説明

ペプチドホルモンをコードするヒト肥満感受性遺伝子及びその使用

本発明は、肥満および関連した障害の診断および予防のために使用することができるヒト肥満感受性遺伝子の同定を開示する。本発明は、更に具体的には、染色体17上のPPY、PYYおよびGIP遺伝子およびそのある種の対立遺伝子が、肥満に対する感受性に関係していることを開示する。本発明は、PPY、PYYおよびGIP遺伝子および発現産物における特定の突然変異、ならびにこれらの突然変異に基づく診断ツールおよびキットに関する。本発明は、低アルファリポタンパク血症、家族性結合性高脂血症、インスリン抵抗性症候群Xまたは多重代謝障害、冠動脈疾患、糖尿病及び関連合併症および異常脂血症を含むが、それらに限定されるわけではない、冠動脈性心疾患及び代謝障害の素因の診断又は、該冠動脈性心疾患及び代謝障害からの保護の診断、該冠動脈性心疾患及び代謝障害の検出、予防および/または処置において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に遺伝学及び医学の分野に関する。
【0002】
発明の背景
現代の工業化された国の全健康コストの約3〜8%は、現在肥満の直接コストによるものである(Wolf,1996)。ドイツでは、肥満及共存症に関係した(直接及び間接の両方)全コストは、1995年には210億ドイツマルク(29.4USドル)と評価された(Schneider,1996)。2030年までに、これらのコストは肥満の普及が更に増加しないとしても、50%上昇するであろう。
【0003】
肥満は、健康が損なわれうる程度に脂肪組織における異常な又は過剰な脂肪蓄積の状態としてしばしば簡単に定義される。基礎をなす疾患は望ましくない正のエネルギーバランス及び重量増加のプロセスである。腹部脂肪分布は、女性的脂肪分布よりも高い健康的リスクと関連している。
【0004】
ボデイ.マス.インデックス(BMI;kg/cm)は、粗いとはいえ、最も有用な集団レベルの肥満の目安を与える。それは、集団の肥満の普及及びそれに関連した危険を評価するのに使用することができる。しかしながら、BMIは、身体の組成又は身体脂肪分布を考慮していない(WHO,1998)。
【0005】
【表1】

【0006】
肥満は、肥満及び重度の肥満の定義のためのカットオフとして85th及び95thBMIパーセンタイルを使用しても定義された。BMIパーセンタイルは、いくつかの母集団内で計算されている;German National Nutrition Surveyに基づいてドイツ人口に対するパーセンタイルは1994年以来入手可能であった(Heberand et al.,1994,1996)。異なる体重クラスのWHO分類は成人のみに適用することができるので、子供及び青年期の個体の肥満の定義についてBMIパーセンタイルを指すことが普通になった。
【0007】
肥満の普及(prevalence)の最近の上昇は、いくつかの国の健康システムにとって大きな関心のある問題である。Center of Disease Control and Prevention(CDC)の報告に従えば、合衆国では過去20年間に肥満が劇的に増加した。1985年には、少数の州のみがCDCs Behavioral Risk Factor Surveillance System(BRFSS)に参加していて、肥満データを提供していた。1991年に、4つの州が15〜19%の肥満普及率を報告しておりそして20%又は20%より高い率を報告する州はなかった。2002年には、20の州が15〜19%の肥満普及率を報告しており;29の州が20〜24%の率を有し、そして1つの州は25%を越える率を報告する。同様な傾向がヨーロッパ及び南アメリカの他の国々でも観察された。
【0008】
子供及び青年期の個体は、この傾向から免がれなかった。それどころか、USAでの増加は、実質的であった。従って、1960年代と1990年との間に体重超過及び肥満は6〜17歳において劇的に増加した。この増分は、カットオフとして85thBMIセンタイル(1960年代に計算された)を使用して40%の相対的増加になりそして95thセンタイルの使用により100%の相対的増加になる。1985年と1995年の間に極端な肥満のため入院患者として処置されたドイツの子供及び青年の横断研究では、この10年間の期間にわたり殆ど2kg/mの平均BMIの有意な増加が報告された。この極端なグループ内では、増分は最高のBMI範囲において最も顕著であった。
【0009】
肥満の普及のこの増加の基礎となる機構は知られていない。環境的因子が基礎をなす原因として普通に引き合いに出された。基本的には、増加したカロリー摂取及び減少したレベルの身体活動の両方が検討された。英国では、肥満率の増加は、後者の機構に帰された。したがって、この国では、平均カロリー摂取はここ20年間に幾分減少すらしたが、これに対してテレビジョンを観て過ごす時間の増加及び家庭当りの車の平均数から生じる間接の証拠は、関係のある原因因子として減少したレベルの身体活動を指摘している。
【0010】
遺伝的因子は寄与する原因として以前は考えられなかった。全く反対に、増加した率の肥満がここ20年間に観察されたという事実は、遺伝的因子が原因となることはできないという証拠とみなされてきた。しかしながら、選択的配偶(assortative mating)の率の増加は、観察された現象への遺伝的寄与を非常によく形成することができるということが提唱された。この仮説は、肥満した個体の烙印を押すことはむしろ最近の社会現象を表し、従って、常に増加した率の選択的配偶をもたらしたということを示唆する証拠に基づいている。結果として、子孫は、肥満の基礎をなす加算的及び非加算的遺伝因子のより高い負荷を有している。実際に、極端に肥満した子供及び青年期の個体の両親の間の格別に高い率の(推定された)選択的配偶が観察された。
【0011】
肥満と関連した潜在的に生命を脅かす慢性の健康問題は下記の主な分野に入る:
1)高血圧、慢性心臓疾患及び発作を含む心臓血管問題、2)インスリン抵抗性と関連した状態、即ち、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、3)あるタイプの癌、主としてホルモンが関係した癌及び大腸癌、ならびに4)胆嚢疾患。肥満と関連した他の問題は、呼吸困難、慢性筋骨格問題、皮膚問題および無生殖性を含む(WHO,1998)。
【0012】
これらの障害を処置するための最近利用可能な主なストラテジーは、食事制限、身体活動の増加、薬理学的アプローチ及び外科的アプローチを含む。成人では、伝統的介入を使用する長期間の体重損失は格別である。現在の薬理学的介入は、典型的には、5〜15キログラムの体重損失を誘導し;もし薬剤処理が中断されるならば、再び始まる重量増加が続いて起こる。外科処置は比較的成功しておりそして極端な肥満および/または重い医学的合併症を有する患者のために取ってある。
【0013】
最近、レプチン欠失突然変異が検出された10歳の甚だしく肥満した少女が組換えレプチンで処置されて成功した。これは、彼女の病的な肥満の基礎をなす突然変異の検出を治療的に生かした最初の個体である。
【0014】
いくつかの双生児の研究が行われてBMIの遺伝性が評価され、そのいくらかは、1000組以上の双生児ペアーを包含していた。結果は、非常に首尾一貫していた:一卵性双子間のペアー内相関は、年齢及び性とは無関係に、典型的には0.6〜0.8であった。1つの研究では、一卵性双生子及び二卵性双生子についての相関は、双生子が離れて育てられたか又は一緒に育てられたかとは無関係に、基本的に同じであった。BMIの遺伝性は、0.7と評価され;非共有環境因子は可変性の残りの30%を説明した。驚くべきことに、共有された環境因子は、可変性の実質的な割合を説明しなかった。過度のカロリー及び不足カロリーの栄養は、一卵性双生子ペアーの両メンバー間で同様な程度の体重増加または損失をもたらしたが、これは、体重に対するエネルギー利用性の環境的に誘導された変動の効果を遺伝的因子が調節することを示す。過食及び過小食した際の代謝反応および体脂肪分布の変化も遺伝的制御下にある(Hebebrand et al.,1998に概説されている)。
【0015】
多数の養子関係の研究は、養子のBMIはその生物学的両親のBMIと相関しておりそして養子両親のBMIと相関していないことを示した。家族の研究に依存して、同胞(sibs)のBMI間の相関は0.2〜0.4であった。両親−子相関は、典型的には僅かに低かった。分離分析(segregation analysis)は、主要な劣性遺伝効果を繰り返して示唆した。これらの分析に基づいて、サンプルサイズの計算は、一致及び不一致アプローチの両方に基づいて行われた。
【0016】
予想とは対照的に、一致同胞ペアーアプローチは優れており;同じパワーを達成するのにより少ない数の家族が必要であった。
【0017】
極端に肥満した若いインデックスの両親、母または父または両方に基づいた家族研究は、大多数の家族においてBMI>90thデシルを有する。BMI>95thセンタイルを有するインデツクスの患者に基づいて、それぞれの家族の約20%は、BMI>90thセンタイルを有する同胞を有する。
【0018】
結論として、環境因子は、個体を多少肥満の発生に感受性とする特異的遺伝子型と相互作用することは明らかである。更に、主要な遺伝子が検出されたという事実にもかかわらず、スペクトルがこのような主要な遺伝子からほんの僅かな影響を有する遺伝子に及ぶ
ことを考慮することが必要である。
【0019】
1994年の終わりにおけるレプチン遺伝子の発見(Zhang et al.,1994)に続いて、食欲及び体重調節の基礎をなす調節システムを明かすための科学的努力が実質的に爆発した。それは最近最も早く成長する生物医学的分野である。この著しい増加は、明らかな臨床的興味により、ヒト、げっ歯類及び他の哺乳動物の肥満に基本的にすべて関係している大規模な分子遺伝的活動ももたらした(Hebebrand et al.,1998)。
【0020】
この点で、突然変異が現在知られている単一遺伝子形の肥満をもたらした多くの遺伝子がげっ歯類においてクローニングされた。これらの突然変異の全身性結果は、最近分析されている。これらのモデルは、体重調節に関与する複雑な調節システムへの洞察を与え、その最ももよく知られているのはレプチン及びその受容体を含む。
【0021】
マウスでは、しかしブタでも、体重調節に最も関係がありそうな15以上の量的形質遺伝子座(quantitative trait loci)(QTL)が同定された(Chagnon et al.,2003)。
【0022】
ヒトでは、4つの非常にまれな常染色体劣性形態の肥満が1997年に記載された。レプチン、レプチン受容体、プロホルモンコンベルターゼ1及びプロ−オピオメラノコルチン(POMC)をコードする遺伝子の突然変異が、過食と関連した早期開始型のはなはだしい肥満を引き起こすことが示された。異なる追加の臨床的(例えば、赤毛、原発性無月経)および/または内分泌学的異常(例えば、顕著に変わった血清レプチンレベル、ACTH分泌の欠如)は、それぞれの候補遺伝子の位置を正確に示す(pinpoint)。単一遺伝子動物モデル及びヒト単一遺伝子形態の両方とも、体重調節の基礎をなす複雑なシステムへの新規な洞察をもたらした。
【0023】
極めて最近では、ヒトにおける第1常染色体優性形態の肥満が記載された。メラノコルチン−4−受容体遺伝子(MC4R)内の2つの異なる突然変異は、これらの変異体に対するヘテロ接合性発端者において極端な肥満をもたらすことが観察された。上記した発見とは対照的に、これらの突然変異は、極端な肥満以外の容易に明らかな表現型異常を包含しない(Vaisse et al.,1998; Yeo et al.,1998)。興味深いことに、両グループとも相対的に小さな研究グループ(n=63およびn=43)における系統的スクリーンにより突然変異を検出した。
【0024】
Hinney et al.,(1999)は、総計492人の肥満した子供および青年期の個体においてMC4Rをスクリーニングした。概して、ハプロ不全(haplo−insufficiency)をもたらす2つの異なる突然変異を有する4つの個体が検出された。1つはYeo et al.,(1998)により以前に観察された突然変異と同じであった。3つの個体で検出された他の突然変異は、受容体の細胞外ドメインにおける停止突然変異を誘導した。約1%の極端に肥満した個体は、MC4Rにおけるハプロ不全突然変異を有する。2つの形態のハプロ不全に加えて、Hinney等(1999)は、保存性及び非保存性のアミノ酸交換の両方をもたらす追加の突然変異も検出した。興味深いことに、これらの突然変異は、主として肥満研究グループにおいて観察された。これらの突然変異の機能的関与は現在未知である。
【0025】
MC4R突然変異を有する個体の同定は、可能な薬理学的介入を考慮に入れると興味深い。従って、すべてのメラノコルチンのコア配列を表す副腎皮質刺激ホルモン4〜10(ACTH4〜10)の鼻内適用は健常な対照において減少した体重、体脂肪質量および血漿レプチン濃度をもたらした。それらの減少した受容体密度を理論的に釣り合わせることがあるこの処置に対して突然変異キャリアーがいかに反応するかに関して疑問が生じる。
【0026】
体重調節における特定の遺伝子の関与は、トランスジェニックマウスから得られたデータにより更に立証される。例えば、MC4R欠失マウスは早期開始肥満を発生する(Huszar et al.,1997)。
【0027】
異なるグループは、肥満又は依存性表現型(BMI、レプチンレベル、脂肪質量等)に関係したゲノムスキャンを行っている。このアプローチは、非常に有望と思われる。何故ならば、それは系統的でありそしてモデルフリーであるからである。更に、それは格別に成功していることが既に示された。従って、比較的小さな研究グループを分析することによってすら、ポジティブな連鎖結果が得られた。更に重要なことに、いくらかの発見は、既に追試されている。下記の領域の各々は、少なくとも2つの独立したグループにより同定された:染色体1p32、染色体2p21、染色体6p21、染色体10および染色体20q13(Chagnon et al.,2003)。
【0028】
発明の要約
本発明は、肥満および関連した障害の診断及び予防のために使用することができる3つのヒト肥満感受性遺伝子の同定を今や開示する。本発明は、更に具体的には、染色体17上のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子およびそのある種の対立遺伝子が肥満に対する感受性に関係していることを証明する。
【0029】
更に詳しくは、本発明は、PPY、PYYおよびGIP遺伝子を含む染色体17上の染色体領域に位置しているいくつかハプロタイプ及びSNPに関する。好ましくは、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む。特定の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7およびSNP8を含む。他の特定の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9、SNP10およびSNP11を含む。更に、肥満と各々独立に関連した該単一SNPは、SNP7およびSNP8である。更なる態様では、肥満と各々独立に関連した該単一SNPは、SNP9、SNP10およびSNP11でもある。
【0030】
本発明は、低アルファリポタンパク血症、家族性結合性高脂血症、インスリン抵抗性症候群X又は多重代謝障害、冠動脈疾患、糖尿病及び関連合併症および異常脂血症(dyslipidemia)を含むが、それらに限定されるわけではない、肥満、冠動脈性心疾患及び代謝障害の素因の診断又は該肥満、冠動脈性心疾患及び代謝障害からの保護の診断、該肥満、冠動脈性心疾患及び代謝障害の検出および/または予防において使用することができる。
【0031】
本発明の特定の目的は、被検体からのサンプル中のPPY遺伝子座、PYY遺伝子座、GIP遺伝子座およびその組み合わせからなる群より選ばれる遺伝子座における変化(alteration)の存在を検出することを含み、該変化の存在が、肥満または関連した障害の存在もしくは素因を示す、被検体における肥満または関連した障害の存在もしくは素因を検出する方法にある。特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は被検体からのサンプル中のGIP遺伝子座の変化の存在を検出することを含む。
【0032】
本発明の追加の特定の目的は、被検体からのサンプル中のPPY遺伝子座、PYY遺伝子座、GIP遺伝子座およびその組み合わせからなる群より選ばれる遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が肥満又は関連した障害からの保護を示す、被検体における肥満または関連した障害からの保護を検出する方法にある。特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は被検体からのサンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0033】
本発明の他の特定の目的は、肥満または関連した障害の処置に対する被検体の応答を評価する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY遺伝子座、PYY遺伝子座、GIP遺伝子座およびその組み合わせからなる群より選ばれる遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が該処置に対する特定の応答を示す、方法にある。特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は被検体からのサンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0034】
本発明は、被検体からのサンプル中のPPY遺伝子座、PYY遺伝子座、GIP遺伝子座およびその組み合わせからなる群より選ばれる遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が肥満または関連した障害への素因を示し、そして肥満又は関連した障害に対する予防処置を行うことを含む、被検体における肥満又は関連した障害を予防するための方法にも関する。特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は被検体からのサンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0035】
好ましい態様では、前記変化は、肥満と関連した1つ又は複数のSNP又は肥満と関連したSNPのハプロタイプである。更に好ましくは、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む。特定の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5およびSNP6(ハプロタイプ4−5−6)を含むか又はNP4、SNP5およびSNP6からなる(ハプロタイプ4−5−6)。場合により、ハプロタイプ4−5−6は、SNP7及びSNP8を更に含むことができる。別の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP5、SNP6およびSNP7(ハプロタイプ5−6−7)を含むか又はSNP5、SNP6およびSNP7(ハプロタイプ5−6−7)からなる。場合により、ハプロタイプ5−6−7は、SNP4および/またはSNP8を更に含むことができる。追加の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9およびSNP10、又はSNP10およびSNP11を含むかあるいはSNP9およびSNP10、又はSNP10およびSNP11からなる。場合により、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9、SNP10およびSNP11を含むか、又はSNP9、SNP10およびSNP11からなる。更に好ましくは、肥満と関連した該SNPは、SNP7またはSNP8であることができる。更なる態様では、肥満と各々独立に関連した該単一のSNPは、SNP9、SNP10およびSNP11でもある。
【0036】
好ましくは、PPY、PYYまたはGIPの遺伝子座における変化は、ハイブリダイゼーションアッセイ、配列決定アッセイ、マイクロシーケンシングアッセイ、対立遺伝子特異的増幅アッセイを行うことにより決定される。
【0037】
本発明の特定の局面は、PPY、PYYもしくはGIP遺伝子又はその組み合わせを含むゲノム領域における肥満と関連した少なくとも1つのSNP又はハプロタイプを特異的に検出するようにデザインされる、プライマー、プローブおよび/またはオリゴヌクレオチドを含む物質の組成物にある。好ましくは、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む。好ましい態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5およびSNP6を含む。場合により、このハプロタイプは、SNP7及びSNP8を更に含むことができる。別の好ましい態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP5、SNP6およびSNP7を含む。場合により、このハプロタイプは、SNP4および/またはSNP8を更に含むことができる。好ましくは、肥満と関連した該SNPは、SNP7またはSNP8である。他の好ましい態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9およびSNP10、又はSNP10およびSNP11を含む。場合により、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9、SNP10およびSNP11を含む。好ましくは、肥満と独立に関連した該SNPは、SNP9、SNP10またはSNP11である。
【0038】
本発明の他の局面は、PPYおよびPYY遺伝子、PPYおよびPYY発現産物、及び/又はそれに対する抗体を利用する結合アッセイにある。本発明の更なる局面は、GIP遺伝子、GIP発現産物および/またはそれに対する抗体を利用する結合アッセイにある。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、ヒト肥満感受性遺伝子としてPPY、PYYおよびGIPの同定を開示する。肥満を有する164家族からの種々の核酸サンプルを、特定のGenomeHIP法に供した。この方法は、肥満した被検体における変わっている該集団における特定の同祖性(identical−by−descent)断片の同定をもたらした。IBD断片のスクリーニングにより、本発明者は、肥満および関連した表現型のための候補として、膵臓ポリペプチド(PPY)遺伝子、ペプチドYY(PYY)遺伝子および胃抑制性ポリペプチド(GIP)遺伝子を同定した。これらの遺伝子は、限界的な間隔(critical interval)で実際に存在しそして肥満の遺伝的調節と合致する機能的表現型を発現する。PPY、PYYおよびGIP遺伝子を含む限界的な間隔内に位置したいくつかのSNPも、ヒト被検体における肥満に相関しているものとして同定された。SNP4、SNP5、SNP6、SNP7およびSNP8を含むハプロタイプは、肥満と関連していることが見出された。更に、SNP7及びSNP8は、各々肥満と独立に関連していることが見出された。SNP9、SNP10およびSNP11を含むハプロタイプも肥満と関連していることが見出され、そしてSNP9、SNP10およびSNP11も肥満と各々独立に関連していた。別の状況では、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む他のハプロタイプも肥満と関連していることが見いだされた。
【0040】
従って、本発明は、肥満および関連した障害の診断および予防のためにPPY、PYYおよびGIP遺伝子を使用することを目的とする。
【0041】
定義
肥満および代謝障害:肥満は、健康が損なわれうる程度に、脂肪組織における異常なまたは過剰な脂肪蓄積の任意の状態とみなされるべきである。関連した障害、疾患または病理は、更に具体的には、低アルファリポタンパク血症、家族性結合性高脂血症、インスリン抵抗性症候群X又は多重代謝障害、冠動脈疾患、糖尿病及び関連合併症および異常脂血症を含むが、それらに限定されるわけではないいかなる代謝障害も含む。本発明は、成人、子供および出生前の段階を含む種々の被検体、特にヒトにおいて使用することができる。
【0042】
本発明の状況内では、PPYおよびPYY遺伝子座は、PPYおよびPYYコード配列、PPYおよびPYY非コード配列(例えばイントロン)、転写翻訳および/またはRNAもしくはタンパク質安定性を制御するPPYおよびPYY調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)、ならびにすべての対応する発現産物、例えばPPYおよびPYY RNAs(例えばmRNAs)並びにPPYおよびPYYポリペプチド(例えば前駆タンパク質および成熟タンパク質)を含む、細胞または生物におけるすべてのPPYおよびPYY配列または産物を意味する。PPYおよびPYY遺伝子座は、PPYおよびPYY遺伝子内に位置したSNPと連鎖不平衡にあるSNPを含むPPYおよびPYY遺伝子の周囲の(surrounding)配列も含む。例えば、PPYおよびPYY遺伝子座は、SNP4〜SNP8を含む周囲の配列を含む。
【0043】
本発明の状況内では、GIP遺伝子座は、GIPコード配列、GIP非コード配列(例えばイントロン)、転写翻訳および/またはRNAもしくはタンパク質安定性を制御する GIP調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)、ならびにすべての対応する発現産物、例えばGIP RNAs(例えばmRNAs)およびGIPポリペプチド(例えば前駆タンパク質および成熟タンパク質)を含む、細胞または生物におけるすべてのGIP配列または産物を意味する。GIP遺伝子座は、GIP遺伝子内に位置したSNPと連鎖不平衡にあるSNPを含むGIP遺伝子の周囲の配列も含む。例えば、GIP遺伝子座は、SNP9、SNP10およびSNP11を含む周囲の配列を含む。
【0044】
本願で使用された、用語「PPY遺伝子」および用語「PYY遺伝子」は、ヒト染色体17上のそれぞれヒト膵臓ポリペプチド遺伝子およびペプチドYY遺伝子、ならびにその変異体、アナログおよびそれらの断片を意味し、これらは、肥満および代謝障害に対する感受性又は肥満および代謝障害からの保護に関係するそれらの対立遺伝子(例えば生殖系列突然変異(germline mutations))を含む。PPY遺伝子は、膵臓アイコサペプチド、PNPまたは膵臓ホルモン前駆体(膵臓ポリペプチド(PP)遺伝子を指すこともある。PYY遺伝子は、ペプチドYY前駆体(PYY)(ペプチドチロシンチロシン)遺伝子を指すことができる。
【0045】
本願で使用された、用語「GIP遺伝子」は、ヒト染色体17上の胃抑制ポリペプチド遺伝子、ならびにその変異体、アナログおよびそれらの断片を意味し、これらは、肥満および代謝障害に対する感受性又は肥満および代謝障害からの保護に関係するそれらの対立遺伝子(例えば生殖系列突然変異)を含む。GIP遺伝子は、グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(glucose−dependent insulinotropic polypeptide)を指すことができる。
【0046】
用語「遺伝子」は、ゲノムDNA(gDNA)、相補性DNA(cDNA)、合成または半合成DNA、ならびに任意の形態の対応するRNAを含む任意の型のコード核酸を含むとみなされるべきである。用語、遺伝子は、特に、PPY、PYYまたはGIPをコードする組換え核酸、即ち、例えば、配列をアセンブリング、カッティング、ライゲーションまたは増幅することにより人工的に創りだされたいかなる天然に存在しない核酸分子も含む。PPY、PYYおよびGIP遺伝子は、典型的には二本鎖であるが、一本鎖などの他の形態も意図することができる。PPY、PYYおよびGIP遺伝子は、種々のソースから当該技術分野で知られた種々の技術に従って、例えば、DNAライブリーをスクリーニングすることまたは種々の天然のソースから増幅することにより得ることができる。組換え核酸は、化学合成、遺伝子工学、酵素的技術またはその組み合わせを含む慣用の技術により調製することができる。適当なPPY遺伝子配列は、遺伝子バンク、例えば、PPYのためのUnigene Cluster(Hs.184604)、Unigene Representative Sequence NM_002722、REFSEQ mRNAs:NM_002722、MIPSアセンブリー:H33998S1、DOTSアセンブリー:DT.208492、DT.100018387および追加の遺伝子/cDNA配列:BC032225、BC040033、M11726、M15788、X00491に見出されうる。適当なPYY遺伝子配列は、遺伝子バンク、例えばPYYのためのUnigene Cluster(Hs.169249)、Unigene Representative Sequence NM_004160、REFSEQ mRNAs:NM_004160、MIPSアセンブリー:H30710S1、H30710S2、DOTSアセンブリー:DT.452118、DT.87046273および追加の遺伝子/cDNA配列:BC041057、D13897、D13899、D13902、L25648.1に見出されうる。適当なGIP遺伝子配列は、遺伝子バンク、例えばGIPのためのUnigene Cluster(Hs.1454)、mRNAs:NM_004123に見出されうる。
【0047】
PPYポリペプチドは、上記に開示されたPPY遺伝子によりコードされたいかなるタンパク質またはポリペプチドも意味する。PYYポリペプチドは、上記に開示されたPYY遺伝子によりコードされたいかなるタンパク質またはポリペプチドも意味する。GIPポリペプチドは、上記に開示されたGIP遺伝子によりコードされたいかなるタンパク質またはポリペプチドも意味する。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のストレッチを含むいかなる分子も指す。この用語は、種々の長さの分子、例えばペプチドおよびタンパク質を含む。ポリペプチドは、例えば、グリコシル化および/またはアセチル化および/または化学反応もしくはカップリングにより修飾することができ、そして1つ又は複数の非天然または合成アミノ酸を含有することができる。
【0048】
PYY、PPYまたはGIP遺伝子の断片は、上記した配列の少なくとも約8の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15、更に好ましくは少なくとも約20のヌクレオチド、更に好ましくは少なくとも30の連続したヌクレオチドの任意の部分を意味する。断片は、8〜100ヌクレオチド好ましくは15〜100、更に好ましくは20〜100ヌクレオチドのすべての可能なヌクレオチド長さを含む。
【0049】
典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、30℃以上、好ましくは35℃以上、更に好ましくは42℃以上の温度および/または約500mM未満、好ましくは200mM未満の塩度を含む。ハイブリダイゼーション条件は、温度、塩度および/またはSDS、SSCなどの他の試薬の濃度を修飾することにより当業者によって調節されうる。
【0050】
診断
本発明は、被検体におけるPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の監視に基づく診断方法を今や提供する。本発明の状況内では、用語「診断」は、成人、子供および生まれる前における早期段階、前兆段階および後期段階を含む種々の段階での検出、監視、投薬、比較等を含む。診断は、典型的には、予後、発生の素因もしくは危険の評価又は保護の評価、最も適切な処置を規定するための被検体の特徴付け(薬理遺伝学)等を含む。
【0051】
本発明の特定の目的は、被検体における肥満または関連した障害の存在または素因を検出する方法であって、(i)被検体からのサンプルを提供し、そして(ii)該サンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む方法にある。特定の態様では、この方法は、該サンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、該サンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0052】
本発明の更なる目的は、被検体における肥満または関連した障害の存在または素因を検出する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が肥満または関連した障害の存在又は素因を示す、方法にある。特定の態様では、この方法は、該サンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、該サンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0053】
本発明の他の特定の目的は、被検体における肥満または関連した障害からの保護を検出する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が肥満または関連した障害からの保護を示す、方法にある。特定の態様では、この方法は、該サンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、該サンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0054】
好ましい態様では、該変化は肥満と関連した1つ又は複数のSNPまたはSNPのハプロタイプである。更に好ましくは、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む。特定の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5およびSNP6(ハプロタイプ4−5−6)を含むかまたはSNP4、SNP5およびSNP6(ハプロタイプ4−5−6)からなる。場合により、ハプロタイプ4−5−6は、SNP7及びSNP8を更に含むことができる。別の態様では肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP5、SNP6およびSNP7(ハプロタイプ5−6−7)を含むか又はSNP5、SNP6およびSNP7(ハプロタイプ5−6−7)からなる。場合により、ハプロタイプ5−6−7は、SNP4および/またはSNP8を更に含むことができる。追加の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9およびSNP10、またはSNP10およびSNP11を含むか又はSNP9およびSNP10、またはSNP10およびSNP11からなる。場合により、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9、SNP10およびSNP11を含むかまたはSNP9、SNP10およびSNP11からなる。更に好ましくは、肥満と関連した該SNPは、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれることができる。なお更に好ましくは、肥満と関連した該SNPは、SNP7またはSNP8であることができる。更なる態様では、肥満と各々独立に関連した該単一のSNPは、SNP9、SNP10およびSNP11でもある。
【0055】
本発明の他の特定の目的は、肥満または関連した障害の処置に対する被検体の応答を評価する方法であって、(i)被検体からのサンプルを提供し、そして(ii)該サンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む方法にある。特定の態様では、この方法は、該サンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、該サンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0056】
本発明の更なる目的は、被検体における肥満または関連した障害の処置に対する被検体の応答を評価する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が該処置に対する特定の応答を示す、方法にある。特定の態様では、この方法は、該サンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、該サンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0057】
好ましい態様では、該変化は肥満と関連した1つ又は複数のSNPまたはSNPのハプロタイプである。更に好ましくは、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む。特定の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP4、SNP5およびSNP6(ハプロタイプ4−5−6)を含むかまたはSNP4、SNP5およびSNP6(ハプロタイプ4−5−6)からなる。場合により、ハプロタイプ4−5−6は、SNP7及びSNP8を更に含むことができる。別の態様では肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP5、SNP6およびSNP7(ハプロタイプ5−6−7)を含むか又はSNP5、SNP6およびSNP7(ハプロタイプ5−6−7)からなる。場合により、ハプロタイプ5−6−7は、SNP4および/またはSNP8を更に含むことができる。追加の態様では、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9およびSNP10、またはSNP10およびSNP11を含むか又はSNP9およびSNP10、またはSNP10およびSNP11からなる。場合により、肥満と関連した該ハプロタイプは、SNP9、SNP10およびSNP11を含むかまたはSNP9、SNP10およびSNP11からなる。更に好ましくは、肥満と関連した該SNPは、SNP7またはSNP8であることができる。更なる態様では、肥満と各々独立に関連した該単一のSNPは、SNP9、SNP10およびSNP11でもある。
【0058】
本発明は、肥満または関連した障害の処置の有効性を決定する方法であって、(i)該処置期間中又は該処置の後に被検体からのサンプルを提供し、そして(ii)該サンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の状態を決定しそして(iii)該PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の状態を、処置の前または処置のより早期の段階の該被検体からのサンプル中の基準PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の状態と比較することを含む方法にある。特定の態様では、この方法は、(ii)該サンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座の状態を決定しそして(iii)該PPYおよび/または、PYY遺伝子座の状態を、処置の前または処置のより早期の段階の該被検体からのサンプル中の基準PPY、および/またはPYY遺伝子座の状態と比較することを含む。他の特定の態様では、この方法は、(ii)該サンプル中のGIP遺伝子座の状態を決定しそして(iii)該GIP遺伝子座の状態を、処置の前または処置のより早期の段階の該被検体からのサンプル中の基準GIP遺伝子座の状態と比較することを含む。
【0059】
追加の態様では、本発明は、被検体における肥満または関連した障害を予防するための方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在は、肥満または関連した障害の素因を示し、そして肥満または関連した障害に対する予防処置を行うことを含む方法に関する。該予防処置は、薬物および/または食事の投与であることができる。特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のPPYおよび/またはPYY遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。他の特定の態様では、この方法は、被検体からのサンプル中のGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含む。
【0060】
PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化は、該座のコード領域および/または非コード領域における、単独または種々の組み合わせの、突然変異、欠失、転移および/または挿入のいかなる形態であってもよい。突然変異は更に具体的には、点突然変異を含む。欠失は、遺伝子座のコード部分または非コード部分における2個以上の残基、例えば2個の残基から全体の遺伝子または遺伝子座までのいかなる領域も包含することができる。典型的な欠失は、より小さな領域、例えば約50未満の連続した塩基対のドメイン(イントロン)、繰り返し配列または断片に影響を与えるが、より大きな欠失も起こりうる。挿入は、遺伝子座のコード領域または非コード領域における1個または複数の残基の付加を包含することができる。挿入は、典型的には遺伝子座における1〜50塩基対の付加を含むことができる。転移は、配列の逆転又はトランスロケーションを含む。PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座変化は停止コドンの創生、フレームシフト突然変異、アミノ酸置換、特定のRNAスプライシングもしくはプロセッシング、産物不安定性、トランケートされたポリペプチド産生等をもたらすことがある。この変化は、変化した機能、安定性、ターゲッティングまたは構造を有するPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチドの産生をもたらすことがある。変化はタンパク質発現の減少又は替わりに該産生の増加を引き起こすこともある。
【0061】
本発明に従う方法の特定の態様では、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化は、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子または対応する発現産物における点突然変異、欠失および挿入から選ばれ、更に好ましくは点突然変異および欠失から選ばれる。変化は、PPY、PYYおよび/またはGIP gDNA、RNAまたはポリペプチドのレベルで決定されうる。
【0062】
この点について、本発明は、肥満と関連しているPPY遺伝子、PYY遺伝子およびGIP遺伝子を含むゲノム領域に位置したいくつかのSNPを今や開示する。示されたヌクレオチド位置はNCBIから得られたBuild34の最近の配列に基づいている。これらの点突然変異(または単一ヌクレオチド変化)は下記の表2に報告される。
【0063】
【表2】

【0064】
これらの点突然変異は、肥満を有する被検体において検出された。ハプロタイプは、
SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11について構築されて、各可能なSNP組み合わせについて天然に生じるフェイズ(phase)を決定した。次いでこれらのハプロタイプを使用して、個々の対立遺伝子および肥満の組み合わせに由来するすべての得られるハプロタイプ間の関連について試験した。結果は、SNP4、SNP5およびSNP6;またはSNP5、SNP6およびSNP7;またはSNP5、SNP6、SNP7およびSNP8;またはSNP4、SNP5、SNP6、SNP7およびSNP8;SNP9およびSNP10;またはSNP10およびSNP11;またはSNP9、SNP10およびSNP11(上記表2参照)を含むハプロタイプが肥満と関連していたことを示す(表5および6)。
【0065】
更に、SNP7およびSNP8は、肥満との関連について各々独立に試験された。結果は、両SNP(上記表2参照)は、肥満と各々独立に関連している(テキストで説明される)ことを示す。同様に、SNP9、SNP10およびSNP11は、肥満と各々独立に関連している(表4)。
【0066】
第1変異体においては、本発明の方法は、変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子配列の存在を検出することを含む。これは、例えば、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子、ポリペプチド又はRNAのすべてまたは一部を配列決定すること、選択的ハイブリダイゼーション又は選択的増幅により行うことができる。
【0067】
更に特定の態様は、被検体のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子配列を含むゲノム領域における表2に開示されたSNPの存在を検出することを含む。
【0068】
他の変異体では、本方法は変化したPPY、PYYおよび/またはGIP RNA発現の存在を検出することを含む。変化したRNA発現は、変化したRNA配列の存在、変化したRNAスプライシングもしくはプロセッシングの存在、変化した量のRNAの存在等を含む。これらは、例えば、PPY、PYYおよび/またはGIP RNAのすべてもしくは一部を配列決定決定することまたは該RNAのすべてもしくは一部の選択的ハイブリダイゼーション又は選択的増幅によること含む、当該技術分野で知られた種々の技術により検出することができる。
【0069】
更なる変法では、本方法は、変化したPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチド発現の存在を検出することを含む。変化したPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチド発現は、変化したポリペプチド配列の存在、変化した量のPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチドの存在、変化した組織分布の存在等を含む。これらは、例えば、配列決定することおよび/または特異的リガンドに結合すること(例えば抗体)によることを含む、当技術分野で知られた種々の技術により検出することができる。
【0070】
上記したとおり、配列決定、ハイブリダイゼーション、増幅および/または特異的リガンドへの結合(例えば抗体)を含む当該技術分野で知られた種々の技術を使用して、変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子又はRNA発現もしくは配列を検出または定量することができる。他の適当な方法は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、対立遺伝子特異的増幅、サザーンブロット(DNAについて)、ノーザンブロット(RNAについて)、一本鎖コンフォーメーション分析(SSCA)、PFGE、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、ゲルマイグレーション(gel migration)、クランプド変性ゲル電気泳動、ヘテロ二本鎖分析、RNアーゼ保護、化学ミスマッチ開裂、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫酵素アッセイ(IEMA)を含む。
【0071】
これらのアプローチのいくらか(例えば、SSCAおよびCGGE)は、変化した配列決定の存在の結果として、核酸の電気泳動移動度が変化することに基づいている。これらの技術に従えば、変化した配列は、ゲルでの移動度のシフトにより可視化される。次いで断片を配列決定して変化を確認することができる。
【0072】
いくらかの他の方法は、被検体からの核酸と、野生型または変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAに特異的なプローブとの特異的ハイブリダイゼーションに基づいている。プローブは懸濁しているかまたは基材上に固定化されることができる。プローブは、典型的には標識されてハイブリッドの検出を促進する。
【0073】
これらのアプローチのいくらか、例えばノーザンブロット、ELISAおよびRIAは、ポリペプチド配列または発現レベルを評価するのに特に適している。これらの後者はポリペプチドに特異的なリガンド、更に好ましくは特異的抗体の使用を必要とする。
【0074】
特定の好ましい態様では、本方法は、被検体からのサンプルにおける変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子発現プロフィルの存在を検出することを含む。示されたとおり、これは、更に好ましくは、該サンプル中に存在する核酸の配列決定、選択的ハイブリダイゼーションおよび/または選択的増幅により達成することができる。
【0075】
配列決定
配列決定は、自動シーケンサーを使用して当技術分野で周知された技術を使用して行うことができる。配列決定は、完全なPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子で行うことができ、又は更に好ましくは、その特定のドメイン、典型的には有害な突然変異または他の変化を有することが知られているかあるいは有害な突然変異または他の変化を有する疑いのあるその特定のドメインに関して行うことができる。
【0076】
増幅
増幅は、核酸再生を開始するのに役立つ相補性核酸配列間の特定のハイブリッドの形成に基づいている。
【0077】
増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列をベースとする増幅(NASBA)などの当該技術分野で知られた種々の技術に従って行うことができる。これらの技術は、商業的に入手可能な試薬およびプロトコールを使用して行うことができる。好ましい技術は、対立遺伝子特異的PCRまたはPCR−SSCPを使用する。増幅は、反応を開始するために、通常特異的核酸プライマー使用を必要とする。
【0078】
これに関して、本発明の特定の目的は、周囲の領域を含むPPY遺伝子または遺伝子座からの配列を増幅するために有用な核酸プライマーにある。このようなプライマーは、好ましくは、PPY遺伝子座における核酸配列に対して好ましくは相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする。特定のプライマーは、該遺伝子座の標的領域にフランキングするPPY遺伝子座の一部と特異的にハイブリダイゼーションすることができ、該標的領域は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している。このような標的領域の例は上記表2において与えられる。
【0079】
本発明の他の特定の目的は、周囲の領域を含むPYY遺伝子又は遺伝子座から配列を増幅するために有用な核酸プライマーにある。このようなプライマーは、PYY遺伝子座における核酸配列に対して好ましくは相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする。特定のプライマーは、該遺伝子座の標的領域にフランキングするPYY遺伝子座の一部と特異的にハイブリダイゼーションすることができ、該標的領域は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している。このような標的領域の例は上記表2において与えられる。
【0080】
本発明の追加の特定の目的は、周囲の領域を含むGIP遺伝子または遺伝子座からの配列を増幅するために有用な核酸プライマーにある。このようなプライマーは、好ましくは、GIP遺伝子座における核酸配列に対して好ましくは相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする。特定のプライマーは、該遺伝子座の標的領域にフランキングするGIP遺伝子座の一部と特異的にハイブリダイゼーションすることができ、該標的領域は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している。このような標的領域の例は上記表2に示される。
【0081】
更に特定の態様では、本発明は、PPYコード配列(例えば遺伝子またはRNA)の一部に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする核酸プライマーであって、該一部は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している、核酸プライマーに関する。これに関して、本発明の特定のプライマーは、PPY遺伝子またはRNAにおける変化した配列に対して特異的である。このようなプライマーを使用することにより、増幅産物の検出は、PPY遺伝子座における変化の存在を示す。対照的に、増幅産物の不存在は、特異的変化がサンプルにおいて存在しないことを示す。
【0082】
更に特定の態様では、本発明は、PYYコード配列(例えば遺伝子またはRNA)の一部に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする核酸プライマーであって、該一部は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している、核酸プライマーにも関する。これに関して、本発明の特定のプライマーは、PYY遺伝子またはRNAにおける変化した配列に対して特異的である。このようなプライマーを使用することにより、増幅産物の検出は、PYY遺伝子座における変化の存在を示す。対照的に、増幅産物の不存在は、特異的変化がサンプルにおいて存在しないことを示す。
【0083】
更に特定の態様では、本発明は、GIPコード配列(例えば遺伝子またはRNA)の一部に対して相補性でありそして特異的にハイブリダイゼーションする核酸プライマーであって、該一部は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している、核酸プライマーにも関する。これに関して、本発明の特定のプライマーは、GIP遺伝子またはRNAにおける変化した配列に対して特異的である。このようなプライマーを使用することにより、増幅産物の検出は、GIP遺伝子座における変化の存在を示す。対照的に、増幅産物の不存在は、特異的変化がサンプルにおいて存在しないことを示す。
【0084】
本発明の更なる局面は、センスプライマーおよびリバースプライマーを含む核酸プライマーの対であって、該センスプライマーおよびリバースプライマーは、PPY遺伝子もしくはRNAまたはその標的領域を特異的に増幅し、該標的領域は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している、核酸プライマーの対に関する。
【0085】
本発明の更なる局面は、センスプライマーおよびリバースプライマーを含む核酸プライマーの対であって、該センスプライマーおよびリバースプライマーは、PYY遺伝子もしくはRNAまたはその標的領域を特異的に増幅し、該標的領域は肥満または関連した障害を有するある種の被検体において変化している、核酸プライマーの対に関する。
【0086】
本発明の更なる局面は、センスプライマーおよびリバースプライマーを含む核酸プライマーの対であって、該センスプライマーおよびリバースプライマーは、GIP遺伝子もしくはRNAまたはその標的領域を特異的に増幅し、該標的領域は肥満または関連した障害を有すある種の被検体において変化している、核酸プライマーの対に関する。
【0087】
本発明の典型的なプライマーは、長さが約5〜60ヌクレオチド、更に好ましくは長さが約8〜約25ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。この配列は、それぞれ、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の配列に直接由来することができる。完全な相補性は、高い特異性を確実にするのに好ましい。しかしながら、ある種のミスマッチは許容されうる。
【0088】
選択的ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション検出法は、核酸配列変化を検出するのに役立つ相補性核酸配列間の特異的ハブリッドの形成に基づいている。
【0089】
特定の検出技術は、野生型または変化したPPY遺伝子またはRNAに特異的な核酸プローブの使用、および/または野生型または変化したPPY遺伝子またはRNAに特異的な核酸プローブの使用、および/または野生型または変化したGIP遺伝子またはRNAに特異的な核酸プローブの使用、次いでハイブリッドの存在の検出を含む。プローブは、懸濁していてもよく又は基材もしくは支持体に固定化されていてもよい(核酸アレー又はチップ技術におけるように)。プローブは典型的には標識されてハイブリッドの検出を促進する。
【0090】
この点で、本発明の特定の態様は、被検体からのサンプルを、変化したPPY遺伝子座に特異的な核酸プローブと接触させること、および/または被検体からのサンプルを変化したPYY遺伝子座に特異的な核酸プローブと接触させること、および/または被検体からのサンプルを変化したGIP遺伝子座に特異的な核酸プローブと接触させること、およびハイブリッドの形成を評価することを含む。特定の好ましい態様では、本方法は、前記サンプルを、それぞれ、野生型PPY遺伝子座およびその種々の変化した形態に対して特異的なプローブのセットと同時に接触させることを含む。特定の好ましい態様では、本方法は、前記サンプルを、それぞれ、野生型PYYおよびその種々の変化した形態に対して特異的なプローブのセットと同時に接触させることも含む。特定の好ましい態様では、本方法は、前記サンプルを、それぞれ、野生型GIPおよびその種々の変化した形態に対して特異的なプローブのセットと同時に接触させることも含む。この態様では、サンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における種々の形態の変化の存在を直接検出することが可能である。また、種々の被検体からの種々のサンプルを平行して処理することができる。
【0091】
本発明の更なる特定の目的は、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAに対して特異的な核酸プローブにある。本発明の状況内では、プローブは、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNA(の標的部分)に対して相補性でありそしてPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNA(の標的部分)と特異的にハイブリダイゼーションすることができ、そして肥満または代謝障害の傾向を与えるか、肥満又は代謝障害に対して保護するかまたは肥満または代謝障害と関連しているPPY、PYYおよび/またはGIP対立遺伝子と関連したポリヌクレオチド多型を検出するのに適当なポリヌクレオチド配列を指す。プローブは、好ましくは、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子、RNAまたはその標的部分に対して完全に相補性である。プローブは、典型的には、長さが8〜1000ヌクレオチド、例えば10〜800、更に好ましくは15〜700、典型的には、20〜500ヌクレオチドの一本鎖核酸含む。より長いプローブも使用することができることは理解されるべきである。本発明の好ましいプローブは、変化を有するPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAの領域に特異的にハイブリダイゼーションすることができる、長さが8〜500ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。
【0092】
本発明の特定の態様は、変化した(例えば突然変異した)PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAに対して特異的な核酸プローブ、即ち、該変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAに対して特異的にハイブリダイゼーションしそして該変化を欠いているPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAに対して本質的に特異的にハイブリダイゼーションしない核酸プローブである。特異性は、標的配列へのハイブリダイゼーションが、非特異的ハイブリダイゼーションによって発生するシグナルとは区別されうる特異的シグナルを発生することを示す。完全に相補性の配列は、本発明に従うプローブをデザインするのに好ましい。しかしながら、特異的シグナルが非特異的ハイブリダイゼーションから識別されうる限りは、ある種のミスマッチは許容されうることは理解されるべきである。
【0093】
このようなプローブの特定の例は、上記表2にリストされた点突然変異を有するPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAを含むゲノム領域の標的部分に対して相補性の核酸配列である。更に具体的には、プローブは、配列番号1〜8からなる群より選ばれる配列又はSNPを含むその断片又はその相補性配列を含むことができる。
【0094】
プローブの配列は、本願で提供されたPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子またはRNAの配列に由来することができる。ヌクレオチド置換を行うことができ、そしてプローブの化学修飾も行うことができる。このような化学修飾は、ハイブリッドの安定性を増加させるため(例えばインターカレーション基)又はプローブを標識するために達成することができる。標識の典型的な例は、放射能、螢光、ルミネッセンス、酵素標識等を含むがそれらに限定されるわけではない。
【0095】
特異的リガンド結合
上記したとおり、PPY、PYYまたはGIP遺伝子座における変化は、PPY、PYYまたはGIPポリペプチド配列または発現レベルの変化についてスクリーニングすることにより検出することもできる。この点で、本発明の特定の態様は、前記サンプルをPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチドに対して特異的なリガンドと接触させそして複合体の形成を決定することを含む。
【0096】
特異的抗体などの異なるタイプのリガンドを使用することができる。特定の態様では、サンプルを、PPY、PYYまたはGIPポリペプチドに対して特異的な抗体と接触させ、そして免疫複合体の形成を決定する。免疫複合体を検出するための種々の方法、例えば、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIAS)および免疫酵素アッセイ(IEMA)を使用することができる。
【0097】
本発明の状況内では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および実質的に同じ抗原特異性を有するその断片又は誘導体を意味する。断片は、Fab、Fab’2、CDR領域等を含む。誘導体は、一本鎖抗体、ヒトに適合させた抗体、多官能性抗体等を含む。
【0098】
PPY、PYYまたはGIPポリペプチドに対して特異的な抗体は、PPY、PYYまたはGIPポリペプチドに対して選択的に結合する抗体、即ち、PPY、PYYまたはGIPポリペプチドあるいはそのエピトープ含有断片に対して生じた抗体を意味する。他の抗原に対する非特異的な結合が起こりうるけれども、標的PPY、PYYまたはGIPポリペプチドへの結合がより高いアフイニティーで起こり、そして非特異的結合から信頼可能に識別することができる。好ましい抗体は、野生型PPY、PYYまたはGIPポリペプチド、またはその特定の変化した形態に対して特異的である。本発明の好ましい態様は、変化した形態のPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチド、例えば突然変異した、トランケーションされた(truncated)又は伸張したポリペプチドに対して特異的な抗体を使用する。特に、変化したPPY、PYYまたはGIPポリペプチドは、コード領域のフレームシフト突然変異から生じる特異的ドメインを含むことができる。該ドメインに対して特異的に抗体は、サンプルにおけるこのような変化したポリペプチドの存在の検出を可能とする。リガンドは、可溶性形態で使用することができ、又は表面または支持体上にコーティングされていてもよい。
【0099】
特定の態様では、本方法は、被検体からのサンプルを、変化した形態のPPY、PYYまたはGIPポリペプチドに対して特異的な抗体(でコーティングされた支持体)と接触させ、そして免疫複合体の存在を決定することを含む。特定の態様では、サンプルを、異なる形態のPPY、PYYまたはGIPポリペプチド、例えば野生型およびその種々の変化し形態に対して特異的な種々の抗体(でコーティングされた支持体)と同時に、平行して又は順次に接触させることができる。
【0100】
診断方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボ、好ましくはインビボまたはエクスビボで行うことができる。診断方法では被検体からのサンプルを使用して、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の状態を評価することができる。サンプルは、核酸又はポリペプチドを含有する、被検体に由来するいかなる生物学的サンプルであってもよい。このようなサンプルの例は、体液、組織、細胞サンプル、器官、生検等を含む。最も好ましいサンプルは、血液、血漿、唾液、尿、精液等である。例えば、胎児細胞または胎盤細胞を試験することにより、出生前診断を行うこともできる。サンプルは、慣用の方法により集めることができ、そして診断のために直接使用するか又は保存することができる。サンプルは、試験のための核酸またはポリペプチドの効用(availability)を与えるか又は改善するために、本方法を行う前に処理することができる。処理は、例えば、ライシス(lysis)(例えば、機械的、物理的、化学的等)、遠心等を含む。核酸および/またはポリペプチドは、慣用の技術により予備精製するか又は濃縮することができおよび/または複雑性を減少させることができる。核酸およびポリペプチドは酵素又は他の化学的処理または物理的処理により処理してその断片を生成させることもできる。請求された方法の高い感度を考えると、非常に少ない量のサンプルがアッセイを行うのに十分である。
【0101】
示されたとおり、好ましくは、変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の存在を評価するために、サンプルを、プローブ、プライマーまたはリガンドなどの試薬と接触させる。接触は、プレート、管、ウエル、ガラス等などの任意の適当な装置において行うことができる。特定の態様では、接触は、核酸アレー又は特異的リガンドアレーなどの試薬でコーティングされた基材上で行われる。基材は、ガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマー等を含む任意の支持体などの固体または半固体基材であることができる。基材は、種々の形態およびサイズ、例えば、スライド、膜、ビーズ、カラム、ゲル等であることができる。接触は、試薬とサンプルの核酸またはポリペプチド間で複合体が形成されるのに適当な条件下に行うことができる。
【0102】
サンプルにおける変化したPPY、PYYおよび/またはGIPポリペプチド、RNAまたはDNAの発見は、被検体における変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の存在を示し、これは肥満または代謝障害の存在、素因又は進行の段階と相関することができる。例えば、生殖細胞系列PPY、PYYおよび/またはGIP突然変異を有する個体は、肥満または代謝障害の発生の増加した危険を有する。被検体における変化したPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座の存在の決定は、より効果的でそして特注される適切な治療介入のデザインも可能とする。また前兆レベルでのこの決定は、予防法を適用することを可能とする。
【0103】
連鎖不平衡
一旦第1SNPが関心のあるゲノム領域、特にPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座において同定されると、当業者は、この第1SNPと連鎖不平衡にある追加のSNPを容易に同定することができる。実際、肥満または関連した障害と関連した第1SNPと連鎖不平衡にあるいかなるSNPもこの特質と関連するであろう。従って、所与のSNPと肥満または関連した障害との間で関連が一旦証明されると、この特質と関連した追加のSNPの発見は、この特定の領域におけるSNPの密度を増加させるために大いに興味を引くことができる。
【0104】
所与のSNPと連鎖不平衡にある追加のSNPの同定は、(a)複数の個体からの第1SNPを含むまたは取り囲むゲノム領域からの断片を増幅し;(b)該第1SNPを有する又は取り囲むゲノム領域における第2SNPを同定し;(c)該第1SNPと第2SNPとの連鎖不平衡分析を行い;そして(d)該第1マーカーと連鎖不平衡にある該第2SNPを選ぶことを含む。段階(b)および(c)を含む副組み合わせも意図する。
【0105】
SNPを同定しそして連鎖不平衡分析を行うための方法は、周知の方法を使用することにより過度の実験をすることなく当業者により行われうる。
【0106】
連鎖不平衡にあるこれらのSNPも、本発明に従う方法、更に詳しくは本発明に従う診断方法において使用することができる。
【0107】
例えば、クローン病の連鎖座(linkage locus)は、染色体5q31上の18cMにわたる大きな領域に対してマッピングされた(Rioux et al.,2000及び2001)。全体の領域にわたるマイクロサテライトマーカーおよびSNPの密なマップを使用して、連鎖不平衡(LD)の強い証拠が見出された。LDの証拠を見出したので、著者は、超高密度SNPマップを開発し、そしてこのマップから選ばれるマーカーのより密なコレクションを調べた。多重座分析は、TDTを使用して各々独立に関連している多重SNPにより特徴付けられた単一コモンリスクハプロタイプ(single common risk haplotype)を規定した。これらのSNPは、リスクハプロタイプに独特でありそして、互いに殆ど完全な連鎖不平衡にあることによりそれらの情報内容において本質的に同一であった。これらのSNPの同等な性質は、遺伝的証拠のみに基づいてこの領域内の原因突然変異を同定することを不可能とする。
【0108】
原因突然変異
肥満又は関連した障害を示す患者および対照個体からのPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子の配列を比較することにより、肥満又は関連した障害の原因となりうるPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子における突然変異を同定することができる。PPY、PYYおよび/またはGIPと肥満又は関連した障害との同定された関連に基づいて、同定された座位を突然変異についてスキャンすることができる。好ましい態様では、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子のエキソンおよびスプライス部位、プロモーターおよび他の調節領域などの機能的領域を突然変異についてスキャンする。好ましくは、肥満または関連した障害を示す患者は、肥満又は関連した障害と関連していることが示された突然変異を有し、そして対照個体は肥満又は関連した障害と関連した突然変異又は対立遺伝子を有していない。肥満または関連した障害を示す患者は、対照個体よりも高い頻度で肥満または関連した障害と関連していることが示された突然変異を有することも可能でありうる。
【0109】
このような突然変異を検出するのに使用される方法は、一般に下記の段階を一般に含む:肥満又は関連した障害を示す患者および対照個体からのPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子のDNAサンプルから、肥満または関連した障害と関連したSNP又はSNPの群を含むPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子の領域を増幅する段階;増幅された領域の配列決定をする段階;肥満又は関連した障害を示す患者および対照個体からのPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子のDNA配列を比較する段階;肥満または関連した障害を示す患者に特異的な突然変異を決定する段階。
【0110】
従って、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子における原因突然変異の同定は、周知の方法を使用することにより過度の実験をすることなく当業者により行われうる。
【0111】
例えば、原因突然変異は、ルーチンな方法を使用することにより下記の実施例で同定された。
【0112】
Hugot et al.(2001)は、クローン病に対する感受性に連鎖していることが以前に見出された染色体16の領域におけるクローン病に対する感受性を有する遺伝子変異体を同定するためにポジショナルクローニングストラテジーを適用した。潜在的感受性座の位置を精密化するために、26のマイクロサテライトマーカーをジェノタイピングしそして伝達不平衡テストを使用してクローン病に対する関連について試験した。ボーダーラインの有意な関連がマイクロサテライトマーカーD16S136の1つの対立遺伝子の間で見出された。11の追加のSNPが周囲の領域から選ばれ、そしていくつかのSNPは、有意な関連を示した。この領域からのSNP5〜8は、NOD2/CARD15遺伝子の単一のエキソンに存在することが見出されそして非同義変異体(non−synonymous variants)であることが示された。これは、著者に50人のCD患者におけるこの遺伝子の完全なコード配列の配列決定をすることを促した。2つの追加の非同義的突然変異(SNP12およびSNP13)が見出された。SNP13は、家系伝達不平衡テスト(pedigree transmission disequilibrium test)を使用して最も有意に関連していた(p=6×10−6)。他の独立した研究では、同じ変異体が4人の対照と比較して12人の罹患個体(affected individuals)からのこの遺伝子のコード領域を配列決定することによっても見出された(Ogura et al,m 2001)。SNP13の低頻度対立遺伝子(rare allele)はNOD2/CARD15タンパク質をトランケートすることが予測された1bp挿入に対応していた。この対立遺伝子は、対照に比べて有意により低い頻度ではあるが、健常な個体にも存在していた。
【0113】
同様に、Lesage et al.(2002)は、166人の散発性症例(sporadic cases)および287の家族性症例(familial cases)を含むCDを有する453人の患者、潰瘍性大腸炎(UC)を有する159人の患者および103人の健康な対照被検体におけるCARD15の突然変異分析を、コード領域の系統的配列決定により行った。同定された67の配列変異のうち、9つはCDを有する患者において>5%の対立遺伝子頻度を有していた。それらのうち6つは多型であると考えられ、そして3つ(SNP12−R702W、SNP8−G908RおよびSNP13−1007fs)はCDに対する感受性と独立に関連していることが確認された。27の低頻度の追加の突然変異も潜在的疾患原因突然変異(DCMs)であると考えられた。上記3つの主な変異体(R702W、G908Rおよび1007fs)は、それぞれ、全CD突然変異の32%、18%および31%を示し、これに対して、27の低頻度突然変異の総計はDCMsの19%を示した。要するに、突然変異の93%は遺伝子の遠位3分の1(distal third)に位置していた。突然変異はUCと関連していることは見出されなかった。対照的に、二重突然変異を有する17%を含めて、CDを有する患者の50%は、少なくとも1つのDCMを有していた。
【0114】
本発明の更なる局面および利点を下記の実施例に開示する。これらは本発明を説明するものであって、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【0115】
実施例
1.ヒト染色体17上の肥満感受性座の同定
A.染色体17感受性遺伝子を同定するためのGenomeHIPプラットフォーム
2つの肥満感受性遺伝子の迅速な同定を可能とするためにGenomeHIPプラットフォームを適用した。
【0116】
簡単に言えば、この技術は、関連した個体のDNAからペアーを形成することからなる。各DNAを、その同定を可能とする特異的標識で標識する。次いで2つのDNA間でハイブリッドを形成する。次いで多段階手順で2つのDNAからすべての同祖(IBD)断片を選ぶ特定の方法(WO00/53802)を適用する。次いで残りのIBDに富んだDNAを染色体上のIBDフラクションのポジショニングを可能とするBACクローン由来のDNAマイクロアレーに対してスコア化する。
【0117】
多くの異なる家族に対してこの方法を適用すると、各家族からの各ペアーについてIBDフラクションのマトリックスが得られる。次いで統計的解析により、試験されるすべての家族間で共有される最小IBD領域を計算する。有意な結果(p値)は、関心のある特質(ここでは肥満)を有するボジティブ領域の連鎖の証拠である。連鎖した間隔(linked interval)は、有意なp値を示す2つの最も遠く離れたクローンにより限界を定められうる。
【0118】
この研究では、甚だしい肥満(>90thパーセンタイルのボディマスインデックスにより定義された)に合致したドイツ起源の(178の独立した同胞ペアー)の164家族を、GenomeHIPプロセスに供した。次いで、得られるIBDに富んだDNAフラクションを、Cy5蛍光染料で標識し、そして1.2メガ塩基対の平均間隔で全ヒトゲノムを包含する2263BACクローンからなるDNAアレーに対してハイブリダイズさせた。Cy3で標識された選ばれなかったDNAを使用してシグナル値を正規化しそして各クローンについて割合を計算した。次いで割合の結果のクラスタリングを行って、各クローンおよびペアーについてIBD状態を決定した。
【0119】
この手順を適用することにより、染色体17上で約5.35メガ塩基領域(塩基42200000〜47550000)に及んでいる、肥満に対する連鎖の有意な(p値<2.2E−05)または示唆的(p値<7.4E−04)証拠を示す、いくつかのBACクローンを同定した(表3)。
【0120】
表3:PPY、PYYおよび/またはGIPの領域における染色体17についての連鎖結果:
連鎖の証拠を有する3つのBACクローンに相当する領域が示される。クローンの開始および停止位置は各々染色体の開始に対するNCBI Build34配列に基づくそれらのゲノム位置に対応する(p−ter)。
【0121】
【表3】

【0122】
B.染色体17上の肥満感受性遺伝子の同定
上記した5.35メガ塩基染色体領域をスクリーニングすることにより、我々は、肥満および関連した表現型のための候補として、膵臓ポリペプチド(PPY)、ペプチドYY(PYY)および胃阻害ペプチド(GIP)遺伝子を同定した。これらの遺伝子は、上記表3に概説されたクローンにより限界を定められた連鎖の証拠を伴って、実際にクリティカルな間隔(critical interval)で存在する。
【0123】
Hort等(1995)は、予測された95アミノ酸配列ポリペプチドをコードするPPY遺伝子(mRNA 425bp)および予測された97アミノ酸配列ポリペプチドをコードするPYY遺伝子(mRNA 582bp)は17q21.1上で約10kb離れて位置していることを示した。2つの遺伝子によりコードされたペプチド、それぞれ、膵臓ポリペプチド(PP)およびペプチドYY(PYY)は、高い配列相同性を示すペプチドの神経ペプチドY(NPY)ファミリーに属する。3つの遺伝子間の配列比較に基づいて、NPYおよびPYYは遺伝子重複事象の結果でありそしてその後のタンデム重複はPPY遺伝子を産生したことが結論された(Hort et al. 1995)。
【0124】
これらの3つの内在性ペプチドに対する異なるアフイニティーを有する多重受容体サブタイプが同定された。NPYおよびPYYはY1、Y2およびY5受容体に対して最も高いアフイニティーを有し、PPはY4部位に対する内在性リガンドである(Michel et al.,1998)。PYYの別の内在性形態、PYY(3−36)は、主としてNPY発現ニューロン上に見いだされるシナプス前受容体であると考えられるY2部位に対する増加したアフイニティーを示す(Michel et al.,1998)。
【0125】
食物摂取におけるPPおよびPYYの多重作用は、今やげっ歯類およびヒトにおいて記載されている。
【0126】
げっ歯類へのPPの末梢投与は、食物摂取を減少させることが示された(Asakawa et al.,2002)。PPの静脈内注入は、健康なボランティアにおいて食欲と食物摂取の両方の持続した減少を引き起こした(Batterham et al.,2003)。
【0127】
Batterham et al.,(2002)は、ラットにおけるPYY(3−36)の末梢注射は食物摂取を抑制しそして体重増加を減少させることを示した。PYY(3−36)は、マウスにおいても食物摂取を抑制するが、Y2rヌルマウスではそうではなく、これは食欲減退効果はY2受容体を必要とすること示唆する。ヒトでは、正常な食後の濃度のPYY(3−36)の注入は食欲を有意に減少させそして24時間にわたり食物摂取を33%減少させた(Batterham et al.,2002)。従って、PYY(3−36)の食後の上昇は、弓状核Y2Rを介して作用して、腸−視床下部経路における栄養補給(feeding)を抑制することができる。
【0128】
更にPYYは、視床下部における食欲回路をモジュレーションすることにより食物摂取を減少させる。Batterham等(2003)は、肥満した被検体はPYYの食欲減退効果に対して抵抗性ではないことを見出した。内在性PYYレベルは、肥満した被検体において低かったが、これは、PYY不足は肥満の発病学に寄与することができることを示唆する。
【0129】
グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)としても知られている胃抑制ポリペプチドは、グルコースの存在下にインスリン分泌を刺激する42アミノ酸ホルモンである。その配列は、それがセクレチン、グルカゴン、バソアクティブ・インテスティナル・ペプチドおよび成長ホルモン放出因子を含む構造的に関連したホルモンのファミリーのメンバーであることを示す。Takeda等(1987)は、ヒトGIP前駆体をコードするcDNAクローンを単離しそして配列決定した。前駆体の予想されたアミノ酸配列はGIPが153残基前駆体、プレプロGIPのタンパク分解プロセッシングにより誘導されることを示す。GIP部分は、それぞれ、そのアミノ末端およびカルボキシル末端で51および60アミノ酸のポリペプチドセグメントによりフランキングされている。GIPは、単一のアルギニン残基においてプロセッシングすることにより前駆体から放出される。
【0130】
Miyawaki等(2002)は、GIPを介する肥満促進の新規な経路を記載している。高脂肪食を与えられた野生型マウスは、GIPの分泌過剰およびインスリン抵抗を伴う過度の内臓および皮下脂肪堆積の両方を示した。対照的に、高脂肪食を与えられたGIP受容体を欠いているマウス(Gipr(−/−)は、肥満およびインスリン抵抗性の両方から明らかに保護された。更に、Gipr(−/−)マウスと肥満ob/ob(Lep(ob)/Lep(ob)マウスを交雑させることにより発生した二重ホモ接合マウス(double−homozygous mice)(Gipr(−/−),Lep(ob)/Lep(ob))は、体重増加がより少なくそしてLep(ob)/Lep(ob)マウスよりも低い脂肪症を有していた。Gipr(−/−)マウスは、より低い呼吸商を有しておりそしてより好むエネルギー基質として脂肪を使用し、従って肥満に抵抗性であった。従って、GIPは、栄養過多を肥満に直接関連させそしてそれは抗肥満薬のための潜在力のある標的である。
【0131】
Sirinek等(1986)は、病的肥満のインスリン過剰症および胃バイパス後のその改善は、手術前のGIPの顕著に高められたレベルおよびバイパス後のその減少した放出により引き起こされうることを示した。
【0132】
GIPは脂質生理学において役割を演じると思われそして増加した栄養ロードに応答する高められたレベルのGIPは肥満と関連していたので、GIP作用に対する拮抗が、肥満のための治療ストラテジーとして提唱された(Meier and Nucuck.,2004)。
【0133】
GIPの異常な機能は、2型糖尿病とも関連していた。GIPは健康なヒトにおけるインスリン放出を強く刺激するが、このペプチドは、2型糖尿病を有する患者においてはそのインスン刺激性効果を殆ど完全に失った。
【0134】
Lynn等(2003)は、GIP受容体(GIPR)は、膵島への脂肪酸負荷により正常血糖に制御されるが、しかしながら、高血糖状態にさらされると、GIPRはダウンレギュレーションされ、これは2型糖尿病で観察されるGIPに対する減少した応答に寄与しうる、という証拠を提示した。
【0135】
GIPのインスリン刺激性活性により、2型糖尿病の潜在力のある治療としてホルモンを利用する際に関心の相当な増加もあった。(Gault et al.,2003)。
【0136】
染色体17での肥満に連鎖した遺伝子変化の限界的間隔におけるヒトPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子を同定する、本願で提供された連鎖結果を、食物摂取およびエネルギー消費の制御に関与するNPY/PPシグナリング経路におけるPPYおよびPYYの関与および栄養過多におけるGIPの関与と一緒に合わせて、本発明者は、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子又はその調節配列における変化(例えば突然変異および/または多形)は、ヒト肥満の発生に寄与することができそして診断のための新規な標的を表すことができると結論する。
【0137】
2.関連の研究
連鎖の研究のために使用された同じ家族を、伝達不平衡テスト(TDT)を使用する問題の特定の表現型(ここでは肥満)と特異的マーカー対立遺伝子を含有する遺伝子マーカー対立遺伝子またはハプロタイプとの関連について試験するためにも使用した。TDTは強力な関連テストである。何故ならば、それは試験されたサンプルにおける集団層別化問題に感受性ではないからである。簡単に言えば、ヘテロ接合性両親からそれらの罹患した子孫への対立遺伝子の分離を試験する。非伝達対立遺伝子に比べて罹患子孫に伝達された対立遺伝子の部分を、無作為分布下に期待された割合と比較する。期待値を超える有意に過剰の対立遺伝子伝達は、それぞれの対立遺伝子またはハプロタイプの研究された肥満表現型との関連のための証拠である。
【0138】
この分析の結果は、GIP遺伝子のある対立遺伝子は、肥満とポジティブに関連しており、従って疾患に対する感受性を増加させることを示す。試験された集団では、例えばSNP10の対立遺伝子Cは、DDTにより決定されたとおり、肥満と相関している(p値=0.007)。対照的に、SNP10の対立遺伝子Tは、自閉的個体(autistic individuals)に有意に低く伝達され(undertransmitted)、これは、この対立遺伝子が疾患から保護するのを助けることを示す。
【0139】
肥満と関連した他のSNPは、表3において肥満患者への対立遺伝子の伝達の実施例に示されたSNP9を含む。
【0140】
肥満患者への対立遺伝子の伝達および非伝達の例を表4に示す。
【0141】
【表4】

【0142】
更に、SNP4〜11に対するハプロタイプを構築してすべてのSNPについてフェイズを同定した。
【0143】
試験した集団におけるこの分析の結果は、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子のあるハプロタイプは肥満とポジティブに関連しており、従って疾患に対する感受性を増加させることを示した。他方、あるハプロタイプは、肥満患者に優先的に伝達されず、これは疾患から保護するのを助ける。肥満患者に優先的に伝達されるハプロタイプの例は、SNP10−SNP11に対するハプロタイプC−A、p=0.004、である。肥満患者に優先的に伝達されないハプロタイプの例は、SNP10−SNP11に対するハプロタイプT−T、p=0.005、である。
【0144】
肥満患者への優先的に伝達されるハプロタイプおよび優先的に伝達されないハプロタイプの例を表5に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
更に、極端な早期開始肥満(症例)を有する564個体および328の健康な個体(対照)を含む、独立した症例/対照関連研究を行って、マーカー対立遺伝子、ハプロタイプおよび/またはジェノタイプと肥満の関連を試験した。
【0147】
PYYおよびPPY遺伝子+周囲の5’および3’領域を含む染色体領域を包含するSNP4〜8がこの研究においてジェノタイピングのために選ばれた。
【0148】
SNP4、SNP5およびSNP6に対するハプロタイプを構築して、PHASEプログラム(バージョン:2.0;Stephens et al.,2001)を使用してすべてのSNPについてフェイズを同定した。患者におけるハプロタイプの分布を決定し、そして対照群におけるハプロタイプの分布と比較した。
【0149】
肥満患者と対照間のSNP4、SNP5およびSNP6のハプロタイプの分布の統計的分析は、肥満に対する相関(p=0.02)を示した。表6に示されたとおり、ハプロタイプG−G−A(25.9%対23.74%)は、対照と比較して肥満固体(症例)においてより高い頻度で観察されたが、ハプロタイプT−A−A(52.48%対54.01)は、対照に比べて肥満患者において低く表現された(under−represented)。
【0150】
【表6】

【0151】
SNP7およびSNP8の対立遺伝子の分布を患者と対照間で各々独立に比較した。患者と対照における各SNPの対立遺伝子の分布に基づいて、オッズ比および対応する信頼区間を計算して関連の程度を測定した。1より大きいオッズ比は、試験した遺伝子マーカーが疾患と関連しており、従って疾患に対する感受性を増加させるであろうということを意味する。オッズ比が1より小さければネガティブな関連があり、そして試験した遺伝子マーカーは疾患から保護することを助ける。
【0152】
この分析の結果は、SNP7およびSNP8のある対立遺伝子は肥満と各々独立に関連していることを示す。対照と比較して患者においてSNP7の対立遺伝子Tのより高い頻度が観察されて(0.42対0.37)、対立遺伝子Cを有する個体に対する対立遺伝子Tを有する個体の1.24のオッズ比をもたらす(95%CI:1.01−1.51、p=0.0395)。SNP8の対立遺伝子Tも、対照に比べて患者においてより頻繁に存在して(0.39対0.34)、対立遺伝子Cを有する個体に対する対立遺伝子Tを有する個体の1.24のオッズ比をもたらす(95%CI:1.02−1.52、p=0.0351)。更に、対照に比べて患者の両SNPでホモ接合TTジェノタイプのより高い頻度が観察された(SNP7では0.17対0.13およびSNP8では0.14対0.10)。これはジェノタイプCCのキャリヤーに対するSNP7のジェノタイプTTのキャリヤーの1.56のオッズ比をもたらした(95%CI:1.01−2.40、p=0.0425)。1.60のオッズ比(95%CI:1.01−2.52、p=0.0422)が、ジェノタイプCCのキャリヤーに対してSNP8のジェノタイプTTのキャリヤーについて決定された。
【0153】
結果は、SNP7およびSNP8の対立遺伝子Cが肥満とネガティブに関連していることも示す。対照に比べてSNP7の対立遺伝子Cのより低い頻度が患者において観察されて(0.58対0.63)、対立遺伝子Tを有する個体に対する対立遺伝子Cを有する個体の0.81のオッズ比をもたらした(95%CI:0.66−0.99、p=0.0395)。更に、SNP8の対立遺伝子Cも、対照に比べて患者においてより頻繁に低く表現されて(0.61対0.66)、対立遺伝子Tのキャリヤーに対するこの対立遺伝子のキャリヤーの0.81のオッズ比をもたらした(95%CI:0.66−0.99、p=0.0351)。更に、対照に比べて患者における両SNPでホモ接合CCジェノタイプのより低い頻度が観察された(SNP7では0.33対0.39およびSNP8では0.37対0.43)。これは、ジェノタイプTTのキャリヤーに対するSNP7のジェノタイプCCのキャリヤーの0.64のオッズ比をもたらした(95%CI:0.42−0.99、p=0.0425)。、ジェノタイプTTのキャリャーに対するSNP8のジェノタイプCCのキャリヤーの0.63のオッズ比(95%CI:0.40−0.99、p=0.0423)が決定された。
【0154】
【表7】







【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】Genomic Hybrid Identity Profiling(ゲノム.ハイブリッド.アイデンティティー.プロファイリング)(GenomeHIP)を使用する高密度マッピング 全ヒトゲノムを表すクローン間の1.2メガ塩基対の平均間隔を有する総計2263のBACクローンを、GenomeHIPを使用して連鎖について試験した。x軸における各点はクローンに対応する。いくつかのクローンはより良好な配向のためのそれらのライブラリー名により示される(例えば、BACA9ZF10)。連鎖のための有意な証拠が、クローンBACA9ZF10について計算された(p値1.7×10−5)。連鎖のための示唆的証拠が、クローンBACA12ZA06およびBACA16ZF02について計算された(それぞれ、p値2.1×10−5および7.3×10−5)。全連鎖領域は、ヒト染色体17上の42214759塩基対から出発して47545876塩基対までの領域を包含する。有意な連鎖のための有意水準に対応するp値2×10−5および示唆的連鎖のための有意水準に対応するp値3×10−4が、LanderおよびKruglyak(1995)により提唱された全ゲノムスクリーンのための有意水準として使用された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体における肥満又は関連した代謝障害の存在もしくは素因、または肥満又は関連した代謝障害からの保護を検出する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が、肥満または関連した障害の存在もしくは素因、または肥満又は関連した障害からの保護を示す、方法。
【請求項2】
肥満又は関連した代謝障害の処置に対する被検体の応答を評価する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出することを含み、該変化の存在が、該処置に対する特定の応答を示す、方法。
【請求項3】
被検体における肥満または関連した疾患を予防する方法であって、被検体からのサンプル中のPPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在を検出し、該変化の存在が肥満または関連した障害の素因を示し;そして肥満又は関連した障害に対する予防処置を行うことを含む、方法。
【請求項4】
PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における前記変化が、PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における突然変異、欠失および挿入から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
PPY、PYYおよび/またはGIP遺伝子座における変化の存在が、配列決定、選択的ハイブリダイゼーションおよび/または選択的増幅により検出される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記変化が、肥満と関連した1つ又は複数のSNP又は肥満と関連したSNPのハプロタイプである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
肥満と関連した前記ハプロタイプが、SNP4、SNP5、SNP6、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群より選ばれるSNPを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
肥満と関連した前記ハプロタイプが、SNP4、SNP5およびSNP6を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
肥満と関連した前記ハプロタイプが、SNP5、SNP6およびSNP7を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ハプロタイプが、SNP4またはSNP8またはその両方を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
肥満と関連した前記ハプロタイプが、SNP9およびSNP10を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
肥満と関連した前記ハプロタイプが、SNP10およびSNP11を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
肥満と関連した前記ハプロタイプが、SNP9、SNP10およびSNP11を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
肥満と関連した前記SNPが、SNP7、SNP8、SNP9、SNP10およびSNP11からなる群において選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
肥満と関連した前記SNPが、SNP7又はSNP8である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
肥満と関連した前記SNPが、SNP9、SNP10またはSNP11である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記変化がPYY遺伝子座にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記変化がPPY遺伝子座にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記変化がGIP遺伝子座にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−530028(P2007−530028A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504512(P2007−504512)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001030
【国際公開番号】WO2005/090600
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(501358068)
【氏名又は名称原語表記】INTEGRAGEN
【Fターム(参考)】