説明

ベルト駆動装置

【課題】本発明は、摩擦振動を抑え、長期に亘って安定して駆動可能なベルト駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ベルト駆動装置110は、回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、を備えている。そして、前記ベルト13と前記プーリ12との間で作用する摩擦力を前記ベルト13の走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、当該摩擦調整手段は、回動可能に支持される補助ロール14・15であって、当該補助ロール14・15は、前記ベルト13の前記プーリ12との接触部における走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルト13の表面を付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトが巻き掛けられたプーリの駆動により駆動力を当該ベルトを介して伝達可能なベルト駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトコンベア等のベルト駆動装置においては、ベルトとプーリとの接触部での摩擦振動(スティックスリップ)が騒音を引き起こすことが問題となっている。このような問題に鑑み特許文献1に記載のベルト式伝動装置は、プーリに対面する側のベルト表面に界面活性剤による表層が設けられている。これによると、ベルトとプーリとの接触面における静摩擦係数を低下することができる。この場合、ベルト走行に伴う温度上昇により生じるプーリとベルトとの間の粘着性を抑えることが可能となり、スティックスリップを抑制することが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−289284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたベルト式伝動装置は、ベルト表面に界面活性剤層を形成する必要があるため、ベルトの製造工程に新たな工程を付加しなければならず、ベルトの製造コストが増加し問題となる。また、長期間の使用によりベルト表面に形成された界面活性剤層が磨耗したり、剥離したりする虞があり、安定したスティックスリップの抑制効果を発揮できなくなる可能性がある。この場合、再度ベルトに界面活性剤を塗布するなどメンテナンスに要する手間が多く問題となる。また、一方で、既存のベルトを使用しながらスティックスリップを抑えて駆動できるベルト駆動装置が望まれている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、摩擦振動を抑え、長期に亘って安定して駆動可能なベルト駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明は、摩擦振動を抑え、長期に亘って安定して駆動可能なベルト駆動装置に関する。そして、本発明に係るベルト駆動装置は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明のベルト駆動装置は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るベルト駆動装置における第1の特徴は、回動可能に支持されるプーリと、当該プーリに巻き掛けられ、当該プーリの回転に伴って走行するベルトと、を備えるベルト駆動装置において、前記ベルトと前記プーリとの間で作用する摩擦力を前記ベルトの走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、当該摩擦調整手段は、回動可能に支持される補助ロールであって、当該補助ロールは、前記ベルトの前記プーリとの接触部における走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルトの表面を付勢することである。
【0008】
この構成によると、補助ロールによりベルトが付勢されることにより、ベルト駆動時においてベルトが部分的にプーリ表面から浮くことなく、全面に亘ってプーリ表面に接触した状態に近づけることが可能となる。これにより、ベルト全面に亘って略均一の摩擦力を働かせることが可能となるため、ベルトとプーリ表面との間の滑りを抑制することができ、ベルトとプーリ表面との間での摩擦振動の発生を抑えることができる。そして、摩擦振動を抑えることで、ベルトやプーリ等の劣化を抑制することができるため、長期的に安定してベルト駆動装置を駆動することが可能となる。
また、補助ロールを有しない場合に比べてプーリ表面とベルトとの接触面積が増加することにより、プーリ表面からベルトが受ける単位面積あたりの垂直抗力は減少するため、ベルトとプーリとの間に作用する単位面積あたりの摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルトとプーリとの接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
また、ベルトの走行中にベルトとプーリとの摩擦状態を調整することが可能であり、予めベルトに特別な加工を施すことは不要となる。
【0009】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第2の特徴は、前記補助ロールは、前記ベルトを両面から付勢するように少なくとも一対設けられていることである。
【0010】
この構成によると、一対の補助ロールによりベルトが両面から付勢されているため、ベルト走行時における走行方向と垂直断面形状を直線状により近づけることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第3の特徴は、前記補助ロールは、前記プーリの回転軸と平行な幅方向における前記ベルトの両端部近傍を部分的に付勢する端部付勢ロールと、当該幅方向における中央部を部分的に付勢する中央部付勢ロールと、からなることである。
【0012】
この構成によると、プーリの表面から浮き易いベルトの幅方向端部をより確実にプーリの表面に押し付けることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第4の特徴は、一対の前記補助ロールの回転軸が、前記ベルトにおける同一の法線上にないことである。
【0014】
この構成によると、ベルトの法線方向における一の補助ロールの位置を、他の補助ロールの位置とは独立して調整することが可能となる。これにより、補助ロールの位置調整の制限が少なくなり、ベルトのプーリとの接触部における走行方向と垂直な断面形状を直線状により近づけることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第5の特徴は、前記補助ロールは、前記プーリとの間で、前記ベルトを当該ベルトの厚さ方向において挟み込むように設けられていることである。
【0016】
この構成によると、ベルトがプーリ表面から浮くことをより確実に抑制可能であり、プーリ表面に対してベルトの全面を接触させた状態で安定して駆動させることが可能である。また、補助ロールの付勢によりベルトの走行経路がずれることがないため、補助ロールの取り付けの際における調整が容易となる。
【0017】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第6の特徴は、前記補助ロールは、バネの弾性力を用いて前記ベルトの表面を付勢することである。
【0018】
この構成によると、簡易な構成で補助ロールをベルトに押し付けることが可能となる。
【0019】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第7の特徴は、前記バネの弾性力が作用する方向と平行な方向における前記補助ロールの振動を減衰させる減衰器を更に備えることである。
【0020】
この構成によると、ベルトの走行による補助ロールの回転により、補助ロールに作用するバネの反力(弾性力)が変動し、その反力により補助ロールが振動した場合においても、減衰器により振動が吸収され、補助ロールの振幅を低減することができる。これにより、ベルトへの押し付け力が減少することを抑制し、摩擦力を均一にする効果を安定して発揮することができる。
【0021】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第8の特徴は、回動可能に支持されるプーリと、当該プーリに巻き掛けられ、当該プーリの回転に伴って走行するベルトと、を備えるベルト駆動装置において、前記ベルトと前記プーリとの間で作用する摩擦力を前記ベルトの走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、前記摩擦調整手段は、前記プーリの表面、及び、前記プーリの回転方向上流側に位置する前記ベルトの前記プーリに接触する側の面、の少なくともいずれか一方に、液体を供給可能な液体供給装置であることである。
【0022】
この構成によると、液体を供給することによりベルトとプーリ表面との間の摩擦係数を低減することが可能となる。この場合、液体を供給しない場合に比べ、ベルトとプーリとの間に作用する摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルトとプーリとの接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
【0023】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第9の特徴は、前記プーリの回転軸方向における前記ベルトの位置ずれを検出可能な位置検出手段を更に備え、前記液体供給装置は、当該位置検出手段により検出された前記位置ずれが所定値以上である場合は、前記液体の供給を停止又は前記位置ずれが当該所定値よりも小さい場合の液体の供給量よりも低減することである。
【0024】
この構成によると、液体を供給することによりベルトが蛇行して走行した場合において、プーリの回転軸と平行な方向における所定の走行位置からの位置ずれが所定量以上に達した時は、液体の供給が停止される。これにより、液体の供給によりベルトとプーリとの間の摩擦力を過度に低減することが抑制されベルトが大きく蛇行して走行することを抑制することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第10の特徴は、前記プーリの軸受に設置された振動計を更に備え、前記液体供給装置は、当該振動計により測定された振動が所定値以上である場合は、前記液体を供給することを特徴とする請求項6に記載のベルト駆動装置。
【0026】
この構成によると、プーリの軸受の振動が所定値以上の場合に液体の供給が行われる。これにより、常時液体を供給しなくともベルト駆動装置を駆動することができ、過度にベルトとプーリとの間の摩擦力を減少させることを防ぐことができる。
【0027】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第11の特徴は、前記ベルトと前記プーリとの接触部に近接して設置された騒音計を更に備え、前記液体供給装置は、当該騒音計により測定された騒音が所定値以上である場合は、前記液体を供給することである。
【0028】
この構成によると、ベルトとプーリとの接触部から発する音が所定値以上の場合に液体の供給が行われる。これにより、常時液体を供給することなくベルト駆動装置を駆動することができ、過度にベルトとプーリとの間の摩擦力を減少させることを防ぐことができる。
【0029】
また、本発明に係るベルト駆動装置における第12の特徴は、回動可能に支持されるプーリと、当該プーリに巻き掛けられ、当該プーリの回転に伴って走行するベルトと、を備えるベルト駆動装置において、前記ベルトと前記プーリとの間で作用する摩擦力を前記ベルトの走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、前記摩擦調整手段は、回動可能に支持される補助ロールと、前記プーリの表面及び前記プーリの回転方向上流側に位置する前記ベルトの前記プーリに接触する側の面、の少なくともいずれか一方に液体を供給可能な液体供給装置と、で構成され、前記補助ロールは、前記ベルトの前記プーリとの接触部における走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルトの表面を付勢することである。
【0030】
この構成によると、補助ロールによりベルトが付勢されることにより、ベルト駆動時においてベルトが部分的にプーリ表面から浮くことなく、全面に亘ってプーリ表面に接触した状態に近づけることが可能となる。これにより、ベルト全面に亘って略均一の摩擦力を働かせることが可能となるため、ベルトとプーリ表面との間の滑りを抑制することができ、ベルトとプーリ表面との間での摩擦振動の発生を抑えることができる。そして、摩擦振動を抑えることで、ベルトやプーリ等の劣化を抑制することができるため、長期的に安定してベルト駆動装置を駆動することが可能となる。
また、補助ロールを有しない場合に比べ、プーリ表面とベルトとの接触面積の増加することにより、プーリ表面からベルトが受ける単位面積あたりの垂直抗力は減少するため、ベルトとプーリとの間に作用する単位面積あたりの摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルトとプーリとの接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
また、ベルトの走行中にベルトとプーリとの摩擦状態を調整することが可能であり、予めベルトに特別な加工を施すことは不要となる。
【0031】
そして、液体を供給することによりベルトとプーリ表面との間の摩擦係数を低減することが可能となる。この場合、液体を供給しない場合に比べ、ベルトとプーリとの間に作用する摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルトとプーリとの接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
【0032】
更に、補助ロールをベルトにおける液体が付着する側の面を付勢するように設置した場合は、当該補助ロールの押し付け部においてベルトに付着した液体をベルトの全面に亘ってより均一に分散させることが可能となり、摩擦振動の抑制効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るベルト駆動装置110をプーリ12の回転軸方向から見た概略図である。また、図1(b)は、図1(a)における矢印A方向からベルト駆動装置110を見た概略図である。尚、当該矢印Aは、補助ローラを設置しない状態における、当該補助ローラの設置位置に対応する部分のベルトの厚さ方向と平行な方向を示す矢印である。このベルト駆動装置110は、ベルトコンベアに用いられるベルト駆動装置を例示的に示したものである。そして、ベルト駆動装置110は、回転軸11を中心として回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12の表面に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、第1補助ロール14(摩擦調整手段)と、第2補助ロール15(摩擦調整手段)と、を主として備えている。
【0035】
プーリ12の回転軸11は図示しない電動機の駆動軸等に接続され、当該電動機の駆動軸の回転により、当該プーリ12が回転するように構成されている。
【0036】
ベルト13は、プーリ12及び図示しない他の従動プーリから所定の張力を受けつつ巻き掛けられており、プーリ12の表面と、ベルト13におけるプーリ12の表面と接触する側の面13a(以下、ベルト内周面と称する)と、の間の摩擦によって、プーリ12の表面の回転に伴って移動する。
【0037】
第1補助ロール14は、ベルト駆動装置110に対して回転軸14aを中心として回転可能に支持されている。同様に、第2補助ロール15も、ベルト駆動装置110に対して回転軸15aを中心として回転可能に支持されている。回転軸14a及び回転軸15aは、プーリ12の回転軸11と略平行に延びるように配置されている。そして、第1補助ロール14は、当該第1補助ロール14の表面により、ベルト13をプーリ12に接触しない面13b(以下、ベルト外周面と称する)から付勢するように設置されている。また、第2補助ロール15は、当該第2補助ロール15の表面により、ベルト13をベルト内周面13aから付勢するように設置されている。第1補助ロール14及び第2補助ロール15は、どちらもベルト13の幅方向(プーリ12の回転軸11と平行な方向)の全域に亘ってベルト13を付勢可能な長さになるように構成されている。
【0038】
第1実施形態に係るベルト駆動装置110においては、一対の補助ロール14・15により、ベルト13を厚さ方向と平行に両面から挟みこむように構成されている。即ち、第1補助ロール14の回転軸14aと第2補助ロール15の回転軸15aとが同一平面状にあり、かつ、第1補助ロール14と第2補助ロール15によるベルト13の付勢方向が、それぞれ当該回転軸14a及び回転軸15aとを含む平面と平行になるように(図1(b)において重なるように)構成されている。
【0039】
次に、このベルト駆動装置110の構成による作用について説明する。図1(a)において、プーリ12が矢印B1方向に回転することにより、ベルト13は、矢印B2方向に走行することになる。一対の補助ロール14・15を有しない構成では、ベルトが走行方向と垂直な断面において反った状態で、ベルト13がプーリ12に接触してしまうことが多く、ベルト13の幅方向端部において滑りを生じ易くなっていた。しかしながら、ベルト駆動装置110の構成によれば、一対の補助ロール14・15がプーリ12の回転方向下流側におけるプーリ12の近傍部に設置されているため、一対の補助ロール14・15により走行方向と垂直な断面が直線状に調整される。これにより、ベルト13の幅方向端部がプーリ12の表面から浮くことなく、プーリ12の回転に伴って走行することになる。
【0040】
尚、一対の補助ロール14・15をプーリ12の上流側(ベルト13がプーリに巻き込まれる前の位置)の近傍部に設置することもできる。この場合、一対の補助ロール14・15により走行方向と垂直な断面が直線状に調整されてから、プーリ12に巻き込まれる。これにより、ベルト13は幅方向全域に亘って同時にプーリ12の表面に接触し始めることになり、ベルト13の幅方向端部がプーリ12の表面から浮くことなく、プーリ12の回転に伴って走行することになる。また、プーリ12の上流側と下流側の双方に一対の補助ロール14・15を設置した場合は、より確実にベルト13の幅方向端部がプーリ12の表面から浮くことを抑制可能である。
【0041】
次に、本発明の実施形態に係るベルト駆動装置110を用いた場合の騒音低減効果について説明する。図12(a)は、本発明の実施形態に係るベルト駆動装置110を駆動させたときの騒音測定結果である。比較のため、図12(b)に、補助ロール14・15がない構成のベルト駆動装置を駆動させた場合の騒音測定結果を示す。尚、図12において縦軸は、ベルトとプーリとの接触部近傍に設置された騒音計により測定された音圧(Pa)であり、横軸は、測定開始から経過した時間(sec)を示している。
【0042】
図12(a)に示すように、実施形態に係るベルト駆動装置110においては、騒音の音圧の絶対値は、最大で約10Paである。一方、図12(b)に示すように、補助ロール14・15がない構成のベルト駆動装置においては、騒音の音圧の絶対値は、最大で約30Paを超えるとともに、経過時間によるばらつきも大きい。これより、実施形態に係る補助ロール付のベルト駆動装置110を用いることにより、騒音の音圧を減少させる効果が発揮される。当該騒音の発生の主要因は、ベルト13とプーリ12の表面との摩擦振動であり、図12に示す測定結果から、ベルト駆動装置110を用いることにより、補助ロールがない構成に比べて、当該摩擦振動を抑制可能であることが分かる。
【0043】
以上説明したように、第1実施形態に係るベルト駆動装置110は、回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、を備えている。そして、前記ベルト13と前記プーリ12との間で作用する摩擦力を前記ベルト13の走行中に調整可能な第1補助ロール14及び第2補助ロール15を備えている。当該第1補助ロール14と第2補助ロール15とは、それぞれ回転軸14aと回転軸15aとにより回動可能に支持されるとともに、前記ベルト13の前記プーリ12との接触部におけるベルト13の走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルト13の表面を付勢する。
【0044】
この構成によると、第1補助ロール14及び第2補助ロール15にベルト13が付勢されることにより、ベルト13の駆動時においてベルト13が部分的にプーリ12の表面から浮くことなく、全面に亘ってプーリ12の表面に接触した状態に近づけることが可能となる。これにより、ベルト13の全面に亘って略均一の摩擦力を働かせることが可能となるため、ベルト13とプーリ12の表面との間の滑りを抑制することができ、ベルト13とプーリ12の表面との間での摩擦振動の発生を抑えることができる。そして、摩擦振動を抑えることで、ベルト13やプーリ12等の劣化を抑制することができるため、長期的に安定してベルト駆動装置110を駆動することが可能となる。
【0045】
また、第1補助ロール14及び第2補助ロール15を有しない場合に比べてプーリ12の表面とベルト13との接触面積が増加することにより、プーリ12の表面からベルト13が受ける単位面積あたりの垂直抗力は減少するため、ベルト13とプーリ12との間に作用する単位面積あたりの摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルト13とプーリ12との接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
【0046】
また、ベルト13の走行中にベルト13とプーリ12との摩擦状態を調整することが可能であり、予めベルト13に特別な加工を施すことは不要となる。即ち、任意のベルトを本発明のベルト駆動装置を用いて駆動することが可能である。また、ベルトが劣化した場合においても、補助ロールの位置や押し付け力の調整により、摩擦振動を抑制するように調整することが可能である。
【0047】
また、前記ベルト13を両面から付勢するように一対の補助ロール14・15が設けられているため、ベルト13の走行時における走行方向と垂直断面形状を直線状により近づけることが可能となる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図2(a)は、本発明の第2実施形態に係るベルト駆動装置120を示す概略図である。また、図2(b)は、図2(a)における矢印A方向から見たベルト駆動装置120の概略図である。尚、当該矢印Aは、補助ローラを設置しない状態における、当該補助ローラの設置位置に対応する部分のベルトの厚さ方向と平行な方向を示す矢印である。このベルト駆動装置120は、第1補助ロール14及び第2補助ロール15によるベルト13の付勢位置において第1実施形態に係るベルト駆動装置110と異なる。同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0049】
本実施形態においては、第1補助ロール14によるベルト13の付勢方向と第2補助ロール15によるベルト13の付勢方向とは、略平行になるように配置されているが、その各補助ロールの回転軸から付勢方向に延びる付勢方向ベクトルが、それぞれ一致しないように補助ロールの回転軸の位置をずらして配置されている。具体的には、ベルト内周面13a側を付勢する第2補助ロール15を、第1補助ロール14によるベルト13の付勢位置よりもプーリ12側に近づけて配置されている。これにより、ベルト13は、第2補助ロール15による付勢位置において屈曲し、その後第1補助ロール14による付勢位置において逆方向に屈曲し、その後、プーリ12から離れる向きに移動するように構成されている。
【0050】
第2実施形態に係るベルト駆動装置120の構成では、ベルト13がプーリ12から離れた直後の二箇所で屈曲するため、プーリ12から離れる直前の接触部において、ベルト13の走行方向と垂直な断面をより直線状に近づけることが可能となる。また、一の補助ロールの付勢方向における位置を他の補助ロールの位置によらず変更することが可能であるため、最適な位置に設置することが容易に可能となる。
【0051】
尚、当該一対の補助ロール14・15を上流側に配置した場合においては、ベルト13がプーリ12に接触する直前の二箇所で屈曲するため、ベルト13のプーリ12への接触開始位置において、ベルト13の走行方向と垂直な断面をより直線状に近づけることが可能となる。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態に係るベルト駆動装置120は、一対の前記補助ロール14・15の回転軸14a・15aが、前記ベルト13における同一の法線上にないように構成されている。
【0053】
この構成によると、ベルト13の法線方向における一の補助ロール14の位置を、他の補助ロール15の位置とは独立して調整することが可能となる。これにより、補助ロールの位置調整の制限が少なくなり、ベルト13の走行方向と垂直断面形状を直線状により近づけることが可能となる。
【0054】
また、第2実施形態に係るベルト駆動装置120は、以下のように変形して実施することも可能である。図3は、ベルト駆動装置120の変形例に係るベルト駆動装置121を示す図である。図3に示すように、ベルト駆動装置120における一対の補助ロール14・15の、ベルト13の走行方向における位置を逆にしてベルト駆動装置121を構成することも可能である。即ち、第1補助ロール14を第2補助ロールよりもプーリ12側に近づけることも可能である。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図4(a)は、本発明の第3実施形態に係るベルト駆動装置130を示す概略図である。また、図4(b)は、図4(a)における矢印A方向からベルト駆動装置130を見た概略図である。尚、当該矢印Aは、補助ローラを設置しない状態における、当該補助ローラの設置位置に対応する部分のベルトの厚さ方向と平行な方向を示す矢印である。このベルト駆動装置130は、ベルト13の幅方向における両端部近傍を部分的に付勢する第1補助ロール31(端部付勢ロール)と、当該ベルト13の幅方向における中央部を部分的に付勢する第2補助ロール32(中央部付勢ロール)と、を備える点で第1実施形態に係るベルト駆動装置110と異なる。同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0056】
本実施形態においては、第1補助ロール31は、ベルト13の幅方向の一端部近傍を付勢するロール31aと、当該ロール31aと同形状でありベルト13の幅方向の他端部近傍を付勢するロール31bとを備えている。当該ロール31a及びロール31bは、いずれも回転軸31cに対して回動可能に設置されている。そして、当該ロール31aとロール31bとにより、ベルト13の幅方向両端部近傍は、ベルト外周面13b側から付勢されている。
【0057】
一方、第2補助ロール32は、ベルト13の幅方向における中央部分(ロール31a及びロール31bに付勢されていない部分)をベルト内周面13aから付勢するように配置されたロール32aを備えている。ロール32aは、第1補助ロール31の回転軸31cと平行に延びる回転軸32bに回動可能に設置されており、ロール32aの外径はロール31a及びロール31bと同じ大きさの外径として形成されている。
【0058】
第1補助ロール31と第2補助ロール32とによるベルト13の付勢により、ベルト13の幅方向の両端部近傍はプーリ12の表面側に近づくように押し付けられ、ベルト13の幅方向の中央部はプーリ12の表面側から離れるように押し付けられる。これにより、ベルト13の幅方向中央部がプーリ12の表面から離れるときにプーリ12の表面から浮き易いベルト13の幅方向端部をより確実にプーリ12の表面に接触させることが可能となる。
【0059】
また、第1補助ロール31の回転軸31cと第2補助ロール32の回転軸32bとがベルト13の同一の法線(ベルト13の厚さ方向と平行に延びる線)上に位置している。この場合においても、第1補助ロール31と第2補助ロール32とによるベルト13の幅方向における付勢位置がずれているため、回転軸31cと回転軸32bとの距離をより近づけることが可能となる。即ち、一対の補助ロール31・32とベルト13との接触部において、ベルト13の断面が直線状になるように一対の補助ロール31・32が配置された状態から、一対の補助ロール31・32の回転軸間の距離が更に近づくように一方の補助ロールをベルト13側に押込むことができる。これより、ベルト13とプーリ12との接触状態の微調整を行うことが可能となる。
【0060】
尚、第1補助ロール31と第2補助ロール32とをプーリ12の上流側に配置した場合においては、ベルト13の幅方向中央部がプーリ12の表面に接触するときにプーリ12の表面から浮き易いベルト13の幅方向端部をより確実にプーリ12の表面に接触させることが可能となる。
【0061】
以上説明したように、第3実施形態に係るベルト駆動装置130は、プーリ12の回転軸11と平行な幅方向における前記ベルト13の両端部近傍を部分的に付勢する第1補助ロール31と、当該幅方向における中央部を部分的に付勢する第2補助ロール32と、を備えている。
【0062】
この構成によると、プーリ12の表面から浮き易いベルト13の幅方向端部をより確実にプーリ12の表面に押し付けることが可能となる。
【0063】
また、第3実施形態に係るベルト駆動装置130は、以下のように変形して実施することも可能である。図5は、ベルト駆動装置130の第1変形例に係るベルト駆動装置131を示す図である。第1変形例に係るベルト駆動装置131は、ベルト駆動装置130における第1補助ロール31の回転軸31cの位置と第2補助ロール32の回転軸32bの位置とがベルト13の走行方向においてずれている点でベルト駆動装置130と異なる。当該第1変形例においてはベルト内周面13aを付勢する第2補助ロール32が、ベルト外周面13bを付勢する補助ロール33よりもプーリ12に近づくように配置されている。
【0064】
また、図6は、ベルト駆動装置130の第2変形例に係るベルト駆動装置132を示す図である。第2変形例に係るベルト駆動装置132は、第1変形例に係るベルト駆動装置131における第1補助ロール31と第2補助ロール32とのベルト走行方向における位置を逆にしたものである。即ち、ベルト外周面13bを付勢する第1補助ロール31が、ベルト内周面13aを付勢する第2補助ロール32よりもプーリ12に近づくように配置されたものである。
【0065】
また、図7は、ベルト駆動装置130の第3変形例に係るベルト駆動装置133を示す図である。第3変形例に係るベルト駆動装置133は、第1変形例に係るベルト駆動装置131における第1補助ロール31を、回転軸33aに回転可能に支持されベルト13の幅方向全域を付勢可能な長さの補助ロール33に置き換えて構成されたものである(図7(b)参照)。
【0066】
また、図8は、ベルト駆動装置130の第4変形例に係るベルト駆動装置134を示す図である。第4変形例に係るベルト駆動装置134は、第2変形例に係るベルト駆動装置132における第1補助ロール31を、回転軸33aに回転可能に支持されベルト13の幅方向全域を付勢可能な長さの補助ロール33に置き換えて構成されたものである(図8(b)参照)。
【0067】
第1変形例及び第2変形例に係るベルト駆動装置131、132においては、一対の補助ロール31・32の回転軸がベルト走行方向においてずれているため、一の補助ロールのベルト付勢方向における位置を他の補助ロールの位置によらず変更することが可能となる。同様に、第3変形例及び第4変形例に係るベルト駆動装置133、134においても、一対の補助ロール33・32の回転軸がベルト走行方向においてずれているため、一の補助ロールの付勢方向における位置を他の補助ロールの位置によらず変更することが可能となる。これより、ベルト13を部分的に付勢する補助ロールの位置調整によりベルト13とプーリ12の表面との接触状態の微調整が容易に可能となる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図9は、本発明の第4実施形態に係るベルト駆動装置140を示す概略図である。このベルト駆動装置140は、補助ロールが、プーリ12との間で、ベルト13を当該ベルト13の厚さ方向において挟み込むように設けられた補助ロール40である点で第1実施形態に係るベルト駆動装置110と異なる。同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0069】
本実施形態においては、補助ロール40は、ベルト13を付勢するためのロール41と、プーリ12の回転軸と略平行に延びて当該ロール41を回転可能に支持する回転軸42と、当該回転軸42の両端部をベルト駆動装置140の本体に対して支持する支持部材43とを備えている。
【0070】
支持部材43は、ロール41の支持部を一端として、プーリ12と逆側に延出して形成され、他端側をベルト駆動装置140の本体側に設置されている。補助ロール41は、支持部材43の角度等を調整することにより、プーリ12の表面と当該補助ロール41とでベルト13を挟みこむことが可能な位置に配置される。例えば、支持部材43のロール41側と逆側の端部を、ロール41の回転軸方向と平行な軸周りに回動自在に設置して、ロール41の自重によりベルト13をプーリ12の表面に対して押さえ込むように構成することも可能である。
【0071】
ベルト駆動装置140の駆動時において、ベルト13は、補助ロール40とプーリ12の表面との間で挟みこまれているため、ベルト13がプーリ12の表面から浮くことをより確実に抑制可能であり、プーリ12の表面に対してベルト13の全面を接触させた状態で安定して駆動させることが可能である。また、ベルト13の位置(ベルトの走行時の軌道)は、補助ロール40を設置しない場合とほとんど変わらないため補助ロール取り付けの際の調整が容易となる。
【0072】
次に、本発明の第4実施形態に係るベルト駆動装置140を用いた場合の騒音低減効果について説明する。図13(a)は、本発明の第4実施形態に係るベルト駆動装置140を駆動させたときの騒音測定結果である。比較のため、図13(b)に、補助ロール40がない構成のベルト駆動装置を駆動させた場合の騒音測定結果を示す。尚、図13において縦軸は、ベルトとプーリとの接触部近傍に設置された騒音計により測定された音圧(Pa)であり、横軸は、測定開始から経過した時間(sec)を示している。
【0073】
図13(a)に示すように、実施形態に係るベルト駆動装置140においては、騒音の音圧の絶対値は、最大で約10Paである。一方、図13(b)に示すように、補助ロール40がない構成のベルト駆動装置においては、騒音の音圧の絶対値は、最大で約30Paを超えるとともに、経過時間によるばらつきも大きい。これより、実施形態に係る補助ロール付のベルト駆動装置140を用いることにより、騒音の音圧を減少させる効果が発揮されることが分かる。
【0074】
以上説明したように、第4実施形態に係るベルト駆動装置140においては、補助ロール40が、前記プーリ12との間で、前記ベルト13を当該ベルト13の厚さ方向において挟み込むように設けられている。
【0075】
この構成によると、ベルト13がプーリ12の表面から浮くことをより確実に抑制可能であり、プーリ12の表面に対してベルト13の全面を接触させた状態で安定して駆動させることが可能である。また、補助ロール40の付勢によりベルト13の走行時における軌道がずれることがないため、補助ロール40の取り付けの際における調整が容易となる。
【0076】
また、第4実施形態に係るベルト駆動装置140は、以下のように変形して実施することが可能である。図10は、ベルト駆動装置140の第1変形例に係るベルト駆動装置141を示す図である。第1変形例に係るベルト駆動装置141は、ベルト駆動装置140における補助ロール40の支持部材43に、当該支持部材43を移動又は変形する弾性力を作用させることが可能な弾性体44が設置されている。弾性体44は、例えばバネにより構成され、所定の引張力が作用した状態で一端をベルト駆動装置141の本体に、他端を支持部材43に固定されている。これにより、当該バネの反力(当該弾性体44の弾性力)によりロール41がベルト13に押し付けられることになる。
【0077】
また、ベルト駆動装置141には、弾性体44の長手方向と平行に並んで減衰器44’が設置されている。減衰器44’は、弾性体44であるバネの反力(弾性力)が作用する方向と平行な方向における補助ロール40の振動を減衰させるように支持部材43とベルト駆動装置141の本体との間に設置されている。
【0078】
この構成によれば、ベルト13の走行時において補助ロール40のロール41が回転することにより、補助ロール40に作用するバネの反力が変動し、その反力の変動により、補助ロール40が振動する場合においても、当該振動が大きくなることを抑制し、補助ロール40によるベルト13の押し付け力が減少することを抑制可能である。したがって、摩擦力を均一にする効果を安定して発揮することが可能となる。
【0079】
尚、バネの反力(弾性力)を用いて補助ロールをベルトに押し付ける構成は、第4実施形態に係るベルト駆動装置141に限らず、他の実施形態に係るベルト駆動装置においても同様に適用することが可能である。
【0080】
また、図11は、ベルト駆動装置140の第2変形例に係るベルト駆動装置142を示す図である。第2変形例に係るベルト駆動装置142は、ベルト駆動装置140における補助ロール40の支持部材43に対して、当該支持部材43を移動又は変形可能な力を作用させることが可能なアクチュエータ45が設置されている。アクチュエータ45は、例えば、油圧又は空圧等により作動するシリンダ装置により構成され、当該油圧又は空圧の調整により、ロール41がプーリ12の表面側に移動するように支持部材43に対して力を作用させることでロール41によるベルト13の押し付け力を調整することが可能となる。
【0081】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図14は、本発明の第5実施形態に係るベルト駆動装置150をプーリ12の回転軸方向から見た概略図とともに水供給装置50の構成を模式的に示す図である。このベルト駆動装置150は、ベルトコンベアに用いられるベルト駆動装置を例示的に示したものである。
【0082】
ベルト駆動装置150は、第1実施形態に係るベルト駆動装置110と同様に、回転軸11を中心として回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12の表面に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、を備えている。そして、プーリ12の回転方向上流側に位置するベルト13のベルト内周面13aに向かって水を供給可能な水供給装置50(液体供給装置)を備えている。尚、第1実施形態と同様に、プーリ12の回転方向は図14において矢印B1で示す方向であり、ベルト13の走行方向は矢印B2で示す方向である。
【0083】
水供給装置50は、供給する水を蓄えるタンク51と、当該タンク51に蓄えられた水を吸い上げるためのポンプ52と、当該ポンプ52から管路を通って供給される水をベルト内周面13aに向かって放出するためのノズル53と、を主として備えて構成される。ノズル53は、例えば、ベルト13の幅方向全体に水を放出することができるようにプーリ12の回転軸11と平行に複数並んで設置することができる。また、水の供給及び供給の停止は、図示しないスイッチ等により、作業者が必要に応じて切り替え可能となっている。
【0084】
ベルト駆動装置150の駆動によりプーリ12が回転している際に、作業者により水供給装置50が駆動されると、連続的にノズル53からベルト内周面13aに向かって水が放出される。水は、プーリ12の回転方向上流側のベルト内周面13aに供給されるため、ベルト13に付着した水は、プーリ12とベルト13との接触部に向かってベルト13とともに移動し、ベルト内周面13aとプーリ12の表面との間に巻き込まれていくことになる。これにより、ベルト13の走行中において、ベルト13とプーリ12の表面との摩擦係数を安定的に下げることが可能となる。
【0085】
尚、水の放出は、ベルト13の幅方向全体に放出されるように構成する場合に限らず、ベルト13の幅方向の端部もしくは中央部に向かって部分的に放出される構成であってもよい。また、プーリ12の表面に向かって水が放出され、プーリ12の回転によりベルト内周面13aに水が付着するように構成してもよいし、ベルト13とプーリ12とが接触し始める位置に向かって水を放出するように構成してもよい。
【0086】
次に、本発明の第5実施形態に係るベルト駆動装置150を用いた場合の騒音低減効果について説明する。図19は、本発明の第5実施形態に係るベルト駆動装置150を駆動させたときの騒音測定結果である。尚、図19において縦軸は、ベルトとプーリとの接触部近傍に設置された騒音計により測定された音圧(Pa)であり、横軸は、測定開始から経過した時間(sec)を示している。また、水供給装置50からの水の供給が開始された時間をt1、水の供給を停止した時間をt2として示している。
【0087】
図19に示すように、水供給装置50からの水の供給が開始される前(0〜t1(sec)の範囲)においては、騒音計により測定された音圧の絶対値は約20Paを超えており、ベルト13とプーリ12との接触部で大きな音を発せられていることが分かる。一方、水供給装置50から水が供給されている時間t1〜t2(sec)の範囲においては、騒音計により測定された音圧の絶対値は約10Pa程度まで減少していることが分かる。その後、水供給装置50からの水の供給を停止すると、騒音が徐々に増加していくことが分かる。
【0088】
この結果から、第5実施形態に係るベルト駆動装置150を用い、ベルト13の走行時において水供給装置50から水を供給することによりベルト13とプーリ12との接触部で発せられる騒音を低減可能であることが分かる。この騒音は、ベルト13とプーリ12との間の摩擦振動により発生する音の影響が大きいと考えられ、ベルト駆動装置150を用いることにより、当該摩擦振動が抑制可能と考えられる。
【0089】
以上説明したように、第5実施形態に係るベルト駆動装置150は、回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、を備えている。そして、前記ベルト13と前記プーリ12との間で作用する摩擦力を水供給装置50により前記ベルト13の走行中に調整可能である。水供給装置50は、前記プーリ12の回転方向上流側に位置する前記ベルト13の前記プーリ12と接触する側の表面(ベルト内周面13a)に、水を供給することが可能である。
【0090】
この構成によると、水を供給することによりベルト13とプーリ12の表面との間の摩擦係数を低減することが可能となる。この場合、水を供給しない場合に比べ、ベルト13とプーリ12との間に作用する摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルト13とプーリ12との接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
【0091】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図15は、本発明の第6実施形態に係るベルト駆動装置160の斜視概略図とともに水供給装置50及び当該水供給装置50の制御構成を模式的に示す図である。尚、第5実施形態と同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0092】
第6実施形態に係るベルト駆動装置160は、プーリ12の回転軸方向におけるベルト13の位置ずれを検出可能な位置検出装置60(位置検出手段)を更に備えている。この位置検出装置60は、光学式透過型位置検出器としての発光素子ユニット61及び受光素子ユニット62と、センサコントローラ63と、コンピュータ64と、を備えている。
【0093】
発光素子ユニット61と受光素子ユニット62とは、ベルト13を幅方向全域において挟みこむように設置される。そして、発光素子ユニット61から受光素子ユニット62へ向かう光の遮断状態を検出することにより、プーリ12の回転軸11と平行な方向におけるベルト13の位置が検出される。センサコントローラ63は、発光素子ユニット61と受光素子ユニット62とを制御するとともに、得られた位置データ(以下、検出位置データと称する)をコンピュータ64に出力する。
【0094】
コンピュータ64には、ベルト13が適正位置にあることを示す適正位置データが予め入力されている。当該適正位置とは、例えば、プーリ12における回転軸方向の中央にベルトが位置する状態とすることができる。
【0095】
次に、ベルト駆動装置160の制御動作について説明する。
ベルト駆動装置160の駆動を開始すると、プーリ12の回転に伴ってベルト13が走行する。水供給装置50は、プーリ12の回転が開始すると自動的に予め設定した量(以下、通常供給量と称する)の水を供給するように設定されている。尚、スイッチ等により作業者が手動で水供給装置50による水の供給を開始する構成としてもよい。
【0096】
位置検出装置60は、ベルト13の走行中において当該ベルトの位置検出を連続的に行うように設定されている。そして、コンピュータ64は、センサコントローラ63からの検出位置データと、適正位置データと、の比較により、走行中のベルト13の適正位置からの位置ずれを算出する。算出された位置ずれが予め設定された所定値以上である場合には、コンピュータ64によりポンプ流量調整弁54が調整され、ポンプ52からノズル53に供給される水の量が通常供給量よりも低減される。尚、位置ずれが予め設定された所定値以上である場合に水の供給を停止するように制御してもよい。
【0097】
以上説明したように、第6実施形態に係るベルト駆動装置160は、前記プーリ12の回転軸方向における前記ベルト13の位置ずれを検出可能な位置検出装置60を更に備え、水供給装置50は、当該位置検出装置60により検出された前記位置ずれが所定値以上である場合は、水の供給を通常供給量(前記位置ずれが当該所定値よりも小さい場合の液体の供給量)よりも低減するように制御される。
【0098】
この構成によると、水を供給することによりベルト13が蛇行して走行した場合において、プーリ12の回転軸と平行な方向における所定の走行位置からの位置ずれが所定量以上に達した時は、水の供給が停止される。これにより、水の供給によりベルト13とプーリ12との間の摩擦力を過度に低減することが抑制されベルト13が大きく蛇行して走行することを抑制することが可能となる。
【0099】
また、第6実施形態に係るベルト駆動装置160は、以下のように変形して実施することも可能である。図16は、ベルト駆動装置160の変形例に係るベルト駆動装置161を示す図である。変形例に係るベルト駆動装置161は、ベルト駆動装置160における位置検出装置60の発光素子ユニット61及び受光素子ユニット62を、カメラ65に置き換えた点でベルト駆動装置160と異なる。
【0100】
このベルト駆動装置161においてカメラ65は、プーリ12に接触して走行する部分のベルト13を撮影できるように、ベルト駆動装置161の本体に固定されている。そして、予め、ベルト13が適正位置で走行している状態の画像データ(適正位置画像データ)がコンピュータ64に記憶されており、ベルト13の走行時においてカメラ65により撮影された画像データと、当該適正位置画像データと、を比較することにより、走行時のベルト13の位置ずれが算出される。
【0101】
ベルト駆動装置161の駆動時における水供給量の制御は、ベルト駆動装置160における制御と同様に、カメラ65により撮影された画像データ及び適正位置画像データとから算出された位置ずれが予め設定された所定値以上である場合には、コンピュータ64によりポンプ流量調整弁54が調整され、ポンプ52からノズル53に供給される水の量が通常供給量よりも低減されることになる。
【0102】
変形例に係るベルト駆動装置161の構成によれば、カメラ65によりベルト13の位置ずれを検出できるため、位置検出手段の設置位置の制限が少なく有効である。
【0103】
尚、非接触式の位置検出手段を用いる場合に限定されず、例えば、当接することにより検出信号を出力する接触式のスイッチを、ベルト13が蛇行したときに当該ベルト13が当接するような位置に設け、当該スイッチの信号に基づいて水の供給を制御することも可能である。
【0104】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。図17は、本発明の第7実施形態に係るベルト駆動装置170の斜視概略図とともに水供給装置50及び当該水供給装置50の制御構成を模式的に示す図である。尚、第6実施形態と同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0105】
第7実施形態に係るベルト駆動装置170は、プーリ12の回転軸11の軸受16に設置された振動計71と、ベルト13とプーリ12との接触部に近接して設置された騒音計73と、を更に備えている。
【0106】
振動計71は、プーリ12の回転軸11を支持する軸受16の振動加速度を測定可能に設置された加速度計である。この振動計71による測定データ(以下、振動測定データと称する)は、アンプ72で増幅されてコンピュータ64に入力される。
【0107】
騒音計73は、ベルト13とプーリ12との接触部から発する音(音圧)を測定可能に設置される。この騒音計73による測定データ(以下、騒音測定データと称する)は、アンプ74で増幅されてコンピュータ64に入力される。
【0108】
コンピュータ64は、入力された振動測定データにおけるプーリ12とベルト13との摩擦振動に対応した周波数の振動レベルを算出する。また、入力された騒音測定データにおける摩擦振動に対応した周波数の騒音レベルを算出する。ここで、振動レベルとは、測定された加速度に対して摩擦振動の周波数範囲に基づいて、摩擦振動が原因となるデータを抽出するように補正を施した後に、その実効値の対数演算を行ってデシベルの値に変換した量である。同様に、騒音レベルとは、測定された音圧に対して摩擦振動の周波数範囲に基づいて、摩擦振動が原因となるデータを抽出するように補正を施した後に、その実効値の対数演算を行ってデシベルの値に変換した量である。
【0109】
次に、ベルト駆動装置170の制御動作について説明する。
ベルト駆動装置170の駆動を開始すると、プーリ12の回転に伴ってベルト13が走行する。ベルト13の走行中においては、振動計71及び騒音計73により連続的に振動及び騒音の測定が行われる。
【0110】
振動計71により測定された振動測定データから算出される振動レベルが、コンピュータ64に予め設定されている所定の振動レベル以上になった場合、コンピュータ64によりポンプ流量調整弁54が調整され、水供給装置50のノズル53からベルト13とプーリ12との接触部に所定流量(通常供給流量)の水の供給が開始される。
【0111】
また、騒音計73により測定された騒音測定データから算出される騒音レベルが、コンピュータ64に予め設定されている所定の騒音レベル以上になった場合も、同様に水供給装置50から通常供給流量の水の供給が開始される。
【0112】
一方、振動計71により測定された振動測定データから算出される振動レベルが、コンピュータ64に予め設定されている所定の振動レベルよりも小さく、且つ、騒音計73により測定された騒音測定データから算出される騒音レベルが、コンピュータ64に予め設定されている所定の騒音レベルよりも小さい場合は、水の供給を停止するように水供給装置50が制御される。
【0113】
水供給装置50から水の供給がなされている場合、第6実施形態で説明したのと同様に、位置検出装置60により検出された位置検出データに基づいて算出された位置ずれが予め設定された所定値以上である場合には、コンピュータ64によりポンプ流量調整弁54が調整され、ポンプ52からノズル53に供給される水の量が通常供給量よりも低減される。尚、位置ずれが予め設定された所定値以上である場合には水の供給を停止するように制御してもよい。
【0114】
以上説明したように、第7実施形態に係るベルト駆動装置170は、前記プーリ12の軸受16に設置された振動計71を更に備え、水供給装置50は、当該振動計71により測定された振動レベルが所定の振動レベル以上である場合は、水を供給するように制御される。即ち、振動計71により測定された振動レベルが所定の振動レベルよりも小さければ、水の供給を停止する構成とすることが可能である。
【0115】
この構成によると、プーリ12の軸受16の振動レベルが所定の振動レベル以上の場合に水の供給が行われる。これにより、常時水を供給しなくともベルト駆動装置170を駆動することができ、過度にベルト13とプーリ12との間の摩擦力を減少させることを防ぐことができる。
【0116】
また、第7実施形態に係るベルト駆動装置170は、前記ベルト13と前記プーリ12との接触部に近接して設置された騒音計73を更に備え、前記水供給装置50は、当該騒音計73により測定された騒音レベルが所定の騒音レベル以上である場合は、水を供給するように制御される。即ち、騒音計73により測定された騒音レベルが所定の騒音レベルよりも小さければ、水の供給を停止する構成とすることが可能である。
【0117】
この構成によると、ベルト13とプーリ12との接触部から発せられる音の騒音レベルが所定の騒音レベル以上の場合に水の供給が行われる。これにより、常時水を供給することなくベルト駆動装置170を駆動することができ、過度にベルト13とプーリ12との間の摩擦力を減少させることを防ぐことができる。
【0118】
また、第7実施形態に係るベルト駆動装置170は、以下のように変形して実施することも可能である。図18は、ベルト駆動装置170の変形例に係るベルト駆動装置171を示す図である。変形例に係るベルト駆動装置171は、ハイパスフィルター75を設けた点でベルト駆動装置170と異なる。
【0119】
ハイパスフィルター75は、ベルト13とプーリ12との摩擦振動の周波数範囲における最低の周波数(以下、摩擦振動の最低周波数と称する)よりも小さい周波数を有する測定信号を遮断するように構成されている。尚、摩擦振動の周波数範囲は、実験又は解析等により求めることが可能であり、予め得られた当該周波数範囲の最低周波数に基づいてハイパスフィルター75で遮断する周波数範囲が設定される。これにより、振動計71からコンピュータ64に送信される振動測定データ(測定信号)における摩擦振動の最低周波数よりも低い周波数を有する測定データ部分は遮断される。したがって、コンピュータ64には、振動計71から、当該振動計71による測定データのうち、摩擦振動の最低周波数以上の部分のみ入力されることになる。
【0120】
同様に、騒音計73からコンピュータ64に送信される騒音測定データ(測定信号)における摩擦振動の最低周波数よりも低い周波数を有する測定データ部分は遮断される。したがって、コンピュータ64には、騒音計73から、当該騒音計73による測定信号のうち、摩擦振動の最低周波数以上の部分のみ入力されることになる。
【0121】
コンピュータ64は、ハイパスフィルター75を介して入力された振動測定データに基づいて水供給装置50を制御する。
【0122】
具体的には、コンピュータ64に入力された振動測定データにおける振動加速度の振幅が、コンピュータ64に予め設定されている所定の加速度振幅値以上になった場合、コンピュータ64によりポンプ流量調整弁54が調整され、水供給装置50のノズル53からベルト13とプーリ12との接触部に所定流量(通常供給流量)の水の供給が開始される。
【0123】
また、コンピュータ64に入力された騒音測定データにおける音圧の振幅が、コンピュータ64に予め設定されている所定の音圧振幅値以上になった場合も、同様に水供給装置50から通常供給流量の水の供給が開始される。
【0124】
一方、コンピュータ64に入力された振動測定データにおける振動加速度の振幅が、コンピュータ64に予め設定されている所定の加速度振幅値よりも小さく、且つ、コンピュータ64に入力された騒音測定データにおける音圧の振幅が、コンピュータ64に予め設定されている所定の音圧振幅値よりも小さい場合は、水の供給を停止するように水供給装置50が制御される。
【0125】
水供給装置50から水の供給がなされている場合は、第7実施形態に係るベルト駆動装置と同様に位置検出装置60により検出された位置検出データに基づいて水供給装置50が制御されることになる。
【0126】
この変形例に係るベルト駆動装置171においては、ハイパスフィルター75の作用により、コンピュータ64におけるデータ処理を複雑にすることなく、摩擦振動に対応した周波数範囲の測定データに基づいて水供給装置50を制御することが可能となる。
【0127】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。図20は、本発明の第8実施形態に係るベルト駆動装置180の斜視概略図とともに水供給装置50及び当該水供給装置50の制御構成を模式的に示す図である。このベルト駆動装置180は、第5実施形態に係るベルト駆動装置150に第1補助ロール81及び第2補助ロール82を設けて構成されており、第5実施形態と同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0128】
第8実施形態に係るベルト駆動装置180は、ベルト駆動装置180は、回転軸11を中心として回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12の表面に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、第1補助ロール81(摩擦調整手段)と、第2補助ロール82(摩擦調整手段)と、プーリ12の回転方向上流側に位置するベルト13のベルト内周面13aに向かって水を供給可能な水供給装置50(液体供給装置)を備えている。尚、プーリ12の回転方向は図20において矢印B1で示す方向であり、ベルト13の走行方向は矢印B2で示す方向である。
【0129】
第1補助ロール81は、ベルト駆動装置180に対して回転軸81aを中心として回転可能に支持されている。同様に、第2補助ロール82も、ベルト駆動装置180に対して回転軸82aを中心として回転可能に支持されている。回転軸81a及び回転軸82aは、プーリ12の回転軸11と略平行に延びるように配置されている。そして、第1補助ロール81は、当該第1補助ロール81の表面により、ベルト13をプーリ12に接触しない面13b(以下、ベルト外周面と称する)から付勢するように設置されている。また、第2補助ロール82は、当該第2補助ロール82の表面により、ベルト13をベルト内周面13aから付勢するように設置されている。第1補助ロール81及び第2補助ロール82は、どちらもベルト13の幅方向(プーリ12の回転軸11と平行な方向)の全域に亘ってベルト13を付勢可能な長さになるように構成されている。
【0130】
本実施形態においては、一対の補助ロール81・82により、ベルト13を厚さ方向と平行に両面から挟みこむように構成されている。そして、当該一対の補助ロール81・82によりベルト13が挟みこまれる位置は、プーリ12の回転方向上流側における、ノズル53からの水供給位置よりも、プーリ12に近づいた位置になるように配置されている。
【0131】
ベルト駆動装置180の駆動によりプーリ12が回転している際に、作業者により水供給装置50が駆動されると、連続的にノズル53からベルト内周面13aに向かって水が放出される。水は、プーリ12の回転方向上流側のベルト内周面13aに供給されるため、ベルト13に付着した水は、まず、第2補助ロール82とベルト13との接触部に向かってベルト13とともに移動する。そして、ベルト内周面13aに付着した水は、第2補助ロール82とベルト13との接触部においてベルト全面に亘って均一に分散される。その後、内周面のほぼ前面に水が付着したベルト13は、プーリ12に巻き込まれていくことになる。これにより、ベルト13の走行中において、ベルト13とプーリ12の表面との摩擦係数をより安定的に下げることが可能となる。
【0132】
以上説明したように、第8実施形態に係るベルト駆動装置180は、回動可能に支持されるプーリ12と、当該プーリ12に巻き掛けられ、当該プーリ12の回転に伴って走行するベルト13と、を備えている。そして、前記ベルト13と前記プーリ12との間で作用する摩擦力を前記ベルト13の走行中に調整可能な、第1補助ロール81と、第2補助ロール82と、前記プーリ12の回転方向上流側に位置する前記ベルト13の内周面に水を供給可能な水供給装置50と、を有する。第1補助ロール81と第2補助ロール82とは、前記ベルト13における走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルト13の表面を付勢するものである。
【0133】
この構成によると、第1補助ロール81及び第2補助ロール82によりベルト13が付勢されることにより、ベルト駆動時においてベルト13が部分的にプーリ12の表面から浮くことなく、全面に亘ってプーリ12の表面に接触した状態に近づけることが可能となる。これにより、ベルト全面に亘って略均一の摩擦力を働かせることが可能となるため、ベルト13とプーリ12の表面との間の滑りを抑制することができ、ベルト13とプーリ12の表面との間での摩擦振動の発生を抑えることができる。そして、摩擦振動を抑えることで、ベルト13やプーリ12等の劣化を抑制することができるため、長期的に安定してベルト駆動装置180を駆動することが可能となる。
【0134】
また、第1補助ロール81及び第2補助ロール82をいずれも有しない場合に比べ、プーリ12の表面とベルト13との接触面積の増加することにより、プーリ12の表面からベルト13が受ける単位面積あたりの垂直抗力は減少するため、ベルト13とプーリ12との間に作用する単位面積あたりの摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルト13とプーリ12との接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
【0135】
また、ベルト13の走行中にベルト13とプーリ12との摩擦状態を調整することが可能であり、予めベルト13に特別な加工を施すことは不要となる。
【0136】
そして、水を供給することによりベルト13とプーリ12の表面との間の摩擦係数を低減することが可能となる。この場合、液体を供給しない場合に比べ、ベルト13とプーリ12との間に作用する摩擦力を減少させることができる。これにより、ベルト13とプーリ12との接触部において局所的に摩擦力が大きくなることにより発生する摩擦振動を抑制することが可能である。
【0137】
更に、第2補助ロール82をベルト13における水が付着する側の面を付勢するように設置されているため、当該第2補助ロール82の押し付け部においてベルト内周面13aに付着した水をベルト内周面13aの全面に亘ってより均一に分散させることが可能となり、摩擦振動の抑制効果を向上させることができる。
【0138】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態、及び、変形例の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0139】
(1)本実施形態においては、ベルト13を両面から補助ロールにより付勢する構成を示したが、必ずしも両面から付勢する場合に限定されない。例えば、補助ロールを一つのみ用いて、ベルト13の一方の面から付勢した構成としてもよい。また、補助ロールの数は設置スペースに応じて様々に変更することができ、複数の位置に補助ロールを並べて設置することも可能である。
【0140】
(2)本実施形態においては、ベルトに供給する液体として水を例示的に示しているが、水に限定されず、ベルトとプーリとの摩擦を低減することが可能な液体であれば同様に用いることが可能である。例えば、油やアルコールなどを用いることが可能である。
【0141】
(3)第7実施形態に係るベルト駆動装置170においては、位置検出装置60、振動計71、及び騒音計73を備える構成を例示したが、必ずしも全て備えて構成する場合に限定されない。例えば、位置検出装置60及び騒音計73を有さず、振動計71のみ備える構成とすることも可能である。この場合、振動計71による測定データのみに基づいて、第7実施形態と同様に水供給装置50を制御することが可能である。同様にして、騒音計73のみ備える構成とすることも可能である。この場合、騒音計73による測定データのみに基づいて、第7実施形態と同様に水供給装置50を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1実施形態に係るベルト駆動装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【図3】第2実施形態に係るベルト駆動装置の変形例を示す概略図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【図5】第3実施形態に係るベルト駆動装置の第1変形例を示す概略図である。
【図6】第3実施形態に係るベルト駆動装置の第2変形例を示す概略図である。
【図7】第3実施形態に係るベルト駆動装置の第3変形例を示す概略図である。
【図8】第3実施形態に係るベルト駆動装置の第4変形例を示す概略図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【図10】第4実施形態に係るベルト駆動装置の第1変形例を示す概略図である。
【図11】第4実施形態に係るベルト駆動装置の第2変形例を示す概略図である。
【図12】第1実施形態に係るベルト駆動装置における補助ロールがない場合(a)と、補助ロールがある場合(b)と、の騒音測定結果を示す図である。
【図13】第4実施形態に係るベルト駆動装置における補助ロールがない場合(a)と、補助ロールがある場合(b)と、の騒音測定結果を示す図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【図16】第6実施形態に係るベルト駆動装置の変形例を示す概略図である。
【図17】本発明の第7実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【図18】第7実施形態に係るベルト駆動装置の変形例を示す概略図である。
【図19】第5実施形態に係るベルト駆動装置における騒音測定結果を示す図である。
【図20】本発明の第8実施形態に係るベルト駆動装置の概略図である。
【符号の説明】
【0143】
12 プーリ
13 ベルト
14、15 補助ロール
31 補助ロール(端部付勢ロール)
32 補助ロール(中央部付勢ロール)
44 弾性体(バネ)
44’減衰器
50 水供給装置(液体供給装置)
60 位置検出装置(位置検出手段)
71 振動計
73 騒音計
110 ベルト駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能に支持されるプーリと、当該プーリに巻き掛けられ、当該プーリの回転に伴って走行するベルトと、を備えるベルト駆動装置において、
前記ベルトと前記プーリとの間で作用する摩擦力を前記ベルトの走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、
当該摩擦調整手段は、回動可能に支持される補助ロールであって、
当該補助ロールは、前記ベルトの前記プーリとの接触部における走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルトの表面を付勢することを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記補助ロールは、前記ベルトを両面から付勢するように少なくとも一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記補助ロールは、前記プーリの回転軸と平行な幅方向における前記ベルトの両端部近傍を部分的に付勢する端部付勢ロールと、当該幅方向における中央部を部分的に付勢する中央部付勢ロールと、からなることを特徴とする請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
一対の前記補助ロールの回転軸が、前記ベルトにおける同一の法線上にないことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記補助ロールは、前記プーリとの間で、前記ベルトを当該ベルトの厚さ方向において挟み込むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記補助ロールは、バネの弾性力を用いて前記ベルトの表面を付勢することを特徴とする請求項1乃至請求項5の少なくともいずれか1項に記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
前記バネの弾性力が作用する方向と平行な方向における前記補助ロールの振動を減衰させる減衰器を備えることを特徴とする請求項6に記載のベルト駆動装置。
【請求項8】
回動可能に支持されるプーリと、当該プーリに巻き掛けられ、当該プーリの回転に伴って走行するベルトと、を備えるベルト駆動装置において、
前記ベルトと前記プーリとの間で作用する摩擦力を前記ベルトの走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、
前記摩擦調整手段は、前記プーリの表面、及び、前記プーリの回転方向上流側に位置する前記ベルトの前記プーリに接触する側の面、の少なくともいずれか一方に、液体を供給可能な液体供給装置であることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項9】
前記プーリの回転軸方向における前記ベルトの位置ずれを検出可能な位置検出手段を更に備え、
前記液体供給装置は、当該位置検出手段により検出された前記位置ずれが所定値以上である場合は、液体の供給を停止又は前記位置ずれが当該所定値よりも小さい場合の液体の供給量よりも低減することを特徴とする請求項8に記載のベルト駆動装置。
【請求項10】
前記プーリの軸受に設置された振動計を更に備え、
前記液体供給装置は、当該振動計により測定された振動が所定値以上である場合は、液体を供給することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のベルト駆動装置。
【請求項11】
前記ベルトと前記プーリとの接触部に近接して設置された騒音計を更に備え、
前記液体供給装置は、当該騒音計により測定された騒音が所定値以上である場合は、液体を供給することを特徴とする請求項8乃至請求項10の少なくともいずれか1項に記載のベルト駆動装置。
【請求項12】
回動可能に支持されるプーリと、当該プーリに巻き掛けられ、当該プーリの回転に伴って走行するベルトと、を備えるベルト駆動装置において、
前記ベルトと前記プーリとの間で作用する摩擦力を前記ベルトの走行中に調整可能な摩擦調整手段を備え、
前記摩擦調整手段は、
回動可能に支持される補助ロールと、
前記プーリの表面及び前記プーリの回転方向上流側に位置する前記ベルトの前記プーリに接触する側の面、の少なくともいずれか一方に液体を供給可能な液体供給装置と、で構成され、
前記補助ロールは、前記ベルトの前記プーリとの接触部における走行方向と垂直な断面が直線状に近づくように当該ベルトの表面を付勢することを特徴とするベルト駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−190571(P2008−190571A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23452(P2007−23452)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】