説明

ペリクル収納容器およびペリクル収納容器用の挟持部材

【課題】トレイと蓋との挟持する長手方向において、挟持力の差を小さくすることができるペリクル収納容器およびそのペリクル収納容器に用いられる挟持部材を提供する。
【解決手段】ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器であって、トレイ3と、その蓋となるカバー2と、トレイ3とカバー2を挟持する挟持部材4とを備え、挟持部材4が、装着状態においてカバー2に接してカバー2をトレイ3側に押しつける第一押圧部41と、装着状態においてトレイ3に接してトレイ3をカバー2側に押しつける第二押圧部42と、第一押圧部41と第二押圧部42とを連接する連接部43とを有し、連接部43におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さを、2つの開放端部の間の厚さよりも大きくしたペリクル収納容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル膜とペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器およびペリクル収納容器用の挟持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路パターンの製造工程の一部であるリソグラフィ工程で使用されるフォトマスク上に異物が付着すると、その異物のパターンが転写され、半導体チップの多くを不良品としてしまう危険性がある。このため、従来からフォトマスクの防塵を目的に、ペリクルが用いられている。
【0003】
ペリクルは、一般的に、ニトロセルロース等の透明な高分子膜からなる厚さ約10ミクロン程度のペリクル膜と、それを一方の周端面にて支持する厚さ数ミリ程度の支持枠とから構成されている。支持枠におけるペリクル膜と反対側の周端面には、フォトマスクに支持枠を固定するためのフィルム付きの粘着材が備えられている。粘着材は、ペリクルをフォトマスク上に配置した際にフォトマスクと支持枠との間に隙間ができないように、均一の厚みをもって備え付けられている。
【0004】
フォトマスクに支持枠を固定する際には、フォトマスクの上方にペリクル膜が配置されるようにペリクルをセッティングし、フィルムを剥がして粘着材を介して支持枠をフォトマスクに固定して、フォトマスク上に異物が付くことを防止している。
【0005】
また、近年、ペリクルは、液晶表示体の製造工程におけるリソグラフィ工程で使用されるフォトマスク用防塵手段としても多用されてきている。液晶表示体は、シリコンウェハに比べて大きな面積を有する。最近では、液晶表示体の大型化が進み、これに伴い、ペリクル膜も大型化し、1000mm×1000mm以上の大型ペリクル膜も多く使用されている。
【0006】
一般に、ペリクルを製造元から使用者に輸送するには、樹脂製のペリクル収納容器が用いられる。ペリクル収納容器は、主に、ペリクルを載置するトレイと、そのトレイの上から被せる蓋とから構成される。トレイと蓋とを固定する方法としては、例えば、両者の外周部を互いに密着する方向に挟みつける固定部品で固定する方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平7−142562号公報(段落番号0012、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ペリクル収納容器の大型化が進むと、上述の固定部品を用いてトレイと蓋とを挟んでも、その挟持する長手方向の挟持力の均一化を図ることが難しく、挟持力の弱い部分に生じた隙間から異物が入る危険性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、トレイと蓋との挟持する長手方向において、挟持力の差を小さくすることができるペリクル収納容器およびそのペリクル収納容器に用いられる挟持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器であって、トレイと、その蓋となるカバーと、トレイとカバーを挟持する挟持部材とを備え、挟持部材が、カバーとトレイとを挟持した状態において、カバーに接してカバーをトレイ側に押しつける第一押圧部と、カバーとトレイとを挟持した状態において、トレイに接してトレイをカバー側に押しつける第二押圧部と、第一押圧部と第二押圧部とを連接する連接部とを有し、連接部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さはが2つの開放端部の間の厚さよりも大きいペリクル収納容器としている。
【0010】
このため、連接部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の剛性が高まり、挟持部材における当該辺長方向中央付近の挟持力と、開放端部の挟持力との差を小さくすることができる。したがって、トレイとカバーとの密着性が高まり、外部から容器内に異物が入り込む危険性を低減できる。ここで、「辺長方向」とは、ペリクル収納容器の各辺の長手方向をいう。各辺には、トレイとカバーとを挟持するための挟持部材を装着するので、「辺長方向」は、「挟持する長手方向」に相当する。
【0011】
また、別の本発明は、先の発明における開放端部において、第一押圧部若しくは第二押圧部と連接部との接合部分を、その接合部分以外の部分より厚くしたペリクル収納容器としている。
【0012】
このため、挟持部材におけるペリクル収納容器の辺長方向中央付近の挟持力と、当該辺長方向の開放端部の挟持力との差をより小さくすることができる。したがって、トレイとカバーとの密着性が高まり、外部から容器内に異物が入り込む危険性をより低減できる。
【0013】
また、本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器であって、トレイと、その蓋となるカバーと、トレイとカバーを挟持する挟持部材とを備え、挟持部材は、カバーとトレイとを挟持した状態において、カバーに接してカバーをトレイ側に押しつける第一押圧部と、カバーとトレイとを挟持した状態において、トレイに接してトレイをカバー側に押しつける第二押圧部と、第一押圧部と第二押圧部とを連接する連接部とを有し、第一押圧部または第二押圧部の少なくともいずれか一方の押圧部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さを、2つの開放端部の間の厚さよりも大きくしたペリクル収納容器としている。
【0014】
このため、第一押圧部および第二押圧部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の剛性が高まり、挟持部材における当該辺長方向中央付近の挟持力と、開放端部の挟持力との差を小さくすることができる。したがって、トレイとカバーとの密着性が高まり、外部から容器内に異物が入り込む危険性を低減できる。
【0015】
また、本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器のトレイとその蓋となるカバーとを挟持するペリクル収納容器用の挟持部材であって、カバーとトレイとを挟持した状態において、カバーに接してカバーをトレイ側に押しつける第一押圧部と、カバーとトレイとを挟持した状態において、トレイに接してトレイをカバー側に押しつける第二押圧部と、第一押圧部と第二押圧部とを連接する連接部とを有し、連接部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さを、2つの開放端部の間の厚さよりも大きくしたペリクル収納容器用の挟持部材としている。
【0016】
このため、本発明に係るペリクル収納容器用の挟持部材を用いることによって、連接部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の剛性が高まり、挟持部材における当該辺長方向中央付近の挟持力と、開放端部の挟持力との差を小さくすることができる。したがって、トレイとカバーとの密着性が高まり、外部から容器内に異物が入り込む危険性を低減できる。
【0017】
また、別の本発明は、先の発明における開放端部において、第一押圧部若しくは第二押圧部と連接部との接合部分を、その接合部分以外の部分より厚くしたペリクル収納容器用の挟持部材としている。
【0018】
このため、本発明に係るペリクル収納容器用の挟持部材を用いることによって、挟持部材におけるペリクル収納容器の辺長方向中央付近の挟持力と、当該辺長方向の開放端部の挟持力との差をより小さくすることができる。したがって、トレイとカバーとの密着性が高まり、外部から容器内に異物が入り込む危険性をより低減できる。
【0019】
また、本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器のトレイとその蓋となるカバーとを挟持するペリクル収納容器用の挟持部材であって、カバーとトレイとを挟持した状態において、カバーに接してカバーをトレイ側に押しつける第一押圧部と、カバーとトレイとを挟持した状態において、トレイに接してトレイをカバー側に押しつける第二押圧部と、第一押圧部と第二押圧部とを連接する連接部とを有し、第一押圧部または第二押圧部の少なくともいずれか一方の押圧部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さを、2つの開放端部の間の厚さよりも大きくしたペリクル収納容器用の挟持部材としている。
【0020】
このため、本発明に係るペリクル収納容器用の挟持部材を用いることによって、第一押圧部および第二押圧部におけるペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の剛性が高まり、挟持部材における当該辺長方向中央付近の挟持力と、開放端部の挟持力との差を小さくすることができる。したがって、トレイとカバーとの密着性が高まり、外部から容器内に異物が入り込む危険性を低減できる。
【0021】
本発明に係るペリクル収納容器を構成するトレイとカバーとを挟持する挟持部材に用いられる材料は、特に限定されないが、ウレタン結合を有するゴム状弾性体であるウレタンエラストマーとするのが好ましい。特に、ポリオールとしてポリエーテルポリオール等のポリエーテルを用いて製造されるポリエーテル系ウレタンエラストマー、ポリオールとしてポリエステルポリオール等のポリエステルを用いて製造されるポリエステル系ウレタンエラストマーが好ましい。ただし、ポリエーテルおよびポリエステル以外のポリオールとして、ヒドロキシ末端ポリブタジエン及び部分的/完全に水素添加した誘導体、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いて製造されるウレタンエラストマーを用いても良い。
【0022】
本発明に係るペリクル収納容器を構成するトレイおよびカバーの材料には、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等を用いることができ、特に、ABS樹脂を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。
【0023】
本発明に係るペリクル収納容器は、好適には射出成形または押出成形にて製造される。また、金型成形において、金型内部を真空にする真空成形、樹脂側から金型方向にガス圧を及ぼして成形する圧空成形、または真空成形と圧空成形の両方を組み合わせた圧空真空成形を採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ペリクル収納容器を構成するトレイと蓋とを挟持する長手方向において、挟持力の差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るペリクル収納容器の好適な各実施の形態について、図面を参照しながら詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明に係るペリクル収納容器用の挟持部材の各実施の形態については、各実施の形態に係るペリクル収納容器の説明の中で説明する。各実施の形態の説明において、「上」および「下」は、それぞれトレイに対するカバーの位置方向およびカバーに対するトレイの位置方向をいう。
【0026】
(第一の実施の形態)
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るペリクル収納容器の分解斜視図である。また、図2は、図1に示すペリクル収納容器に挟持部材を装着した状態を示す斜視図である。
【0027】
図1および図2に示すように、ペリクル収納容器1は、トレイ3と、その蓋であるカバー2とを備えている。カバー2とトレイ3とは、互いの外周部において重ね合わせるように接合できる構造を有している。ペリクルをペリクル収納容器1内に収納して輸送する際には、カバー2とトレイ3の両外周部に、当該外周部を挟持して固定するための挟持部材4が装着される。この実施の形態では、カバー2およびトレイ3は共に矩形の凹状体としているので、挟持部材4は、四辺に装着できるように、4つ用意される。ただし、後述するように、四辺に各1個の挟持部材4を装着せずに、各辺に複数の挟持部材を装着したり、各辺の装着個数を変えたり、一部の辺に挟持部材を装着しなくてもよい。
【0028】
挟持部材4は、カバー2とトレイ3との両外周部を挟持する機能を有している。挟持部材4は、好適には、ポリエーテルポリオールおよび鎖延長剤と、ジイソシアネートとを重合させて製造したウレタンエラストマーの板状体を射出成形あるいは押出成形することにより得られる成形体である。挟持部材4の材料をウレタンエラストマーとすることにより、挟持部材4の着脱を繰り返しても、摩耗粉等が発生しにくい。
【0029】
カバー2およびトレイ3は、元板の厚さが約3mmのABS樹脂を原料とし、真空成形用金型を用いた真空成形法により製造される。ただし、ABS樹脂以外の樹脂を用いても良い。さらに、元板の厚みは3mmに限定されず、3mmより薄いあるいは3mmを超える板状の樹脂を成形してもよい。
【0030】
図3は、図2に示すペリクル収納容器1をA−A線にて切断した際の断面図である。
【0031】
カバー2は、トレイ3と対向する側に開口部を有する凹状体である。カバー2は、平面形状のカバー天面20と、当該カバー天面20から開口方向に広がるように筒状に形成される側面21と、当該側面21から水平に外方向に延出される水平面22と、当該水平面22から開口方向に広がるように筒状に形成される側面23と、当該側面23から水平に外方向に延出される水平面24と、当該水平面24から略垂直上向きに延びる垂直面25と、当該垂直面25から水平に外方向に延出される水平面26とを備えている。
【0032】
一方、トレイ3は、カバー2と対向する側に丘を形成させた開口部を有する凹状体である。トレイ3は、側面21の開口面積よりも大きい平面形状のトレイ底面30と、当該トレイ底面30からその周囲にカバー2と逆側に下方傾斜させた斜面31と、当該斜面31から水平に外方向に延出される水平面32と、当該水平面32から略垂直上向きに延びる垂直面33と、当該垂直面33から水平に外方向に延出される水平面34とを備えている。
【0033】
カバー2の水平面22とトレイ底面30とは、上下方向に対向する重複部分を有しており、この部分で、後述するペリクルの支持枠が挟持される。また、カバー2の水平面24、垂直面25および水平面26とから構成されるクランク形状部分は、トレイ3の水平面32、垂直面33および水平面34から構成されるクランク形状部分とほぼ同じ形状であり、カバー2側のクランク形状部分の下面がトレイ3側のクランク形状部分の上面と密着可能となっている。カバー2の水平面26とトレイ3の水平面34とは、上述の挟持部材4で挟持されて固定される。
【0034】
図4は、図3に示すペリクル収納容器1に収納するペリクル5を図2に示すA−A線で切断した際の断面図である。
【0035】
ペリクル5は、ニトロセルロース等の材質からなる厚さ10ミクロン以下のペリクル膜6を、四角枠形状の支持枠7の一方の端面(図4における上面)に展張して張り付けた構成を有している。支持枠7の高さは、約5mmである。ただし、ペリクル膜5の材質および厚さならびに支持枠7の高さは、上記に限定されるものではない。
【0036】
図4におけるXで示される部分の拡大図に示すように、支持枠7におけるペリクル膜6と反対側の周端面(底面)には、粘着材8が備えられている。粘着材8の表面には、通常、薄い剥離シート(不図示)が貼られている。ペリクル5を使用する場合には、当該剥離シートを粘着材8から剥がして、粘着力を発揮し得る状態としてから、支持枠7をフォトマスクに貼り付けて固定する。
【0037】
図5は、図3に示すペリクル収納容器1内に、図4に示すペリクル5を収納した状態を示す図である。
【0038】
ペリクル5は、その支持枠7の底面をトレイ底面30に載置し、支持枠7の上面をカバー2の水平面22に接触させた状態で、ペリクル収納容器1内に収納される。このように、支持枠7の高さ方向をカバー2とトレイ3とで挟持した状態にて輸送されるので、ペリクル5がペリクル収納容器1内で動く危険性は低くなる。
【0039】
図6は、図2に示すペリクル収納容器1を挟持部材4の端面4aに沿って矢印Sから切断した切断面近傍の部分拡大図である。図中、切断面を斜線の領域で示している。
【0040】
図6に示すように、挟持部材4は、それを装着した際にカバー2に接してトレイ3側に押しつける第一押圧部41と、トレイ3に接してカバー2側に押しつける第二押圧部42と、第一押圧部41と第二押圧部42とを連接する連接部43とを備えている。連接部43は、第一押圧部41および第二押圧部42のそれぞれの上端から所定長さ下方に移動した部位に接続されている。
【0041】
第一押圧部41は、カバー2の垂直面25に接するように立設された板状体であり、カバー2に接する端部に凸部47を有している。第二押圧部42は、第一押圧部41よりも長く、トレイ3の外面から下面に至る折曲形状を有している。第二押圧部42は、上方から下方に向かって、立設された板状体44と、その板状体44の下端からトレイ3の水平面32の角部まで斜めに延出される板状体45と、その板状体45の下端から水平面32の下面に沿って水平に延出される板状体46とから構成されている。また、第二押圧部42は、トレイ3の水平面34と垂直面33との角部およびトレイ3における水平面32の下面に接する箇所に、それぞれ、凸部48および凸部49を有している。
【0042】
図7は、挟持部材4を第一押圧部41側から見た斜視図である。図8は、挟持部材4を、図7に示す点線で囲まれた仮想平面Bにより切断した第二押圧部42側を示す図である。図8における斜線の部分は、仮想平面Bにて切断した切断面である。なお、図7以降の図において、第二押圧部42を構成する板状体44,45,46に、「(42)」を付している。
【0043】
連接部43は、ペリクル収納容器1の辺長方向に沿って異なる厚さ(上下方向の厚さ)を有する。挟持部材4の両開放端部における厚さXは、両開放端部に挟まれた内方部分の厚さYよりも大きい。連接部43の上面は、一方の開放端部側から他方の開放端部に向かって、略水平の上面53、上面53から下方に傾斜する斜面52、斜面52から略水平に延出する水平面51、水平面51から上方に傾斜する斜面52、斜面52に続く上面53から構成されている。連接部43の下面50は、略水平の水平面である。このように、連接部43の下面50と上面53との間の距離(厚さX)は、連接部43の下面50と水平面51との間の距離(厚さY)よりも大きい。開放端部における連接部43を肉厚化することによって、挟持部材4の中央部分と開放端部における両挟持力の差を低減でき、カバー2およびトレイ3の辺長方向に沿って、できるだけ均一な挟持力をもってカバー2とトレイ3とを挟持することが可能となる。なお、連接部43の上側の面にのみ凹凸を形成して両開放端部の肉厚化を図る以外に、連接部43の下面50あるいは上下両面に凹凸を形成して両開放端部の肉厚化を図っても良い。
【0044】
(第二の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル収納容器の第二の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態において、前述の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、その部分の説明を省略する。
【0045】
図9は、本発明の第二の実施の形態に係るペリクル収納容器1に用いられる挟持部材4を第一押圧部41側から見た斜視図である。図10は、図9に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す斜視図である。
【0046】
図9に示す挟持部材4は、挟持部材4の開放端部において、連接部43の第一押圧部41および第二押圧部42との接合部分が、その両接合部分以外の部分よりも厚くなるような形態を有している。すなわち、連接部43は、両開放端部がその内方よりも肉厚にしている以外に、両開放端部において第一押圧部41と第二押圧部42との接合部分を両接合部の間の部分よりも肉厚にしている点で、第一の実施の形態に係る挟持部材4と異なる。開放端部の連接部43の上方の面は、第一押圧部41側から下方に向かって形成される曲面54aと、略水平の上面53と、その上面53から上方に向かって形成される曲面54bとから構成されている。一方、開放端部の連接部43の下面50は、第一押圧部41から第二押圧部42にわたって略水平である。このような構成により、開放端部における連接部43では、第一押圧部41および第二押圧部42と連接部43との接合部分が最も厚く、上面53を有する部分が最も薄くなっている。
【0047】
このように、開放端部において、連接部43と第一押圧部41および第二押圧部42との各接合部分を肉厚化することによって、挟持部材4の中央部分と開放端部における両挟持力の差を低減でき、カバー2およびトレイ3の辺長方向に沿って、さらに均一な挟持力をもってカバー2とトレイ3とを挟持することが可能となる。なお、第一押圧部41または第二押圧部42のいずれか一方のみと連接部43との接合部分を肉厚化しても良い。また、斜面52を設けずに、水平面51のまま両開放端部まで延出し、両開放端部において第一押圧部41および第二押圧部42と連接部43との接合部分を肉厚化する構造を採用しても良い。
【0048】
(第三の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル収納容器の第三の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態において、前述の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、その部分の説明を省略する。
【0049】
図11は、本発明の第三の実施の形態に係るペリクル収納容器1に用いられる挟持部材4を第一押圧部41側から見た斜視図である。図12は、図11に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す斜視図である。
【0050】
図11に示す挟持部材4は、挟持部材4の両開放端部において、連接部43を肉厚にせずに、第一押圧部41および第二押圧部42を肉厚化したものである。両開放端部において、第一押圧部41の外側には突出部70が、第二押圧部42の外側には突出部60が、それぞれ形成されている。突出部70は、第一押圧部41から続く曲面部71と、その曲面部71から第一押圧部41の外面に平行な平面部72とを備えている。同様に、突出部60は、第二押圧部42から続く曲面部61と、その曲面部61から第二押圧部42の外面に平行な平面部62とを備えている。ただし、曲面部61,71は、必須の部分ではなく、第一押圧部41あるいは第二押圧部42からほぼ直角にそれぞれ突出する突出部60,70を備えるようにしても良い。
【0051】
このように、開放端部において、第一押圧部41と第二押圧部42とを肉厚化することによって、挟持部材4の中央部分と開放端部における両挟持力の差を低減でき、カバー2およびトレイ3の辺長方向に沿って、できるだけ均一な挟持力をもってカバー2とトレイ3とを挟持することが可能となる。なお、第一押圧部41または第二押圧部42のいずれか一方のみを肉厚化しても良い。
【0052】
(第四の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル収納容器の第四の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態において、前述の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、その部分の説明を省略する。
【0053】
図13は、本発明の第四の実施の形態に係るペリクル収納容器1に用いられる挟持部材4を第一押圧部41側から見た斜視図である。図14は、図13に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す斜視図である。
【0054】
図13に示す挟持部材4は、第二の実施の形態に係る挟持部材4と第三の実施の形態に係る挟持部材4の各特徴部分を両方とも備えたものである。すなわち、連接部43は、両開放端部が両開放端部の間の部分よりも肉厚化され、両開放端部において連接部43と第一押圧部41および第二押圧部42との両接合部分が当該両接合部分以外の箇所よりも肉厚化され、かつ第一押圧部41および第二押圧部42が肉厚化されている。
【0055】
このように、開放端部において、連接部43、第一押圧部41、第二押圧部42をそれぞれ肉厚化することによって、挟持部材4の中央部分と開放端部における両挟持力の差をより低減でき、カバー2およびトレイ3の辺長方向に沿って、より均一な挟持力をもってカバー2とトレイ3とを挟持することが可能となる。なお、第一押圧部41または第二押圧部42のいずれか一方のみを肉厚化しても良い。さらに、第一押圧部41および/または第二押圧部42の内面側を肉厚化しても良い。また、斜面52を設けずに、水平面51のまま両開放端部まで延出し、両開放端部において第一押圧部41および第二押圧部42と連接部43との接合部分を肉厚化する構造を採用しても良い。
【0056】
(第五の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル収納容器の第五の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態において、前述の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、その部分の説明を省略する。
【0057】
図15は、本発明の第五の実施の形態に係るペリクル収納容器1に用いられる挟持部材4を第一押圧部41側から見た斜視図である。図16は、図15に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す斜視図である。
【0058】
図15に示す挟持部材4は、両開放端部において、連接部43の上方の面を、第一押圧部41側から下方に向かって形成される斜面55aと、略水平の上面53と、その上面53から上方に向かって形成される斜面55bとから構成している点を除き、第四の実施の形態に係る挟持部材4(図13、図14)と同様の形態を有している。このように、曲面54に替えて、斜面55a,55bを設けても、挟持部材4の中央部分と開放端部における両挟持力の差をより低減でき、カバー2およびトレイ3の辺長方向に沿って、より均一な挟持力をもってカバー2とトレイ3とを挟持することが可能となる。なお、第一押圧部41または第二押圧部42のいずれか一方のみを肉厚化しても良い。さらに、第一押圧部41および/または第二押圧部42の内面側を肉厚化しても良い。また、斜面52を設けずに、水平面51のまま両開放端部まで延出し、両開放端部において第一押圧部41および第二押圧部42と連接部43との接合部分を肉厚化する構造を採用しても良い。
【0059】
(第六の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル収納容器の第六の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態において、前述の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を付し、その部分の説明を省略する。
【0060】
図17は、本発明の第六の実施の形態に係るペリクル収納容器1の斜視図である。
【0061】
図17に示すように、挟持部材4をカバー2とトレイ3の各辺方向に1つのみとせずに、複数装着するようにしても良い。その場合であっても、各挟持部材4の両開放端部において、第一押圧部41および/または第二押圧部42を肉厚化することができる。また、各挟持部材4の両開放端部において、連接部43におけるペリクル収納容器1の辺長方向の肉厚化および/または第一押圧部41と第二押圧部42とを結ぶ方向において、各押圧部41,42と連接部43との接合部分の肉厚化を行うことができる。
【0062】
以上、本発明に係るペリクル収納容器およびペリクル収納容器用の挟持部材の好適な各実施の形態について説明したが、本発明に係るペリクル収納容器およびペリクル収納容器用の挟持部材は、上述の各実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0063】
上述の挟持部材4以外の形態を有する挟持部材を採用することもできる。例えば、カバー2の垂直面25とトレイ3の垂直面33とを挟持する挟持部材、カバー2の水平面24とトレイ3の水平面32とを挟持する挟持部材、カバー2の水平面26とトレイ3の水平面32とを挟持する挟持部材を採用してもよい。すなわち、挟持部材4は、カバー2とトレイ3とを挟持する部材であり、カバー2に接してトレイ3側に押圧する第一押圧部材と、トレイ3に接してカバー2側に押圧する第二押圧部材と、各押圧部材を連接する連接部とを備えるのであれば、カバー2とトレイ3の形状に応じて適切な形状を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ペリクルを輸送するための収納容器を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るペリクル収納容器の分解斜視図である。
【図2】図1に示すペリクル収納容器に挟持部材を装着する状況を示す斜視図である。
【図3】図2に示すペリクル収納容器を、A−A線にて切断した際の断面図である。
【図4】図3に示すペリクル収納容器に収納するペリクルを、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図である。
【図5】図3に示すペリクル収納容器内に、図4に示すペリクルを収納した状態の断面図である。
【図6】図2に示すペリクル収納容器を挟持部材の端面に沿って矢印Sから切断した切断面近傍の部分拡大図である。
【図7】図6に示す挟持部材を第一押圧部側から見た斜視図である。
【図8】図7に示す挟持部材を、図7に示す点線で囲まれた仮想平面Bにより切断した第二押圧部側を示す図である。
【図9】本発明の第二の実施の形態に係るペリクル収納容器に装着される挟持部材を第一押圧部側から見た斜視図である。
【図10】図9に示す挟持部材における図9に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す図である。
【図11】本発明の第三の実施の形態に係るペリクル収納容器に装着される挟持部材を第一押圧部側から見た斜視図である。
【図12】図11に示す挟持部材における図11に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す図である。
【図13】本発明の第四の実施の形態に係るペリクル収納容器に装着される挟持部材を第一押圧部側から見た斜視図である。
【図14】図13に示す挟持部材における図13に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す図である。
【図15】本発明の第五の実施の形態に係るペリクル収納容器に装着される挟持部材を第一押圧部側から見た斜視図である。
【図16】図15に示す挟持部材における図15に示す点線で囲まれた部分Pを拡大して示す図である。
【図17】本発明の第六の実施の形態に係るペリクル収納容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ペリクル収納容器
2 カバー
3 トレイ
4 挟持部材
5 ペリクル
6 ペリクル膜
7 支持枠
8 粘着材
20 カバー天面
21 側面
22 水平面
23 側面
24 水平面
25 垂直面
26 水平面
30 トレイ底面
31 斜面
32 水平面
33 垂直面
34 水平面
41 第一押圧部
42 第二押圧部
43 連接部
44 板状体
45 板状体
46 板状体
47 凸部
48 凸部
49 凸部
50 下面
51 水平面
52 斜面
53 上面
54a 曲面
54b 曲面
55a 斜面
55b 斜面
60 突出部
61 曲面部
62 平面部
70 突出部
71 曲面部
72 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器であって、
トレイと
その蓋となるカバーと、
上記トレイと上記カバーを挟持する挟持部材と、
を備え、
上記挟持部材は、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記カバーに接して上記カバーを上記トレイ側に押しつける第一押圧部と、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記トレイに接して上記トレイを上記カバー側に押しつける第二押圧部と、
上記第一押圧部と上記第二押圧部とを連接する連接部と、
を有し、
上記連接部における上記ペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さは、2つの上記開放端部の間の厚さよりも大きいことを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項2】
前記開放端部において、前記第一押圧部若しくは前記第二押圧部と前記連接部との接合部分を、その接合部分以外の部分より厚くしていることを特徴とする請求項1に記載のペリクル収納容器。
【請求項3】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器であって、
トレイと
その蓋となるカバーと、
上記トレイと上記カバーを挟持する挟持部材と、
を備え、
上記挟持部材は、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記カバーに接して上記カバーを上記トレイ側に押しつける第一押圧部と、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記トレイに接して上記トレイを上記カバー側に押しつける第二押圧部と、
上記第一押圧部と上記第二押圧部とを連接する連接部と、
を有し、
上記第一押圧部または上記第二押圧部の少なくともいずれか一方の押圧部における上記ペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さは、2つの上記開放端部の間の厚さよりも大きいことを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項4】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器のトレイとその蓋となるカバーとを挟持するペリクル収納容器用の挟持部材であって、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記カバーに接して上記カバーを上記トレイ側に押しつける第一押圧部と、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記トレイに接して上記トレイを上記カバー側に押しつける第二押圧部と、
上記第一押圧部と上記第二押圧部とを連接する連接部と、
を有し、
上記連接部における上記ペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さは、2つの上記開放端部の間の厚さよりも大きいことを特徴とするペリクル収納容器用の挟持部材。
【請求項5】
前記開放端部において、前記第一押圧部若しくは前記第二押圧部と前記連接部との接合部分を、その接合部分以外の部分より厚くしていることを特徴とする請求項4に記載のペリクル収納容器用の挟持部材。
【請求項6】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル収納容器のトレイとその蓋となるカバーとを挟持するペリクル収納容器用の挟持部材であって、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記カバーに接して上記カバーを上記トレイ側に押しつける第一押圧部と、
上記カバーと上記トレイとを挟持した状態において、上記トレイに接して上記トレイを上記カバー側に押しつける第二押圧部と、
上記第一押圧部と上記第二押圧部とを連接する連接部と、
を有し、
上記第一押圧部または上記第二押圧部の少なくともいずれか一方の押圧部における上記ペリクル収納容器の辺長方向の開放端部の厚さを、2つの上記開放端部の間の厚さよりも大きくしていることを特徴とするペリクル収納容器用の挟持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−333950(P2007−333950A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164686(P2006−164686)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】