撃荷重が作用することを効果的に抑制できる。
【0044】
ところで、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置に拘らず、チューブ56の一対の干渉板50への干渉方向とチューブ56が干渉する一対の干渉板50の干渉面との角度を垂直にすれば、スペーサ58を設けなくても、チューブ56の圧縮変形態様を一様化することができる。しかしながら、この場合、通常、干渉板50のコンパクト化や省スペース等の設計の都合上、干渉板50を角部や斜面がない大きな円板状にすることは不可能である。このため、干渉板50の周形状は、車体やシート24との取り付けの都合上、角部や斜面がある形状になり、ラッププリテンショナ機構40を取り付ける車種や位置毎に干渉板50の周形状によって一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置に拘らずチューブ56の圧縮変形態様を一様化する設計ができない。これにより、チューブ56と一対の干渉板50との間のワイヤ46にスペーサ58を設けることで、干渉板50の周形状によらずに、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置に拘らずチューブ56の圧縮変形態様を一様化することができる。
【0045】
また、シートベルト28が乗員14に装着された際には、ワイヤ46が一対の干渉板50から上方へ向かうに従い車両前方へ向かう方向へ延出されて、シートベルト28及びワイヤ46の先端側部分(ミニタング38、コネクタ42、ジョイントアンカ44及びチューブ56を含む)が開口16内に突出される。このため、シートベルト28を乗員14が良好に装着することができる。
【0046】
一方、シートベルト28の乗員14への装着が解除された際には、ワイヤ46が一対の干渉板50から上方へ向かうに従い車両後方へ向かう方向へ延出されて、シートベルト28及びワイヤ46の先端側部分(ミニタング38、コネクタ42、ジョイントアンカ44及びチューブ56を含む)が、開口16内への突出を解除されて、ピラー20の車幅方向内側へ配置される。このため、シートベルト28及びワイヤ46の先端側部分(ミニタング38、コネクタ42、ジョイントアンカ44及びチューブ56を含む)が乗員14の開口16を介しての車両12に対する乗車及び降車を阻害することを抑制できる。
【0047】
また、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置は、ワイヤ46が制限軸62に当接する位置からタッピンスクリュウ52に当接する位置までの広い範囲で、一対の干渉板50に負荷をかけることなく変更可能にされている。このため、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出位置を変更しても、一対の干渉板50にワイヤ46からの負荷による損傷が発生することを抑制できる。
【0048】
したがって、シートベルト28が乗員14に装着された際におけるワイヤ46の一対の干渉板50からの延出方向(シートベルト28を乗員14が良好に装着できる方向)及びシートベルト28の乗員14への装着が解除された際におけるワイヤ46の一対の干渉板50からの延出方向(ワイヤ46の先端側部分がピラー20の車幅方向内側へ配置される方向)を、車両12の緊急時にチューブ56を効率的に圧縮変形させることができる状態を維持しつつ一対の干渉板50に負荷をかけることなく変更でき、ラッププリテンショナ機構40を広い車種の車両12に設置することができる。
【0049】
また、ラッププリテンショナ機構40においては、スペーサ58の所定数の係合突起60がワイヤ46に係合されることで、スペーサ58のワイヤ46に対する移動が阻害されている。このため、スペーサ58がワイヤ46に対して移動して一対の干渉板50に当接することによる異音の発生を抑制することができる。
【0050】
一方、車両12の緊急時にワイヤ46の一対の干渉板50からの延出量が急激に減少される際には、スペーサ58の所定数の係合突起60におけるワイヤ46への係合に拘らず、スペーサ58のワイヤ46に対する移動が許可される。このため、ワイヤ46の一対の干渉板50からの延出量の減少及び一対の干渉板50へのチューブ56の干渉をスペーサ58が制限することを抑制できて、チューブ56が一対の干渉板50にスペーサ58を介在させた状態で干渉することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、一様化手段としてワイヤ46にスペーサ58を設けた構成としたが、一様化手段として、一対の干渉板50からのワイヤ46の延出方向に拘らず、チューブ56の一対の干渉板50への干渉方向(一対の干渉板50からのワイヤ46の延出方向)とチューブ56が干渉する一対の干渉板50の干渉面との角度を一様の傾斜角度にした構成としてもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態では、シートベルト装置10を3点支持式のもの(シートベルト28にショルダベルト部28Aとラップベルト部28Bとを設けたもの)にした構成としたが、シートベルト装置10を2点支持式のもの(シートベルト28にラップベルト部28Bのみを設けたもの)にした構成としてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、ラッププリテンショナ機構40をシート24の車幅方向外側に設けた構成としたが、ラッププリテンショナ機構40をシート24の車幅方向内側(インナアンカ36側)に設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係るシートベルト装置が適用されて構成された車両の乗員乗車状態を示す右方から見た側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るシートベルト装置が適用されて構成された車両の乗員非乗車状態を示す右方から見た側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るシートベルト装置におけるラッププリテンショナ機構を示す車両右方から見た側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るシートベルト装置におけるラッププリテンショナ機構においてワイヤの一対の干渉板からの延出方向が車両前側へ変更された状態を示す車両右方から見た側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るシートベルト装置におけるラッププリテンショナ機構においてワイヤの一対の干渉板からの延出方向が車両後側へ変更された状態を示す車両右方から見た側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るシートベルト装置におけるラッププリテンショナ機構のスペーサを示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 シートベルト装置(ベルト装置)
12 車両
14 乗員
28 シートベルト(ベルト部)
38 ミニタング(ベルト部)
42 コネクタ(ベルト部)
44 ジョイントアンカ(ベルト部)
46 ワイヤ(ベルト部)
50 干渉板(干渉部材)
54 シリンダ(減少手段)
56 チューブ(エネルギー吸収部材)
58 スペーサ(一様化手段)
60 係合突起(制限手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員に装着されることで乗員を拘束可能にされたベルト部と、
前記ベルト部が延出されると共に、前記ベルト部の延出位置を変更可能にされた干渉部材と、
前記干渉部材からの前記ベルト部の延出量を減少させることで前記ベルト部による乗員の拘束力を増加可能にされた減少手段と、
前記ベルト部に設けられ、前記減少手段が前記干渉部材からの前記ベルト部の延出量を減少させる際に前記干渉部材に干渉して変形されることで前記ベルト部の移動エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材と、
前記干渉部材からの前記ベルト部の延出位置に拘らず、前記干渉部材に前記エネルギー吸収部材が干渉して変形される際における前記エネルギー吸収部材の変形態様を一様化する一様化手段と、
を備えたベルト装置。
【請求項2】
前記一様化手段は、前記干渉部材と前記エネルギー吸収部材との間に配置され、前記干渉部材に前記エネルギー吸収部材が干渉して変形される際に前記干渉部材と前記エネルギー吸収部材との間に介在されることを特徴とする請求項1記載のベルト装置。
【請求項3】
前記一様化手段の前記ベルト部に対する移動を制限し、前記干渉部材に前記エネルギー吸収部材が干渉して変形される際に前記一様化手段の前記ベルト部に対する移動を許可する制限手段を備えたことを特徴とする請求項2記載のベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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