説明

ペリクル収納容器

【課題】ペリクル収納容器の軽量化と共に、ペリクルの品質を高く維持できるペリクル収納容器を提供すること。
【解決手段】ペリクル膜およびペリクル膜を支持する支持枠を有するペリクルを、トレイ4と当該トレイ4と対向配置されるカバー1Aの間に形成される空間に収納して輸送するためのペリクル収納容器1であって、支持枠を保持するための保持部材2を備え、保持部材2は、弾性部材3を介してトレイ4に配置されているペリクル収納容器1としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等に用いられるフォトマスク等には、防塵用の保護膜として、ペリクルが貼り付けられる。ペリクルは、ペリクル膜とペリクル膜を支持する支持枠とから主に構成される。
【0003】
ペリクルを製造者から使用者に搬送する際には、ペリクル膜に異物等が付着する、あるいはペリクル膜が損傷することを防ぐ必要がある。そのため、トレイとそのカバーとを備えた収納容器にペリクルを入れて搬送するのが一般的である。
【0004】
近年、液晶パネルの大型化と共に、ペリクルも大型化している。ペリクル収納容器の大型化に伴い、ペリクル収納容器の反りの量が増加している。ペリクル収納容器の反り等により、収納しているペリクル膜が変形あるいは損傷する危険性がある。かかる事態を防止するため、補強部材等によりトレイを補強したペリクル収納容器が考案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−81533号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のペリクル収納容器の場合、補強部材を加えた分、ペリクル収納容器が重くなり、その搬送およびペリクルの収納作業に労力を有するという問題がある。また、ペリクル収納容器が、自重により一層大きく変形する危険性も高まる。
【0006】
さらに、ペリクル収納容器とペリクルとの温度に対する線膨張率が異なるために、大型のペリクルおよびペリクル収納容器の大型化に伴い、両者の膨張あるいは収縮の幅の差がより大きくなるという問題がある。かかる膨張あるいは収縮に対して何らかの措置を講じないと、ペリクルに大きな応力が加わり、ペリクルの変形や破損が生じる可能性が高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、ペリクル収納容器の軽量化と共に、ペリクルの品質を高く維持できるペリクル収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の有利な形態は、ペリクル膜およびペリクル膜を支持する支持枠を有するペリクルを、トレイと当該トレイと対向配置されるカバーの間に形成される空間に収納して輸送するためのペリクル収納容器であって、支持枠を保持するための保持部材を備え、保持部材は、弾性部材を介してトレイに配置されている。
【0009】
さらに、弾性部材と保持部材との間に載置部材が配置され、保持部材は、外側方向に突出する突出部を有し、突出部を、載置部材に固定することにより、保持部材をトレイに固定するのが好ましい。
【0010】
また、保持部材は、支持枠と同じあるいはそれよりも小さい線膨張率を有するものとするのが好ましい。
【0011】
また、保持部材は、繊維強化樹脂から主に構成されるものとすることが好ましい。
【0012】
また、保持部材は、トレイから着脱可能に配置されているものとすることが好ましい。
【0013】
また、保持部材と、トレイとは、15mm〜45mm離間して配置されていることが好ましい。
【0014】
また、保持部材は、中空であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ペリクル収納容器の軽量化と共に、ペリクルの品質を高く維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るペリクル収納容器の好適な各実施の形態について、図面を参照しながら詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。各実施の形態の説明において、ペリクル収納容器の載置面のうち短辺に沿う方向をX軸方向、長辺に沿う方向をY軸方向、および載置面からの高さをZ軸方向とし、トレイからカバーに向かう方向を「上」、カバーからトレイに向かう方向を「下」という。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係るペリクル収納容器1の分解斜視図である。図2は、図1のペリクル収納容器1のうち、カバー1A以外の部材を組み立てた状態の斜視図である。図3は、図2のペリクル収納容器1をW−W線を含むZ軸方向に伸びる面で切断した場合の断面図である。図4は、図2のペリクル収納容器1をT−T線を含むZ軸方向に伸びる面で切断した場合の断面図である。図5は、図2のペリクル収納容器1に、ペリクル20を配置した場合の上面図である。なお、各図の見やすさを優先するため、各図の縮尺を変えている。
【0018】
図1に示すように、ペリクル収納容器1は、上側から、カバー1A、保持部材2、弾性部材3、トレイ4を備える。
【0019】
カバー1Aは、は、トレイ4と対向する側に開口部を有する凹状体である。例えば、約5mmの厚さの樹脂板等により、形成されている。また、カバー1Aとトレイ4とは、互いの外周部分において重ね合わせるように接合できる構造を有している。カバー1Aとトレイ4の固定は、例えば、それぞれの外周部分をクリップ等で留める方法等を採用できる。
【0020】
保持部材2は、ペリクル20の支持枠21を保持するための枠状の部材である。なお、保持部材2の形状は、枠状に限定されず、ペリクル20の支持枠21(図3、図4を参照)に沿って形成される棒状、ブロック体等の他の形状であってもよい。本実施の形態において、保持部材2は、長方形の枠部5、その長辺にあってX方向外側へ突出する固定部6および突出部7を有する。また、保持部材2は、トレイ4よりも剛性が高い材料により構成されているのが好ましい。さらに、保持部材2は、ペリクル20の線膨張係数と等しいあるいはそれに近い値の線膨張係数を有する材料から構成されることがより好ましい。なぜなら、ペリクル収納容器1の周囲の温度が変化しても、保持部材2とペリクル20とが同程度に膨張あるいは収縮するため、ペリクル20に無理な応力が加わらず、ペリクル20の変形や破損を防止できるからである。なお、線膨張係数は、JIS K 7197に規定される試験方法等により得られる数値で比較することができる。固定部6は、保持部材2にペリクル20の支持枠21を固定するための固定部材(不図示)を取り付けるための部分である。本実施の形態において、固定部6は、枠部5の長辺の両端から、X方向外側へ突出する平板状の部材である。
【0021】
図1および図2に示すように、突出部7は、保持部材2をトレイ4に固定するために設けられている。本実施の形態において、枠部5の長辺の両端に配置された2つの固定部6の間を略3等分する位置に、突出部7が合計4個配置されている。また、突出部7は、平板状の部材であり、幅広面をZ方向に向けて、枠部5のX方向外側の面からX方向外側に向かって突出している。また、突出部7の裏面側には、後述のネジ12を挿入するための溝が設けられている。
【0022】
弾性部材3は、保持部材2とトレイ4との間に配置される。弾性部材3は、トレイ4の変形を保持部材2に伝達しにくくするための部材、あるいは保持部材2とトレイ4との相対位置のずれを緩衝するための部材である。本実施の形態において、弾性部材3は、突出部7の下側の面と同じ大きさあるいはそれよりも小さいものである。しかし、弾性部材3は、保持部材2の下側の面の全面に配置されていても良い。本実施の形態において、弾性部材3は、XY平面状の位置を決めるための貫通孔8を4箇所に有する。
【0023】
弾性部材3の材料としては、適度な弾性を有する熱可塑性のエラストマー等からなることが好ましい。例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系あるいはポリウレタン等のエラストマーが好適に用いられる。これらの材料は、ペリクル膜への付着物を発生しにくいので、特に好ましい。
【0024】
トレイ4は、好適には、厚さが約3mmのABS樹脂を原料とし、真空成形法により製造される。なお、トレイ4は、ABS樹脂以外の樹脂から構成されても良いし、その厚みは3mmに限定されず、3mmより薄いあるいは3mmを超える板状の樹脂を成形してもよい。
【0025】
また、トレイ4は、上に凹の凹状体であり、例えば、約3mmの板材により形成されている。トレイ4は、外周部分に、Z方向上側に突出する外周部9を有する。また、外周部9の内周側には、段部10が設けられている。段部10には、保持部材2の突出部7および弾性部材3が配置される。段部10に囲まれた領域には、段部10の上面よりも下方向に凹む凹部11が形成されている。また、凹部11の外周は、枠部5の外周よりも小さく、枠部5の内周よりも大きい。
【0026】
上述のようなペリクル収納容器1には、以下のようにしてペリクル20が収納される。まず、保持部材2の上面側に、ペリクル膜が固定された支持枠21が載置される。次に、弾性部材3を突出部5の下面側に介在するように、ペリクル20を載置した保持部材2をトレイ4に配置する。保持部材2は、そのX方向端部およびY方向端部が、トレイ4の外周部9の内側に接しないように、トレイ4の開口部内に配置される。最後に、トレイ4の下面側から突出部5に設けられた溝に向かって、トレイ4、弾性部材3および突出部5をネジ12で緩く留める。
【0027】
なお、トレイ4の下面には、ネジ12の挿入部分に、ネジ12の頭部が収納される溝14が形成されている。したがって、ネジ12は、溝14の内部に収納されて、トレイ4の下面側に突出しない。なお、弾性部材3がトレイ4に対して、数mm動くことができるように、ネジ12を必要以上に強く締めないのが好ましい。
【0028】
また、弾性部材3の下面は、枠部5の下面よりも突出している。そのため、保持部材2は、トレイ4の上面から、弾性部材3により、距離Dの間隙を有して離間した状態を保つことができる。なお、保持部材2は、トレイ4と一部で接触していてもよいが、トレイ4と保持部材2とが弾性部材3のみにより支持されている場合には、トレイ4の変形の影響を保持部材2が受けにくく、その結果、ペリクル20が変形しにくくなる。
【0029】
このようなペリクル収納容器1を用いることにより、周囲の温度によりトレイ4が膨張あるいは変形した場合に、弾性部材3がその変位を吸収するような役割を果たす。したがって、トレイ4の変形により保持部材2が変形しにくく、保持部材2に載置されているペリクル20に、無理な応力が加わりにくい。
【0030】
また、ペリクル20の下面の全面を覆うトレイ4が、剛性の低い部材から構成される場合であっても弾性部材3がそのトレイ4の変形を吸収できる。したがって、剛性は低いがより軽量な樹脂製のトレイ4と、トレイ4により剛性が高い保持部材23と組み合せることにより、ペリクル収納容器1が変形してもペリクル20が変形しにくい。加えて、ペリクル収納容器1の軽量化も図ることができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係るペリクル収納容器30について、図面を参照して説明する。
【0032】
第2の実施の形態に係るペリクル収納容器30は、第1の実施の形態に係るペリクル収納容器1とは、保持部材2とトレイ4との間の固定方法において異なる。以下、その相違点について主として説明する。以下の説明においては、第1の実施の形態と同一または同種の部材については、同一の符号をなし、その説明を省略または簡略化する。
【0033】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るペリクル収納容器30の斜視図および一点鎖線で囲われた部分の拡大斜視図である。ペリクル収納容器1は、上側から、カバー1A、保持部材2、弾性部材3、トレイ4を備える。
【0034】
第2の実施の形態のペリクル収納容器30は、保持部材2とトレイ4とを固定するための載置部材40を有する。載置部材40は、幅広面をZ軸方向に向けている板状部材41に、X軸方向に貫通する穴42を有する脚部43が配置されている。また、板状部材41の長手方向外側に隣接する下面側には、それぞれ弾性部材44が配置されている。そして、Z軸方向に板状部材41を貫通する2箇所のネジ穴および弾性部材44の孔を通って、トレイ4のネジ穴(不図示)に、上面側からネジ45が挿入されている。
【0035】
保持部材2の突出部7は、載置部材40の脚部43が有する穴42の内周と同じあるいはそれよりも小さい外周を有している。
【0036】
上述のようなペリクル収納容器30にペリクル20を収納する場合には、まず、保持部材2の突出部7を載置部材40の穴42に通す。次に、保持部材2の枠部5の上面側にペリクル20を載置する。そして、ペリクル20が載置された保持部材2をトレイ4の所定の場所に配置する。最後に、突出部7に通された載置部材40のネジ穴に、上面側からネジ45を入れて、ネジ止めする。
【0037】
このようなペリクル収納容器30は、ペリクル収納容器1と同様に、弾性部材44により枠部5をトレイ4の上面から浮いた状態を保つことができる。また、第2の実施の形態に係る収納容器30は、第1の実施の形態に係るペリクル収納容器1と異なり、保持部材2の突出部7に穴を設ける必要がない。硬質の保持部材2に穴を設ける必要がないので、保持部材2の作製が容易になる。さらに、保持部材2に穴を設けないので、保持部材2の強度を高めることができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係るペリクル収納容器について説明する。第3の実施の形態に係るペリクル収納容器が、上述の各実施の形態に係るペリクル収納容器1,30と異なるのは、保持部材2の材料である。
【0039】
第3の実施の形態における保持部材2は、繊維を含有する樹脂から主に構成される。繊維を含有する樹脂としては、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)が好適に用いられる。CFRPは、例えば、プリプレグ法にて製造されたCFRPを用いることができる。プリプレグ法では、まず、ポリアクリロニトリル繊維を焼成した炭素繊維を一方向に引き揃えた織物に樹脂を含浸させて作成した中間素材(プリプレグ)を、繊維の方向を変えて何枚も積層する。次に、プリプレグを高温下で加圧および硬化することでCFRPが得られる。しかし、プリプレグ法で作製されたCFRPに限らず、フィラメントワインディング法やレジントランスファー成形法により成形されたCFRPを用いてもよい。また、炭素繊維ではなくガラス繊維を樹脂に含有するGRP(Glass−Reinforced Plastics)等、他の繊維により強化された樹脂を用いてもよい。
【0040】
上述のような保持部材2とすることで、より軽量かつ強度が高い保持部材2とすることができる。なぜなら、繊維含有樹脂は、非常に高強度であると共に、鉄やアルミなどの金属から構成される保持部材2に比べ、同じ強度あるいは剛性であっても、より軽量であるからである。また、一般的に繊維含有樹脂は、非常に高価であるが、保持部材2は、枠状であるため、トレイ4を繊維含有樹脂で製造する場合に比べて、安価となる。
【0041】
さらに、一般的に繊維含有樹脂は、温度変化に対して低膨張率であるため、ペリクル20と、線膨張係数が近いものとなる。したがって、温度が変化した場合に、ペリクル20に無理な力を加えることが少ないものとなる。
【0042】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態に係るペリクル収納容器について説明する。
【0043】
第4の実施の形態に係るペリクル収納容器50は、第1の実施の形態に係るペリクル収納容器1とは、保持部材とトレイとの固定方法において異なる。以下、その相違点について主として説明する。以下の説明においては、第1の実施の形態と同一または同種の部材については、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0044】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係るペリクル収納容器50の分解斜視図である。また、図8は、図7のEで示す領域を拡大して示す拡大図である。
【0045】
第4の実施の形態のペリクル収納容器50では、保持部材51とトレイ52とが接離可能に固定されている。また、保持部材51は、第1の実施の形態の保持部材2と異なり、突出部7を有していない。さらに、保持部材51は、後述するシール材53およびブロック部54をネジなどにて固定するためのネジ穴55を有する。たとえば、ネジ穴55は、保持部材51の長辺の両端付近およびその長辺を2等分する位置に、4箇所ずつ形成されている。保持部材51としては、軽量化と剛性の向上とを両方可能にするために、内部が中空の、いわゆる角パイプを用いてもよい。
【0046】
シール材53は、保持部材51とブロック部54との間を埋めるため、および支持枠21の外周側の面と接触する緩衝材料として機能する。本実施の形態において、シール材53は、保持部材51のネジ穴55が設けられた領域の上面側に配置される。シール材53は、下面側が略四角形の底面部60と、底面部60の辺のうち、支持枠21の外周側と接する辺の両端に設けられる壁部61と、を有する。底面部60は、保持部材51のネジ穴55とZ軸方向に重なる位置に貫通孔62を有する。また、1つのシール材53が有する2つの壁部61の間は、空隙が形成されている。なお、壁部61のZ方向の高さは、支持枠21のZ方向の高さよりも高いことが好ましい。また、壁部61がより衝撃を吸収しやすくするために、壁部61の外周側に突起62を設けてもよい。さらに、シール材53の壁部61は、支持枠21と接触するため、耐摩耗性を向上させる目的でウレタン系樹脂から構成されるのが望ましい。このようなシール材53を用いることで、保持部材51とトレイ52との相対位置のずれを壁部61で緩衝することができる。
【0047】
ブロック部54は、シール材53の底面部60のZ軸方向上面側に配置される。また、ブロック部54は、保持部材51のネジ穴55とZ軸方向で重なる位置に孔を有し、保持部材51の下方側から挿入されるネジ(不図示)により、シール材53と一緒に保持部材51に固定される。また、ブロック部54は、略立方体の基体部70と、ピン71とを有する。基体部70の内周側は、シール材53の壁部61の外周側に接触する。ピン71は、基体部70の内部を外周側から内周側へ貫通している。なお、ピン71の内周側端部は、シール材53の2つの壁部61の間に形成された空隙から、内周側に突出している。また、支持枠21の外側面には非貫通の孔(不図示)が設けられており、そこに、ピン71の内周側先端が挿入される。各々のピン71が支持枠21の外側面に設けられた孔(不図示)に挿入されることにより、支持枠21は、保持部材51に固定される。基体部70およびピン71は、ABS等の樹脂を射出成形して製作することが好ましい。さらに、支持枠21とピン71との擦れによる発塵を防止するために、ピン71の先端に弾性体等を設けてもよい。
【0048】
図9は、図7のFで示す領域を拡大して示す拡大斜視図である。トレイ52には、トレイ4と同様に、Z方向上側に突出する外周部81、外周部81の内側の段部82、そして段部82の上面よりも下方向に凹む凹部83が形成されている。しかし、凹部83の外周は、保持部材51の外周よりも大きい。さらに、凹部83の四隅には、受け部84が形成されている。具体的には、受け部84は、トレイ52の底面に配置される底部85そして、段部82の内周から15〜45mm程度の幅で突出しているL字状の凸部86を有する。
【0049】
弾性部材87は、底部85の上面および凸部86の内壁に接触するように受け部84に配置される。弾性部材87は、底部85と略同一の底面を有する底面部88を有し、ネジ12などにより固定されている。また、弾性部材87は、凸部85との接触面に沿って壁部89を有する。弾性部材87の壁部89と底面部88により、支持枠21の角部が収納される。弾性部材87を介してトレイ52に保持部材51が配置されると、トレイ52と保持部材51とは、Z方向に15〜45mm、好ましくは、30mm以上隔てられて、保持部材51は、浮いた状態となる。なお、受け部84の凸部86は、段部82の内周から15〜45mm程度の幅で突出しているので、保持部材51の外周とトレイ52の内周は、凸部86が突出している分だけ離間している。ここで、保持部材51の外周とトレイ52の内周が40mm以上離れ、かつ、保持部材51の底面とトレイ52の底面との間が30mm以上であることがより好ましい。なぜなら、ペリクル20が載置された保持部材51を取り出す際に、保持部材51の外側から下部に指を入れて、保持部材51を持ち上げることができるからである。
【0050】
上述のようなペリクル収納容器50にペリクル20を収納する場合には、まず、保持部材51にシール材53およびブロック部54をネジで取り付ける。次に、ペリクル20を保持部材51に配置および固定する。具体的には、ペリクル20の支持枠21外側面に設けられた孔(不図示)にブロック部54のピン71が挿入されることにより、保持部材51に支持枠21が固定される。次に、トレイ52の受け部84に、保持部材51の角部を合わせるようにして、ペリクル20、シール材53およびブロック部54が固定された保持部材51をトレイ52に配置する。すなわち、保持部材51は、受け部84に配置された弾性部材87を介してトレイ52の底面から浮いた状態となる。
【0051】
一方、ペリクル収納容器50に収納されたペリクル20を取り出す場合には、保持部材51の外周と凹部の間に指をいれて、ペリクル20が載置された保持部材51を取り出すことができる。そして、ピン71の内周側先端を支持枠21の孔(不図示)から抜くことでペリクル20を保持部材51から外すことができる。すなわち、剛性の高い保持部材51に載せたまま、ペリクル20をトレイ52から取り出し、所望の場所に載置できる。
【0052】
また、このようなペリクル収納容器50は、上述の各実施の形態と同様に、弾性部材87により支持枠21および保持部材51をトレイ52の上面から浮いた状態を保つことができる。すなわち、トレイ52が膨張あるいは変形した場合に、弾性部材87がその変位を吸収するため、ペリクル20に傷などがつきにくいものとなる。
【0053】
以上、本発明に係るペリクル収納容器の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に何ら限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0054】
例えば、第1の実施の形態では、保持部材2は、固定部6および突出部7を有するものとしたが、これらは必須ではない。保持部材2が突出部7を有していない場合には、枠部5の下面に弾性部材を配置することができる。同様に、保持部材2が固定部6を有していない場合には、枠部5の上面等にペリクル20の支持枠21を固定するための部材を配置することができる。
【0055】
また、上述の実施の形態では、トレイ4,52は、外周部9,81および凹部11,83を有しているものとしているが、外周部9,81および凹部11,83は必須ではない。しかし、凹部11,83があることにより、ペリクル20がトレイ4,52に接触することを効果的に防ぐことができる。また、外周部9,81があることにより、横方向からの異物等が入りにくく、ペリクル20を汚染から保護できる。
【0056】
また、上述の実施の形態では、ネジ12等により、弾性部材3,44を介して保持部材2をトレイ4に固定するものとしたが、このような形態に限らない。例えば、粘着テープあるいは接着剤等、各部材を固定できるものであればどのようなものを用いて保持部材2と弾性部材3,44、あるいは弾性部材3,44とトレイ4とを固定してもよい。
【0057】
また、第2の実施の形態では、脚部43を有する載置部材40としたが、このような形態に限らない。突出部7を挿入あるいは固定できる手段であればどのような手段を用いてもよい。例えば、脚部43は、貫通する穴42を有さずに、貫通していない凹部を有するような形態であってもよい。
【0058】
また、各実施の形態において、保持部材2,51にペリクル20を載置した後、保持部材2,51をトレイ4,52に載置する形態としているが、このような形態に限らない。トレイ4,52に保持部材2,51を載置してから、ペリクル20を保持部材2,51に載置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るペリクル収納容器の分解斜視図である。
【図2】図1のペリクル収納容器のうち、カバー以外の部材を組み立てた状態の斜視図である。
【図3】図2のペリクル収納容器を図2のW−W線で切断し矢印方向に見た場合の断面図である。
【図4】図2のペリクル収納容器を図2のT−T線で切断し矢印方向に見た場合の断面図である。
【図5】図2のペリクル収納容器にペリクルを載置した状態を示す上面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るペリクル収納容器(カバーを除く)の斜視図および一点鎖線で囲まれた部分の拡大斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るペリクル収納容器の分解斜視図である。
【図8】図7のペリクル収納容器のうち、Eで示す領域を拡大して示す拡大斜視図である。
【図9】図7のペリクル収納容器うち、Fで示す領域を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1,30,50 ペリクル収納容器
1A カバー
2,51 保持部材
3,44,87 弾性部材
4,52 トレイ
7 突出部
20 ペリクル
21 支持枠
40 載置部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜および当該ペリクル膜を支持する支持枠を有するペリクルを、トレイと当該トレイと対向配置されるカバーの間に形成される空間に収納して輸送するためのペリクル収納容器であって、
上記支持枠を保持するための保持部材を備え、
上記保持部材は、弾性部材を介して上記トレイに配置されていることを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項2】
請求項1に記載のペリクル収納容器であって、
前記弾性部材と前記保持部材との間に載置部材が配置され、
上記保持部材は、外側方向に突出する突出部を有し、
上記突出部を上記載置部材に固定することにより、上記保持部材を前記トレイに固定することを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のペリクル収納容器であって、
前記保持部材は、前記支持枠と同じあるいはそれよりも小さい線膨張率を有することを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のペリクル収納容器であって、
前記保持部材は、繊維含有樹脂から主に構成されることを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のペリクル収納容器であって、
前記保持部材は、前記トレイから着脱可能に配置されていることを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項6】
請求項5に記載のペリクル収納容器であって、
前記保持部材の外周と、前記トレイの内側とは、15mm〜45mm離間してそれらが配置されていることを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のペリクル収納容器であって、
前記保持部材は、中空であることを特徴とするペリクル収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−134280(P2010−134280A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311456(P2008−311456)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】