説明

ホウ珪酸粉末およびその製造法

【課題】 解決しようとする問題点は、従来固体のホウ珪酸ガラス抹に酸を作用させる工程をホウ珪酸ナトリウム水溶液に酸を作用させ脱塩することでエネルギー負荷の少ない工程でホウ珪酸粉末を提供する点にある。
【解決手段】本発明は、ホウ珪酸ナトリウム水溶液に無機酸(硫酸、硝酸、塩酸、リン酸など)あるいは有機酸(シュウ酸、酢酸、ギ酸など)を作用させ溶液のpHを3〜10好ましくはほぼ中性のpH5〜9にする。用いる酸は有機無機何れでも良く、pHをほぼ中性にすることにより水溶液をゲル化させることにある。発生するゲルを破砕して水に分散させたものを水に対し脱塩し、水相の塩濃度を0.1%未満にする。脱塩工程は膜を使用して発生する沈殿物を洗浄しても良く、また遠心分離機を用いて固液分離を繰り返し洗浄脱塩しても良い。このようにして得られる沈降物をろ別して乾燥するとホウ珪酸化合物の粉末が得られる。乾燥には送風しながらの加熱乾燥やスプレードライヤーなどに沈殿物の懸濁液を直接かけて乾燥粉末を得ても良い。さらには、ホウ珪酸ナトリウム水溶液を先にスプレードライヤーなどで乾燥粉末にし、この物に上記記述と同様に酸を作用させて脱塩してもホウ珪酸化合物の粉末が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料であるホウ珪酸粉末の製造法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ珪酸ガラスはホウ酸とケイ酸とを主成分として含むガラスの一種である。ガラスの基本的組成はNaO−CaO−SiO系でこの組成を基本として、使用目的に応じた組成が開発されている。熱やショックに強いホウ珪酸ガラスにはBが含まれている。ガラスの一般的製法は原料配合→溶融→成形→徐冷→加工であり、その主たる原料はケイ砂SiO,ソーダ灰NaCO、石灰石CaCO、鉛丹Pb、ホウ酸B、ホウ砂Naなどである。これらの原料を700℃以上に加熱し、溶融してガラスとする。
【0003】
ガラスの強度は基本物質である珪素と酸素との架橋性に依存していると考えられており、珪酸以外の他の酸化物が混在するとその酸化物を取り込んだ珪酸の網目構造が取られ安定化すると考えられている。特にホウ酸も珪酸と同様に網目構造をとる物質であり、珪酸とホウ酸が適度な割合で混合溶融されると強度の強いホウ珪酸ガラスが得られる。このためには原料となる珪酸ソーダやホウ砂は700℃以上に高温加熱して溶融され均一混合される。ガラスはその性質上非常に粘度が高く、温度の上昇とともにその粘度は低下して流動化する。そのため、異なる固体物質を溶融してほぼ均一に混合する為には非常に高温に加熱する必要がある。NaSiOの融点は1088℃であり、Naの融点は966℃(常用化学常数表、廣川書店、1963)である。これらの化合物を均一に溶融するには融点付近までの加熱が必要である事が容易に推測される。
【0004】
ホウ珪酸ガラスを細かに砕き、酸を用いて多孔質化したものはバイコール型ホウ珪酸ガラスとして知られている。この際ホウ珪酸ガラス中に異なる無機化合物を含めたガラスを作製して、酸処理により多孔質ガラスを作製することにより異なる性質のバイコール型ホウ珪酸ガラスを作ることが出来る。バイコール型ホウ珪酸ガラスは特殊ガラスとして知られており、電極膜や光学的用途さらには生化学的用途と広範囲に利用されている。これらはいずれも固体のガラスを処理することにより作成している。
【0005】
水ガラスは珪酸ナトリウムの濃厚水溶液であり、一般に無機接着剤や土壌改良剤、洗剤、撥水剤などと広範囲に利用されている。水ガラスは水と任意に混合する事が出来る。珪酸ナトリウムは日本工業規格に収載されており(日本工業規格、K1408)、水あめ状の1号、2号、3号及び固形のメタ珪酸ナトリウムに分類規定されている。ホウ砂は水に可溶な結晶で、加温する事により水への溶解度を増す事が出来る。ホウ砂は日本薬局方に収載されており、工業的にも多方面で使用されている。
【0006】
水ガラスを加熱すると水が沸騰するとともに水ガラスは泡立ち発泡体となる。この時点では水ガラスは単に水分を失って珪酸ナトリウムに成ったのである。したがって、水ガラスその物を接着剤として用いると乾燥した状態では接着機能を果たしているが、水や湿気に接触すると乾燥したはずの水ガラスは再度水に溶解して接着性能を失う。
【0007】
珪酸ナトリウム水溶液とホウ砂よりホウ珪酸ナトリウム水溶液を作成し、強熱することによりこのホウ珪酸ナトリウム水溶液は発泡するが水ガラスと異なり、充分強熱した(550℃以上)発泡体は水に接触しても溶解することがないことを見出した。このホウ珪酸ナトリウム水溶液はスプレードライヤーなどを用いて乾燥させることによりホウ珪酸ナトリウムの粉末を与える。この粉末を加熱すると発泡してホウ珪酸ガラスを与える。このホウ珪酸ガラスの製法は従来法とは異なり、固体溶融ではなく水溶液から作成するものである。
【特許文献1】特開2007−284325
【0008】
シリカは工業的に、例えば研磨剤、帯電防止剤、流動化助剤、インク吸収剤、印刷補助剤、沈降防止剤、艶消し剤、接着剤、シリコーンゴム物性向上剤、電気絶縁材、難燃剤等、多方面で用いられている。シリカの製造法としては大きくは乾式法と湿式法の2種類の方法が取られている。乾式法には四塩化ケイ素を酸素・水素炎中で燃焼させる燃焼法と金属シリコン製造時の副生物を利用するなどがあり、湿式法にはケイ酸ナトリウムを鉱酸で中和する沈殿法やゲル法とアルコキシシランを加水分解するゾルゲル法などがある。
【特許文献2】特開昭59−54632
【特許文献3】特開平11−11931
【特許文献4】特開2006−076866
バイコール型ホウ珪酸の用途はガラス電極など広範囲におよび多いのでその容易な作製法が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、従来固体のホウ珪酸ガラス抹に酸を作用させる工程をホウ珪酸ナトリウム水溶液に酸を作用させ脱塩することでエネルギー負荷の少ない工程でホウ珪酸粉を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ホウ珪酸ナトリウム水溶液に無機酸(硫酸、硝酸、塩酸、リン酸など)あるいは有機酸(シュウ酸、酢酸、ギ酸など)を作用させ溶液のpHを3〜10好ましくはpH5〜9のほぼ中性にする。用いる酸は有機無機何れでも良く、pHほぼ中性にすることにより水溶液をゲル化させることが出来る。発生するゲルを破砕して水に分散させたものを水に対し脱塩し、水相の塩濃度を0.1%未満にする。脱塩工程は膜を使用して発生する沈殿物を洗浄しても良く、また遠心分離機を用いて固液分離を繰り返し洗浄脱塩しても良い。このようにして得られる沈降物をろ別して乾燥するとホウ珪酸の粉末が得られる。乾燥には送風しながらの加熱乾燥やスプレードライヤーなどに沈殿物の懸濁液を直接かけて乾燥粉末を得ても良い。
【0011】
ホウ珪酸粉末を可燃性の樹脂に10〜30%添加すると自己消火することを見出した。ホウ珪酸粉末のほかに難燃助剤例えば水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどを可燃性樹脂に加えると着火しないことを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ホウ珪酸ナトリウム水溶液からホウ珪酸粉末を製造するエネルギー負荷の少ない製造方法を提供する。ホウ珪酸粉末の提供は難燃剤のみならず新しい素材として期待が持たれる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定される物ではない。
【実施例1】
【0014】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液10.2gを電子レンジで500W5分間処理して発砲体4.8gを得た。発泡体を乳鉢で粉砕し、粉末に8.5%リン酸を加えpH7とした後、ろ過水洗乾燥してホウ珪酸粉末を3.1g得た。
【実施例2】
【0015】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液1kgに30%硫酸を徐々に加えpHを6とた。ゲル中に発生する硫酸ナトリウム塩を水洗により塩濃度が0.1%未満まで除去した後、乾燥させてホウ珪酸の粉末を0.5kg得た。この粉末の粒径は3〜1200μmであった。その嵩密度は0.49であった。
【実施例3】
【0016】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液1kgに35%塩酸を徐々に加えpHを3とした。発生したゲルを破砕し水で脱塩してゲル中の塩化ナトリウムを水相の塩濃度が0.1%未満まで除去し、ビーズミルを用いて更に粉砕して粒径0.1〜3μmのホウ珪酸粉末を乾燥重量で0.35kg得た。
【実施例4】
【0017】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液から得たホウ珪酸粉末45gをエポキシ樹脂100gに混和して加熱作成した樹脂は着火せず難燃性を持っていた。
【実施例5】
【0018】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液から得たホウ珪酸粉末45gをポリエステルアクリレート樹脂100gに混和して加熱作成した樹脂は着火せず難燃性を持っていた。
【実施例6】
【0019】
ホウ珪酸粉末15g水酸化マグネシウム15gおよび水酸化アルミニウム15gを混合した粉体を脂環式ジアミン硬化エポキシ樹脂原料に添加し硬化した樹脂は着火しなかった。
【実施例7】
【0020】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液1kgをスプレードライヤーにかけ球状粉末0.5kgを得た。この粉末を2.5%硫酸液にサスペンド攪拌しpH4として沈殿物を得た。この沈殿物を脱塩乾燥してホウ珪酸末0.4kgを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ珪酸ナトリウム水溶液を酸で中和し脱塩して得られる固形物およびその製造法
【請求項2】
請求項1のホウ珪酸ナトリウム水溶液を乾燥粉末とし酸溶液で中和し脱塩して得られる固形物およびその製造法
【請求項3】
上記請求項を可燃性ポリマーに添加し、難燃性ポリマーを得る方法

【公開番号】特開2010−265159(P2010−265159A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134469(P2009−134469)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(501332688)株式会社 エー・イー・エル (6)
【Fターム(参考)】