説明

ペリクル用収納容器

【課題】 収納するペリクルの支持枠の粘着材に変形をもたらさないで輸送する。
【解決手段】 ペリクル膜6と当該ペリクル膜6を支持する支持枠7とからなるペリクル5を輸送するためのペリクル用収納容器1であって、トレイ3とその蓋となるカバー2と、トレイ3およびカバー2のいずれか一方の内側に、支持枠7を載置する載置部4であって支持枠7を載置する部位が支持枠7の底面に対して傾斜している1つまたは2以上の載置部4とを備えるペリクル用収納容器1としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル膜とペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路パターンの製造工程の一部であるリソグラフィ工程で使用されるフォトマスク上に異物が付着すると、その異物のパターンが転写され、半導体チップの多くを不良品としてしまう危険性がある。このため、従来からフォトマスクの防塵を目的に、ペリクルが用いられている。
【0003】
ペリクルは、一般的に、ニトロセルロース等の透明な高分子膜からなる厚さ約10ミクロン程度のペリクル膜と、それを一方の周端面にて支持する厚さ数ミリ程度の支持枠とから構成されている。支持枠におけるペリクル膜と反対側の周端面には、フォトマスクに支持枠を固定するためのフィルム付きの粘着材が備えられている。粘着材は、ペリクルをフォトマスク上に配置した際にフォトマスクと支持枠との間に隙間ができないよう、均一の厚みをもって備え付けられている。
【0004】
フォトマスクに支持枠を固定する際には、フォトマスクの上方にペリクル膜が配置されるようにペリクルをセッティングし、フィルムを剥がして粘着材を介して支持枠をフォトマスクに固定して、フォトマスク上に異物が入ることを防止するようにしている。
【0005】
また、近年、ペリクルは、液晶表示体の製造工程におけるリソグラフィ工程で使用されるフォトマスクの防塵手段としても多用されてきている。液晶表示体は、シリコンウェハに比べて大きな面積を有することから、フォトマスクも大型化している。これに伴いペリクル膜も大型化してきており、1000mm×1000mm以上の大型ペリクル膜も多く使用されている。
【0006】
ペリクルの輸送には、専用のペリクル用収納容器が用いられている。ペリクルの大型化に伴い、ペリクル用収納容器も大型の物が求められている。ペリクル用収納容器は一般的には樹脂製であるが、その大型化に伴い射出成形品から真空成形品に移行している。
【0007】
また、ペリクル用収納容器が大型化すると、真空成形の成形残留応力およびそれ自体の自重による反りに代表される変形の問題が顕在化してくる。ペリクル用収納容器に変形が生じると、粘着材にその変形が転写される可能性が高くなる。すると、粘着材の厚さが場所によって不均一になり、フォトマスクとペリクルの支持枠との間に接着不良の箇所が生じ、フォトマスク上に異物が入る危険性が高まる。このような問題に鑑み、ペリクル用収納容器を構成しているトレイおよび蓋の少なくともいずれか一方に補強板を取り付けることによって、ペリクル用収納容器の変形を軽減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、同様の趣旨から、トレイおよび蓋の少なくともいずれか一方のペリクル搭載面にリブを設けることによって、ペリクル用収納容器の変形を軽減する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−49765号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−173887号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ペリクル用収納容器において問題となるのは、収納容器が変形し、これが粘着材に転写されることである。上述の従来技術は、トレイまたは蓋全体の反り等の変形を防止するための手段であって、支持枠に備えられた粘着材が不均一になることを間接的に防止しているに過ぎない。したがって、トレイまたは蓋の変形を防止しようとする従来の方法では、必ずしもペリクルの支持枠に備えられた粘着材の厚みを均一な状態に保持できるとは限らない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、収納するペリクルの支持枠の粘着材の厚みを均一に保持して輸送するペリクル用収納容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器であって、トレイとその蓋となるカバーと、トレイおよびカバーのいずれか一方の内側に、支持枠を載置する載置部であって支持枠を載置する部位が支持枠の底面に対して傾斜している1つまたは2以上の載置部とを備えるペリクル用収納容器としている。
【0011】
このように、載置部において支持枠を載置する部位を支持枠の底面に対して傾斜させているので、支持枠の底面と載置部とは面接触しない。このため、支持枠の底面に貼り付けられている粘着材への面圧が場所によって不均一になるというような問題は生じない。したがって、粘着材の厚さを均一に保持したまま輸送することができる。載置部は、1つの構成部材でも良いが、2つ以上の構成部材とし、ペリクルの支持枠を複数箇所で支持するようにしても良い。
【0012】
また、別の本発明は、先の発明における載置部を、支持枠を載置する部位が2以上の斜面からなるようにしたペリクル用収納容器としている。このため、先の発明と同様、載置部と支持枠の底面とは面接触しない。
【0013】
また、別の本発明は、先の発明における載置部を、支持枠の底面の角を支持するようにトレイ若しくはカバーに配置したペリクル用収納容器としている。このため、先の発明と同様、載置部と支持枠の底面とは面接触しない。特に、載置部は支持枠の底面の角と点接触しているので、接触部分はより小さくなり、支持枠の底面に設けられた粘着材の厚さをより均一に保持したまま輸送することができる。
【0014】
また、別の本発明は、先の各発明における載置部を、載置部が設けられているトレイ若しくはカバーと同じ材料で一体構成されているペリクル用収納容器としている。このため、載置部を別体で製造し、カバー若しくはトレイに取り付ける場合に比べて、製造工程を簡略化できる。すなわち、カバー若しくはトレーを載置部としての凹凸を設けた状態で一体的に成形すれば良いので、容易に製造できる。また、載置部を設けたトレイ若しくはカバーに凹凸が形成されることにより、その剛性が高まり、たわみ等の変形が生じにくくなる。
【0015】
本発明に係るペリクル用収納容器を構成するトレイおよびカバーの材料には、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの3種類の単量体からなる共重合体であり、以後、「ABS樹脂」という。)の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等を好適に用いることができ、特に、ABS樹脂を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。
【0016】
本発明に係るペリクル用収納容器は、好適には真空成形にて製造される。ここで、「真空成形」とは、軟化状態の樹脂を金型に配置して、その樹脂と金型との間の空間を真空にすることによって、樹脂を金型に吸い付けて成形する方法をいい、金型への樹脂の供給方法は問わない。したがって、シート形状の樹脂を金型に配置したり、あるいは溶融状態の樹脂を金型に吐出しても良い。真空成形の例としては、雌型を用いるストレート法、雄型によるドレープ法、樹脂シートを半球状にふくらませてその中に雄型を入れて成形するエアスリップ法、エアスリップ法で用いられる雄型の代わりに雌型を用いるリバースドロー法、雌型上にクランプした樹脂シートをプラグで雌型に突き降ろし、樹脂シートを予張して真空にひく補助プラグ法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、真空成形以外に、樹脂側から金型方向にガス圧を及ぼして成形する圧空成形、当該圧空成形と真空成形の両方を組み合わせた圧空真空成形によって製造することもできる。また、真空成形、圧空成形、圧空真空成形以外の成形方法を採用しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収納するペリクルの支持枠の粘着材の厚みを均一に保持してペリクルを輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るペリクル用収納容器の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るペリクル用収納容器1の分解斜視図である。また、図2は、図1に示すペリクル用収納容器1の斜視図である。図1に示すように、ペリクル用収納容器1は、トレイ3と、その蓋であるカバー2とを備えている。
【0020】
図1において、載置部4は、トレイ3の一部として、内側に向かって一方向の下り傾斜をなす形状で設けられている。なお、図1において、載置部4はトレイ3の一部として設けられているが、カバー2とトレイ3によって形成される内部空間において固定される、トレイ3とは別体の載置部をトレイ3に備えても良い。
【0021】
カバー2およびトレイ3は、元板の厚さが約3mmのABS樹脂を原料とし、真空成形用金型を用いた真空成形法により製造される。ただし、ABS樹脂以外の樹脂を用いても良い。さらに、元板の厚みは3mmに限定されず、3mmより薄いあるいは3mmを超える板状の樹脂を成形してもよい。
【0022】
ペリクルを輸送する際には、トレイ3に備えられた載置部4にペリクルを載置して、その上からカバー2を被せ、カバー2とトレイ3を固定する。
【0023】
図3は、図2に示すペリクル用収納容器1をA−A線にて切断した際の断面図である。
【0024】
カバー2は、トレイ3と対向する側に開口部を有する凹状のカバー本体20を、当該カバー本体20の外周縁部から水平方向に延びる外延部21、外延部21の周端部から上方に延びる外延部22、外延部22の周端部から外に向かって水平方向にわずかに延びる縁部23とを備えている。
【0025】
一方、トレイ3は、カバー2と対向する側に開口部を有するトレイ本体30と、その面内において開口部方向に突出する載置部4と、載置部4の外周縁部から水平方向に延びる外延部31と、外延部31の周端部から上方に延びる外延部32と、外延部32の周端部から外に向かって水平方向に延びる縁部33とを備えている。外延部21から縁部23に至るクランク形状部分は、外延部31の途中から縁部33に至るクランク形状部分と同じ形状であり、カバー2側のクランク形状部分の下面がトレイ3側のクランク形状部分の上面と密着可能となっている。
【0026】
カバー2とトレイ3の固定は、例えば、縁部23と縁部33をクリップで留める方法の他、外延部21、外延部22、縁部23と外延部31、外延部32、縁部33がそれぞれ接触する部分(一部または全部)において固定する任意の固定方法を採用できる。
【0027】
図4は、図3に示すペリクル用収納容器1に収納するペリクル5を図2に示すA−A線で切断した際の断面図である。
【0028】
ペリクル5は、ニトロセルロース等の材質からなる厚さ10ミクロン以下のペリクル膜6を、四角枠形状の支持枠7の一方の端面(図4における上面)に展張して張り付けた構成を有している。支持枠7の高さは、約5mmである。ただし、ペリクル膜5の材質および厚さならびに支持枠7の高さは、上記に限定されるものではない。
【0029】
図4におけるXで示される部分の拡大図に示すように、支持枠7におけるペリクル膜6と反対側の周端面(底面)には、粘着材8が備えられている。粘着材8の表面には、通常、薄い剥離シート(不図示)が貼られている。ペリクル5を使用する場合には、当該剥離シートを粘着材8から剥がして、粘着力を発揮し得る状態としてから、支持枠7をフォトマスクに貼り付けて固定する。輸送の過程においてこの粘着材8の厚みを不均一にさせないという本発明の効果をより発揮するため、好ましくは、粘着材8はペリクル5を載置部4に載置した際に、載置部4と接触しない部位に備えられる。図4においては、図3に示す内側下方傾斜型の載置部4に合わせて粘着材8が支持枠7の底面の内側に設けられている。
【0030】
図5は、図3に示すペリクル用収納容器1内に、図4に示すペリクル5を収納した状態を示す図である。なお、カバー2の内側に設けられたペリクル5を固定する部位は、その図示を省略している。
【0031】
ペリクル5は、その支持枠7の一部が載置部4に接した状態にて収納される。支持枠7の底面と、トレイ3の内側に向かって下方に傾斜する内側下方傾斜型の載置部4とが支持枠7の底面の外縁で接触することにより、粘着材8は載置部4と非接触の状態に保持される。よって、輸送時にペリクル用収納容器1が多少変形しても、その変形は粘着材8には転写されず、粘着材8を均一の厚みに保つことができる。
【0032】
なお、粘着材8が支持枠7の底面全領域に備えられている場合、粘着材8の外側が載置部4との接触によって、多少つぶれる可能性はある。しかし、粘着材8が薄い場合には、そのつぶれに伴う粘着材8の厚み方向の変形量は極めて小さい。また、支持枠7の下端面全面にわたって均一に粘着材8がつぶれるので、ペリクル5の使用時に、粘着材8の不均一な厚みに起因する隙間の形成が生じにくい。以下、各実施の形態においても同様である。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第2の実施の形態について説明する。
【0034】
第2の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1は、先に説明した第1の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1のカバー2と同一形態のカバーを備えている。なお、以後、第2の実施の形態以降の実施の形態の説明において、ペリクル用収納容器、トレイ、カバー、トレイ及びカバーの各構成部について共通する部分については、第1の実施の形態と同じ符号で示し、形態の異なる載置部については異なる符号で示す。
【0035】
図6は、第2の実施の形態に係るペリクル用収納容器1を、図2に示すA−A線と同様の線で切ったときの断面図である。
【0036】
ペリクル用収納容器1においてトレイ3の一部として設けられた載置部9の形状は、第1の実施の形態とは反対に外側に向かって一方向に下り傾斜面を有する形状である。第2の実施の形態に係るペリクル用収納容器1に収納するペリクル5は、支持枠7の底面の外側に粘着材8を設けている。
【0037】
ペリクル5は、その支持枠7の一部が載置部9に接した状態にて収納される。支持枠7の底面と、トレイ3の外側に傾斜する外側傾斜型の載置部9とが支持枠7の底面の内縁で接触することにより、粘着材8は載置部4と非接触の状態に保持される。よって、輸送時にペリクル用収納容器1が多少変形しても、その変形は粘着材8には転写されず、粘着材8を均一の厚みに保つことができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第3の実施の形態について説明する。
【0039】
第3の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1は、先に説明した第1の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1のカバー2と同一形態のカバーを備えている。
【0040】
図7は、第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器1を、図2に示すA−A線と同様の線で切ったときの断面図である。
【0041】
ペリクル用収納容器1においてトレイ3の一部として設けられた載置部10は、容器内部より外側に向かって下方に傾斜し、続いて上方に傾斜する連続した2つの斜面10a,10bを有している。第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器1に収納するペリクル5は、支持枠7の底面の中央部分にのみ粘着材8を設けている。
【0042】
ペリクル5は、その支持枠7の一部が載置部10に接した状態にて収納される。支持枠7の底面と、トレイ3の外側および内側に断面V字状に傾斜する載置部10とが支持枠7の底面の内縁および外縁で接触することにより、粘着材8は載置部10と非接触の状態に保持される。よって、輸送時にペリクル用収納容器1が多少変形しても、その変形は粘着材8には転写されず、粘着材8を均一の厚みに保つことができる。
【0043】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第4の実施の形態について説明する。
【0044】
第4の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1は、先に説明した第1の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1のカバー2と同一形態のカバーを備えている。
【0045】
図8は、第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器1を、図2に示すA−A線と同様の線で切ったときの断面図である。
【0046】
ペリクル用収納容器1においては、載置部11がトレイ3とは別体に設けられている。載置部11の形状は、トレイ3の内側に向かって一方向に下方傾斜する形状である。載置部11の材料は載置部として用い得る程度の性質を有する材料であれば特に限定はないが、例えば、カバー2またはトレイ3と同じ材料、カバー2あるいはトレイ3よりも高い剛性を備えるアルミニウム、チタニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属、セラミックス等の非金属を用いることができる。
【0047】
第4の実施の形態においては、載置部11の形状は、四角枠形状である。これにより、ペリクル5を構成している支持枠7の底面を載置部11の斜面で支持することができる。第4の実施の形態においてペリクル5を輸送する際には、トレイ3に載置部11を固定し、固定された載置部11にペリクル5を載置して、その上からカバー2を被せ、カバー2とトレイ3とを固定する。トレイ3への載置部11の固定方法は、特に限定されないが、第4の実施の形態においては接着剤を用いて固定している。他の固定方法としては、トレイ3へはめ込むことによる固定、溶着等の方法がある。
【0048】
第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器1に収納するペリクル5は、支持枠7の底面の内側に粘着材8を設けている。
【0049】
ペリクル5は、その支持枠7の一部が載置部11に接した状態にて収納される。支持枠7の底面と、トレイ3の内側に向かって下方傾斜する載置部11とが支持枠7の底面の外縁で接触することにより、粘着材8は載置部11と非接触の状態に保持される。よって、輸送時にペリクル用収納容器1が多少変形しても、その変形は粘着材8には転写されず、粘着材8を均一の厚みに保つことができる。
【0050】
(第5の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第5の実施の形態について説明する。
【0051】
図9は、第5の実施の形態に係るペリクル用収納容器1の一構成部材であるトレイ3の斜視図である。
【0052】
第5の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1は、先に説明した第1の実施の形態にかかるペリクル用収納容器1のカバー2と同一形態のカバーを備えている。
【0053】
図9に示すように、トレイ3の底面の4つ角には、トレイ3の内側に向かって下方に傾斜する載置部12が設けられている。ペリクル5をトレイ3に収納した状態において、支持枠7の4つ角が載置部12の斜面上に接触するように、載置部12が配置されている。このため、載置部12と支持枠7との接触は支持枠7の4つ角のみとなり、ペリクル5は、トレイ3に対してはいわゆる点接触によって収納される。したがって、支持枠7の底面に貼られている粘着材8が、輸送中に不均一の厚さに変形する危険性はより低くなる。
【0054】
以上、本発明に係るペリクル用収納容器の各実施の形態について説明したが、本発明に係るペリクル用収納容器は上述の各実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0055】
例えば、図10に示すように、載置部13をトレイ3の内底面内の領域に複数配置して、支持枠7の縁を複数の載置部13にて支持するようにしても良い。図10では、トレイ3の内底面上の矩形領域に、当該矩形領域の対向する長辺に各2個、同領域の対向する短辺に各1個の合計6個の載置部13を固定している(図10の斜視図では3個の載置部13しか見えないが、残りの3個の載置部13が存在している。図10において、見えていない載置部13が存在することを示唆すべく、残り3個の載置部13から伸びる引き出し線を点線で示している。)。このように、支持枠7と接触する載置部13を複数設けても、上述の各実施の形態と同様の作用・効果が得られる。なお、載置部の個数は6個に限定されず、2〜5個、あるいは7個以上としても良いが、ペリクル5をバランス良く収納できるようにするために、対向する側にそれぞれ同数の載置部を配置するのが好ましい。
【0056】
また、例えば、第5の実施の形態における載置部12をトレイ3の外側に向かって下方に傾斜させるように構成し、支持枠7の角部近傍の底面における直交する内縁でペリクル5を支持するようにしても良い。また、載置部12をトレイ3と一体構成とする他、別体で製造してトレイ3に固定するようにしても良い。
【0057】
また、上述の実施の形態では、ペリクル用収納容器1を通常の状態で置いた時に下になる方をトレイ3、上になる方をカバー2として説明したが、逆にしても良い。その場合、各載置部はカバー2に形成される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ペリクルを輸送するための収納容器を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るペリクル用収納容器の分解斜視図である。
【図2】図1に示すペリクル用収納容器の斜視図である。
【図3】図2に示すペリクル用収納容器を、A−A線にて切断した際の断面図である。
【図4】図3に示すペリクル用収納容器に収納するペリクルを、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図である。
【図5】図3に示すペリクル用収納容器内に、図4に示すペリクルを収納した状態の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るペリクル用収納容器を、図2に示すA−A線と同様の線にて切断した際の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器を、図2に示すA−A線と同様の線にて切断した際の断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器を、図2に示すA−A線と同様の線にて切断した際の断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係るペリクル用収納容器を構成するトレイの斜視図である。
【図10】本発明のその他の実施の形態に係るペリクル用収納容器を構成するトレイの斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ペリクル用収納容器
2 カバー
3 トレイ
4 載置部
5 ペリクル
6 ペリクル膜
7 支持枠
8 粘着材
9 載置部
10 載置部
10a 斜面
10b 斜面
11 載置部
12 載置部
13 載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器であって、
トレイと
その蓋となるカバーと、
上記トレイおよび上記カバーのいずれか一方の内側に、上記支持枠を載置する載置部であって上記支持枠を載置する部位が上記支持枠の底面に対して傾斜している1つまたは2以上の載置部と、
を備えることを特徴とするペリクル用収納容器。
【請求項2】
前記載置部において、前記支持枠を載置する部位が2以上の斜面からなる請求項1に記載のペリクル用収納容器。
【請求項3】
前記載置部は、前記支持枠の底面の角を支持するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のペリクル用収納容器。
【請求項4】
前記載置部は、前記載置部が設けられている前記トレイ若しくは前記カバーと同じ材料で一体構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のペリクル用収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−47546(P2007−47546A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233018(P2005−233018)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】