説明

ベント式シムビーム溶接プロセス

【課題】 2つの金属材料部材をビーム溶接するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】 本方法は、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムを配置し、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムから所定の距離に第2のシムを配置して、第1のシムと第2のシムの間に第1のベント経路を形成し、シムを用いて金属材料部材をビーム溶接して、ポロシティのない溶接部を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には溶接に関し、具体的には、ベント式シムビーム溶接プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
材料をビーム溶接する際に、溶接プロセス中に発生したガスが溶融池から逃れるメカニズムがないと、ポロシティを含む溶接部を生じかねない。ポロシティを含む溶接部の形成は、厚い材料片を接合する場合に起こる可能性が高まる。材料片が厚いほど、溶接プロセス中に発生して逃散することができず、ポロシティを含む溶接部を生じるガスが溶接時に形成される可能性が大きい。
【0003】
図1に、シム104を用いて2つの材料部材102を溶接する従来技術の方法を例示する。図1は、2つの材料部材102間の溶接継手接合面106に沿ってシム104をどのように配置するかを示す。図2は、ポロシティ202を含む溶接部204の断面図を含む従来技術を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6489583号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
2つの金属材料部材をビーム溶接するための方法及びシステムを開示する。本方法は、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムを配置し、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムから所定の距離に第2のシムを配置して、第1のシムと第2のシムの間に第1のベント(ガス抜き)経路を形成し、シムを用いて金属材料部材をビーム溶接して、ポロシティのない溶接部を形成することを含む。
【0006】
本発明の第1の態様は、2つの金属材料部材をビーム溶接するための方法であって、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムを配置し、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムから所定の距離に第2のシムを配置して、第1のシムと第2のシムの間に第1のベント経路を形成し、シムを用いて金属材料部材をビーム溶接して、ポロシティのない溶接部を形成することを含む方法を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、2つの金属材料部材の溶接に用いられる溶接用シムシステムであって、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面の平面内に配置するための、傾斜縁部を有する第1のシムと、2つの金属材料部材間の溶接継手接合面の平面内に配置するための、第1のシムの傾斜縁部と相補的な傾斜縁部を有する第2のシムと、傾斜縁部と相補的な傾斜縁部の間に第1のベント経路が存在するようにシムを位置決めするための、第1のシム及び第2のシムの少なくとも一方に設けられた要素とを備えるシステムを提供する。
【0008】
本発明の上記その他の特徴は、本発明の様々な態様を示す添付の図面と併せて、本発明の様々な態様に関する以下の詳細な説明を参照することによって、理解を深めることができよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術による、2つの金属材料部材とそれらの間のシムの斜視図である。
【図2】図1の部材の断面図であり、部材間に形成された継手と溶接金属内部に閉じ込められたポロシティを示す。
【図3】金属材料部材と、シム間にベント経路を含むシムの斜視図である。
【図4】図3のシムを用いて形成されたポロシティのない継手の断面図である。
【図5】ビーム溶接中の2つの金属材料部材の断面図であり、溶接の進展を明らかにするため一方の部材はファントムで示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面の縮尺は一定でない。図面は、本発明の典型的な態様を例示するものにすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。図面を通して、同様の要素には同様の符号を付した。
【0011】
金属材料の溶接中に生成したガスを除去すると、溶接部内部でポロシティが生じるおそれが減るので、溶接プロセスに有益である。かかるガスを除去する一つの経路は、シムを用いて形成されるベント経路を通すものである。シムは、溶接プロセスの一部として予め存在していてよい。シムは、溶接中に生成したガスを除去するためのベント経路を生じるように配置すればよい。図面を参照すると、図3は本発明の一実施形態を示すもので、溶接継手接合面106を含む金属材料部材102、第1の金属シム302とその隣りの第2の金属シム306とそれらの間の第1のベント経路304がある。溶接プロセス中に生成したガスは、溶融池の前方でベント経路304を通して金属材料部材102から除去することができる。
【0012】
一実施形態では、2つの金属材料部材102の溶接に用いられる溶接用シムシステムを提供する。本システムは、2つの金属材料部材102間の溶接継手接合面106の平面内に配置するための、傾斜縁部310を有する第1の金属シム302と、2つの金属材料部材102間の溶接継手接合面106の平面内に配置するための、第1の金属シム302の傾斜縁部310と相補的な傾斜縁部312を有する第2の金属シム306とを備える。sらに、本システムは、傾斜縁部310と相補的な傾斜縁部312の間に第1のベント経路304が存在するようにシムを位置決めするための、第1の金属シム302又は第2の金属シム306の少なくとも一方に設けられた要素314を有する。追加の一実施形態では、第1のシム302及び第2のシム306は各々金属材料を含む。シムの材料、シムの傾斜角度及びシムのギャップ間隔は、溶接パラメータ及び接合すべき金属材料に関連する。溶接パラメータとしては、例えば、電子ビームへの電力、電子ビームへの電流、ビームの移動速度、振動、周波数及び焦点を制御することが上げられる。別の実施形態では、各金属シムは略平行四辺形の形状を有する。別の実施形態では、傾斜縁部310及び相補的な傾斜縁部312はビーム溶接角度に対して約20〜60度である。
【0013】
別の実施形態では、2つの金属材料部材102間の溶接継手接合面106の平面内に配置するための、隣接する第2のシム306(この場合には第2の金属シム)の第2の傾斜縁部315に対して第2の相補的な傾斜縁部316を有する第3の金属シム309又は任意の数の追加のシムを設けてもよい。第2の相補的な傾斜縁部316と第2の傾斜縁部315の間に第2のベント経路308が存在するようにシムを位置決めするための、第2のシム306又は第3のシム309の少なくとも一方に設けられた要素318を設けてもよい。
【0014】
第1のベント経路304及び第2のベント経路308は、溶接プロセス中に生成したガスが溶融池の前方で逃散できるようにする。一実施形態では、第1のシムと第2のシムは最大0.100インチの間隔で互いに隔てられる。金属材料部材102に沿って溶接が進行する際、溶接プロセス中に生成したガスは、溶融池の前方のベント経路304,308を通して導くことができる。溶接プロセス中にガスが逃散できるようにすると、ポロシティ202を含む溶接部(図2)の形成を低減又はなくすことができる。したがって、溶接プロセスに起因するガスがベント経路304,308を通して逃散できるようにすると、図4に示すように、ポロシティのない溶接部を得ることができる。ポロシティのない溶接部402は、2以上の金属材料間の好ましい溶接部である。
【0015】
図5を参照すると、隣接シム302,306間にベント経路304を有するシム302,306を用いて2つの金属材料部材102をビーム溶接機504で溶接する別の実施形態が示してある。金属材料部材102に沿ってビーム溶接機504を進行させると、ポロシティのない溶接部502が生じる金属材料部材102に沿って。ビーム溶接機504を進行させる際に、溶接先端508は、第1のベント経路304の端303に達する前に第2のシム306及び第2のベント経路308と接触する。すなわち、第1のベント経路304の終端部は、ベント経路が常に利用できるように、第2のベント経路308に十分接近している。このプロセスは、あらゆる段階で、溶接プロセスで発生した溶接ガス506が溶融池510の前方で確実に逃散できるようにする。ビーム溶接機504からガス506を逃散させるためのベント経路304,308が常に存在すようにシム302,306を溶接継手接合面106に沿って整列させることによって、シム302,306は、ポロシティ202をもつ溶接部(図2)を形成するおそれを低減し、ポロシティのない溶接部402(図4)を生じる確率を高める。金属材料部材102とシム104の溶接部は、ビーム溶接504を用いて形成することができる。一実施形態では、ビーム溶接504は電子ビームである。別の実施形態では、ビーム溶接504はレーザビームである。
【0016】
本発明の様々な態様に関する以上の記載は例示のためのものである。以上の記載は、本発明を限定するものではなく、多くの変更形態及び変形形態が可能であることは自明である。当業者に自明な変更及び変形は、特許請求の範囲によって規定される本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0017】
102 金属材料部材
106 継手接合面
202 ポロシティ
302 第1のシム
303 端部
302,306 シム
304 第1のベント経路
304,308 ベント経路
306 第2のシム
308 第2のベント経路
309 第3のシム
310 傾斜縁部
312 相補的な傾斜縁部
314,318 要素
315 第2の傾斜縁部
316 第2の相補的な傾斜縁部
402,502 ポロシティのない溶接部
504 ビーム溶接機
506 溶接ガス
508 溶接先端
510 溶融池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属材料部材をビーム溶接する方法であって、
2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムを配置し、
2つの金属材料部材間の溶接継手接合面に沿って第1のシムから所定の距離に第2のシムを配置して、第1のシムと第2のシムの間に第1のベント経路を形成し、
金属材料部材をシムを用いてビーム溶接して、ポロシティのない溶接部を形成する
ことを含む方法。
【請求項2】
第1のシム及び第2のシムが各々金属材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶接継手接合面に沿って第2のシムから所定の距離に第3のシムを配置して、第2のシムと第3のシムの間に第2のベント経路を形成することをさらに含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1のベント経路が溶融池によって消滅するときに、溶接することによるガスが溶融池の前方で逃れる流路を与えるために第2のベント経路が利用できるように、第1のベント経路を溶接継手接合面と位置合わせすることをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第1のシムと第2のシムが最大0.100インチの間隔で互いに隔てられる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ビーム溶接する工程が、接合すべき金属材料に基づいてビーム溶接機に対する電力を制御することを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ビーム溶接する工程が、接合すべき金属材料に基づいてビーム溶接機に対する電流を制御することを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ビーム溶接する工程が、接合すべき金属材料に基づいてビーム溶接機の移動速度を制御することを含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
傾斜縁部及び相補的な傾斜縁部が、ビーム溶接角度に対して約20〜60度である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ビーム溶接する工程が、電子ビーム溶接を使用することを含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ビーム溶接する工程が、レーザビーム溶接を使用することを含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
2つの金属材料部材の溶接に用いられる溶接用シムシステムであって、
2つの金属材料部材間の溶接継手接合面の平面内に配置するための、傾斜縁部を有する第1のシムと、
2つの金属材料部材間の溶接継手接合面の平面内に配置するための、第1のシムの傾斜縁部と相補的な傾斜縁部を有する第2のシムと、
傾斜縁部と相補的な傾斜縁部の間に第1のベント経路が存在するようにシムを位置決めするための、第1のシム及び第2のシムの少なくとも一方に設けられた要素と
を備えるシステム。
【請求項13】
第1のシム及び第2のシムが各々金属材料を含む、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
2つの金属材料部材間の溶接継手接合面の平面内に配置するための、第2のシムの第2の傾斜縁部に対して第2の相補的な傾斜縁部を有する第3のシムをさらに備える、請求項12又は請求項13記載のシステム。
【請求項15】
第2の相補的な傾斜縁部と第2の傾斜縁部の間に第2のベント経路が存在するようにシムを位置決めするための、第2のシム及び第3のシムの少なくとも一方に設けられた要素をさらに備える、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
傾斜縁部と相補的な傾斜縁部が最大0.100インチの間隔で互いに隔てられる、請求項12乃至請求項15のいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
各シムが略平行四辺形の形状を有する、請求項12乃至請求項16のいずれか1項記載のシステム。
【請求項18】
傾斜縁部及び相補的な傾斜縁部が、ビーム溶接角度に対して約20〜60度である、請求項12乃至請求項17のいずれか1項記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−260102(P2010−260102A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102872(P2010−102872)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】