説明

ベンチレーテッドブレーキディスク

ブレーキディスク(1)は、回転軸(X−X)と支持キャリア(2)とブレーキバンド(3)とを有し、該ブレーキバンド(3)は、ブレーキバンド(3)のための通気チャネル(28)を区画している複数の接続要素(24)によって接続された二つのフランジ(20,22)と、前記支持キャリア(2)と前記ブレーキバンド(3)とを互いに接続させることの可能な少なくとも一つの駆動要素(32)を有している。接続要素(24)は、回転軸(X−X)と平行な軸線方向で変化させることの可能な機械的耐性部を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の、特に自動車用のブレーキディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常のブレーキ、特にディスクブレーキは、車両を減速及び/又は停止させて、ディスクとパッドとの間の摩擦によって、運動エネルギーを熱エネルギーに変換させることができる。そのような理由で、ブレーキを有効に維持させるためには、ディスクとパッドとをオーバーヒートさせないことが重要である。従って、周辺への効率的な熱放散を達成することが重要である。
【0003】
そのような目的のために、外側摩擦面と内側通気チャネルとを有して並んで配列された一対のフランジを備えたブレーキディスクが知られている。
【0004】
それらフランジは複数の接続要素によって互いに接続されており、それら接続要素は、例えば、ピン又は舌状部材であってもよい。好ましくは、接続要素は、ブレーキディスクを冷却するための内部通気チャネルを構成するように形成されている。
【0005】
ディスクはブレーキバンド用の支持キャリアを有し、その支持キャリアは、車両の車輪ハブに連結されるようになっていて、駆動要素によってブレーキバンドに接続されている。
【0006】
従来のそのようなディスクには、欠点がないわけではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のディスクによって達成されるディスクの通気は最適でなく、且つ、その結果として、熱の放散が十分効率的に行われないことが、実際に分かっている。
【0008】
そのような不十分な熱放散効率は、最適なエアーの流れを可能にさせることのない、内部通気チャネルを区画している接続要素の幅と形状とに実質的に起因している。
【0009】
実際に、接続要素は、通気チャネルを区画する機能とフランジを互いに機械的に接続させる機能との双方の機能を有している。フランジ間の十分な機械抵抗即ち接続を担保するために、そのような接続要素は、ブレーキバンドと比較して全体的に大きな寸法を有している。
【0010】
然しながら、接続要素の機械的耐性部の面積を増大させると、ブレーキディスクの質量効果とジャイロ効果を増大させるばかりでなく、通気チャネルの面積を減少させることとなる。
【0011】
従来技術の解決策は、ディスクの質量を低減させることで同時に通気効率の最適化を図ることができるようなものではない。
【0012】
本発明の目的は、従来技術に関して指摘されている上述の如き欠点を解消することの可能なディスクを、案出し且つその利用を可能にすることにある。
【0013】
より詳述すると、本発明の課題は、通気性を担保し、従って、最適な熱放散を確実にし、同時に、ディスク自体の質量が低減されたブレーキディスクを入手可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのような目的及び課題は、本願の特許請求の範囲の独立請求項に記載のブレーキディスクによって達成される。
【0015】
本発明に係るブレーキディスクの更なる特徴及び利点については、添付図面を参照して下記した、本発明を何ら限定するものではない本発明の実施形態に関する説明を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図3】図3は、本発明の更に別の実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV面に沿った、図1のブレーキディスクの部分断面図である。
【図5】図5は、図4のV−V面に沿った、図1のブレーキディスクの断面図である。
【図6】図6は、図4のVI−VI面に沿った、図1のブレーキディスクの断面図である。
【図7】図7は、図4のVII−VII面に沿った、図1のブレーキディスクの断面図である。
【図8】図8は、本発明による更に別の実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図9】図9は、本発明による更に別の実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図10】図10は、本発明による更に別の実施形態に係るブレーキディスクの断面図である。
【図11】図11は、図8のXI−XI面に沿った、図8のブレーキディスクの部分断面図である。
【図12】図12は、図11のXII−XII面に沿った、図8のブレーキディスクの断面図である。
【図13】図13は、図11のXIII−XIII面に沿った、図8のブレーキディスクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照すると、参照符号1は、本発明によるブレーキディスクを示している。
【0018】
本発明によるブレーキディスクは、回転軸X−Xを共有する二つの部分を有している。内側部、即ち、支持キャリア2は、車両の車輪ハブに接続されるようになっており、他方、残りの周辺部、即ち、ブレーキバンド3は、ブレーキディスク1に跨って配置される、ブレーキディスクの関連のキャリパと協働して、車両にブレーキ効果を作用させるようになっている。
【0019】
支持キャリア2は、車両の車輪ハブに例えば通常の態様で接続されるようになっている中央部5と、例えばブレーキディスクの回転軸X−Xと略平行な方向に中央部5から突出した周辺環状部6を有している。
【0020】
支持キャリア2は、周辺環状部6に形成された複数の径方向座部8を有している。
【0021】
ブレーキバンド3は、所定の厚さSと所定の高さHとを有する環状ディスクから成り、支持キャリア2の周辺環状部6によって同軸的に支持されている。ブレーキバンド3は、キャリパと協働して、車両にブレーキ効果を作用させるようになっている。
【0022】
ブレーキバンド3は、それ自体よく知られた態様のベンチレーテッド型のものである。そのベンチレーテッド型ブレーキバンド3は、複数の接続要素24によって接続された二つのフランジ20,22を有している。接続要素24は、ブレーキバンド3に亘って流れる冷却エアー流の通路用通気チャネル28を区画している。
【0023】
更に後述するように、ブレーキディスク1は、ブレーキバンド3とキャリパとによって交換される制動力をハブへ伝達するために、支持キャリア2とブレーキバンド3とを互いに接続させることの可能な少なくとも一つの駆動要素32を有している。
【0024】
ブレーキディスク1とそれの回転軸X−Xに関連して、「軸線方向」とは、回転軸X−Xと平行な方向を意味し、「径方向」とは、回転軸X−Xに対して直交し入射する方向を意味する。また、「周方向」又は「接線方向」とは、回転軸X−Xを中心とし且つ回転軸X−Xに対する法平面上に横たわる円周の方向、又は、回転軸X−Xの接線方向を意味する。
【0025】
ブレーキバンド3は、径方向内側の円周即ちリムCiと径方向外側の円周即ちリムCeとによって区画される円形クラウン(circular crown)である。
【0026】
接続要素24は、好ましくは、ブレーキバンド3の円形クラウンに沿って数列36´,36´´,36´´´になって配置される。
【0027】
各接続要素列36´,36´´,36´´´の接続要素24は、ブレーキバンド3の径方向外側のリムCeの方向に向いた径方向外側の端部40からブレーキバンド3の径方向内側のリムCiの方向に向いた径方向内側の端部44へ延びている。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、ブレーキバンド3の径方向外側のリムCeの側に近い接続要素列36´の接続要素24の径方向内側の端部44は、接続要素列36´より径方向内側の中間接続要素列36´´の接続要素24の径方向外側の端部40と同じ円周上に配置され、接続要素列36´´の接続要素24の径方向内側の端部44は、ブレーキバンド3の径方向内側のリムCiの側に近い接続要素列36´´´の径方向外側の端部40と同じ円周上に配置されている。
【0029】
有益なことに、接続要素24は、回転軸X−Xと平行な軸線方向で変化させることの可能な第一の機械的耐性部を有し、この機械的耐性部は、通気チャネル28の内部を流れるエアーの流れの方向と略平行な領域との関係で区画されている。
【0030】
また、接続要素24は、ブレーキバンド3の通気チャネル28の内部を流れるエアーの流れの方向と略平行な領域との関係で区画されている中間の第二の機械的耐性部48を有している。
【0031】
更に、接続要素24は、フランジ20,22の内側側面70,72に接続される第三の接続機械的耐性部60,62を有し、その第三の機械的耐性部60,62は、ブレーキバンド3の通気チャネル28の内部を流れるエアーの流れの方向と略平行な領域との関係で区画されている。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、接続要素24の第一の機械的耐性部の面積は、第二の機械的耐性部48から各機械的耐性接続部60,62に向かって徐々に増加している。
【0033】
本発明の更に別の実施形態によれば、第一の機械的耐性部は、一定の厚さを有する中間の第四の機械的耐性部を備えた中央部を有し、厚さは、中央部において一定しているものの、第三の接続機械的耐性部60,62に向かうにつれて増加している。
【0034】
好ましくは、接続要素24は、中間の第二の機械的耐性部48において最小の断面を有し、ブレーキディスク1の中心線面52に対して対称になっている。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、接続要素24の各々は、ブレーキディスク1の回転軸X−Xを通る線上に位置する径方向伸長部を有し、そのような接続要素24の第一の機械的耐性部の面積は、接続要素自体の径方向伸長部の両側に位置する接続要素の側面76において増加している。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、接続要素24の第一の機械的耐性部は、接続要素自体の径方向中心線84のところで、最大の接線方向の厚み80を有している。その接線方向の厚み80は、軸線方向及び径方向に対して直交する接線方向において測定される。
【0037】
径方向中心線84とは、接続要素24の径方向外側端部40と径方向内側端部44との間の距離の半分の長さを持った線を意味する。
【0038】
好ましくは、接続要素24は、第三の接続機械的耐性部60,62に、各フランジ20,22に取り付けられる外周取付部88を有している。
【0039】
外周取付部88は、接続要素を単にフランジ20,22に接続させるためのものであって、換言すると、外周取付部88は、フランジに連結される接続要素24の機械的耐性部の面積を局部的に更に増大させている。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、接続要素24は、接続要素24の径方向外側端部40又は径方向内側端部44において径方向へ伸びた少なくとも一つの伸長部92を有し、この伸長部92は接続要素24の第一の機械的耐性部の面積を減少させている。
【0041】
好ましくは、伸長部92は、フランジ20,22の内側面70,72からブレーキディスク1の中心線52に向かう接続要素24の第一の機械的耐性部の面積を径方向へ減少させるように、接続要素24の中間の機械的耐性部48に関する限り、フランジ20,22の少なくとも一方の内側面70,72から軸線方向へ伸びている。
【0042】
好ましくは、伸長部92は、ブレーキディスク1の中心線52に対して対称になっている。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、フランジ20,22は、フランジ20,22の径方向外側のリムCe寄りの径方向外側の接続要素列36´と、フランジ20,22の径方向内側のリムCi寄りの径方向内側の接続要素列36´´´と、径方向外側の接続要素列36´と径方向内側の接続要素列36´´´との間に配置された中間の接続要素列36´´の三つの接続要素の列を含んでいる。これら接続要素列36´,36´´,36´´´は、フランジ20,22の全周にアンギュラ・ブラシング(angularly brushing)している。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、径方向外側の接続要素列36´は、第一の接続要素24´と第二の接続要素24´´を含んでいる。第一の接続要素24´は、径方向伸長部を有し、第二の接続要素24´´は、第一の接続要素24´の径方向伸長部よりも短い、例えば、第一の接続要素24´の径方向伸長部の半分の長さの径方向伸長部を有している(図4及び図5参照)。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、第二の接続要素24´´は、円形の横断面を有するピンである(図11及び図12参照)。
【0046】
好ましくは、第一の接続要素24´は、それの径方向内側端部44に径方向伸長部92を有している。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、径方向中間の接続要素列36´´は、径方向内側の端部44に径方向の伸長部92を備えた中間接続要素96を含んでいる。
【0048】
好ましくは、中間接続要素96は、径方向外側の接続要素列36´の第二の接続要素24´´と角度的に整列配置されている。
【0049】
「角度的に整列」とは、複数の接続要素が、ブレーキディスク1の回転軸X−Xから径方向へ異なった距離をもって位置して、回転軸X−Xを通る同一の半径線に沿って実質的に整列していることを意味する。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、一つの駆動要素32を含んだブレーキバンド3の角度セクタ(angular sector)内に配置された径方向中間の接続要素列36´´の接続要素24は、それの径方向外側の端部40に径方向の伸長部92を有し、それの径方向内側の端部44には径方向の伸長部を有していない。
【0051】
「角度セクタ」とは、回転軸X−Xを通る一対の半径線によって角度的に区画されたブレーキバンド3の部分を意味する。的確に言えば、「一つの駆動要素32を含んだブレーキバンド3の角度セクタ」とは、駆動要素32の接線方向端部に少なくとも接線する一対の半径線によって区画される角度セクタを意味する。
【0052】
本発明の一実施形態(図4及び図5)によれば、径方向内側の接続要素列36´´´は、隣接した二つの駆動要素32の間に角度的に配置された三つの径方向内側の接続要素100のグループを含んでいる(図4)。好ましくは、該グループにおける駆動要素32に隣接した径方向内側の二つの接続要素100は、それの径方向外側端部に径方向の伸長部92を備えている。
【0053】
好ましくは、径方向内側の接続要素100は、径方向外側の接続要素列36´の第一の接続要素24´と角度的に整列配置されている。
【0054】
本発明の別の実施形態(図11及び図12)によれば、径方向中間の接続要素列36´´は、角度的に互いにずれた第一、第二及び第三の接続要素列104,106,108を含んでいる。第一の接続要素列104と第三の接続要素列108は径方向外側の接続要素列36´の第二の接続要素24´´に対して角度的に整列配置され、他方、第二の接続要素列106は径方向外側の接続要素列36´の第一の接続要素24´に対して角度的に整列配置されている。
【0055】
好ましくは、第一の接続要素列104の中間接続要素96は、それの径方向内側端部44に径方向の伸長部92を有し、第三の接続要素列108の中間接続要素96は、第一の接続要素列104の伸長部92に直接的に面した径方向外側端部40に径方向の伸長部92を有している。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、第二の接続要素列106の中間接続要素96は、それの径方向内側端部44に伸長部92を有している。
【0057】
本発明の一実施形態(図11及び図12)によれば、径方向内側の接続要素列36´´´は、隣接した二つの駆動要素32の間に角度的に配置された四つの接続要素100のグループを有している。好ましくは、二つの隣接した駆動要素32に隣接した二つの接続要素100は、それらの径方向外側端部40に径方向の伸長部92を有している。
【0058】
好ましくは、駆動要素32に隣接した接続要素100は、径方向外側の接続要素列36´の第二の接続要素24´´と角度的に整列配置されている。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、駆動要素32に隣接していない接続要素100は、径方向外側の接続要素列36´の第一の接続要素24´と角度的に整列配置されている。
【0060】
上述したように、ブレーキディスク1は、ブレーキバンド3を支持キャリア2に結び付けるための駆動要素32を有している。そのような駆動要素32は、好ましくは、ブレーキバンド3と一体に形成されている。
【0061】
駆動要素32は、支持キャリア2の径方向内側のリムに形成された専用の径方向座部内に少なくとも部分的に収容されている。
【0062】
駆動要素32は駆動本体112を有し、その駆動本体112は、両端で、底部116と突部120とによって区画されている。
【0063】
有益なことに、駆動本体112は、フランジ20,22の間に区画された通気チャネルの軸線方向の寸法よりも小さな軸線方向の寸法を有している。
【0064】
駆動要素32の突部120は支持キャリア2に形成された専用の径方向座部8内に収容されるようになっており、他方、底部116は、駆動要素32とブレーキバンド3との間の、好ましくは一体の機械的カップリングを構成している。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、駆動要素32の突部120は、接線方向及び軸線方向には拘束されるが、径方向へはスライド自在になるように、座部8内に収容されている。
【0066】
例えば、駆動要素32は、座部8内に少なくとも部分的に収容させてブレーキバンド3を支持キャリア2に連結させるのに好適な、断面略四角形の形状を有する角柱状突部の形状の突部120を有している。
【0067】
座部8との突部120のカップリングは、干渉カップリングではなく、むしろ、可なり制限される場合であっても、若干の遊びを提供するものである。従って、座部8内での突部120の径方向の移動は何ものによっても妨げられない。
【0068】
座部8の壁に支えられている突部120は、ブレーキトルクをブレーキバンド3からキャリア2に伝達することができる。
【0069】
摩擦によって二つのフランジ20,22に作用される制動力を突部120に伝達して次にキャリア2に伝達するために、底部116は、駆動要素32をブレーキバンド3に固定するという機能と制動力を導くという機能とを有する。
【0070】
本発明の一実施形態による駆動要素32の底部116は、特別なY字状又はT字状に形成されている。
【0071】
より詳述すると、ブレーキバンド3と係合している底部116の近くで、駆動要素32は一対の枝部124に分岐し、それら枝部124はブレーキバンド3のフランジ20,22に確りと接続される。
【0072】
一対の枝部124は、好ましくは、ブレーキディスク1の中心線面52に対して対称になっている。
【0073】
上記した記載から明らかなように、本発明によるブレーキディスクは、従来技術のブレーキディスクに関連して説明した欠点を克服することを可能にする。
【0074】
有益なことに、接続要素の特別な形状によって、ブレーキバンドの質量効果、ジャイロ効果を制限すると同時に、フランジ間の強固な構造的結合を担保することを可能にする。
【0075】
更に、接続要素の広幅な形状によって、通気を促進させて、それによりフランジの冷却を向上させる収束・分岐路を局所的に有する通気チャネルが形成される。
【0076】
接続要素の径方向端部に設けられた径方向の伸長部は、ブレーキバンドの外周へのエアーの排出に関する限りにおいて、エアーを通気チャネルへ導入させるのを促進させることに役立つ。
【0077】
駆動要素が両方のフランジに係合しているという事実は、駆動要素が単一のフランジと係合している従来の技術と比較して、可なりの構造的有利性を生み出している。
【0078】
実際に、駆動要素が両方のフランジと係合していることにより、制動力によって個々のフランジに発生させられる力を一方のフランジから他方のフランジへ接続要素を介して伝達するという必要性なく、駆動要素がそのような力を蓄積することを可能にさせる。
【0079】
こうして、制動作用中にキャリパによって及ぼされる唯一の圧縮力に対して主として耐えられるように、接続要素を構造的見地から寸法付けすることができる。本発明によるブレーキディスクにおいては、接続要素は、構造的見地から、他の力を伝達するためには実質的に必要とされない。
【0080】
流体力学の見地から、駆動要素の特別な形状が全ての通気チャネル内へのエアーの循環を容易にさせることを如何に可能にしているかが認識される。
【0081】
そのような解決策は、底部が接続要素(ピン又は舌状部)となるように単一の駆動要素が伸びている従来の技術よりも望ましい。実際に、そのような公知の技術においては、構造的規則性の要請と流体力学的要請とが両立しない。然しながら、本発明による解決策は、駆動要素に関連して、流体力学機能を構造的機能から有効的に切り離すことを可能にさせる。
【0082】
加えて、本発明によるブレーキディスクは、接続要素間の径方向スライドを許容し、従って、ブレーキバンドとキャリアとの間の径方向スライドを許容する。その結果、ブレーキディスクの加熱によって齎される熱膨張が、ブレーキバンドとディスクの回転軸との間の直交性を失わせてしまうことはない。
【0083】
当業者は、付随的な要請を満足させるために、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上述したブレーキバンドの実施形態に対する修正,改良及び均等物との置換を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(X−X)と、
車両の車輪ハブに接続される支持キャリア(2)と、
ディスクブレーキキャリパと協働するように構成されたブレーキバンド(3)と、
前記ブレーキバンド(3)と前記キャリパとの間で交換される制動力を前記ハブへ伝達するために前記支持キャリア(2)と前記ブレーキバンド(3)とを互いに接続させることの可能な少なくとも一つの駆動要素(32)を有し、前記ブレーキバンド(3)が、前記ブレーキバンド(3)に亘って冷却エアーが流れることを可能にさせる通気チャネル(28)を区画している複数の接続要素(24)によって接続された二つのフランジ(20,22)を有しているブレーキディスク(1)であって、
少なくとも一つの接続要素(24)が、
前記回転軸(X−X)に平行な軸線方向で変化させることが可能で且つ前記通気チャネル(28)内を流れるエアーの流れの方向に平行な領域に区画された第一の機械的耐性部と、
前記通気チャネル(28)内を流れるエアーの流れの方向に平行な領域に区画された第二の中間機械的耐性部(48)と、
前記通気チャネル(28)内を流れるエアーの流れの方向に平行な領域に区画されて前記フランジ(20,22)の内側面(70,72)に接している第三の接続機械的耐性部(60,62)を有し、
前記第三の接続機械的耐性部(60,62)が、前記通気チャネル(28)内を流れるエアーの流れの方向に平行な領域に区画され、
前記接続要素(24)の前記第一の機械的耐性部の面積が、前記第二の中間機械的耐性部(48)から前記第三の接続機械的耐性部(60,62)に向かうにつれて徐々に増加していることを特徴とするブレーキディスク。
【請求項2】
前記複数の接続要素(24)が、前記第二の中間機械的耐性部(48)において最小の断面積を有し、前記ブレーキディスク(1)の中心線面(52)との関係で対称になっている、請求項1に記載のブレーキディスク。
【請求項3】
前記接続要素の前記第一の機械的耐性部が、一定の厚さを有する中間の第四の機械的耐性部を備えた中央部を有し、厚さは、中央部において一定しているものの、第三の接続機械的耐性部(60,62)に向かうにつれて増加している、請求項1又は2に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項4】
前記接続要素(24)が前記回転軸(X−X)を通る線上に位置する径方向伸長部を有し、前記接続要素(24)の前記第一の機械的耐性部の面積が、前記接続要素自体の前記径方向伸長部の両側に位置する接続要素の側面76において増加している、請求項1〜3の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項5】
前記接続要素(24)の前記第一の機械的耐性部が、前記接続要素(24)自体の径方向中心線(84)のところで、軸線方向及び径方向に対して直交する接線方向で測定される最大の接線方向の厚み(80)を有している、請求項1〜4の何れかに記載の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項6】
前記接続要素(24)が、前記接続要素(24)の径方向外側端部40又は径方向内側端部44において径方向へ伸びた少なくとも一つの伸長部92を有し、この伸長部92は接続要素24の第一の機械的耐性部の面積を減少させている、請求項1〜5の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項7】
前記伸長部(92)が、前記フランジ(20,22)の前記内側面(70,72)から前記ブレーキディスク(1)の中心線(52)に向かう前記接続要素(24)の前記第一の機械的耐性部の面積を径方向へ減少させるために、前記接続要素(24)の第二の中間機械的耐性部(48)に関する限り、前記フランジ(20,22)の少なくとも一方の内側面(70,72)から軸線方向へ伸びている、請求項6に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項8】
前記伸長部(92)が、前記ブレーキディスク(1)の前記中心線(52)に対して対称になっている、請求項6又は7に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項9】
前記フランジ(20,22)が、該フランジ(20,22)の径方向外側のリム(Ce)寄りに配置された、径方向外側の接続要素(24)の列(36´)と、前記フランジ(20,22)の径方向内側のリム(Ci)寄りに配置された、径方向内側の接続要素(24)の列(36´´´)と、前記径方向外側の接続要素(24)の列(36´)と前記径方向内側の接続要素(24)の列(36´´´)との間に配置された、径方向中間の接続要素(24)の列(36´´)との三つの接続要素(24)の列(36´,36´´,36´´´)を含み、これら三つの列(36´,36´´,36´´´)が、前記フランジ(20,22)の全周にアンギュラ・ブラシングしている、請求項1〜8の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項10】
前記列(36´,36´´,36´´´)の各々の前記接続要素(24)が、前記フランジ(20,22)の前記径方向外側のリム(Ce)の方向に向いた径方向外側の端部(40)から、前記フランジ(20,22)の前記径方向内側のリム(Ci)の方向に向いた径方向内側の端部(44)へ伸び、前記径方向外側の接続要素列(36´)の接続要素(24)の径方向内側の端部(44)が前記径方向中間の接続要素列(36´´)の接続要素24の径方向外側の端部(40)と同じ円周上に配置され、前記径方向中間の接続要素列(36´´)の接続要素24の径方向内側の端部(44)が前記フランジ(20,22)の前記径方向内側のリム(Ci)寄りの前記径方向内側の接続要素列(36´´´)の径方向外側の端部(40)と同じ円周上に配置されている、請求項9に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項11】
前記径方向外側の接続要素の列(36´)が、第一の接続要素(24´)と第二の接続要素(24´´)を含み、前記第一の接続要素(24´)が径方向の伸長部を有し、前記第二の接続要素(24´´)が、前記第一の接続要素(24´)の前記径方向伸長部よりも短い、又は、前記第一の接続要素(24´)の前記径方向伸長部の半分の長さの伸長部を有している、請求項9又は10に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項12】
前記第二の接続要素(24´´)が円形の横断面を有するピンである、請求項11に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項13】
前記第一の接続要素(24´)がそれの前記径方向内側の端部(44)に径方向の伸長部(92)を有している、請求項11又は12に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項14】
前記径方向中間の前記接続要素列(36´´)が、前記径方向内側の端部(44)に径方向の伸長部(92)を備えた接続要素(24,96)を有し、該接続要素(24,96)が前記径方向外側の接続要素列(36´)の前記第二の接続要素(24´´)と角度的に整列配置されている、請求項11〜13の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項15】
一つの駆動要素(32)を含んだ前記ブレーキバンド(3)の角度セクタ内に配置された前記径方向中間列(36´´)の接続要素が、それの径方向外側の端部(40)に径方向の伸長部(92)を有し、それの径方向内側の端部(44)には径方向の伸長部を有していない、請求項9〜14の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項16】
前記径方向中間の接続要素列(36´´)が、角度的に互いにずれた第一、第二及び第三の接続要素列(104,106,108)を含み、前記第一の接続要素列(104)と前記第三の接続要素列(108)が前記径方向外側の接続要素列(36´)の前記第二の接続要素(24´´)に対して角度的に整列配置され、前記第二の接続要素列(106)が前記径方向外側の接続要素列(36´)の前記第一の接続要素(24´)に対して角度的に整列配置されている、請求項11〜14、及び、請求項11〜14に従属する請求項15の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項17】
前記第一の接続要素列(104)の中間接続要素(96)が、それの径方向内側端部(44)に伸長部(92)を有し、前記第三の接続要素列(108)の中間接続要素(96)が、前記第一の接続要素列(104)の前記伸長部(92)に直接的に面した径方向外側端部(40)に伸長部(92)を有している、請求項16に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項18】
前記第二の接続要素列(106)の中間接続要素(96)が、それの径方向内側端部(44)に伸長部(92)を有している、請求項16又は17に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項19】
前記径方向内側の接続要素列(36´´´)が、二つの駆動要素(32)の間に角度的に配列された三つの接続要素(100)のグループを有し、該グループにおいて、前記二つの駆動要素(32)に隣接した径方向内側の二つの接続要素(100)が、それの径方向外側端部に径方向の伸長部(92)を備えている、請求項9〜18の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項20】
前記径方向内側の接続要素(100)が、前記径方向外側の接続要素列(36´)の前記第一の接続要素(24´)と角度的に整列配置されている、請求項19に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項21】
前記径方向内側の接続要素列(36´´´)が、二つの駆動要素(32)の間に角度的に配列された四つの接続要素(100)のグループを有し、該グループにおいて、前記二つの駆動要素(32)に隣接した径方向内側の二つの接続要素(100)が、それの径方向外側端部に径方向の伸長部(92)を備えている、請求項9〜18の何れかに記載のブレーキディスク(1)。
【請求項22】
前記二つの駆動要素(32)に隣接した径方向内側の二つの接続要素(100)が、前記径方向外側の接続要素列(36´)の前記第二の接続要素(24´)と角度的に整列配置されている、請求項21に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項23】
前記駆動要素(32)に隣接していない接続要素(100)が、径方向外側の接続要素列(36´)の第一の接続要素(24´)と角度的に整列配置されている、請求項21又は22に記載のブレーキディスク(1)。
【請求項24】
前記駆動要素(32)が、底部(116)と突部(120)と前記底部(116)から前記突部(120)へ伸びた駆動本体(112)とを有し、前記底部(116)が前記ブレーキバンド(3)の前記フランジ(20,22)に接続される一対の枝部(124)を備えたY字状構造を有し、前記突部(120)が、前記支持キャリア(2)に形成された専用の座部(8)内に少なくとも部分的に挿入されている、請求項1〜23の何れかに記載のブレーキディスク(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−501895(P2013−501895A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523407(P2012−523407)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053311
【国際公開番号】WO2011/015962
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(504401639)フレニ ブレンボ エス.ピー.エー. (22)
【Fターム(参考)】