説明

ホットプレス成型方法、成型品および自動車用部品

【課題】ホットプレス成型に起因するめっき層の寄りを十分に防止することができ、しかも、ホットプレス成型を効率よく行うことができ、優れた生産性が得られるホットプレス成型方法を提供する。
【解決手段】3〜15質量%のSiを含み、残部がAlと不可避的不純物とからなるめっき層が表面に形成されためっき鋼板をホットプレス成型するためのホットプレス成型方法であって、通電加熱方式または誘導加熱方式により、前記めっき鋼板に下記式(1)(ただし、式(1)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)を満たす電流密度で電流を印加して前記めっき鋼板をオーステナイト領域以上の温度まで加熱し、プレス加工成形することを特徴とするホットプレス成型方法。I≦(23−t)/0.0718 ・・・ (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットプレス成型方法、成型品および自動車用部品に関するものであり、特に、自動車用部品を形成する方法として好適に用いられるホットプレス成型方法と、そのホットプレス成型方法により製造された成型品および自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃料の消費を抑制するために、車体の軽量化が強く求められている。自動車の車体を軽量化する方法として、自動車用部品などに用いられる材料の機械強度を向上させる方法がある。しかし、自動車用部品に用いられる材料は、強度を高めると加工性や成形性が低下する傾向がある。
この問題を解決する方法の一つとして、鋼板を800℃以上の高温に加熱した状態でプレス成型するホットプレス成型法がある。ホットプレス成型法に用いられる鋼板としては、Al系の金属からなるめっき層の形成された熱成形用鋼板が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱成形用鋼板では、目的とする強度は得られるものの、ホットプレス成型を行うための昇温中にめっき層が溶融し、めっき層が片寄って寄りが生じる場合があった。めっき層の寄りが生じると、成形品の外観を損ねるという問題や、成形品のめっき層の厚みが局所的に薄くなり耐食性が低下するという問題が生じる。
【0004】
この問題を解決するために、めっきした鋼板を、該めっきに使用した金属の融点以上に加熱して成形加工する加熱成形用鋼板の加熱方法において、成型加工の前に金属の融点より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域で、前記めっきした鋼板を5秒以上予備加熱する加熱成形用鋼板の加熱方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−38640号公報
【特許文献2】特開2003−27203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、めっきに使用した金属の融点より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域で、めっきした鋼板を5秒以上予備加熱しなければならないため、ホットプレス成型時の加熱時間が長くなり、ホットプレス成型における生産性が不十分であった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ホットプレス成型に起因するめっき層の寄りを十分に防止することができ、しかも、ホットプレス成型を効率よく行うことができ、優れた生産性が得られるホットプレス成型方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明のホットプレス成型方法によって製造された、めっき層の厚みが均一で、外観および耐食性に優れた成型品および自動車用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決し、生産性を向上させるために、ホットプレス成型されるめっき鋼板を、通電加熱方式または誘導加熱方式により高速加熱する技術に着目し、以下に示すように、鋭意研究を重ねた。すなわち、通電加熱方式または誘導加熱方式を用いてめっき鋼板を加熱する場合、めっき鋼板の加熱速度を速くするために、めっき鋼板に直接大電流を印加する必要がある。しかしながら、めっき鋼板に直接大電流を印加すると、めっき層が溶融されてなる溶融めっき金属に対して、電流によって生じる磁場と電流とによるフレミング左手の法則に従う引力が強く働く。この引力によって溶融めっき金属が移動(ピンチ効果)して、めっき層の厚みにバラツキが生じ、この状態で溶融めっき金属が凝固することによって、めっき層の寄りが生じるという問題があった。このようなめっき層の寄りによって、めっき層に0.02mmを超える高さの凸部が生じると、自動車用部品として使用する場合に支障を来たす恐れがある。
【0008】
そこで、本発明者らは、めっき層が溶融されてなる溶融めっき金属に対して働く、上記のフレミング左手の法則に従う引力の大きさと、Alを含むめっき層の厚みと、ホットプレス成型される際に通電加熱方式または誘導加熱方式によりめっき鋼板に印加する電流密度との関係に着目して鋭意研究を重ねた。
その結果、めっき層の厚み寸法が大きい場合には、めっき鋼板に印加された電流のうち、めっき層内を流れる電流の量が多くなるので、電流密度を小さくして電流によって生じる磁場を小さくし、上記のフレミング左手の法則に従う引力が大きくならないようにすればよいことを見出した。反対に、めっき層の厚み寸法が小さい場合には、めっき鋼板に印加された電流のうち、めっき層内を流れる電流の量が少なくなるので、電流によって生じる磁場が小さくなり、電流密度を大きくしても、上記のフレミング左手の法則に従う引力が大きくなりにくいことを見出した。すなわち、めっき層の厚み寸法を十分に小さくした場合には、生産性を向上させるために電流密度を大きくして高速加熱を行っても、めっき層の寄りを十分に防止できることを見出した。
このように本発明者らは、めっき層の厚み寸法と上記の電流密度とを制御して、上記のフレミング左手の法則に従う引力を小さくすることができることを見出し、本発明のホットプレス成型方法、成型品および自動車用部品を想到した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1) 3〜15質量%のSiを含み、残部がAlと不可避的不純物とからなるめっき層が表面に形成されためっき鋼板をホットプレス成型するためのホットプレス成型方法であって、通電加熱方式または誘導加熱方式により、前記めっき鋼板に下記式(1)(ただし、式(1)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)を満たす電流密度で電流を印加して、前記めっき鋼板をオーステナイト領域以上の温度まで加熱し、プレス加工成形することを特徴とするホットプレス成型方法。
I≦(23−t)/0.0718 ・・・ (1)
(2) 前記めっき層の厚みが、22μm以下であることを特徴とする(1)に記載のホットプレス成型方法。
【0010】
(3) (1)または(2)記載のホットプレス成型方法により製造されたことを特徴とする成型品。
(4) (1)または(2)記載のホットプレス成型方法により製造されたことを特徴とする自動車用部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明のホットプレス成型方法によれば、通電加熱方式または誘導加熱方式により、めっき鋼板に上記式(1)を満たす電流密度で電流を印加して前記めっき鋼板をオーステナイト領域以上の温度まで加熱し、プレス加工成形するので、ホットプレス成型する際にめっき鋼板に印加される電流密度が、めっき層の厚み寸法に応じて、めっき層の寄りを十分に防止できる範囲内とされる。
【0012】
したがって、本発明のホットプレス成型方法において、例えば、めっき層の厚み寸法を十分に小さくした場合には、生産性を向上させるために電流密度を大きくして高速加熱を行っても、めっき層が溶融されてなる溶融めっき金属に対して働く上記のフレミング左手の法則に従う引力が大きくなりにくく、めっき層の寄りを十分に防止できる。
【0013】
このように、本発明のホットプレス成型方法においては、めっき層の厚み寸法を十分に小さくした場合には、電流密度を大きくして高速加熱を行うことができ、例えば、めっきに使用した金属の融点より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域で、前記めっきした鋼板を5秒以上加熱する従来の場合と比較して、ホットプレス成型する前の昇温時間を短時間とすることができ、ホットプレス成型を効率よく行うことができ、優れた生産性が得られる。
【0014】
また、本発明のホットプレス成型方法において、めっき層の厚み寸法を十分に小さくした場合には、ホットプレス成型を行うための昇温中に、めっき鋼板の鋼板成分がAlを含むめっき層の表面に速やかに拡散するので、めっき層の構成成分と鋼板成分とが速やかに合金化されて、めっき層の寄りを抑制する高融点合金が生成される。このため、本発明のホットプレス成型方法によれば、電流密度を大きくして高速加熱を行った場合におけるめっき層の寄りが、効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本実施形態のホットプレス成型方法は、表面にAlを含むめっき層の形成されためっき鋼板をホットプレス成型するためのホットプレス成型方法である。本実施形態においては、ホットプレス成型方法により製造された成型品の一例として、自動車用部品を製造する場合を例に挙げて説明する。
ホットプレス成型される鋼板の表面に、Alを含むめっき層を形成するには、例えば、所定のめっき浴に鋼板を浸漬する方法などを用いることができる。
【0016】
本実施形態において用いられる鋼板としては、例えば、質量%で、0.15%<C<0.5%、0.1%<Si<0.5%、0.5%<Mn<3%、P<0.1%、S<0.05%、Al<0.1%、N<0.02%、Ti<0.2%、0.0005%<B<0.08%、0.01%<Cr<1%の成分を有し、残部がFeと不可避的不純物で構成されている厚み1〜2mm程度のものなどが挙げられる。
【0017】
ここで形成されるめっき層は、耐熱性および耐酸化性に優れたAlを含む金属からなるものであり、3〜15質量%のSiを含み、残部がAlと不可避的不純物とからなるものである。
【0018】
本実施形態においては、Alを含むめっき層を形成する工程において、前記めっき層の厚み寸法が、2μm〜22μmの範囲であることが好ましく、5μm〜20μmの範囲であることがより好ましい。
めっき層の厚み寸法が2μm未満であると、鋼板の表面にめっき層を形成することによる効果が十分に得られず、ホットプレス成型する工程において鋼板の表面に酸化物が発生してしまう恐れや、ホットプレス成型後に得られた自動車用部品の耐久性が不十分となる恐れがある。
【0019】
また、めっき層の厚み寸法が22μmを超えると、ホットプレス成型される際にめっき鋼板に印加される電流密度を小さくしても、通電加熱方式または誘導加熱方式によりめっき鋼板を加熱してホットプレス成型する工程において、めっき層内を流れる電流の量が多くなり、上記のフレミング左手の法則に従う引力が大きくなり、めっき層が溶融されてなる溶融めっき金属が移動してめっき層の寄りが生じる場合がある。また、めっき層の厚み寸法が22μmを超えると、めっき層の寄りを防止するために、ホットプレス成型される際にめっき鋼板に印加される電流密度を十分に小さくしなければならなくなり、ホットプレス成型する工程における加熱時間が長くなり、ホットプレス成型を効率よく行うことができない場合がある。
【0020】
次に、このようにして得られためっき鋼板を、通電加熱方式または誘導加熱方式により加熱してホットプレス成型することにより、自動車用部品を製造する。
本実施形態においては、通電加熱方式または誘導加熱方式により、めっき鋼板に下記式(1)(ただし、式(1)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)を満たす電流密度で電流を印加してめっき鋼板を加熱し、所定の圧力でプレス加工成形する。
I≦(23−t)/0.0718 ・・・ (1)
なお、誘導加熱方式を用いてめっき鋼板を加熱する場合、めっき鋼板の表と裏とでは逆方向に電流が流れるため、めっき鋼板の断面に大きな電流密度分布が生じる。本発明において、誘導加熱方式を用いた場合の上記式(1)中における電流密度Iとは、加熱されるめっき鋼板の全断面の平均電流密度を意味する。
【0021】
本実施形態のホットプレス成型において、めっき鋼板は、オーステナイト領域以上の温度まで加熱される。具体的には、めっき鋼板を加熱する温度は、例えば800℃〜1000℃程度とされる。
また、ホットプレス成型を行うための昇温中における昇温速度は、電流密度によって決定され、5℃/s〜400℃/sの範囲とすることが好ましく、10℃/s〜100℃/sの範囲とすることがより好ましい。
【0022】
本実施形態のホットプレス成型方法によれば、通電加熱方式または誘導加熱方式により、めっき鋼板に上記式(1)を満たす電流密度で電流を印加して前記めっき鋼板をオーステナイト領域以上の温度まで加熱し、プレス加工成形するので、ホットプレス成型する際にめっき鋼板に印加される電流密度が、めっき層の厚み寸法に応じて、めっき層の寄りを十分に防止できる範囲内とされ、めっき層の寄りを十分に防止できる。
さらに、本実施形態のホットプレス成型方法において、例えば、めっき層の厚み寸法を十分に小さくした場合には、生産性を向上させるために電流密度を大きくして高速加熱を行っても、めっき層の寄りを十分に防止できる。よって、ホットプレス成型する前の昇温時間を短時間とすることができ、ホットプレス成型する工程における加熱時間を短時間とすることができ、優れた生産性が得られる。
【0023】
なお、本発明は、めっき層が3〜15質量%のSiを含み、残部がAlと不可避的不純物とからなるものである場合に、めっき層の寄りを防止できる発明であるが、めっき層がSi含有量3〜15質量%以外のAlや、ZnやMgなどとAlとの合金、ZnやSnなどAl以外の金属を主成分とする合金からなるものである場合にも、ピンチ効果によるめっき層の寄りが生じる。めっき層が上記の材料で形成されている場合においても、めっき層が3〜15質量%のSiを含み、残部がAlと不可避的不純物とからなるものである場合と同様に、めっき層の厚み寸法に応じて、めっき層の寄りが生じない電流密度が存在する。ただし、本発明とめっき層の材料が異なるので、めっき層を形成している金属の融点、表面張力、粘度、めっき層を形成している金属の鋼板に対する拡散速度などによって、寄りの生じないめっき層の厚みと電流密度との関係が異なるのは当然である。
【0024】
また、本実施形態の自動車用部品は、本実施形態のホットプレス成型方法により製造されたものであり、ホットプレス成型に起因するめっき層の寄りが抑制され、めっき層の厚みが均一なものとなるので、外観および耐食性に優れたものとなる。
【実施例】
【0025】
(実験例1〜実験例13)
質量%で、C:0.22%、Si:0.20%、Mn:1.20%、P:0.015%、S:0.003%、Al:0.03%、N:0.004%、Ti:0.02%、B:0.0025%、Cr:0.22%の成分を含み、残部がFeと不可避的不純物で構成されている表1に示す板厚1.0〜1.4mm、板幅80mmまたは150mm、板長さ280mmまたは400mmの実験例1〜実験例13の鋼板を用意した。そして、実験例1〜実験例13の鋼板を所定のめっき浴に浸漬して、表面にSiを10質量%含むAlからなるめっき層を形成し、実験例1〜実験例13のめっき鋼板を得た。表1に、実験例1〜実験例13のめっき鋼板のめっき付着量およびめっき層の厚みを示す。
【0026】
【表1】

【0027】
次に、表1に示す電流密度で実験例1〜実験例13のめっき鋼板に直接電流を印加し、通電加熱方式により表1に示す昇温速度で950℃に加熱して、所定の圧力でプレス加工成形加工し、実験例1〜実験例13の成型品を得た。
このようにして得られた実験例1〜実験例13の成型品について、めっき層の寄りの有無を調べた。なお、めっき層の寄りは、寄りによって生じた凸部の高さが0.02mm以下である場合を「寄りなし」とし、0.02mmを超える場合を「寄りあり」とした。その結果を表1に示す。
【0028】
また、実験例1〜実験例13の成型品について、ホットプレス成型した際にめっき鋼板に印加した電流密度が、下記式(1)(ただし、式(1)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)を満たしていた否かを算出した。その結果を表1に示す。
I≦(23−t)/0.0718 ・・・ (1)
【0029】
また、実験例1〜実験例13において、ホットプレス成型される際にめっき鋼板に印加された電流密度と、めっき層の厚み寸法との関係を、図1に示した。なお、図1に記載されている直線は、下記式(2)(ただし、式(2)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)で示される直線である。また、図1において、下記式(2)で示される直線以下の範囲に示された○で示す実験例の点は「寄りなし」であり、本発明の実施例である。また、下記式(2)で示される直線を超える範囲に示された×で示す実験例の点は「寄りあり」であり、本発明の比較例である。
I=(23−t)/0.0718 ・・・ (2)
【0030】
表1および図1に示されるように、ホットプレス成型した際にめっき鋼板に印加した電流密度が、上記式(1)を満たしていた実験例1、3、5、6、9〜11(図1において上記式(2)で示される直線以下の範囲の実験例)では、めっき層の寄りがなかった。これに対し、電流密度が、上記式(1)を満たしていない実験例2、4、7、8、12、13(図1において上記式(2)で示される直線を超える実験例)では、めっき層の寄りが生じた。
以上のことから、めっき層の寄りを防止し、生産性を向上させるためには、電流密度が上記式(1)を満たすことが必要であると考えられる。
【0031】
次に、本発明のホットプレス成型方法を用いた実施例の成型品と、めっきに使用した金属の融点より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域で、めっきした鋼板を5秒以上加熱した比較例の成型品とを、以下に示すように製造した。
【0032】
(実施例)
実験例1と同様の鋼板を9枚用意し、所定のめっき浴に浸漬して、それぞれの表面に8μm〜24μmの範囲で2μmずつ厚みを異ならせたSiを10質量%含むAlからなるめっき層を形成し、9枚のめっき鋼板を得た。その後、このようにして得られた9枚のめっき鋼板に対し、下記式(2)(ただし、式(2)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)を満たす電流密度で直接電流を印加して、通電加熱方式により950℃に加熱して、所定の圧力でホットプレス成型し、成型品とした。
I=(23−t)/0.0718 ・・・ (2)
【0033】
(比較例)
実施例と同様の9枚のめっき鋼板を用意し、通電加熱方式により、めっきに使用した金属(Siを10質量%含むAl)の融点(600℃)より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域で、めっき層の厚みをμmで示したときの数値を秒で示してなる時間分加熱し、実施例と同様の圧力でホットプレス成型し、成型品とした。
【0034】
実施例および比較例において得られた成型品について、めっき層の寄りの有無を調べた。その結果、いずれの成型品においても、寄りによって生じた高さ0.02mmを超える凸部は見られなかった。
また、実施例において得られた成型品それぞれについて、めっき鋼板に印加した電流密度を用いて、ホットプレス成型を行う温度になるまで(300℃〜900℃になるまで)の昇温時間(加熱時間)を算出し、めっき層の厚みとの関係を調べた。その結果を図2に示す。
また、図2に、比較例におけるめっきに使用した金属の融点より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域での加熱時間とめっき層の厚みとの関係を示した。
【0035】
図2は、実施例および比較例において、昇温時間(加熱時間)と、めっき層の厚みとの関係を示したグラフである。
図2に示すように、本発明のホットプレス成型方法を用いた実施例では、めっきに使用した金属の融点より200℃低い所定温度から金属の融点直下までの温度領域で、めっきした鋼板を5秒以上加熱した比較例と比較して、めっき層の厚み寸法が22μm以下である場合における昇温時間が非常に短く、生産性に優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実験例1〜実験例13について、ホットプレス成型される際にめっき鋼板に印加された電流密度と、めっき層の厚み寸法との関係示したグラフである。
【図2】図2は、実施例および比較例において、昇温時間(加熱時間)と、めっき層の厚みとの関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜15質量%のSiを含み、残部がAlと不可避的不純物とからなるめっき層が表面に形成されためっき鋼板をホットプレス成型するためのホットプレス成型方法であって、
通電加熱方式または誘導加熱方式により、前記めっき鋼板に下記式(1)(ただし、式(1)中におけるtはめっき層の厚み寸法(μm)を示し、Iは電流密度(A/mm)を示す。)を満たす電流密度で電流を印加して、前記めっき鋼板をオーステナイト領域以上の温度まで加熱し、プレス加工成形することを特徴とするホットプレス成型方法。
I≦(23−t)/0.0718 ・・・ (1)
【請求項2】
前記めっき層の厚みが、22μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のホットプレス成型方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のホットプレス成型方法により製造されたことを特徴とする成型品。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のホットプレス成型方法により製造されたことを特徴とする自動車用部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70800(P2010−70800A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239062(P2008−239062)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】