ホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜
【課題】ホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜に関し、プロトン伝導率の良好なホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするホスホン酸ポリマー。
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするホスホン酸ポリマー。
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸系のポリマーは、固体高分子形燃料電池用の電解質膜として広く用いられている。しかしながら、パーフルオロスルホン酸系のポリマーは非常に高価であるため、これに代わる材料に関し、種々の提案がなされているところである。そのうちの一つに、ポリマー側鎖にリン酸基を導入したホスホン酸ポリマーがある。このようなホスホン酸ポリマーとして、例えば特許文献1には、ポリスチレンの芳香環にメチレン基を介してリン酸基を導入したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−257238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のホスホン酸ポリマーは、その繰り返し単位内に分子量の大きい芳香環を有している。そのため、リン酸基1モル当たりのポリマー乾燥重量(EW値)が相対的に大きくなり、芳香環を有しない構造のホスホン酸ポリマーに比べてプロトン伝導率が低くなるという問題がある。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、プロトン伝導率の良好なホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、ホスホン酸ポリマーであって、
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【0007】
また、第2の発明は、燃料電池用電解質膜であって、
第1の発明のホスホン酸ポリマーを含むことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、燃料電池用電解質膜であって、
第1の発明のホスホン酸ポリマーの架橋体を含むことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第1の発明のホスホン酸ポリマーの製造方法であって、
下記式(2)で表されるカルボキシル酸基含有化合物に還元剤を反応させて、下記式(3)で表されるヒドロキシメチル基含有化合物を得る工程と、
前記ヒドロキシメチル基含有化合物に、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を反応させて、下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸系化合物を得る工程と、
前記(メタ)アクリル酸系化合物を付加重合して、下記式(5)で表される繰り返し単位を含むポリマー前駆体を得る工程と、
前記ポリマー前駆体のエステル部位を加水分解する工程と、
を備えることを特徴とする。
【化2】
(式(2)〜(5)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
第1〜第4の発明によれば、プロトン伝導率の良好なホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】合成例1で得られた化合物(A)の1H−NMRチャートである。
【図2】合成例1で得られた化合物(B)の1H−NMRチャートである。
【図3】合成例1で得られた化合物(C)の1H−NMRチャートである。
【図4】合成例1で得られた化合物(D)の1H−NMRチャートである。
【図5】合成例1で得られた化合物(E)の1H−NMRチャートである。
【図6】合成例1で得られた化合物(E)の31P−NMRチャートである。
【図7】合成例1で得られた化合物(E)の19F−NMRチャートである。
【図8】合成例2で得られた化合物(F)の1H−NMRチャートである。
【図9】合成例2で得られた化合物(G)の1H−NMRチャートである。
【図10】合成例2で得られた化合物(H)の1H−NMRチャートである。
【図11】合成例2で得られた化合物(I)の1H−NMRチャートである。
【図12】化合物(E)、化合物(I)からそれぞれ作製したフィルム試料に対し、湿度を変化させながら測定したプロトン伝導率のグラフである。
【図13】化合物(E)を架橋して作製したフィルム試料に対し、湿度を変化させながら測定したプロトン伝導率のグラフである。
【図14】化合物(E)を架橋して作製したフィルム試料の吸水量λとプロトン伝導率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜について説明する。
【0013】
[ホスホン酸ポリマー]
先ず、本発明のホスホン酸ポリマーについて説明する。本発明のホスホン酸ポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む。
【化3】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【0014】
上記式(1)に示すように、本発明のホスホン酸ポリマーは、繰り返し単位内に芳香環を含まないので、芳香環を含むものに比べてEW値を小さくすることができる。また、本発明のホスホン酸ポリマーは、リン酸基の隣接部位にフッ化メチレン基を有するので、このリン酸基上のマイナス電荷を強く吸引できる。そのため、リン酸基の隣接部位にアルキル基を有する構造のものに比べ、リン酸基上のプロトンを解離させ易くできる。従って、その詳細は実施例にて後述するが、本発明のホスホン酸ポリマーは、高いプロトン伝導率を示すことができる。
【0015】
[ホスホン酸ポリマーの製造方法]
次に、本発明のホスホン酸ポリマーの製造方法について説明する。本発明のホスホン酸ポリマーは、以下の第1〜第4工程によって製造される。
【0016】
(第1工程)
本発明に係る製造方法の第1の工程は、下記式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物と、還元剤とを反応させて、下記式(3)で表されるヒドロキシメチル基含有化合物を得る工程である。
【化4】
(式(2)、(3)中、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【0017】
上記式(2)、(3)中のR2、R3は、リン酸の保護基である。R2、R3としては、共にエチル基を用いるが、例えば、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基といった、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基などを用いてもよい。
【0018】
上記式(2)の化合物は、ジフルオロメタンリン酸(HCF2PO(OH)2)のエステル化合物をカルボキシル化反応させることで得られる。このカルボキシル化反応については、例えばJ.Chem.Soc.,Perkin I,1999(1051−1056)に記載されている。
【0019】
上記式(2)の化合物と反応させる還元剤には、例えばB2H6、NaBH4、NaBH3CNといった、還元力の比較的弱い還元剤が用いられる。このような還元剤を用いることで、上記化合物中のカルボキシル基を選択的に還元できる。還元剤の使用量は、通常、上記式(2)の化合物1モルに対して2〜10モルであるが、0.5〜10モルとしてもよい。
【0020】
本工程は、有機溶媒の存在下で行われる。本工程では、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキエタンといったエーテル系溶媒を用いるが、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などを用いてもよい。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を同時に用いてもよい。有機溶媒の使用量は、通常、上記式(2)の化合物の2〜20重量倍であるが、1〜100重量倍としてもよい。
【0021】
上記式(2)の化合物と上記還元剤との反応は、上記式(2)の化合物と有機溶媒とを含む混合物中に還元剤を徐々に加えていく方法によって行われる。具体的には、先ず、上記式(2)の化合物と上記有機溶媒とを含む混合物を−40〜10℃程度に保持する。次に、この混合物に上記還元剤を加えながら室温まで上昇させて反応させる。反応させる時間は、1〜48時間の範囲で適宜調節が可能である。反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、IRやNMRによって確認できる。
【0022】
反応液は、水と混合し、その後、水と分液可能な有機溶媒と混合して分液処理される。本工程では、水と分液可能な有機溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒などを用いるが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキエタン等のエーテル溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン等のハロゲン化炭化水素溶媒やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒を用いてもよい。分液処理に用いる水や有機溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、還元剤の加水分解により生じる無機物を溶解させるための必要量とすることができる。分液処理後の有機層は、水や酸性水溶液を用いて洗浄処理され、必要に応じて脱水、ろ過処理される。
【0023】
(第2工程)
本発明に係る製造方法の第2の工程は、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物と、上記式(3)の化合物とを反応させて、下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸系化合物を得る工程である。
【化5】
(式(4)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【0024】
本工程においては、上記式(3)の化合物と(メタ)アクリル酸クロライドとを反応させるが、(メタ)アクリル酸クロライドの代わりに、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを用いてもよいし、無水(メタ)アクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸の混合酸無水物や、(メタ)アクリル酸と他の酸の混合酸無水物などを用いてもよい。(メタ)アクリル酸にDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合材を加えて反応させてもよい。(メタ)アクリル酸クロライドまたは無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を用いる場合、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物の使用量は、通常、上記式(3)の化合物1モルに対して1.5〜5モルであるが、1〜10モルとしてもよい。
【0025】
本工程は、塩基性物質の存在下で行われる。本工程で使用可能な塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等の金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属の炭酸塩、リン酸一ナトリウム、リン酸カリウム等の金属のリン酸塩やリン酸水素塩、塩基性のイオン交換樹脂、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機3級アミン、ピリジン等の芳香族アミンなどが挙げられる。塩基性物質の使用量は、通常、上記式(3)の化合物1モルに対して1.5〜5モルであるが、1〜10モルとしてもよい。
【0026】
また、本工程は、有機溶媒の存在下で行われる。本工程では、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキエタンといったエーテル系溶媒を用いるが、上述した脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒やハロゲン化炭化水素溶媒などを用いてもよい。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を同時に用いてもよい。有機溶媒の使用量は、通常、上記式(3)の化合物の2〜20重量倍であるが、1〜100重量倍としてもよい。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物と、上記式(3)の化合物との反応は、上記式(3)の化合物と、塩基性物質と、有機溶媒とを含む混合物中に、上記(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を徐々に加えていく方法によって行われる。具体的には、先ず、上記式(3)の化合物と、塩基性物質と、有機溶媒とを含む混合物を−40〜10℃程度に保持する。次に、この混合物に上記(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を加えながら室温まで上昇させて反応させる。反応させる時間は、1〜6時間の範囲で適宜調節が可能である。反応の進行は、例えばGC、HPLC、TLC、IRやNMRによって確認できる。
【0028】
反応液は、水と混合し、その後、水と分液可能な有機溶媒と混合して分液処理される。本工程では、水と分液可能な有機溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒などを用いるが、上述した脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒やハロゲン化炭化水素溶媒などを用いてもよい。分液処理に用いる水や有機溶媒の使用量は特に限定されない。分液処理後の有機層は、水や酸性水溶液を用いて洗浄処理され、必要に応じて脱水、ろ過処理される。
【0029】
(第3工程)
本発明に係る製造方法の第3の工程は、上記式(4)の化合物を付加重合して、下記式(5)で表される繰り返し単位を含むポリマー前駆体を得る工程である。
【化6】
(式(5)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【0030】
上記式(5)のポリマー前駆体は、公知の方法で常法に従って重合させることで得られる。公知の重合法としては、例えば、上記式(4)の化合物をテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンといった適当な溶媒中に溶解させて、ラジカル重合開始剤を添加して約50℃〜220℃で重合させるラジカル重合法を利用できる。
【0031】
ラジカル重合法に用いる重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドのような過酸化物、及び過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩などが利用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。重合開始剤の使用量は、通常、上記式(4)の化合物1モルに対して0.001〜0.1モルであるが、0.005〜0.01モルとしてもよい。
【0032】
(第4工程)
本工程は、上記式(5)のポリマー前駆体と、脱エステル化剤とを反応させて、上記式(5)のポリマー前駆体のリン酸エステル基をリン酸基に変換させる工程である。本工程を経ることで、本発明のホスホン酸ポリマーを製造できる。
【0033】
本工程においては、上記式(5)のポリマー前駆体と、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、トリメチルシリルヨージドといったトリアルキルシリルハロゲン化物とを反応させる。トリアルキルシリルハロゲン化物の使用量は、通常、上記式(5)のポリマー前駆体のリン酸エステル基1モルに対して1.5〜3モルであるが、1〜5モルとしてもよい。
【0034】
本工程は、有機溶媒の存在下で行われる。本工程では、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒を用いるが、上述した脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒やエーテル系溶媒などを用いてもよい。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を同時に用いてもよい。有機溶媒の使用量は、通常、上記式(5)のポリマー前駆体の0.01〜0.1重量倍であるが、0.01〜1重量倍としてもよい。
【0035】
上記式(5)のポリマー前駆体と、上記トリアルキルシリルハロゲン化物との反応は、上記式(5)のポリマー前駆体と有機溶媒とを含む混合物中に上記トリアルキルシリルハロゲン化物を徐々に加えていく方法によって行われる。具体的には、先ず、上記式(5)のポリマー前駆体と上記有機溶媒とを含む混合物を−40〜10℃程度に保持する。次に、この混合物に上記トリアルキルシリルハロゲン化物を加えながら室温まで上昇させて反応させる。反応させる時間は、24〜200時間の範囲で適宜調節が可能である。
【0036】
[燃料電池用電解質膜]
次に、本発明の燃料電池用電解質膜について説明する。本発明の燃料電池用電解質膜は、本発明のホスホン酸ポリマー、或いは本発明のホスホン酸ポリマーを必要に応じて架橋等したものを溶媒中で溶解または膨潤させ、それを基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法により得られる。なお、本発明の燃料電池用電解質膜は、フェノール性水酸基含有化合物、アミン系化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物といった酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0037】
本発明のホスホン酸ポリマーを架橋する場合は、例えば、本発明のホスホン酸ポリマーを、水、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンといった適当な溶媒中に溶解させ、次いでラジカル重合開始剤を添加して約50℃〜220℃で重合させるラジカル重合法を利用できる。ラジカル重合開始剤としては、ポリマー主鎖中の水素を引き抜いてポリマーラジカルを発生可能な過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドといった有機化酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムといった無機過酸化物が利用できる。これらの過酸化物は単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。
【0038】
上記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製などの基体が用いられる。好ましい基体としては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが用いられる。
【0039】
本発明のホスホン酸ポリマーを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、アセトニトリル等の非プロトン系極性溶媒や、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γーブチルラクトン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明のホスホン酸ポリマーを溶解させた溶液中のポリマー濃度は、ポリマーの分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。ポリマー濃度が上記範囲よりも低いと、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい傾向にあり、上記範囲を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
【0041】
また、溶液粘度は、ポリマーの分子量、ポリマー濃度、添加剤の濃度などによっても異なるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。溶液粘度が上記範囲よりも低いと、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがあり、上記範囲を超えると、粘度が高過ぎてフィルム化が困難となることがある。
【0042】
成膜後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の溶媒を水と置換することができ、膜中の残留溶媒量を低減することができる。なお、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。この予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常10〜60℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
【0043】
未乾燥フィルム(予備乾燥後のフィルムも含む。以下同じ。)を水に浸漬する際は、枚葉を水に浸漬するバッチ方式でもよく、基板フィルム(例えば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を、水に浸漬させて巻き取っていく連続方式でもよい。また、バッチ方式の場合は、処理後のフィルム表面に皺が形成されることを抑制するために、未乾燥フィルムを枠に嵌めるなどの方法で、水に浸漬させることが好ましい。
【0044】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減された膜が得られるが、このようにして得られる膜の残存溶媒量は、通常5重量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる膜の残存溶媒量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、例えば、未乾燥フィルム1重量部に対する水の使用量が50重量部以上であり、浸漬する際の水の温度が10〜60℃、浸漬時間が10分〜10時間である。
【0045】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを室温、好ましくは10〜60℃で10〜48時間、好ましくは10〜24時間真空乾燥することにより、燃料電池用電解質膜が得られる。
【実施例1】
【0046】
次に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[合成例1]
【化7】
<カルボン酸体(化合物(A))の合成>
アルゴン雰囲気下、1lの4口フラスコにジイソプロピルアミン、THF(脱水)340mlを仕込み、−70℃まで冷却した。次に、1.67Mn−BuLi/ヘキサン溶液を同温度で滴下し、0℃まで昇温させて10分間撹拌した。次に、−70℃へ再度冷却し、HCF2PO(OEt)2/THF(脱水)160mlを同温度で滴下した。−70℃で30分間撹拌した後、濃硫酸を通して乾燥させたCO2ガスを反応溶液中へ約50分間バブリングしたところ、−20℃まで上昇した。徐々に0℃まで昇温させ、2M硫酸3.2mlを滴下し、15分間撹拌した後、飽和重曹水約120mlを加えてアルカリ性にした。その後、エーテルを加え、撹拌、分液し、得られた水層に1M硫酸を加えて酸性にした後、酢酸エチルで3回抽出、さらに水層にNaClを加えて酢酸エチルで3回抽出した。抽出液を合わせた有機層をMgSO4で脱水、ろ過し、ろ液を減圧濃縮したところ、淡褐色のオイル5.81gを得た(化合物(A))。この1H−NMRチャートを図1に示す。
【0048】
【化8】
<アルコール体(化合物(B))の合成>
アルゴン雰囲気下、500mlのナスフラスコに化合物(A)、THF(脱水)を仕込み、氷水で冷却した。NaBH4を少しずつ添加し、室温まで昇温させて一晩撹拌した。反応液を氷水200mlへ注入し、酢酸エチルで3回抽出した。抽出液を合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、その後、MgSO4で脱水、ろ過し、ろ液を減圧濃縮したところ、淡褐色のオイル3.2gを得た(化合物(B))。この1H−NMRチャートを図2に示す。
【0049】
【化9】
<アクリレート体(化合物(C))の合成>
アルゴン雰囲気下、100mlのナスフラスコに化合物(B)、THF(脱水)、トリエチルアミン1.46mlを仕込み、氷水で冷却した。アクリル酸クロライド0.74mlを滴下し、室温まで昇温させて1時間後、GCで反応チェックを行ったが、化合物(B)が残存していた。そのため再度氷水で冷却し、トリエチルアミン0.73ml及びアクリル酸クロライド0.37mlを滴下し、室温まで昇温させて1時間撹拌した。反応液を水に注入し、酢酸エチルで3回抽出した。抽出液を合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、その後、MgSO4で脱水、ろ過し、ろ液を減圧濃縮したところ、淡褐色のオイル1.3gを得た。得られたオイルをシリカゲルカラム精製し(シリカゲル25g、ヘキサン/酢酸エチル=4/1〜2/1)、アクリレート体520mg(化合物(C))を得た。この1H−NMRチャートを図3に示す。
【0050】
【化10】
<ホスホン酸エステルポリマー(化合物(D))の合成>
凍結アンプル管に化合物(C)、トルエン(脱水)、AIBNを仕込み、液体窒素で溶液を凍結し、アンプル管を真空引きして脱気し、窒素で開放するという凍結脱気作業を3回行った(3方コックで切り替え)。窒素で充填させた状態でバーナーを用いて封管した。その後、62℃のバスで24時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、アンプルを切り、減圧濃縮し、残渣をヘキサンで洗浄し、92mgの粘調なオイル(化合物(D))を得た。この1H−NMRチャートを図4に示す。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)から得られたポリマーの分子量は、Mn:9,826、Mw:21,528であった。なお、これらの値は、Waters社製のRI検出器(2414示差屈折計)に、カラムとしてShodex KD−806Mを2本用い、展開溶媒:0.01MLiBr含有NMP、カラム温度:40℃の条件で測定した際のポリスチレン換算値である。
【0051】
【化11】
<ホスホン酸ポリマー(化合物(E))の合成>
アルゴン雰囲気下、10mlのナスフラスコに化合物(D)、クロロホルム(脱水)を仕込み、氷水で冷却し、TMSBrを滴下し、室温まで昇温させた。室温で3日間反応させ、水1mlを添加し、減圧濃縮して淡黄色の粘調なオイル30mgを得た。この1H−NMRチャートを図5に、31P−NMRチャートを図6に、19F−NMRチャートを図7にそれぞれ示す。
【0052】
[合成例2]
【化12】
<2,4−ビス(ジエチルオキシホスホノイル)アニリン(DPA)(化合物(F))の合成>
撹拌子を入れた200ml二口ナス型フラスコに、2,4−ジブロモアニリン5.0184g(20mmol)、酢酸パラジウム0.4490g、トリフェニルホスフィン1.5737g(6.0mmol)を入れ、窒素置換を行った。続いて、エタノール120mlを入れ、亜リン酸ジエチル12.4ml(96mmol)、ジシクロヘキシルメチルアミン12.7ml(60mmol)を入れ、冷却管を取り付けて、窒素雰囲気下、95℃で48時間撹拌させた。反応終了後、室温にし、溶媒を留去後、残留物を塩化メチレンに溶かし、抽出を行った。2M塩酸水溶液で4回、水1回で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水を行った。その後、溶媒を留去し、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=50:1)により精製を行い、溶媒を留去、減圧乾燥し、オイル状の黄色液体5.0246g(収率68%)を得た(化合物(F))。この1H−NMRチャートを図8に示す。
【0053】
【化13】
<N−[2,4−ビス(ジエトキシホスホノイル)フェニル]アクリルアミド(化合物(G))の合成>
撹拌子を入れた30ml二口ナス型フラスコに、合成した化合物(F)2.9224g(8.0mmol)を入れ、窒素置換を行った。そこに脱水THF8ml(11.1mmol)、脱水ピリジン1.0ml(12.8mmol)を入れ、反応液を0℃に冷却した。0℃にした後、アクリロイルクロリド1.0ml(12.8mmol)を加え、室温で1時間撹拌させた。反応終了後、水を加え、塩化メチレンで抽出を行った。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、水1回で洗浄を行った後、無水硫酸マグネシウムで水を除去し、溶媒を留去後、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製を行い、溶媒を留去、減圧乾燥し、白色の結晶固体1.1195g(収率33%)を得た(化合物(G))この1H−NMRチャートを図9に示す。
【0054】
【化14】
<ポリN−[2,4−ビス(ジエトキシホスホノイル)フェニル]アクリルアミド(化合物(H))の合成>
合成した化合物(G)を1g(0.00238mol)と、アゾイソブチロニトリル0.013g(0.0000785mol)、トルエン9gをアンプル管に加え、液体窒素で固化させた後、アルゴンガスで置換させることにより酸素を十分除去させた。その後、アンプル管を封印して60℃、24時間撹拌した。撹拌後、ヘキサンで再沈殿させて目的とする化合物(H)0.4g(収率40%)を得た(化合物(H))。この1H−NMRチャートを図10に示す。
【0055】
【化15】
<化合物(I)の合成>
合成した化合物(H)0.15gをクロロホルム15mlに溶解させ、そこにt−ブチルジメチルシリルクロリド0.51g(0.0033mol)を50℃滴下して加えた。反応溶液を40℃に加熱し、24時間反応させた後、メタノールに再沈殿させた。メタノールで洗浄後、80℃で減圧乾燥させることで目的とする化合物(I)0.565g(収率97%)を得た(化合物(I))。この1H−NMRチャートを図11に示す。
【0056】
[フィルム試料の作製]
合成例1で得られた化合物(E)、合成例2で得られた化合物(I)のポリマー粉をエタノールで20重量%となるように溶解させ、膜厚が50μmとなるようにPTFE上に塗布した。塗布後、熱風乾燥機で80℃1時間乾燥させ、2種類のフィルムを得た。このうち、化合物(E)から作製したフィルムを実施例1の試料とし、化合物(I)から作製したフィルムを比較例1の試料とした。
【0057】
また、合成例1で得られた化合物(E)0.1285g(0.60mmol)を、5mol%のBPO0.010g(0.030mmol)を溶かしたメタノール溶液に加え、乾燥後の膜厚が150μmとなるように、この混合溶液をPTFEシート上に塗布した。続いて、PTFEシート上の混合溶液を40℃から100℃まで1時間毎に10℃ずつ段階的に上げながら加熱して架橋フィルムを得た。化合物(E)が水溶性を示したのに対し、この架橋フィルムを25℃の水に24時間浸してもフィルムの溶解は見られなかった。この架橋フィルムを実施例2の試料とした。
【0058】
<測定方法及び評価>
(1)EW値の測定
実施例1、比較例1の試料をそれぞれ100℃で24時間減圧乾燥後、アルゴン雰囲気のグローブボックス中に移し30分放置してから重量を測定した。これらをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、0.1mol/lの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液で滴定を行った。pH7になった時点を当量点とし、そのとき加えた水酸化テトラメチルアンモニウムの量からEW値を計算した。
EW値[g/mol]=1000×試験用試料の重量[g]/0.1[mol/l]×水酸化ナトリウムの滴定量[ml]
その結果、実施例1の試料は、EW値が215g/molであった。一方、比較例1の試料は、EW値が265g/molであった。
【0059】
(2)80℃雰囲気下でのプロトン伝導率の測定
実施例1、2の試料、比較例1の試料をそれぞれ10mm×30mmの短冊状に切り取り、両端を金属板(5mm×50mm)で挟み込み、テフロン(登録商標)製の測定用プローブで挟持して積層体を作製した。次いで、80℃の雰囲気中にて、白金板間の抵抗をSOLARTRON社製、1260FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。測定に際しては、20%〜90%の範囲で積層体の湿度を変更した。プロトン伝導率は、次式からを求めた。
プロトン伝導率[S/cm]=白金板間隔[cm]/(試料膜幅[cm]×試料膜厚[cm]×抵抗[Ω])
【0060】
求めたプロトン伝導率の結果を図12および図13に示す。図12から分かるように、実施例1の試料は、測定条件の全範囲において、比較例1の試料に比べて高いプロトン伝導率を示した。特に、低湿度条件(〜60%)において、実施例1の試料は、比較例1の試料に比べ高い値を示した。このことから、実施例1の試料は、プロトン伝導率が良好であり、低湿度下でも使用可能であることが分かった。
【0061】
また、図13から分かるように、実施例2の試料は、測定条件の全範囲において、Nafion(登録商標)試料に比べて高いプロトン伝導率を示した。このことから、本発明のホスホン酸ポリマーを架橋したことで、プロトン伝導率が大幅に向上することが分かった。このような結果を示した理由の詳細は不明であるが、ホスホン酸ポリマーが分子内架橋することで部分的な酸密度が向上したものと考えられる。
【0062】
(3)吸水量λの測定
日本ベル(株)製高分子膜水分吸着量試料装置(MSB−AD−FC)を用いて、実施例2の試料の各湿度におけるプロトン伝導率と、吸水量λとを求めた。具体的には、実施例2の試料を80℃の真空条件下で30分放置した後、所定の湿度で2時間保持した後のプロトン伝導率と水分量とを求めた。また、Nafion試料についても実施例2の試料と同様の測定条件で、プロトン伝導率と水分量とを求めた。求めた水分量は、試料中に含まれる酸基(ホスホン酸またはスルホン酸)1つあたりに換算して吸水量λ(個)とした。図14に、吸水量λとプロトン伝導率との関係を示す。図14から分かるように、実施例2の試料は、吸水量λが低い領域において、Nafion試料よりも高いプロトン伝導率を示した。このことから、実施例2の試料は、水による膨潤を抑えつつ、Nafion試料よりも良好なプロトン伝導率を示すことが分かった。
【0063】
(4)酸化安定性の評価
3cm×3cmに切り出した実施例2の試料片を、25℃のフェントン試験溶液(20ppmのFeSO4を含む3%H2O2水溶液)に24時間浸漬した。浸漬終了後、試料片をピンセットで取り出し、サンプル袋に入れ、50℃で24時間かけて真空乾燥を行った。真空乾燥後、試料片の重量を測定した。また、比較用として、Y. Yin et al., Polymer 44 (2003), 4509-4518に示されたスルホン酸ポリイミド(化合物(J))についても実施例2の試料と同様の測定条件で、試料片の重量を測定した。
【0064】
【化16】
【0065】
フェントン試験の結果を下表1に示す。なお、下表1中の重量保持率は、フェントン試験前後の試料片の重量比率であり、その値が高いほどラジカル耐性が高いことを示す。下表1から分かるように、実施例2の試料は、上記特性に加えて、ラジカル耐性をも備えることが示された。
【0066】
【表1】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸系のポリマーは、固体高分子形燃料電池用の電解質膜として広く用いられている。しかしながら、パーフルオロスルホン酸系のポリマーは非常に高価であるため、これに代わる材料に関し、種々の提案がなされているところである。そのうちの一つに、ポリマー側鎖にリン酸基を導入したホスホン酸ポリマーがある。このようなホスホン酸ポリマーとして、例えば特許文献1には、ポリスチレンの芳香環にメチレン基を介してリン酸基を導入したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−257238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のホスホン酸ポリマーは、その繰り返し単位内に分子量の大きい芳香環を有している。そのため、リン酸基1モル当たりのポリマー乾燥重量(EW値)が相対的に大きくなり、芳香環を有しない構造のホスホン酸ポリマーに比べてプロトン伝導率が低くなるという問題がある。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、プロトン伝導率の良好なホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、ホスホン酸ポリマーであって、
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【0007】
また、第2の発明は、燃料電池用電解質膜であって、
第1の発明のホスホン酸ポリマーを含むことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、燃料電池用電解質膜であって、
第1の発明のホスホン酸ポリマーの架橋体を含むことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第1の発明のホスホン酸ポリマーの製造方法であって、
下記式(2)で表されるカルボキシル酸基含有化合物に還元剤を反応させて、下記式(3)で表されるヒドロキシメチル基含有化合物を得る工程と、
前記ヒドロキシメチル基含有化合物に、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を反応させて、下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸系化合物を得る工程と、
前記(メタ)アクリル酸系化合物を付加重合して、下記式(5)で表される繰り返し単位を含むポリマー前駆体を得る工程と、
前記ポリマー前駆体のエステル部位を加水分解する工程と、
を備えることを特徴とする。
【化2】
(式(2)〜(5)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
第1〜第4の発明によれば、プロトン伝導率の良好なホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】合成例1で得られた化合物(A)の1H−NMRチャートである。
【図2】合成例1で得られた化合物(B)の1H−NMRチャートである。
【図3】合成例1で得られた化合物(C)の1H−NMRチャートである。
【図4】合成例1で得られた化合物(D)の1H−NMRチャートである。
【図5】合成例1で得られた化合物(E)の1H−NMRチャートである。
【図6】合成例1で得られた化合物(E)の31P−NMRチャートである。
【図7】合成例1で得られた化合物(E)の19F−NMRチャートである。
【図8】合成例2で得られた化合物(F)の1H−NMRチャートである。
【図9】合成例2で得られた化合物(G)の1H−NMRチャートである。
【図10】合成例2で得られた化合物(H)の1H−NMRチャートである。
【図11】合成例2で得られた化合物(I)の1H−NMRチャートである。
【図12】化合物(E)、化合物(I)からそれぞれ作製したフィルム試料に対し、湿度を変化させながら測定したプロトン伝導率のグラフである。
【図13】化合物(E)を架橋して作製したフィルム試料に対し、湿度を変化させながら測定したプロトン伝導率のグラフである。
【図14】化合物(E)を架橋して作製したフィルム試料の吸水量λとプロトン伝導率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のホスホン酸ポリマー、その製造方法及び燃料電池用電解質膜について説明する。
【0013】
[ホスホン酸ポリマー]
先ず、本発明のホスホン酸ポリマーについて説明する。本発明のホスホン酸ポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む。
【化3】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【0014】
上記式(1)に示すように、本発明のホスホン酸ポリマーは、繰り返し単位内に芳香環を含まないので、芳香環を含むものに比べてEW値を小さくすることができる。また、本発明のホスホン酸ポリマーは、リン酸基の隣接部位にフッ化メチレン基を有するので、このリン酸基上のマイナス電荷を強く吸引できる。そのため、リン酸基の隣接部位にアルキル基を有する構造のものに比べ、リン酸基上のプロトンを解離させ易くできる。従って、その詳細は実施例にて後述するが、本発明のホスホン酸ポリマーは、高いプロトン伝導率を示すことができる。
【0015】
[ホスホン酸ポリマーの製造方法]
次に、本発明のホスホン酸ポリマーの製造方法について説明する。本発明のホスホン酸ポリマーは、以下の第1〜第4工程によって製造される。
【0016】
(第1工程)
本発明に係る製造方法の第1の工程は、下記式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物と、還元剤とを反応させて、下記式(3)で表されるヒドロキシメチル基含有化合物を得る工程である。
【化4】
(式(2)、(3)中、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【0017】
上記式(2)、(3)中のR2、R3は、リン酸の保護基である。R2、R3としては、共にエチル基を用いるが、例えば、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基といった、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基などを用いてもよい。
【0018】
上記式(2)の化合物は、ジフルオロメタンリン酸(HCF2PO(OH)2)のエステル化合物をカルボキシル化反応させることで得られる。このカルボキシル化反応については、例えばJ.Chem.Soc.,Perkin I,1999(1051−1056)に記載されている。
【0019】
上記式(2)の化合物と反応させる還元剤には、例えばB2H6、NaBH4、NaBH3CNといった、還元力の比較的弱い還元剤が用いられる。このような還元剤を用いることで、上記化合物中のカルボキシル基を選択的に還元できる。還元剤の使用量は、通常、上記式(2)の化合物1モルに対して2〜10モルであるが、0.5〜10モルとしてもよい。
【0020】
本工程は、有機溶媒の存在下で行われる。本工程では、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキエタンといったエーテル系溶媒を用いるが、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン等のハロゲン化炭化水素溶媒などを用いてもよい。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を同時に用いてもよい。有機溶媒の使用量は、通常、上記式(2)の化合物の2〜20重量倍であるが、1〜100重量倍としてもよい。
【0021】
上記式(2)の化合物と上記還元剤との反応は、上記式(2)の化合物と有機溶媒とを含む混合物中に還元剤を徐々に加えていく方法によって行われる。具体的には、先ず、上記式(2)の化合物と上記有機溶媒とを含む混合物を−40〜10℃程度に保持する。次に、この混合物に上記還元剤を加えながら室温まで上昇させて反応させる。反応させる時間は、1〜48時間の範囲で適宜調節が可能である。反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、IRやNMRによって確認できる。
【0022】
反応液は、水と混合し、その後、水と分液可能な有機溶媒と混合して分液処理される。本工程では、水と分液可能な有機溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒などを用いるが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族溶媒、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキエタン等のエーテル溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン等のハロゲン化炭化水素溶媒やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒を用いてもよい。分液処理に用いる水や有機溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、還元剤の加水分解により生じる無機物を溶解させるための必要量とすることができる。分液処理後の有機層は、水や酸性水溶液を用いて洗浄処理され、必要に応じて脱水、ろ過処理される。
【0023】
(第2工程)
本発明に係る製造方法の第2の工程は、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物と、上記式(3)の化合物とを反応させて、下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸系化合物を得る工程である。
【化5】
(式(4)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【0024】
本工程においては、上記式(3)の化合物と(メタ)アクリル酸クロライドとを反応させるが、(メタ)アクリル酸クロライドの代わりに、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを用いてもよいし、無水(メタ)アクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸の混合酸無水物や、(メタ)アクリル酸と他の酸の混合酸無水物などを用いてもよい。(メタ)アクリル酸にDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合材を加えて反応させてもよい。(メタ)アクリル酸クロライドまたは無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を用いる場合、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物の使用量は、通常、上記式(3)の化合物1モルに対して1.5〜5モルであるが、1〜10モルとしてもよい。
【0025】
本工程は、塩基性物質の存在下で行われる。本工程で使用可能な塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等の金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属の炭酸塩、リン酸一ナトリウム、リン酸カリウム等の金属のリン酸塩やリン酸水素塩、塩基性のイオン交換樹脂、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機3級アミン、ピリジン等の芳香族アミンなどが挙げられる。塩基性物質の使用量は、通常、上記式(3)の化合物1モルに対して1.5〜5モルであるが、1〜10モルとしてもよい。
【0026】
また、本工程は、有機溶媒の存在下で行われる。本工程では、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキエタンといったエーテル系溶媒を用いるが、上述した脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒やハロゲン化炭化水素溶媒などを用いてもよい。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を同時に用いてもよい。有機溶媒の使用量は、通常、上記式(3)の化合物の2〜20重量倍であるが、1〜100重量倍としてもよい。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物と、上記式(3)の化合物との反応は、上記式(3)の化合物と、塩基性物質と、有機溶媒とを含む混合物中に、上記(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を徐々に加えていく方法によって行われる。具体的には、先ず、上記式(3)の化合物と、塩基性物質と、有機溶媒とを含む混合物を−40〜10℃程度に保持する。次に、この混合物に上記(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物を加えながら室温まで上昇させて反応させる。反応させる時間は、1〜6時間の範囲で適宜調節が可能である。反応の進行は、例えばGC、HPLC、TLC、IRやNMRによって確認できる。
【0028】
反応液は、水と混合し、その後、水と分液可能な有機溶媒と混合して分液処理される。本工程では、水と分液可能な有機溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒などを用いるが、上述した脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒やハロゲン化炭化水素溶媒などを用いてもよい。分液処理に用いる水や有機溶媒の使用量は特に限定されない。分液処理後の有機層は、水や酸性水溶液を用いて洗浄処理され、必要に応じて脱水、ろ過処理される。
【0029】
(第3工程)
本発明に係る製造方法の第3の工程は、上記式(4)の化合物を付加重合して、下記式(5)で表される繰り返し単位を含むポリマー前駆体を得る工程である。
【化6】
(式(5)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【0030】
上記式(5)のポリマー前駆体は、公知の方法で常法に従って重合させることで得られる。公知の重合法としては、例えば、上記式(4)の化合物をテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンといった適当な溶媒中に溶解させて、ラジカル重合開始剤を添加して約50℃〜220℃で重合させるラジカル重合法を利用できる。
【0031】
ラジカル重合法に用いる重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドのような過酸化物、及び過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩などが利用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。重合開始剤の使用量は、通常、上記式(4)の化合物1モルに対して0.001〜0.1モルであるが、0.005〜0.01モルとしてもよい。
【0032】
(第4工程)
本工程は、上記式(5)のポリマー前駆体と、脱エステル化剤とを反応させて、上記式(5)のポリマー前駆体のリン酸エステル基をリン酸基に変換させる工程である。本工程を経ることで、本発明のホスホン酸ポリマーを製造できる。
【0033】
本工程においては、上記式(5)のポリマー前駆体と、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、トリメチルシリルヨージドといったトリアルキルシリルハロゲン化物とを反応させる。トリアルキルシリルハロゲン化物の使用量は、通常、上記式(5)のポリマー前駆体のリン酸エステル基1モルに対して1.5〜3モルであるが、1〜5モルとしてもよい。
【0034】
本工程は、有機溶媒の存在下で行われる。本工程では、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒を用いるが、上述した脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒やエーテル系溶媒などを用いてもよい。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を同時に用いてもよい。有機溶媒の使用量は、通常、上記式(5)のポリマー前駆体の0.01〜0.1重量倍であるが、0.01〜1重量倍としてもよい。
【0035】
上記式(5)のポリマー前駆体と、上記トリアルキルシリルハロゲン化物との反応は、上記式(5)のポリマー前駆体と有機溶媒とを含む混合物中に上記トリアルキルシリルハロゲン化物を徐々に加えていく方法によって行われる。具体的には、先ず、上記式(5)のポリマー前駆体と上記有機溶媒とを含む混合物を−40〜10℃程度に保持する。次に、この混合物に上記トリアルキルシリルハロゲン化物を加えながら室温まで上昇させて反応させる。反応させる時間は、24〜200時間の範囲で適宜調節が可能である。
【0036】
[燃料電池用電解質膜]
次に、本発明の燃料電池用電解質膜について説明する。本発明の燃料電池用電解質膜は、本発明のホスホン酸ポリマー、或いは本発明のホスホン酸ポリマーを必要に応じて架橋等したものを溶媒中で溶解または膨潤させ、それを基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法により得られる。なお、本発明の燃料電池用電解質膜は、フェノール性水酸基含有化合物、アミン系化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物といった酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0037】
本発明のホスホン酸ポリマーを架橋する場合は、例えば、本発明のホスホン酸ポリマーを、水、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンといった適当な溶媒中に溶解させ、次いでラジカル重合開始剤を添加して約50℃〜220℃で重合させるラジカル重合法を利用できる。ラジカル重合開始剤としては、ポリマー主鎖中の水素を引き抜いてポリマーラジカルを発生可能な過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシドといった有機化酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムといった無機過酸化物が利用できる。これらの過酸化物は単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせてもよい。
【0038】
上記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製などの基体が用いられる。好ましい基体としては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが用いられる。
【0039】
本発明のホスホン酸ポリマーを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、アセトニトリル等の非プロトン系極性溶媒や、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γーブチルラクトン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明のホスホン酸ポリマーを溶解させた溶液中のポリマー濃度は、ポリマーの分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。ポリマー濃度が上記範囲よりも低いと、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい傾向にあり、上記範囲を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
【0041】
また、溶液粘度は、ポリマーの分子量、ポリマー濃度、添加剤の濃度などによっても異なるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。溶液粘度が上記範囲よりも低いと、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがあり、上記範囲を超えると、粘度が高過ぎてフィルム化が困難となることがある。
【0042】
成膜後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の溶媒を水と置換することができ、膜中の残留溶媒量を低減することができる。なお、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。この予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常10〜60℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
【0043】
未乾燥フィルム(予備乾燥後のフィルムも含む。以下同じ。)を水に浸漬する際は、枚葉を水に浸漬するバッチ方式でもよく、基板フィルム(例えば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を、水に浸漬させて巻き取っていく連続方式でもよい。また、バッチ方式の場合は、処理後のフィルム表面に皺が形成されることを抑制するために、未乾燥フィルムを枠に嵌めるなどの方法で、水に浸漬させることが好ましい。
【0044】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減された膜が得られるが、このようにして得られる膜の残存溶媒量は、通常5重量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる膜の残存溶媒量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、例えば、未乾燥フィルム1重量部に対する水の使用量が50重量部以上であり、浸漬する際の水の温度が10〜60℃、浸漬時間が10分〜10時間である。
【0045】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを室温、好ましくは10〜60℃で10〜48時間、好ましくは10〜24時間真空乾燥することにより、燃料電池用電解質膜が得られる。
【実施例1】
【0046】
次に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[合成例1]
【化7】
<カルボン酸体(化合物(A))の合成>
アルゴン雰囲気下、1lの4口フラスコにジイソプロピルアミン、THF(脱水)340mlを仕込み、−70℃まで冷却した。次に、1.67Mn−BuLi/ヘキサン溶液を同温度で滴下し、0℃まで昇温させて10分間撹拌した。次に、−70℃へ再度冷却し、HCF2PO(OEt)2/THF(脱水)160mlを同温度で滴下した。−70℃で30分間撹拌した後、濃硫酸を通して乾燥させたCO2ガスを反応溶液中へ約50分間バブリングしたところ、−20℃まで上昇した。徐々に0℃まで昇温させ、2M硫酸3.2mlを滴下し、15分間撹拌した後、飽和重曹水約120mlを加えてアルカリ性にした。その後、エーテルを加え、撹拌、分液し、得られた水層に1M硫酸を加えて酸性にした後、酢酸エチルで3回抽出、さらに水層にNaClを加えて酢酸エチルで3回抽出した。抽出液を合わせた有機層をMgSO4で脱水、ろ過し、ろ液を減圧濃縮したところ、淡褐色のオイル5.81gを得た(化合物(A))。この1H−NMRチャートを図1に示す。
【0048】
【化8】
<アルコール体(化合物(B))の合成>
アルゴン雰囲気下、500mlのナスフラスコに化合物(A)、THF(脱水)を仕込み、氷水で冷却した。NaBH4を少しずつ添加し、室温まで昇温させて一晩撹拌した。反応液を氷水200mlへ注入し、酢酸エチルで3回抽出した。抽出液を合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、その後、MgSO4で脱水、ろ過し、ろ液を減圧濃縮したところ、淡褐色のオイル3.2gを得た(化合物(B))。この1H−NMRチャートを図2に示す。
【0049】
【化9】
<アクリレート体(化合物(C))の合成>
アルゴン雰囲気下、100mlのナスフラスコに化合物(B)、THF(脱水)、トリエチルアミン1.46mlを仕込み、氷水で冷却した。アクリル酸クロライド0.74mlを滴下し、室温まで昇温させて1時間後、GCで反応チェックを行ったが、化合物(B)が残存していた。そのため再度氷水で冷却し、トリエチルアミン0.73ml及びアクリル酸クロライド0.37mlを滴下し、室温まで昇温させて1時間撹拌した。反応液を水に注入し、酢酸エチルで3回抽出した。抽出液を合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、その後、MgSO4で脱水、ろ過し、ろ液を減圧濃縮したところ、淡褐色のオイル1.3gを得た。得られたオイルをシリカゲルカラム精製し(シリカゲル25g、ヘキサン/酢酸エチル=4/1〜2/1)、アクリレート体520mg(化合物(C))を得た。この1H−NMRチャートを図3に示す。
【0050】
【化10】
<ホスホン酸エステルポリマー(化合物(D))の合成>
凍結アンプル管に化合物(C)、トルエン(脱水)、AIBNを仕込み、液体窒素で溶液を凍結し、アンプル管を真空引きして脱気し、窒素で開放するという凍結脱気作業を3回行った(3方コックで切り替え)。窒素で充填させた状態でバーナーを用いて封管した。その後、62℃のバスで24時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、アンプルを切り、減圧濃縮し、残渣をヘキサンで洗浄し、92mgの粘調なオイル(化合物(D))を得た。この1H−NMRチャートを図4に示す。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)から得られたポリマーの分子量は、Mn:9,826、Mw:21,528であった。なお、これらの値は、Waters社製のRI検出器(2414示差屈折計)に、カラムとしてShodex KD−806Mを2本用い、展開溶媒:0.01MLiBr含有NMP、カラム温度:40℃の条件で測定した際のポリスチレン換算値である。
【0051】
【化11】
<ホスホン酸ポリマー(化合物(E))の合成>
アルゴン雰囲気下、10mlのナスフラスコに化合物(D)、クロロホルム(脱水)を仕込み、氷水で冷却し、TMSBrを滴下し、室温まで昇温させた。室温で3日間反応させ、水1mlを添加し、減圧濃縮して淡黄色の粘調なオイル30mgを得た。この1H−NMRチャートを図5に、31P−NMRチャートを図6に、19F−NMRチャートを図7にそれぞれ示す。
【0052】
[合成例2]
【化12】
<2,4−ビス(ジエチルオキシホスホノイル)アニリン(DPA)(化合物(F))の合成>
撹拌子を入れた200ml二口ナス型フラスコに、2,4−ジブロモアニリン5.0184g(20mmol)、酢酸パラジウム0.4490g、トリフェニルホスフィン1.5737g(6.0mmol)を入れ、窒素置換を行った。続いて、エタノール120mlを入れ、亜リン酸ジエチル12.4ml(96mmol)、ジシクロヘキシルメチルアミン12.7ml(60mmol)を入れ、冷却管を取り付けて、窒素雰囲気下、95℃で48時間撹拌させた。反応終了後、室温にし、溶媒を留去後、残留物を塩化メチレンに溶かし、抽出を行った。2M塩酸水溶液で4回、水1回で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水を行った。その後、溶媒を留去し、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=50:1)により精製を行い、溶媒を留去、減圧乾燥し、オイル状の黄色液体5.0246g(収率68%)を得た(化合物(F))。この1H−NMRチャートを図8に示す。
【0053】
【化13】
<N−[2,4−ビス(ジエトキシホスホノイル)フェニル]アクリルアミド(化合物(G))の合成>
撹拌子を入れた30ml二口ナス型フラスコに、合成した化合物(F)2.9224g(8.0mmol)を入れ、窒素置換を行った。そこに脱水THF8ml(11.1mmol)、脱水ピリジン1.0ml(12.8mmol)を入れ、反応液を0℃に冷却した。0℃にした後、アクリロイルクロリド1.0ml(12.8mmol)を加え、室温で1時間撹拌させた。反応終了後、水を加え、塩化メチレンで抽出を行った。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、水1回で洗浄を行った後、無水硫酸マグネシウムで水を除去し、溶媒を留去後、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製を行い、溶媒を留去、減圧乾燥し、白色の結晶固体1.1195g(収率33%)を得た(化合物(G))この1H−NMRチャートを図9に示す。
【0054】
【化14】
<ポリN−[2,4−ビス(ジエトキシホスホノイル)フェニル]アクリルアミド(化合物(H))の合成>
合成した化合物(G)を1g(0.00238mol)と、アゾイソブチロニトリル0.013g(0.0000785mol)、トルエン9gをアンプル管に加え、液体窒素で固化させた後、アルゴンガスで置換させることにより酸素を十分除去させた。その後、アンプル管を封印して60℃、24時間撹拌した。撹拌後、ヘキサンで再沈殿させて目的とする化合物(H)0.4g(収率40%)を得た(化合物(H))。この1H−NMRチャートを図10に示す。
【0055】
【化15】
<化合物(I)の合成>
合成した化合物(H)0.15gをクロロホルム15mlに溶解させ、そこにt−ブチルジメチルシリルクロリド0.51g(0.0033mol)を50℃滴下して加えた。反応溶液を40℃に加熱し、24時間反応させた後、メタノールに再沈殿させた。メタノールで洗浄後、80℃で減圧乾燥させることで目的とする化合物(I)0.565g(収率97%)を得た(化合物(I))。この1H−NMRチャートを図11に示す。
【0056】
[フィルム試料の作製]
合成例1で得られた化合物(E)、合成例2で得られた化合物(I)のポリマー粉をエタノールで20重量%となるように溶解させ、膜厚が50μmとなるようにPTFE上に塗布した。塗布後、熱風乾燥機で80℃1時間乾燥させ、2種類のフィルムを得た。このうち、化合物(E)から作製したフィルムを実施例1の試料とし、化合物(I)から作製したフィルムを比較例1の試料とした。
【0057】
また、合成例1で得られた化合物(E)0.1285g(0.60mmol)を、5mol%のBPO0.010g(0.030mmol)を溶かしたメタノール溶液に加え、乾燥後の膜厚が150μmとなるように、この混合溶液をPTFEシート上に塗布した。続いて、PTFEシート上の混合溶液を40℃から100℃まで1時間毎に10℃ずつ段階的に上げながら加熱して架橋フィルムを得た。化合物(E)が水溶性を示したのに対し、この架橋フィルムを25℃の水に24時間浸してもフィルムの溶解は見られなかった。この架橋フィルムを実施例2の試料とした。
【0058】
<測定方法及び評価>
(1)EW値の測定
実施例1、比較例1の試料をそれぞれ100℃で24時間減圧乾燥後、アルゴン雰囲気のグローブボックス中に移し30分放置してから重量を測定した。これらをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、0.1mol/lの水酸化テトラメチルアンモニウム溶液で滴定を行った。pH7になった時点を当量点とし、そのとき加えた水酸化テトラメチルアンモニウムの量からEW値を計算した。
EW値[g/mol]=1000×試験用試料の重量[g]/0.1[mol/l]×水酸化ナトリウムの滴定量[ml]
その結果、実施例1の試料は、EW値が215g/molであった。一方、比較例1の試料は、EW値が265g/molであった。
【0059】
(2)80℃雰囲気下でのプロトン伝導率の測定
実施例1、2の試料、比較例1の試料をそれぞれ10mm×30mmの短冊状に切り取り、両端を金属板(5mm×50mm)で挟み込み、テフロン(登録商標)製の測定用プローブで挟持して積層体を作製した。次いで、80℃の雰囲気中にて、白金板間の抵抗をSOLARTRON社製、1260FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。測定に際しては、20%〜90%の範囲で積層体の湿度を変更した。プロトン伝導率は、次式からを求めた。
プロトン伝導率[S/cm]=白金板間隔[cm]/(試料膜幅[cm]×試料膜厚[cm]×抵抗[Ω])
【0060】
求めたプロトン伝導率の結果を図12および図13に示す。図12から分かるように、実施例1の試料は、測定条件の全範囲において、比較例1の試料に比べて高いプロトン伝導率を示した。特に、低湿度条件(〜60%)において、実施例1の試料は、比較例1の試料に比べ高い値を示した。このことから、実施例1の試料は、プロトン伝導率が良好であり、低湿度下でも使用可能であることが分かった。
【0061】
また、図13から分かるように、実施例2の試料は、測定条件の全範囲において、Nafion(登録商標)試料に比べて高いプロトン伝導率を示した。このことから、本発明のホスホン酸ポリマーを架橋したことで、プロトン伝導率が大幅に向上することが分かった。このような結果を示した理由の詳細は不明であるが、ホスホン酸ポリマーが分子内架橋することで部分的な酸密度が向上したものと考えられる。
【0062】
(3)吸水量λの測定
日本ベル(株)製高分子膜水分吸着量試料装置(MSB−AD−FC)を用いて、実施例2の試料の各湿度におけるプロトン伝導率と、吸水量λとを求めた。具体的には、実施例2の試料を80℃の真空条件下で30分放置した後、所定の湿度で2時間保持した後のプロトン伝導率と水分量とを求めた。また、Nafion試料についても実施例2の試料と同様の測定条件で、プロトン伝導率と水分量とを求めた。求めた水分量は、試料中に含まれる酸基(ホスホン酸またはスルホン酸)1つあたりに換算して吸水量λ(個)とした。図14に、吸水量λとプロトン伝導率との関係を示す。図14から分かるように、実施例2の試料は、吸水量λが低い領域において、Nafion試料よりも高いプロトン伝導率を示した。このことから、実施例2の試料は、水による膨潤を抑えつつ、Nafion試料よりも良好なプロトン伝導率を示すことが分かった。
【0063】
(4)酸化安定性の評価
3cm×3cmに切り出した実施例2の試料片を、25℃のフェントン試験溶液(20ppmのFeSO4を含む3%H2O2水溶液)に24時間浸漬した。浸漬終了後、試料片をピンセットで取り出し、サンプル袋に入れ、50℃で24時間かけて真空乾燥を行った。真空乾燥後、試料片の重量を測定した。また、比較用として、Y. Yin et al., Polymer 44 (2003), 4509-4518に示されたスルホン酸ポリイミド(化合物(J))についても実施例2の試料と同様の測定条件で、試料片の重量を測定した。
【0064】
【化16】
【0065】
フェントン試験の結果を下表1に示す。なお、下表1中の重量保持率は、フェントン試験前後の試料片の重量比率であり、その値が高いほどラジカル耐性が高いことを示す。下表1から分かるように、実施例2の試料は、上記特性に加えて、ラジカル耐性をも備えることが示された。
【0066】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするホスホン酸ポリマー。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のホスホン酸ポリマーを含むことを特徴とする燃料電池用電解質膜。
【請求項3】
請求項1に記載のホスホン酸ポリマーの架橋体を含むことを特徴とする燃料電池用電解質膜。
【請求項4】
下記式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物と還元剤とを反応させて、下記式(3)で表されるヒドロキシメチル基含有化合物を得る工程と、
前記ヒドロキシメチル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物とを反応させて、下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸系化合物を得る工程と、
前記(メタ)アクリル酸系化合物を付加重合して、下記式(5)で表される繰り返し単位を含むポリマー前駆体を得る工程と、
前記ポリマー前駆体のエステル部位を加水分解する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のホスホン酸ポリマーの製造方法。
【化2】
(式(2)〜(5)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするホスホン酸ポリマー。
【化1】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のホスホン酸ポリマーを含むことを特徴とする燃料電池用電解質膜。
【請求項3】
請求項1に記載のホスホン酸ポリマーの架橋体を含むことを特徴とする燃料電池用電解質膜。
【請求項4】
下記式(2)で表されるカルボキシル基含有化合物と還元剤とを反応させて、下記式(3)で表されるヒドロキシメチル基含有化合物を得る工程と、
前記ヒドロキシメチル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸ハライド化合物または無水(メタ)アクリル酸ハライド化合物とを反応させて、下記式(4)で表される(メタ)アクリル酸系化合物を得る工程と、
前記(メタ)アクリル酸系化合物を付加重合して、下記式(5)で表される繰り返し単位を含むポリマー前駆体を得る工程と、
前記ポリマー前駆体のエステル部位を加水分解する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のホスホン酸ポリマーの製造方法。
【化2】
(式(2)〜(5)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−107185(P2012−107185A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86253(P2011−86253)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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