説明

ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現させる形質変換体の調製方法および該形質変換体を用いた2,6−ナフタレン・ジカルボキン酸の調製

スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)KCTC2888に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化させる遺伝子SEQ ID NO : 1を備え酵素を発現させる組換え体を調製するための方法、および、粗2−フォルミル−6−ナフトエ酸(FNA)をナフタレン・ジメチルカルボン酸に変換するために形質転換体を適用することによって共存生成物であるFNAとともに2,6−ナフタレン・ジカルボキン酸を酸化させて得られる粗ナフタレン・ジカルボキン酸を生物学的に純化させる方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)KCTC2888に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化させる遺伝子を備え、該酵素(ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼ)を発現させる形質転換体の調製方法、および、2,6−ジメチル・ナフタレン(以下「2,6−DMN」と呼ぶ)の酸化によって共存生成物である2−フォルミル−6−ナフトエ酸(以下「FNA」と呼ぶ)とともに得られる粗2,6−ナフタレン・ジカルボン酸(以下「cNDA」と呼ぶ)を、該FNAを2,6−ナフタレン・ジカルボン酸(以下「NDA」と呼ぶ)に変換することで高純度に純化するにあたって該形質転換体を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
ナフタレン・ジカルボン酸のジエステル類は、ポリエステルやポリアミドなどの高性能ポリマー材料の調製に広く用いられて役立っている。これらのジエステル類の中でも代表的なものがジカルボン酸ジメチル−2,6−ナフタレン(以下「NDC」と呼ぶ)である。ポリ(エチレン2−,6−ナフタレン)(以下「PEN」と呼ぶ)は、高性能ポリエステルの一つであるが、NDCをエチレン・グリコールともに濃縮して調製される。PEN製の繊維やフィルムは、強度や耐熱性の点でポリ(エチレン・テレフタレート)(皮下「PET」と呼ぶ)より優れている。PENは、その優れた物性のために、磁気記録テープや電磁部品の調製に有用な薄膜を形成するために用いられる。さらに、PENは、気体の拡散とくに二酸化炭素、酸素、水蒸気の拡散を防ぐ優れた機能を有するため、PEN製のフィルム類は、食品容器とくに「高温充填」式の食品容器に適用することができる。また、PENは、タイヤのコードの調製に有用な強度の高い繊維の製造に用いられている。
【0003】
現在、NDCは、図1に示すように、一般に、DMNを酸化して粗ナフタレン・ジカルボン酸(cNDA)とし、それをエステル化することによって製造されている。最近では、NDCは、PENの合成の主原料として用いられている。しかし、NDAと比較すると、NDCにはいくつかの問題点がある。第一に、NDCからは濃縮によってPENが生成されるが、共存生成物として爆発の危険のあるメタノールも生成される。これに対して、NDAの濃縮で生成されるのは水である。次に、NDCは、NDAからエステル化および純化によって得られるが、NDAと比較してもう一つの処理が必要となる。また、NDCには、既存のPET生産施設を利用することができない。これらの不利な点にかかわらずNDAではなくてNDCが通常使用されるのは、今日に至るまで、NDAが、PETの合成に用いるのに十分な純度で調製できないためである。
【0004】
DMNを酸化するとcNDAが得られる。その際に、不完全な酸化のために、図2に示すように2−フォルミル−6−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等の副生成物が生じる。不純物とくにFNAが存在すると、PENを高分子化してポリマー材にするときに破断が生じ、ポリマーの性質に悪影響を及ぼす。cNDAをPENの合成に適用するためには、事前にFNAを除去しなければならないが、それは困難である。
【0005】
cNDAの反応からFNAを除去するための方法には、さまざまなものが知られている。例えば、再結晶化によってNDAを純化する方法、酸化を繰り返す方法、メタノールの存在下でcNDAをNDCに変換し、さらに加水または水素化によって純化されたNDAとする方法などが提案されている。加えて、溶剤による洗浄、溶解結晶化、高圧結晶化、超臨界抽出などの試みも行われている。しかし、これらの方法によっても十分な純度のNDAは得られていない。他方、公知の方法でもNDAの純度を高めることはできるが、収量を犠牲にすることとなり、実用化は困難である。
【0006】
上に述べたように、化学的あるいは物理的なNDAの生成方法には、環境汚染、高温および高圧による爆発の危険性、大規模施設による生産費の上昇、大きなエネルギー消費等を含む問題が生じる。高性能ポリマー材料への高分子化に直接使用するためには、2,6−ナフタレン・ジカルボン酸は、高純度でなければならないが、従来の方法でこれを行うことは困難である。NDAを高純度にすることは、可能ではあっても、追加の純化処理が必要であり、したがって生産性が低下し、処理が長引く結果となる。
【0007】
このため、最近では、生物的方法とくに微生物を使用する方法が大きく注目されるようになっている。本発明の発明者らは、すでに、下記特許文献1に開示されているように新奇なBacillus sp.(馬鈴薯菌、枯草菌)を用いてFNAを除去することを開発し、また、下記特許文献2に開示されているようにキシレン・モノオキシゲナーゼの存在下で芳香族アルデヒドおよびカルボン酸を調製する方法を提案している。これまでの文献で、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを用いてFNAをNDAに変換することを記載したものはない。
【特許文献1】韓国特許出願第2002−0087819号
【特許文献2】韓国特許出願第2002−7005344号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、先行技術にまつわる上記の諸問題を考慮し、NDAの純化に使用することができ、xylC遺伝子によって暗号化されたベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現させる形質変換体の調製方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、形質変換体の存在下で、cNDAに含まれるFNAを酸化してNDAとするcNDA純化の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面にあっては、ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現させる形質変換体を調製するために、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)KCTC2888に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化させる遺伝子SEQ ID NO : 1を備える組換え体発現ベクターを構成すること、および該組換え体発現ベクターで宿主細胞の形質転換を行うことからなる方法が提供される。
【0011】
本発明の他の一側面にあっては、該方法によって調製された形質転換体が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の一側面にあっては、ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを生成するために、該形質転換体を25ないし45℃で培養すること、および該形質転換体培養菌にIPTGを0.1ないし2.0mM添加してベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼの発現を誘起させることからなる方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の一側面にあっては、粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸を純化するために、粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸を該形質転換体と反応させて該粗粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸に含まれる2−フォルミル−6−ナフトエ酸を2,6−ナフタレン・ジカルボン酸に変換することからなる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記および他の本発明の目的、特徴、および効果は、添付の図を参照して行う以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。図面中、
図1は、従来の酸化法の2,6−ジメチル・ナフタレンのナフタレン・ジカルボン酸およびジカルボン酸ナフタレンへの変換を示す反応図である。
図2は、2,6−ジメチル・ナフタレンを酸化させて2,6−ナフタレン・ジカルボン酸および共存生成物である2−フォルミル−6−ナフトエ酸とすることを示す反応図である。
図3は、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化させる遺伝子を備える組換え体発現ベクターpET20−xylCの遺伝子マップである。
【0015】
以下、本発明の詳細な説明を行う。
本発明の一側面にあっては、ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現させる形質転換体を調製する本発明が提供される。そのためには、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)からベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼのための暗号化を行う遺伝子xylCのクローンを発生させ、それを組換え体発現ベクターの中に挿入し、該ベクターを適当な宿主細胞の中に導入する。
【0016】
ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼ(BZDH)は、ホモジマー(単素2量体)であり、遺伝子xylCによって暗号化される。xylCを発現させるように遺伝子工学的に発生させたE.coli(大腸菌)を用いれば、ベンズアルデヒド、3−メチル・ベンズアルデヒド、4−メチル・ベンズアルデヒド、3−ニトロ・ベンズアルデヒド、および塩素置換ベンズアルデヒドを酸化させることができる(井上等、J.Bacteriol.,177:1196−1201、1995参照)。
【0017】
スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)によって、SEQ ID NO : 1で表されるxylCのクローンを発生させ、ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼのための暗号化を行うことができる。遺伝子xylCのクローンを発生させるためには、5‘−GGAGAATTCATATGGCTACGCAGT−3’(SEQ ID NO : 2)および5‘−GTCTTGCAGTGAGCTCGTTTCTCC−3’(SEQ ID NO : 3)のプライマーのセットをテンプレートとして役立つスフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)(KCTC 2888)から得られるプラスミドDNA(pNL1)とともに用いてポリメラーゼ連鎖反応を行う。
【0018】
ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現させる形質転換体は、遺伝子xylC(SEQ ID NO : 1)を備える組換え体発現ベクターとともに生成する。該組換え体発現ベクターは、クローン発生させた遺伝子xylCを機能的にリンクさせることによって得られる。
【0019】
図3を参照して、図には、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)由来のベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化する遺伝子を備えた組換え体発現ベクターpET20−xylCの遺伝子マップが示されている。図3に示すように、SEQ ID NO : 1で表される長さ約1.5kbpのDNA切片がpET−20b(+)の中に挿入されて組換え体ベクターpET20−xylを形成する。
【0020】
本明細書に開示されて特許請求されているように、スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)(KCTC 2888)由来の.xylCのための暗号化を行うSEQ ID NO : 1に示されるシーケンス(配列)は、“控えめなシーケンスの修飾」、すなわちヌクレオチド・シーケンスによって暗号化されたまたはアミノ酸最シーケンスを含む酵素の触媒特性に有意な影響を及ぼしあるいは変更をあたえることのないヌクレオチドおよびアミノ酸シーケンスの修飾、を含むことを意図したものである。このような控えめなシーケンスの修飾は、ヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、添加、および削除を含むものである。修飾は、部位特異的な突然変異生成やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を仲介とする突然変異生成など当業者には公知の標準的な手法を用いて導入することができる。控えめなアミノ酸の置換は、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを含む。
【0021】
本発明に有用な発現ベクターには、なんら特定の制限はない。当業者には公知の発現ベクター、例えば、pForexTベクター、pUCベクター、pBluescriptベクター。pETベクター等々をT7プロモーター、T3プロモーター、あるいはsP6プロモーターとともに利用することができる。
【0022】
形質転換体の調製は、当業者には公知の方法で組換え体発現を用いて行うことができる。本発明にもとづけば、ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼの発現ベクターによって形質転換された微生物の助けによって2−フォルミル−6−ナフトエ酸が2,6−ナフタレン・ジカルボン酸に変換される。したがって、形質転換された微生物は、高いレベルでベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現できることが好ましい。pET−20b(+)ベクターの場合は、構造遺伝子の発現は、T7プロモーターの制御のもとで調節され、したがって、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(以下、「IPTG」と呼ぶ)によって誘起することができる。
【0023】
これらの形質転換体の調製のための宿主細胞として適当なものは、腸バクテリア、例えばMC1061(E.coli),JM109(E.coli),XL1−Blue(E.coli), DH5α(E.coli)などである。発現ベクターは、熱衝撃法、電気穿孔法、微量注入法、遺伝子衝撃法等によって導入できるが、本発明は、これらの方法に限定されるものではない。
【0024】
一方、発現ベクター内へのxylCnoクローン発生は、制限酵素による消化または塩基配列によって確認することができる。
【0025】
形質転換体は、25ないし45℃、好ましくは37℃の温度で十分に成長させた後、LB媒質100ml中に1%(v?v)の量を植え付ける。0.4ないし0.5のOD600が観察されたら、IPTGを0.1ないし2.0mM、好ましくは0.5mMの量を添加して、ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼの発現を誘起し、その後37℃で培養する。ただし、形質転換体の成長およびタンパク質の発現は、当業者には公知の任意の方法で行うことができ、上に述べたものに限定されるものではない。
【0026】
本発明にもとづけば、粗ナフタレン・ジカルボン酸は、中でベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼが高いレベルで発現している形質転換微生物の助けをかりて、該ナフタレン・ジカルボンの中に含まれる2−フォルミル−6−ナフトエ酸を2,6−ナフタレン・ジカルボン酸に変換することによって純化することができる。
【0027】
この変換に適用するために、培養基から回収した形質転換された微生物のバイオマスを、生理食塩水の中に懸濁させる。
【0028】
酵素の存在下では、粗ナフタレン・ジカルボン酸に含まれる2−フォルミル−6−ナフトエ酸の2,6−ナフタレン・ジカルボン酸への変換は、pH6.0ないし10.0、好ましくはpH8.0の緩衝液の中で行うことができる。
【0029】
酵素を用いた変換に有用な緩衝液の例としては、炭酸ナトリウム緩衝液(NaCO/NaHCO)、グリシン緩衝液(グリシン/NaOH)、リン酸カリウム緩衝液(KHPO/KOH、KHPO/KOH、KHPO/NaOH、KHPO/NaOH)、リン酸ナトリウム緩衝液(NaHPO/NaHPO)、コハク酸緩衝液(コハク酸/NaOH)、酢酸ナトリウム緩衝液(酢酸ナトリウム/酢酸)、クエン酸緩衝液(クエン酸/クエン酸ナトリウム)、ピロリン酸ナトリウム緩衝液(Na/HCl)、ホウ酸緩衝液(ホウ酸/NaOH),およびホウ酸ナトリウム緩衝液(ホウ酸ナトリウム/HCl)を挙げることができる。これらの中でも、酵素活動の面からリン酸緩衝液を用いることが好ましい。
【0030】
オプションとして、cNDAを溶解するために有機溶剤を添加して酵素反応を行ってもよい。適当な溶剤の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),N,N−ジメチルアセトアミド(DMA),テトラヒドロフラン(THF)を挙げることができるが、酵素活動の面から、5%DMSOを用いることが好ましい。
【0031】
この変換は、反応速度を最適化するために、好ましくは25ないし45℃、最も好ましくは30℃で行う。2−フォルミル−6−ナフトエ酸を2,6−ナフタレン・ジカルボン酸へ変換するための十分な時間に関しては、0.5ないし48時間、好ましくは0.5ないし24時間の範囲であり、より好ましくは6時間である。
【0032】
形質転換体XL1−Blue(pET20−xylC)を、cNDA1,000ppmおよびアンピシリン100mg/L含んだLB媒質中に植え付け、攪拌しながら37℃で十分な時間培養する。上澄みをHPLC分析すると、発現したベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼ(xylC)がFNAを除去して高純度で2,6−NDAを生成したことがしめされた。
【0033】
本発明は、本発明を明らかにするために以下に述べる例によってよりよく理解することができよう。ただし、以下の例は、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0034】
例1:遺伝子xylCのクローンの発生
スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)(KCTC 2888)からベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼのための暗号化を行う遺伝子xylCのクローンを発生させるために、遺伝子xylCを備えるプラスミド(pNL1)をそこから遊離した(サムブルック等、分子クローンの発生、研究所マニュアル第2版、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版部、NY州コールド・スプリング・ハーバー、1989参照)。この遊離プラスミドDNA(pNL1)をテンプレートとして用いるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のために、xylCの公共DNAデータベース・シーケンス(ジェンバンク・シーケンス・データベース、NC 002033、から入手可能)を基礎にしてプライマー1、5‘−GGAGAATTCATATGGCTACGCAGT−3’(SEQ ID NO : 2)およびプライマー2、5‘−GTCTTGCAGTGAGCTCGTTTCTCC−3’(SEQ ID NO : 3)を合成した。このプライマーのセットを用いて、完全な長さの遺伝子xylCのクローンを発生させるためのPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を94℃で5分間の予備変性から開始し、94℃で1分間の変性を40サイクル行い、56℃で1分間のアニール、72℃で1.5分間の伸展を行い、最後に72℃でさらに10分間の伸展を行った。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)から、長さ約1.5kbpDNAの断片を遊離し、NdeIおよびSalIで消化させた。これを既に同じ制限酵素で切断しておいたプラスミドpET−20b(+)の中に挿入し、図3に示す組換え体発現ベクターpET20−xylCを構成した。
【実施例2】
【0035】
例2:クローン発生させた遺伝子の分析
例1で組換え体ベクター(pET29−xylC)の中でクローン発生させた遺伝子の塩基配列をするめに、該組換え体ベクターを、二つのベクターM13mp18およびM13mp19の遺伝子マップをもとに、さまざまな酵素で切断した。これによって得られたDNA断片を用いて、M13mp18およびM13mp19の中でサブクローンを発生させ、ABI PRISM BigDye プライマー・サイクル・シーケンシング・キット(米国、パーキン・エルマー社)を用いてAmpliTag DNA ポリメラーゼの存在下でベース・シーケンシング分析を行った。問題の二本のDNA鎖を両方向で読み取るために、ヌクレオチドの断片を部分合成した。GenBankからの塩基配列との比較によって、クローン発生させたDNAは、遺伝子xylCであることが確定した。
【実施例3】
【0036】
例3:組換え体発現BZDHの調製
塩化カルシウム法(サムブルック等、分子クローンの発生、研究所マニュアル第2版、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版部、NY州コールド・スプリング・ハーバー、1989参照)を用いて、pET20−xylcベクターによってE.coli XL1−Blue の形質転換を行い、アンピシリン(100mg?L)、X−gal,IPTG、およびbacto−agar(15g/L)をサプリメントとして加えたLBプレート(イースト・エキス、5g/L;トリプトン、10g/L;NaCl、10g/L)の上で成長させ、形質転換させたE.coli XL1−Blue(pET20−xylC)を選別した。
【実施例4】
【0037】
例4:遺伝子xylCの発現
形質転換させた微生物中の遺伝子xylCの発現を調べるために、例3で得られた形質転換体XL1−Blueとコントロールとして野生種のXL1−Blueを同じ条件で培養し、各細菌から発現させたベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼの活性を測定した。そのため、例3の形質転換体とコントロールを37℃で十分な時間培養したそれぞれのLB媒質中に植え付け、さらに1%(v/v)の量をLB媒質100ml中に植え付けた。600nmでの吸光度が0.4ないし0.5に達したとき、IPTG0.5mMを添加してxyLCの発現を誘起し、さらに37℃で培養した。
【実施例5】
【0038】
例5:発現したBZDHを用いた2−フォルミル−6−ナフトエ酸から2,6−ナフタレン・ジカルボン酸への変換
例4でベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現した培養微生物を遠心分離機にかけて細胞の集団を回収し、0.85%の生理食塩水で洗浄し、30℃の槽中で表1の反応液を用いて6時間培養した後、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った。表1の反応液において、緩衝液は、pHは8.0、DMSO濃度は5%、NDA中のFNA含有量は9%に設定した。
【0039】
分析の結果を下の表2に示す。表2からわかるように、FNAをNDAに変換する能力において、形質転換体XL1−Blue(pET20−xylC)は、野生種のものよりはるかに優れていた。HPLC分析は、下の表3に示す条件で行った。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明にもとづいて調製した形質転換体は、粗ナフタレン・ジカルボン酸から2−フォルミル−6−ナフトエ酸を除去するのにきわめて有効である。したがって、本発明の方法は、高い純度の2,6−ナフタレン・ジカルボキン酸を経済的に有利で環境に優しい方法で生成することができ、したがって産業への適用可能性は高い。
【0044】
本発明を説明するために、以上、本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者には、添付の請求の範囲で開示される本発明の範囲および精神から逸脱することなくさまざまな修正、追加、および置換を行うことができることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来の酸化法の2,6−ジメチル・ナフタレンのナフタレン・ジカルボン酸およびジカルボン酸ナフタレンへの変換を示す反応図である。
【図2】2,6−ジメチル・ナフタレンを酸化させて2,6−ナフタレン・ジカルボン酸および共存生成物である2−フォルミル−6−ナフトエ酸とすることを示す反応図である。
【図3】スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化させる遺伝子を備える組換え体発現ベクターpET20−xylCの遺伝子マップである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを発現させる形質変換体を調製するための方法において、
スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)KCTC2888に由来するベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを暗号化させる遺伝子SEQ ID NO : 1を備える組換え体発現ベクターを構成すること、および
該組換え体発現ベクターで宿主細胞の形質転換を行うことからなる方法。
【請求項2】
該宿主細胞が腸バクテリアである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法によって調製された形質転換。
【請求項4】
ベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼを生成する方法において、
該形質転換体を25ないし45℃で培養すること、および
該形質転換体培養菌にIPTGを0.1ないし2.0mM添加してベンズアルデヒド・デハイドロゲナーゼの発現を誘起させることからなる方法。
【請求項5】
粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸を純化する方法において、
粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸を請求項3に記載の該形質転換体と反応させて該粗粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸に含まれる2−フォルミル−6−ナフトエ酸を2,6−ナフタレン・ジカルボン酸に変換することからなる方法。
【請求項6】
該粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸と該形質転換対との反応は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびテトラヒドロフランからなる群から選ばれた有機溶媒を0ないし20%含む緩衝液中で行われる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該反応は、25ないし45℃で0.5ないし48時間行われる請求項5に記載の方法。
【請求項8】
該粗ナフタレン・ジメチルカルボン酸を、有機溶媒を含むpH6.0ないし10.0の範囲のリン酸カリウム溶液(KHPO/KOH、KHPO/KOH、KHPO/NaOH、KHPO/NaOH)である緩衝液中で該形質転換対と反応させる請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−526195(P2008−526195A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549246(P2007−549246)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004486
【国際公開番号】WO2006/071028
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507222262)ヒョサン コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】