説明

ベーパ回収装置

【課題】本発明はタンク内で発生したベーパの発生量に応じてベーパの回収効率を高めることを課題とする。
【解決手段】ベーパ回収装置20は、ベーパ回収管80と、吸着剤90が充填された吸着槽100と、吸着槽100に連通された排気弁114及び三方弁120と、吸着槽100で脱着された燃料成分を地下タンク10に還流させる還流管130とを有する。温度センサ141〜143は、吸着槽100に充填された吸着剤90の温度を測定し、その検出温度に対応する電気的な検出信号を制御装置150に入力する。制御装置150は、温度センサ141〜143からの検出信号により温度変化率を求め、この温度変化率が予め設定された所定値以下になった場合に吸着工程または脱着工程が終了したものと判断し、この判断結果により吸着工程または脱着工程に切り替えるように制御処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベーパ回収装置に係り、特に吸着剤が充填された吸着槽にベーパを供給してベーパに含まれる燃料成分を吸着剤により吸着させた後、吸着剤に吸着された燃料成分を脱着してタンクに還流させるよう構成されたベーパ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所等の燃料供給施設では、タンクローリ車の各ハッチから液体燃料が荷卸しされるタンクが設置されている。この種のタンクは、主に地下に埋設されており、タンクローリ車との高低差を利用してタンクローリ車に積載された液体燃料が荷卸しホースを介して荷卸しする際に液体燃料から蒸発したベーパ(油蒸気)がタンク内上部空間に発生する。
【0003】
また、給油所のタンクは、高所で大気に連通された通気口を有する通気管が接続されており、荷卸し時は液面の上昇と共に、ベーパを大気中に放出するように構成されている。
【0004】
近年、大気中における環境汚染が問題になっていることから、荷卸し時においてもタンク内のベーパに含まれる燃料成分(石油に主成分となる炭化水素:HC成分)を回収してベーパによる大気汚染を防止することが要望されている。
【0005】
ベーパ回収装置としては、例えば、ベーパに含まれる燃料成分を吸着する吸着剤(例えば、シリカゲルなど)を用いてベーパが大気中に放出されることを防止すると共に、吸着剤に吸着された燃料成分を脱着してタンクに戻すことでベーパをリサイクルする構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−117338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたベーパ回収装置では、吸着工程と脱着工程とを1サイクルとして繰り返しており、1サイクルの周期がベーパの発生量と吸着効率及び脱着効率を考慮して吸着時間及び脱着時間を設定している。従って、従来のものは、各工程を時間で管理する制御方式が用いられているため、吸着槽においては、実際に吸着終了及び脱着終了を確認せずに工程を切り替えていた。
【0007】
そのため、従来のベーパ回収装置は、吸着工程が終了する前に脱着工程に切り替えられた場合には、燃料成分を十分に吸着しないまま脱着してしまったり、あるいは脱着工程が終了する前に吸着工程に切り替えた場合には、燃料成分が吸着されないベーパが大気中に放出されてしまうという問題があった。
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したベーパ回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0009】
本発明は、液体燃料を荷卸しされるタンクと、前記液体燃料から蒸発したベーパを吸着するための吸着剤が充填された吸着槽と、前記タンク内で発生したベーパを前記吸着槽内に供給して前記ベーパに含まれる燃料成分を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を行うベーパ回収手段と、該吸着槽内と連通し、前記吸着槽で前記ベーパに含まれる燃料成分を除去された気体を大気中に排出する気体排出手段と、前記吸着槽内と連通し、前記吸着剤に吸着された前記燃料成分を脱着させて前記タンクに還流させる脱着工程を行う還流手段と、を備えたベーパ回収装置において、前記吸着剤の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段により検出された温度変化に基づいて前記吸着槽で吸着工程が終了したことを判断する判断手段と、前記判断手段により前記吸着工程が終了したと判断された場合に前記ベーパ回収手段によるベーパの回収を停止させ、前記還流手段により前記吸着剤から脱着された前記燃料成分を前記タンクに還流させる脱着工程に切り替える切替手段と、を備えたことにより、上記課題を解決するものである。
【0010】
前記判断手段は、前記温度変化の変化率が所定値以下になった場合に前記吸着工程が終了したと判断することにより、上記課題を解決するものである。
【0011】
本発明は、液体燃料を荷卸しされるタンクと、前記液体燃料から蒸発したベーパを吸着するための吸着剤が充填された吸着槽と、前記タンク内で発生したベーパを前記吸着槽内に供給して前記ベーパに含まれる燃料成分を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を行うベーパ回収手段と、該吸着槽内と連通し、前記吸着槽で前記ベーパに含まれる燃料成分を除去された気体を大気中に排出する気体排出手段と、前記吸着槽内と連通し、前記吸着剤に吸着された前記燃料成分を脱着させて前記タンクに還流させる脱着工程を行う還流手段と備えたベーパ回収装置において、前記吸着剤の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段により検出された温度変化に基づいて前記吸着槽で脱着工程が終了したことを判断する判断手段と、前記判断手段により前記脱着工程が終了したと判断された場合に前記還流手段による前記燃料成分の還流を停止させる還流停止手段と、を備えたことにより、上記課題を解決するものである。
【0012】
前記判断手段は、前記温度変化の変化率が所定値以下になった場合に前記脱着工程が終了したと判断することにより、上記課題を解決するものである。を備えたことを特徴とする
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸着剤の温度を検出する温度検出手段により検出された温度変化に基づいて吸着槽で吸着工程が終了したものと判断された場合にベーパ回収手段によるベーパの回収を停止させ、還流手段により吸着剤から脱着された燃料成分をタンクに還流させる脱着工程に切り替えるため、ベーパの発生量に応じた吸着工程を行なうことができ、吸着槽における吸着の精度をより高めることが可能になる。よって、吸着工程が終了する前に脱着工程に切り替えられ、ベーパに含まれる燃料成分を十分に吸着しないまま脱着工程に移行することを防止できる。
【0014】
また、本発明によれば、吸着剤の温度を検出する温度検出手段により検出された温度変化に基づいて吸着槽で脱着工程が終了したものと判断された場合に還流手段による燃料成分の還流を停止させるため、ベーパの発生量に応じた脱着工程を行なうことができ、吸着槽における脱着を確実に行うことが可能になる。よって、吸着槽の吸着剤よりのベーパの回収が完了していないにもかかわらず、脱着工程が終了してしまうことにより次回の吸着時における吸着槽による吸着性能の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明によるベーパ回収装置の一実施例を示すシステム系統図である。本実施例では、給油所に設置された地下タンクに液体燃料を荷卸しする場合を例に挙げて以下説明する。図1に示されるように、給油所に設置された地下タンク10には、ベーパ回収装置20が設けられている。また、地下タンク10は、図1では省略された地中に埋設されており、地上に延在する荷卸し管30と、計量機40に給液する給液管50と、通気管60とが挿入されている。
【0017】
荷卸し管30は、地上に突出する上端に、タンクローリ車31に積載された油液(液体燃料)を荷卸しするための荷卸しホース32が接続される注油口34が設けられている。
【0018】
また、通気管60は、上端にタンク内圧力が予め設定された所定圧以上に上昇した場合に排気側が開弁し、給油により地下タンク10内圧力が所定圧に降圧した場合には給気側が開弁するように構成された安全弁70が設けられている。
【0019】
ベーパ回収装置20は、通気管60より分岐されたベーパ回収管80と、吸着剤90が充填された吸着槽100と、吸着槽100の排気口102に連通された排気管110と、排気管110を開または閉とする排気弁114と、吸着槽100の給気口104に連通された三方弁120と、吸着槽100で脱着された燃料成分を地下タンク10に還流させる還流管130とを有する。
【0020】
吸着槽100は、円筒形状に形成されており、内部を上層領域100a、中間層領域100b、下層領域100cの3ブロックに分けた場合、各ブロックの温度を測定する温度センサ(温度検出手段)141〜143が取り付けられている。温度センサ141〜143としては、熱電対などからなり、各温度センサ141〜143の防爆構造とされた温度検出部が吸着槽100内に挿入されている。また、温度センサ141〜143は、夫々高さ位置の異なる上層領域100a、中間層領域100b、下層領域100cに充填された吸着剤90の温度を測定し、その検出温度に対応する電気的な検出信号を制御装置150に入力する。尚、温度センサの数及び設置場所は、上記数及び設置場所に限らない。また、温度センサ141〜143としては、測温抵抗体あるいはサーミスタ等を用いても良い。
【0021】
排気管110は、上端開口112が高所に延在しており、吸着槽100を通過する過程でベーパを分離された気体を上端開口112から大気中に放出させる。また、排気管110の途中には、電磁弁からなる排気弁114が配置されており、排気弁114は制御装置150により吸着工程のとき開弁し、脱着工程のときは閉弁するように制御される。
【0022】
また、排気弁114と排気口102との間には、パージ管116が接続されており、パージ管116には、電磁駆動式のパージ弁118が設けられている。このパージ弁118は、制御装置150により弁開度を制御されており、脱着工程が開始されて温度変化率が所定以下になったときに開弁され、パージガスを吸着槽100の排気口へ供給するパージガスの流量を調整する。
【0023】
尚、本実施例においては、パージ管116は、その端部がパージガスを生成する圧縮機119に連通されており、圧縮機119によって加圧された空気あるいは窒素ガスをパージガスとして供給するようになっているが、これに限るものではなく、例えば、圧縮機119を取り外し、パージ管116に外気を直接導入するようにしても良い。
【0024】
三方弁120は、ベーパ回収管80が連通されたaポートと、給気口104に連通されたbポートと、還流管130に連通されたcポートとを有し、電磁アクチュエータ122により弁体を切替動作させるように構成されている。従って、三方弁120は、制御装置150からの制御信号により電磁アクチュエータ122が駆動されて、吸着工程時にはaポートとbポートとを連通させ、あるいは脱着工程時にはbポートとcポートとを連通するように切り替える。
【0025】
さらに、還流管130には、脱着工程時に駆動されて吸着槽100内を真空に減圧する吸引ポンプ160と、吸着槽100から吸引されたベーパを冷却して液化する冷却ユニット170とが配置されている。この吸引ポンプ160及び冷却ユニット170は、制御装置150によって吸着工程時には停止され、脱着工程時には駆動されるように制御される。
【0026】
制御装置150のメモリには、後述するように温度センサ141〜143からの検出信号により温度変化率を求め、この温度変化率が予め設定された所定値以下になった場合に吸着工程または脱着工程が終了したものと判断する制御プログラム(判断手段)と、この判断手段による判断結果により吸着工程を脱着工程に切り替え、あるいは脱着工程を吸着工程に切り替える制御プログラム(切替手段)とが格納されており、制御装置150は各制御プログラムに基づいて演算処理を実行する。
【0027】
図2は温度センサ141〜143により測定された吸着工程、脱着工程の温度変化を示すグラフである。図2に示されるように、吸着槽100に充填された吸着剤90は、例えば、多孔質のシリカゲルなどからなり、微細な孔にベーパ(液体燃料成分が蒸発した油蒸気)に含まれる燃料成分(石油に主成分となる炭化水素:HC成分)を吸着(化学的吸着と物理的吸着)する性質を有している。そして、吸着剤90はベーパに含まれる燃料成分を吸着する際に熱を発し、吸着された燃料成分を脱着する際に熱を奪うため、吸着槽100で吸着が行なわれている間は温度センサ141〜143により温度上昇が検出され、吸着槽100で脱着が行なわれている間は温度センサ141〜143により温度低下が検出される。尚、吸着剤としては、シリカゲル以外のもの、例えば、ゼオライト、炭素系吸着剤などを用いても良い。
【0028】
温度センサ141〜143により検出された温度変化は、夫々図2のグラフf1〜f3に示すように外気温(図2中、破線で示す規準線)に対して温度上昇と温度低下とを所定のサイクルで繰り返すように表せる。
【0029】
一方、地下タンク10においては、計量機40による給油が行なわれることにより液面が低下すると共に、液面より上方の上部空間にベーパが発生する。そして、油槽所で油液が積載されたタンクローリ車31が給油所に到着し、荷卸し管30に荷卸しホース32が接続されると、地下タンク10への荷卸しが開始される。
【0030】
その際、地下タンク10においては、油液の荷卸しに伴って液面が上昇し、上部空間が次第に狭くなると共に、上部空間の圧力が上昇することになる。このような、荷卸し時は、液面上昇によるベーパの圧力上昇が発生するため、吸着工程(三方弁120のaポートとbポートとを連通させる)が設定される。これにより、地下タンク10で発生したベーパがベーパ回収管80を介して吸着槽100の下側に開口する給気口104に供給される。
【0031】
給気口104より供給されたベーパに含まれる燃料成分は、吸着槽100の下層領域100cの吸着剤90に吸着されるため、荷卸し開始直後から吸着槽100の下層領域100cに設けられた温度センサ143によって検出された温度が急激に上昇する(グラフf3参照)。
【0032】
吸着槽100の下層領域100cの吸着剤90によって燃料成分が吸着されなかったベーパは、排気口102側(上方)へ流れるため、吸着槽100の中間層領域100bの吸着剤90によって吸着される。そのため、荷卸し開始後に中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度が下層領域100cより若干遅れて上昇する(グラフf2参照)。
【0033】
吸着槽100の中間層領域100bの吸着剤90によって燃料成分が吸着されなかったベーパは、さらに排気口102側(上方)へ流れるため、吸着槽100の上層領域100aの吸着剤90によって燃料成分を吸着される。そのため、荷卸し開始後に上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度が下層領域100c、中間層領域100bの温度より若干遅れて上昇する(グラフf1参照)。
【0034】
このように、吸着槽100には、異なる高さ位置に温度センサ141〜143が分散配置されているので、各領域100a〜100cでの温度変化を検出することが可能になり、荷卸し開始(T1)から荷卸し終了(T2)までの吸着槽100の状態を各温度センサ141〜143に検出された温度変化率(吸着時は温度上昇率、脱着時は温度低下率)に基づいて確認することが可能になる。また、地下タンク10からのベーパ供給が止まると吸着剤90による吸着が行なわれなくなるので、温度上昇も緩やかな変化となり、やがて吸着槽100のベーパが殆どゼロになると、各温度センサ141〜143に検出された温度の上昇率が所定以下(温度上昇率t1以下)に低下する。
【0035】
また、温度センサ141〜143は、吸着槽100の一部の温度を検出しているだけなので、温度変化率の低下状態が所定時間継続することによって、吸着槽100全体での吸着工程が終了したことになる。
【0036】
従って、各温度センサ141〜143により検出された温度上昇率の減少から各領域100a〜100cでの吸着工程が終了したことを正確に判断することが可能になる。これにより、吸着工程における精度をより高めることができる。
【0037】
そして、吸着槽100を通過する過程でベーパに含まれる燃料成分を除去された気体は、ベーパを含まないクリーンな状態になって排気管110の上端開口112から大気中に放出される。
【0038】
図2において、タンクローリ車31から地下タンク10への荷卸しが終了(T2)すると、吸着工程が終了して脱着工程に移行する。脱着工程は、三方弁120をbポートとcポートとが連通されるように切り替えると共に、排気管110の排気弁114を閉弁し、且つ吸引ポンプ160により吸着槽100の気体を吸引する。
【0039】
これで、吸着槽100は、脱着工程に切り替わり、吸引ポンプ160の負圧(真空)によって吸着剤90に吸着された燃料成分が脱着されるため、図2のグラフf1〜f3に示すようにT2以降は各領域100a〜100cの吸着剤90の温度が低下する。そして、グラフf1〜f3に示すように各領域での脱着に伴う温度低下が各温度センサ141〜143によって検出される。
【0040】
また、吸着工程が開始されて時間T3になると、各温度センサ141〜143に検出された温度低下率が所定温度低下率Δt1以下に低下し、この状態が所定時間継続された時点(T3)で、脱着効率が著しく低下する。このとき、パージ管116のパージ弁118を開弁して吸着槽100の排気口102に圧縮機119により加圧されたパージガスを供給することにより、吸着槽100においては、吸着剤90に吸着された燃料成分の脱着分離が促進される。そのため、グラフf1〜f3に示すように、パージガスの供給により各温度センサ141〜143に検出された温度がさらに低下して燃料成分の脱着分離が促進されたことを確認することが可能になる。
【0041】
ガスパージにより脱着効率が回復した後再び脱着効率が著しく低下した時点(T4)で、各温度センサ141〜143に検出された温度低下率が所定温度低下率Δt2以下に減少するので、ガスパージによる脱着分離が終了したことを検出できる。
【0042】
そして、時間T4で吸引ポンプ160を停止させるとともに排気弁114を開弁することにより、吸着槽100にはパージガスおよび排気弁114より流入する大気が導入され、吸着剤90の温度が外気温に上昇したことが各温度センサ141〜143に検出された時点(T5)で脱着工程が終了する。
【0043】
ここで、制御装置150が実行する制御処理について図3A、図3Bを参照して説明する。図3AのS11では、三方弁120のaポートとbポートとを連通させるように切り替えることにより、吸着槽100は吸着工程に切り替わる。
【0044】
なお、このときの吸着槽100の排気弁114は開弁状態であるため、地下タンク10の上部空間の圧力が吸着槽100の給気口104に供給され、排気弁114を介して大気圧が吸着槽100の排気口102に供給される。地下タンク10の上部空間に溜まったベーパの圧力が大気圧以上であるので、排気口102と給気口104との圧力差により、地下タンク10のベーパが吸着槽100に供給される。
【0045】
次のS12では、温度センサ141〜143によって検出された吸着槽100の温度が上昇しているか否かをチェックしており、温度上昇があれば、吸着工程が開始(図2のT1参照)されたものと判断することができる。
【0046】
続いて、S13に進み、冷却ユニット170を駆動して冷却を開始させる。尚、冷却ユニット170は、冷媒をコンプレッサにより圧縮して冷却する構成であるので、冷却可能状態になるのに時間がかかるため、脱着工程に入る前段階で始動させるようになっている。なお、本実施例では、冷却ユニット170を事前に駆動することにより脱着工程時における冷却を効率よく行えるようにしているが、例えば、冷却ユニット170に冷却水による冷却、或いは水道水による冷却を利用したものを利用してもよい。そして、このように始動段階から冷却機能をすぐに発揮できる冷却ユニット170を使用した場合には、本S13の処理をS16の処理の後に行うようにしても良い。
【0047】
次のS14では、吸着槽100の下層領域100cから吸着反応が進行するため、下層領域100cの温度センサ143によって検出された温度(信号)を読み込み、下層領域100cの温度上昇率が予め設定された所定温度上昇率t1よりも大であるか否かをチェックする。このS14において、下層領域100cの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも大である場合(YESの場合)、現在の状態を維持すべくS14の処理を繰り返す。
【0048】
下層領域100cにおける吸着反応が進むことにより、下層領域100cの吸着剤90の温度が上昇するがこの温度上昇率は徐々に低下し始める。そして、S14において、下層領域100cの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも小さくなった場合(NOの場合)、S15に進む。
【0049】
次のS15では、吸着槽100の中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度(信号)を読み込み、前述のS14の処理と同様に中間層領域100bの温度上昇率が予め設定された所定温度上昇率t1よりも大であるか否かをチェックする。このS15において、中間層領域100bの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも大である場合(YESの場合)、上記S14に戻る。
【0050】
また、中間層領域100bにおける吸着反応が進むことにより、中間層領域100bにおける吸着剤90の温度上昇率が徐々に低下し始める。そして、S15において、中間層領域100bの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも小さくなった場合(NOの場合)、S16に進む。
【0051】
次のS16では、吸着槽100の上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度(信号)を読み込み、前述のS14の処理と同様に上層領域100aの温度上昇率が予め設定された所定温度上昇率t1よりも大であるか否かをチェックする。このS16において、上層領域100aの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも大である場合(YESの場合)、上記S14に戻る。
【0052】
また、上層領域100aにおける吸着反応が進むことにより、上層領域100aにおける吸着剤90の温度上昇率が徐々に低下し始める。そして、S16において、上層領域100aの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも小さくなった場合(NOの場合)、S17に進む。
【0053】
このように、上記S14〜S16で各領域100a〜100cの温度上昇率が所定温度上昇率t1以下になったとき(図2のT2参照)、吸着工程が終了したものと判断して、脱着工程に切り替える。すなわち、三方弁120をbポートとcポートとが連通されるように切り替えて脱着工程にする。
【0054】
続いて、S18に進み、排気管110の排気弁114を閉弁させ、S19で吸引ポンプ160を起動させて吸着槽100の気体を吸引(減圧)し、次のS20の処理に移行する。これで、脱着工程が開始されると共に、吸引ポンプ160によって吸着槽100内より吸引された脱着燃料成分が冷却ユニット170で冷却されて液化され、地下タンク10に戻される。
【0055】
次に、脱着工程が開始されると吸着槽100の上層領域100aの吸着剤90の温度が低下し始めるがこの温度低下率は脱着分離が進むにつれて徐々に低下する。従って、S20では、上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度(信号)を読み込み、上層領域100aの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt1よりも大であるか否かをチェックする。このS20において、上層領域100aの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも大である場合(YESの場合)、現在の状態(脱着工程)を維持すべくS20の処理を繰り返す。
【0056】
また、上層領域100aにおける脱着分離が進むとともに、上層領域100aにおける吸着剤90の温度低下率も小さくなり、S20において、上層領域100aの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも小さいと判断された場合(NOの場合)、S21に進む。
【0057】
次のS21では、吸着槽100の中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度(信号)を読み込み、前述のS20の処理と同様に中間層領域100bの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt1よりも大であるか否かをチェックする。このS21において、中間層領域100bの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも大である場合(YESの場合)、上記S20に戻る。
【0058】
また、中間層領域100bにおける脱着分離が進むとともに、中間層領域100bにおける吸着剤90の温度低下率も小さくなり、S21において、中間層領域100bの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも小さいと判断された場合(NOの場合)、S22に進む。
【0059】
次のS22では、吸着槽100の下層領域100cの温度センサ143によって検出された温度(信号)を読み込み、前述のS20の処理と同様に下層領域100cの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt1よりも大であるか否かをチェックする。このS22において、下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも大である場合(YESの場合)、上記S22に戻る。
【0060】
また、下層領域100cにおける脱着分離が進むことにより、下層領域100cの吸着剤90の温度低下率が小さくなり、S22において、下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも小さいと判断された場合(NOの場合)、S23に進む(図2のT3参照)。なお、吸着剤90は、上述のように負圧状態での脱着効率が低下するにつれてその温度低下が鈍化する。
【0061】
このように、上記S20〜S22で各領域100a〜100cの温度低下率が所定温度低下率Δt1以下になったとき、負圧状態における脱着工程の第1段階が終了したものと判断して、パージ制御(脱着工程の第2段階)を行なう。
【0062】
次のS23では、パージ管116のパージ弁118を開弁させてパージ制御(図2のT3〜T4)を開始する。これにより、圧縮機119によって加圧されたパージガス(圧縮された空気または窒素)が排気口102より吸着槽100の内部に供給される。吸着槽100内は、吸着剤90から脱着された燃料成分が充満しており、排気口102に加圧されたパージガスが導入されると共に、吸着槽100の上部から下部に向かう気流が発生して吸着剤90から脱着された燃料成分がパージされる。そして、吸着槽100からパージされた燃料成分は、吸引ポンプ160によって吸引された脱着ベーパが冷却ユニット170で冷却されて液化され、地下タンク10に戻される。
【0063】
また、吸着剤90に吸着された燃料成分が残っている場合は、吸引ポンプ160による負圧と、吸着槽100の上部から導入されたパージガスとの相乗効果により、燃料成分の脱着がより一層促進される。
【0064】
次のS24では、吸着槽100の上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度(信号)を読み込み、上層領域100aの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt2よりも大であるか否かをチェックする。このS24において、上層領域100aの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも大である場合(YESの場合)、現在の状態を維持すべくS24の処理を繰り返す。
【0065】
上層領域100aにおける燃料成分の脱着分離が進むことにより、上層領域100aにおける吸着剤90の温度が低下する。そして、S24において、上層領域100aの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも小さい場合(NOの場合)、S25に進む。
【0066】
次のS25では、吸着槽100の中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度(信号)を読み込み、中間層領域100bの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt2よりも大であるか否かをチェックする。このS25において、中間層領域100bの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも大である場合(YESの場合)、上記S24に戻る。
【0067】
また、中間層領域100bにおける燃料成分の脱着分離が進むことにより、中間層領域100bにおける吸着剤90の温度が低下する。そして、S25において、中間層領域100bの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも小さい場合(NOの場合)、S26に進む。
【0068】
次のS26では、吸着槽100の下層領域100cの温度センサ143によって検出された温度(信号)を読み込み、下層領域100cの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt2よりも大であるか否かをチェックする。このS26において、下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも大である場合(YESの場合)、前記S24の処理に移行する。
【0069】
下層領域100cにおける燃料成分の脱着分離が進むことにより、下層領域100cの吸着剤90の温度が低下する。そして、S26において、下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも小さい場合(NOの場合)、S27に進む(図2のT4参照)。
【0070】
このように、上記S24〜S26で各領域100a〜100cの温度低下率が所定温度低下率Δt2以下になったとき、脱着工程(吸着槽100内よりのベーパーの脱着)が終了したものと判断して、S27の処理に移行する。
【0071】
次のS27では、吸引ポンプ160の運転を停止させ、続いて、S28では冷却ユニット170を停止する。次のS29ではパージ弁118を閉止し、続いて。S30では排気弁114を開弁する。この後は、S31で予め設定された所定時間(図2のT4〜T5)が経過したか否かをチェックし、この所定時間が経過する間に吸着槽100の圧力が上昇して大気圧に戻り(図2の終了制御)、前述のS11の処理に移行する。これで、吸着槽100は、吸着剤90の再生が完了して次回の吸着工程が開始される。
【0072】
このように、制御装置150は、温度センサ141〜143に検出された温度上昇率に基づいて吸着工程が終了したことを判断し、温度センサ141〜143に検出された温度低下率に基づいて脱着工程が終了したことを判断することができるので、地下タンク10におけるベーパの発生量に応じて吸着槽100の吸着工程及び脱着工程の進行状況を確認して吸着工程から脱着工程への切り替えや脱着工程から吸着工程への切り替えを正確に行なうことが可能になり、ベーパ吸着・脱着工程によるベーパに含まれる燃料成分の回収効率をより高めることが可能になる。
【0073】
従って、吸着槽100における脱着精度が向上するため、吸着剤90の吸着能力を有効に利用することが可能になり、大気中へのベーパの放出量を最小限に減らすことができる。
【0074】
また、吸着工程と脱着工程を無駄なく実施することができるため、無駄なエネルギの消費を削減してベーパ回収のためのコストを安価に抑えることが可能になる。
【0075】
さらに、温度センサ141〜143に検出された温度変化に基づいて脱着工程時の脱着状況をモニタすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
尚、上記実施例では、地下タンクに油液を荷卸しされる構成を一例として挙げたが、これに限らず、地上に設置されたタンクで発生したベーパを回収する場合にも適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明によるベーパ回収装置の一実施例を示すシステム系統図である。
【図2】温度センサ141〜143により測定された吸着工程、脱着工程の温度変化を示すグラフである。
【図3A】制御装置150が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図3B】図3Aに示す処理に続いて制御装置150が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 地下タンク
20 ベーパ回収装置
30 荷卸し管
31 タンクローリ車
34 注油口
40 計量機
50 給液管
60 通気管
70 安全弁
80 ベーパ回収管
90 吸着剤
100 吸着槽
100a 上層領域
100b 中間層領域
100c 下層領域
102 排気口
104 給気口
110 排気管
114 排気弁
116 パージ管
141〜143 温度センサ
150 制御装置
118 パージ弁
119 圧縮機
120 三方弁
130 還流管
160 吸引ポンプ
170 冷却ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を荷卸しされるタンクと、
前記液体燃料から蒸発したベーパを吸着するための吸着剤が充填された吸着槽と、
前記タンク内で発生したベーパを前記吸着槽内に供給して前記ベーパに含まれる燃料成分を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を行うベーパ回収手段と、
該吸着槽内と連通し、前記吸着槽で前記ベーパに含まれる燃料成分を除去された気体を大気中に排出する気体排出手段と、
前記吸着槽内と連通し、前記吸着剤に吸着された前記燃料成分を脱着させて前記タンクに還流させる脱着工程を行う還流手段と、
を備えたベーパ回収装置において、
前記吸着剤の温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段により検出された温度変化に基づいて前記吸着槽で吸着工程が終了したことを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記吸着工程が終了したと判断された場合に前記ベーパ回収手段によるベーパの回収を停止させ、前記還流手段により前記吸着剤から脱着された前記燃料成分を前記タンクに還流させる脱着工程に切り替える切替手段と、
を備えたことを特徴とするベーパ回収装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記温度変化の変化率が所定値以下になった場合に前記吸着工程が終了したものと判断することを特徴とする請求項1に記載のベーパ回収装置。
【請求項3】
液体燃料を荷卸しされるタンクと、
前記液体燃料から蒸発したベーパを吸着するための吸着剤が充填された吸着槽と、
前記タンク内で発生したベーパを前記吸着槽内に供給して前記ベーパに含まれる燃料成分を前記吸着剤に吸着させる吸着工程を行うベーパ回収手段と、
該吸着槽内と連通し、前記吸着槽で前記ベーパに含まれる燃料成分を除去された気体を大気中に排出する気体排出手段と、
前記吸着槽内と連通し、前記吸着剤に吸着された前記燃料成分を脱着させて前記タンクに還流させる脱着工程を行う還流手段と備えたベーパ回収装置において、
前記吸着剤の温度を検出する温度検出手段と、
該温度検出手段により検出された温度変化に基づいて前記吸着槽で脱着工程が終了したことを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記脱着工程が終了したと判断された場合に前記還流手段による前記燃料成分の還流を停止させる還流停止手段と、
を備えたことを特徴とするベーパ回収装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記温度変化の変化率が所定値以下になった場合に前記脱着工程が終了したものと判断することを特徴とする請求項3に記載のベーパ回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2008−237954(P2008−237954A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77895(P2007−77895)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】