説明

ホイール保護用の粘着フィルム積層体

【課題】積層体から各粘着フィルムFを一枚ずつ容易に剥離させることができ、また積層体全体が積層によって所定の形態保持性を有しており、めくり片またはカバー材でカバーされた積層体をもつことで、優れた運搬性及び貼付け作業効率を有するホイール保護用の粘着フィルム積層体を提供する。
【解決手段】片面に粘着層を有した複数枚の粘着フィルムFを剥離可能に積層したフィル積層体のうち、積層される覆い部1の周縁のうちの少なくとも一部からめくり片2が張り出し形成され、複数の粘着フィルムFの覆い部1同士が略同位置に重なる。最表枚の粘着フィルムFの覆い部1を覆うカバー材Cが当該最表枚の粘着フィルムFF片面の粘着剤層12に剥離可能に貼付けられ、積層された粘着フィルムFのうち少なくとも一部の隣接するめくり片2同士が、対向面の全部または一部に重なり部分を有して積層される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールにタイヤを組み付けた自動車(四輪車、自動二輪車のほか三輪車等の多輪車を含む)において、ホイール及びホイール側に形成された開口を覆うホイール保護用の粘着フィルムの粘着フィルム積層体、又はその貼り付け方法或いは補充方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のディスクブレーキの防錆方法及び防錆カバーとして、従来、アルミホイールにタイヤを組み付けたタイヤ組立体を車軸のハブに装着した後、アルミホイールを覆うカバー部材を剥離可能な接着剤層を介して前記タイヤ組立体の側面に貼着するものが開示される(特許文献1参照)。これは、自動車のディスクブレーキの防錆カバーとして、タイヤ組立体の側面に被着されて前記ホイールを覆うカバー部材と、該カバー部材を前記タイヤ組立体の側面に剥離可能に貼着する接着剤部とを備えたものを使用するものである。このようなカバー部材でアルミホイールを覆うと、開口を通じたディスクブレーキ側への雨水、塩分を含んだ外気等の侵入が防止されるものであり、剥離可能な接着剤層によりタイヤ組立体の側面にカバー部材を貼り付けるので、作業性が向上し、作業時間が大幅に短縮されるもの、とされる。また、簡単に剥がすことができるので、手間を掛けずにカバー部材を回収することができる、とされる。さらにこのカバー部材を数百枚積層した状態で組立ラインに供給し、カバー部材を1枚ずつ剥がしてタイヤの側面に貼り付けるようにすると、貼り付け直前まで接着剤層の汚れを防止できるので汚れに起因した貼り付け不良を防止することができ、梱包や、管理も容易となる、とされる(公報段落番号0026、図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−267001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のカバー部材の粘着フィルム積層体は、粘着フィルム積層体から各粘着フィルムFを一枚ずつ剥離させることが容易とはいえず、貼付けの作業効率に影響が及ぶ場合があった。また貼付け作業においては、一枚ずつ剥離した薄いカバー部材をホイールの対象面近くまで運搬してから貼り付けるため、運搬中にシートの粘着面同士がくっつかずかつ貼付け後に皺が寄ったり位置がずれしたりしないように適切な位置へと張り付けるには、ある程度の習熟性を要するものであり、運搬性及び貼付け作業効率が容易なものとはいいきれなかった。
【0005】
そこで本発明は、粘着フィルム積層体から各粘着フィルムFを一枚ずつ容易に剥離させることができ、また粘着フィルム積層体全体が積層によって所定の形態保持性を有しており、めくり片またはカバー材でカバーされた粘着フィルム積層体をもつことで、優れた運搬性及び貼付け作業効率を有するホイール保護用の粘着フィルム積層体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明では以下(1)〜(7)の各手段を講じている。
【0007】
(1)本発明のホイール保護用の粘着フィルム積層体は、
片面に粘着剤層12を有し、自動車のホイールW表面を覆う形状の複数枚の粘着フィルムFを剥離可能に積層して構成された、自動車(自動二輪車、自動四輪車を含む)のホイール保護用の粘着フィルム積層体であって、
各粘着フィルムFは、基材層11及び粘着剤層12とで層構成された覆い部1の周縁のうちの少なくとも一部から、各枚ずつを剥離させる際のめくり代となるめくり片2が張り出し形成されたものであり、
複数の粘着フィルムFの覆い部1同士が略同位置に重なって各片面の粘着剤層12によって積層一体化されると共に、
最表枚の粘着フィルムFの覆い部1を覆うカバー材Cが当該最表枚の粘着フィルムFF片面の粘着剤層12に剥離可能に貼付けられてなり、
積層された粘着フィルムFのうち少なくとも一部の隣接するめくり片2同士が、対向面の全部または一部に重なり部分を有して積層されることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、剥離位置の起点部分となるめくり片を一枚ずつ持って、粘着フィルム積層体から各粘着フィルムFを一枚ずつ容易に剥離させることができる。まためくり片は重なり部分を有して積層されることで、運搬時又は張り付け作業時の持ち手としての機能を果たす。また多くの粘着フィルムF及びカバー材が積層構成されることで、粘着フィルム積層体全体にコシが生まれ、形態保持性に優れたものとなる。またカバー材Cが最表枚の粘着フィルムFFの粘着剤層12を覆うことで、使用時に貼付け面以外のものに不要に貼りつくことを防止する。これらめくり片、積層構成、及びカバー材によって、粘着フィルム積層体の運搬性及び貼付け作業効率は大きく向上する。
【0009】
粘着フィルム積層体LBを構成する各枚のうち、少なくともいずれかの隣り合うめくり片2同士は、各片形状の一部が互いに重なり合ってなるか、各片形状の全部が互いに重なり合ってなる。これにより、粘着フィルムFをフィルム積層体LBから一枚剥離した時の、残りのフィルム積層体における次枚目のめくり片の位置を容易に認識することができる。また、積層されためくり片群の占める全面積を小さくすることでコンパクトに構成することができる。さらに、貼りつけ後にホイール外部にはみ出る片量を少なくすることができ、体裁が良くなると共に、外部接触等によってめくり片部分から粘着フィルムが不要に剥がれてしまうのを抑制し得る。
【0010】
なお、上記めくり片2は覆い部1の周縁の一部分または複数部分から覆い部1よりも外側方にまたは覆い部1の上方或いは下方に張り出して形成される。覆い部1と連なった同一の基材層によって一体的に形成されたものでもよく、或いは覆い部1と別体の構成材にゆおって連結形成されたものでもよい。
【0011】
(2)また、上記ホイール保護用の粘着フィルム積層体の前記めくり片の重なり部分のうち、少なくとも一方の対向面は、隣接するめくり片2の他方の対向面と密着又は接着しない非着面からなることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、めくり片の重なり部分の対向面が非着面からなることで、めくり片同士が密着又は接着することの無い良好なばらつき性を有することとなる。これにより、めくり片を一枚ずつ持って、各粘着フィルムを粘着フィルム積層体から容易に剥離させることができる。
【0013】
例えば後述する実施例のめくり片2は、覆い部1と一体的に連なる略等厚さの基材層11からなると共に、片構成された両面全体が非接着面となっており、表裏面のいずれにも粘着剤層12を有さない。覆い部1は基材層11の片面に所定厚さの粘着剤層12が層形成されており、その層厚さ分だけめくり片2よりも総厚さが大きくなっている。これにより、覆い部1の接着積層によって重なり合うめくり片2同士には隣り合う片間にそれぞれ接着剤層12厚さ分の離間距離が形成される。つまり、めくり片2が接着剤層を有さない非着面で両面形成されることで、覆い部1との厚さの差分だけ各片が離れやすくなっている。
【0014】
(3)また、上記いずれか記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体において、各粘着フィルムFの互いに隣接するめくり片2同士のいずれか一方又は両方の対向面のうち、重なり部分内の少なくとも一部領域には、他方の対向面との滑り性又は離間距離を大きくする離反処理層が形成されたものとしてもよい。
【0015】
上記構成によれば、めくり片の重なり部分の対向面に離反処理層が形成されることで、めくり片同士が単に密着又は接着するだけでなく、互いに滑り性又は離間距離を確保してより良好なばらつき性を有することとなる。これにより、めくり片2を一枚ずつ掴んで、各粘着フィルムFを粘着フィルム積層体から極めて容易に剥離させることができる。
【0016】
ここで本発明における離反処理層とは、他方の対向面との滑り性又は対向面間距離を大きくする層形成処理又は変形処理が施された表面層のことである。前記層形成処理とは例えば、アクリル樹脂等を含む離型処理層の形成によって、対向面に対する滑度を大きくするような表面の変性処理をいう。また前記変形処理とは例えば、微小凹部又は微小凸部の形成によって、対向面との位置がずれた場合に元の対向面間距離よりも大きな対向面間距離を維持するような物理的変形の表面処理をいう。例えば、所定のエンボスパターンの両面エンボス加工を施すことで、各めくり片両面の対応する位置にそれぞれ微小凹部及び微小凸部が形成される。めくり片同士をずらした場合には、対向面の微小凹部内に突入していた微小凸部がその凹部内から外れて、微小凸部の形状によって対向面との間に離間距離を形成する(例えば図6)。
【0017】
(4)また、上記いずれかに記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体において、各粘着フィルムFの前記離反処理層23は、めくり片2の重なり部分のうち、覆い部1との連接部近傍領域2Cを除いた先側領域2H内に、対向面側に突出する複数の微小凸部23Tが形成されてなることが好ましい。
【0018】
例えば後述する実施例2〜5では、離反処理のひとつとして、エンボスによる多数の微小凹凸部をめくり片の表裏の先側領域2H内に形成している。ここで微小凹凸部の形成領域は、めくり片2の重なり部分の全面ではなく、重なり部分のうち、覆い部1との連接部近傍領域2Cを除いた先側の一部領域2H内のみとしている。連接部近傍領域を除いた先側領域2H内に部分形成することで、めくり片2の覆い部との連接強度を確保することができる。
【0019】
微小凸部23Tはめくり片の片面形成、両面形成のどちらでもよい。例えばめくり片2の表面及び裏面にそれぞれ、互いに対応する凹部23D及び凸部23Tを施すことによって、対向面との離間距離がより多く保持される(例えば図6参照)。これにより、一枚一枚のばらつきが良好となり、めくり性が向上する。
【0020】
(5)また、上記いずれかに記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体において、各粘着フィルムFのめくり片2は、覆い部1と連接する連接辺、連接辺と隣り合う左右の側辺、及び連接辺の対辺となる先端辺からなる四辺を含む片形状からなり、このうち左右の側辺は共に、連接辺及び先端辺のいずれよりも短く、かつ、左右の側辺間距離からなる片幅は、連接辺側から先端辺側に向かって徐々に太幅となるものとしてもよい。
【0021】
上記のようなめくり片2は粘着フィルムFから大きく飛び出すことなく形成され、また、貼付け作業者の指幅及び指長に沿った扁平形状であり、かつ先側に向かって幅方向にも張り出す形状であることで、各枚同士が離反しやすく、指に当ててずらすときのめくり性に優れたものとなる。
【0022】
(6)本発明の自動車用ホイールへの粘着フィルムの貼付け方法は、前記いずれか記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体LBを用いて自動車のホイールWの貼付け面に粘着フィルムを一枚ずつ貼り付ける方法であって、以下の各ステップを具備してなる。
各ステップとはすなわち、積層された最裏枚の粘着フィルムのめくり片を持って覆い部1周縁のうちめくり片形成部と反対側の端部へ折り返すように部分的に剥がして、最裏枚の粘着フィルムの粘着剤層12を部分露出させる部分剥離ステップS1と、
部分剥離ステップS1後の粘着フィルム積層体LBの前記部分露出した粘着剤層12を、粘着フィルム積層体LB全体ごとホイールWの貼付け位置に近接させて、自動車のホイールWの貼付け面のうち露出部分の対向面部分に貼付ける当接ステップS2と、
当接ステップS2によって当接させた粘着フィルム積層体LB全体を、貼付け面に当接させたまま貼付け位置から前記反対側の端部方向へずらすことで、最裏枚の粘着フィルムFEの残りの粘着剤層12を、貼付け部分を基点として貼付け面側に露出させながら貼り付けるずらし貼りステップS3と、の各ステップである。
【0023】
粘着フィルムFを粘着フィルム積層体LBから一枚ずつ完全に剥がして分離させるのではなく、部分剥離ステップS1によって、めくり片を折り返す位置まで部分的に(実施例では粘着層面の片側半分まで)剥離させることとしている。
部分剥離ステップS1の後は、粘着フィルム積層体LBのめくり片2群と部分剥離させた最裏枚のめくり片2とが、覆い部11群のそれぞれ左右に分かれて位置した状態となる。この状態においては、めくり片群やめくり片或いは積層された覆い部11を持つことで、前記部分剥離によって露出した粘着層部分を積層体LBの積層面上に張った状態を保ったまま、容易に運搬することができる。
【0024】
また前記部分剥離ステップS1によって、その次の当接ステップS2の際に、積層体LB全体をそれ毎貼り付け面に当接させることで、正確な貼りつけ位置に容易に張り付けることができる。このため積層体から剥がす際に粘着面同士がくっついたり、貼り付け面へ貼る際に皺が発生したりしにくく、作業効率に優れたものとなる。
【0025】
さらに半貼り付けした積層体全体をずらし貼りするずらし貼りステップS3によって、部分剥離ステップ時に未露出であった残りの粘着層部分を、積層体からの剥離とともに順に貼りつけていくことができるため、ゴミ等が付着しにくく、また剥離境界部分が順にずれていくため、貼りつけた粘着フィルムに皺や空気溜まりを生じさせることなく、容易に美麗な貼りつけ状態とすることができる。
【0026】
(7)本発明のホイール保護用の粘着フィルム積層体の粘着フィルムの補充方法は、上記いずれか記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体の粘着フィルムを補充する方法であって、
それぞれ所定の積層枚数からなる2体の粘着フィルム積層体(LB1、LB2)のうち一方の粘着フィルム積層体(LB2)のカバー材Cを剥離させて取り除き、これによって当該一方の粘着フィルム積層体に露出した最表枚の粘着フィルムFEの粘着剤層12を、他方の粘着フィルム積層体(LB1)の最裏面の同位置に張り付けて、新たな一つの粘着フィルム積層体LBに重合一体化させるものである。
【0027】
剥離を繰り返して薄くなった粘着フィルム積層体(LB2)からカバー材Cを取り除き、他の粘着フィルム積層体(LB1)と重合一体化させることで、再び所定厚さ以上の形態保持性に優れた新たな粘着フィルム積層体にすることができる。これにより、積層枚数減少によってコシがなくなり、形態保持性に欠ける状態となった粘着フィルム積層体LBを、簡易な作業によって再び形態保持性に優れた形態とすることができ、貼りつけ作業効率に影響を与えることなく、元の粘着フィルム積層体LBの粘着フィルムFを最後まで使用することができる。
【発明の効果】
【0028】
上記構成によれば、めくり片2を用いて粘着フィルム積層体LBから各粘着フィルムFを一枚ずつ容易に剥離させることができ、また粘着フィルム積層体LB全体が積層によって所定の形態保持性を有しており、めくり片2またはカバー材Cでカバーされた粘着フィルム積層体を掴むことで、優れた運搬性及び貼付け作業効率を有する粘着フィルム積層体を提供することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1のホイール保護用の粘着フィルム積層体の構成を示す分解斜視図。
【図2】実施例1の粘着フィルム積層体の外観斜視図。
【図3】実施例の粘着フィルム積層体によるホイールへの粘着フィルムの貼付け方法の説明図。
【図4】実施例の粘着フィルム積層体における粘着フィルムを補充する方法の説明図。
【図5】実施例2の粘着フィルム積層体においてカバー材を外した状態の正面図及びその部分拡大図。
【図6】図5のA−A線位置における実施例2の粘着フィルム積層体の側断面図。
【図7】実施例3の粘着フィルム積層体においてカバー材を外した状態の正面視部分拡大図。
【図8】実施例4の粘着フィルム積層体においてカバー材を外した状態の正面視部分拡大図。
【図9】実施例5の粘着フィルム積層体においてカバー材を外した状態の正面視部分拡大図。
【図10】実施例2〜5の各粘着フィルム積層体の製造工程を示す説明図。
【図11a】図10の積層カット体における粘着フィルム積層体の割り付けを示す平面視説明図。
【図11b】図10の積層カット体における粘着フィルム積層体の割り付けを示す平面視説明図。
【図11c】図10の積層カット体における粘着フィルム積層体の割り付けを示す平面視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の構成を、各実施例として示した図面に基づいて詳細に説明する。各実施例の形態を含む本発明のホイール保護用の粘着フィルム積層体は、
片面に粘着剤層12を有し、自動車のホイールW表面を覆う形状の複数枚の粘着フィルムFを剥離可能に積層してなるホイール保護用の粘着フィルム積層体であって、
各粘着フィルムFは、基材層11及び粘着剤層12とで層構成された覆い部1の周縁のうちの少なくとも一部から、各枚ずつを剥離させる際のめくり代となるめくり片2が張り出し形成されたものである。そして、複数の粘着フィルムFの覆い部1同士が略同位置に重なって各片面の粘着剤層12によって積層一体化されると共に、
最表枚の粘着フィルムFの覆い部1を覆うカバー材Cが当該最表枚の粘着フィルムFF片面の粘着剤層12に剥離可能に貼付けられてなり、
積層された粘着フィルムFのうち少なくとも一部の隣接するめくり片2同士が、対向面の全部または一部に重なり部分を有して積層されることを特徴とする。
【0031】
(粘着フィルムの基本構成)
各粘着フィルムは、本体部の周縁のうち少なくとも一部分から張り出し形成されると共に両面のいずれにも粘着剤層12を有さない基材層から構成されためくり片とからなるものであって、
【0032】
(粘着フィルム積層体の基本構成)
各粘着フィルムの覆い部が互いに略同位置かつ略同角度にて重なって積層される。このとき各めくり片は隣接枚同士の対向面同士が重なり部分を有して互いに非着状態で積層される。
【0033】
(めくり片の形成)
めくり片2は、全体として横長扁平外形の形状からなり、めくり片の覆い部からの張り出し方向を上方としたとき、連接を上方における下辺(水平方向の短辺)が、円形の覆い部1の周縁の一部と連接してなる。図では同一フィルムの一体的な打ち抜きによってめくり片2と覆い部1とを一体的な部分張り出し形状に形成しているが、覆い部1の周部に後から別構成のめくり片2を貼りつけたり接着したり掛止したりして追加固定しても良い。
【0034】
図に示すめくり片2は、円形の覆い部1の周部のうち約10分の一周部分に亘って一部だけ短い一定の張り出し量で張り出しているが、他に、1枚の粘着フィルムにおける覆い部1の周部2か所以上から複数のめくり片2を形成しても良い。
【0035】
(離反処理)
実施例の離反処理は、エンボスによる所定パターンの微小凸部と微小凹部を複数個ずつ、所定パターンで形成してなる。また、この離反処理は、覆い部1との連接部分近傍の矩形形状の除外領域2Cを除いた先側領域2H内に形成される。
【0036】
(非着面)
上記ホイール保護用の粘着フィルム積層体の前記めくり片の重なり部分のうち、少なくとも一方の対向面は、隣接するめくり片2の他方の対向面と密着又は接着しない非着面からなる。
【0037】
(離反処理層(13))
各粘着フィルムFの互いに隣接するめくり片2同士のいずれか一方又は両方の対向面のうち、重なり部分内の一部領域には、他方の対向面との滑り性又は離間距離を大きくする離反処理層を形成している。
【0038】
ここで本発明における離反処理層とは、他方の対向面との滑り性又は対向面間距離を大きくする層形成処理又は変形処理が施された表面層のことである。前記層形成処理とは例えば、アクリル樹脂等を含む離型処理層の形成によって、対向面に対する離反性を大きくするような表面の変性処理をいう。また前記変形処理とは例えば、微小凹部又は微小凸部の形成によって、対向面との位置がずれた場合に元の対向面間距離よりも大きな対向面間距離を維持するような物理的変形の表面処理をいう。例えば、所定のエンボスパターンの両面エンボス加工を施すことで、各めくり片両面の対応する位置にそれぞれ微小凹部及び微小凸部が形成される。めくり片同士をずらした場合には、対向面の凹部内に突入していた微小凸部がその微小凹部内から外れて、微小凸部の形状によって対向面との間に離間距離を形成する。
【0039】
(自動車ホイールへの粘着フィルムの貼付け方法)
また、粘着フィルムの自動車ホイールへの貼付け方法として、以下の各ステップを具備する方法が挙げられる。
・積層された最裏枚の粘着フィルムの一端部を持って覆い部1周縁のうち当該一端部と反対側の他端部へ折り返すように部分的に剥がして、最裏枚の粘着フィルムの粘着面を部分露出させる部分剥離ステップS1と、
・部分剥離ステップ後の粘着フィルム積層体を粘着フィルム積層体ごとホイールの貼付け位置に当接させて、前記部分露出した粘着面を、自動車のホイールの貼付け面に部分的に貼付ける当接ステップS2と、
・当接ステップS2によって当接させた粘着フィルム積層体全体を、貼付け面に当接させたまま貼付け位置から前記他端部方向へずらすことで、最裏枚の粘着フィルムFの残りの粘着剤層12を、当接ステップによる部分貼付けの面を基点として貼付け面側に順にずらし露出させながら貼り付けるずらし貼りステップS3
【0040】
複数の自動車ホイールへの粘着フィルムの貼付け方法を行う場合、上記3つのステップを、複数のホイールの貼付け面に対してそれぞれ繰り返す。これは一つの積層体をもって、複数の貼り付け面に対して繰り返して貼りつけ作業を行う方法となっている。一枚ずつ粘着フィルムを積層体から分離させたり運搬したりする必要がないため、貼りつけ作業が連続的にスムーズに行われる。
【0041】
また、粘着フィルム一枚ずつに設けられたセパレートシート等が存在しないため、これらをいちいち剥がすといった従来のセパレートシート付き粘着フィルムのような煩雑さが存在しない。。
【0042】
上記貼り付け方法は、片面に粘着剤層12が形成されたホイール保護可能な大きさの覆い部1が複数枚、各粘着剤層12によって積層構成された粘着フィルム積層体であれば、どのような形状であっても基本的に適用することができ、必ずしも上記めくり片2を有した粘着フィルムFの積層体に限られない。なお、めくり片2を有した上記粘着フィルムFの積層体においてこの貼り付け方法を適用した場合、めくり片2を部分剥離の開始位置及び部分剥離方向の識別ガイドとして用いることができ、まためくり片2群や当接させた粘着フィルムFのめくり片2を掴んで持ち運びすることができ、さらに当接させためくり片2の位置によって当接角度を規定することでき、また当接させためくり片2或いは残りのめくり片2群の形成位置によって、ずらし貼りを行う際のずらし方向を認識することができる。これらは正確かつ迅速な粘着フィルムの貼りつけ作業を可能とする。
【0043】
(粘着フィルムの補充方法)
前記ホイール保護用の粘着フィルム積層体の粘着フィルムを補充する方法として、例えば図4に示すような以下のステップを含む方法が挙げられる。
それぞれ所定の積層枚数からなる2体のホイール保護用の粘着フィルム積層体のうち一方のホイール保護用の粘着フィルム積層体のカバー材を剥離させて取り外すことで、最表枚の粘着フィルムの粘着面を露出させるステップと、
前記露出した粘着面を、他方のホイール保護用の粘着フィルム積層体の最裏面の同位置に張り付けて、一つの重畳したホイール保護用の粘着フィルム積層体に積層一体化させるステップ。
【0044】
剥離を繰り返して薄くなった粘着フィルム積層体を、他の粘着フィルム積層体と重合一体化させることで、再び所定厚さ以上の形態保持性に優れた新たな粘着フィルム積層体にすることができる。これにより、薄くなることでやや形態保持性に欠ける状態となった粘着フィルム積層体を再び形態保持性に優れた形態とすることで、元の粘着フィルム積層体の粘着フィルムすべてを作業効率に影響を与えることなく最後まで使用することができる。
【実施例1】
【0045】
図1〜4に示す実施例1の保護粘着フィルム積層体は、粘着フィルムFの覆い部11に、真円からなる外形と同心円状の中央孔3、C3を有し、また、めくり片2は横長矩形形状からなるとともに、めくり片2の基材層の片面に、離型処理層からなる離反処理層のみを形成している。後述の実施例のようにエンボス加工を施していない。中央孔を形成することで、ホイールへの貼りつけ後に貼り付け面内側に装備された機構を点検することができる。例えばホイール内部に突出装置されたボルトの締め付け状態等を、保護粘着フィルムFの貼りつけ後にも確認することができる。
【0046】
実施例1の粘着フィルム積層体において、各粘着フィルムFのめくり片2は、覆い部1と連接する連接辺、連接辺と隣り合う左右の側辺、及び連接辺の対辺となる先端辺からなる四辺形状からなり、このうち左右の側辺は共に、連接辺及び先端辺のいずれとも直交している。また、隣り合うめくり片2同士はその片形状すべてが重なり部となるように完全に一致した位置に重なってなる。めくり片2は覆い部11と連続して連なる覆い部11と同一の基材層のみから構成され、両面のいずれにも粘着剤層12を有さない。これに対して覆い部11は図1,2に示すように、基材層1の片面(図示においては上面)に粘着剤層12が層形成されており、覆い部11の総厚さが、粘着剤層12よりも粘着剤層12分だけ大きくなっている。
【0047】
上記のようなめくり片2は粘着フィルムFから大きく飛び出すことなく形成され、また、貼付け作業者の指幅及び指長に沿った扁平形状となることで、指掛かり性に優れたものとなる。
【0048】
(実施例1作成例の物性)
本発明の粘着フィルムは、自動車用アルミホイールまたはスチールホイールの表面保護及びディズクブレーキの防錆を目的として使用される。タックと粘着力とを向上させたことにより貼着後の剥がれ防止、耐候性の高いフィルム、粘着剤により耐熱・耐湿、屋外曝露後の糊残りを低減させている。
【0049】
具体的には、初期粘着力として貼付け30秒後の25mmあたり粘着力4.50N以上10.00N以下、耐熱性として70℃で672時間経過後の25mmあたり粘着力7.00N以上10.0N以下、耐温性として50℃95%湿度で240時間暴露後の25mmあたり粘着力7.00N以上10.00N以下のすべての物性を満たすことが必要である。なおこれらはいずれも、表層アクリルメラミン系樹脂の被着体とし、JIS Z0237準拠の引き剥し試験値である。
【0050】
粘着剤層1215μm、基材層65μm、離型処理層0.6μmで構成した粘着フィルムの試作例においては、表1に示すように、初期粘着力として貼付け30秒後の25mmあたり粘着力4.80N、耐熱性として70℃で672時間経過後の25mmあたり粘着力7.50N、耐温性として50℃95%湿度で240時間暴露後の25mmあたり粘着力7.50Nであり、上記すべての物性を満たすものとなっていた。
【0051】
【表1】

【0052】
(粘着フィルム積層体)
また、粘着フィルム積層体の積層枚数は数十枚(20枚〜50枚)であり、作業者一人で持ち運びのできる重量としている。例えば、粘着フィルム20枚を、各粘着剤層12を上面として同位置及び同角度及び同方向に配置して高さ方向へ積層し、且つ最上枚の粘着フィルム上にカバー材Cを一枚貼り付けて、総厚さ約2.0mmの粘着フィルム積層体を構成してなる。
【0053】
(基材層)
基材層は、比較的安価であり耐候性を有するポリオレフィン系フィルムからなる。具体的には例えばエチレン/プロピレン共重合体とポリプロピレンとの混合剤を使用した基材層を60μm〜65μm厚さで形成してなる。ポリプロピレン(以下、PP)含有率を増やすことで、フィルムに「コシ」が出て、貼り作業が容易となる。一方、PPが多すぎれば「裂けやすく」なる。このため、ポリエチレン成分を含めることで「裂け難く」させ、貼り、捲り作業性を考慮したものとしている。さらにUV吸収剤を含有することで、紫外線を抑制し、車両の長期屋外在庫時の粘着剤の劣化を防ぐ。
【0054】
(粘着剤層12)
粘着剤層12は、タック性に優れ、初期粘着力(貼り付け後直ぐ 具体的には30秒後)に高い保持力があるアクリル系粘着剤からなる。実施例では基材層の片側(図1、図2では上面側)に、溶剤型のアクリル粘着剤15μmを形成してなる。他に、溶剤系感圧接着剤であれば合成ゴム系の粘着剤を使用してもよい。例えば貼り付け後30秒経過時点でのJIS Z 0237試験による粘着力が、常温にて4.50N以上であることが好ましい。このような基準を満たすアクリル系粘着剤は、特にアルミホイールに対して初期粘着性及び貼りつけ後の粘着維持性に優れており、例えば粘着フィルムを貼りつけた後の自動車を急発進させた時でも、極めて剥がれ落ちにくいものであった。
【0055】
(離型処理層)
実施例の離型処理層は厚さ1μm前後の非シリコン系樹脂層からなる。離型処理剤を塗工することで、積層した粘着フィルム同士の剥離を容易にしている。アクリル性アルキルペンダントを含む離型処理剤を使用すれば、安価でありながら薄膜状に層形成した時の安定性に優れ、好ましい離型効果を有するものとなる。
【0056】
(カバー材)
実施例のカバー材Cは、全体に青色の着色を施し、厚さ54μmの基材カバー層の片面に1μm以下の離型処理カバー層を形成したセパレーターフィルムからなる。
【実施例2】
【0057】
図5、6、及び図10に示す実施例2の保護粘着フィルム積層体は、実施例1と比べて、中央孔3、C3を有さない点、及びめくり片2に微小凹凸部からなる離反処理層を更に形成した点において、フィルム及び粘着フィルム積層体の形態が異なる。他の基本形態及び貼付け方法は実施例1と同様である。
【0058】
(微小凸部23T)
実施例2の各粘着フィルムFの前記離反処理層23は、めくり片2の重なり部分のうち、覆い部1との連接部近傍領域2Cを除いた先側領域2H内には、対向面側に突出する複数の微小凸部23Tが形成されてなる。
【0059】
全面では無く、連接部近傍領域を除いた先側の一部領域に形成されることで、重畳しためくり片それぞれが先側の方に向かう程、対向片との離間距離が大きくなり、めくり片の先端縁(先端辺2E)同士が散らばることで一枚ずつ掴みやすくなる。
【0060】
微小凸部23Tはめくり片の表面に形成し、微小凹部は前記微小凸部の形成位置に対応しためくり片の裏面に形成している。実施例では図5、図6に示すように、めくり片2の表面及び裏面の同一先側領域2H内にそれぞれ、互いに対応する菱形状の微小凸部23T群、及びこれらと同形の菱形状の微小凹部23Dを、それぞれ同パターンで斜め交差方向に配置形成している。このようなものであると図6に示すように対向面との離間距離がより多く形成され、めくり片一枚一枚が隣り合うめくり片と接して、連接部から先側に向かうにつれてより大きく撓み変形した状態となる。
【0061】
(離反処理層23)
実施例2では離反処理層23として、めくり片2の重なり部分のうち、覆い部1との連接部近傍領域2Cを除いた先側領域2H内の表面に、対向面側に突出する複数の微小凸部23Tを形成し、さらに同先側領域2H内の裏面に、対向面側に窪む複数の微小凹部23Dを形成してなる。
【0062】
ここで実施例2では連接部側から先端辺側に向かって複数の微小凸部を離間形成しているため、図6に示すように、重畳しためくり片それぞれが先側の方に向かう程、対向するめくり片との離間距離が大きくなり、重なっためくり片群全体は、断面視(図6)にて先端縁(先端辺2E)同士が略扇状に散らばってなる。
【0063】
(微小凹凸の形成領域)
離反処理のひとつであるエンボスによる微小凹凸部の形成処理は、めくり片2の重なり部分のうち、覆い部1との連接部近傍領域2Cを除いた先側領域2H内に施される。これにより、めくり片2の覆い部との連接強度を確保することができる。例えば実施例2〜5のようなエンボス加工による微小凹凸部を形成すると、微小凹凸部の形成領域はこれらが形成されていない領域と比べて破断強度が低くなり、各粘着フィルムを粘着フィルム積層体から剥離させる際に、めくり片2の連接部が引裂して覆い部1からめくり片2のみが分離してしまうことが考えられる。これを防ぐため、連接部の近傍領域には離反処理23であるエンボス処理を施さないものとしている。
【0064】
(粘着フィルム積層体の製造方法例)
粘着フィルム積層体は例えば図10に示す製造工程によって連続的に製造される。具体的には、基材層11のみからなるロール状のフィルム原体F0Bから基材層11を引き出し、片面に離型処理層13を形成する離型層形成ステップと、その反対面であってめくり片相当の帯状部分を除く一部領域に粘着剤を塗布する粘着剤層12形成ステップと、前記非着性の帯状部分の一部幅にエンボス加工を施すエンボスステップと、これら各ステップを経たシートをロール体に所定枚分だけ積層する積層ステップと、積層して得たロール体をカットして積層カット体を得るカットステップと、カットステップとの積層カット体の表面保護シートを張り付けるシート貼付けステップとを有する。
【0065】
積層カット体F5Bにおいて、めくり片を構成する部分となる帯状領域の形成例、及び内抜きの割り付け例を示したものが図11abcである。図11aは同サイズの粘着フィルム積層体を5つ打ち抜く場合の割り付け図、図11bは大サイズと小サイズの2種類の粘着フィルム積層体を3つずつ、合計6つ打ち抜く場合の割り付け図、図11cは同サイズの粘着フィルム積層体を左右6つずつ、計12個打ち抜く場合の割り付け図である。図11abでは離反処理層となる帯状領域のエンボス加工をフィルムの左右に設け、この帯状領域を片側に含みかつそれよりも太い幅の太帯領域を、粘着剤層12を形成しない非粘着領域としている。図11cでは離反処理層となる帯状領域のエンボス加工をフィルムの左右及び中央に設け、この帯状領域を中央に含みかつそれよりも太い幅の太帯領域を、粘着剤層12を形成しない非粘着領域としている。
【0066】
(実施例2のめくり片2)
図5に示す実施例2のめくり片2は、連接辺(底辺)よりも先端辺(上辺)の方が長く、正面視にて下窄まり状となるような両側傾斜辺2Tを有した台形状片からなり、連接部たる下両隅部が略半円弧状に凹湾曲形成される。また離反処理として先端領域2H内の表面に、菱形状の微小凸部が、斜め交差方向に等間隔に縦横配置される。先端領域2H内の裏面には、微小凸部の対応位置に、微小凸部と同じ菱形状の微小凹部が、斜め交差方向に等間隔に縦横配置される。隣り合うめくり片2同士はその片形状すべてが重なり部となるように完全に一致した位置に重なってなる。
【実施例3】
【0067】
(実施例3のめくり片2)
図7に示す実施例3のめくり片2は、両側辺が略半円弧状に凹湾曲形成された横長扁平形状片からなる。また離反処理として先端領域2H内の表面に、先端辺から連接部側へ両方向斜め方向と縦方向線とが連なって縦方向にジグザグに亘ってなる蛇行細線状の微小凸部が、幅方向に並行配置される。先端領域2H内の裏面には、微小凸部の対応位置に、微小凸部と同じく縦方向にジグザグに亘ってなる複数の蛇行細線状の微小凹部が設けられる。特記しないその他の構成及び貼り付け方法、補充方法、並びに製造方法は、実施例2と同様である。
【実施例4】
【0068】
(実施例4のめくり片2)
図8に示す実施例4のめくり片2は、先端辺の両隅が四分の一円弧状に湾曲形成された横長方形状片からなる。また離反処理として先端領域2H内の表面に、斜め下方及び斜め上方を向いた複数の扁平長方形形状の微小凸部が、交互に斜め交差して配列される。先端領域2H内の裏面には、微小凸部の対応位置に、微小凸部と同じく斜め下方及び斜め上方を向いた複数の扁平長方形形状の微小凹部が設けられる。特記しないその他の構成及び貼り付け方法、補充方法、並びに製造方法は、実施例2と同様である。
【実施例5】
【0069】
(実施例5のめくり片2)
図9に示す実施例5のめくり片2は、連接辺(底辺)よりも先端辺(上辺)の方が短く、上窄まり状となるような両側傾斜辺2Tを有した台形状片からなる。また離反処理として先端領域2H内の表面に、連接辺及び先端辺と並走する多数の細線状のシボ加工によって、表面に微小凸条からなる微小凸部が形成される。裏面にはこの微小凸部に合わせて凹み線条の微小凹部が形成される。特記しないその他の構成及び貼り付け方法、補充方法、並びに製造方法は、実施例2と同様である。
【0070】
(作用効果)
従来のホイールディスクブレーキ防錆用保護フィルムは、粘着フィルムと紙セパレーターで講成された枚葉形状で講成され、貼り付け時には毎フィルムごとに紙セパレーターを剥し、貼着するものであった。このため作業現場(自動車ボディメーカー生産ライン等)で紙セパレーターゴミが大きな課題となっていた。これに対し、本発明の粘着フィルム積層体は、最上部に1枚のみのカバー材Cを具備するものの、粘着フィルム同士はセパレーター等を使用せずに直接粘着して積層構成されるため、従来のような紙セパレーターは必要なくなり、作業現場でのゴミが低減される。
【0071】
また上記各実施例の構成によれば、剥離位置の起点部分となる用に張り出し形成された横長扁平のめくり片を一枚ずつ作業者の指に沿って当てたまま、残りのめくり片群に対してずらずことで、粘着フィルム積層体から各粘着フィルムFを一枚ずつ容易に剥離させることができる。まためくり片は重なり部分を有して積層されることで、運搬時又は張り付け作業時の持ち手としての機能を果たす。また多くの粘着フィルムF及びカバー材が積層構成されることで、粘着フィルム積層体全体にコシが生まれ、形態保持性に優れたものとなる。またカバー材Cが最表枚の粘着フィルムFFの粘着剤層12を覆うことで、使用時に貼付け面以外のものに不要に貼りつくことを防止する。これらめくり片、積層構成、及びカバー材によって、粘着フィルム積層体の運搬性及び貼付け作業効率は大きく向上する。
【0072】
また、めくり片の重なり部分の対向面全体が、表裏面のいずれにも粘着剤層12を有さない非着面からなることで、めくり片同士が密着又は接着することの無い良好なばらつき性を有することとなる。これにより、めくり片を一枚ずつ持って、各粘着フィルムを粘着フィルム積層体から容易に剥離させることができる。
【0073】
また、めくり片の重なり部分の対向面に、離型処理層からなる離反処理層が形成されることで、互いに滑り性又は離間距離を確保して、単にめくり片同士が単に密着又は接着しない構造と比べてより良好なばらつき性を有する。これにより、めくり片を一枚ずつ持って、各粘着フィルムを粘着フィルム積層体から極めて容易に剥離させることができる。
【0074】
また上記実施例2〜5の構成によれば、めくり片の重なり部分の対向面片側の離反処理層に加えて、対向面のうち片面への微小凸部と他面への微小凹部が形成されることで、互いに滑り性又は離間距離を確保して、単にめくり片同士が単に密着又は接着しない構造と比べて、さらに良好なばらつき性を有する。これにより、めくり片を一枚ずつ持って、各粘着フィルムを粘着フィルム積層体から極めて容易に剥離させることができる。
【0075】
この他、本発明は、例えば大面積の表面保護カバーCを用いない形態等であってもよく、その他各部の具体的な構成や使用方法を含めて上述した実施例に限定されるものでなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 覆い部
11 基材層
12 粘着剤層12
13 離型層
2 めくり片
2C 連接部近傍領域
2E 先端辺
2H 先側領域
2P 先端角部
2R 凹状湾曲辺
2T、2T´ 傾斜側辺
23T 微小凸部
23D 微小凹部
3 中央孔
C カバー材
C1 覆いカバー部
C2 めくりカバー片
C3 中央カバー孔
F 粘着フィルム
FE 最裏枚の粘着フィルム
FF 最表枚の粘着フィルム
LB ホイール保護用の粘着フィルム積層体
LB2 一方の粘着フィルム積層体
LB1 他方の粘着フィルム積層体
S1 部分剥離ステップ
S2 当接ステップ
S3 ずらし貼りステップ
W ホイール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に粘着剤層を有し、自動車のホイール表面を覆う形状の複数枚の粘着フィルムを剥離可能に積層してなるホイール保護用粘着フィルム積層体であって、
各粘着フィルムは、基材層及び粘着剤層とで層構成された覆い部の周縁のうちの少なくとも一部から、各枚ずつを剥離させる際に保持するめくり片が張り出し形成されたものであり、複数の粘着フィルムの覆い部同士が重なって各片面の粘着剤層によって積層一体化されると共に、最表枚の粘着フィルムの覆い部を覆うカバー材が当該最表枚の粘着フィルム片面の粘着剤層に剥離可能に貼付けられてなり、積層された粘着フィルムのうち少なくとも一部の隣接するめくり片同士が、対向面の全部または一部に重なり部分を有して積層されることを特徴とするホイール保護用の粘着フィルム積層体。
【請求項2】
各粘着フィルムのめくり片の重なり部分のうち、少なくとも一方の対向面は、隣接するめくり片の他方の対向面と密着又は接着しない非着面からなる請求項1記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体。
【請求項3】
各粘着フィルムの互いに隣接するめくり片同士のいずれか一方又は両方の対向面のうち、重なり部分内の一部領域には、他方の対向面との滑り性又は離間距離を大きくする離反処理層が形成されてなる請求項2記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体。
【請求項4】
各粘着フィルムの前記離反処理層は、めくり片の重なり部分のうち、覆い部との連接部近傍領域を除いた先側領域内に、対向面側に突出する複数の微小凸部が形成されてなる請求項2又は3記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体。
【請求項5】
各粘着フィルムのめくり片は、覆い部と連接する連接辺、連接辺と隣り合う左右の側辺、及び連接辺の対辺となる先端辺からなる四辺を含む片形状からなり、このうち左右の側辺は共に、連接辺及び先端辺のいずれよりも短く、かつ、左右の側辺間距離からなる片幅は、連接辺側から先端辺側に向かって徐々に太幅となる請求項1ないし4のいずれかに記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体を用いて自動車のホイールの貼付け面に粘着フィルムを一枚ずつ貼り付ける貼付け方法であって、
積層された最裏枚の粘着フィルムのめくり片を持って覆い部周縁のうちめくり片形成部と反対側の端部へ折り返すように部分的に剥がして、最裏枚の粘着フィルムの粘着剤層を部分露出させる部分剥離ステップと、
部分剥離ステップ後の粘着フィルム積層体の前記部分露出した粘着剤層を、自動車のホイールの貼付け面に貼付ける当接ステップと、
当接ステップによって当接させた粘着フィルム積層体全体を、貼付け面に当接させたまま貼付け位置から前記反対側の端部方向へずらすことで、最裏枚の粘着フィルムの残りの粘着剤層を、貼付け部分を基点として貼付け面側に露出させながら貼り付けるずらし貼りステップと、
の各ステップを具備してなるホイールへの粘着フィルムの貼付け方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載のホイール保護用の粘着フィルム積層体の粘着フィルムを補充する方法であって、
それぞれ所定の積層枚数からなる2体の粘着フィルム積層体のうち一方の粘着フィルム積層体のカバー材を剥離させて取り除き、これによって当該一方の粘着フィルム積層体に露出した最表枚の粘着フィルムの粘着剤層を、他方の粘着フィルム積層体の最裏面の同位置に張り付けて、新たな一つの粘着フィルム積層体に重合一体化させるホイール保護用の粘着フィルム積層体の粘着フィルムの補充方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【公開番号】特開2013−107969(P2013−107969A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253354(P2011−253354)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(592182791)株式会社スミロン (10)
【Fターム(参考)】