説明

ベースライン設定方法

【課題】演算負荷が小さく簡易な設定で精度が高いベースライン設定を行う。
【解決手段】X軸上に存在する半円、半楕円、又は二次曲線の図形をX軸方向に走査させ、前記図形を任意の位置を基準点として固定し、ピークがY軸正方向に出る場合は、X軸上に図形が存在する範囲においてスペクトルと図形の高さの差の最小値を求め、該最小値と前記基準点における図形の高さの和を求め、基準点を含む範囲において図形をずらしていき、それぞれの図形の位置において、同様にスペクトルと図形の高さの差の最小値と前記基準点における図形の高さの和を計算し、それらの計算された値のうち最大値L(xi)を求め、該最大値L(xi)を基準点のX座標におけるベースライン値として取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベースライン設定方法、特にベースライン推定手法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外分光光度計等による分光スペクトル測定時には、通常、基準軸(X軸)に波長ないし波数を設定し、吸光度、反射度等をY軸に設定する。そして、基準軸をパラメータとして測定値をプロットする。
波長を変えながら吸光度または反射度をプロットしていくと、スペクトルの中に細長い山、すなわちスペクトルのピークが表れる。これは特定波長に対して原子や分子に強く放射したり吸収したりする性質があるためである。
【0003】
しかしながら、スペクトル採取に用いる機器の特性の相違、或いはスペクトル測定中の環境変化によりスペクトルのベースラインは変動し、また蛍光の発生などがベースラインに影響を与えることもある。
このため、スペクトルに対するベースライン設定及び設定されたベースラインによるスペクトルデータ補正は、スペクトルデータの処理に必須の技術である。
【0004】
特に表面が粗面の試料や無機化合物の粉体が混合されたもの等の赤外透過スペクトル測定では、試料表面や内部で散乱し短波長の光に対する影響が大きく高波数側の透過スペクトル(%T)が下がる場合がある。またカーボンブラックを含む試料の低波数側のATRスペクトル(%T)が下がる傾向がある。
このような場合スペクトル全体の縦スケールが大きくなるので、ピーク部分が相対的に小さくなり、ライブラリ検索が困難になる。
【0005】
またベースラインの変動自体を直接測定することは困難であるため、必然的にベースライン変動の推定が必要となる。
例えば、下記特許文献1にはピーク部分の半値幅の2倍以上の直径を持った円や楕円などを、実測スペクトルに接触させ且つ交わらないように移動させ、そのときの軌跡の一部分をベースラインとしている。
【0006】
しかしながら、このような従来のベースライン補正に関する手法は、各種利点を備えるものの、演算負荷が大きく、しかも設定すべきパラメータも図形の形状、大きさなど多岐にわたり、実使用に際しての障害が多かった。
そこで、右肩上がり、左肩上がりのスペクトル、山型、谷型、波状型スペクトルにも対応でき、演算負荷が少なく、設定が簡易なベースライン設定方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−60614
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は演算負荷が小さく簡易な設定で精度が高いベースライン設定を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ピークがY軸正方向に出る場合は半円または半楕円を使用して以下のようにベースラインを設定することができる。
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸正方向に出る場合は前記基準軸X上の各点を中心とした、x+a=rで示されるX軸径Rの前記半円又は半楕円CXi[y≧0,fXi(x)={(r−x1/2}/a]を設定し、
(x,0)を中心とした前記半円又は半楕円CXiの各点(x−r,fXi(x−r))…(x+r,fXi(x+r))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−r,yXi−r)…(x+r,yXi+r)とを対比し、lXi−r=yXi−r−fXi(x−r),…,lXi+r=yXi+r−fXi(x+r)を算出し、lXi−r…lXi+rのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−r,0)〜(x+r,0)を中心とした半円又は半楕円CXi−r〜CXi+rのそれぞれについて得られた{l(x−r)min+fXi−r(x),…,l(x+r)min+fXi+r(x)}の中から最大の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を結び、ベースラインとすることを特徴とする。
【0010】
また、ピークがY軸負方向に出る場合は以下のようにしてベースラインを設定することができる。
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸負方向に出る場合は前記基準軸X上の各点を中心とした、x+a=rで示されるX軸径Rの前記半円又は半楕円CXi[y≦0,fXi(x)={(r−x1/2}/a]を設定し、
(x,0)を中心とした前記半円又は半楕円CXiの各点(x−r,fXi(x−r))…(x+r,fXi(x+r))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−r,yXi−r)…(x+r,yXi+r)とを対比し、lXi−r=fXi(x−r)−yXi−r,…,lXi+r=fXi(x+r)−yXi+rを算出し、lXi−r…lXi+rのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−r,0)〜(x+r,0)を中心とした半円又は半楕円CXi−r〜CXi+rのそれぞれについて得られた{fXi−r(x)−l(x−r)min,…,fXi+r(x)−l(x+r)min}の中から最小の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を結び、ベースラインとすることを特徴とする。
【0011】
また、ピークがY軸正方向に出る場合は二次曲線を使用して以下のようにベースラインを設定することができる。
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸正方向に出る場合は、前記基準軸X上の各点を中心とした、y=a(x−b)+cで示される二次曲線DXi{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a<0,f(x)=a(x−b)+c}を設定し、
(x,c)(測定開始時点においてx=b)を頂点とする前記二次曲線DXiの各点(x−M,fXi(x−M))…(x+M,fXi(x+M))と、それぞれ対応する計測曲線上の点(x−M,yXi−M)…(x+M,yXi+M)とを対比し、lXi−M=yXi−M−fXi(x−M),…,lXi+M=yXi+M−fXi(x+M)を算出し、lXi−M…lXi+Mのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−M,c)〜(x+M,c)を頂点とした二次曲線DXi−M〜DXi+Mのそれぞれについて得られた{l(x−M)min+fXi−M(x),…,l(x+M)min+fXi+M(x)}の中から最大の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記頂点をX軸方向にずらして前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を設定し、それらを結ぶことによりベースラインとすることを特徴とする。
【0012】
また、ピークがY軸負方向に出る場合は、以下のようにベースラインを設定することができる。
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸負方向に出る場合は、前記基準軸X上の各点を中心とした、y=a(x−b)+cで示される二次曲線DXi{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a>0,f(x)=a(x−b)+c}を設定し、
(x,c)(測定開始時点においてx=b)を頂点とする前記二次曲線DXiの各点(x−M,fXi(x−M))…(x+M,fXi(x+M))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−M,yXi−M)…(x+M,yXi+M)とを対比し、lXi−M=fXi(x−M)−yXi−M,…,lXi+M=fXi(x+M)−yXi+Mを算出し、lXi−M…lXi+Mのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−M,c)〜(x+M,c)を頂点とした二次曲線DXi−M〜DXi+Mのそれぞれについて得られた{fXi−M(x)−l(x−M)min,…,fXi+M(x)−l(x+M)min}の中から最小の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記頂点をX軸方向にずらして前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を設定し、それらを結ぶことによりベースラインとすることを特徴とする。
【0013】
円又は楕円を用いたベースラインの軌跡の算出方法は以下の手順により行われる。
最初に基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有する平面に、基準軸X上の各点を中心とした、x+a=rで示される半円又は半楕円C[y≧0(ただし、ピークがY軸正方向に出る場合はこのようにy≧0の範囲で前記図形Cを設定し、ピークがY軸負方向に出る場合はy≦0で前記図形Cを設定するものとする。),f(x)={(r−x1/2}/a]を設定する。
前記半円又は半楕円Cのa,rは経験的に設定される。
ここで、半円又は楕円のX軸径Rが小さすぎるとピーク部分でのベースラインが高い位置に設定され、ピーク部分のスペクトルに近づくので適切でない。
したがって、測定曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅をWとし、前記半円又は半楕円Cの前記X軸径Rを該半値幅Wの2倍以上とするのが好適である。
なお、計測曲線のベースの形状や勾配、ピーク幅を考慮し最適な曲率a、半径rを設定するのが好適である。
【0014】
ピークがY軸正方向に出る場合は(x,0)を中心とした半円又は半楕円Cxi上の各点(x−r,fXi(x−r))…(x+r,fXi(x+r))と、スペクトル上の点(x−r,yXi−r)…(x+r,yXi+r)との基準軸X上の各点に対応する差として、lXi−r=yXi−r−fXi(x−r),…lXi+r=yXi+r−fXi(x+r)を算出し(ピークがY軸負方向に出る場合はlXi−r=fXi(x−r)−yXi−r,…lXi+r=fXi(x+r)−yXi+rを算出する。)、lXi−r…lXi+rのうち最小のものをlXi(xminとする。
これにより円または楕円の中心点のX軸座標(x,0)上に計測曲線のピークがある場合でも、円又は楕円のX軸径の大きさがスペクトルに表れる最大のピーク幅よりも大きければ、ピークからずれた位置のX軸座標上でlXi(xminとして計算される。
【0015】
同様にして(x−r,0)〜(x+r,0)の範囲内で半円又は半楕円CXi−r〜CXi+rをずらしていき、先述の手順でlXi−r(xmin…lXi+r(xminを求め、{lXi−r(xmin+fXi−r(x),…,lXi+r(xmin+fXi+r(x)}(ピークがY軸負方向に出る場合は{fXi−r(x)−lXi−r(xmin,…,fXi+r(x)−lXi+r(xmin})として計算する。
これらの中から最大の値(ピークがY軸負方向に出る場合は、最小の値)をL(xi)として選定する。
そして、(x,L(xi))をベースライン点とする。
先述のようにf(x)の曲率aと半径rを適切に設定することにより計測曲線が右上がり又は左上がりのスペクトル、山型、谷型、波状型の各種形状のスペクトルにおいて自然なベースラインを設定できる。
【0016】
前記(x,0)をX軸方向にずらし、先述の手順を用いてL(x(i+1))を計算し、計測曲線上の特定点(x(i+1),yX(i+1))に対するベースライン点を(x(i+1),L(x(i+1)))とする。
このようにして前記計測曲線上の各点に対するベースライン点についても計算する。
そして、これらのベースライン点を結ぶことにより前記計測曲線のベースラインを設定することができる。
【0017】
また、先述の二次曲線を用いたベースライン設定方法についても、ピークがY軸正方向に出る場合は{a<0,f(x)=a(x−b)+c}(ただし、ピークがY軸負方向に出る場合は{a>0,f(x)=a(x−b)+c})で表される二次曲線についてb−M≦x≦b+Mの範囲の曲線となるようにし、半円又は半楕円の場合とほとんど同様の手順でベースライン設定することができる。
最初に基準軸X上の各点を中心とした、y=a(x−b)+cで示される二次曲線D{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a<0(ピークがY軸負方向に出る場合a>0),f(x)=a(x−b)+c}を設定する。前記aは経験的に設定される。また前記b、cは二次曲線Dの頂点の初期位置(b,c)として測定者により設定される。
ここで前記Mは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅W以上の数値とすべきであり、Mがそれより小さいとピーク部分でのベースラインが高い位置に設定され、ピーク部分のスペクトルに近づくので適切でない。
また経験的にaが設定されるが、計測曲線のベースの形状や勾配、ピーク幅を考慮し最適なaを設定するのが好適である。
【0018】
(x,c)(測定開始時点においてx=b)を頂点とする二次曲線DXi上の各点(x−r,fXi(x−r))…(x+r,fXi(x+r))と、スペクトル上の点(x−r,yXi−r)…(x+r,yXi+r)との基準軸X上の各点に対応する差として、lXi−r=yXi−r−fXi(x−r),…lXi+r=yXi+r−fXi(x+r)を算出し(ピークがY軸負方向に出る場合はlXi−r=fXi(x−r)−yXi−r,…lXi+r=fXi(x+r)−yXi+r)を算出し、lXi−r…lXi+rのうち最小のものをlXi(xminとする。)
これにより二次曲線の頂点のX軸座標(x,0)上に計測曲線のピークがある場合でも、ピークに対してベースラインの高さが適切になるようにaを設定し、また二次曲線の幅(=2M)の大きさがスペクトルに表れる最大のピーク幅よりも大きければ、ピークからずれた位置のX軸座標上でlXi(xminとして計算される。
【0019】
同様にして(x−r,0)〜(x+r,0)の範囲内で二次曲線DXi−r〜DXi+rをずらしていき、先述の手順でlXi−r(xmin…lXi+r(xminを求め、{lXi−r(xmin+fXi−r(x),…,lXi+r(xmin+fXi+r(x)}(ピークがY軸負方向に出る場合は{fXi−r(x)−lXi−r(xmin,…,fXi+r(x)−lXi+r(xmin})として計算する。
これらの中から最大の値(ピークがY軸負方向に出る場合は、最小の値)をL(xi)として選定する。
そして、(x,L(xi))をベースライン点とする。
先述のようにf(x)のaを適切に設定することにより計測曲線が右上がり又は左上がりのスペクトル、山型、谷型、波状型の各種形状のスペクトルにおいて自然なベースラインを設定できる。
【0020】
前記頂点をX軸方向にずらし、先述の手順を用いてL(x(i+1))を計算し、計測曲線上の特定点(x(i+1),yX(i+1))に対するベースライン点を(x(i+1),L(x(i+1)))とする。
このようにして前記計測曲線上の各点に対するベースライン点についても計算する。
ベースライン点を結ぶことにより前記計測曲線のベースラインを設定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、半円、半楕円の図形を任意のX軸上の座標で走査させることにより、基準点を(x,0)とするとき、ピークがY軸正方向に出る場合は、それぞれの図形の位置{中心点を(xi−r)〜(xi+r)とする。}におけるスペクトルから図形の高さの差の最小値lXi−r(xmin…lXi+r(xminと、それぞれの図形位置における基準点(x,0)での高さfXi−r(x)…fXi+r(x)をそれぞれ足し合わせ、{lXi−r(xmin+fXi−r(x)}…{lXi+r(xmin+fXi+r(x)}、得られた値の最大値L(xi)をベースライン値として取得する。基準点をX軸方向にずらして同様の操作によりベースライン値を求めていくことにより、自動で簡便かつ精度の高いベースラインを作成することができる。このとき図形はX軸方向に移動するだけでよく、複雑な動きをする必要がないので演算負荷は小さい。
また前記「r」を調整して、半円のX軸径Rを最大のピーク幅を持つピークの半値幅の2倍以上とすることにより、ベースライン点を設定しようとしているX軸上の座標(x,0)にピークがある場合でもピークの範囲外のX軸座標上のスペクトルと図形の高さの差が最小値l(xminとして計算される。そして、先述のように図形をずらしてlXi−r(xmin…lXi+r(xminが計算され、それらの値が{lXi−r(xmin+fXi−r(x)}…{lXi+r(xmin+fXi+r(x)}に組み込まれて計算されるが、lXi−r(xmin…lXi+r(xminの値がピークの範囲外のスペクトルと図形の高さの差となっているので、これらの値が大きくなりすぎず、前記のL(xi)の値が適切に設定される。
【0022】
また、スペクトルが右肩上がりまたは左肩上がりの形状、山型、谷型、波状型の形状である場合は、場合に応じて前記「曲率a」と「半径r」をスペクトル全体のベースの形状、勾配、ピーク幅に合わせて調整することによりベースラインが適切となる。
また二次曲線の場合も(x,c)(測定開始時点においてx=b)を頂点とする二次曲線D{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a<0(ピークがY軸正方向に出る場合),f(x)=a(x−b)+c}を作成し、先述の方法でベースラインを作成することにより、自動で簡便かつ精度の高いベースラインを作成することができる。
なお「b」および「c」は前記二次曲線Dの初期位置(b,c)として設定される。
また、図形はX軸方向に移動するだけでよく、複雑な動きをする必要がないので演算負荷は小さい。
半円等の図形をスペクトルに沿って動かすものであれば、図形の動きが複雑となり人的な操作が必要となるが、本発明においては図形をX軸方向に平行に動かすだけでよく、極めて単純な動きによりベースラインを設定できるので、最初のパラメータ設定以外に人的な操作を必要とせず、ベースライン設定をほぼ自動ですることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、基準点を(X,0)とし、半円の中心を基準点(X,0)として、Ymint+fXi(X)を計算する場合の説明図である。
【図2】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、基準点を(X,0)とし、半円の中心を(X+d,0)として、Ymin(t+1)+fXi+d(X)場合の説明図である。
【図3】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、基準点を(X,0)とし、半円の中心を(X−r,0)〜(X+r,0)の範囲で動かして計算した場合の説明図である。
【図4】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、基準点を移動させ本発明のベースライン設定方法によりそれぞれの基準点で半円を使用してベースライン点を設定することを説明するための図である。
【図5】は、ピークがY軸負方向に出る場合において、半円(y≦0)を使用してベースラインを設定するときのYminの位置について説明するための図である。
【図6】は、ピークがY軸負方向に出る場合において、基準点を(X,0)とし、半円(y≦0)の中心を(X−r,0)〜(X+r,0)の範囲で動かして計算した場合の説明図である。
【図7】は、図6の場合において、それぞれの図形の位置の基準点(X,0)での図形の高さからYminの値を引き、その計算された値を高さとしてx=X上にプロットしているが、そのプロットされた点と図形の位置との対応関係を示した図である。
【図8】は、半円を使用して本発明の方法を使用してベースラインを設定したときの一実施例である。
【図9】は、線分を使用して本発明の方法により線分の位置を操作して、ベースラインを設定した場合の一実施例である。
【図10】は、図8とは別のスペクトルを用いて、半円を使用して本発明の方法を使用してベースラインを設定したときの一実施例である。
【図11】は、図9とは別のスペクトルを用いて、線分を使用して本発明の方法により線分の位置を操作して、ベースラインを設定した場合の一実施例である。
【図12】は、ピークがY軸負方向に出る場合に半円を使用して本発明の方法によりベースラインを設定した一実施例である。
【図13】は、本発明の方法により半円を使用してベースラインを設定する場合で、円の外周が計測曲線に交わる場合において、Yminを計算する場合の説明図である。
【図14】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、基準点を(X,0)とし、二次曲線の頂点を基準点(X,0)としてYmin1+fXi(X)を計算する場合の説明図である。
【図15】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、基準点を(X,0)とし、二次曲線の頂点を(X+d,0)としてYmin2+fXi+d(X)を計算する場合の説明図である。
【図16】は、ピークがY軸正方向に出る場合において、本発明のベースライン設定方法により基準点を移動させそれぞれの基準点で二次曲線を使用してベースライン点を設定することを説明するための図である。
【図17】は、スペクトルのピーク部分のx座標およびピークの高さに合わせて二次曲線Dの頂点の初期位置(b,c)を設定し、基準点を(X,0)として、該初期位置において、fXi(X)+Ymin1を計算することを説明した図である。
【図18】は、スペクトルのピーク部分のx座標およびピークの高さに合わせて二次曲線Dの頂点の初期位置(b,c)を設定し、基準点を(X,0)として、該初期位置から二次曲線をX軸方向にr移動した場合において、fXi+r(X)+Ymin2を計算することを説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜4を用いてピークがY軸正方向に出る場合において、座標(X,0)での半円を使ってベースラインが設定されるまでの過程を説明する。
図5〜7を用いてピークがY軸負方向に出る場合において、本発明の方法を使用する場合にどのようにベースライン点が設定されるかを説明する。
図8〜11は実際に線や半円を使用したベースラインである。半円と線を使用して設定されたベースラインをそれぞれ比較しながら、「a」の調整について説明する。
図12は、ピークがY軸負方向に出る場合において、半円を使用して設定されたベースラインを設定し、スペクトルをベースライン補正したときの実施例である。
図13は円の半径を大きく取りスペクトルと半円とが交差する場合の説明図である。
図14〜図16を用いて、座標(X,0)を頂点とする二次曲線を使ってベースラインが設定されるまでの過程を説明する。
図17、図18は計測線のピーク部分のx座標およびピークの高さに合わせて二次曲線Dの頂点の初期位置(b,c)を設定した場合の実施例である。
【0025】
以下、本発明の実施例として、ピークがY軸正方向に出る場合において、半円の図面(図1〜図4)を用いたベースラインの設定手順について説明する。
まず操作者は座標(X,0)の位置を中心とした円または楕円の設定を行う。
円または楕円の設定はX+(a)Y=r(f(x)={(r−x1/2}/a)により行われ、曲率a及びrを設定することにより行われる。
前記半円又は半楕円のa,rは経験的に設定されるが、ベースライン点が適切な高さに設定されるように、前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅をWとしたとき、前記半円又は半楕円CのX軸径Rが該半値幅Wの2倍以上となるように設定するのが好適である。
【0026】
前記図形が存在する横軸領域各点でのスペクトルSから、(X−r,0)〜(X+r,0)の範囲にある(x,0)での計測値Sと{(r−x1/2}/a(y≧0)の差Y=(S−{(r−x1/2}/a)を求める。
そして、Yの値の最小値Ymintを計算する。
座標(X,0)での図形の高さfXi(X)と先ほど計算されたYmintを加算し(Ymint+fXi(X))とする(図1)。
【0027】
前記図形をX軸に対して平行に座標(X,0)を含む範囲内でd移動させる。
前記図形が存在する横軸領域各点でのスペクトルから、(X+d−r,0)〜(X+d+r,0)の範囲にある計測値Sと{(r−x1/2}/a(y≧0)の差Y=(S−{(r−x1/2}/a)を求める。
そして、Yの値の最小値Ymin(t+1)を計算する。
座標(X,0)での図形の高さfXi+d(X)とYmin(t+1)を加算し(Ymin(t+1)+fXi+d(X))とする。(図2)
当該操作を図形を(X−r,0)〜(X+r,0)の範囲で移動させて繰り返すことにより{Ymin1+fXi−r(X),…,Ymint+fXi(X),Ymin(t+1)+fXi+d(X),…,Yminn+fXi+r(X)}を計算し、この中から最大値Pを選び、座標(X,0)におけるベースライン上の点(X,P)とする(図3)。
ここで図3において基準点の座標(X,0)上に計測曲線のピークが存在するが、5つ記載されているいずれの位置にある半円についてもピークからずれた位置でYmin(Yminの値はそれぞれの円で別々に計算される。)が設定される。{Ymin1+fXi−r(X),…,Ymint+fXi(X),Ymin(t+1)+fXi+d(X),…,Yminn+fXi+r(X)}を計算し、最大値Pを選ぶことによりベースライン点(X,P)が高くなりすぎず適切な高さに設定される。
【0028】
座標(X,0)をX軸方向に移動し、座標(X(i+1),0)においても同様の操作を行うことにより、最大値Pを座標(X(i+1),0)におけるベースライン上の点とする。
当該操作を繰り返すことにより{(X,0),(X(i+1),0),・・・(X(i+n−1),0)}におけるベースライン上の点Pを計算し、これらを連結することで、ベースラインBLを得る(図4)。
【0029】
本発明はピークがY軸負方向に出る場合においても使用することができる。この場合、ピークがY軸正方向に出る場合と手順が異なるので説明を補足する。
ピークがY軸負方向に出る場合、図5のように半円をy≦0の範囲でとることを要する。
また円の外周とスペクトルとの距離の絶対値が最も大きいところをYminとすることを要する。そのために{f(x)−S}(f(x)を図形の高さの値、Sを計測値とする。)をYminとする。
そして、図6のように(X,0)における図形の高さをf(x)として、図形の位置をX軸方向にずらしながら{fXi−r(x)−Ymin1,…,fXi−1/2r(x)−Ymini,…,fXi(x)−Ymint,…,fXi+1/2r(x)−Yminj,…,fXi+r(x)−Yminn}を求める。
図6では複数の点がプロットされているが、その中でも最小の値となっているfXi+1/2r(x)−Yminjがベースライン点となる。
なお、図7は図6でプロットされた点がどの円に対応するかを矢印で示したものである。
【0030】
FT−IRや紫外可視光光度計での吸光度の測定で試料から発光がある場合は、検出器に届く光量が増えるため吸光度が下がる。またラマン分光計を使用したラマン散乱強度の測定では、試料から発光があるとスペクトルがかさ上げされる場合がある。
このような場合は図8、図10のように円を用いてベースライン補正することにより、縦軸のスケールを小さくでき、大きい縦軸スケールでは発見できなかったわずかなピークを発見できる。これにより、ライブラリでのヒット精度を高めることができる。
またこれらのベースラインの比較例として線分を使用して本発明の方法で図形を操作し、ベースラインを設定した実施例として図9、図11を表示した。
(1)図8は円での実施例で、図9は線分で実施した場合の比較例である。なお、線分によるベースライン設定は本発明に含まれないが、F(x)つまり楕円のY軸径を小さくすれば線分に近似するので、Y軸径の極めて小さい楕円の実施例と考えることもできる。
図8、図9のスペクトルは左肩上がりとなっている。
図8、図9のベースライン補正後のY軸のスケールを見ると図9の方が小さい。
これは図9の2800〜3000[cm−1]で表れているスペクトルのピーク周辺でベースラインがX軸と平行となっているためである。
ベースライン補正後の2800〜3000[cm−1]で表れているスペクトルの形状も図9は図8より幅が小さくなっており、スペクトル補正後のスペクトルが一部欠落していることから、図9のベースラインは適切でないことが分かる。
(2)図10は円での実施例で、図11は線分で実施した場合の比較例である。
図11においては500〜1700[cm−1]の範囲でベースラインがX軸に平行となっている部分があり、図10と比べるとベースライン補正後のスペクトルの形状も異なったものとなっている。
図11のベースラインによる補正後のスペクトルは、図9と同様に一部スペクトルが欠落してしまっている。スペクトルの欠落のない図10のようなベースラインが理想的である。
【0031】
図12はピークがY軸負方向に出る場合に半円を用いて本発明の方法を用いてベースラインを設定したときの実施例である。
図12の上図はピークがY軸負方向に出ており、右肩下がりのスペクトルとなっているが、本発明のベースラインによる補正がなされることにより、縦軸の透過率(%T)の縦軸スケールが小さくなり、よりスペクトルのピークが強調されていることが分かる。
【0032】
図13は円の外周が計測曲線に交わる場合についての図である。
ピークがY軸正方向に出る場合において、f(x)(={(r−x1/2}/a)(y≧0)が計測曲線上の特定点yよりも大きい場合はl(xmin[=y−f(x)]が負の値となるが、そのような場合でも{lXi−r(xmin+fXi−r(x),…,lXi+r(xmin+fXi+r(x)}の中から最大の値をL(xi)として選定し、ベースライン点(x,L(xi))を同様の手順で問題なく算出することができる。
【0033】
本発明の実施例2として、二次曲線を用いたベースラインの設定手順(図14〜図16)について説明する。
まず操作者はピークがY軸正方向に出る場合は、座標(X,0)の位置の位置に頂点を持つ二次曲線{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a<0,f(x)=a(x−b)+c}を設定する。
二次曲線の設定はy=a(x−b)+c(f(x)=a(x−b)+c)のa,b,cを設定することにより行われる。
前記二次曲線のパラメータaはピークの幅を考慮し経験的に設定されるが、ピークがY軸正方向に出る場合はaを負の値とすべきである。また前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅をWとし、W≦Mを満たすMを設定し、前記二次曲線があらわされる範囲をb−M≦x≦b+Mに設定し、二次曲線の範囲を指定することが必要である。また二次曲線の頂点の初期座標(b,c)も設定する。
また、実施例2ではc=0に設定している(以降、f(x)=a(x−b)とする。)が、c=0に限定されない。
なお、計測曲線のピークがY軸負方向に出る場合は、aを正の値とすべきである。
【0034】
前記図形が存在する横軸領域各点でのスペクトルから、(X−M,0)〜(X+M,0)の範囲での計測値Sとその位置における図形の高さa(x−b)の差、Y={S−a(x−b)}を求める。
そして、Yの値の最小値Ymin1を計算する。
座標(X,0)での図形の高さfXi(X)とYmin1を加算し(Ymin1+fXi(X))とする(図14)。
なお、ピークがY軸負方向に出る場合は、Y={a(x−b)−S}を求め、Yの値の最小値をYmin1とすべきである。
【0035】
前記図形をX軸に対して平行に座標(X,0)を含む範囲内でd移動させる。
前記図形が存在する横軸領域各点でのスペクトルから、(X+d−M,0)〜(X+d+M,0)の範囲での計測値Sとその位置における図形の高さa(x−b)の差、Y={S−a(x−b)}を求める。
そのときのYの値の最小値をYmin2として計算する。
座標(X,0)での図形の高さfXi+d(X)とYmin2を加算し{Ymin2+fXi+d(X)}とする。(図15)
当該操作を繰り返すことにより{Ymin1+fXi(X),Ymin2+fXi+d(X),・・・Yminn+fXi+d(n−1)(X)}を計算し、この中から最大値Pを選び、座標(X,0)におけるベースライン上の点(X,P)とする。
ここで、最大値Pは図形の頂点の座標が図14の(X,0)のとき、すなわちYmin1+fXi(X)が最大値Pとなる。
なお、計測曲線のピークがY軸負方向に出る場合は、{fXi(X)−Ymin1,fXi+d(X)−Ymin2,・・・fXi+d(n−1)(X)−Yminn }のうち最小値をPとすべきである。
【0036】
座標(X,0)をX軸方向に移動し、座標(X(i+1),0)においても同様の操作を行うことにより、最大値Pを座標(X(i+1),0)におけるベースライン上の点とする。
当該操作を繰り返すことにより{(X,0),(X(i+1),0),・・・(X(i+n―1),0)}におけるベースライン上の点Pを計算し、これらを連結することで、ベースラインBLを得る(図16)。なお、図16ではベースライン上の点Pの例として3つプロット(X〜X)されているが実際にはこれよりも多くのプロットがなされる。
【0037】
図17、図18(図18は二次曲線を図17の位置からX軸方向にr動かしたもの)はスペクトルのピークのx座標およびピークの高さに合わせて二次曲線Dの頂点の初期位置(b,c)を設定した場合の実施例についての図である。
f(x)(=a(x−b)+c)が計測曲線上の特定点yよりも大きい場合はl(xmin[=yXi−f(x)]が負の値となるが、そのような場合においても{lXi−r(xmin+fXi−r(x),…,lXi+r(xmin+fXi+r(x)}の中から最大の値をL(xi)として選定し、ベースライン点(x,L(xi))を同様の手順で問題なく算出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸正方向に出る場合は、前記基準軸X上の各点を中心とした、x+a=rで示されるX軸径Rの半円又は半楕円CXi[y≧0,fXi(x)={(r−x1/2}/a]を設定し、
(x,0)を中心とした前記半円又は半楕円CXiの各点(x−r,fXi(x−r))…(x+r,fXi(x+r))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−r,yXi−r)…(x+r,yXi+r)とを対比し、lXi−r=yXi−r−fXi(x−r),…,lXi+r=yXi+r−fXi(x+r)を算出し、lXi−r…lXi+rのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−r,0)〜(x+r,0)を中心とした半円又は半楕円CXi−r〜CXi+rのそれぞれについて得られた{l(x−r)min+fXi−r(x),…,l(x+r)min+fXi+r(x)}の中から最大の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を結び、ベースラインとすることを特徴とするベースライン設定方法。
【請求項2】
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸負方向に出る場合は、前記基準軸X上の各点を中心とした、x+a=rで示されるX軸径Rの半円又は半楕円CXi[y≦0,fXi(x)={(r−x1/2}/a]を設定し、
(x,0)を中心とした前記半円又は半楕円CXiの各点(x−r,fXi(x−r))…(x+r,fXi(x+r))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−r,yXi−r)…(x+r,yXi+r)とを対比し、lXi−r=fXi(x−r)−yXi−r,…,lXi+r=fXi(x+r)−yXi+rを算出し、lXi−r…lXi+rのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−r,0)〜(x+r,0)を中心とした半円又は半楕円CXi−r〜CXi+rのそれぞれについて得られた{fXi−r(x)−l(x−r)min,…,fXi+r(x)−l(x+r)min}の中から最小の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を結び、ベースラインとすることを特徴とするベースライン設定方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅をWとし、前記半円又は半楕円CXiのX軸径Rが該半値幅Wの2倍以上となるように設定することを特徴とするベースライン設定方法。
【請求項4】
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸正方向に出る場合は、前記基準軸X上の各点を中心とした、y=a(x−b)+cで示される二次曲線DXi{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a<0,f(x)=a(x−b)+c}を設定し、
(x,c)(測定開始時点においてx=b)を頂点とする前記二次曲線DXiの各点(x−M,fXi(x−M))…(x+M,fXi(x+M))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−M,yXi−M)…(x+M,yXi+M)とを対比し、lXi−M=yXi−M−fXi(x−M),…,lXi+M=yXi+M−fXi(x+M)を算出し、lXi−M…lXi+Mのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−M,c)〜(x+M,c)を頂点とした二次曲線DXi−M〜DXi+Mのそれぞれについて得られた{l(x−M)min+fXi−M(x),…,l(x+M)min+fXi+M(x)}の中から最大の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記頂点をX軸方向にずらして前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を設定し、それらを結ぶことによりベースラインとすることを特徴とするベースライン設定方法。
【請求項5】
基準軸Xと、該基準軸Xに対し直交方向に伸張する計測値軸Yとを有し、前記基準軸X上の各点xに対し一の計測値yが特定される計測曲線のベースライン設定方法において、
前記計測曲線のピークがY軸負方向に出る場合は、基準軸X上の各点を中心とした、y=a(x−b)+cで示される二次曲線DXi{b−M≦x≦b+M,M≧W(Wは前記計測曲線上に現れる複数のピークの中で最大のピーク幅を有するピークの半値幅),a>0,f(x)=a(x−b)+c}を設定し、
(x,c)(測定開始時点においてx=b)を頂点とする前記二次曲線DXiの各点(x−M,fXi(x−M))…(x+M,fXi(x+M))と、それぞれ対応する前記計測曲線上の点(x−M,yXi−M)…(x+M,yXi+M)とを対比し、lXi−M=fXi(x−M)−yXi−M,…,lXi+M=fXi(x+M)−yXi+Mを算出し、lXi−M…lXi+Mのうち最小のものをl(xminとし、
同様にして(x−M,c)〜(x+M,c)を頂点とした二次曲線DXi−M〜DXi+Mのそれぞれについて得られた{fXi−M(x)−l(x−M)min,…,fXi+M(x)−l(x+M)min}の中から最小の値をL(xi)として選定し、
前記計測曲線上の特定点(x,y)に対するベースライン点を(x,L(xi))と設定し、
前記頂点をX軸方向にずらして前記計測曲線上の各点に対するベースライン点を設定し、それらを結ぶことによりベースラインとすることを特徴とするベースライン設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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