説明

ホットプレス

【課題】高精度かつ精密な加熱加圧製品を生産することが可能なホットプレスを提供する。
【解決手段】圧力容器12が上半体12Uと下半体12Lと中間環状封止体17とクラッチリング14とを有し、上半体12Uと下半体12Lと中間環状封止体17とが封止係合する。熱板20が上熱板20Uと下熱板20Lとから成る。被加工ワーク50が上熱板の中央部分21Uと下熱板の中央部分21Lとの間に配置され、圧力を減少する装置及び圧力を増大する装置が上熱板及び下熱板へ起動媒体を作用することによりワーク50を圧力容器12内において加熱加圧加工するホットプレスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、種々の性質を有する複数の平板材料を積層した部材即ちワークを加熱加圧加工するためのホットプレスに関し、特に、本発明のホットプレスは、必要に応じて減圧雰囲気下での加熱加圧接合が可能なホットプレスであって、圧力容器内においてこれらの作業を行うことが出来る装置に関する。本発明のホットプレスは、圧力容器内において所望の加熱加圧作業を実行するが出来るため、当該作業中、ワークを極めて高い圧力下で加工することが出来る。このため、本発明は、例えば、プリント基板や太陽電池基板の製造作業、液晶ガラス基板の接合作業、更には建築部材の接合作業等、接合面に気泡などの封入を全く発生することなく、かつ非常に高い圧力等によってこれまでにない緊密な接合を達成することが出来る新規なホットプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで種々のホットプレスが発表されている。例えば、特開平5−305624号は、装置外殻からの放熱により熱効率が低下することを防止するため、プレス機構を収容する内側容器3と、この内側容器を収容するための外側容器5と、を設け、シャッタ45及び真空シャッタ83を閉じれば、両容器が互いに独立の気密容器となり、シャッタ45を開くと連通されるようにし、真空シャッタ83を閉じ、シャッタ45を開き、排気手段93にて両容器を真空引きし、その後、熱板27、29、33にて被加工材を加熱、軟化させ、併せてシャッタ45を閉じ、こうして内側容器3と外側容器5との間に真空領域を形成したまま、被加工材をホットプレスするのである。この装置では、内側容器3と外側容器5との間に形成される真空領域が内側容器3から外側容器5への熱伝導を防止するので、外側容器5は昇温しない。かかる構成により、装置からの放熱を防止可能なホットプレスを開示している。
また、特開平8−192300号は、仕上り時の板厚精度が均一な高品質の基板を形成するホットプレスを提供するため、周囲を上下方向に伸縮可能なベロー35で構成し、基板素子51との接触面は柔軟なテフロン(登録商標)ゴムシート36で構成した圧力容器28を熱板9に設け、上熱板9bに設けた圧力容器28bと下熱板9aに設けた圧力容器28aにより、基板素材51を加圧する際に、圧力容器28内の複数に別れた部屋内の熱媒体の圧力を変えることで局所加圧ができ、この結果、基板素材51に特性の異なる種類の接着剤が分布していても、2種の最適接着面圧で基板を形成できるので、仕上り板厚が均一で高品質の基板を生産できるホットプレスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−305624
【特許文献2】特開平8−192300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら公知の装置では、ワークを加熱加圧する際に、ワークの下側にあってワークを保持している熱板をワークと共に上側にある熱板に対して油圧シリンダーまたは空圧シリンダーによって上方移動し、これにより上側及び下側の熱板間でワークを挟圧することによってワークへ加熱加圧作業を施している。このため、加圧作業に用いられる加圧力が限定されていた。そのため、ワーク表面を平滑かつ微細な仕上り状態に加工することが出来ないというような課題があった。更に、作業中の雰囲気が多少の高圧雰囲気又は減圧雰囲気を伴うことが可能であるが、その雰囲気の範囲が極めて限定的であった。このため、気泡その他の異物が基板やモジュール内に残存するという課題もあった。その上、これまでのホットプレス装置ではプレス時にワークを支持する支持台が安定しておらず、このため、ワークの周辺部に反りが発生するという課題もあった。そのため、公知のホットプレスでは、高精度かつ精密な加熱加圧製品を生産することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして、本件出願人は、当該出願人がこれまで長年使用している圧力容器(例えば、最近の出願例を挙げれば、「高圧アニール水蒸気処理装置」(特願2007−306762)において使用する圧力容器22)の内部において上記加熱加圧作業を実行することにより、反りなどの問題を発生しない高精度な製品加工が可能であろうとの知見を得た。そこで、出願人は、当該圧力容器内部においてホットプレス作業を行うための種々の可能性を研究しかつ検討した。その結果、出願人は、上記課題を解決するため、圧力容器12と、該圧力容器12内部に配置されている熱板20と、圧力容器12へ連結されており圧力容器内の圧力を増大する装置(60または64)と、圧力容器12へ連結されており圧力容器内の圧力を減少する装置(54、65または68)と、を有しているホットプレスを完成した。ここで、圧力容器12は、上半体12Uと、下半体12Lと、上半体12Uと下半体12Lとの間に封止可能に配置されている中間環状封止体17と、上半体12Uと中間環状封止体17と下半体12Lとを開放自在に封止結合するクラッチリング14と、を有し、上半体12Uと下半体12Lと中間環状封止体17とが互いに封止係合している。また、熱板20は、上半体12Uの内壁面を上下移動する上熱板20Uであって、内部に加熱手段23Uを有している中央部分21Uと、該中央部分の周辺から上方へ伸びている周辺部分22Uと、該周辺部分22Uと圧力容器12とを封止係合する封止手段24Uと、を有している上熱板20Uと;下半体12Lの内壁面を上下移動する下熱板20Lであって、内部に加熱手段23Lを有している中央部分21Lと、該中央部分の周辺から下方へ伸びている周辺部分22Lと、該周辺部分22Lと圧力容器12とを封止係合する封止手段24Lと、を有している下熱板20Lと;から成る。また、被加工ワーク50は、上熱板の中央部分21Uと、下熱板の中央部分21Lと、の間に配置され、圧力を減少する装置及び圧力を増大する装置が上熱板及び下熱板へ起動媒体を作用することにより、当該ワーク50を圧力容器12内において加熱加圧加工することを特徴とするホットプレスである。
【発明の効果】
【0006】
本発明において使用する圧力容器での作業においては単位面積当たりの圧力を40kgとするようなことは極めて通常的なことであり、このため本発明において、例えば50cm平方の基板に対して液体または気体等の起動媒体を単位面積当たり40kg程度の圧力を付与すると、当該50cm平方の基板に対して100トンもの大きな力が付加されることになるので、これまで出来なかったような非常に高度な平滑度を持つ製品の加工が可能となる。これは、本発明においては、加熱加圧作業を密閉状態の圧力容器内部において実行することが出来るためである。また、本件発明においては、ワークを減圧雰囲気において所望の加熱加圧作業を行なうことが出来るので、極めて精巧なかつ異物が存在しない基板形成が可能である。その上、本発明ではワークをその上面及び下面から挟持する熱板が同一の熱板全面にわたり均一な圧力をもって加熱加圧作業を行なうことが出来るので、ワークに反りがほとんど発生しないホットプレス加工が可能となる。また本件装置は、構造が非常に容易かつ単純なので、安価にかつ安全に操業することが出来る。更に、本件装置は、液晶用ガラス基板やシリコンウエーハ等の高精密加工、プリント基板や太陽電池積層材の高精密加工、または建築材料の高精密加工等々に非常に便利にかつ品質の均質化が図れる作業に極めて有用に使用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例を示す全体概略図である。
【図2】図1に示す上熱板と下熱板との関係を示している部分概略図。
【図3】上熱板及び下熱板をプレス板で補強した実施例を示す部分概略図。
【図4】上熱板及び下熱板とプレス板とを弾性体で連結した実施例を示す部分概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明のホットプレス10の概略図である。このホットプレス10は、それぞれおわん型を有しており、開口部を下向きに配置した上半体12U及び開口部を上向きに配置した下半体12Lより構成されている圧力容器12と、圧力容器12の中間部にあって上半体12Uの下向き開口部と下半体12Lの上向き開口部とを引き離し自在に密封保持するクラッチリング14と、上半体12Uの開口部と下半体12Lの開口部との間に配置されている中間環状封止体であって上半体へ取付けてあるセクショナルリング16及び下半体へ取付けてあるスペーサ18から成る中間環状封止体17と、圧力容器12の内壁面に沿って該内壁面に対して封止状態にて上下移動する熱板であって上半体12Uの内壁面を上下移動する上熱板20U及び下半体12Lの内壁面を上下移動する下熱板20Lから成る熱板20と、圧力容器12を支持している架台28と、図示していないが上半体12Uを上方へ持ち上げるためのそれ自体公知の上半体持ち上げ手段と、より構成されている。
圧力容器12は、前述の様に、おわん型の略同一の形状を有して対置している上半体12Uと下半体12Lとを有している。より詳細には、これらの半体12U、12Lはそれぞれ上下方向に略垂直に伸びる垂直壁面30U、30Lと、垂直壁面の一端部を閉じるように形成されているドーム形状を有している底部分31U、31Lと、垂直壁面の他端部の開放された開口部から半径方向外方へ向かって所定の厚みを有して形成されているフランジ部32U、32Lとを有している。更に、垂直壁面30U、30Lの内面にはそれぞれ半径方向内方へ向かって僅かに突き出している隆起部33U、33Lが形成されている。これらの隆起部33U、33Lは壁面30U、30Lの内面全周にわたって連続して設けてもよいし、間欠状態に設けてもよい。また、隆起部33U、33Lの位置は、図示するように、隆起部33Uと開口フランジ部32Uとの間の距離が、隆起部33Lと開口フランジ部32Lとの間の距離よりも幾分大きくなっている。上熱板20Uが下熱板20Lよりも、中間環状封止体17若しくは圧力容器12の中間部に画定される中間分割面(図示なし)から遠い位置まで移動出来るようにすることによって、圧力容器へのワーク50の出し入れ作業を容易に行なうためである。また、フランジ部32Uは全周にわたって略同一の厚みを有しているが、フランジ部32Lにはその下方部分全周に亘って縮径部が形成されかつそこから下方に伸びて壁面30Lに連結されている段部34が形成されている。この段部34には架台28が係合し、これによりホットプレス10が安全に保持されている。なお、上半体12U及び下半体12Lは例えばステンレス又は鋼板材料により形成されることが出来る。
圧力容器12の内径は、限定的ではないが、例えば1000mmまたはそれ以上とすることが出来、更に、その高さは例えば1200mm又はそれ以上とすることも出来る。
クラッチリング14は、上半体12Uのフランジ部32U及び下半体12Lのフランジ部32Lに設けた歯又は爪(図示なし)に螺合する爪又は歯(図示なし)を有し、フランジ部の外周側縁に沿ってフランジ部を包囲し、図示の位置から当該クラッチリングを圧力容器12の周りに回転することにより、中間環状封止体17を中間に保持した状態で上半体12Uと下半体12Lとを封止状態に締結したり、開放したりすることが出来る。なお、このクラッチリング14は、出願人の製品において以前から広く使用され、また特願2007−306762号等においても使用されているもので、既に公知であるので、詳述はしない。なお、このクラッチリング14は例えばステンレス又は鉄鋼材料により形成されることが出来る。
上述したように、上半体12Uのフランジ部32U及び下半体12Lのフランジ部32Lの間には、セクショナルリング16及びスペーサ18より成る中間環状封止体17が設けてある。セクショナルリング16は、上半体12Uのフランジ部32Uに対して、好ましくは数箇所にて、ねじその他の公知の固着手段38によって固着されている。更にセクショナルリング16とフランジ部32Uの間にはOリング等の封止手段40が配置され、両者が互いに気密、液密状態に保持されている。セクショナルリング16は、概ね平坦な環状形態を有しており、このセクショナルリング16の内径部分は、上半体12Uの垂直壁面30Uの内方へ多少突き出す程度の寸法を有している。なお、セクショナルリング16は例えばステンレス材料により形成されることが出来る。
スペーサ18は下半体12Lのフランジ部32Lに対して、好ましくは数箇所にて、ねじその他の公知の固着手段42によって固着されている。更にスペーサ18とフランジ部32Lの間にはOリング等の封止手段44が配置され、両者が互いに気密、液密状態に保持されている。スペーサ18は、概ね平坦な環状形態を有しており、このスペーサ18の内径部分は、上記セクショナルリング16と同様に、下半体12Lの垂直壁面30Lの内方へ突き出す程度の寸法を有している。この、スペーサ18は例えばステンレス材料により形成されることが出来る。
更にスペーサ18とセクショナルリング16との間にもOリング等の封止手段46が配置され、両者が互いに気密、液密状態に保持されている。この結果、クラッチリング14を締付け位置へ駆動すると、圧力容器12は完全に機密状態に保持され得るのである。スペーサ18は、通常、セクショナルリング16よりも厚みが幾分厚く構成されており、スペーサ18は、後述するワーク50の厚みに応じて、適宜、最適な厚みを有するスペーサ18と交換することが可能である。また共に環状形態を有しているスペーサ18とセクショナルリング16は、それらの外径寸法及び内径寸法がほぼ同一の寸法を有しており、外径部側面が共にクラッチリング14に接する程の寸法を有しており、内径部分は前述のように共に上半体12Uおよび下半体12Lの内方へほぼ同一距離だけ突き出る程度の寸法を有している。なお、図示の例では、スペーサ18とセクショナルリング16とを別部材として示しているが、必要なら、両者を最初から一体物にて構成することもできる。その場合には、当然、封止手段46は不要となる。また、固着手段38、42の何れか一方も不要となる。しかしながら、一般的なこれまでの作業においては、スペーサ18とセクショナルリング16との間に形成される高さがワーク50を圧力容器12内へ出し入れする際の作業レベルとして使用されることが多い。そのような場合には、図示の例のように、スペーサ18とセクショナルリング16との間が離隔可能な構成とすることが好ましい。
圧力容器12の内部へ配置されている円盤形状を有する熱板20を構成している上熱板20Uと下熱板20Lは、それぞれ上半体12Uの壁面30U及び下半体12Lの壁面30Lの内側面に沿って互いに上下方向に移動可能に配置されている。上熱板20Uは中央部分21Uが凹み、周辺部分22Uが立ち上がっており、断面が概ねU字形状を有している。平坦な形状を有している中央部分21Uの内部には加熱手段23Uが収容されている。この加熱手段としては、容器12の外部にある図示していない電源に接続されている電気的なヒーター手段が広く使用されるが、これ以外に必要に応じて液体、気体その他の公知の加熱手段が使用可能である。上方へ伸びている周辺部分22Uの外周面にはOリング等の封止手段24Uが配置されている。この封止手段24Uにより上熱板20Uと上半体12Uとにより画定される空間Aは封止状態に保持されている。図示の例では封止手段24Uが2連に設けてあり、上熱板20Uと上半体12Uとの封止状態をより完全に行っているが、この2連に設けることは必須事項ではなく、1個でもよいことは当業者に明らかである。立ち上がっている周辺部分22Uの下部には空域部分25Uを提供するための縮径部分が形成されている。この空域部分25Uが圧力容器12の半径方向内方へ突き出している前記セクショナルリング16及びスペーサ18の内径部分を収容している。
下熱板20Lは上熱板20Uと上下対称をなす円盤形状を有しており、中央部分21Lが上方へ突き出し、周辺部分22Lが下方へ垂下しており、断面が概ね逆U字形状を有している。平坦な形状を有している中央部分21Lの内部には、前記加熱手段23Uと同様の、加熱手段23Lが収容されている。下方へ垂下している周辺部分22Lの外周面にはOリング等の封止手段24Lが配置されている。この封止手段24Lにより下熱板20Lと下半体12Lとにより画定される空間Bは封止状態に保持される。図示の例では封止手段24Lが2連に設けてあり、下熱板20Lと下半体12Lとの封止状態をより完全に行っているが、上述したように、この2連に設けることは必須事項ではない。垂下している周辺部分22Lの上部には空域部分25Lが形成されている。この空域部分25Lが圧力容器12の半径方向内方へ突き出している前記スペーサ18の内径部分を収容している。
図に示すように上熱板20Uと下熱板20Lとは、所定の間隔をおいて配置されている。加熱加圧加工されるべきワーク50は圧力容器12内の上熱板20Uの平坦な中央部分21Uと下熱板20Lの平坦な中央部分21Lとの間に配置され、圧力容器12内にて下向きに移動する上熱板20Uと、上向きに移動する下熱板20Lとによって所望の加熱加圧作業が行われる。なお、上熱板及び下熱板は共に、望ましくは、例えばアルミニュウム等のような熱伝導性高い材料により形成されることが出来る。
圧力容器12には、前記加熱手段23U、23L以外にも、以下に述べるように、圧力容器12の内部と外部とを連結している各種の手段が設けられている。上半体12Uの内部において上熱板20Uを下方へ向かって移動し、同様に下半体12Lの内部において下熱板20Lを上方へ向かって移動するための起動媒体として、水圧または油圧を提供する液圧装置60が設けてある。液圧装置60は、水または油等の液体を収容するタンク61と、タンク61から上半体12Uの空間Aおよび下半体12Lの空間Bへ連結しそこへ実質的に同一の圧力を有する高圧液体を供給するための供給管62と、上半体12Uの空間Aおよび下半体12Lの空間Bから高圧液体をタンクへ戻すための戻し管63と、を有している。なお、タンク61内には、公知の液面センサ61aを設けることが出来る。また、供給管62内には起動媒体を空間A、Bへ送り込むための公知のポンプ等の加圧手段62aおよび弁装置62bが、戻し管63内にも同様に起動媒体をタンク61へ送り込むための公知のポンプ等の加圧手段63aおよび弁装置63bが設けられることが出来る。また、必要に応じて、起動媒体として気体を使用する場合には、導管62へ公知の空気ポンプ64を接続することもできる。この場合も、ポンプ64と導管62との間に弁装置64aを設けることができる。
更に、作動初期において圧力容器12内部を減圧するため該圧力容器12の空間A、B内の空気を大気中へ排出するため真空ポンプ等の減圧手段65を設けることが出来る。この減圧手段65は、各導管66を介して上半体12Uの空間A及び下半体12Lの空間Bへ連結され、各導管66の中間部には各々弁装置66a、66aを設け、排出した空気は大気中へ放出することが出来る。
また、特に、圧力容器12の空間A、B内部から液体または気体等の起動媒体を排出するための排圧手段68として、上半体12Uと下半体12Lの各底部分31U、31Lを介して前記タンク61へ至る導管70を設けることが出来る。これらの導管70内には必要に応じて弁装置70aを配置することが出来る。これらの導管70は特に起動媒体が液体の時に使用されるものであり、夫々破線で示すように、前記タンク61まで接続されている。もし、起動媒体が気体の場合には高圧気体を大気中へ排出するための排出導管72を設けることが出来る。この排出導管内72には同様に弁装置72aを配置することが出来る。当業者に明らかなように、減圧手段65と排出手段68の排出導管72とは実質的に同様の作用を提供しているので、一方を削除することも可能である。もし、減圧手段65を削除する場合には、排出導管72内において弁装置72a以降に、減圧手段65と同様の機能を有する手段を設置することが好ましいことは当業者に明らかであろう。しかしながら、作業手順の容易化簡便化のためには専用の配管を設置するが好まれることを考慮して各手段を併記している。
更に、上熱板20Uと下熱板20Lとの間に画定される空間であって、ワーク50を収容するための空間52を減圧するための真空ポンプ等の減圧手段54が設けてある。この減圧手段54はスペーサ18を介して前記空間52まで伸張している導管54aにより、当該空間52の内部及びそこに配置されるワーク50を所望圧力まで減圧することが出来る。もし、スペーサ18の代替として中間環状封止体17を用いる場合に、図示したような導管54aを設けることが困難な場合には、導管54aを、フランジ部32Lを介して直接空域部分25Lへ接続することも可能であろう。
また、図示していないが、クラッチリング14を回転して上半体12Uと下半体12Lとの封止を開放した後に、当該上半体12Uを図示の位置から上方へ移動したり、当該上方位置から図示の位置まで下方へ移動するため、上半体移送手段(図示なし)が設けてある。この移送手段は圧力容器12へ未加工ワークを設置したりまたはそこから加工済みのワークを取り出すために必要である。この移送手段は、例えば、螺子棒とナットとを使用したもので上半体12Uの所定位置へ固定した複数(例えば3個または4個)のナットへ螺合する螺子棒をモーターで調時しながら回転することにより上半体12Uを上方へ又は下方へ移送する。なお、このような移動手段としては、天井クレーンで吊り上げるなど、種々の方式が知られており、その内容は当業者に既に公知であるので、これ以上は詳述しない。
図2−4は、ワーク50を挟持して加熱加圧加工する上熱板20Uと下熱板20Lとの概略関係を示している。図2は図1に示した上熱板と下熱板との関係を示した概略図であり、上下方向へ伸張している周辺部分は省略して示している。以下の図においても同様である。ワーク50は下熱板の平坦な中央部分に配置されている。以下の実施例においても同様である。前述のように、熱板20は熱伝達特性を考慮してアルミニューム素材によって構成されている。しかしアルミニュウム素材は、加圧作業をする際に大きな加圧荷重をかけた場合、その強度に多少問題がある。そこで、このような問題を解消するために、図3では図2に示すと同様の加熱手段を夫々内有する上熱板74U及び下熱板74Lをアルミニュウム素材で構成し、これらの熱板をワーク50へ対して安全に押圧出来るように、熱板のワークから離れた側に、押圧力に対する強度が大きい例えばステンレス鋼または各種の炭素鋼からなるプレス板75U、75Lを配置して、熱板74U、74Lへ対して大きな押圧力を安全に加えることが出来る構造とし、更にこれらの熱板へ大きな押圧力を付与しても上下の熱板が変形したり損傷したりすることを防止したものである。なお、これらの熱板とプレス板は、溶接その他の公知の固着手段により固着されている。これ以外の点は図1において述べたと同様である。
図3では、上下の熱板74U、74Lとプレス板75U、75Lが、夫々溶接その他の公知の接続手段により接続されている。このため、加熱手段によって付加された熱がアルミニュウム素材で構成されている熱板から鋼素材で構成されているプレス板の方へ逃げる可能性があり、熱効率上好ましくない。そこで、図4では、上下の熱板76U、76Lとプレス板77U、77Lとを独立して配置し、両者を複数の弾性体78U、78Lによって懸吊保持したものである。これ以外の点は図1において述べたと同様である。この結果、上下の熱板76U、76Lとプレス板77U、77Lとはプレス作業中のみ接触し、通常は互いに離れて配置されるように構成し、これにより図3に示す実施例の熱効率の課題を解消しているものである。なお、図示の例において、プレス板75U、75L、77U、77Lが共に熱板74U、74L、76U、76Lの寸法よりも大きい形状を有していることは注目すべきである。これによりプレス板が均一な押圧力を熱板へ付与することを保証し、反りのない成形作業を確約しているのである。
次に図1を参照ながら、本件装置の作業手順について述べる。初めに、ワーク50の作業前の厚みと作業後の厚みとを検討し、最も適切な厚み寸法を有するスペーサ18を選択する。作業前は、架台28に載置されている圧力容器12の上半体12Uが、該上半体と封止関係にある上熱板20U及び該上半体のフランジ部へ固着手段38によって固着されているセクショナルリング16と共に、図示していない上半体移送手段によって、下半体12Lから所定距離だけ上方へ持ち上げられているので、選択したスペーサ18を下半体12Lのフランジ部32L上へ配置する。次いで、下半体12L内にOリング等の封止手段24Lによって支承されている下熱板20Lの平坦な中央部分21Lへ被加工ワーク50を配置する。このとき、上下の熱板20U、20Lの加熱手段23U、23Lは作動状態となっている。なお、この実施例では、クラッチリング14は下半体のフランジ部32Lへ常時係合している状態を想定している(以下同じ)が、勿論、クラッチリング14は上半体のフランジ部32Uへ常時係合している状態を想定することも可能であり、その場合には、該クラッチリング14は、上半体12Uの上下運動に従動することは当業者に明らかである。また、中間環状封止体17を使用する場合、例えば固着手段40、封止手段44を残したときには固着手段38を位置決め手段として構成すること(又はその反対構成とすること)も可能である。ここで、被加工ワーク50としては、例えば、プリント基板、太陽電池基板、液晶ガラス基板、更には建築部材等々の、予め保護膜と基板と接着剤若しくは保護膜とモジュールと接着剤を適切に積層した積層形状を有するものである。
被加工ワーク50を下熱板20Lの平坦な中央部分21Lへ適切に配置した後、上半体12Uを、上熱板20U及びセクショナルリング16と共に静かに下半体12L上に降下する。二つの半体を適切に整合配置した後、クラッチリング14を回転してこれらの半体12U、12Lを、セクショナルリング16及びスペーサ18を中間に介在させた状態で、適切に接合する。これにより圧力容器12の内部は完全にその外部から封止状態に保持される。その後、減圧手段65を起動して圧力容器12の空間A、B内の圧力を所定値(例えば100トールまで)減じる。空間A内が減圧されることにより上熱板20Uは上半体12Uの底部分31Uの方向へ吸い上げられて上昇する。この上昇運動は上熱板20Uの周辺部分22Uが上半体12Uの隆起部33Uへ接するまで継続する。一方、同様に空間B内が減圧されることにより下熱板20Lは下半体12Lの底部分31Lの方向へ降下する。この下降運動は下熱板20Lの周辺部分22Lが下半体12Lの隆起部33Lへ接するまで継続する。
このとき好ましくは減圧手段54を起動して上下に移動した熱板20U、20L間に画定された空間52内部の圧力も同時に空間A、B内の圧力と略程度(例えば100トール)まで減じる。その後、減圧手段65を停止する。
次いで液圧装置60又は空気ポンプ64を駆動して今や減圧状態にある圧力容器12の上下の空間A、B内へ加圧された液体又は気体から成る起動媒体を供給する。実質的に同一の圧力を有する起動媒体が空間A、B内へ注入されることにより空間A、B内の圧力が実質的に同一だけ上昇し、上下の熱板20U、20Lが互いに接近する方向へ移動する。これにより両熱板がワーク50を上下両方向から同一の強い力で加熱しながら加圧する。このため、ワーク50は、これまでのホットプレス作業においては不可避だったワーク周辺部分の反りを殆ど発生することなく所望のホットプレス加工を行うことが出来る。このとき、上下の熱板20U、20Lの周辺部分22U、22Lには縮径部分により空域部分25U、25Lが設けてあるので、上下の熱板は互いに他方へ接近する方向へ自由に移動することが出来、最適な加熱加圧作業を提供することが出来る。なお、これらの熱板20U、20Lが異常に接近して、互いに噛み合うような事故を発生させないため、両熱板20U、20Lが互いに接近できる距離は、熱板20Uが空域部分25Uを介してセクショナルリング16へ衝突する位置、そして熱板20Lが空域部分25Lを介してスペーサ18へ衝突する位置よりも互いに近接する方向へは移動出来ないように図っている。
好ましくは、ワーク50の加熱加圧作業が完全に終了するまで、減圧手段54は作動状態にしておき、この加熱加圧作業において発生する空気その他のガス等の異物を空間52から除去し、ワーク50が完全に異物を含まない接合を得るようにすることが出来る。所定の時間、ワーク50を上下方向から加熱加圧することによってホットプレス作業が完了する。その後、減圧手段54の作動を終了する。
ワーク50の種類によっては、加熱加圧作業に際して化学反応を起こす場合もある。そしてそのような場合に、当該化学反応を高圧状態または減圧状態で行うことが要求されることもある。かかる場合には、減圧手段54を、適宜、高圧手段に変更することにより、容易にそのような要求を満たすことが出来るのである。
ワークの加熱加圧作業が終了した後、起動媒体を圧力容器12から排出する排出手段68の弁装置70a、または弁装置72aを開放して、容器12内部が常圧になるまで容器12内部の高圧流体を容器外部へ放出する。更に減圧手段54を開放状態とする。こうして容器12の内部全体を常圧まで戻す。その後、クラッチリング14を回転し、上半体12Uと下半体12Lとの締結を解除する。次いで、図示していない上半体移送手段によって上半体12Uを上方へ引き上げる。こうして、加工済みのワーク50を下熱板上面から取り出すのである。
【符号の説明】
【0009】
10:ホットプレス 12:圧力容器
12U:上半体 12L:下半体
14:クラッチリング 16:セクショナルリング
17:中間環状封止体 18:スペーサ
20:熱板 20U:上熱板
20L:下熱板 21U、21L:中央部分
22U、22L:周辺部分 23U、23L:加熱手段
24U、24L:封止手段 25U、25L:空域部分
28:架台 30U、30L:垂直壁面
31U、31L:底部分 32U、32L:フランジ部
33U、33L:隆起部 34:段部
38、42:固着手段 40、44、46:封止手段
50:ワーク 52:空間
54:減圧手段 54a:導管
60:液圧装置 61:タンク
61a:液面センサ 62:導管
62a:加圧手段 62b、63b:弁装置
63:戻し管 63a:加圧手段
64:空気ポンプ 64a:弁装置
65:減圧手段 66:導管
66a:弁装置 68:排圧手段
70:導管 70a:弁装置
72:排出導管 72a:弁装置
74U:上熱板 74L:下熱板
75U:上プレス板 75L:下プレス板
76U:上熱板 76L:下熱板
77U:上プレス板 77L:下プレス板
78U:上弾性体 78L:下弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器12と、該圧力容器12内部に配置されている熱板20と、圧力容器12へ連結されており圧力容器内の圧力を増大する装置(60または64)と、圧力容器12へ連結されており圧力容器内の圧力を減少する装置(54、65または68)と、を有しており、
圧力容器12が、上半体12Uと、下半体12Lと、上半体12Uと下半体12Lとの間に封止可能に配置されている中間環状封止体17と、上半体12Uと中間環状封止体17と下半体12Lとを開放自在に封止結合するクラッチリング14と、を有し、上半体12Uと下半体12Lと中間環状封止体17とが互いに封止係合しており、
熱板20が、上半体12Uの内壁面を上下移動する上熱板20Uであって、内部に加熱手段23Uを有している中央部分21Uと、該中央部分の周辺から上方へ伸びている周辺部分22Uと、該周辺部分22Uと圧力容器12とを封止係合する封止手段24Uと、を有している上熱板20Uと、下半体12Lの内壁面を上下移動する下熱板20Lであって、内部に加熱手段23Lを有している中央部分21Lと、該中央部分の周辺から下方へ伸びている周辺部分22Lと、該周辺部分22Lと圧力容器12とを封止係合する封止手段24Lと、を有している下熱板20Lと、から成り、
被加工ワーク50が、上熱板の中央部分21Uと、下熱板の中央部分21Lと、の間に配置され、圧力を減少する装置及び圧力を増大する装置が上熱板及び下熱板へ起動媒体を作用することにより、当該ワーク50を圧力容器12内において加熱加圧加工することを特徴とするホットプレス。
【請求項2】
中間環状封止体17が、上熱板20Uの下降運動と下熱板20Lの上昇運動とを制限し、これによって上熱板と下熱板との接触を防止していることを特徴とする請求項1に記載のホットプレス。
【請求項3】
中間環状封止体17が、ワーク50の厚みに応じて調節されることを特徴とする請求項1又は2に記載のホットプレス。
【請求項4】
中間環状封止体17が、上半体12Uへ取付けられているセクショナルリング16と、下半体12Lへ取付けられているスペーサ18と、から構成されていることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載のホットプレス。
【請求項5】
圧力容器12内において、上熱板20Uによって画定される空間A及び下熱板20Lによって画定される空間Bの圧力を減少する装置と、圧力容器12内において、上熱板と下熱板との間の空間52の圧力を減少する装置とが、独立して設けてあることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載のホットプレス。
【請求項6】
上下の熱板20U、20Lが該熱板の寸法よりも大きい寸法を有するプレス板75U、75L、77U、77Lによって補強されていることを特徴とする請求項1−5のいずれか1項に記載のホットプレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−179324(P2010−179324A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23353(P2009−23353)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(593139695)株式会社協真エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】