説明

ペプチドの不斉合成

本発明は、−XC(O)−基を有する受容体分子を求核基で置換する工程を有してなる方法を提供し、ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8はC1-6アルキル、C6-12アリールもしくは水素であり、その際、−XC(O)−における求核置換がラセミ化を起こさず進行するように、受容体分子が環化されている。本方法は、活性化カルボキシ末端のアシルアミノ酸残基からの伸長により、エピマー化を起こさずにペプチドを製造するために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド鎖の活性化C末端にアミノ酸を付加することによってペプチド合成を行うための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド合成は、多数の薬剤および薬物の製造の根幹である。ペプチドまたはそれらの誘導体は、多数の疾患に対する治療用として、抗生物質から抗癌剤に至るまで幅広く用いられている。故に、化学合成によって産生されるペプチドの合成および収率を改良することに関して、近年盛んに研究が行われている。
【0003】
タンパク質またはペプチドの化学合成は、当分野において特に注目を集めている。タンパク質またはペプチドを化学合成することにより、特定のアミノ酸配列を有する精製ペプチドが得られる。また、アミノ酸の切断された配列も得られ、さらに、天然には存在しないアミノ酸の誘導体も得られる。
【0004】
天然においては、タンパク質は、リボソーム上で、アミノ酸モノマーが段階的に縮合することによって産生される。タンパク質の合成はN末端残基から始まり、C末端に向かって伸長する。ペプチド合成において従来から行われていた方法は、伸長ペプチドのN末端に特化されていた。この手法は、従来から行われている固相ペプチド合成の基本となるものである。N末端からの伸長のみによるペプチド合成は、いかなるペプチド合成も、収束させるというよりむしろ、事実上、直線状にしてしまうことから、限界がある。このことにより、合成物の全長の増加は深刻になり、操作時間が長引き、さらに、立体化学的な忠実度の損失の結果として生じる可能性として、全体収率が低下することとなる。
【0005】
ペプチドをN末端から伸長させることに伴う問題を克服することを目的として、代わりに、C末端からペプチドを伸長させる合成が想定されるかもしれない。しかしながら、N末端からC末端方向へのペプチド合成の試みは、カルボキシ末端アミノ酸残基のエピマー化に起因して、一般的には失敗に終わることが多い。これは、カルボキシ末端活性化アシルアミノ酸とペプチドとがオキサゾロンを形成する傾向があることによる。以下に図示するように、オキサゾロンの形成によって、アシルアミノ酸またはペプチドの末端アミノ酸残基のα位の急速なラセミ化が起こる。
【0006】

このラセミ化により、C末端伸長を利用した立体化学的に相同なペプチドの産生が妨げられる。
【0007】
異性体として純粋な化合物の産生が、当分野において特に望まれていることは明らかである。異性体の混合物が産生される方法では、どんな方法であれ、異性体を単離するために時間と費用がかかる精製工程が必要になってくる。ヒトまたは動物に投与されるキラル化合物は、通常、鏡像異性体として純粋な形であることが必要である。低濃度であっても、所望しない異性体が存在することにより、化合物の力価が低下し、また、所望しない、場合によっては重篤な副作用を引き起こすことになる。ペプチド鎖内に所望しない鏡像異性体が組み込まれることにより(例えば、L−アミノ酸から構成されるペプチド中にD−アミノ酸を組み込むなど)、ペプチドの折りたたみ、および/または3次元形状が妨げられ、従って、予測不能な結合活性および/または生物学的特性を有するペプチドが生成されることになる。故に、鏡像異性体的に純粋なペプチドの産生は最重要課題である。
【0008】
この問題の克服のためには多くの試みがなされてきた。イオルガ,Bおよびカンパーニュ,J-Mは、ペプチド結合形成が優先的に進行する反応になるように、ペプチド結合形成速度をオキサゾロン形成速度より速めることによってエピマー化の度合いを低下させようとした(非特許文献1)。しかしながら、この方法では、オキサゾロンの形成を完全に防ぐことはできず、カルボキシ末端活性化アミノ酸残基においてエピマー化が生じた。
【非特許文献1】Iorga, B. and Campagne, J-M., 2004, Synlett, 10, 1826-1828
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
天然に生じる化学的連結は、カルボキシ末端伸長の問題点を克服するように発展してきたが、通常は、アミノ末端対が補助システイン残基(assisting cysteine residue)であるようなカップリングに限定されており、自動化固相ペプチド合成の一般的技術には適用できない。天然に生じる化学的連結を他のアミノ末端アミノ酸に応用する試みは、ほとんど成功していない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アシルアミノ酸残基の活性化カルボキシ末端からの伸長による新規なペプチド産生方法を提供する。この新規な方法は、カップリング工程における末端アミノ酸残基のエピマー化という問題を克服している。故に、本発明により、コンバージェント法(convergent approach)によるペプチド産生が可能になり、また、現在使用されている直線反復アミノ末端伸長法に代わる、生物学的に重要であると考えられる化合物を産生するための新規な方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一の態様では、−XC(O)−基を有する受容体分子を求核基と置換する工程を有してなる方法が提供され、ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8は、C1-6アルキル、C6-12アリールまたは水素であり、その際、−XC(O)−の位置における該求核置換がラセミ化を起こさずに進行するように、該受容体分子が環化されている。好ましくは、受容体分子は環化アミノ酸またはそれらの誘導体である。特に、受容体分子は次の構造式(II)を有する化合物であり:
【化1】

【0012】
ここで、XはO、SまたはNR8であり、このとき、R8 は上に定義したとおりであり;
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化2】

【0013】
もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であって;
このとき、R1'は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;ここで、YがNR8である場合には、R8とR1'が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R4'は、カルボキシル保護基または水素であり;
R9およびR10は、独立して、水素またはR1'で定義される基であり;
あるいは、R9とR10が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
Yは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8 は上に定義したとおりであり;
R5は、C6-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであり、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、または構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカーであり;
nは、0、1、2または3であり、mは、1〜100から選択される値である。
【0014】
受容体分子の求核置換は、エピマー化を起こさずに進行することが好ましい。
【0015】
本方法は、受容体分子(例えば、アミノ酸またはペプチドなど)のカルボキシ末端伸長であることが好ましい。故に、本発明は、カルボキシ末端伸長、あるいは、構造式(II)で表されるような受容体分子に対する求核基の付加による、ペプチドまたはペプチド類似体の合成方法を提供する。
【0016】
さらには、次の構造式(I)で表される化合物の製造方法を提供し、
【化3】

【0017】
これは、次の構造式(II)で表される化合物に、
【化4】

【0018】
次の構造式(III)で表される化合物を反応させることを含み、
HY-R7(III)
ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8 は上に定義したとおりであり;
Yは、O、SまたはNHであり;
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化5】

【0019】
もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であって;
R1'は、水素または以下のR1の定義とおりであり;
Yは上に定義したとおりであり、R4'は、以下のR4の定義とおりであり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R9およびR10は、独立して、水素またはR1'で定義される基であり;
あるいは、R9とR10が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
R5は、C5-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであって、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、あるいは構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカーであり;
R6は、水素または以下の基であり、
【化6】

【0020】
ここで、R5およびXは上に定義したとおりであり;
R7は、以下の基、
【化7】

【0021】
または、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、
あるいは、R7とYが一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、Yに加えて、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
あるいは、R1は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R4は、カルボキシル保護基または水素であり;
nは、0、1、2または3であり、mは、1〜100から選択される値であり、
n=0の場合にはR6はHである。
【0022】
本発明者らは、構造式(II)に示すような環状化合物を介してアミノ酸またはペプチドを活性化することにより、オキサゾロンの形成が妨げられ、それによってエピマー化を起こすことなく構造式(III)の化合物が縮合するという驚くべき発見をした。故に、本発明は、C末端伸長を介したペプチドを提供し、該ペプチドは、鏡像異性体的およびジアステレオ化学的に純粋な形で生成される。
【0023】
活性化環状N−アシルアミノ酸、ペプチドまたはそれらの誘導体を使用することにより、オキサゾロンの形成およびそれに関連するエピマー化を排除できる。本発明における環状活性化中間体を使用することにより、カルボキシ末端伸長を介したペプチド合成の改良法が提供される。
【0024】
したがって、本発明にかかる方法は、当分野においてこれまで試みられていたような、単にエピマー化進行の可能性を低減するというよりはむしろ、エピマー化を起こさせず、結果として、活性化カルボキシル末端に隣接するアミドがオキサゾロンを形成できないように、該活性化カルボキシル末端が環状の鋳型中に捕捉され、立体化学的に正しいペプチドの産生が確保される。
【0025】
慣例に従い、*は立体中心(不斉中心)を表す。ある化合物が立体中心を有する場合には(本明細書中において*のあるなしにかかわらず)、不斉中心の立体化学はRまたはS配置をとる。本出願にかかる化合物は、鏡像異性体的に純粋な形で、または、異性体の混合物(ラセミ混合物を含む)として提供される。好ましくは、本発明にかかる化合物は、鏡像異性体的に純粋な形で提供される。本発明に従えば、全合成経路を通じて、所望する立体化学を維持できる。従って、YがNHである場合には、付加すべきアミノ酸は、必要に応じてLもしくはD配置であって差し支えない。
【0026】
好ましくは、R1およびR2は、独立して、C1-4分岐鎖もしくは直鎖アルキル基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、好ましくは、OH、SH、NH2、CO2H、CONH2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNHC(=NH)NH2で随意に置換されている。
【0027】
より好ましくは、R1およびR2は、独立して、OH、SH、CO2H、CONH2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、もしくはヒドロキシフェニルで随意に置換されたC1アルキル;OH、CO2H、CONH2 もしくはSCH3で随意に置換されたC2アルキル;NHC(=NH)NH2で随意に置換されたC3アルキル、またはNH2で随意に置換されたC4アルキルから選択される。
【0028】
整数mは、好ましくは1〜50であり、より好ましくは1〜30であり、最も好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20である。整数nは、好ましくは0もしくは1である。
【0029】
XがNR8のとき、R8は、好ましくはC1-4アルキルであり、より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルもしくはtert−ブチル、フェニル、ナフチル、アントラセニルまたはフェナンスラセニルであり、より好ましくはフェニルもしくは水素である。
【0030】
R3は、ピペコール酸もしくはそれらの誘導体、α−アルコキシ−α−アミノ酸、α,α−ジアミノ酸、β−置換デヒドロアミノ酸、カナバニン、システインスルホンアミド、ホモシステインスルホンアミド、γ,δ−不飽和アミノ酸類、置換4−ヒドロキシプロリン類、4−ヒドロキシオルニチン類、イミノ糖類、Fmoc−BPC−OH、Fmoc−TPG−OHおよびFmoc−CAA−OH、または(5)−3,5−ジヒドロキシフェニルグリシンで置換されていて差し支えない。
【0031】
当業者であれば、アミノ酸、オキシ酸およびそれらの誘導体が、保護を必要とする官能基を含んでいることは自明である。特に、アミノ末端、カルボキシル末端および/または、アミノ酸もしくはペプチドの側鎖(たとえば、R1およびR2がCH2CO2HまたはCH2CH2OHである場合など)を保護することは当分野において既知である。そのような保護の例は、当分野において周知である。特に、アミノ酸のアミノ末端は、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基、および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基のうちのひとつもしくはそれ以上によって保護されて差し支えない。カルボキシル基は、ひとつもしくはそれ以上のエステル基、特に、メチル、エチル、ベンジル、t−ブチルもしくはフェニルエステルを用いて保護できる。故に、R4は、好ましくは、メチル、エチル、ベンジル、t−ブチルまたはフェニルである。
【0032】
上述の保護基を除去するための条件は、当分野において周知である。保護基は、各カップリング反応後に除去する(例えば、カルボキシル保護の場合など)、あるいは別の方法としては、合成の最後に除去する(例えば、側鎖保護および/またはN−末端基の場合など)ことができる。
【0033】
第一の態様の特徴としては、本発明は、次の構造式(Ia)で表される化合物の製造方法であって、
【化8】

【0034】
次の構造式(IIa)で表される化合物に、
【化9】

【0035】
次の構造式(III)で表される化合物
HY-R7(III)
を反応させることを有してなる製造方法を提供し、
ここで、Y、X、R2、R3、R5およびR7は、上記の化合物(I)、(II)および(III)についての定義のとおりである。
【0036】
第一の態様の別の特徴においては、本発明は次の構造式(Ib)で表される化合物の製造方法であって、
【化10】

【0037】
次の構造式(IIb)で表される化合物に、
【化11】

【0038】
次の構造式(III)で表される化合物
HY-R7(III)
を反応させる工程を有してなる製造方法を提供し、
ここで、Y、X、R2、R3、R5およびR7の基は、上記の化合物(I)、(II)および(III)についての定義のとおりである。
【0039】
N、および構造式(I)、(Ia)もしくは(Ib)の末端エステルは、当分野において既知の方法によって脱マスキングすることができ、例えば、R1=フェニルおよびR4=t−ブチルの場合には、アルコールの存在下、液体アンモニアナトリウム(sodium liquid ammonia)を用いる。
【0040】
本発明の第一の態様にかかる受容体分子の求核置換については、当分野において既知の反応条件を用いて実施できる。状況によって、例えば、求核分子および/または受容体分子に立体障害が生じる場合には、例えば約1.9〜2.0MPa(19〜20bar)の高圧、および/または、12〜72時間、好ましくは24〜48時間という、長い反応時間を要するであろう。あるいは、反応、をAlMe3などの反応試薬の存在下で行うことができる。固相上で置換を行う場合には、過剰の求核剤を使用して反応を促進することができる。
【0041】
さらに、本発明は、次の構造式(II)で表される化合物の製造方法であって、
【化12】

【0042】
次の構造式(IV)で表される化合物に、
【化13】

【0043】
次の構造式(V)で表される化合物
【化14】

【0044】
を反応させる工程を有してなる製造方法を提供し、
ここで、Zは、ペプチド結合形成に寄与できる任意の置換基であって、好ましくは、水酸化物、ハロゲン化物もしくはアジドであり、R2、R3、R5、Xおよびnは上に定義したとおりである。
【0045】
R3が保護されたペプチドである場合には、その後に、当分野において既知のペプチド合成法(例えば、脱保護および更なるペプチド結合の形成など)を用いて、N−末端伸長を行って差し支えない。
【0046】
本発明にかかる方法は、特に、環状ペプチドなどの環状化合物の製造に用いられる。
【0047】
R3がC(R1')(R9)−N(R10)(R11)である場合には、構造式(II)で表される化合物は、構造式(V)であらわされるひとつもしくはそれ以上の化合物と段階的に反応させることができる。
【0048】
故に、本発明は次の構造式(VII)で表される化合物を包含し;
【化15】

【0049】
ここで、mは、1〜50の整数、好ましくは1〜30、より好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20であり;R1'、R2、R5、R9、R10、R11、Xおよびnは上に定義したとおりである。
【0050】
構造式(VII)で表される化合物は、構造式(I)で表される化合物の製造に利用可能であり(以下に図示しているものは(Ic)である);
【化16】

【0051】
R14が−[C(O)−C(R9)(R1')−N(R10)−]m−(R11)であり、かつ、R1'、R2、R5、R6、R7、R9、R10、R11、m、XおよびYが上に定義したとおりである場合には、構造式(VII)で表される化合物に、上述の構造式(III)で表される化合物を反応させる工程を含む。次に、構造式(I)で表される化合物は、以下に記載されるようにR6基を除去することにより、構造式(VI)で表される化合物に転換できる。構造式(VII)で表される化合物、ならびにそれらから得られた構造式(I)もしくは(VI)で表される化合物においては、置換基R1'およびR9を基(=R1')で置換可能であり、ここで、R1'は上に定義したとおりである。
【0052】
当然ながら、mが3もしくはそれ以上である場合には、R10およびR11は水素であり、構造式(VII)で表される化合物のXC(O)−官能基の位置で縮合が生じ、構造式(VIII)で表される環状化合物が形成され;
【化17】

【0053】
ここで、R1'、R2、R5、R9、X、mおよびnは上に定義したとおりである。
【0054】
故に、本発明は構造式(VIII)で表される化合物を提供する。さらに、本発明は、構造式(VIII)で表される化合物の製造方法であって、mが3もしくはそれ以上である場合に、構造式(VII)で表される化合物を環化する工程を含む製造方法を提供する。
【0055】
還元条件下(例えば、リチウムおよび液体アンモニアの存在下など)において構造式(VIII)で表される化合物を反応させることにより、構造式(IX)で表される化合物が形成され;
【化18】

【0056】
ここで、R1'、R2、R9、Xおよびmは上に定義したとおりである。
【0057】
故に、本発明は構造式(IX)で表される化合物、および、構造式(VIII)で表される化合物を還元する工程を有してなる、構造式(IX)で表される化合物の製造方法を提供する。
【0058】
当然ながら、本発明にかかる方法は、溶液中で行うことができる。あるいは、構造式(II)で表される化合物をR5基を介して樹脂に結合させ、固相ペプチド合成によってペプチド合成を行ってもよい。R5がリンカーである場合には、それはOR13、N(R13)2、CO2R13もしくはSR13であり、あるいは、1〜4個の炭素からなるアルキル基もしくはC6-12アリール基であって、該アルキルおよびアリール基は、OR13、N(R13)2、CO2R13もしくはSR13で随意に置換されている。あるいは、合成の一部を固相上、一部を溶液中で行ってもよい。
【0059】
構造式(II)で表される化合物は、当分野において既知の方法を用いて、樹脂に着脱できる。
【0060】
本発明にかかる方法を用いた固相ペプチド合成は、当分野において既知のいずれかの樹脂にカルボキシ末端を結合させる方法を用いて実施できる。適切な樹脂の例としては、Wang、Merrifireld、ポリアミド、2−クロロトリチル、Rink、Knorr、DCHD、PAL、ならびに当分野において既知の他のいずれかのものなどが挙げられる。BOP、PyBOPおよびDCCなどの固相カップリング対を用いても差し支えなく、さらに、当分野において既知の他のいずれかのカップリング対を用いることもできる。
【0061】
第一の態様におけるさらなる特徴は、構造式(VI)であらわされる化合物の製造方法であって、
【化19】

【0062】
構造式(I)で表される化合物
【化20】

【0063】
から、当分野において既知の任意の方法によってR6を除去する工程を含む製造方法であり、このとき、X、Y、R2、R3、R6およびR7は上に定義したとおりである。当然ながら、R6が水素である場合には、構造式(I)は構造式(VI)で表される化合物に相当する。
【0064】
特に、R6基の除去は、Birch条件(すなわち、リチウムおよび液体アンモニアを使用)下などの還元条件下で行って構わない。
【0065】
当業者であれば、第一の態様に従う方法によって製造されたペプチドを、当分野において既知の任意の適切な方法によって後修飾できることは、当然理解されよう。
【0066】
本発明の第二の態様は、構造式(II)で表される化合物に関し、
【化21】

【0067】
ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8は、C1-6アルキル、C6-12アリールまたは水素であり、
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化22】

【0068】
もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であり;
ここで、R1'は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、
ここで、YがNR8の場合には、R8とR1'が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R9およびR10は、独立して、水素またはR1'で定義される基であり;
あるいは、R9とR10が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
R1'は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、R4'は、カルボキシル保護基または水素であり、nは、0、1、2、または3であり、mは1〜100であり;さらに、
R5は、構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカー、あるいは、C6-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであり、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
ここで、X=Oであり、R5がフェニルである場合には、nは0でも1でもない。
【0069】
好ましくは、R1'およびR2は、独立して、OR13、SR13、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されたC1-4分岐鎖もしくは直鎖アルキルから選択される。より好ましくは、R1'およびR2は、独立して、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリルもしくはヒドロキシフェニルで随意に置換されたC1アルキル;OR13、CO2R13、CON(R132もしくはSCH3で随意に置換されたC2アルキル;NR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されたC3アルキル、または、N(R13)2で随意に置換されたC4アルキルから選択される。
【0070】
上述したように、R4'は、エステル基などのカルボキシル保護基である。特に好ましくは、R4'は、メチル、エチル、ベンジル、t−ブチルまたはフェニルである。R5がリンカーである場合には、OR13、N(R13)2、CO2R13もしくはSR13、または、炭素数が1〜4個であるアルキル基もしくはC6-12アリール基であり、このとき、アルキル基および/またはアリール基は、OR13、N(R13)2、CO2R13もしくはSR13のうちのひとつもしくはそれ以上で置換されていてもいよい。
【0071】
整数mは、好ましくは1〜50であり、より好ましくは1〜30であり、最も好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20である。整数nは、好ましくは0もしくは1である。
【0072】
XがNR8のとき、R8は、好ましくはC1-4アルキルであり、より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチルもしくはtert−ブチル、フェニル、ナフチル、アントラセニルまたはフェナンスラセニルであり、より好ましくはフェニルもしくは水素である。
【0073】
R13は、好ましくは、水素またはC1-4アルキルであり、より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチルもしくはtert−ブチルである。
【0074】
本発明の目的を遂行するためには、アルキルは、1〜10個の炭素原子を含む直鎖および分岐鎖のアルキルラジカルであり、好ましくは、炭素数は1〜8個であり、最も好ましくは炭素数は1〜4個であって次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなど。故に、アルキルは、炭素数が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であるような基である。アルキルという用語には、炭素数が3〜12個、好ましくは4〜8個、最も好ましくは5〜6個のシクロアルキルラジカルも含まれ、それらとしては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:シクロプロピル、シクロブチル、CH2−シクロプロピル、CH2−シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルなど。シクロアルキル基は、随意に置換されているか、または、ひとつもしくはそれ以上の炭素環基またはヘテロ環基と融合している。ハロアルキルとは、ひとつもしくはそれ以上のハロゲン原子で置換され、好ましくは炭素数が1〜8個、好ましくは炭素数が1〜4個であるアルキルラジカル(例えば、CH2CH2Br、CF3またはCCl3など)をさす。アルキル基は、ひとつもしくはそれ以上のO、SまたはNH基によって随意に遮断されており、好ましくは、ひとつもしくはそれ以上のO原子がアルコキシ基を形成している。アルキル基は、ひとつもしくはそれ以上の二重結合または三重結合によって随意に遮断されている場合があり、、限定するわけではないが、エチレン、n−プロピル−1−エン、n−プロピル−2−エン、イソプロピレン、エチニル、2−メチルエチニルなどの基を形成する。
【0075】
「アリール」とは、6〜12員の芳香環性炭化水素であって、ひとつの環を含むもの、または、ひとつもしくはそれ以上の飽和もしくは不飽和環に融合しているものを意味し、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルまたはフェナントラセニルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。「ヘテロアリール」とは、5〜12員の芳香環性アリールであって、N、OもしくはSから選択されるひとつもしくはそれ以上のヘテロ原子を含み、かつ、ひとつの環を含むもの、または、ひとつもしくはそれ以上の飽和もしくは不飽和環に融合しているものを意味し、例えば、フラン、イミダゾール、インドール、オキサゾール、プリン、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、テトラヒドロフラン、チオフェンおよびトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。アリールおよびヘテロアリール基は、全て飽和している、部分的に不飽和、または不飽和の状態である。
【0076】
ハロゲンとは、F、Cl、BrまたはIを意味し、好ましくはFである。
【0077】
本発明の第三の態様は、不斉合成における本発明の第一および/または第二の態様で定義したような、構造式(II)で表される化合物の使用に関する。
【0078】
本発明の各態様についての全ての好ましい特徴を、全ての他の態様に準用する。
【0079】
以下の限定されない例のうちのひとつもしくはそれ以上を参照することにより、本発明が具体的に説明されるであろう。
【実施例】
【0080】
環状ペプチドの製造方法の例。
【0081】

構造式(I)で表される化合物のN末端伸長法の例。
【0082】

構造式(II)で表される化合物の固相合成における利用方法の例。
【0083】

構造式(II)で表される化合物のチオモルホリノン鋳型の製造方法の例。
【0084】

ペプチド合成の例
(5R)−3−メチル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化23】

【0085】
(R)−2−フェニルグリシノール(3.00g、21.9mmol、1.0当量)およびピルビン酸エチル(2.67ml、24.1mmol、1.1当量)を、活性化4'モレキュラーシーブ(8.00g)を加えたトリフルオロエタノール(50ml)中で24時間環流させた。セライト(Celite(登録商標))の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(7:3)を用いて溶出させることによって精製し、白色固体の表記化合物を得た(1.70g、収率41%)。融点71.0〜72.0℃(文献値71.0〜72.0℃); ν(max) (KBr) 3001 (C-H), 1734 (C=O), 1642 (C=N) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.42-7.32 (5H, m, Ph), 4.89-4.80 (IH, m, PhCH), 4.56 (IH, dd, J 4.49 Hz, T 11.55 Hz, 6β-H), 4.25 (IH, dd J 10.97 Hz, r 11.51 Hz, 6α-H), 2.40 (3H, s, CH3); δc (62.5 MHz, CDCl3) 160.7, 155.9, 137.2, 129.4, 128.7, 127.5, 71.9, 60.1, 22.2; m/z (CI, NH3), 189 (M+, 25%), 159 (12%), 130 (24%), 104 (100%), 90 (21%), および 78 (6%); C11H11NO2 に対するHRMS 理論値 189.0787,測定値 189.0782. [α]D20 -256.0 (c 1.11 CHCl3) (文献値 [α]D20 -237.1 (c 1.11 CHCl3)).
(3S,5R)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化24】

【0086】
窒素雰囲気下、(5R)−3−メチル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(1.70g、9.0mmol、1.0当量)の無水ジクロロメタン(60ml)溶液中にPtO2(170mg、0.1当量)を加えた。混合物は連続的に脱気し、水素を3回通した後、水素雰囲気下で5時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをジクロロメタン、ジエチルジエチルエーテルおよびヘキサンから再結晶させることによって精製し、白色針状の表記化合物を得た(1.37g、収率80%)。融点82.0〜83.0℃(文献値81.0〜82.0℃); ν(max) (KBr) 3314 (N-H), 2981 (C-H), 1739 (C=O), cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.44-7.33 (5H, m, Ph); 4.42-4.23 (3H, m, CHCH2), 3.88 (IH, q, J 6.76 Hz, CHCH3), 1.86 (IH, br, NH), 1.50 (3H, d, J 6.16 Hz, CH3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 170.7, 138.0, 129.3, 127.5, 127.2, 75.4, 58.2, 55.4, 19.0; m/z (CI, NH3), 191 (M+, 7%), 147 (20%), 131 (65%), 104 (100%), 91 (20%), および 77 (12%); C11H13NO2 に対するHRMS 理論値 191.0943 測定値 191.0940. [α]D20 -92.9 (c 1.02 CHCl3) (鏡像異性体に対する文献値 [α]D20 +92.3 (c 0.84 CHCl3)).
(3S,5R)−4−N−アセチル−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化25】

【0087】
(3S,5R)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(300mg、1.56mmol)およびNa2CO3(500mg、4.68mmol、3.0当量)を無水ジクロロメタン(30ml)中で激しく撹拌しながら、塩化アセチル(0.17ml、2.34mmol、1.5当量)を1分以上かけて滴下した。得られた溶液は、窒素雰囲気下、15分間撹拌した。飽和Na2CO3(20ml)を加えることによって反応を停止し、水層をジエチルジエチルエーテルで抽出し(3×10ml)、あわせた抽出液をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジエチルエーテルおよびジクロロメタン(9:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(270mg、収率74%)。融点82〜85℃;ν(max) (KBr) 2943 (C-H), 1733 (C=O, lactone), 1647 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d) 7.42-7.36 (5H, m, Ph), 5.49 (0.4H, PhCH × 0.4) 5.33 (0.6H, PhCH × 0.6), 5.08-5.05 (IH, m, CH3CH), 4.65 (2H, d, J 6.10 Hz, CH2); 2.13 (IH, s, CH3CON × 1), 1.86 (2H, s, CH3CON × 2), 1.39 (3H, d, J 12.40 Hz CH3CH); δc(62.5 MHz, DMSO-O 170.5, 169.8, 137.8, 129.4, 128.4, 127.1, 68.6, 55.5, 50.7, 49.7, 22.7, 19.0; m/Z (CI, NH3), 234 (MH+, 8%), 233 (M, 13%), 220 (4%), および219 (100%); C13H16NO3 に対するHRMS 理論値 234.1126, 測定値 234.1130; [α]D20 -29.8 (c 1.16 CHCl3).
N−Fmoc−L−アラニン酸クロリド
【化26】

【0088】
N−Fmoc−L−アラニン(2.00g、6.4mmol、1.0当量)の無水ジクロロメタン(40ml)溶液中にチオニルジクロリド(4.70ml、64mmo、10当量)を加えた。得られた混合物を、窒素雰囲気下、2時間環流させた。溶媒および過量のチオニルジクロリドを減圧除去し、粗N−Fmoc−L−アラニン酸クロリドを、ジクロロメタンおよびヘキサンから再結晶させることによって部分的に精製した(1.74g、収率86%)。融点88〜90℃(文献値融点112〜114℃);ν(max) (KBr) 3328 (N-H), 3040 (C-H), 1778 (C=O, chloride), 1694 (C=O,carbamate), cm -1; δH(250 MHz, CDCl3) 7.79-7.29 (8H, m, Fmoc), 5.22 (IH, d, J 8.0 Hz, NH), 4.67-4.38 (3H, m, CH3CH × 1, CHCH2 × 2), 4.23 (IH, t, J 6.52 Hz, CHCH2); 1.55 (3H, d, J 7.28 Hz, CH3CH); δc(62.5 MHz, CDCl3) 176.8, 158.2, 143.9, 141.7, 128.2, 127.5, 125.3, 120.5, 67.7, 59.1, 47.5, 17.7; m/z (CI, NH3), 330 (MH+, 48%), 258 (20%), 197 (65%), 154 (100%), 95 (20%), および 72 (12%); C18H17ClNO3に対する HRMS 理論値 330.1595, 測定値 330.1592. [α]D20 + 8.50 (c 1.30 CHCl3) (文献値 [α]D24 +4.03 (c 1.00 CH2Cl2)).
(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化27】

【0089】
(3S,5R)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(600mg、3.14mmol)およびNa2CO3(1.7g、15.70mmol、5.0当量)をジクロロメタンおよび水の1:1混合物(40ml)中で激しく撹拌し、ここに、Fmoc−L−アラニン酸クロリド(1.26g、3.84mmol、1.2当量)のジクロロメタン(10ml)溶液を5分以上かけて滴下した。得られた溶液を2時間撹拌した。水層はジクロロメタンで抽出した(3×15ml)。あわせた抽出液は、飽和Na2CO3(50ml)、水(2×30ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:4)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(1.21g、収率80%)。融点89〜90℃; ν(max) (KBr) 3321 (N-H)5 2983 (C-H), 1741 (C=O, lactone), 1718 (C=O, carbamate), 1654 (C=O, amide) cm-1H (250 MHz, DMSO-d) 7.91-7.27 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5), 5.50 (IH, br, NH), 5.07 (IH, m, PhCH), 4.90 (IH, m, NCHCH3); 4.77 (IH, d, 77.0 Hz, α-PhCHCH2), 4.57 (2H, m, CHCH3NH × 1, β-PhCHCH2 × 1), 4.26 (IH, m, OCH2CH), 4.19 (2H, m, OCH2CH), 1.28 (3H, d, J 4.0 Hz, NCHCH3), 1.10 (3H, d, J 4.0 Hz, CHCH3NH); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 172.0, 170.0, 156.1, 144.2, 141.1, 136.2, 128.9, 128.3, 127.9, 127.4, 126.7, 125.7, 120.4, 66.0, 65.3, 53.0, 50.7, 47.8, 46.9, 18.6, 17.8; m/z (CI, NH3), 508 (MNa+, 6%), 502 (MNH4+, 45%), 487 (4%), および 485 (MH+, 100%); C29H29N2O5に対するHRMS 理論値 485.2069. 測定値 485.2060; [α]D20 -13.1 (c 1.06 CHCl3).
(5S)−3−メチル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化28】

【0090】
(S)−2−フェニルグリシノール(3.00g、21.9mmol、1.0当量)およびピルビン酸エチル(2.67ml、24.1mmol、1.1当量)を、活性4'モレキュラーシーブ(8.00g)を加えたトリフルオロエタノール(50ml)中で24時間環流させた。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(7:3)を用いて溶出させることによって精製し、白色固体の表記化合物を得た(1.83g、収率44%)。融点70.0〜71.0℃(文献値71.0〜72.0℃); ν(max) (KBr) 3007 (C-H), 1735 (C=O), 1640 (C=N) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.45-7.32 (5H, m, Ph), 4.88-4.81 (IH, m, PhCH), 4.56 (IH, dd, J 4.49 Hz, T 9.48 Hz, 6β-H), 4.25 (IH, dd,J 13.01 Hz, JT 14.99 Hz, 6α-H), 2.41 (3H, s, CH3); δc (62.5 MHz, CDCl3) 160.7, 155.9, 137.2, 129.4, 128.7, 127.5, 71.9, 60.1, 22.2; m/z(CI, NH3), 189 (M+, 25%), 159 (12%), 130 (24%), 104 (100%), 90 (21%), および 78 (6%); C11H11NO2に対する HRMS 理論値189.0787 ,測定値 189.0782. [α]D20 +253.0 (c 0.98 CHCl3) (鏡像異性体としての文献値 [α]D20 -237.1 (c 1.11 CHCl3)).
(3R,5S)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化29】

【0091】
窒素雰囲気下、(5S)−3−メチル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(1.70g、9.0mmol、1.0当量)の無水ジクロロメタン(60ml)溶液中にPtO2(170mg、0.1当量)を加えた。混合物は連続的に脱気し、水素を3回通した後、水素雰囲気下で5時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをジクロロメタン、ジエチルジエチルエーテルおよびヘキサンから再結晶させることによって精製し、白色針状の表記化合物を得た(1.26g、収率74%)。融点81.0〜82.0℃(文献値融点81.0〜82.0℃);ν(max) (KBr) 3314 (N-H), 2981 (C-H), 1736 (C=O), cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.43-7.26 (5H, m, Ph),; 4.42-4.23 (3H, m, CHCH2), 3.88 (IH, q, J 6.76 Hz, CHCH3), 1.80 (IH, br, NH), 1.50 (3H, d, J 6.76 Hz, CH3); δc (62.5 MHz, CDCl3) 170.7, 138.1, 129.3, 129.1, 127.5, 75.4, 58.2, 55.4, 19.0; m/z (CI, NH3), 192 (MH+, 30%), 147 (68%), 132 (64%), 104 (100%), および 91 (10%); C11H13NO2に対するHRMS 理論値 192.1025, 測定値 192.1019. [α]D20 +88.8 (c 0.96 CHCl3) (文献値 [α]D20+92.3 (c 0.84 CHCl3)).
(3R,5S)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化30】

【0092】
(3R,5S)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(500mg、2.62mmol)およびNa2CO3(1.40g、13.3mmol、5.0当量)をジクロロメタンおよび水の1:1混合物(40ml)中で激しく撹拌し、ここに、N−Fmoc−L−アラニン酸クロリド(1.04g、3.14mmol、1.2当量)のジクロロメタン溶液(10ml)を5分以上かけて滴下した。得られた溶液を2時間撹拌した。水層はジクロロメタンで抽出した(3×15ml)。あわせた抽出液を、飽和Na2CO3(50ml)、水(2×30ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:4)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(1.02g、収率80%)。融点87〜88℃;ν(max) (KBr) 3323 (N-H), 2982 (C-H), 1761 (C=O, lactone), 1717 (C=O, carbamate), 1656 (C=O, amide) cm-1; δH (400 MHz, DMSO-d, 110 ℃) 7.84- 7.29 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5), 7.08 (IH, br, NH), 5.54 (IH, t, J 5.88 Hz, PhCH), 4.96 (IH, q, J7.11 Hz, NCHCH3); 4.68-4.60 (2H, m, PhCHCH2), 4.41- 4.32 (3H, m, CHCH3NH × 1, OCH2CH × 2), 4.22 (IH, t, J 6.72 Hz, OCH2CH), 1.45 (3H, d, J7.15 Hz, NCHCH3), 1.08 (3H, d, J 6.71 Hz, CHCH3NH); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 174.0, 172.8, 170.4, 169.6, 156.3, 144.1, 141.1, 137.7, 129.4, 128.7, 128.0, 127.4, 127.3, 127.1, 125.6, 120.5, 68.8, 66.0, 55.5, 55.3, 52.2, 51.4, 50.0, 47.2, 20.5, 18.6, 17.7, 17.1; m/z (CI, NH3), 485 (MH+, 12%), 431 (8%), 381 (7%), 281 (15%) および 149 (100%); C29H29N2O5に対するHRMS 理論値 485.2069. 測定値 485.2076; [α]D20 +22.2 (c 0.94 CHCl3).
(5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化31】

【0093】
(R)−2−フェニルグリシノール(4)(2.00g、14.6mmol、1.0当量)およびエチル−3−メチル−2−オクソブチラート(2.20ml、14.6mmol、1.0当量)を、トリフルオロエタノール(30ml)中、活性化4'モレキュラーシーブ(7.0g)を加えて24時間環流させた。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(4:1)で溶出させることによって精製し、無色油状の表記化合物を得た(1.13g、収率36%)。 ν(max) (film) 2965 (C-H), 1740 (C=O), 1638 (C=N) cm-1; δH(250 MHz, CDCl3) 7.45-7.32 (5H, m, Ph), 4.90-4.83 (IH, m, PhCH), 4.55 (IH, dd, J 4.4 Hz, J 11.5 Hz, 6β-H), 4.13 (IH, dd, J10.9 Hz, J 11.4 Hz, 6α-H), 3.32 (IH, m, CH(CH3)2), 1.25 (3H, d, J 5.0 Hz, CH(CH3)2 × 3), 1.22 (3H, d, J 5.0 Hz, CH(CH3)2 × 3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 167.7, 155.7, 137.5, 129.3, 128.6, 127.4, 71.7, 59.7, 32.7, 20.7, 19.9; m/z(CI, NH3), 220 (100%), 218 (MH+, 17%), 217 (27%), および 216 (25%); C13H16NO2 に対するHRMS 理論値 218.1177, 測定値 218.1181. [α]D20 -207.5 (c 1.17 CHCl3).
(3S,5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(39)
【化32】

【0094】
窒素雰囲気下、(5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(38)(1.03g、4.74mmol、1.0当量)の無水ジクロロメタン(50ml)溶液中にPtO2(103mg、0.1当量)を加えた。混合物を連続的に脱気し、水素を3回通した後、水素雰囲気下で5時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(4:1)で溶出させることによって精製し、ワックス状固体の表記化合物を得た(662mg、収率64)。融点61.5〜62.5℃;ν(max) (KBr) 3326 (N-H), 2960 (C-H), 1733 (C=O), cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.47-7.35 (5H, m, Ph),;4.33- 4.18 (3H, m, PhCHCH2), 3.81 (IH, m, , NHCH), 2.49, (IH, m, CH(CH3)2), 1.68 (IH, br, NH), 1.09 (3H, dd, J 6.75 Hz, CH(CH3)2 × 3), 1.05 (3H, dd, J 6.75, CH(CH3)2 × 3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 170.3, 138.5, 129.3, 129.1, 127.6, 74.9, 64.2, 57.3, 32.0, 19.4, 17.4; m/z(CI. , NH3), 237 (MNH4+, 5%), 220 (100%, MH+), 219 (22%), および 216 (6%);C13H18NO2に対するHRMS 理論値 220.1333,測定値 220.1338. [α]D20 -92.1 (c 1.45 CHCl3).
(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化33】

【0095】
方法1:
(3S,5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(150mg、0.68mmol)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液中に、N−Fmoc−L−アラニン酸クロリド(276mg、0.82mmol、1.2当量)の無水ジクロロメタン(5ml)溶液を加えた。得られた溶液を24時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(2:3)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(95mg、収率27%)。
【0096】
方法2:
(3S,5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(200mg、0.91mmol)およびNa2CO3(415mg、2.73mmol、3.0当量)を無水ジクロロメタン(15ml)中で激しく撹拌し、ここに、N−Fmoc−L−アラニン酸クロリド(428mg、1.36mmol、1.5当量)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液を加えた。得られた混合物を、窒素下で1時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(3:7)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(380mg、収率82%)。融点72〜75℃; ν(max) (KBr) 3402 (N-H), 2969 (C-H), 1760 (C=O, lactone), 1718 (C=O, carbamate), 1654 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.65-7.15 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5), 5.46 (IH, br, NH), 5.03-4.98 (IH, m, PhCH), 4.75 (IH, d, J10.0 Hz CHCH(CH3)2), 4.32-4.13 (3H, m, PhCHCH2 および OCH2CH), 4.07- 4.02 (IH, m, CHCH3), 3.89-3.79 (2H, m, OCH2CH ), 2.18-2.00 (IH, m, CH(CH3)2), 1.21 (3H, d, J 5.5 Hz, CH(CH3)2 × 3), 1.19 (3H, d, J 5.0 Hz, CHCH3), 1.02 (3H, d, J 6.5 Hz, CH(CH3)2 × 3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 174.1, 167.1, 153.7, 142.8, 140.2, 134.9, 128.8, 128.2, 127.2, 124.9, 124.1, 118.9, 66.3, 65.7, 55.2, 52.5, 47.5, 45.0, 31.6 20.1, 18.2, 17.8; m/z (CI., NH3), 535 (MNa+, 73%), 513 (MH+, 100%), 334 (11%), 333 (53%), 328 (23%), および 311 (19%); (CI.) C31H33N2O5 に対するHRMS 理論値 513.2381, 測定値 513.2378. [α]D20 -22.1 (c 1.05 CHCl3)
N−Fmoc−L−バリン酸クロリド
【化34】

【0097】
N−Fmoc−L−アラニン(3.00g、8.7mmol、1.0当量)の無水ジクロロメタン(40ml)溶液に塩化チオニル(6.5ml、87mmol、10.0当量)を加えた。得られた混合物は、窒素雰囲気下、2時間環流させた。溶媒および過量の塩化チオニルを減圧除去し、粗N−Fmoc−L−アラニン酸クロリドを、ジクロロメタンおよびヘキサンから再結晶することによって部分的に精製した(2.50g、収率80%)。融点75〜79℃(文献値融点111〜112℃); ν(max) (KBr) 3317 (N-H), 2969 (C-H), 1788 (C=O, acid chloride), 1696 (C=O,carbamate), cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.78-7.29 (8H, m, Fmoc), 5.20 (IH, d, J 9.5 Hz, NH), 4.55-4.33 (3H, m, CH3CH × 1, CHCH2 × 2), 4.23 (IH, t, J 6.5 Hz, CHCH2); 2.40 (IH, m, CH(CH3)2), 1.05 (3H, d, J 7.0 Hz, CH(CH3)2 × 3), 0.95 (3H, d, J 7.0 Hz, CH(CHb)2 × 3); δc (62.5 MHz, CDCl3) 175.4, 157.1, 143.9, 141.8, 128.2, 127.5, 125.3, 120.5, 68.2, 67.7, 47.5, 30.3 19.7, 17.4; [α]D20 +13.2 (c 1.05 CHCl3) (文献値 [α]D24 +5.5 (c 1.00 CH2Cl2)
(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−バリニル]−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化35】

【0098】
方法1:
(3S,5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(200mg、0.91mmol)の無水ジクロロメタン(20ml)溶液中に、N−Fmoc−L−バリン酸クロリド(391mg、1.10mmol、1.2当量)の無水ジクロロメタン(5ml)溶液を加えた。得られた溶液を24時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(2:3)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(80mg、収率16%)。
【0099】
方法2:
(3S,5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(200mg、0.91mmol)およびNa2CO3(415mg、2.73mmol、3.0当量)を無水ジクロロメタン(15ml)中で激しく撹拌し、ここに、N−Fmoc−L−バリン酸クロリド(533mg、1.36mmol、1.5当量)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液を加えた。得られた混合物を、窒素下、6時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(260mg、収率52%)。融点75〜78℃;ν(max) (KBr) 3421 (N-H), 2966 (C-H), 1763 (C=O, lactone), 1718 (C=O, carbamate), 1654 (C=O, amide) cm-1; δH (400 MHz, DMSO-J6, 120 ℃) 7.83- 7.25 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5 ), 6.81 (IH, br, NH), 5.34 (IH, dd, J 6.2 Hz, J' 10.8 Hz, PhCH), 4.77 (IH, d, J 9.5 Hz, NCH), 4.58 (IH, dd, J 6.2 Hz, J' 12.5 Hz, PhCHCH2 × 1), 4.47 (IH, dd, J 10.8 Hz, J' 12.4 Hz, PhCHCH2 × 1), 4.32-4.28 (IH, m, CH3CH), 4.24-4.15 (3H, m, OCH2CH), 2.22-2.05 (2H, m, CH(CH3)2 × 2), 1.18 (3H, d, J 6.5 Hz, CH(CH3)2 × 3), 0.96 (3H, d, J 6.5 Hz, CHCH3), 0.84 (6H, t, J 7.0 Hz, CH(CH3)2 × 6); δc (62.5 MHz, CDCl3) 174.5, 168.5, 155.5, 144.2, 141.7, 130.2, 129.6, 128.1, 127.4, 126.7, 126.4, 125.5, 120.4, 68.0, 67.1, 61.3, 57.7 57.0, 47.4, 33.2, 32.6, 21.8, 20.1, 19.7, 18.4, 17.5; m/z(CI), 614 (100%), 576 (50%), 564 (9%), 541 (MH+), 519 (22%), および 503 (16%);C33H37N2O5に対する HRMS 理論値541.2692, 測定値 541.2709. [α]D20 -28.5 (c 0.56 CHCl3).
フェナシル−N−tert−ブトキシカルボキシル−(S)−フェニルアラナート
【化36】

【0100】
水酸化カリウム(0.64g、11.31mmol)のメタノール(15ml)溶液にBoc−L−フェニルアラニン(3.00g、11.31mmo)を加えた。得られた溶液を室温で3時間撹拌した。溶媒を除去し、粗生成物を減圧乾燥させることによって白色粉末を得、次に、無水N,N−ジメチルホルムアミド(15ml)を加え、2−ブロモアセトフェノン(2.07g、13.57mmol、1.2当量)で処理した。得られた溶液を、窒素下、室温で24時間撹拌した後、水(20ml)を加えることによって反応を停止した。沈殿物は、粗生成物として次の工程に使用するか、または、ジエチルエーテルから再結晶させることによって精製し、細かい白色針状の表記化合物を得ることができた(3.55g、収率82%)。融点140〜141.0℃; ν(max) (KBr) 3395 (N-H), 2973 (C-H), 1757 (C=O, ester), 1715 (C=O, ketone), 1692 (C=O, carbamate) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.93-7.24 (10H, m, Ph), 5.50 (IH, d, J 16.4 Hz, OCH2 × 1), 5.31 (IH, d, J 16.4 Hz, OCH2 × 1), 4.97 (IH, d, J 8.1 Hz, NH), 4.75 (IH, dd, J 7.2 Hz, J 6.1 Hz, CH), 3.36 (IH, dd, J 5.4 Hz, J 14.1 Hz, PhCH2 × 1), 3.14 (IH, dd, J 7.1 Hz, J 14.0 Hz, PhCH2 × 1), 1.40 (9H, s, t-butyl); δc(62.5 MHz, CDCl3) 191.9 172.0, 155.6, 136.5, 134.4, 129.9, 129.3, 129.0, 128.2, 127.4, 80.4, 66.8, 54.7, 38.6, 28.7. [α]D20 -7.9 (c 1.01 CHCl3).
(3S)−3−ベンジル−5−フェニル−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化37】

【0101】
フェナシルN−tert−ブトキシカルボキシル−(S)−フェニルアラナート(3.51g、9.16mmol)のジエチルジエチルエーテル(150ml)懸濁液に、臭化水素の酢酸(33%(w/w)、4.8ml、27.5mmol、3.0当量)溶液を加えた。得られた混合物は窒素下で3時間撹拌し、この間に、さらにジエチルジエチルエーテル(100ml)を加えた。固体はシンター(sinter)を通して濾過し、ジエチルジエチルエーテル(2×30ml)で洗浄し、減圧乾燥することによってアミノエステルヒドロブロミドを得、次に、これをpH5の酢酸緩衝液(100ml、0.2M、70部の0.2M酢酸ナトリウム水溶液と30部の0.2M酢酸水溶液とから調製)に溶解した。得られた混合物は窒素下で12時間撹拌したところ、この間に黄色油状の物質が生成した。沈殿物は、粗生成物として次の工程に使用するか、または、シリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンとジエチルエーテル(3:2)で溶出させることによって精製し、白色固体の表記化合物を得ることができた(1.56g、収率65%)。 ν(max) (KBr) 2932 (C-H), 1751 (C=O), cm-1; 融点 57.0-59.0 ℃ (文献値 58.0-60.0 ℃)63; δH (250 MHz, CDCl3) 7.90-7.18 (10H, m, Ph), 5.01 (IH, d, J 14.2 Hz, CHCH2O × 1), 4.83 (H, m, CHCH2Ph), 4.06 (IH, m, CHCH2), 4.11 (IH, d, J 14.2 Hz, CHCH2O × 1), 3.46 (IH, dd, J 5.45 Hz, J 13.5 Hz, CHCH2Ph × 1), 3.32 (IH, dd, J 5.45 Hz, J 13.5 Hz, CHCH2Ph × 1); δc(62.5 MHz, CDCl3) 169.0, 162.8, 136.6, 134.7, 131.7, 130.6, 129.2, 128.8, 127.6, 126.3, 67.8, 61.0, 39.4; m/z (CI, NH3), 266 (32%), 265 (M+, 100%), 264 (42%), 263 (5%) および 262 (3%);C17H15NO2に対するHRMS 理論値 265.1103, 測定値 265.1108. [α]D20 +85.1 (c 1.04 CHCl3) (文献値[α]D20 +85.7 (c 2.00 CHCl3)).
(3S,5R)−3−ベンジル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化38】

【0102】
窒素雰囲気下、(3S)−3−ベンジル−5−フェニル−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(1.56g、5.88mmol、1.0当量)の無水メタノール(40ml)溶液に、活性炭に担持されたパラジウム(156mg、0.1当量、質量による)を加えた。混合物を連続的に脱気し、水素を3回通した後、水素雰囲気下で5時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(4:1)で溶出させることによって精製し、白色固体の表記化合物を得た(514mg、収率33%)。融点75.0〜76.0℃(文献値76.0〜78.0℃)5; ν(max) (KBr) 3321 (N-H), 2949 (C-H), 1731 (C=O), cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.36-7.21 (10H, m, Ph), 4.34-4.15 (3H, m, PhCHCH2), 3.97 (IH, dd, J 3.2, J' 10.0 Hz, NHCH), 3.56, (IH, dd, J 3.2, J' 13.6 Hz, CH2Ph × 1), 3.00, (IH, dd, J 10.0, J' 13.6 Hz, CH2Ph × 1), 1.84 (IH, br, NH); δc (62.5 MHz, CDCl3) 169.6, 138.0, 137.8, 129.8, 129.3, 129.2, 129.1, 127.5, 127.4, 75.3, 60.6, 57.9, 39.4; m/z (CI, NH3), 268 (MH+, 40%), 267 (80%, M+), 223 (100%), および 209 (57%);C17H17NO2に対するHRMS 理論値 267.1259. 測定値 267.1263. [α]D20 -156.4 (c 1.02 CHCl3) (文献値 [α]D20 -157.9 (c 2.00 CHCl3)).
(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−ベンジル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化39】

【0103】
(3S,5R)−3−ベンジル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(200mg、0.75mmol)およびNa2CO3(239mg、2.25mmol、3.0当量)を無水ジクロロメタン(20ml)中で激しく撹拌し、ここに、N−Fmoc−L−アラニン酸クロリド(354mg、1.12mmol、1.5当量)の無水ジクロロメタン(6ml)溶液を加えた。得られた混合物を、窒素下、4時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(2:3)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(150mg、収率36%)。融点87〜89℃;ν(max) (KBr) 3413 (N-H), 2981 (C-H), 1760 (C=O, lactone), 1718 (C=O, carbamate), 1656 (C=O, amide) cm-1; δH (400 MHz, DMSO-d, 100℃) 7.90- 7.27 (18H, m, Fmoc × 8, Ph × 10 ), 7.07 (IH, br, NH), 5.47 (IH, dd, J 4.8 Hz, J' 7.6 Hz, PhCH), 5.32 (IH, t, J 7.2 Hz, NCH), 4.82 (IH, dd, J 7.6 Hz, J' 12.4 Hz, PhCHCH2 × 1), 4.71 (IH, dd, J 12 Hz, J' 12.4 Hz, PhCHCH2 × 1), 4.41 (IH, q, J 6.4 Hz, CH3CH), 4.37-4.21 (3H, m, OCH2CH), 3.15 (2H, d, J 6.8 Hz, CH2Ph), 1.21 (3H, d, J 6.8 Hz, CH3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 174.8, 170.8, 168.8, 159.6, 155.0, 142.7, 140.2, 128.9, 128.5, 127.9, 127.6, 127.4, 126.9, 126.6, 126.1, 124.2, 119.0, 66.2, 62.1, 61.0, 52.5, 47.8, 45.9, 33.8, 15.6; m/z (CI), 560 (M+), 502 (100%), 464 (43%), 426 (19%), および414 (83%); C35H32N2O5 に対するHRMS 理論値 560.2303. 測定値 560.2293. [α]D20 -56.2 (c 1.01 CHCl3).
(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−tert−ブチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化40】

【0104】
(3S,5R)−3−tert−ブチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(150mg、0.63mmol)の無水ジクロロメタン(20ml)溶液およびNa2CO3(341mg、3.22mmol、5.0当量)を激しく撹拌し、ここに、N−Fmoc−L−アラニン酸クロリド(298mg、0.95mmol、1.5当量)を加えた。得られた混合物を、窒素雰囲気下、18時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(170mg、収率51%)。融点74〜75℃; ν(max) (KBr) 2976 (C-H), 1752 (C=O, lactone), 1724 (C=O, carbamate), 1662 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d6) 7.90-7.29 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5 ), 5.39 (IH, br, PhCH), 4.62 (2H, br, CH2O), 4.33 (IH, br, CH3CH), 4.18 (3H, br, OCH2CH), 1.23 (3H, d, J 6.70 Hz, CHCH3), 0.88 (9H, s, C(CH3)3); δc (62.5 MHz, DMSO-d6) 175.9, 168.1, 155.8, 144.2, 144.1, 141.0, 137.1, 129.0, 128.0, 127.4, 125.8, 125.7, 120.4, 66.0, 62.2, 55.3, 53.0, 48.7, 46.9, 37.0, 28.6, 17.4; m/z (CI); 528 (15%), 527 (MH+, 34%), 526 (M, 100%), 470 (62%), および 414 (74%); C32H34N2O5に対するHRMS 理論値 526.2459. 測定値 526.2457. [α]D20 - 10.9 (c 1.20 CHCl3)
(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−バリニル]−3−tert−ブチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン
【化41】

【0105】
(3S,5R)−3−tert−ブチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(75mg、0.32mmol)の無水ジクロロメタン(7ml)溶液およびNa2CO3(170mg、1.61mmol、5.0当量)を激しく撹拌し、ここに、N−Fmoc−L−バリン酸クロリド(170mg、0.48mmol、1.5当量)を加えた。得られた混合物は、窒素雰囲気下、48時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(32mg、収率18%)。融点71〜73℃;ν(max) (KBr) 2964 (C-H), 1752 (C=O, lactone), 1734 (C=O, carbamate), 1655 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.77-7.25 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5 ), 5.30 (IH, br, (CH3)2CHCH), 5.13 (IH, t, J 10.0 Hz, PhCH), 4.52-4.38 (2H, m, PhCHCH2O), 4.29-4.21 (IH, m, OCH2CH), 4.15 (3H, br, OCH2CH × 2 and CHC(CH3)3), 1.99-1.96 (1H, m, (CH3)2CH), 1.22 (9H, s, C(CH3)3); 0.97-0.84 (6H, m, (CH3)2CH ); δc (62.5 MHz, CDCl3) 175.9, 168.4, 155.4, 144.2, 141.7, 136.5, 130.2, 129.2, 128.1, 127.6, 126.4, 125.5, 120.4, 68.3, 67.1, 64.3, 57.6, 56.5, 47.5, 38.0, 32.7, 30.7, 20.2, 17.4; m/z (CI), 554 (MH+, 14%), 502 (100%), 464 (40%), 426 (20%), および 414 (74%);C34H38N2O5に対するHRMS 理論値 554.2781. 測定値 554.2790. [α]D20 -17.5 (c 1.48 CHCl3)
N−t−Boc−(S)−アラニル−N−(1−フェニル−2−ヒドロキシエチル)グリシル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル
【化42】

【0106】
L−アラニン−t−ブチルエステルヒドロクロリド(408mg、2.3mmol)および(5S)−4−[N−t−Boc−(S)−アラニル]−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(0.78g、2.3mmol)の無水ジオキサン(20ml)懸濁液に蒸留トリエチルアミン(0.32ml、2.3mmol)を加えた。得られた混合物は室温で5日間激しく撹拌した。水(20ml)を加え、混合物をジエチルエーテル(3×25ml)で抽出した。あわせた有機抽出層をブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物はシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリン、ジエチルエーテルおよびメタノール(10:10:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(0.67g、収率59%)。融点69.0〜70.0℃;ν(max) (KBr) 3312 (O-H), 2980 (C-H), 1738 (C=O, lactone), 1701 (C=O, carbamate), 1654 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d) 8.69 (IH, d, J 7.0 Hz, NH), 7.39 (IH, d, J 7.0 Hz, NH), 7.40-7.26 (5H, m, Ph), 5.80-5.74 (IH, m, PhCH), 5.07-5.02 (IH, m, OH), 4.69 (IH, d, J 14.0 Hz, NCH2 × 1), 4.13-4.04 (2H, m, CH3CH × 2), 3.96-3.91 (IH, m, HOCH2), 3.77-3.74 (IH, m, HOCH2), 3.63 (IH, d, J 18.0 Hz, NCH2 × 1), 1.43 (18H, s, t-butyl × 2), 1.23 (3H, d, J 13.0 Hz,CH3), 1.12 (3H, d, J 13.0 Hz,CH3); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 176.2, 172.0, 170.7, 156.1, 138.3, 129.0, 128.5, 127.5, 80.9, 78.6, 60.2, 57.5, 49.0, 46.7, 28.5, 27.9, 17.4, 16.9; m/z (CI, NH3), 494 (MH+, 8%), 476 (6%), 376 (35%), 293 (21%), 249 (46%), および 44 (100%); C25H40N3O7に対するHRMS 理論値 494.2856, 測定値 494.2872. [α]D20 +24.3 (c 1.09 CHCl3).
L−アラニン−tert−ブチルエステル
【化43】

【0107】
炭酸ナトリウム(875mg、8.25mmol、5.0当量)を脱イオン水(10ml)およびジエチルジエチルエーテル(10ml)中に混合物し、ここに、L−アラニン−tert−ブチルエステルヒドロクロリド(300mg、1.65mmol、1.0当量)を加えた。得られた溶液を、窒素雰囲気下、1時間撹拌した。水層をジエチルジエチルエーテル(3×10ml)で抽出し、あわせた有機抽出層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去することにより、無色油状の表記化合物が残った(200mg、収率84%)。ν(max) (film) 3377 (N-H), 2978 (C-H), 1729 (C=O) cm-1; δH(250 MHz, CDCl3) 3.42 (IH, q, J 7.02 Hz CH), 1.63 (2H, br, NH2), 1.46 (9H, s, (CH3)3), 1.29 (3H, d, J 7.02 Hz, CH3CH); δc (62.5 MHz, CDCl3) 177.1, 81.2, 51.0, 28.4, 21.2; [α]D20 +3.7 (c 0.97 CHCl3), (文献値 [α]D24 +2.3 (c 1.00 CHCl3)).
N−Fmoc−(S)−アラニル−N−((1R)−フェニル−2−ヒドロキシエチル)−(S)−アラニル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル
【化44】

【0108】
方法1:
二重に密封したPTFEシリンダー中で、(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(300mg、0.62mmol)およびL−アラニン−tert−ブチルエステル(135mg、0.93mmol、1.5当量)を無水ジクロロメタン(14ml)に溶解し、1900MPa(19kbar)の超高圧下に48時間置いた。加圧状態を解除した後、溶液は「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジエチルエーテルおよびジクロロメタン(4:1)で溶出させることにより、出発材料(33)(40mg、収率13%)および細かい無色針状の表記化合物を得た(122mg、収率31%)。
【0109】
方法2:
窒素雰囲気下、L−アラニン−tert−ブチルエステル(466mg、3.21mmol、3.0当量)の無水ジクロロメタン(30ml)溶液にトリメチルアルミニウム(1.87ml、3.75mmol、ヘキサン中2M、3.5当量)を加えた。15分後、(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(520mg、1.07mmol)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液を加えた。得られた溶液を室温で24時間撹拌した。水(10ml)を加えることによって反応を停止し、有機層を飽和硫酸銅溶液(20ml)で洗浄した。水層をジエチルエーテル(3×20ml)で抽出し、あわせた有機抽出層をブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物はシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジエチルエーテルおよびジクロロメタン(4:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(497mg、収率74%)。融点69〜71℃; ν(max) (KBr) 3409 (O-H), 2979 (C-H), 1733 (C=O, lactone), 1718 (C=O, carbamate), 1646 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, DOMSO-d) 7.96-7.34 (13H, m, Fmoc × 8 and Ph × 5), 7.90 (IH, d, J 7.41 Hz, NH), 6.10 (IH, s, OH), 5.41-5.33 (IH, m, PhCH), 4.86 (IH, q, J 6.76 Hz, CHCH3), 4.40-4.24 (3H, m, OCH2CH), 4.16-4.07 (2H, m, CH2OH), 3.79 (IH, q, J 6.95 Hz, CHCH3 ), 3.63(1H, q, J 6.65 Hz, CHCH3), 1.44 (3H, d, J 6.12 Hz, CHCH3), 1.40 (3H, d, J 7.19 Hz, CHCH3), 1.27 (9H, s, C(CH3)3), 0.90 (3H, d, J 7.42 Hz, CHCH3); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 173.5, 171.3, 170.3, 156.6, 144.1, 141.1, 137.6, 129.1, 128.7, 128.0, 127.6, 125.6, 121.7, 120.5, 80.2, 66.2, 60.9, 60.2, 48.7, 47.4, 46.9, 27.8, 17.4, 17.1, 14.9; m/z (CI, NH3), 775 (100%), 630 (MH+, 25%), 485 (34%), および 408 (17%);C36H44N3O7に対するHRMS 理論値 630.3170, 測定値 630.3166; [α]D20 -41.2 (c 1.08 CHCl3).
N−アセチル−N−(1−フェニル−2−ヒドロキシエチル)アラニル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル
【化45】

【0110】
二重に密封したPTFEシリンダー中で、(3S,5R)−4−N−アセチル−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(68)(220mg、0.94mmol)およびL−アラニン−tert−ブチルエステル(66)(205mg、1.42mmol、1.5当量)を無水ジクロロメタン(14ml)に溶解し、1900MPa(19kbar)の超高圧下に48時間置いた。加圧状態を解除した後、溶液は「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジエチルエーテルおよびジクロロメタン(4:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(120mg、収率34%)。融点38〜40℃;ν(max) (KBr) 3411 (O-H), 2980 (C-H), 1735 (C=O, lactone), 1646 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d) 8.06 (0.5H, d, J 6.95 Hz, NH × 0.5), 7.55-7.24 (5H, m, Ph), 6.54 (0.5H, d, J 6.38 Hz, NH × 0.5), 5.82 (0.5H, t, J 4.88 Hz, OH × 0.5), 5.14-5.06 (IH, m, PhCH), 4.83 (0.5H, t, J 6.56 Hz, OH × 0.5), 4.および CHCH3 × 1), 2.23 (1.5H, s, COCH3), 2.14 (1.5H, s, COCH3), 1.46- 1.39 (12H, m, CHCH3 × 3 および C(CH3)3 × 9), 1.19 (1.5H, d, J7.15 Hz, CHCH3 × 1.5), 0.97 (1.5H, d, J 7.23 Hz, CHCH3 × 1.5); δc(62.5 MHz, DMSO-d) 171.8, 171.7, 171.0, 170.8, 170.2, 140.0, 138.2, 129.1, 128.2, 128.0, 126.8, 80.7, 62.7, 62.5, 60.8, 56.3, 53.4, 48.8, 48.7, 27.9, 17.5, 16.9, 16.7, 15.2; m/z (CI, NH3), 379 (MH+, 70%), 361 (18%), 305 (20%), 249 (38%), 234 (100%), および 219 (40%); C20H31N2O5 に対するHRMS 理論値 379.2225, 測定値 379.2240; [α]D20 -37.0 (c 1.06 CHCl3).
N−Fmoc−(S)−アラニル−N−((1S)−フェニル−2−ヒドロキシエチル)−(R)−アラニル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル
【化46】

【0111】
窒素雰囲気下、L−アラニン−tert−ブチルエステル(251mg、1.73mmol、3.0当量)の無水ジクロロメタン(25ml)溶液にトリメチルアルミニウム(2.03ml、2.03mmol、ヘキサン中2M、3.5当量)を加えた。15分後、(3R,5S)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(280mg、0.58mmol)の無水ジクロロメタン(8ml)溶液を加えた。得られた溶液を室温で24時間撹拌した。水(7ml)を加えることによって反応を停止し、有機層を飽和硫酸銅溶液(15ml)で洗浄した。水層をジエチルエーテル(3×20ml)で抽出し、あわせた有機抽出層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:4)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(226mg、収率62%)。融点87〜88℃; ν(max) (KBr) 3410 (O-H), 2980 (C-H), 1727 (C=O), 1654 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d), 8.35 (0.5H, d, J 6.18 Hz, NH) 7.91-7.12 (13H, m, Fmoc × 8 and Ph × 5), 7.65 (0.5H, d, J 7.14 Hz, NH), 7.55 (0.5H, d, J 7.32 Hz, NH), 6.39 (0.5H, J 7.45 Hz, NH), 5.21-5.18 (0.5H, m, PhCH), 5.03-5.01 (0.5H, m, PhCH), 4.94-4.92 (0.5H, m, NHCHCH3), 4.80-4.78 (0.5H, m, NHCHCH3), 4.65-4.62 (0.5H, m, NCHCH3), 4.27-4.18 (3.5H, m, OCH2CH, および CH2OH × 0.5), 4.09-3.93 (2.5H, m, CH2OH × 1.5 および NHCHCH3), 3.62-3.60 (0.5H, m, NCHCH3 × 1), 1.44-1.36 (13.5H, s, (CH3)3 × 9, CHCH3 × 4.5), 1.23 (1.5H, d, J6.63 Hz, CHCH3), 1.13 (1.5H, d, J 7.35 Hz, CHCH3), 0.92 (1.5H, d, J 7.07 Hz, CHCH3); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 173.4, 172.9, 171.9, 171.6, 169.7, 156.0, 144.2, 144.1, 141.1, 137.2, 129.0, 128.3, 128.0, 127.7, 127.4, 127.3, 125.7, 120.5, 81.2, 80.8, 66.1, 61.6, 55.3, 53.6, 48.6, 48.3, 47.5, 47.0, 27.9, 18.5, 18.2, 17.7, 17.1, 15.4; m/z (CI, NH3), 775 (100%), 629 (M+, 36%), 457 (58%), 345 (27%), 231 (33%) および 178 (100%); C36H43N3O7 に対するHRMS 理論値 629.3092, 測定値 629.3093; [α]D20 +14.20 (c 1.15 CHCl3).
L−バリン−tert−ブチルエステル
【化47】

【0112】
炭酸ナトリウム(1.20g、9.54mmol、5.0当量)を脱イオン水(20ml)およびジエチルジエチルエーテル(20ml)中に混合物し、ここに、L−バリン−tert−ブチルエステルヒドロクロリド(400mg、1.71mmol、1.0当量)を加えた。得られた溶液は、窒素雰囲気下、2時間撹拌した。水層をジエチルジエチルエーテル(3×15ml)で抽出し、あわせた有機抽出層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去することにより、無色油状の表記化合物が残った(320mg、収率97%)。 ν(max) (film) 3393 (N-H), 2967 (C-H), 1728 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 3.16 (IH, d, J 4.79 Hz, CHNH2), 2.04-1.97 (IH, m, CH(CH3)2) 1.47 (9H, s, (CH3)3), 1.38 (2H, s, NH2), 0.97 (3H, d, J 6.88 Hz, (CH3)2CH × 3), 0.90 (3H, d, J 6.86 Hz, (CH3)2CH × 3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 175.3, 81.2, 60.7 32.6, 28.5, 19.7, 17.4; [α]D20 + 26.4(c CHCl3), (文献値 [α]D24 +25.3 (c 1.00 CHCl3)).
N−Fmoc−(S)−アラニル−N−(1−フェニル−2−ヒドロキシエチル)−(S)−アラニル−(S)−バリン−tert−ブチルエステル(74)
【化48】

【0113】
窒素雰囲気下、L−バリン−tert−ブチルエステル(161mg、0.93mmol、3.0当量)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液にトリメチルアルミニウム(0.55ml、1.09mmol、ヘキサン中2M、3.5当量)を加えた。15分後、(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(150mg、0.31mmol)の無水ジクロロメタン(5ml)溶液を加えた。得られた溶液を室温で24時間撹拌した。飽和硫酸銅(20ml)を加えることによって反応を停止し、混合物をジエチルエーテル(3×20ml)で抽出した。あわせた有機抽出層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジエチルエーテルおよびジクロロメタン(9:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(128mg、収率63%)。融点75.0〜76.0℃;ν(max) (KBr) 3411 (O-H), 2973 (C-H), 1718 (C=O), 1654 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d) 7.96 (IH, d, J 7.4 Hz, NH), 7.97-7.29 (13H, m, Fmoc × 8 and Ph × 5), 5.43 (IH, br, OH), 5.35 (IH, t, J 4.2 Hz, PhCH), 4.91 (IH, t, J 6.8 Hz, CHCH3), 4.43-4.40 (IH, m,OCH2CH), 4.31- 4.21 (2H, m, OCH2CH), 4.20-4.05 (2H, m, HOCH2), 3.79-3.71 (IH, m, CHCH(CH3)2), 3.70-3.68 (IH, m, CHCH3), 1.81-1.76 (IH, m, CH(CH3)2), 1.46-1.34 (6H, m, CHCH3 × 2) 1.31 (9H, s, t-butyl), 0.68- 0.64 (6H, m, CH(CH3)2); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 173.1, 170.1, 170.0, 156.4, 144.2, 141.1, 137.6, 129.1, 128.7, 128.3, 128.0, 127.4, 125.7, 124.5, 80.5, 66.4, 63.2, 61.2, 58.1, 53.4, 47.1, 30.1, 27.9, 18.8, 18.4, 17.8, 15.1; m/z (CI, NH3), 657 (M+, 34%), 579 (40%), 427 (59%), 363 (26%), および 244 (100%); C38H47N3O7 に対するHRMS 理論値 657.3404, 測定値 657.3398; [α]D20 -38.7 (c 0.96 CHCl3).
t−ブチル−N−[(S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]−(S)−バリニル−(S)−アラナート
【化49】

【0114】
窒素雰囲気下、L−アラニン−tert−ブチルエステル(180mg、1.24mmol、3.0当量)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液にトリメチルアルミニウム(0.56ml、1.12mmol、ヘキサン中2M、2.7当量)を加えた。15分後、(3S,5R)−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(91mg、0.41mmol)の無水ジクロロメタン(5ml)溶液を加えた。得られた溶液を室温で24時間撹拌した。飽和硫酸銅(15ml)を加えることによって反応を停止し、混合物をジエチルエーテル(3×15ml)で抽出した。あわせた有機抽出層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(9:1その後1:20)で溶出させることにより、出発材料(60mg、収率60%)および淡黄色油状の表記化合物を得た(50mg、収率33%)。 ν(max) (film) 3328 (O-H), 2977 (C-H), 1733 (C=O, ester), 1651 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.73 (IH, d, J 8.6 Hz, NH), 7.30-7.18 (5H, m, Ph), 4.54-4.78 (IH, m, CHCH3), 3.74-3.68 (IH, m, PhCH), 3.59-3.50 (2H, m, HOCH2), 2.79 (IH, d, 74.8 Hz, CHCH(CH3)2), 1.97-1.93 (IH, m, CH(CH3)2), 1.41 (9H, s, t- butyl), 1.29 (3H, d, J 8.7 Hz, CH3), 0.81 (3H, d, J 4.4 Hz, CH(CH3)2), 0.78 (3H, d, J4.4 Hz, CH(CH3)2); δc(62.5 MHz, CDCl3) 174.0, 140.8, 128.8, 128.1, 127.7, 125.9, 82.7, 67.6, 66.9, 64.6, 48.4, 31.8, 28.4, 20.0, 19.2, 18.2; m/z (CI, NH3), 365 (MH+, 52%), 339 (29%), 333 (76%), 291 (28%), 277 (100%) および 263 (10%); C20H33N2O4 に対するHRMS 理論値 365.2432, 測定値 365.2430. [α]D20 -80.2 (c 0.98 CHCl3).
カリウムN−ベンジリデニル−(S)−バリナート
【化50】

【0115】
水酸化カリウム(958mg、17.10mmol)のメタノール(15ml)溶液中にL−バリン(2.00g、17.10mmol)を加えた。得られた溶液を、窒素下で3時間撹拌した。溶媒を減圧除去した後、ベンズアルデヒド(2.61ml、25.70mmol、2.0当量)の無水ペンタン(30ml)溶液を加え、得られた混合物を、窒素下、8時間共沸混合蒸留した。沈殿物を回収し、高減圧下乾燥させることにより、白色固体の表記化合物を得た(3.85g、収率93%)。ν(max) (KBr) 2956 (C-H), 1594 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d), 8.19 (IH, s, CH=N), 7.75-7.71 (2H, m, Ph × 2), 7.44-7.40 (3H, m, Ph × 3), 3.26 (IH, d, J 7.24, CHCH(CH3)2), 2.21 (IH, m, CHCH(CH3)2), 0.86 (3H, d, J 6.72 Hz, CHCH(CH3)2 × 3), 0.79 (3H, d, J 6.72 Hz, CHCH(CH3)2 × 3); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 174.7, 159.0, 137.1, 130.3, 128.8, 128.1, 84.8, 31.4, 20.8, 19.5.
N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3(S)−イソプロピル−5(R,S)−フェニルオキサゾリジノン
【化51】

【0116】
窒素下、0℃において、カリウムN−ベンジリデニル−(S)バリナート(122mg、0.50mmol)の無水ジクロロメタン(20ml)懸濁液を撹拌しながら、Fmoc−L−アラニン酸クロリド(166mg、0.50mmol)を加えた。得られた混合物を、0℃で4時間撹拌し、さらに、室温で12時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリン:ジエチルエーテル(1:1)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(174mg、収率70%)。融点69.0〜71.5℃;ν (max) (KBr) 3400 (N-H), 2966 (C-H), 1802 (C=O, lactone), 1718 (C=O, carbamate), 1674 (C=O, amide) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d) 7.70-7.17 (13H, m, Fmoc × 8 および Ph × 5), 6.45- 6.43 (0.3 H, m, PhCH × 0.3), 5.36-5.28 (0.7 H, m, PhCH × 0.7), 4.64-4.47 (IH, m, CHCH3 × 0.7 and CHCH(CH3)2 × 0.3), 4.47-4.09 (3H, m, CHCH2), 4.01-3.82 (IH, m, CHCH3 × 0.3 および CHCH(CH3)2 × 0.7), 2.83-2.55 (0.3H, m, CH(CH3)2 × 0.3), 2.20- 2.05 (0.7H, m, CH(CH3)2 × 0.7), 1.43-1.40 (3H, m, CHCH3), 1.26-1.13 (3H, m, CH(CH3)2 × 3) 1.02-0.91 (3H, m, CH(CH3)2 × 3), 0.87-0.80 (3H, m, CHCH3); δc (62.5 MHz, CDCl3) 177.5, 171.3, 169.5, 166.1, 156.0, 144.1, 141.7, 136.3, 131.7, 130.6, 130.2, 129.1, 128.2, 127.5, 127.0, 125.5, 120.4, 91.5, 70.2, 67.5, 61.8, 49.3, 47.5, 46.2, 34.2, 31.1, 30.7, 19.3, 18.9, 18.3, 17.7, 16.7; m/z (CI, NH3), 498 (M+, 35%), 476 (47%), 463 (44%), 425 (23%), および 413 (100%); C30H30N2O5 に対するHRMS 理論値498.2155, 測定 498.2151.
t−ブチル−Fmoc−(S)−アラ−(S)−バル−(S)アラナート(79)
【化52】

【0117】
窒素雰囲気下、L−アラニン−tert−ブチルエステル(114mg、0.78mmol、3.0当量)の無水ジクロロメタン(10ml)溶液にトリメチルアルミニウム(0.46ml、0.91mmol、ヘキサン中2M、3.5当量)を加えた。15分後、N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3(S)−イソプロピル−5(R,S)−フェニル−オキサゾリジノン(130mg、0.26mmol)の無水ジクロロメタン(5ml)溶液を加えた。得られた溶液を室温で24時間撹拌した。飽和硫酸銅(20ml)を加えることによって反応を停止し、混合物をジエチルエーテル(3×20ml)で抽出した。あわせた有機抽出層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリン:ジエチルエーテル(1:9)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(76mg、収率54%)。融点153.0〜155.0℃;ν (max) (KBr) 3292 (N-H), 2974 (C-H), 1734 (C=O, ester), 1696 (C=O, carbamate), 1645 (C=O, amide) cm-1; δH(250 MHz, DMSO-d) 8.37 (0.5H, d, J 6.42 Hz, NH), 8.18 (0.5H, d, J 6.81 Hz, NH), 7.95 (0.5H, d, J 7.56 Hz, NH × 0.5), 7.63 (0.5H, d, J 7.48 Hz, NH × 0.5), 7.96-7.35 (8H, m, Fmoc), 4.31-4.13 (5H, m, CHCH3 × 2 および CHCH2), 2.03 (IH, q, J 6.57 Hz, CH(CH3)2), 1.42 (9H, s, t-butyl), 1.28-1.25 (6H, m, 2 × CH3) 0.94-0.85 (6H, m, CH(CH3)2); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 173.1, 172.6, 171.9, 170.8, 156.1, 144.1 141.1, 128.0, 127.4, 125.6, 120.5, 80.7, 66.0, 57.4, 57.0, 50.4, 48.7, 47.0, 31.5, 31.0, 30.8, 27.9, 19.5, 18.7, 18.3, 17.9, 17.4, 17.2; m/z (CI, NH3), 537 (M+, 12%), 502 (100%), 464 (50%), 426 (21%), および 414 (86%); for C30H39N3O6 に対する HRMS 理論値537.2829, 測定値 537.2836. [α]D20 -6.2 (c 0.57 CHCl3)
N−[N−Fmoc−(S)−バリニル]−3(S)−イソプロピル−5(R,S)−フェニルオキサゾリジノン
【化53】

【0118】
窒素下、0℃において、カリウムN−ベンジリデニル−(S)バリナート(123mg、0.46mmol)の無水ジクロロメタン(20ml)懸濁液を撹拌しながら、Fmoc−L−バリン酸クロリド(164mg、0.46mmol)を加えた。得られた混合物を、0℃で4時間撹拌し、さらに、室温で12時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリン:ジエチルエーテル(3:2)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(183mg、収率75%)。融点76.0〜78.0℃;ν (max) (KBr) 3326 (N-H), 2966 (C-H), 1802 (C=O, lactone), 1722 (C=O, carbamate), 1663 (C=O, amide) cm-1H (250 MHz, DMSO-d) 7.81-7.11 (14H, m, NH × 1, Fmoc × 8 and Ph × 5), 6.4 (0.5 H, s, PhCH × 0.5), 4.98 (0.5 H, s, PhCH × 0.5), 4.48-4.76 (5H, m, CHCH(CH3)2 × 2 および CHCH2 × 3), 2.57-2.54 (IH, m, CH(CH3)2), 2.24-2.10 (IH, m, CH(CH3)2), 1.28-0.63 (12H, m, CH(CH3)2 × 2); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 170.3, 170, 169.7, 156.9, 144.1, 141.0, 137.5, 130.9, 129.9, 129.5, 128.5, 128.0, 127.7, 127.4, 125.8, 120.5, 90.6, 66.2 61.3, 60.9, 58.3, 46.9, 34.7, 32.6, 30.8, 30.3, 19.7, 18.7, 18.3, 17.2, 16.7, 16.4; m/z (CI, NH3), 526 (M+, 10%), 331 (40%), 230 (7%) および 178 (100%); C32H34N2O5に対するHRMS 理論値 526.2459, 測定値 526.2466.
トリ−L−アラニン
【化54】

【0119】
窒素雰囲気下、−78℃において、N−Fmoc−(S)−アラニル−N−((1R)−フェニル−2−ヒドロキシエチル)−(S)−アラニル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル(235mg、0.37mmol)およびtert−ブタノール(0.12ml、1.20mmol、3.0当量)を液体アンモニア(15ml)および無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液に、リチウム(23mg、3.70mmol、10.0当量)を加えた。得られた溶液を、液の青色が消失するまで撹拌し、その後室温に戻し、液体アンモニアを全て蒸発させた。水(15ml)およびジエチルエーテル(10ml)の混合物を加え、水層をジエチルエーテル(3×10ml)で抽出した。水を減圧除去し、得られた粗生成物を、最初に酸性イオン交換クロマトグラフィーにかけ、次に、シリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、メタノールおよび水(7:3)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た(71mg、収率84%)。ν(max) (KBr) 3276 (N-H), 2985 (C-H), 1645 (C=O), 1592 (C=O), 1531 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, D2O), 4.53 (IH, q, J 9.37, CH), 4.03 (2H, q, J 7.22 Hz, CH × 2), 1.23 (3H, d, J 7.14, CH3), 1.09 (3H, d, J 7.21, CH3), 1.02 (3H, d, J 7.24 Hz, CH3); δc (62.5 MHz, D2O) 180.1, 173.9, 170.9, 51.3, 50.1, 49.2, 17.7, 16.9, 16.7; m/z (CI, NH3), 231 (M+, 40%), 230 (100%), および 228 (35%);C9H17N3O4に対する HRMS 理論値 231.1215 測定値 231.1209; [α]D 20 -72.8 (c 1.01 H2O) (市販品 [α]D 20 -73.2 (c 1.02 H2O)).
(5S)−3−メチル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(35)61
【化55】

【0120】
(S)−2−フェニルグリシノール(3.00g、21.9mmol、1.0当量)(34)およびピルビン酸エチル(2.67ml、24.1mmol、1.1当量)を、トリフルオロエタノール(50ml)中、活性化4'モレキュラーシーブ(8.00g)を加えて24時間環流させた。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(7:3)で溶出させることによって精製し、白色固体の表記化合物を得た(1.83g、収率44%)。融点70.0〜71.0℃(文献値71.0〜72.0℃)64;ν(max) (KBr) 3007 (C-H), 1735 (C=O), 1640 (C=N) cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.45-7.32 (5H, m, Ph), 4.88-4.81 (IH, m, PhCH), 4.56 (IH, dd, J 4.49 Hz, J 9.48 Hz, 6β-H), 4.25 (IH, dd J 13.01 Hz, J 14.99 Hz, 6α-H), 2.41 (3H, s, CH3); δc (62.5 MHz, CDCl3) 160.7, 155.9, 137.2, 129.4, 128.7, 127.5, 71.9, 60.1, 22.2; m/z (CI, NH3), 189 (M+, 25%), 159 (12%), 130 (24%), 104 (100%), 90 (21%), および 78 (6%); C11H11NO2に対するHRMS 理論値 189.0787. 測定値 189.0782. [α]D20 +253.0 (c 0.98 CHCl3) (鏡像異性体に関する文献値 [α]D20 -237.1 (c 1.11 CHCl3))61.
(3R,5S)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(36)61
【化56】

【0121】
窒素雰囲気下、 (5S)−3−メチル−5−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(35)(1.7g、9.0mmol、1.0当量)の無水ジクロロメタン(60ml)溶液にPtO2(170mg、0.1当量)を加えた。混合物を連続的に脱気し、水素を3回通した後、水素雰囲気下で5時間撹拌した。「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、ジクロロメタン、ジエチルジエチルエーテルおよびヘキサンから再結晶させることによって精製し、無色針状の表記化合物を得た(1.26g、収率74%)。融点81.0〜82.0℃ (文献値融点 81.0-82.0 ℃)61; ν(max) (KBr) 3314 (N-H), 2981 (C-H), 1736 (C=O), cm-1; δH (250 MHz, CDCl3) 7.43-7.26 (5H, m, Ph),; 4.42-4.23 (3H, m, CHCH2), 3.88 (IH, q, J 6.76 Hz, CHCH3), 1.80 (IH, br, NH), 1.50 (3H, d, J 6.76 Hz, CH3); δc(62.5 MHz, CDCl3) 170.7, 138.1, 129.3, 129.1, 127.5, 75.4, 58.2, 55.4, 19.0; m/z (CI, NH3), 192 (MH+, 30%), 147 (68%), 132 (64%), 104 (100%), および 91 (10%);C11H13NO2に対するHRMS 理論値192.1025 測定値 192.1019. [α]D20 +88.8(c 0.96 CHCl3)(文献値 [α]D20 +92.3 (c 0.84 CHCl3))61.
(3R,5S)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(37)
【化57】

【0122】
ジクロロメタンと水の1:1(40ml)溶液中、(3R,5S)−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(36)(500mg、2.62mmol)およびNa2CO3(1.40g、13.3mmol、5.0当量)の混合物を激しく撹拌し、ここにN−Fmoc−L−アラニン酸クロリド(1.04g、3.14mmol、1.2当量)のジクロロメタン(10ml)溶液を5分以上かけて滴下した。得られた溶液を2時間撹拌した。水層をジクロロメタン(3×15ml)で抽出した。あわせた抽出液を、飽和Na2CO3(50ml)、水、(2×30ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:4)で精製することによって細かい無色針状の表記化合物を得た(1.02g、収率80%)。融点87〜88℃;ν(max) (KBr) 3323 (N-H), 2982 (C-H), 1761 (C=O, lactone), 1717 (C=O, carbamate), 1656 (C=O, amide) ; cm-1δH (400 MHz, DMSO-D, 110 ℃) 7.84- 7.29 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5), 7.08 (IH, br, NH), 5.54 (IH, t, j 5.88 Hz, PhCH), 4.96 (IH, q, J 7.11 Hz, NCHCH3); 4.68-4.60 (2H, m, PhCHCH2), 4.41- 4.32 (3H, m, CHCH3NH × 1, OCH2CH × 2), 4.22 (IH, t, J 6.72 Hz OCH2CH), 1.45 (3H, d, J7.15 Hz, NCHCH3), 1.08 (3H, d, J 6.71 Hz, CHCH3NH); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 174.0, 172.8, 170.4, 169.6, 156.3, 144.1, 141.1, 137.7, 129.4, 128.7, 128.0, 127.4, 127.3, 127.1, 125.6, 120.5, 68.8, 66.0, 55.5, 55.3, 52.2, 51.4, 50.0, 47.2, 20.5, 18.6, 17.7, 17.1; m/z(C.I., NH3), 485 (MH+, 12%), 431 (8%), 381 (7%), 281 (15%) および 149 (100%);C29H29N2O5に対するHRMS 理論値 485.2069. 測定値 485.2076; [α]D20 +22.2 (c 0.94 CHCl3).
N−Fmoc−(S)−アラニル−N−((1S)−フェニル−2−ヒドロキシエチル)−(R)−アラニル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル(71)48
【化58】

【0123】
窒素雰囲気下、L−アラニン−tert−ブチルエステル(66)(251mg、1.73mmol、3.0当量)の無水ジクロロメタン(25ml)溶液にトリメチルアルミニウム(2.03ml、2.03mmol、ヘキサン中2M、3.5当量)を加えた。15分後、(3R,5S)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(37)(280mg、0.58mmol)の無水ジクロロメタン(8ml)溶液を加えた。得られた溶液を室温で24時間撹拌した。水(7ml)を加えて反応を停止し、有機層を飽和硫酸銅(15ml)で洗浄した。水層をジエチルエーテル(3×20ml)で抽出し、あわせた有機層をMgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧除去し、粗生成物をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ガソリンおよびジエチルエーテル(1:4)で精製することによって細かい無色針状の表記化合物を得た(226mg、収率62%)。融点87〜88℃;ν(max) (KBr) 3410 (O-H), 2980 (C-H), 1727 (C=O), 1654 (C=O) cm-1; δH(250 MHz, DMSO-d), 8.35 (0.5H, d, J 6.18 Hz, NH) 7.91-7.12 (13H, m, Fmoc × 8 and Ph × 5), 7.65 (0.5H, d, J 7.14 Hz, NH), 7.55 (0.5H, d, J 7.32 Hz, NH), 6.39 (0.5H, d, J 7.45 Hz, NH), 5.21-5.18 (0.5H, m, PhCH), 5.03-5.01 (0.5H, m, PhCH), 4.94-4.92 (0.5H, m, NHCHCH3), 4.80-4.78 (0.5H, m, NHCHCH3), 4.65-4.62 (0.5H, m, NCHCH3), 4.27-4.18 (3.5H, m, OCH2CH, および CH2OH × 0.5), 4.09-3.93 (2.5H, m, CH2OH × 1.5 および NHCHCH3), 3.62-3.60 (0.5H, m, NCHCH3 × 1), 1.44-1.36 (13.5H, s, (CH3)3 × 9, CHCH3 × 4.5), 1.23 (1.5H, d, J 6.63 Hz, CHCH3), 1.13 (1.5H, d, J 7.35 Hz, CHCH3), 0.92 (1.5H, d, J7.07 Hz, CHCH3); δc (62.5 MHz, DMSO-d) 173.4, 172.9, 171.9, 171.6, 169.7, 156.0, 144.2, 144.1, 141.1, 137.2, 129.0, 128.3, 128.0, 127.7, 127.4, 127.3, 125.7, 120.5, 81.2, 80.8, 66.1, 61.6, 55.3, 53.6, 48.6, 48.3, 47.5, 47.0, 27.9, 18.5, 18.2, 17.7, 17.1, 15.4; m/z(CI, NH3), 775 (100%), 629 (M+, 36%), 457 (58%), 345 (27%), 231 (33%) および 178 (100%);C36H43N3O7に対するHRMS 理論値 629.3092, 測定値 629.3093; [α]D20 +14.20 (c 1.15 CHCl3).
LDL−アラニン
【化59】

【0124】
窒素雰囲気下、−78℃において、N−Fmoc−(S)−アラニル−N−((1S)−フェニル−2−ヒドロキシエチル)−(R)−アラニル−(S)−アラニン−tert−ブチルエステル(235mg、0.37mmol)およびtert−ブタノール(0.12ml、1.20mmol、3.0当量)を液体アンモニア(15ml)および無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液に、リチウム(23mg、3.70mmol、10.0当量)を加えた。得られた溶液を、液の青色が消失するまで撹拌し、その後室温に戻し、液体アンモニアを全て蒸発させた。水(15ml)およびジエチルエーテル(10ml)の混合物を加え、水層をジエチルエーテル(3×10ml)で抽出した。水を減圧除去し、得られた粗生成物を、最初に酸性イオン交換クロマトグラフィーで精製し、次に、シリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、メタノールおよび水(7:3)で溶出させることによって精製し、細かい無色針状の表記化合物を得た。
【化60】

【0125】
窒素雰囲気下、(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(33)(1.00g、2.06mmol、1.0当量)の無水テトラヒドロフラン(40ml)溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデカ−7−エン(0.03ml、0.21mmol、0.1当量)を加えた。得られた溶液を室温で3.5時間撹拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.40ml、2.26mmol、1.1当量)、N−Fmoc−L−アラニン(0.76g、2.46mmol、1.2当量)およびブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(1.21g、2.46mmol、1.2当量)を加えた。得られた溶液をさらに18時間撹拌したところ、この間に白色沈殿物が生じた。混合物を、「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジクロロメタンおよびジエチルエーテル(3:7)で溶出させることによって精製し、白色粉末の表記化合物を得た(0.96g、収率86%)。融点100.0〜101.0℃ ;ν(max) (KBr) 3311 (N-H), 2981 (C-H), 1741 (C=O), 1718 (C=O), 1647 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d) 7.79 (IH, J 6.70 Hz, NH), 7.68-7.07 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5), 7.32 (IH, J 7.85 Hz, NH), 5.27 (IH, br, PhCH), 5.16-4.96 (IH, m, PhCHCH2 × 1), 5.16-4.96 (IH, m, PhCHCH2 × 1), 4.64-4.62 (IH, m, CHCH3), 4.55-4.51 (IH, m, CHCH3), 4.35-4.32 (IH, m, OCH2CH), 4.00 (2H, m, OCH2CH), 3.89- 3.80 (IH, m, CHCH3), 0.98 (3H, d, J 3.92 Hz, CHCH3), 0.93 (3H, br, CHCH3), 0.62 (3H, d, J 6.89 Hz, CHCH3); δc(62.5 MHz, DMSO-d) 172.8, 171.6, 170.0, 156.0, 144.2, 141.1, 136.3, 128.9, 128.3, 128.0, 127.4, 126.8, 125.7, 120.4, 69.1, 66.0, 52.9, 50.6, 49.9, 47.0, 30.8, 20.9, 18.5, 17.8; m/z (CI, NH3), 231 (M+, 40%), 230 (100%), および 228 (35%);C32H33N3O6に対するHRMS 理論値 555.2369 測定値 231.1209; [α]D20 -31.3 (c 0.90 CHCl3).
【化61】

【0126】
窒素雰囲気下、(3S,5R)−N−[N−Fmoc−(S)−アラニル−(S)−アラニン]−3−メチル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,4−オキサジン−2−オン(49)(114mg、0.206mmol、1.0当量)の無水テトラヒドロフラン(5ml)溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデカ−7−エン(0.015ml、0.103mmol、0.5当量)を加えた。得られた溶液を室温で5時間撹拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.026ml、0.144mmol、0.7当量)、N−Fmoc−L−アラニン(76mg、0.246mmol、1.2当量)およびブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.121g、0.246mmol、1.2当量)を加えた。得られた溶液をさらに19時間撹拌したところ、この間に白色沈殿物が生じた。混合物は、「セライト」の短いパッドを通して濾過し、減圧下、ろ液から溶媒を除去することによって粗生成物を得、これをシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけ、ジクロロメタンおよびアセトン(7:3)で溶出させることによって精製し、白色粉末の表記化合物を得た(89mg、収率68%)。融点118.0〜120.0℃; ν(max) (KBr) 3316 (N-H), 2985 (C-H), 1738 (C=O), 1708 (C=O), 1647 (C=O) cm-1; δH (250 MHz, DMSO-d 8.00 (IH, d, J7.28 Hz, NH), 7.91-7.30 (13H, m, Fmoc × 8, Ph × 5), 7.52 (IH, d, J7.58 Hz, NH), 5.48 (IH, br, PhCH), 5.32-5.02 (IH, m, PhCHCH2), 4.88-4.85 (IH, m, CHCH3), 4.74-4.69 (IH, m, CHCH3), 4.56 (IH, br, OCH2CH), 4.26-4.27 (2H, m, OCH2CH), 4.03 (IH, t, J7.25 Hz, CHCH3), 3.63-3.58 (0.5H, m, CHCH3), 3.14-3.12 (0.5H, m, CHCH3), 1.26-0.97 (12H, m, CHCH3 × 4); δc(62.5 MHz, DMSO-d) 172.5, 172.2, 171.6, 170.0, 156.0, 144.2, 141.1, 136.5, 128.9, 128.3, 128.0, 127.4, 126.7, 125.7, 120.5, 65.9, 56.2, 53.9, 53.0, 47.9, 46.0, 42.2, 32.5, 31.0, 29.9, 18.5, 17.8, 17.1, 12.9; m/z (CI, NH3),; C35H38N4O7に対するHRMS 理論値 626.2741 測定値; [α]D20 -27.2 (c 1.04 acetone).
本発明に従って調製したトリ−L−アラニンに関して得られた1H−NMRデータと市販のトリ−L−アラニンとの比較
合成トリ−L−アラニン

【0127】
市販サンプル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−XC(O)−を有する受容体分子を求核基と置換する工程を有してなる求核置換方法であって、ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、その際、−XC(O)−における前記求核置換がラセミ化を起こさず進行するように、前記受容体分子が環化され、ここで、R8がC1-6アルキル、C6-12アリールもしくは水素であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記受容体分子が環化アミノ酸またはそれらの誘導体を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記求核置換がエピマー化を起こさずに進行することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記受容体分子が、構造式(II)
【化1】

で表される化合物であって、
ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8はC1-6アルキル、C6-12アリールもしくは水素であり;
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化2】

もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であって;
ここで、R1'は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;ここで、YがNR8である場合には、R8とR1'は一緒に4〜7員環を形成でき、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されて差し支えなく、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であってよく、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R4'は、カルボキシル保護基または水素であり;
R9およびR10は、独立して、水素、またはR1'で定義される基であり;
あるいは、R9とR10が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
Yは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8 は上に定義したとおりであり;
R5は、C6-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであり、それらは、OR13、SR13、N(R13)、CO2R13、CON(R13)2フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されているか、または構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカーであり;
nは、0、1、2または3であり、mは、1〜100から選択される値である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記受容体分子のカルボキシ末端伸長であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
構造式(I)
【化3】

で表される化合物の製造方法であって、
構造式(II)
【化4】

で表される化合物に、構造式(III)
HY−R7(III)
で表される化合物を反応させる工程を有し、
ここで、Xは、O、SまたはNR8であって、R8は請求項3に定義したとおりであり;
Yは、O、SまたはNHであり;
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化5】

もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であり;
ここで、R1'は、水素または以下のR1の定義とおりであり;
Yは上に定義したとおりであり、R4'は、以下のR4の定義とおりであり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R9およびR10は、独立して、水素またはR1'で定義される基であり;
あるいは、R9とR10が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
R5は、C5-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであって、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、あるいは構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカーであり;
R6は、水素または以下の基であり、
【化6】

ここで、R5およびXは上に定義したとおりであり;
R7は、以下の基、
【化7】

または、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、
あるいは、R7およびYが一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、Yに加えて、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
ここで、R1は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R4は、カルボキシル保護基または水素であり;
nは、0、1、2または3であり、mは、1〜100から選択される値であり;
n=0の場合にはR6はHである
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
R1およびR2が、独立して、OH、SH、CO2H、CONH2、フェニル、イミダゾリル、インドリルもしくはヒドロキシフェニルで随意に置換されたC1アルキル;OH、CO2H、CONH2もしくはSCH3で随意に置換されたC2アルキル;またはNH2で随意に置換されたC4アルキルから選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
構造式(II)で表される化合物の製造方法であって、
【化8】

構造式(IV)
【化9】

で表される化合物に、構造式(V)
【化10】

で表される化合物を反応させることによる方法であり、
ここで、Zは、ペプチド結合形成に寄与できる任意の置換基であって、好ましくは、水酸化物、ハロゲン化物もしくはアジドであり、また、R2、R3、R5、Xおよびnは、請求項3、6または7のいずれか1項に定義したとおりである
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
構造式(VI)で表される化合物の製造方法であって、
【化11】

構造式(I)
【化12】

で表される化合物からR6を除去することによる方法であり、ここで、X、Y、R2、R3、R6およびR7は、請求項3または6〜8のいずれか1項に定義したとおりである
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
R5がリンカーであり、かつ、前記方法を固相で行なうことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記方法を溶液中で行なうことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
構造式(II)で表される化合物であって、
【化13】

ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8は、C1-6アルキル、C6-12アリール、または水素であり;
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化14】

もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であって;
このとき、R1'は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
ここで、YがNR8である場合には、R8とR1'が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R9およびR10は、独立して、水素またはR1'で定義される基であり;
あるいは、R9とR10が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
R1'は、独立して、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾイル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されたC1-10分岐鎖または直鎖アルキルから選択され、R4'は、カルボキシル保護基または水素であり、nは0、1、2もしくは3であり、mは、1〜100であり;
R5は、構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカー、あるいは、C6-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであって、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
ここで、X=OかつR5がフェニルである場合には、nは0でも1でもない
ことを特徴とする化合物。
【請求項13】
構造式(II)で表される化合物
【化15】

の不斉合成における利用方法であって、ここで、Xは、O、SまたはNR8であり、このとき、R8は、C1-6アルキル、C6-12アリールまたは水素であり;
R2は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
R3は、R2で定義される基、または、水素、
もしくは以下の基
【化16】

もしくは−[Y-C(=R1')−C(O)]m−;
もしくは−C(R1')(R9)−N(R10)(R11);
もしくは−C(=R1')−N(R10)(R11)であって;
このとき、R1'は、独立して、C1-10分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C5-12ヘテロアリール基、またはC6-12アリール基から選択され、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、SO2R12、SO3R12、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されており;
ここで、YがNR8である場合には、R8とR1'が一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、前記環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C6-12アリールまたはN(R13)2であり、ここで、R13は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、C1-6アルキルまたはC6-12アリールであり;
R9およびR10は、独立して、水素もしくはR1で定義される基であり、
あるいは、R9およびR10が、一緒に4〜7員環を形成して差し支えなく、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、C1-10アルキルもしくはC6-12アリールで随意に置換されており、このとき、該環は完全飽和、部分的に不飽和、もしくは不飽和であり、ここで該環は、O、SもしくはNから選択されるひとつまたはそれ以上のヘテロ原子を有する場合があり;
R11は、水素、または、好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、2−(4−ビフェニリル)−イソプロポキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、トリフェニルメチル基および/または2−ニトロフェニルスルフェニル基から選択されるアミノ保護基であり;
R1'は、独立して、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾイル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されたC1-10分岐鎖または直鎖アルキルから選択され、R4'は、カルボキシル保護基または水素であり、nは0、1、2もしくは3であり、mは、1〜100であり;
R5は、構造式(II)が樹脂に結合するためのリンカー、あるいは、C6-12アリール、C5-12ヘテロアルキルまたはC1-8分岐鎖もしくは直鎖アルキルであって、それらは、OR13、SR13、N(R13)2、CO2R13、CON(R13)2、フェニル、イミダゾリル、インドリル、ヒドロキシフェニルもしくはNR13C(=NR13)N(R13)2で随意に置換されている
ことを特徴とする利用方法。
【請求項14】
前記不斉合成が、カルボキシ末端伸長によるペプチドまたはそれらの誘導体の合成であることを特徴とする請求項13記載の利用方法。
【請求項15】
構造式(VII)で表される化合物であって、
【化17】

ここで、mは1〜50の整数であり、また、R1'、R2、R5、R9、R10、R11、Xおよびnは、請求項3および6〜8のいずれか1項に定義したとおりである
ことを特徴とする化合物。
【請求項16】
構造式(VIII)で表される化合物であって、
【化18】

ここで、R1'、R2、R5、R9、X、mおよびnは、請求項3および6〜8のいずれか1項に定義したとおりである
ことを特徴とする化合物。
【請求項17】
構造式(XI)で表される化合物であって、
【化19】

ここで、R1'、R2、R9、Xおよびmは、請求項16に定義したとおりである
ことを特徴とする化合物。

【公表番号】特表2009−507906(P2009−507906A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530591(P2008−530591)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003797
【国際公開番号】WO2007/031698
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(508078189)ユニヴァーシティー オブ リーディング (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF READING
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】