説明

ペクチンを含有する酸性化乳製品

開示されるのは、柑橘類供給源から抽出されたペクチンを含む乳飲料であって、ペクチンは:(1)エステル化度が55%〜65%、及び(2)カルシウム感受性指数が10〜30であり;乳飲料のpHは4.3〜4.5である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
発酵乳製品は、今日世界中で最も広く消費される食物の中で、ほとんど全ての文化や背景を有する人々に食されている。ヨーグルト(ブルガリア菌及びストレプトコッカス・サーモフィラス(S. thermophilics)で発酵させた乳製品であり、典型的なpHは5.0未満である)はおそらく最もよく知られた発酵乳製品であるが、他の人気の高い発酵乳製品には、中央アジアのケフィア、日本のヤクルト(商標)、デンマークのイメールが含まれる。
【0002】
ヨーグルトは依然として非常に人気の高い食物であるが、液体ヨーグルト飲料に対する要求も大きくなってきている。これらのヨーグルト飲料は、ヨーグルトよりも携帯し易く、摂取が容易で簡便であるという利点を有する。
【0003】
ヨーグルト飲料は、ヨーグルトに見られる乳固形分の沈殿に対する安定化剤としてペクチンを利用することが多い。ペクチンは、果物や野菜などの植物から抽出される安定化物質である。ペクチンは具体的にはpH3.7〜4.3において良好な安定化剤である(これは市販のヨーグルト飲料の最も典型的なpHであり、乳飲料を直接酸性化し、乳固形分、特にカゼインやホエータンパク質固形分の優れた安定化を提供する)。しかしながら、近年、ヨーグルト飲料製造者の中に、4.3を越える、4.6もの高いpHを必要とする更に口当たりのよいヨーグルト飲料に対する要望が存在している。残念ながら、ヨーグルト飲料のpHが上昇するにつれて、安定化剤としてのペクチンの有効性は低くなり、ペクチン濃度を上昇させる必要がある。しかしながら、ペクチン濃度が上昇するにつれて乳飲料の粘性も上昇する。pH4.3〜4.6の範囲では粘性は高くなる傾向にあり、特に、ヨーグルト飲料のバッチ間製造で一定の粘性を有することは困難であろう。更に、ヨーグルト飲料の粘性が十分に低く、乳飲料を容器から容易に注ぐことができ、又は直接飲むことができるヨーグルト飲料を好む消費者もいる。
【0004】
したがって、当該技術分野には、pHが4.3を越え、且つ粘性が十分に低く、乳飲料が飲んだり注いだりする上で好適な、ペクチンで安定化させた乳飲料製品に対する必要性がある。
【発明の開示】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、柑橘類供給源から抽出されたペクチンを含む乳飲料であり、ペクチンは:(1)エステル化度が55%〜65%、及び(2)カルシウム感受性指数が10〜30であり;乳飲料のpHは4.3〜4.6である。
【0006】
図面の簡単な説明
前記概要、及び本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明は、添付の図面とともに読むことで更に理解されるであろう。発明を説明するために、現在好ましい態様を図面に示す。しかしながら、本発明は、示した処置や手段に正確に限定されるものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本明細書に用いる全ての部、%、及び比は、他に特に規定がなければ重量で表現される。本明細書で引用する文献は全て援用される。
【0008】
本発明は、4.3〜4.6のような比較的高pHにおいても乳飲料中の乳固形分を有効に安定化するペクチンを含有する酸性化乳飲料にかかるものである。より高いpHで乳固形分を有効に安定化することにより、本発明にしたがい調製されたヨーグルト飲料は、低pHの匹敵するヨーグルトや乳飲料よりも口当たりが良い。
【0009】
酸性化乳製品
最も基本的な形態では、ミルクは連続水相中の乳固形分の懸濁液である。乳固形分には、脂肪分、及び一般に無脂乳固形分(「MSNF」)と称される非脂肪分が含まれる。MSNFには、タンパク質(ホエータンパク質やカゼインなど)及び炭水化物、並びに有機酸、ミネラル、ビタミンのような微量成分が含まれる。上記成分は全てミルクの栄養価、処理及び保存性、並びに官能特性に寄与するが、本発明に最も関連するのはカゼイン成分である。
【0010】
カゼインは、球径約20〜400nmのタンパク質ミセルである。カゼインはミセルとしてコロイド形態のままであり、ミルクに懸濁している。しかしながら、コロイド状態の維持は懸濁液のpHに依存する。ミルクのpHが約5.0では(又は加熱処理に付される乳飲料の場合は6.5もの高さであっても)、カゼインは密着性を失い始め、懸濁液から沈殿し始め、ミルクのpHが約4.5で沈殿が完了する。したがって、5.0よりも十分に低いpHで形成される乳製品(ヨーグルトやヨーグルト飲料など)の場合、カゼイン粒子は、コロイド状ミセルよりもむしろ沈殿した相に常に存在する。したがって、非ミセル状カゼインをミルクから沈殿させず、沈殿物を形成させないためにペクチンを乳飲料に加える。
【0011】
酸性化乳飲料は2つのカテゴリーに分けることができる:直接酸性化された乳飲料とヨーグルト飲料である。直接酸性化された乳飲料は、酸及び/又は果実濃縮物の使用によりミルクを酸性化することによって作られるが、ヨーグルト飲料は、ミルクをブルガリア菌及びストレプトコッカス・サーモフィラスで発酵させることによって酸性化する。発酵後、ヨーグルト飲料は水で希釈することができ、ペクチンなどの親水コロイドで更に安定化させることもできる。ヨーグルト飲料自体を2つのカテゴリーに分けることができる:(1)MSNF含量が1〜4%のものであって、発酵後に通常殺菌され、保存期間が長いもの;及び(2)乳固形分が高く、MSNFが4〜8.5%のヨーグルト飲料であって、典型的には生きた、時にプロバイオティクスの培養物を含有し、したがって冷却を必要とするもの。
【0012】
ペクチン
ペクチンは、本明細書に開示の酸性化乳製品のように、製品を安定化し、ミルクカゼインやホエー粒子の沈殿を妨げるために乳製品に長く使用されてきた。ペクチンは、食物における使用に好適であるため特に重要であり、正常濃度レベルでは、乳製品の粘性を容認し難いほど高レベルまで上昇させない。
【0013】
ペクチンは多くの高等食物の形態に生ずる天然物質であり、若い生長中の植物組織の一次細胞壁及び中層における主要な構造成分を形成する。ペクチン自体の構造は、グリコシド結合が2方向性に配置された、立体配座の1,4−結合したα−D−ガラクトピラノシルウロン酸単位として規定することができる。ペクチンの挙動や性能に顕著に影響を及ぼすペクチン構造の1つの重大な特徴は、ガラクトピラノシルウロン酸単位に結合したカルボキシル基の画分がメタノールでエステル化されることである。商業用途では、エステル化度が50%未満(即ち、50%未満のカルボキシル基がメチル化されてメチルエステル基を形成している)のペクチンは低エステルペクチン(又は「LMペクチン」)に分類され、エステル化度が50%を越える(即ち、50%を越えるカルボキシル基がメチル化されている)ペクチンは高エステルペクチン(又は「HMペクチン」)に分類される。本発明は、主としてHMペクチンに関するものである。好ましくは本発明のペクチンのDEは、約55%〜約65%、より好ましくは約57%〜約63%である。
【0014】
ペクチン製造者は、熟練した者に周知の適切な処理工程及び条件によってペクチンのDEをある程度まで制御することができる。典型的には、ペクチンは、ペクチンに富んだ植物組織を温かい酸性水にしばらくの間懸濁させることによって商業的に製造される。ペクチン製造のこの部分は一般に「抽出」と称される;抽出によって植物中に存在するような不溶型ペクチン(「プロトペクチン」と称することが多い)から可溶性ペクチンに変換し、次いで溶液中に浸出する。その後、ペクチンは分離工程によって溶液から回収される。高DEが望まれる場合は、低DEが望まれる場合に用いる酸の量よりも、通常少量の酸が抽出に使用される。
【0015】
DEは、ペクチンを脱エステル化する酸又は酵素でペクチン溶液を処理することによって更に低下させることができる。そのような酵素は、一般にペクチンエステラーゼと称し、周知である。酸及び酵素は、メチルエステル化されたカルボキシル基を加水分解し、非エステル化カルボキシル基とメタノールとを生ずる。しかしながら、酸及びいくつかの酵素は、脱エステル化されるべきカルボキシル基を無作為に又は規則的に見かけ上精選するが、他の酵素は、遊離カルボキシル基の連続したブロックを分子内に生ずるように脱エステル化する。後者の酵素は、柑橘類果実中に天然に生じ、抽出工程前にペクチンにさまざまな程度でブロックを作り得る。したがって、ペクチン製造者は、DEだけでなく、「ブロック度」もある程度操作することができる。むしろ顕著なブロック度が望まれる場合は、エステラーゼの影響を受けている柑橘類材料(例えばオレンジ)を選択することによって、溶解した抽出ペクチンをブロック形成ペクチンエステラーゼに曝露することによって、又は両方で達成することができる。ブロック度が望ましくない場合、製造者は、エステラーゼの影響をあまり受けていない材料を選択し、酸又はブロックを形成しない酵素を使用して所望のDEを達成することができる。
【0016】
脱メチル化されたガラクツロン酸単位のこれら長いブロックを作製することは、乳飲料におけるペクチン材料の安定化剤としての性能に重大な結果を有する。pHがおよそ4.0の酸性化乳飲料では、十分なブロック度のペクチンは、先行技術に記載のように、比較的ブロック度が小さいペクチンよりも有効である。(陰性に荷電した)ブロックは、ペクチン非存在下では酸性化乳飲料のpHレベルにおいて過剰の陽電荷を有するタンパク質粒子の表面に強く吸着する。更に、2以上のブロックは、乳製品中に豊富に生ずるカルシウムイオンの存在下で互いに結合するようになり得る。後者の理由により、ブロック度が高いペクチンは、カルシウムイオンの存在下であまり可溶性でなく、この可溶性の低下は、溶液の濃縮若しくはゲル化;ペクチンに富んだ塊の生成;又はペクチンの沈殿をもたらし得る。上記コロイド状溶液又は沈殿した溶液のいずれが生ずるかは、ペクチンのDE、ペクチンのブロック度、Ca2+イオン濃度、pH、他の溶解した物質の存在、温度及び他の起こり得る要因などの多くの要因に依存する。一般に、2相系(即ち塊又は沈殿物の形成)の傾向は、ブロック間の吸引力が大きくペクチンが低濃度のときに最大となる。逆に、ペクチンが高濃度でブロック間の吸引力が小さい場合は、均一な溶液(又は肉眼的に均一なゲル)の傾向がある。言い換えると、ブロック間吸引力は、分子内のブロックの存在、Ca2+イオンの存在、及びpHの上昇(酸性化乳飲料に関連したpH範囲内)とともにより優勢となる。
【0017】
ペクチンとミルクタンパク質との間の吸引力は、タンパク質粒子を親水性被膜で覆うため、タンパク質を安定化させる。非安定化タンパク質粒子(即ち親水性被膜がないもの)は、水に結合しない凝集体を形成することができ、したがって比較的小型の沈殿物を形成することができるが、安定化粒子(即ち親水性被膜のあるもの)は、直接的なタンパク質−タンパク質相互作用によって凝集体を形成することができず、水と分離することができない。Ca2+イオンを伴うペクチンの自己会合は、薄いゲル中の粒子を捕捉することによって安定性を高めることができるが、この安定性に対する更なる寄与がいかに重要であるかは知られていない。
【0018】
Ca2+イオンを伴うペクチン自己会合から生じ得る濃厚な食感は、時に望ましいが時に望ましくない。酸性化乳飲料の一部の製造者はできるだけ薄い飲料を作るよう努力するため、先行技術飲料の典型的なpH範囲よりもわずかに高いpH4.3〜4.6の範囲において、安定な飲料に低粘性を賦与できる安定化剤に対する満たされない必要性が存在する。他の製造者は、クリーム状の口当たりとより高い粘性を好む。
【0019】
酸性化乳飲料の典型的pHは3.7〜4.3であるが、マイルドで酸味の少ない食感を作るにはpH4.3〜4.6の飲料を作ることが望ましい。pH4.3〜4.6の範囲にpHが上昇するとともに、先行技術によるペクチンの有効性は低下し、許容できる安定性を得るには、ペクチンの用量を増加させ、より濃厚な食感を許容することが必要となる。pH上昇による公知の影響は以下の通りである。ペクチン及びタンパク質上のカルボン酸基。
【0020】
タンパク質のカルボキシル基数の増加は反発力を生ずる。より高いpHは、ペクチンとCa2+イオンとの反応性を増加させるため、ペクチンの自己会合の傾向も増大させ、そして2相系(例えばペクチンに富んだ塊)を生じ得る相互作用の可能性を増大させる。このように、先行技術のペクチン安定化剤は、Ca2+イオンを伴うペクチンの自己会合が生じ、ペクチンを吸着に利用できなくする前にタンパク質表面が十分なペクチンを享受しないため、有効でなくなる。本発明によるペクチンは、Ca感受性を下げることによってこの問題を軽減させる。連続した遊離カルボキシル基のブロック非存在下では、分子がタンパク質のアミノ基に固定するために十分な陰電荷の分子領域を有するには、より低い平均DEを必要とする。
【0021】
ペクチンのカルシウム感受性の測定
カルシウム感受性指数は以下のように測定する。最初に、2つの酢酸ナトリウム緩衝(pH=3.6)溶液を作る。第1溶液は容量2L、第2溶液は容量5Lである。溶液は以下のように調製する:81.64gの酢酸ナトリウム三水和物をおよそ1200mLのイオン交換水に溶解し、次にこの酢酸ナトリウム三水和物の水溶液を309mLの酢酸と混合する。次に十分量のイオン交換水を加えて容量を2000mLにする−最終緩衝溶液を測定してpH3.60±0.05であることを確認する。5Lの第2溶液は、最終目標容量が5000mLである以外は同様の方法で調製する。これを調製するには、初期供給量204gの酢酸ナトリウム三水和物を混合物量772mLの酢酸に用いる。次に、32gの塩化カルシウム二水和物を空のメスフラスコに加え、次に約200mLのイオン交換水をフラスコに加え、内容物を混合し、その後、再度イオン交換水を加えて容量を1000mLにすることによって塩化カルシウム溶液を調製する。
【0022】
次に0.64gのペクチン(ペクチン濃度0.4重量%に相当する量)を粘度ガラス(viscosity glass)へ加える。次に5.0mLのイソプロパノールを加え、130mLの熱湯(少なくとも85℃の温度)を加えながらサンプルをマグネチックスターラーで撹拌する。撹拌及び以下に記載するその後の混合工程を開始する際に、粘度ガラスを覆う(例えばホイルで)ことに注意する。次に、熱湯を添加して1分後に、20mLの3M 酢酸ナトリウム緩衝水溶液(pH3.6)を加える。緩衝水溶液の添加後1分以内に、ペクチンサンプルを75℃の水浴中に置き、およそ10分間撹拌する。
【0023】
次にサンプルを視覚的に検査する。塊が見られる場合はそれを廃棄し、再度溶解プロセスを開始する。塊が検出されない場合は、覆いを外してサンプルをおよそ2cmのボルテックスで撹拌する。次に5mLの塩化カルシウムをサンプルに加え、およそ10秒間混合する。(塩化カルシウムの添加をモニターすることが重要である:添加の際、渦が消失し、そして局所のゲル化、封入気泡、又は両方が観察される場合、サンプルはゲル化しているため廃棄しなければならない。)
次にマグネチックスターラーを外し、ガラスをホイルで覆う。サンプルを5℃の水浴中に約19時間置く(これは、CaClの最初の添加から5分以内に起こる必要がある)。
【0024】
水浴中で熟成後、保護ループを使用しないBrookfield LVT粘度形を用いた粘性測定の前に、サンプル表面に存在する封入気泡を穏やかに除去する必要がある。サンプルの粘性は、主軸No.2を用い、1分後の主軸速度60rpmで5℃にて測定した。粘性測定値が10以下の場合、主軸をNo.1主軸に変更し、1分後に60rpmで粘性を再測定する。測定値が100以上の場合、サンプルを5℃の水浴中に19時間置き、主軸No.3を60rpmで用いて1分後に粘性を再測定する。粘度形測定値に適切な主軸依存性の係数を掛け合わせることによって粘性(cP)を計算する。カルシウム感受性指数は計算された粘性と等しい。
【0025】
本発明を、以下の特定の非限定的な実施例に関して更に詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
実施例
本発明によるヨーグルト飲料、及び先行技術によるヨーグルト飲料を以下のように調製した。
【0027】
最初に、ヨーグルトを秤量し、これをSilverson高速ミキサーで光沢のあるつやを帯びるまで剪断することによってヨーグルトストック(8.5%MSNF、生きた培養物入り)を調製した。Silverson高速ミキサーで剪断しながら、最終pH4.50のヨーグルト飲料ではpH4.55±0.02に達するまで、最終pH4.30のヨーグルト飲料ではpH4.35(±0.02)に達するまで、ヨーグルトをNaOH溶液で滴定した。最終pH4.10のヨーグルト飲料はヨーグルトのpHを調整しなかった。最後にショ糖を加え、水を加えて更に希釈した。
【0028】
本発明によるペクチン溶液(本実施例において「高pH」ペクチンと表示する)及び先行技術にしたがい調製したペクチンは、最初に、Silversonミキサーを用いてペクチン原液を脱イオン水で希釈し、次にペクチン溶液を75℃の水浴中に20分間浸すことによって加熱し、溶液が10分以内に70℃以上の温度に達したことを確認し、最後にペクチン溶液を5℃まで冷却することによって調製した。
【0029】
最後に、上で調製したペクチン溶液と水とを、最後に水を添加後少なくとも1分間撹拌を継続しながら混合し、次に(やはり上で調製した)ヨーグルトを加え、作製された酸性化乳飲料溶液が均一であることを確認することによってヨーグルト飲料を調製した。ミルクは、150〜180バールの圧力で更に均一にした。先に言及したように、本発明にしたがい、また先行技術にしたがい、ヨーグルト飲料を調製した。
【0030】
ヨーグルト飲料のサンプルを、沈殿試験のために遠心管へ、そして粘性試験のために粘度ガラスへ移した。沈殿試験は以下のように行った。10gの酸性化乳飲料を遠心管に移し、およそ3000gで20分間遠心分離した。次に上清を排出し、遠心管を逆さにして置き、最後の液体を遠心管から排出させた。次に、遠心管に残留する沈殿画分を意味する固体とともに遠心管を秤量した。
【0031】
粘性試験は以下のように行った。各溶液について1つの粘度ガラスを5℃にて18〜24時間放置する。Brookfield LVT型粘度形(60rpm)で粘性を測定し、粘性が10mPa・sよりも低いときはULアダプターを用いる。1分間回転後粘性を測定する。
【0032】
この試験プロトコールを、生きた培養物入りの最終ヨーグルト飲料においてMSNFが8.5%の3つの異なるサンプルシリーズにて実施し、ペクチン濃度は0%〜0.5%で変化させた。第1シリーズのサンプルは、ヨーグルト飲料のpHは4.5であり、第2シリーズは4.3であり、第3シリーズは4.1であった。全ての試験において、本発明にしたがい調製された「高pH」ペクチンを有するヨーグルト飲料の結果を、先行技術にしたがい調製されたペクチンを有するヨーグルト飲料の結果と比較した。
【0033】
MSNFが8.5%であり、pHが4.5、4.3、及び4.1の生きた培養物入りヨーグルト飲料に関する沈殿及び粘性の結果を、それぞれ以下の表1、表2、及び表3に記載する。これらの結果は、添付の図面にも図示されている:図1及び図2は表1の結果を示し、図3及び図4は表2の結果を示し、図5及び図6は表3の結果を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
上からわかるように、pH4.5のヨーグルト飲料中の「高pH」ペクチンは、酸性化乳飲料を沈殿に対して安定化させる上で先行技術のペクチンよりも非常に良好である。約0.215もの低濃度レベルにおいて、「高pH」は、沈殿画分5%以下まで沈殿を軽減させる。逆に、先行技術ペクチンは、沈殿画分5%以下まで沈殿を軽減させるには、0.357%のペクチンを必要とする。このペクチン濃度の高さは費用を増大させるだけでなく、ヨーグルト飲料の粘性増加を制御できず、ヨーグルト飲料のバッチ間で粘性を一定にすることが困難となり、薄い口当たりを好む消費者にとって望ましくない。表2から、「高pH」ペクチン及び先行技術ペクチンは、pH4.3のヨーグルト飲料を沈殿に対して安定化させることに関し、同等に十分機能することがわかる。粘性については、先行技術ペクチンは「高pH」ペクチンよりも粘性が高くなることが観察され、「高pH」ペクチンは、このpHにおいてヨーグルト飲料バッチ間でより一定の粘性も与えることを示している。表3から、生きた培養物入りヨーグルト飲料のより一般的なpHであるpH4.1では、先行技術ペクチンは、ヨーグルトを沈殿に対して安定化させる上で、「高pH」ペクチンよりも非常に良好であることがわかる。上記表1に説明したようなpH4.5のヨーグルト飲料におけるそのように顕著に改善された沈殿性は、当該技術分野において通常の技術を有する者に予想されなかったであろう。
【0038】
当該技術分野に熟練した者は、上記態様がその広義の発明概念を逸脱することなく改変し得ることを理解するであろう。したがって、本発明は開示の具体的な態様に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲内の修飾をカバーすることを意図するものであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明にしたがい調製されたpH4.50のヨーグルト飲料、及び先行技術にしたがい調製されたpH4.50のヨーグルト飲料の、いくつかの異なるペクチン濃度における沈殿物画分の割合を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明にしたがい調製されたpH4.50のヨーグルト飲料、及び先行技術にしたがい調製されたpH4.50のヨーグルト飲料の、いくつかの異なるペクチン濃度における粘性(mPa・s)を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明にしたがい調製されたpH4.30のヨーグルト飲料、及び先行技術にしたがい調製されたpH4.30のヨーグルト飲料の、いくつかの異なるペクチン濃度における沈殿物画分の割合を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明にしたがい調製されたpH4.30のヨーグルト飲料、及び先行技術にしたがい調製されたpH4.30のヨーグルト飲料の、いくつかの異なるペクチン濃度における粘性(mPa・s)を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明にしたがい調製されたpH4.10のヨーグルト飲料、及び先行技術にしたがい調製されたpH4.10のヨーグルト飲料の、いくつかの異なるペクチン濃度における沈殿物画分の割合を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明にしたがい調製されたpH4.10のヨーグルト飲料、及び先行技術にしたがい調製されたpH4.10のヨーグルト飲料の、いくつかの異なるペクチン濃度における粘性(mPa・s)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類供給源から抽出されたペクチンを含む乳飲料であって、ペクチンは:(1)エステル化度が55%〜65%、及び(2)カルシウム感受性指数が10〜30であり;
乳飲料のpHは4.3〜4.6である、前記乳飲料。
【請求項2】
柑橘類供給源がライム果実である、請求項1に記載の乳飲料。
【請求項3】
MSNF含量が約1重量%〜約3重量%である、請求項1に記載の乳飲料。
【請求項4】
MSNF含量が約5重量%〜約8重量%である、請求項1に記載の乳飲料。
【請求項5】
エステル化度が57%〜63%である、請求項1に記載の乳飲料。
【請求項6】
生きたプロバイオティクス培養物を含有する、請求項4に記載の乳飲料。
【請求項7】
殺菌されている、請求項3に記載の乳飲料。
【請求項8】
乳飲料のpHが4.3〜4.5である、請求項1に記載の乳飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−511048(P2009−511048A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535563(P2008−535563)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/038484
【国際公開番号】WO2007/047085
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(506128352)シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】