説明

ペイロードのためのローレンツモータ制御システム

ペイロード(4)を動かす複数のローレンツモータ(1、2)を制御するための制御構成及び方法であって、ペイロードが重心(12)を有する、制御構成及び方法について開示している。高さ信号(z1、z2)は前記ペイロードの高さを検出するセンサから受信される。水平方向の軸の周りの重心の少なくとも1つの回転角度はそれらの高さ信号(z1、z2)から計算され、ペイロード(4)を支持するための所定の回転剛性が達成されるように、この少なくとも1つの回転角度から、ローレンツモータ(1、2)のための制御信号(C1、C2)が計算される。典型的なアプリケーションは電子顕微鏡又はリソグラフィ装置の床免震用緩衝部である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイロードを動かす複数のローレンツモータを制御するための制御構成であって、ペイロードは重心を有し、制御構成は前記ペイロードの高さを検知するセンサからの高さ信号を受信するための制御器を有する、制御構成であり、前記高さ信号から前記ローレンツモータについての制御信号を計算するための、制御構成に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の、例えば、3つ又は4つのマウントを用いてペイロードを支持することが知られている。マウントは各々、エアマウントと、1つ又は2つのローレンツモータを有することが可能である。エアマウントに代えて、他の種類の“スプリング”を用いることが可能である。ペイロードは、エアマウントの上方である又はそうでない重心を有する。エアマウントの設計に依存して、ペイロードが不均衡になるペイロードの重心の臨界高さを上下させることが可能である。それ故、エアマウントの上方の重心の高さの許容される上限に対して、厳密なルールを適用する。当業者に周知であるように、エアマウントを柔らかくすればする程又はベース、即ち、エアマウント間の距離を小さくすればする程、臨界高さは低くなる。そして、ペイロードの重心の実際の高さが高くなればなる程、エアマウントは高くなる、又は、エアマウント間の距離は大きくなるように設計されなければならない。
【0003】
この問題に対処するための他の方法は、当業者には周知であるように、ペイロードの側面及びその側面に対して反対側の壁に結合された幾つかの水平方向の付加スプリングを適用することである。それらのスプリングは、ペイロードの回転剛性を増加させ、傾きに対してペイロードが不安定にならないようにする。
【0004】
しかしながら、水平方向の付加スプリング、それ故、付加フレームにおいて殆ど空間を設けることができない。更に、これは行うにはコストが掛かり、問題である。既存のエアマウントをより柔らかいエアマウントで置き換えることを所望する場合、例えば、ベースは、既に固定されていることが可能である。
【0005】
典型的な例は電子顕微鏡又はリソグラフィ装置(の部分)の緩衝部である。床免震性の改善のためには、より柔らかいエアマウントが好ましい。そのような装置の重心の高さにおいては、エアマウントがより高く位置付けられるか又はより遠くに位置付けられることが必要である。しかしながら、エアマウントの高さを増加させることはその装置のオペレータには障害となる可能性があり、ベースを増加させることは、例えば、エレクトロニクスキャビネットと競合するために又は商品としての理由のために許容されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故、本発明の目的は、鉛直剛性を実質的に増加させることなく、重力不安定性に対するペイロードの感応性を低減させるような改善されたマウントの制御を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、冒頭で記載した制御構成であって、前記制御器が水平方向の軸の周りの少なくとも1つの重心の回転角度をそれらの高さから計算し、前記ペイロードを支持するための所定の回転剛性を達成するように、前記ローレンツモータのための前記制御信号をこの少なくとも1つの回転角度から計算するように備えられていることを特徴とする、制御構成を提供する。
【0008】
それ故、鉛直剛性の増加を伴わずに、付加回転剛性を供給するようにローレンツモータを制御し、ペイロードの重心の少なくとも1つの回転成分を計算する複数入力−複数出力制御装置が適用される。それにより、重力安定性を改善することが可能である。そのペイロードは、システムが不安定になることなく、従来技術のシステムに比べてより高い重心を有することが可能である。
【0009】
実施形態においては、本発明は、ペイロードを動かす複数のローレンツモータを制御する方法であって、ペイロードは重心を有する方法であり、前記ペイロードの高さを検出するセンサから高さ信号を受信する段階と、前記高さ信号から前記ローレンツモータのための制御信号を計算する段階とを有する方法であり、水平方向の軸の周りの重心の少なくとも1つの回転角度をそれらの高さ信号から計算し、前記ペイロードを支持するための所定の回転剛性が達成されるように、前記ローレンツモータのための前記制御信号のこの少なくとも1つの角度から計算することにより特徴付けられる、方法に関する。
【0010】
更に、本発明は、コンピュータによりロードされるデータ及び命令を有し、そのローディング後、コンピュータが上記の方法を実行するようになっているコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【0011】
更に、本発明は、そのようなコンピュータプログラムプロダクトを有するデータ担体に関する。
【0012】
本発明について、本発明を例示するように及び本発明の範囲を限定しないように意図された幾つかの図を参照して詳述する。本発明の範囲については、同時提出の特許請求の範囲及びそれらと技術的に同等である範囲により規定されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、複数のマウントにより支持されているペイロードを示している。ペイロード4には重心12がある。マウントはエアマウント15、16及びローレンツモータ1、2を有する。簡単のために、図1は2つのエアモータ15、16及び2つのローレンツモータ1、2を示しているが、殆どの場合、3つ又は4つのエアマウント及びエアマウント当たり少なくとも1つのローレンツモータが存在する。エアマウントはペイロード4を支持し、ローレンツモータ1、2は、垂直方向のサーボ剛性及び/又はサーボダンピングを生成するように制御概念の一部として力を加えるために作動する。更に、水平方向の力を加えるように1つ又はそれ以上の付加ローレンツモータを有することが可能である。それらの後者のローレンツモータは本発明の対象ではない。
【0014】
ローレンツモータ間の距離はlである。
【0015】
所定の位置に原点を有するx、y及びz軸系が規定される。x軸の周りの回転として回転φが規定される。重心12はローレンツモータ1、2からの高さhにある。
【0016】
図2は、ローレンツモータ1、2の制御のための制御構成を示している。図示されているその制御構成は高さz、zを検出するために2つのセンサ6、7を有する。センサ6、7は制御器8に高さ信号z、zをフィードバックする。制御器8は、ローレンツモータ1、2それぞれについてのそれらの高さ信号z、zから制御信号C、Cを計算する。図2は、2つのセンサ6、7、2つの入力信号及び制御器8に対する2つの出力信号のみを示しているという意味で、簡略化されたものである。殆どの場合、z、q及びy軸の周りの回転に関して情報を与える3つのzセンサが用いられる。
【0017】
図1に示している2つのローレンツモータの実施形態に対して、制御器8により実行される次のような制御概念、即ち:
− z及びz、例えば、(z−z)/lから角度φを導く段階と;
− 角度φのT=−kφの関係からトルクTを計算する段階であって、ここで、kはNm/radを単位とする回転剛性の大きさである、段階と;
− トルクTのC=−T/a及びC=T/bの関係から制御信号C、Cを計算する段階であって、ここで、a及びbは自由に選択することができるが符号は同じではない値を有する定数である、段階と;
を有する、制御概念が提案されている。
【0018】
実施形態においては、ローパスフィルタを適用することが可能である。それ故、トルクTは関係T=−kφHlpから計算され、ここで、Hlpはローパスフィルタの伝達関数である。
【0019】
三次元環境下では、一般的概念は、用いられる高さセンサ全てから制御器8に高さ位置信号をフィードバックし、それらの高さ位置信号からx軸及びy軸の周りの回転角度を計算し、垂直方向の付加剛性を実質的に伴わずに所定の回転剛性が達成されるようにそれらの回転角度から用いられるローレンズモータ全てについての制御角度を計算するようなものである。
【0020】
当業者は理解できるであろうように、エアマウント以外の他の種類のマウント、例えば、スプリングを適用することが可能である。更に、エアマウント15、16が適用されるとき、それらのエアマウントは、それらに空気を供給するための供給ラインを備える。それ故、空気は又、制御器8により制御される適切な圧力源により供給される。制御器8は単一のユニットとして示されていることを理解する必要がある。しかしながら、制御器8は、共に機能する複数のコンピュータにより、例えば、マスタスレーブ構成で実施されることが可能である。適切なソフトウェアがデータ担体又は何れの他の適切な方式により分配されることが可能である。更に、空気圧部分についての制御器はローレンツモータについての制御器から独立していることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】複数のマウントにより支持されているペイロードを示す図である。
【図2】ローレンツモータのための複数入力−複数出力制御構成の一般的な模式的ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイロードを動かす複数のローレンツモータを制御するための制御構成であって、前記ペイロードは重心を有する、制御構成であり:
前記ペイロードの高さを検出するためのセンサから高さ信号を受信するため及び前記高さ信号から前記ローレンツモータのための制御信号を計算するための制御器;
を有する、制御構成であり、
前記制御器は、水平方向の軸の周りの重心の少なくとも1つの回転角度を前記高さ信号から計算し、前記ペイロードを支えるための所定の回転剛性が達成されるように、前記ローレンツモータのための前記制御信号をこの少なくとも1つの回転角度から計算する;
ことを特徴とする制御構成。
【請求項2】
請求項1に記載の制御構成であって、前記制御器は3つ又は4つのローレンツモータを制御するように備えられている、ことを特徴とする制御構成。
【請求項3】
ペイロードを動かす複数のローレンツモータを制御する方法であって、前記ペイロードは重心を有する、方法であり:
前記ペイロードの高さを検出するためのセンサから高さ信号を受信する段階;及び
前記高さ信号から前記ローレンツモータのための制御信号を計算する段階;
を有する、方法であり、
水平方向の軸の周りの重心の少なくとも1つの回転角度を前記高さ信号から計算し、前記ペイロードを支えるための所定の回転剛性が達成されるように、前記ローレンツモータのための前記制御信号をこの少なくとも1つの回転角度から計算する;
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
コンピュータによりロードされるデータ及び命令を有し、ローディングされた後に、前記コンピュータは請求項3に記載の方法を実行することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のコンピュータプログラムを有することを特徴とするデータ担体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−502095(P2007−502095A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522461(P2006−522461)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051316
【国際公開番号】WO2005/013027
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】