説明

ペットフードおよびその製造方法

本発明は、所定の濃度の酪酸、3−メチル酪酸および/またはその塩を有するペットフード並びにその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットフードは、モイストタイプまたはドライタイプのペットフードのいずれかとして、様々なバリエーションで知られている。そのようなペットフードは、異なる成分および風味を有する。ビーフやチキンの成分に基づくペットフードがよく知られている。肉なしのペットフードも知られている。そのペットフードは実質的に穀物に基づく。
【0003】
公知のペットフードの美味しさは、さらに改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、動物、好ましくは犬に、さらにより容易に受け入れられ、より美味しいと分かるペットフードを提供することを課題とするものである。また、もう一つの課題は、そのようなペットフードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の課題は、ルーメン(rumen:反芻胃)もレバー(liver:肝臓)も含有せず、5ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから10,000ppmの濃度の3−メチル酪酸、および/またはそれらの塩を有するペットフードにより解決される。
【0006】
そのペットフードが、5から1000ppm、好ましくは6から200ppmの濃度の酪酸、および/または4から500ppm、好ましくは5から200ppmの濃度の3−メチル酪酸、および/またはそれらの塩を有することが好ましい。
【0007】
あるいは、レバーを含有するがルーメンは含有せず、7ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから10,000ppmの濃度の3−メチル酪酸、および/またはそれらの塩を有するペットフードを提供しても差し支えない。
【0008】
そのペットフードが、10から1000ppm、好ましくは12から500ppmの濃度の酪酸、および/または4から500ppm、好ましくは5から200ppmの濃度の3−メチル酪酸、および/またはそれらの塩を有することが好ましい。
【0009】
さらに別の代替物として、ルーメンを含有し、20ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから10,000ppmの濃度の3−メチル酪酸、および/またはそれらの塩を有するペットフードを提供しても差し支えない。
【0010】
そのペットフードが、22から1000ppm、好ましくは30から500ppmの濃度の酪酸、および/または4から500ppm、好ましくは5から200ppmの濃度の3−メチル酪酸、および/またはそれらの塩を有することが好ましい。
【0011】
最も好ましい実施の形態において、ルーメンを含有するペットフードは、酪酸の含有量が少なくとも100ppmである。
【0012】
さらに、ペットフードが牛のレバー、豚のレバー、および/または鶏のレバーを含有しても差し支えない。
【0013】
また、そのペットフードが、酪酸および3−メチル酪酸以外に、C2〜C10脂肪酸を含有することも好ましい。
【0014】
好ましい酸は、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−メチル−2−ペンタン酸およびこれらの酸の混合物の中から選択される。これらの酸は、ペットフード中に必然的に含まれる量を超える追加の量で加えられる。
【0015】
本発明によれば、「ルーメン」という用語は「トライプ(tripe:反芻動物の第1・2胃」も含む。本発明のペットフードに、酪酸および/または3−メチル酪酸を加えることができる。もちろん、その1種類以上の適切な塩、好ましくは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはアンモニウムの塩を単独または1種類以上の酸との組合せのいずれで加えてもよい。
【0016】
その塩を使用しても、動物の受けの低下は観察されない。
【0017】
酪酸、3−メチル酪酸および/またはそれらの塩が、ペットフード内で、カプセル中に被包されていることが好ましい。
【0018】
ある実施の形態において、カプセル材料は、マルトデキストリン、糖、糖の誘導体、融点の高い脂肪、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロースの誘導体、アルギン酸カルシウム、ペクチン酸カルシウム、ゼラチン、ゼイン、アルブミンタンパク質、乳漿タンパク質分離体、大豆分離体、ルピナス分離体、キトサンまたは高アミロースデンプンである。
【0019】
カプセルのサイズが10μmから200μmであることがさらに好ましい。
【0020】
さらに別の代替物は、アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)および/またはジアセチル(2,3−ブタンジオン)などの機能性成分の添加である。
【0021】
ペットフードがモイストまたはドライタイプのペットフードであることが好ましい。そのペットフードが犬用または猫用の食品であることが特に好ましい。
【0022】
第2の課題は、本発明によるペットフードの製造方法であって、ペットフード成分を酪酸および/または3−メチル酪酸と混合し、得られた混合物を容器中に包装し、その容器を封止し、その容器を殺菌する各工程を有してなる方法により解決される。
【0023】
ある代わりの実施の形態において、酪酸、3−メチル酪酸またはそれらの塩のそれぞれの含有量が、発酵剤の添加による発酵によって調節され、得られた混合物が容器内に包装され、容器が封止され、容器が殺菌されるペットフードが提供される。
【0024】
発酵が、細菌性、真菌性または細胞培養により、もしくは酵素の添加によって行われることが好ましい。
【0025】
さらに、ペットフードの製造に酪酸および/または3−メチル酪酸の添加物を使用する方法が提供される。
【0026】
最後に、ペットフードが犬用または猫用であることが好ましい。
【0027】
ppmで表される酪酸、3−メチル酪酸およびそれらの塩の量は、ペットフードの総質量に基づく。
【0028】
意外なことに、動物、特に犬は、特定の濃度の酪酸および/または3−メチル酪酸を有するペットフードを特に好んで食べることが分かった。本発明により使用される酸は、室温で揮発性である。したがって、それらの酸は、ペットフードの芳香に多大に寄与する。さらに、本出願の発明者等は、どの理論にも制限するものではないが、特に犬は、例えば、熟成したチーズの芳香などのバターのような芳香を好むと憶測している。
【0029】
本発明の範囲内で、「ペットフード」という用語は、例えば、犬、猫、アナウサギまたはモルモットに給餌される動物向け食品と理解すべきである。ペットフードとは反対に、飼料は、例えば、蓄牛、羊または馬に給餌される動物向け食品と理解すべきである。
【0030】
本発明によるペットフードが、天然濃度で19ppmの酪酸および約1.5ppmの3−メチル酪酸をすでに有するルーメンを含有する場合、これら酸の量を増すと、ペットフードをさらにより美味しくできることが分かった。これは、動物は、そのようなペットフードを、それぞれの添加物を含有しないペットフードよりも好むからである。このことを、実施の形態の説明において、以下にさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明によるペットフードが、天然濃度で約1ppmの酪酸および約1ppmの3−メチル酪酸を有する、レバー、例えば、牛のレバーおよび/または鶏のレバーを含有する場合、そのようなペットフードも、さらに酪酸および/または3−メチル酪酸を添加することによって、より美味しくすることができる。
【0032】
ルーメンもレバーも含有しないペットフードは、本発明により、少量の酪酸および/または3−メチル酪酸を添加することによって、美味しくできる。
【0033】
酪酸および/または3−メチル酪酸は、外部供給源からペットフードに加えることができる。また、発酵過程でそれらの酸を生成することも可能である。本発明によるペットフードの製造方法のある実施の形態において、ペットフードが、封止され殺菌される容器中に包装される場合には、発酵は実質的に避けられる。
【0034】
代わりの実施の形態において、酪酸、3−メチル酪酸またはそれらの塩は、発酵剤の添加による発酵によって提供され、その際に、得られた混合物は容器内に包装され、その容器は封止され、殺菌される。
【0035】
酪酸および/または3−メチル酪酸は、純粋な形態または基質を介して添加しても差し支えない。添加物は、液体または固体で差し支えなく、粉末形態が好ましい。
【実施例】
【0036】
本発明のさらに別の特徴および利点は、好ましい実施の形態の以下の詳細な説明から明らかになるが、それらの実施の形態は、本発明の範囲を制限するように解釈すべきではない。
【0037】
実施例1
30から60質量パーセントの肉または魚材料、10から30質量パーセントの小麦粉またはトウモロコシデンプン、5から12質量パーセントの繊維質材料、10から30質量パーセントの水およびビタミン類、ミネラル類などの他の一般的な添加物からなる一般的なペットフードを製造した。このペットフードは、ルーメンもレバーも含有しなかった。ペットフードの一部に12ppmの酪酸を加え、穏やかにブレンドした。ppmで表される仕様は、ペットフードの総質量を称する。酪酸を加えなかったペットフードを給仕用ボウルに入れ、酪酸を加えたペットフードを別のボウルに入れた。両方のボウルを同時に犬に与えた。このテストを、合計で約30匹の犬に繰り返した。平均的に犬が好んだのは、酪酸を加えたペットフードであることが観察された。犬は、酪酸が加えられたペットフードを平均で約70%食べた一方で、未処理のペットフードを平均でたった30%しか食べなかった。このことは、酪酸が加えられたペットフードは、未処理のペットフードよりも美味しいことを明らかに示している。意外なことに、約15kgよりも重い大きな犬が、酪酸が加えられたペットフードを特に好んだことも観察された。
【0038】
実施例2
実施例1にしたがってペットフードを製造した。しかしながら、このペットフードは、50質量パーセントの濃度のレバーを有していた。このペットフードの一部に、20ppmの酪酸を加えた。使用したレバー中の酪酸の生来の濃度は、1.1ppmであった。
【0039】
次いで、実施例1に記載したテスト手法を繰り返した。重ねて、犬が明らかに好んだのは、酪酸が加えられたペットフードであったのが観察された。
【0040】
実施例3
実施例1にしたがってペットフードを製造した。しかしながら、このペットフードは、20質量パーセントの濃度のルーメンを有していた。したがって、未処理のペットフードは、約7ppmの濃度の酪酸を有していた。この未処理のペットフードの一部に20ppmの酪酸を加えた。このペットフードについても、実施例1に記載したテスト手法を繰り返した。重ねて、犬が明らかに好んだのは、酪酸が加えられたペットフードであったのが観察された。
【0041】
実施例4
実施例1にしたがってペットフードを製造した。しかしながら、酪酸の代わりに、10ppmの3−メチル酪酸を加えた。実施例1に記載したテスト手法を繰り返した。重ねて、明らかにより美味しく、犬が好んだのは、3−メチル酪酸が加えられたペットフードであったのが観察された。
【0042】
実施例5
実施例1に記載されたペットフードに基づいて、50、100、500、1,000、2,000、5,000および10,000ppmの酪酸を含むテストを行った。実施例と同じ手法を行った。重ねて、犬は、酪酸を含有するペットフードを明らかに好んだことが観察された。
【0043】
それゆえ、上述した結果は明らかに、本発明によるペットフードは、美味しさに関して、従来のペットフードよりも明らかにより都合よいことを示している。このように製造されたペットフードは、一般的なペットフード成分を酪酸および/または3−メチル酪酸と混合し、その後、得られた混合物を容器、好ましくはスズ缶中に包装し、次いで、容器を封止し、続いて、その容器を殺菌することによって、工業希望で容易に製造できる。
【0044】
先の説明および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、本発明をその異なる実施の形態で実施するのに変換するために、個々と、任意の組合せの両方での素材であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンもレバーも含有せず、5ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから10,000ppmの濃度の3−メチル酪酸および/またはそれらの塩を有するペットフード。
【請求項2】
5ppmから1,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから500ppmの濃度の3−メチル酪酸および/またはそれらの塩を有することを特徴とする請求項1記載のペットフード。
【請求項3】
レバーを含有するが、ルーメンを含有せず、7ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから10,000ppmの濃度の3−メチル酪酸および/またはそれらの塩を有するペットフード。
【請求項4】
10ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから500ppmの濃度の3−メチル酪酸および/またはそれらの塩を有することを特徴とする請求項3記載のペットフード。
【請求項5】
ルーメンを含有し、20ppmから10,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから10,000ppmの濃度の3−メチル酪酸および/またはそれらの塩を有するペットフード。
【請求項6】
22ppmから1,000ppmの濃度の酪酸および/または4ppmから500ppmの濃度の3−メチル酪酸および/またはそれらの塩を有することを特徴とする請求項5記載のペットフード。
【請求項7】
牛のレバーおよび/または鶏のレバーを含有することを特徴とする請求項3または4記載のペットフード。
【請求項8】
酪酸および3−メチル酪酸以外にC2〜C10脂肪酸を含有することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のペットフード。
【請求項9】
前記脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、2−メチル酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−メチル−2−ペンタン酸およびこれらの酸の混合物の中から選択されることを特徴とする請求項8記載のペットフード。
【請求項10】
前記酪酸、3−メチル酪酸および/またはそれらの塩が、前記ペットフード内でカプセル中に被包されていることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のペットフード。
【請求項11】
前記カプセルの材料が、マルトデキストリン、糖、糖の誘導体、融点の高い脂肪、セルロースの誘導体、アルギン酸カルシウム、ペクチン酸カルシウム、ゼラチン、ゼイン、アルブミンタンパク質、乳漿タンパク質分離体、大豆分離体、ルピナス分離体、キトサンまたは高アミロースデンプンであることを特徴とする請求項10記載のペットフード。
【請求項12】
前記カプセルのサイズが10μmから200μmであることを特徴とする請求項10または11記載のペットフード。
【請求項13】
モイストまたはドライタイプのペットフードであることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載のペットフード。
【請求項14】
犬用または猫用のペットフードであることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載のペットフード。
【請求項15】
請求項1から14いずれか1項記載のペットフードの製造方法であって、ペットフード成分を、酪酸および/または3−メチル酪酸と混合し、得られた混合物を容器に包装し、該容器を封止し、該容器を殺菌する各工程を有してなる方法。
【請求項16】
請求項1から14いずれか1項記載のペットフードの製造方法であって、ペットフード成分を提供し、酪酸、3−メチル酪酸またはそれらの塩のそれぞれの含有量を、発酵剤の添加による発酵によって調節し、得られた混合物を容器に包装し、該容器を封止し、該容器を殺菌する各工程を有してなる方法。
【請求項17】
前記発酵が、細菌性、真菌性または細胞培養もしくは酵素の添加により行われることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
酪酸および/または3−メチル酪酸またはそれらの塩の添加物をペットフードの製造に使用する方法。
【請求項19】
前記ペットフードが犬用または猫用であることを特徴とする請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2010−525827(P2010−525827A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506822(P2010−506822)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003353
【国際公開番号】WO2008/135180
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】