説明

ペプチド製造方法

本発明は、液相におけるペプチドであるオミガナンの製造方法に関する。本発明はまた、オミガナンの製造方法における新規中間体、およびこれらの中間体の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドであるオミガナン(Omiganan)およびその中間体の製造方法、さらにオミガナンの製造方法における新規中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
オミガナンは、その5塩酸(5HCl)塩の形で主に使用されるペプチドH−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)の国際共通名称(Common International Denomination:CID)である。オミガナンは、カチオン性抗菌ペプチドである。最近の研究から、炎症反応においてある役割を果たすこともできることがわかった。オミガナンは、インビトロのアッセイにおいて、皮膚にコロニー形成し、炎症性障害の発生においてある役割を果たす可能性がある微生物に対して迅速な殺菌活性を示した。さらに、五塩化オミガナンは、現在、重度のざ瘡の治療における第II〜III相の段階にあり、中心静脈カテーテル関連血流感染の予防における第III相臨床試験の段階にある。
【0003】
オミガナンは、それぞれのアミノ酸を伸長中のペプチド鎖に連続して結合させる直鎖ペプチド合成により生成することができる。これらの方法は、所望のペプチドであるオミガナンの収率および純度に関して満足できるものではない。
【0004】
今回、本発明によって、ペプチドであるオミガナンの改良された合成が利用可能になる。
【0005】
(特許文献1)には、グアニジン基および非置換テトラフェニルホウ酸イオンを含む化合物のペプチド合成における中間体としての使用が開示されている。一例として、アルギニンおよびテトラフェニルボレート(TPB)によって生成される化合物の合成、およびペプチドBoc−Leu−Arg−OHの合成におけるその使用が記載されている。
【0006】
(特許文献2)には、オミガナンのアミノ酸配列を含むカチオン性ペプチドMBI 11B20CNを含めてカチオン性ペプチドを含有する医薬組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,262,567号明細書
【特許文献2】国際公開第99/65506A号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、ペプチドであるオミガナンが高収率および高純度で得られるオミガナン生成方法を提供することである。驚くべきことに、本発明による方法によって、前記ペプチドを限定された数のステップ、特に精製ステップで生成することが可能になり、したがって製造コストが大幅に低減される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、第1の態様において、H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)という配列のペプチドであるオミガナンまたはその誘導体の製造方法であって、活性化されたカルボキシ基および少なくとも2つのアミノ酸単位を有する第1のペプチド、または活性化されたカルボキシ基を有するIle、Leu、Arg、およびTrp、Proからなる群から選択されるアミノ酸と、遊離アミノ基および少なくとも2つのアミノ酸単位を有する第2のペプチドとを溶液中でカップリングする少なくとも1つのステップを含み、第1および第2のペプチドは異なり、Ile、Leu、Arg、Trp、Pro、およびLysからなる群から選択されるアミノ酸を、オミガナン中のIle−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(配列番号1)という配列で規定される順序で含む方法に関する。
【0010】
本発明では、「ペプチド」という用語は、モノマーがアミノ酸であり、アミド結合を介して互いに共有結合しているポリマーを指す。ペプチドは、2個、またはしばしば2個以上のアミノ酸モノマー長である。さらに、ペプチド配列はすべて、左から右への方向が通常のアミノ末端からカルボキシ末端への方向である式で表わされる。
【0011】
本発明では、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つのNR基、好ましくはNH基と少なくとも1つのカルボキシル基とを含む任意の化合物を表すよう意図されている。本発明のアミノ酸は、天然または合成とすることができる。グリシンを除いて、天然アミノ酸はキラル炭素原子を含む。別段の記載のない限り、L型配置の天然アミノ酸を含む化合物は好ましい。アミノ酸残基は、本明細書全体を通して以下の通り略されている。イソロイシンはIleである。ロイシンはLeuである。アルギニンはArgである。トリプトファンはTrpである。プロリンはProである。リシンはLysである。
【0012】
本発明では、ペプチドの「C末端」という用語は、遊離カルボキシル基(−COOH)を末端に有するアミノ酸配列の末端である。一方、ペプチドの「N末端」という用語は、遊離アミノ基(−NH)を有するアミノ酸を末端に有するアミノ酸配列の末端を指す。
【0013】
本発明では、「カップリング」という用語は、アミノ酸のカルボキシル基または第1のペプチドのC末端と別のアミノ酸のアミノ基または第2のペプチドのN末端との反応を指す。言い換えれば、カップリング時に、2つのペプチド中間体断片、またはペプチド中間体断片と反応性アミノ酸とを、一般に適切な溶媒中、通常カップリング反応の効率および品質を促進する追加の試薬の存在下でカップリングする。ペプチド中間体断片は反応できるように配置され、したがって一方の断片のN末端が他方の断片のC末端に、またはその逆にカップリングされる。
【0014】
本明細書では、「ペプチド誘導体」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応するD型異性体、または非天然アミノ酸残基もしくはその化学的誘導体で置換されている類似体を包含する。ペプチドの化学的誘導体としては、誘導体が、ペプチドの阻害活性を保持することを条件として、通常ペプチドの一部分でない追加の化学的部分を含む誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。このような誘導体の例は、(a)アミノ末端または別の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、ここで、アシル基は、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイルなどのアルカノイル基;アロイル基、例えばベンゾイルまたはビオチニルとすることができる、(b)カルボキシル末端基、または別の遊離カルボキシル基もしくはヒドロキシ基のエステル、および(c)アンモニアまたは適切なアミンとの反応で生成される、カルボキシル末端基または別の遊離カルボキシル基のアミドである。オミガナンおよびその中間体の誘導体は、例えばオミガナン配列の保護された断片およびペプチド、オミガナンおよびその中間体の無機酸または有機酸、好ましくは無機酸、最も好ましくは塩酸との塩でもある。使用することができる有機酸との塩の例は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、テトラフェニルホウ酸、および酒石酸との塩である。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号2)またはその誘導体とIle−Leuをカップリングするステップを含み、Ileのアミノ基はアミノ保護基で保護される。
【0016】
本発明の方法は、Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号3)またはその誘導体とArg−Trp−Proをカップリングするステップを含み、Argのアミノ基は保護基で保護されることがさらに好ましい。
【0017】
好ましくは、本方法は、Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号4)またはその誘導体とTrp−Trp−Proをカップリングするステップを含み、N末端のTrpのアミノ基は保護基で保護される。
【0018】
さらに、本発明は、第2の態様によれば、H−Arg−Lys(Boc)−NHの製造方法であって、
(a)Z−Arg−OH.ClとH−Lys(Boc)−NHをカップリングするステップと、
(b)ステップ(a)で得られたZ−Arg−Lys(Boc)−NHを、好ましくはPd触媒の存在下で水素化分解するステップと
を含む方法を対象とする。
【0019】
「Lys(Boc)」という用語は、アミノ基側鎖がBoc基で保護されているリシンを表すよう意図されている。
【0020】
第3の態様において、本発明は、新規中間体Z−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号2)を対象とする。
【0021】
第4の態様において、本発明は、新規中間体Z−Arg−Trp−Pro−OHを対象とする。
【0022】
第5の態様において、本発明は、Z−Arg−Trp−Pro−OHの製造方法であって、H−Trp−Pro−OHとZ−Arg−OH.HClをカップリングするステップを含む方法を対象とする。
【0023】
第6の態様において、本発明は、新規中間体Z−Trp−Trp−Pro−OHを対象とする。
【0024】
第7の態様において、本発明は、Z−Trp−Trp−Pro−OHの製造方法であって、H−Trp−Pro−OHとZ−Trp−OSuをカップリングするステップを含む方法を対象とする。
【0025】
第8の態様において、本発明は、中間体Boc−Ile−Leu−OHの製造方法であって、Boc−Ile−NCAとH−Leu−OHをカップリングするステップを含む方法を対象とする。
【0026】
第9の態様において、本発明は、新規中間体Z−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号4)を対象とする。
【0027】
第10の態様において、本発明は、新規中間体Z−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号3)を対象とする。
【0028】
本発明の方法において、保護基は、一般に関係するアミノ酸またはペプチド中間体における1つまたは複数のアミノ基に使用される。保護基の使用は、特に制限されている訳ではない。
【0029】
例として、以下の保護基を、本発明の化合物において使用することができる:
アシル型保護基、特にホルミル、トリフルオロアセチル、フタロイル、4−トルエンスルホニル、ベンゼンスルホニル、および2−ニトロフェニルスルフェニル、
芳香族ウレタン型保護基、特に置換または非置換のベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニリル)プロピル(2)オキシカルボニル、2−(3,5−ジメチルオキシフェニル)、プロピル(2)オキシカルボニル、およびトリフェニルホスホノエチルオキシカルボニルなど、
脂肪族ウレタン型保護基、特にtert−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−メチルスルホニルエチルオキシカルボニル、および2,2,3−トリクロロエチルオキシカルボニル、
シクロアルキルウレタン型保護基、特にシクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、tert−アミルオキシカルボニル、およびイソボルニルオキシカルボニルなど、
チオウレタン型保護基、特にフェニルチオカルボニル、
アルキル型保護基、特にトリフェニルメチル(トリチル)およびベンジルなど、
トリアルキルシランなどのトリアルキルシラン基。上記の保護基は、アミノ保護基として特に適している。
【0030】
本発明の方法において、芳香族ウレタン型保護基および脂肪族ウレタン型保護基から選択される保護基とカップリングするステップ中で、アミノ酸基中の少なくとも1つのアミノ基が保護されることが好ましい。より好ましくは、前記保護基は、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基およびベンジルオキシカルボニル(Z)基から選択される。
【0031】
本発明の方法の好ましい実施形態において、ベンジルオキシカルボニル(Z)基が、アミノ酸単位中の末端アミノ基のための保護基として使用され、アミノ酸単位はArgまたはTrpである。
【0032】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基が、Lysの側鎖アミノ基および/またはIle中のN末端アミノ基のための保護基として使用される。
【0033】
特にカルボキシル基の保護に適した他の保護基としては、アルコキシ基、特にメチルエステル、エチルエステル、tert−ブチルエステル、およびベンジルエステルが挙げられる。好ましい実施形態において、Lysのカルボキシル基がアミド、特にCONH基として保護される。
【0034】
本発明の方法において、第1のペプチドは、活性化されたカルボキシ基および一般に少なくとも2つのアミノ酸単位を有する。本発明の方法において、副反応を低減し、かつ/または反応効率を高める様々な活性化基を使用することができ、好ましくはカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、アシルハリド、ホスホニウム塩、およびウロニウム塩またはグアニジウム塩から選択される。例えば、ホスホニウム塩およびウロニウム塩は、第三級塩基、例えばジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびトリエチルアミン(TEA)の存在下で、保護されたアミノ酸を活性化された種に変換することができる(例えば、BOP、PyBOP、HBTU、およびTBTUはすべて、HOBtエステルを生成する)。ラセミ化の防止に役立つ他の試薬としては、追加の補助求核試薬(例えば、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBT)、1−ヒドロキシ−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、またはHOSu)を含むカルボジイミド(例えば、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、または水溶性カルボジイミド(WSCDI))、またはそれらの誘導体が挙げられる。利用することができる別の試薬はTBTUである。例えば、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、ピバロイルクロリド(PivCl)、i−ブチルクロロホルメート(IBCF)、HBTU(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルアンモニウムウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、およびEEDQ(2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン)でよい結果が得られた。
【0035】
本発明による好ましい活性化基は、DCC、EDC、およびHBTUである。
【0036】
このようなカルボン酸活性化剤が使用されるとき、カップリング反応は、しばしば追加の試薬である塩基の存在下で実施される。したがって、本発明の別の特定の態様において、カップリング反応は塩基の存在下で実施される。塩基は、好ましくはN−メチルモルホリン(NMM)、ピリジン、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、またはそれらの混合物などの第三級およびヘテロ芳香族アミンから選択される。より好ましくは、N−メチルモルホリンおよびジイソプロピルエチルアミンから選択される。
【0037】
これらの活性化基に加えて、添加剤を有利に使用することがある。好ましい添加剤は、N−ヒドロキシスクシンイミド(Suc−OH)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、または3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBt)およびそれらの誘導体である。これらの添加剤は、活性化対象のカルボキシル基の量に対して通常1から2当量の量で使用される。
【0038】
本発明の別の特定の態様において、上記のペプチドカップリングは、少なくとも1つの極性有機溶媒の存在下で実施される。特定の好ましい実施形態において、極性有機溶媒によって、形成されたペプチド結合のラセミ化、ペプチドおよび/またはペプチド断片の溶解性、ならびにカップリング反応速度を特に効率的に制御することが可能になる。極性有機溶媒は、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル(AcOEt)、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン(DCM)、塩化メチレン、ピリジン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、またはそれらの混合物から選択される。より好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジクロロメタン(DCM)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはそれらの混合物から選択される。最も好ましくは、極性有機溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)である。好ましい混合物は、DMA20から80%(体積)およびジクロロメタン(CHCl)80から20%(体積)、より好ましくはDMA50から70%(体積)およびジクロロメタン(CHCl)50から30%(体積)を含有する。
【0039】
本明細書では、「カップリング」または「カップリングステップ」という用語は、特に異なるペプチドまたはアミノ酸をカップリングするステップを指す。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号2)またはその誘導体と保護されたIle−Leuまたはその誘導体とをカップリングするステップを含む。このステップにおいて、HOOBtが、好ましくは添加剤として使用される。さらに、このカップリングステップが、好ましくはDMA50から75%(体積)およびジクロロメタン(CHCl)25から50%(体積)を含有するDMA/ジクロロメタン(CHCl)の混合物中で実施されることが好ましい。さらに好ましくは、カップリングステップはEDCの存在下で実施される。
【0041】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、第2のペプチドは、NH−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号4) NH−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号5)、NH−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号6)、NH−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号7)、NH−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号8)、NH−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号9)、NH−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号10)、NH−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号11)から選択される式を有し、式中、Xは、Lysの側鎖アミノ基のための保護基、好ましくはBoc基であり、Rは、Lysのカルボキシル基のためのカルボキシル保護基、好ましくはアミド基である。
【0042】
本発明によって、オミナガン(Ominagan)ペプチドの10位におけるArgのD型鏡像異性体を含む生成物の存在を、合成全体を通して実際に制御および最小限に抑制することが可能になる。
【0043】
この実施形態において、第2のペプチドは、NH−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号4)、NH−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号5)、NH−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号6)、NH−Trp−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号7)、NH−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号8)、NH−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号9)、NH−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号10)、NH−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号11)、およびNH−(D)Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号11)から選択されるペプチドを一般に0.1〜1重量%、有利には0.2〜0.9重量%、しばしば0.2〜0.7重量%含み、式中、XおよびRは上記の通りである。本発明は、前記第2のペプチドにも関する。
【0044】
さらに好ましい実施形態において、第2のペプチドは、NH−Arg−Lys(X)−Rであり、式中、Xは、Lysの側鎖アミノ基のための任意選択の保護基、好ましくはBoc基であり、Rは、Lysのカルボキシル基のためのカルボキシル保護基、好ましくはアミド基であり、第1のペプチドは、Y−Trp−Arg、Y−Pro−Trp−Arg、Y−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号12)、Y−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号13)、Y−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号14)、Y−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号15)、Y−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号16)、Y−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号17)、Y−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号18)の群から選択され、式中、Yは、N末端アミノ基のためのアミノ保護基、特に上記に定義する通り、好ましくはZ基である。
【0045】
この特定の実施形態において、カップリングは、アリール環を有するオキソ−トリアジン活性化剤、好ましくはHOOBtの存在下で実施されることが有利である。
【0046】
この実施形態において、カップリングは、一般に−10〜+10℃の温度で実施される。
【0047】
この実施形態において、カップリングは、しばしばハロゲン化溶媒と非ハロゲン化溶媒との混合物、好ましくは塩素化溶媒とアミド型溶媒との混合物中で実施される。適切な塩素化溶媒としては、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、好ましくはジクロロメタンが挙げられる。適切なアミド型溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。塩化メチレンとN,N−ジメチルアセトアミドとの混合物によって、よい結果が得られた。
【0048】
Z−Trp−Arg−OHとHCl.H−Arg−Lys(Boc)−NHをカップリングすることが特に有利である。
【0049】
この実施形態の最も好ましい態様において、Z−Trp−Arg−OHとHCl.H−Arg−Lys(Boc)−NHをカップリングし、活性化剤はHOOBtであり、溶媒はDMAと塩化メチレンの混合物であり、カップリングは、第1の期間を−5±5℃の温度で3から5時間、および第2の期間を+5±5℃の温度で6から10時間実施される。
【0050】
本発明による特に好ましい方法は、図1のスキームに従う。スキームのXとYは、同じでも異なってもよい。これらは、好ましくは異なる。Xがt−ブチルオキシカルボニル(Boc)基であり、Yがベンジルオキシカルボニル(Z)基であるとき、よい結果が得られた。
【0051】
本発明は、H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)という配列のペプチドであるオミガナンを製造するための脱保護方法であって、式Y1−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Y2)−NH(配列番号1)の前駆体ペプチドと酸を実質的に無水の条件下で反応させるステップを含み、式中、Y1とY2は同一もしくは異なるアミノ保護基、またはHを表し、Y1またはY2の少なくとも1つは酸に不安定なアミノ保護基である方法にも関する。
【0052】
保護基Y1およびY2は、例えば上記の概説に含まれるアミノ保護基とすることができる。Y1とY2は共に、アミノ保護基であることが好ましい。より好ましくは、Y1とY2が共にBocである。
【0053】
本発明による脱保護方法において、酸はしばしばHCl、HF、HBr、HI、トリフルオロ酢酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸から選択される。より好ましくは、酸はHClである。特にこの場合、ペプチド1モル当たり好ましくは6から32モル、より好ましくは12から24モルの酸が使用される。
【0054】
本発明による脱保護方法の反応は、一般に有機溶媒、好ましくは脂肪族アルコール、特に第二級アルコール、より好ましくはイソプロパノール中で実施される。
【0055】
本発明による脱保護方法において、例えば10mg/kgから1.5重量%、好ましくは50mg/kgから1重量%の水を含有する液体反応媒体中で反応を実施することによって、実質的に無水の条件が実現される。より好ましくは、反応媒体の含水率は100mg/kgから0.5重量%である。
【0056】
特に、Y1およびY2の少なくとも1つがBocであるとき、反応は、カルボカチオン、特にtert−ブチルカチオンの捕捉剤、例えばチオアニソール、好ましくは4−(メチルチオ)フェノールの存在下で実施されることが有利である。
【0057】
本発明による脱保護方法の反応は、一般に0℃から80℃、好ましくは25℃から45℃の温度で実施される。
【0058】
本発明による脱保護方法において、ペプチドであるオミガナンは、その五塩酸塩の形で回収されることが有利である。
【0059】
本発明による脱保護方法において、前駆体ペプチドは、好ましくは本発明による方法で得られる。
【0060】
脱保護方法の特に好ましい実施形態において、Boc−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号1)を脱保護して、5HCl.H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)を得ることが、HClと第二級アルコールの混合物中、好ましくはtert−ブチルカルボカチオンの捕捉剤、例えば4−(メチルチオ)フェノールの存在下で行われる。最も好ましくは、HClとイソプロパノールの混合物が使用される。このようにして得られた脱保護生成物を、特に経済的および効率的な方式で、かつとりわけ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、HF、およびHBrを用いた開裂を含めて他の可能な脱保護方法の場合より効率的に精製することができる。本出願人は、例えばHCl/イソプロパノールの混合物中、好ましくはtert−ブチルカルボカチオンの捕捉剤の存在下で行うと、オミガナンのようなトリプトファンに富むペプチドに対してより多くの副生物の供給源であるトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて実施される手順よりよい結果が得られることを見出した。また、この特定の場合、脱保護は、上述されたように好ましくは水を実質的に含まない反応媒体中で実施される。また、この特定の場合、前記脱保護反応が、20から80℃、好ましくは25から45℃、より好ましくは30から40℃の温度で実施されることが有利である。
【0061】
本発明の実施形態において、水素化分解は触媒の存在下で実施される。好ましくは、様々な担体、例えば炭素、SiO、Si−Al化合物などと組み合わせて使用することができるPd触媒が使用される。
【0062】
特定の一実施形態において、本発明による方法は、Argを含むペプチドのテトラフェニルホウ酸塩を生成するステップを含む。典型的には、前記Arg含有ペプチドのテトラフェニルホウ酸塩は、通常本発明による方法に従ってカップリングステップによって得られるArg含有ペプチドを含有するカップリングステップ反応媒体を、テトラフェニルホウ酸アニオンの供給源と接触させることによって形成される。テトラフェニルホウ酸塩は、テトラフェニルホウ酸アニオンの供給源として適切である。
【0063】
したがって、好ましくは少なくとも1つのカップリングステップの完了後に添加されるテトラフェニルホウ酸塩(TPB)の存在下で、少なくとも1ステップを行うことが好ましい。
【0064】
テトラフェニルホウ酸(TPB)塩のカチオンは、無機または有機とすることができる。有機イオンの例は、テトラエチルアンモニウム、ジイソプロピルエチルアンモニウム、N−エチルピペリジニウム、N−メチルモルホリニウム、N−エチルモルホリニウムである。適切な無機イオンは、例えばナトリウム(Na)またはリチウム(Li)である。最も好ましくは、水溶液を生成することができるテトラフェニルホウ酸塩が使用される。LiTPBおよびNaTPBが好ましい。最も好ましく使用されるテトラフェニルホウ酸塩はNaTPBである。
【0065】
TPBアニオンは、そのベンゼン環上で置換されていてもよく、または置換なしに使用することができる。好ましくは、TPBアニオンは置換されていない。適切な置換TPBアニオンの例としては、例えばテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートが挙げられる。
【0066】
テトラフェニルホウ酸塩の使用量は、広い制限内で異なり得る。好ましくは、Arg含有ペプチド中の1Arg単位当たり1から10当量、好ましくは1から1.5当量のテトラフェニルホウ酸塩が使用される。
【0067】
テトラフェニルホウ酸塩は、好ましくは本発明の方法において少なくとも1つのカップリングステップの完了後のワークアップ時に、溶媒または溶媒の混合物の存在下で使用される。適切な溶媒は、特にメタノール、メトキシエタノール、ジクロロメタン、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、およびtert−ブタノールである。メトキシエタノールを使用して、良好な結果が得られた。
【0068】
この実施形態において、前記Arg含有ペプチドのテトラフェニルホウ酸塩を、単離することなく少なくとも1つのその後の合成ステップにかけることができることは有利である。しばしば、前記Arg含有ペプチドのテトラフェニルホウ酸塩を少なくとも脱保護ステップと、続いてカップリングステップにかける。
【0069】
最も好ましい実施形態において、本発明は、以下のステップ(a)〜(d)を含む、ペプチドであるオミガナンの製造方法を対象にする:
(a)Arg−Lys−NHまたはその誘導体、特にArg−Lys(Boc)−NHと、N保護Trp−Arg−OHまたはその誘導体、特にZ−Trp−Arg−OHとをカップリングするステップ。
(b)Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号4)またはその誘導体、特にTrp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号4)と、N保護Trp−Trp−Proまたはその誘導体、特にZ−Trp−Trp−Pro−OHとをカップリングするステップ。
(c)Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号3)またはその誘導体、特にTrp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号3)と、N保護Arg−Trp−Proまたはその誘導体、特にZ−Arg−Trp−Pro−OHとをカップリングするステップ。
(d)Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号2)またはその誘導体、特にArg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号2)と、N保護Ile−Leuまたはその誘導体、特にBoc−Ile−Leu−OHとをカップリングするステップ。
【0070】
ステップ(a)、(b)、(c)、および(d)を含む方法の最も好ましい実施形態を、図1のスキームで例示する。
【0071】
本発明による方法において使用される操作条件は、一般に本発明にとってクリティカルでない。したがって、本方法が行われる圧力は、一般に反応媒体が液体状態に維持されるように0.1〜10バールであることが有利である。大気圧で、よい結果が得られた。本方法が行われる温度は通常−50℃〜100℃であり、特定のステップにおける反応物質および最終的に調製されるよう意図されている化合物の性質に応じて変わることがある。好ましくは、温度は−45℃以上、より好ましくは−25℃以上である。一方、温度は、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
【0072】
特定のカップリングステップにおいて、より制限された好ましい温度範囲が適用され得る。例えば、Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号2)またはその誘導体と保護されたIle−Leuまたはその誘導体とをカップリングするステップにおいて、カップリング反応が、第1の期間を0℃±5℃の温度範囲で、好ましくは約3から5時間、および第2の期間を20℃±5℃の温度範囲で、好ましくは約6から10時間実施されることが好ましい。
【0073】
本発明の方法の好ましい実施形態において、中間体であるZ−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH.2TPB(配列番号4)が利用される。好ましくは、Z−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH.2TPB(配列番号4)は、Z−Trp−Arg−OHとHCl.H−Arg−Lys(Boc)−NHをカップリングすることによって得られる。好ましくは、このカップリングステップはHOOBtの存在下で実施される。
【0074】
このカップリングステップにおいて、温度は、好ましくは第1の期間を−5±5℃の範囲で約2から5時間、および第2の期間を5±5℃の温度範囲で約6から10時間維持される。
【0075】
Z−Trp−Arg−OHとHCl.H−Arg−Lys(Boc)−NHのカップリングに続いて、好ましくはカップリングステップの反応媒体に、NaTPB塩を好ましくは水溶液で、より好ましくはNaCOの存在下で添加することを含むステップ(ワークアップステップとも呼ばれる)が行われる。
【0076】
本発明のカップリングステップにおいて、一方のペプチドが、他方のペプチド1モル当たり好ましくはペプチド0.8から1.2モル、より好ましくは0.9から1.1モル、最も好ましくは0.95から1.05モルの量で使用される。
【0077】
例えば、活性化されたカルボキシ基および一般に少なくとも2つのアミノ酸単位を有する第1のペプチドと遊離アミノ基および少なくとも2つのアミノ酸単位を有する第2のペプチドとを、第2のペプチド1モル当たり第1のペプチド0.8から1.2モル、より好ましくは0.9から1.1モルの量で使用してカップリングすることが好ましい。
【0078】
本発明の第1の態様の方法は、多数の利点を有する:
−反応ステップの少ない非常に集中的な経路である。テトラフェニルホウ酸(TPB)塩を使用する実施形態において、TPB塩で選択的抽出を行った後、それらの塩を沈殿させ、または単離することなく合成を続けることが可能である。これによって、合成時に柔軟性の向上が実現する。側鎖の保護されたArgを処理する必要はない。
−トリプトファン単位のインドール環を合成時に保護する必要はない。トリプトファンは、強酸性の媒体に非常に高い感受性があることが知られている(インドール核のアルキル化、着色した副生物の生成)。これは、保護が高価であり、後の脱離が困難であることを考慮すると、重要な利点である。したがって、特定の好ましい実施形態において、本明細書の上記に開示される方法および断片においては、少なくとも1つのトリプトファン単位、および好ましくはすべてのトリプトファン単位は保護されていない。
−本発明の方法によって、Arg 10およびLeu 2のラセミ化の量の低減も可能になり、より容易な最終精製が可能になる。
−最後に、本発明の方法によって、最終の脱保護、特に適切な場合にはBoc基の脱離反応のかなりスムーズな条件が可能になる。
−さらに、本発明の方法は、特にC末端のProを有する第1のペプチドが使用されるいくつかの好ましい実施形態において、ラセミ化の危険がさらに低減されることを可能にし、より容易な最終精製が可能になる。
【0079】
特に、本発明の第1の態様の方法によって、3つの主な副生物の量が大幅に低減された、すなわちH−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−(D)Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)、H−Ile−(D)Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)の量が、カップリングステップにおけるラセミ化をよりよく制御することにより大幅に低減され、H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−OH(配列番号1)の量が、強酸性の水性媒体中で処理することを回避することにより大幅に低減されたオミガナンを得ることが可能になる。
【0080】
本発明の方法に従って生成されたオミガナンは、一般にその後の精製ステップ、特に単一の精製ステップで精製される。
【0081】
本発明は、ペプチドであるオミガナンの精製方法であって、不純物を含んだペプチドであるオミガナンを、水および有機溶媒を含む移動相を用いた液体クロマトグラフィー、特にHPLCクロマトグラフィーに供するステップを含む方法にも関する。HPLCクロマトグラフィー技法の中で、逆相およびイオン交換相クロマトグラフィーが好ましい。逆相を使用して、優れた結果が得られた。様々な逆相カラム、特にC、C、C18シリカ系逆相カラムを使用することができる。
【0082】
この方法において、移動相は、好ましくはアセトニトリルを含む。この方法において、移動相は、緩衝液を含むことが有利である。アセテート緩衝液を使用して、よい結果が得られた。移動相として、アセトニトリルとアセテート緩衝液(pH5)とを含む系が特に好ましい。
【0083】
本発明による精製方法は、しばしば対イオン交換ステップをさらに含む。例えば、精製ペプチドは、好ましくはクロマトグラフィーカラムを用いて、塩化物水溶液、特にNaCl水溶液と有機溶媒、特にアセトニトリルとの混合物で洗浄することができる。適切な場合には、イオン交換後の精製ペプチドを、カラムからアセトニトリルと水との混合物で溶出することができ、それによって、濃縮された精製オミガナン溶液を得ることができる。
【0084】
本発明による精製方法は、結晶化ステップも含むことができる。
【0085】
したがって、本発明による精製方法は、濃縮ステップ、および場合によっては凍結乾燥ステップをさらに含むことができる。
【実施例】
【0086】
以下の実施例によって、本発明の方法を説明するが、本発明を限定するものと解釈されるべきでない。他に何も記載されていない場合、化合物の純度は98重量%より高く、記載される比は体積比を指す。
【0087】
1. Z−Arg−Lys(Boc)NH.TPBの合成
1.02当量のZ−Arg−OH.HCl(Mw=344.8)をDMAとCHCl(6/4)の混合物に室温で添加した。その後、1.03当量のHOBt(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、Mw=135.12)および1.00当量のH−Lys(Boc)−NH(Mw=245.3;純度:99%)を添加した。溶液を0±5℃に冷却した後、1.03当量のEDC.HCl(Mw=191.7)を添加した。
【0088】
0±5℃でさらに30分間、次いで室温で少なくとも2時間撹拌を続けた。HPLCで反応の完了を確認した後、反応混合物をCHCl/iso−BuOH(6/4)の混合物で希釈し、0.5当量のHCl溶液で抽出した。酸性の水相をCHCl/iso−BuOH(6/4)の混合物で2回抽出した。有機相を合わせて、まず1.05当量のテトラフェニルホウ酸ナトリウム(TPBNa)(Mw=342g)を含有する5%(重量)のNaCO水溶液で洗浄し、次いで5%(重量)のNaCl水溶液で4回洗浄した。
【0089】
有機相を真空中で濃縮した後、濃縮物に、メトキシエタノールを数回に小分けして添加して、微量のiso−ブタノールを除去した。次いで、さらに蒸発させた。次いで、濃縮物を最後にメトキシエタノールで希釈し、5%(重量)の冷(0から5℃)NaCl水溶液にゆっくりと添加した。ペプチドが沈殿し、それを低温で少なくとも30分間維持し、次いで濾過した。
【0090】
固体を冷(0±5℃)脱塩水で3回洗浄した。その後、固体をMeOHに再溶解し、わずかに濁った溶液が得られるまで撹拌した。溶液を部分濃縮し、次いで冷却した5%(重量)のNaCl水溶液に、メタノール性溶液をゆっくりと添加した。濾別する前に、沈殿物を低温で少なくとも30分間維持した。最後に、固体を冷脱塩水(0℃±5℃)で3回洗浄し、真空乾燥した(45℃)。灰色がかった白色固体が、最終的に得られた。内容物のNMR測定に基づく収率は、89%であった。
【0091】
2. HCl.H−Arg−Lys(Boc)−NHの合成
1.00当量のTPB.Z−Arg−Lys(Boc)−NH(Mw=535.6;純度=62.0%)のメタノール溶液を、メタノールで洗浄した樹脂IRA 958(Mw=1000;3.00当量)が入っているカラムに数回通した。HPLCで交換を確認した後、樹脂を濾過し、メタノールで3回洗浄した。有機相を合わせて、真空中で部分濃縮した。濃縮された溶液を水で希釈した。
【0092】
Pd触媒(Mw=106.4;2重量%)を添加し、次いで懸濁液を35±5℃で少なくとも5時間水素化した。触媒を濾別し、メタノール/水の混合物で2回洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、残渣をDMAに懸濁し、微量の水を除去するために真空中で部分蒸発させた。含水率を確認した後、最終溶液をHCl(0.1N)で滴定し、その後精製することなく使用した。
【0093】
収率(滴定に基づく):90%。
【0094】
3. Z−Trp−Arg−OHの合成
2.00当量の水および1当量のArg(Mw=174.2)をDMFと混合し、溶液が得られるまで室温で撹拌した。1.03当量のZ−Trp−OSu(Mw=435.45;純度=98%)をDMFに溶解し、アルギニン溶液に注いだ。次いで、撹拌を室温で少なくとも5時間続けた。反応の終了をHPLCで確認した後、冷アセトニトリル(0±5℃)をゆっくり添加することによって反応混合物が沈殿し、濾過する前に、この温度で少なくとも30分間維持した。沈殿物をCHCN/IPE(イソプロピルエーテル)(1/1)の混合物で3回、次いでIPEで2回洗浄した。次いで、固体を真空中、45℃で乾燥した。白色固体が、最終的に得られた。
【0095】
収率(NMR含有量に基づく):86%。
【0096】
4. Z−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH.2TPB(配列番号4)の合成
1.00当量のZ−Trp−Arg−OH(Mw=494.5;純度=85.0%)および1.10当量のHOOBt(Mw=163.13)を、CHClで予め希釈しておいた1.15当量のHCl.H−Arg−Lys(Boc)−NH(Mw=437.5;純度=20.0%)のDMA溶液に添加した。溶液を−5±5℃に冷却した後、1.00当量のHCl/ジオキサン(4N)をゆっくりと注ぎ入れ、次いで1.10当量のEDC(Mw=191.7)を添加した。反応混合物を−5±5℃で少なくとも3時間撹拌し、次いで5±5℃で少なくとも8時間撹拌した。HPLCで反応の完了を確認した後、反応混合物をCHCl/sec−ブタノール(6/4)の混合物で希釈し、まずHCl(0.5当量)を含有する5%(重量)のNaCl水溶液、次いで2.2当量のNaTPB(Mw=342)を含有する5%(重量)のNaCO水溶液1900ml、最後に5%(重量)のNaCl水溶液で5回洗浄した。有機層を濃縮した後、残渣をメタノールに溶解し、次いで残留しているCHClの大部分を除去するために真空中で濃縮した。この最終溶液をNMRで滴定し、その後精製することなく使用した。
【0097】
収率(滴定含量に基づく)=83%。
【0098】
5. 2HCl.H−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号4)の合成
1.00当量の2TPB.Z−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(Mw=878.11)のメタノール溶液を、6.00当量のメタノールで洗浄した樹脂IRA 958(Mw=1000)が入っているカラムに数回通した。HPLCで交換を確認した後、樹脂を濾過し、メタノールで3回洗浄した。有機相を合わせて、真空中で部分濃縮した。濃縮された溶液を水で希釈し、Pd触媒を添加した。次いで、懸濁液を35±5℃で少なくとも3時間水素化した。触媒を濾別し、メタノールで2回洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、残渣をDMAに溶解し、残留している水を除去するためにさらに濃縮した。含水率を確認した後、沈殿物をDMAに溶解し、溶液の重量を適合させるために真空中で部分蒸発させた。最終溶液を0.1N HClで滴定し、その後精製することなく使用した。
【0099】
収率(滴定に基づく):95%。
【0100】
6. Z−Trp−Trp−Pro−OHの合成
DMA、1.05当量のDIPEA(Mw=129.2)、および1.05当量のH−Trp−Pro−OH(Mw=301.3;純度=91.0%)を、溶液が生成されるまで室温で少なくとも30分間混合した。次いで、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、5±5℃に冷却した。この温度に到達すると、1.00当量のZ−Trp−OSu(Mw=435.5;純度=98.0%)を添加し、溶液が再び室温まで温まる前に、撹拌を少なくとも30分間続けた。反応の完了をHPLCで確認した後、0.2当量のDMAPA(N,N’−ジメチルアミノプロピルアミン、Mw=102.2g/mol)を添加した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、2当量のKHSOを含有する5(重量)%のNaCl水溶液で洗浄した。有機相を、最初は5(重量)%のNaCl水溶液で、最後は水でさらに洗浄した。有機相を真空中で部分濃縮し、残渣を酢酸エチルに懸濁し、さらに残留している水を除去するために濃縮した。濃縮ペプチド溶液を少量ずつ、MTBE/石油エーテル(45〜55)(1/1)の冷(0±5℃)混合物に添加し、濾過する前に、沈殿物を0±5℃で少なくとも30分間維持した。濾過した後、次いで石油エーテル(45〜55)で洗浄し、真空中45℃で乾燥した。白色固体が、最終的に得られた。
【0101】
収率(NMR含有量に基づく)=82%。
【0102】
7. Z−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH.2TPB(配列番号3)の合成
1.00当量のZ−Trp−Trp−Pro−OH(Mw=621.7;純度=94.0%)を、CHClで予め希釈した1.05当量の2HCl.HTrp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(Mw=816.9;純度=15.0%)のDMA溶液に添加した。次いで、1.20当量のN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(Mw=129.2)および1.05当量の2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)(HBTU)(Mw=379.24)を添加した。反応混合物を室温で少なくとも1時間撹拌した。HPLCで反応の完了を確認した後、反応混合物をCHCl/sec−ブタノール(8/2)の混合物で希釈し、まず5%(重量)のNaCl水溶液およびHCl(1.5当量)、次いで5%(重量)のNaCO水溶液および2.2当量のNaTPB(Mw=342g/mol)、最後に5%(重量)のNaCl水溶液で3回洗浄した。有機層を濃縮した後、残留油をメトキシエタノールに数回溶解し、次いで残留しているiso−ブタノールの大部分を除去するために真空中で濃縮した。GC制御した後、濃縮物を、5%(重量)の冷(0±5℃)NaCl水溶液にゆっくりと注ぎ込むことによって沈殿させた。少なくとも1時間撹拌した後、懸濁液を濾過し、冷水で2回洗浄した。沈殿物を真空中、45℃で乾燥した。白色固体が、最終的に得られた。
【0103】
収率(NMR含有量に基づく)=98%。
【0104】
8. 2HCl.H−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号3)の合成
1.00当量の2TPB.Z−TrpTrp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号3)(Mw=1347.5;純度=64.0%)のメタノール溶液を、メタノールで洗浄した樹脂IRA 958(またはAmberjet Cl 1000;6.00当量)が入っているカラムに数回通した。HPLCで交換を確認した後、樹脂を濾過し、3回洗浄した。有機相を合わせて、真空中で部分濃縮し、次いで水で希釈した。最後に、2%(重量)のPd触媒を添加し、懸濁液を40℃で少なくとも3時間水素化した。触媒を濾別し、メタノール/水の混合物で3回洗浄した。濾液を合わせて、真空中で蒸発させ、残渣をDMAに懸濁し、残留している水を除去するためにさらに濃縮した。含水率を確認した後、溶液をHCl(0.1N)、AgNO(0.1N)、またはNMRで滴定し、その後精製することなく使用した。
【0105】
収率(滴定に基づく)=82%。
【0106】
9. Z−Arg−Trp−Pro−OHの合成
DMA、1.00当量のDIPEA、および1.00当量のH−Trp−Pro−OH(Mw=301.3;純度=94.0%)を、溶液が得られるまで室温で少なくとも30分間混合し、次いで溶液を10±5℃に冷却した(溶液No.1)。DMAに、室温で1.00当量のZ−Arg−OH.HCl(Mw=344.8)を清澄な溶液が得られるまで添加した(溶液No.2)。溶液No.2を−15±5℃に冷却しながら、1.05当量のピリジン(Mw=79.1;純度=99.0%)および1.00当量のDIPEAを添加した。この温度に到達すると、1.00当量のピバロイルクロリド(PivCl)(Mw=120.58)を反応混合物(溶液No.2)に注ぎ込み、約5分間さらに活性化した。さらに、活性化された溶液No.2に溶液No.1を添加し、冷却を止めた状態で反応混合物を少なくとも1時間さらに撹拌し、反応混合物を室温まで温まらせた。
【0107】
反応の完了をHPLCで確認した後、ペプチド溶液を真空中で濃縮した。残渣をアセトニトリルおよび水で希釈し、2N KCOでpHを8.0±0.2に調整した。次いで、溶液を真空中で部分濃縮し、残渣を5±5℃に冷却して、沈殿させた。濾過する前に、撹拌を少なくとも30分間続け、次いで沈殿物を水で洗浄した。白色固体が、最終的に得られた。
【0108】
収率(NMR含有量に基づく):90%。
【0109】
10. Z−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH.3TPB(配列番号2)の合成
1.00当量のZ−Arg−Trp−Pro−OH(Mw=591.65;純度=96.0%)、1.00当量のHCl/ジオキサン(4N)、および1.05当量のHOBt(Mw=135.12;純度=98.0%)を、CHClで希釈したDMAに溶かした1.00当量の2HCl.H−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号3)(Mw=1213.4;純度=85.0%)に添加した。溶液を10±5℃に冷却した後、1.02当量のEDC(Mw=191.7)を添加した。反応混合物を10±5℃で30分間撹拌し、次いで室温で少なくとも4時間撹拌した。HPLCで反応の完了を確認した後、反応混合物をCHCl/iso−ブタノール(8/3)の混合物で希釈し、まずHCl(0.5当量)を含む5%(重量)のNaCl水溶液、次いで3当量のNaTPB(Mw=342)を含有する5%(重量)のNaCO水溶液、最後に5%(重量)のNaCl水溶液で2回洗浄した。有機層を濃縮した後、残留油をメトキシエタノールに数回溶解し、次いでiso−ブタノールの大部分を除去するために真空中で濃縮した。GC制御した後、濃縮物を、5%(重量)の冷NaCl水溶液にゆっくり注ぎ込むことによって沈殿させた。少なくとも1時間撹拌した後、懸濁液を濾過し、冷水で2回洗浄した。沈殿物を40±5℃で乾燥した。灰色がかった白色固体が、最終的に得られた。
【0110】
収率(NMR含有量に基づく)=87%。
【0111】
11. 3HCl.H−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号2)の合成
1.00当量の3TPB.Z−Arg−Trp−Pro−TrpTrp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(Mw=1787.1;純度=57.0%)のメタノール溶液を、メタノールで洗浄した樹脂IRA 958(Mw=1000、9.00当量)が入っているカラムに数回通した。HPLCで交換を確認した後、樹脂を濾過し、メタノールで3回洗浄した。有機相を合わせて、真空中で部分濃縮した。次いで、濃縮された溶液を水で希釈し、Pd触媒を添加した。次いで、懸濁液を35±5℃で少なくとも6時間水素化した。触媒を濾別し、メタノール/水の混合物で3回洗浄した。濾液を合わせて、真空中で蒸発させ、残渣をDMAに懸濁し、残留している水を除去するためにさらに濃縮した。含水率を確認した後、溶液をHCl(0.1N)またはNMRで滴定し、その後精製することなく使用した。
【0112】
収率(NMR含有量測定に基づく):93%。
【0113】
12. Boc−Ile−Leu−OHの合成
ジペプチドであるBoc−Ile−Leu−OHの合成を、2つの経路に従って行った:
−Boc−Ile−OHの活性化エステルOSuを経由(経路A)
−Boc−Ile−OHのUNCA(ウレタンN保護カルボキシ無水物)の使用を経由(経路B)。
【0114】
経路A:Boc−Ile−OSuの合成(比較)
撹拌下、1.00当量のBoc−Ile−OH.1/2HO(Mw=240.3)および1.05当量のSuc−OH(Mw=115)を酢酸エチルに添加した。溶液を0±5℃に冷却し、次いで酢酸エチルに希釈した1.10当量のDCC(Mw=206.3)を溶液に注ぎ込んだ。懸濁液を0℃で少なくとも30分間、さらに室温で少なくとも5時間撹拌した。酢酸2.42g(0.20当量)を添加することによって、反応混合物をクエンチした後、DCUを濾過し、酢酸エチルで2回洗浄した。有機層を、0.5当量のKHSOを含有する5(重量)%のNaCl水溶液、5(重量)%のNaCl水溶液;0.5当量のNaCOを含有する5(重量)%のNaCl水溶液、最後に5(重量)%のNaCl水溶液で洗浄した。溶媒を真空中で濃縮した。濃縮した溶液を酢酸エチルで2回抽出し、残留している水を除去するために、真空中でさらに蒸発させた。濃縮した有機層を、シクロヘキサンまたはヘプタンで希釈した。沈殿した懸濁液を室温で少なくとも30分間撹拌し、濾過し、最後に真空乾燥した(45℃)。乾燥した沈殿物から、白色固体のBoc−Ile−OSuが(NMR含有量に基づいて)収率89%で得られた。
【0115】
経路A:Boc−Ile−Leu−OHの合成
まず、2.10当量のTMA(Mw=145.12)で、1.01当量のH−Leu−OH(Mw=131.2)を清澄な溶液が得られるまで約50℃でシリル化した。溶液を室温に冷却し、酢酸イソプロピルで希釈した。次いで、シリル化されたH−Leu−OH溶液に、1.00当量の固体Boc−Ile−OSu(Mw=328.26;100.0%)を添加した。さらに、反応混合物を室温で少なくとも8時間撹拌した。反応の完了をHPLCで確認した後、DMAPAおよび水を添加することによって溶液をクエンチし、5(重量)%のNaCl水溶液500mlにとかしたKHSO(1.00当量);5(重量)%のNaCl水溶液500ml、および水で洗浄した。酢酸イソプロピルを真空中で蒸発させた後、酢酸イソプロピルと共沸蒸留することによって過剰の水を除去した。濃縮中に、ペプチドが沈殿した。次いで、濃縮した懸濁液をシクロヘキサンに希釈した。沈殿物を室温で少なくとも10分間撹拌し、濾過し、最後に真空中45℃で乾燥した。乾燥した沈殿物から、白色固体のBoc−Ile−Leu−OHが(NMR含有量に基づいて)収率80%で得られた。
【0116】
経路B:Boc−Ile−Leu−OHの合成
DMSOに懸濁した状態の1.10当量のH−Leu−OH(Mw=131.2)に、1.00当量のBoc−Ile−NCA(Mw=257.3)を添加した。次いで、懸濁液を60±5℃で少なくとも2時間加熱した。変換率をHPLCで確認した後、反応混合物を酢酸イソプロピルで希釈し、5(重量)%のNaCl水溶液にとかしたKHSO(Mw=136;1.00当量)、5(重量)%のNaCl水溶液、および水で洗浄した。酢酸イソプロピルを真空中で蒸発させた後、酢酸イソプロピルと共沸蒸留することによって過剰の水を除去した。濃縮中に、ペプチドが沈殿した。次いで、濃縮した懸濁液をシクロヘキサンに希釈した。沈殿物を室温で少なくとも10分間撹拌し、濾過し、最後に真空中45℃で乾燥した。乾燥した沈殿物から、白色固体のBoc−Ile−Leu−OHが(NMR含有量に基づいて)収率89%で得られた。
【0117】
13. 3HCl.Boc−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号1)の合成
1.00当量の3HCl.H−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(Mw=1652.9;純度=89.0%)をDMAおよびCHClにとかした冷(0±5℃)溶液に、1.05当量のBoc−Ile−Leu−OH(Mw=344.4)および1.10当量のHOOBt(Mw=163.13)を添加する。次いで、1.20当量のEDC(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド;Mw=191.7;純度=100.0%)を、反応混合物に添加し、さらに0±5℃で約4時間、次いで室温で少なくとも8時間撹拌した。反応の完了をHPLCで確認した後、反応混合物をCHCl/イソ−ブタノールの混合物(8/2)で希釈し、5(重量)%のNaCl水溶液+HCl(0.3当量)で洗浄した。有機層を濃縮した後、残留油を、冷(0±5℃)アセトニトリルにゆっくり注ぎ込むことによって沈殿させた。0±5℃で少なくとも30分間撹拌した後、懸濁液を濾過し、冷MTBEで2回洗浄した。沈殿物を40±5℃で乾燥した。灰色がかった白色固体が、最終的に得られた。
【0118】
収率(NMR含有量に基づく)=88%。
【0119】
14. 5HCl.H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)の合成
1.00当量のBoc−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Boc)−NH(配列番号1)(Mw=1980;純度=89.0%)を、ペプチドに対して24当量のHCl、および6当量の4−(メチルチオ)フェノール(Mw=124.2)を含有するイソプロパノールにゆっくりと添加した。添加が完了した後、反応混合物をイソプロパノールで希釈した。反応混合物を35±5℃で少なくとも2時間撹拌した。反応の完了をHPLCで確認した後、反応混合物を冷イソプロピルエーテルにゆっくりと注ぎ込んだ。沈殿物を0±5℃で少なくとも15分間撹拌し、次いで濾過し、イソプロピルエーテルで3回洗浄し、最後に真空乾燥して、5HCl.H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)を得た。
【0120】
15. 5HCl.H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)の精製
実施例14で得られた生成物をアセテート緩衝液に溶解し、0.5μmのメンブランを用いて濾過した。得られた溶液を、HPLCで以下のパラメータを使用して精製した:
−カラム:2.0*25cm(ID*L)
−固定相:C18シリカ;10μm−100A
−移動相:A=アセテート緩衝液、pH5.0(0.15M)
B=アセトニトリル
−流量:19mL/分
−波長:254nm
−グラジエント(分;B(%)):(0;10) (5;10) (6;18) (36;33) (36.1;60) (43;60) (43.1;10) (52;10)。
【0121】
オミガナンペプチド(配列番号1)が、98%を超える純度で得られた。
【0122】
得られた高純度の分画を水で希釈し、同じカラムを使用し、以下の移動相を使用して、酢酸イオンをClイオンに変更した:
−カラムの平衡用、水/アセトニトリル 95/5(v/v)
−イオン交換用、0.5M NaCl/MeCN 95/5(v/v)
−溶出用、水/MeCN 60/40(v/v)。
【0123】
次いで、得られた生成物を濃縮し、凍結乾燥した。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)という配列のペプチドであるオミガナンまたはその誘導体の製造方法であって、活性化されたカルボキシ基および少なくとも2つのアミノ酸単位を有する第1のペプチド、または活性化されたカルボキシ基を有するIle、Leu、ArgおよびTrp、Proからなる群から選択されるアミノ酸と、遊離アミノ基および少なくとも2つのアミノ酸単位を有する第2のペプチドとを溶液中でカップリングする少なくとも1つのステップを含み、第1および第2のペプチドは異なり、Ile、Leu、Arg、Trp、Pro、およびLysからなる群から選択されるアミノ酸を、オミガナン中のIle−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(配列番号1)という配列で規定される順序で含む方法。
【請求項2】
Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号2)またはその誘導体とIle−Leu(Ileのアミノ基はアミノ保護基で保護されている)をカップリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号3)またはその誘導体とArg−Trp−Pro(Argのアミノ基は保護基で保護されている)をカップリングするステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号4)またはその誘導体とTrp−Trp−Pro(N末端のTrpのアミノ基は保護基で保護されている)をカップリングするステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記保護基が、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基およびベンジルオキシカルボニル(Z)基から選択される、請求項2から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ArgまたはTrpのアミノ基が、ベンジルオキシカルボニル(Z)基で保護される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Lysの側鎖アミノ基および/またはIle中のN末端アミノ基が、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)で保護される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
Argを含むペプチドのテトラフェニルホウ酸塩を生成するステップを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記Argを含むペプチドのテトラフェニルホウ酸塩が、請求項1から7のいずれか一項に記載のカップリングステップで得られたArgを含むペプチドを含有するカップリングステップ反応媒体とテトラフェニルホウ酸アニオンの供給源とを接触させることによって生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記テトラフェニルホウ酸アニオンの供給源が、テトラフェニルホウ酸ナトリウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Argを含むペプチドのテトラフェニルホウ酸塩を、単離することなく少なくとも1つのその後の合成ステップにかける、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記Argを含むペプチドのテトラフェニルホウ酸塩を、少なくとも脱保護ステップと、その後に続くカップリングステップにかける、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のペプチドが、NH−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号4)、NH−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号5)、NH−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号6)、NH−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号7)、NH−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号8)、NH−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号9)、NH−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号10)、NH−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(X)−R(配列番号11)から選択される式を有し、式中、Xは、Lysの側鎖アミノ基のための保護基であり、Rは、Lysのカルボキシル基のためのカルボキシル保護基、好ましくはアミド基である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のペプチドが、0.1〜1重量%の(D)Arg−Arg−Lys(X)−R類似体を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のペプチドが、0.2〜0.9重量%の(D)Arg−Arg−Lys(X)−R類似体を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のペプチドがNH−Arg−Lys(X)−Rであり、式中、Xは、Lysの側鎖アミノ基のための保護基であり、Rは、Lysのカルボキシル基のためのカルボキシル保護基、好ましくはアミド基であり、前記第1のペプチドが、Y−Trp−Arg、Y−Pro−Trp−Arg、Y−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号12)、Y−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号13)、Y−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号14)、Y−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号15)、Y−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号16)、Y−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号17)、Y−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg(配列番号18)の群から選択され、式中、Yは、アミノ保護基、好ましくはZ基である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記カップリングが、アリール環を有するオキソ−トリアジン活性化剤、好ましくはHOOBtの存在下で実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カップリングが、−10から+10℃の温度で実施される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記カップリングが、ハロゲン化溶媒と非ハロゲン化溶媒との混合物、好ましくは塩素化溶媒とアミド型溶媒との混合物中で実施される、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
Z−Trp−Arg−OHとHCl.H−Arg−Lys(Boc)−NHをカップリングし、前記活性化剤がHOOBtであり、前記溶媒がDMAと塩化メチレンとの混合物であり、前記カップリングが、第1の期間を−5±5℃の温度で3から5時間、および第2の期間を+5±5℃の温度で6から10時間実施される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のペプチドが、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法で得られる、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
図1のスキームに従う、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
H−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号1)という配列のペプチドであるオミガナンを製造するための脱保護方法であって、式Y1−Ile−Leu−Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys(Y2)−NH(配列番号1)の前駆体ペプチドと酸を実質的に無水の条件下で反応させるステップを含み、式中、Y1とY2は同一もしくは異なるアミノ保護基、またはHを表し、Y1またはY2の少なくとも1つは酸に不安定なアミノ保護基である方法。
【請求項24】
Y1およびY2がBocである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記酸が、HCl、HF、トリフルオロ酢酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記酸がHClであり、ペプチド1モル当たり好ましくは6から32モル、より好ましくは12から24モルのHClが使用される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記反応が、有機溶媒、好ましくは脂肪族アルコール、より好ましくはイソプロパノール中で実施される、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
10mg/kgから1.5重量%、好ましくは50mg/kgから1重量%の水を含有する液体反応媒体中で反応を実施することによって、実質的に無水の条件が実現される、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記反応が、カルボカチオン、特にtert−ブチルカチオンの捕捉剤の存在下で実施される、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記反応が0℃から80℃、好ましくは30℃から45℃の温度で実施される、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチドであるオミガナンがその五塩酸塩の形で回収される、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前駆体ペプチドが、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法で得られる、請求項23から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ペプチドであるオミガナンの精製方法であって、不純物を含んだペプチドであるオミガナンを、水および有機溶媒を含む移動相を用いた逆相液体クロマトグラフィーにかけるステップを含む方法。
【請求項34】
前記移動相がアセトニトリルを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記移動相がアセテート緩衝液を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
対イオン交換ステップをさらに含む、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
濃縮および凍結乾燥ステップをさらに含む、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記オミガナンペプチドが、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法で得られる、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
Trp−Trp−Pro−OH。
【請求項40】
Arg−Trp−Pro−Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号2)。
【請求項41】
Arg−Trp−Pro−OH。
【請求項42】
Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号4)。
【請求項43】
Trp−Trp−Pro−Trp−Arg−Arg−Lys−NH(配列番号6)。
【請求項44】
前記N末端アミノ基が、保護基、好ましくはZ基で保護される、請求項40から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
前記Lysの側鎖アミノ基が、保護基、好ましくはBoc基で保護される、請求項40および42から44のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
請求項40から44のいずれか一項に記載の化合物のテトラフェニルホウ酸塩。
【請求項47】
図1に含まれる前記Argを含むペプチドのいずれかのテトラフェニルホウ酸塩。

【公表番号】特表2011−524382(P2011−524382A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513883(P2011−513883)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057637
【国際公開番号】WO2009/152850
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】