説明

ホットメルト顆粒化潤滑剤を含んでなる医薬組成物

本発明は、ホットメルト顆粒化法、またはサーマルヒート法を使用して調製される潤滑剤顆粒に関する。潤滑剤顆粒は、医薬組成物中で典型的に可能であるよりも高濃度の潤滑剤の使用を容易にするのに有用である。潤滑剤顆粒を含んでなる医薬組成物もまた提供される。このような医薬組成物は活性成分としてビスホスホン酸を含有でき、経口投与に適することができる。本発明はまた、後に医薬組成物中で使用するための潤滑剤顆粒を調製するホットメルト法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、同時係属カナダ特許出願第2,571,559号明細書(2006年12月19日出願)の優先権を主張するものであり、その内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、医薬組成物およびそれを調製する方法、より詳しくはホットメルト顆粒化潤滑剤を含んでなる医薬組成物、およびそれを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩は、骨疾患ならびに骨粗鬆症、パジェット病、および高カルシウム血症などのカルシウム代謝関連疾患の治療において重要である。ビスホスホネート、すなわちビスホスホン酸または可溶性の薬学的に許容可能なその塩は、天然ピロリン酸の合成類似体である。固相リン酸カルシウムに対するそれらの際立った親和性のために、ビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩は、骨ミネラルに強力に結合する。薬理学的に活性なビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩については当該技術分野でよく知られており、強力な骨再吸収阻害剤であるため高カルシウム血症、骨粗鬆症、腫瘍骨溶解症、パジェット病などの異常な骨再吸収を伴う疾患の治療および予防において有用である。骨は支持構造としての役割を果たすが、様々な身体刺激シグナル伝達および応答機序にもまた関与する。したがって損傷骨を支持するための単純な補綴では、患者は、骨自体の修復による適切な活性効果が得られない。
【0004】
医薬品としてのビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩については、例えば特許文献1〜5で述べられている。市販されるビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩の医薬品形態は、経口製剤(錠剤またはカプセル)または静脈内注射もしくは輸液用溶液のどちらかである。ビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩は、異なる作用様式がある2つのグループに分類できる。イバンドロン酸ナトリウムは、より強力な窒素含有ビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩に属する(非特許文献1)。イバンドロン酸ナトリウムは、骨粗鬆症(BONIVA)および転移性骨疾患において、目下市販される最も強力なビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩の1つである。イバンドロン酸ナトリウムは、骨再吸収の動物モデルにおいて、アレンドロン酸、リセドロン酸、パミドロン酸、およびクロドロン酸よりも数倍より強力であることが示されている(非特許文献2)。
【0005】
イバンドロン酸ナトリウムは、鉱化作用に影響することなく骨再吸収を阻害する。高用量においてそれは破骨細胞の数を低下させるので、それはまた破骨細胞活性を低下させ、ひいては骨破壊を抑制することも示されている。
【0006】
ビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩の医薬品、特にイバンドロン酸ナトリウムは、加工中に深刻な圧縮問題を本質的に引き起こすため問題となることがある。粘性増大などの問題または硬度低下の問題は過度の脆砕性限界につながり、それはこの化合物ファミリーの調製中に組成物中の適切な潤滑剤の使用によって克服されなくてはならない。通常、潤滑剤は組成物の0.25〜1.5%を占め、理想的には1%未満に保たれる。
【0007】
ステアリン酸をその他のビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩のための潤滑剤として使用する場合、組成物を適切に潤滑するのにより大きな濃度が必要であるが、この潤滑剤は、製剤の圧縮に伴う固有の問題の解決にもはや寄与しなくなる濃度とする前に、約6重量%の割合を超えて使用できないことが指摘されている(プロクター・アンド・ギャンブル社(Proctor and Gamble)に付与された特許(特許文献6))。ホフマン・ラ・ロシュ(Hoffmann−La Roche)に付与された特許(特許文献7)では、開示されている固形医薬品形態は、投与形態総重量に対して5重量%未満のステアリン酸形態の潤滑剤を含有する。特許文献7には、例えば総重量の5%を超えるなどステアリン酸レベルが高すぎると、得られた顆粒が非常に撥水性になるため、得られた薬剤は非常に緩慢に崩壊しうることが記載されている。
【0008】
この背景情報は、出願人が本発明との関連性が可能であると考える情報を明らかにする目的で提供される。前述の情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成すると承認することは必ずしも意図されず、そのように解釈すべきでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,687,767号明細書
【特許文献2】米国特許第4,666,895号明細書
【特許文献3】米国特許第4,927,814号明細書
【特許文献4】米国特許第4,942,157号明細書
【特許文献5】米国特許第4,777,163号明細書
【特許文献6】国際公開第93/09785号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,294,196号明細書
【特許文献8】米国特許第3,042,531号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Russel R.G.G., Rogers M.J. Bisphosphonic acid or a pharmaceutically acceptable salt thereof: From the laboratory to the clinic and back again. Bone 25(1):97-106 (1999)
【非特許文献2】Muhlbauer R.C., Bauss R., Schenk R., Janner M., Bosies E., Strein K., and Fleisch H. BM21.0955 A Potent New Bisphosphonicacid to Inhibit Bone Resorption. J. Bone Miner. Res. 6:1003-1011 (1991)
【非特許文献3】Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications (J.M. Harris, Ed., Plenum Press, N.Y.
【非特許文献4】Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ホットメルト顆粒化潤滑剤を含んでなる医薬組成物を提供することである。本発明の一態様によれば、(a)潤滑剤およびホットメルトバインダーを含んでなる溶融混合物を調製するステップと、(b)溶融混合物を冷却させるステップと、(c)冷却混合物を粉砕して顆粒を形成するステップとを含んでなる、潤滑剤顆粒を調製する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の別の態様によれば、(a)潤滑剤およびホットメルトバインダーを含んでなる溶融混合物を調製するステップと、(b)溶融混合物を冷却させるステップと、(c)冷却混合物を粉砕して顆粒を形成するステップとを含んでなる方法によって調製される潤滑剤顆粒が提供される。本発明の一実施態様によれば、潤滑剤顆粒は、顆粒の少なくとも35重量%の量の潤滑剤を含んでなる。好ましくは、潤滑剤は、少なくとも45重量%の量で存在する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、(a)潤滑剤およびホットメルトバインダーを含んでなる溶融混合物を調製するステップと、(b)溶融混合物を冷却させるステップと、(c)冷却混合物を粉砕して顆粒を形成するステップとを含んでなる方法によって調製される、活性医薬品成分(API)および潤滑剤顆粒を含んでなる医薬組成物が提供される。本発明の実施態様によれば、APIはイバンドロン酸またはイバンドロン酸ナトリウムなどのビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその誘導体である。
【0014】
本発明の別の態様によれば、本発明の潤滑剤の顆粒、および好ましくはビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩であり、より好ましくは、イバンドロン酸ナトリウムである活性医薬品成分を含有する医薬組成物を患者に投与するステップを含んでなる、骨再吸収増大に関連する疾患を治療する方法が提供される。骨再吸収疾患は、限定されるものではないが、骨粗鬆症、高カルシウム血症、腫瘍骨溶解症またはパジェット病であることができる。
【0015】
本発明の1つの利点は、ホットメルト顆粒化潤滑剤が、全固形物経口投薬量の5%を超え、好ましくは9%を超え、およびより好ましくは15%を超える量を構成することができることである。潤滑剤は滑石、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアリン酸、ポリエチレングリコール、および水素化植物油のいずれかから選択できるが、ステアリン酸を使用することが最も好ましい。潤滑剤含量の増大は調製品の粘性を低下させ、したがってビスホスホン酸および薬学的に許容可能なその誘導体をはじめとする、いくつかのAPIで本質的に見られる重度の圧縮問題を克服する。
【0016】
本発明の組成物の別の利点は、組成物の硬度またはDTレベルが低下し、したがって加工中の脆砕性問題が解消して、組成物の粉砕や排出不良を防止することである。
【0017】
全体的に、本発明の組成物は、本発明のホットメルト顆粒化法によって調製されていない同様に高濃度のステアリン酸を含有する組成物に対して予期されるような、遅延溶解プロフィールを示さない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
意外にも本発明者らは、潤滑剤がホットメルト顆粒化法を使用して調製されていれば、高濃度の潤滑剤と共に活性医薬品成分(API)を含んでなる医薬組成物を作り出せることを発見した。上で論じた先行技術の問題は、圧縮の問題がある組成物の潤滑が増大できるようにする、ホットメルト顆粒化潤滑剤を含んでなる医薬組成物を作り出すことで解決される。被覆された潤滑剤の量は、今や全調合物の6%を超える値に増大された。理論による拘束は望まないが、ホットメルト顆粒化潤滑剤はAPIとの密着を回避するので、より高い潤滑剤濃度が可能であることが予測された。
【0019】
本発明の方法は、潤滑剤およびホットメルトバインダーを含んでなる溶融混合物を調製するステップと、溶融混合物を冷却させるステップと、冷却混合物を粉砕して顆粒を形成するステップとの基本ステップを含む。
【0020】
本発明の溶融顆粒化法を実施するために、潤滑剤を含有する溶融顆粒化媒体を媒体が少なくとも部分的に溶融状態になる温度に加熱する。顆粒化媒体が加熱されて溶融すると、それは組成物の粒子間に液体架橋を形成し、それは冷却に際して固体結合に変化する。それによって固形塊が形成し、顆粒化媒体と組成物の残りの構成要素が密接に結合している凝集または顆粒を形成する。本明細書中において、「溶融会合」という用語は、溶融顆粒化法において溶融顆粒化構成要素の冷却から帰結する、本発明の組成物の構成要素間の結合関係を指す。
【0021】
潤滑剤は少なくとも軟化状態に予熱でき、次にホットメルトバインダー、そして存在する場合その他の構成要素と組み合わせ、得られた組成物に必要に応じて熱を継続して供給し、溶融顆粒化を実施できる。代案としては、予熱されるホットメルトバインダーに潤滑剤を添加して、得られた組成物に必要に応じて熱を継続して供給し、溶融顆粒化を実施できる。この代案では、追加的構成要素が添加される場合、それらは典型的に潤滑剤とホットメルトバインダーとの溶融混合物に添加される。
【0022】
本発明の潤滑剤顆粒の様々な構成物の加熱および混合を順序付けするための技術を考案して、適切な溶融顆粒の形成をもたらすことは、当業者の技術範囲内であろう。
【0023】
組成物は、本発明の組成物を実質的に完全に液化するのに十分な時間、高温に保たれる。溶融混合物を高温に保つ時間の長さは、大幅に変動できる。この時間は、混合物の構成要素の分解が最小化されるようなものである。適切な時間は実験的に容易に判定でき、顆粒化される特定の混合物により異なる。一般に構成要素の高温への曝露時間は5分未満であり、好ましくは2分未満である。
【0024】
次に得られた組成物を好ましくは室温に冷却し、または放冷する。必要ならば顆粒化に先だって、組成物を(恐らくはオーブン内で)乾燥させ、混合物から水を除去する。
【0025】
次に標準操作手順を使用して、冷却混合物を小塊に砕いて粉砕する。得られた顆粒は、医薬製剤の調製で使用するのに適する。
【0026】
潤滑剤とは、本明細書中において、圧縮およびそれらからの排出中に、錠剤と型壁との境界面から生じる摩擦を低下できる材料を意味する。潤滑剤はまた、パンチへの、より少ない程度には型壁への固着を防止する役割を果たしてもよい。「固着防止剤」という用語は、排出中に機能する物質に具体的に言及するために時折使用される。しかし本開示で使用されるように、「潤滑剤」という用語は総称的に使用されて「固着防止剤」を含む。形成および/または排出中の錠剤の固着は、効率低下、不規則に形成された錠剤、およびそれによって送達される意図される薬剤または成分の非均一な分布などの重篤な製造上の問題を引き起こすかもしれない。これらの問題は、高速錠剤化アプローチおよび方法に関して特に深刻である。
【0027】
潤滑剤は、内在性または外在性であってもよい。金型キャビティへおよび/またはパンチ表面へのスプレーによってフィルムの形態で錠剤化工具表面に直接塗布される潤滑剤は、外在性潤滑剤として知られている。外在性潤滑剤は効果的な潤滑を提供できるが、それらの使用は複雑な塗布装置および方法を必要とし、コストを増大させて生産性を低下させる。
【0028】
内在性潤滑剤は、打錠される材料中に組み込まれる。ステアリン酸のマグネシウム、カルシウム、および亜鉛塩が長きにわたり、慣用される最も効率的な内在性潤滑剤と見なされている。2%以下の濃度が通常効果的である。
【0029】
その他の従来の内在性潤滑剤としては、水素化および部分的水素化植物油、動物性脂肪、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンモノステアリン酸、滑石、軽油、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。特許文献8を参照されたい。
【0030】
本発明によれば、潤滑剤は1.5重量%をはるかに超える量で使用でき、これらの量は、組成物総重量の約0.25〜約1.0重量%の間ぐらいである通常好ましい量よりもはるかに高い。
【0031】
内在性潤滑剤は、従来の錠剤で使用する場合に特定の重大な困難さをもたらす。多くの潤滑剤は、錠剤の崩壊を実質的に遅らせる。
【0032】
本明細書中において、「ホットメルトバインダー」とは、標準周囲温度および圧力では十分に硬質であるが、高温または高圧下において変形できまたは半液体状態を形成するものである。本発明の調合物は、それをホットメルト顆粒化に適するようにするため可塑剤を含有する必要はないが、本明細書に記載されているタイプの可塑剤を含めることができる。
【0033】
使用できるホットメルトバインダーの例としては、非水性溶剤中のアカシア、トラガカント、ゼラチン、デンプン、メチルセルロースおよびナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース材料、アルギン酸およびその塩、ポリエチレングリコール、グアーガム、多糖類、ベントナイト、糖、転化糖、ポロキサマー(プルロニック(PLURONIC)F68、プルロニック(PLURONIC)F127)、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、セルロース系材料、および上記の組み合わせなどが挙げられる。
【0034】
ホットメルト顆粒化のためのバインダーは、好ましくは約60%重量まで、より好ましくは約40重量%まで、最も好ましくは約20%重量までの量で使用される。本発明の特に好ましい実施態様は、組成物総重量の約3〜約8%重量のホットメルトバインダーを含んでなる。本発明で使用される全てのバインダーは、ホットメルト顆粒化に適する。これらのバインダーの溶融および/または軟化点温度は、通常それらの分子量の増大に連れて上昇するが、好ましいものは溶融または軟化点温度が約150℃未満のものである。しかし約150℃を超える溶融または軟化点を有するバインダーを使用することもできる。約150℃を超える溶融または軟化点温度を有するホットメルトバインダーは、バインダー溶融または軟化点温度が150℃未満に低下するように、ホットメルト顆粒化中に可塑剤の使用を必要とするかもしれない。上述のバインダー中では、ポリエチレングリコールが好ましく、約1000〜8000Daの分子量を有するものがさらに好ましい。
【0035】
粉末、顆粒、フレークまたは熱溶融液体などのあらゆる形態のバインダーが使用できる。添加されるバインダーの量は変更できるが、それは通常、顆粒の約10重量%未満、好ましくは約3〜8重量%の範囲内の量で存在する。
【0036】
より高い融解温度、より高い分子量または高い軟化温度のバインダーを用いる場合、ホットメルト押出しは、より低い分子量、溶融または軟化温度を有するバインダーを用いる場合よりも、より高い加工温度、圧力および/またはトルクを必要とするかもしれない。調合物に可塑剤、そして場合により抗酸化剤を含めることで、加工温度、圧力および/またはトルクを低下させてもよい。本発明を実施するために可塑剤は必要ない。それらの調合物への添加は、本発明の範囲内であることが考察される。可塑剤は、150℃を超える溶融または軟化点温度を有するホットメルト押出し可能バインダーを用いる場合に、有利には顆粒に含まれる。
【0037】
本明細書中において、「可塑剤」という用語は、本発明のホットメルト押出し可能バインダーを可塑化できる全ての化合物を含む。可塑剤は、ホットメルト押出し可能バインダーの融解温度またはガラス転移温度(軟化点温度)を低下できなくてはならない。低分子量PEGなどの可塑剤は、一般にホットメルト押出し可能バインダーの平均分子量を広幅化し、それによってそのガラス転移温度または軟化点を低下させる。可塑剤はまた、一般にポリマー溶融物の粘度も低下させ、それによってホットメルト押出し中に、より低い加工温度および押出しトルクを可能にする。
【0038】
本発明で有用な可塑剤の例としては、限定されないが、低分子量ポリマー、オリゴマー、コポリマー、油、小型有機分子、脂肪族ヒドロキシルを有する低分子量ポリオール、エステル−タイプ可塑剤、グリコールエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、複数−ブロックポリマー、単一ブロックポリマー、低分子量ポリ(エチレングリコール)、クエン酸エステル−タイプ可塑剤、トリアセチン、プロピレングリコール、およびグリセリンが挙げられる。
【0039】
このような可塑剤はまた、エチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、スチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびその他のポリ(エチレングリコール)化合物、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸ソルビトール、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール酸エチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、およびグリコール酸アリルであることができる。
【0040】
本調合物中で可塑剤の組み合わせを使用してもよいことが考察され、本発明の範囲内である。1つの有利な組み合わせは、ポリ(エチレングリコール)および低分子量ポリ(エチレンオキシド)を含んでなるものである。PEGベースの可塑剤は市販され、またはその教示を参照によって本明細書に援用する非特許文献3で開示されるものなどの多様な方法によって作成してもよい。
【0041】
顆粒の最終用途による必要に応じて、追加的な薬学的賦形剤を潤滑剤顆粒に含めることができる。例えば本発明の潤滑剤顆粒は、場合により技術分野でよく知られているバインダー、希釈剤、崩壊剤などの様々なその他の賦形剤を含むことができる。任意の希釈剤またはバインダー材料の例としては、乳糖、デンプン、アルギン酸ナトリウム、リン酸二カルシウム水和物、糖、アカシア、寒天、カルシウムカラゲナン、アルギン酸、アルギン、アガロース粉末、微結晶性セルロース、コラーゲン、コロイドマグネシウムケイ酸、コロイド二酸化ケイ素、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートなどが挙げられる。
【0042】
得られた本発明の顆粒は、活性成分、特に薬理学的活性薬剤を含有する調合物に含めることができる。本明細書中において、「活性成分」という用語は、医薬、獣医学、園芸、家庭、食物、調理、殺虫剤、農業、美容、除草剤、工業、クリーニング、菓子製造、および香料用途のための治療的化合物、着香剤、甘味料、ビタミン、洗浄剤、およびその他のこのような化合物を意味する。顆粒が錠剤に調合される場合、このような錠剤はまた着色剤、潤滑剤などを含有できる。本発明の顆粒は、錠剤、カプセル、懸濁液、水戻し可能粉末、および坐薬などの多様な形態に調合できる。
【0043】
顆粒および治療的化合物を含む調合物が、薬物錠剤に含まれる場合、錠剤のサイズおよび形は、ヒト患者などの患者への直接経口投与に適応させることができる。薬物錠剤は、水および/または唾液への曝露に際して実質的に完全に崩壊できる。顆粒は、錠剤が患者の口に入った時に、錠剤崩壊を助けるのに効果的な量で存在する。
【0044】
組成物に含めることができる崩壊剤としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプンなどのデンプン、そのα化および加工デンプンと、甘味料と、ベントナイトなどの粘土と、微小結晶性セルロースと、アルギネートと、デンプングリコール酸ナトリウムと、寒天、グアー、ローカストビーン、カラヤ、ペクチン、およびトラガカントなどのガムが挙げられる。崩壊剤は、組成物総重量の約20重量%まで、好ましくは約2〜約10%を構成できる。
【0045】
着色剤としては、二酸化チタンと、F.D.&C.染料として知られているものなどの食物に適した染料と、ブドウ果皮抽出物、ビーツ赤色粉末、βカロテン、ベニノキ、カルミン、ターメリック、パプリカなどの天然着色剤などが挙げられる。使用される着色剤の量は、組成物の総重量の約0.1〜約3.5重量%の範囲であることができる。
【0046】
組成物に組み込まれる香料は、合成香味油および着香芳香族および/または天然油と、植物、葉、花、果実などからの抽出物およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。これらは、シナモン油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、丁子油、ベイ油、アニス油、ユーカリノキ、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグ油、セージ油、苦扁桃油、および桂皮油を含んでもよい。また香料として有用なのは、バニラと、レモン、オレンジ、グレープ、ライム、およびグレープフルーツをはじめとする柑橘油と、リンゴ、ナシ、モモ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、スモモ、パイナップル、アプリコットなどをはじめとする果実精である。特に有用なことが分かった香料としては、市販されるオレンジ、ブドウ、サクランボ、および風船ガム香料およびそれらの混合物が挙げられる。香味料の量は、所望の官能的効果をはじめとするいくつかの要因に左右されてもよい。香料は組成物重量に基づいて、重量で約0.5〜約3.0の範囲の量で存在してもよい。特に好ましい香料はブドウおよびサクランボ香料と、オレンジなどの柑橘類香料である。
【0047】
本発明のこの態様に従った錠剤は、よく知られている錠剤化手順によって製造できる。通常の錠剤化工程では、錠剤にする材料をキャビティに入れ、次に1つ以上のパンチ部材をキャビティ内に進めて圧縮する材料と密着させ、すぐに圧縮力をかける。したがって材料は、パンチおよびキャビティの形と強制的に一致するようにされる。様々な錠剤化方法について当業者によく知られており、ここでは詳述しない。
【0048】
治療化合物以外の、錠剤に組み込まれる材料を前処理して、錠剤化に容易に役立つ顆粒を形成できる。この工程は顆粒化として知られている。一般に定義されるように「顆粒化」とは、それによって小型粒子がより大きな恒久的凝集にひとまとめにされて、錠剤化に適した粘稠度を有する易流動性組成物を生じる、あらゆるサイズ拡大工程である。このような粒状組成物は、乾燥砂と類似した粘稠度を有してもよい。顆粒化は、混合装置内での撹拌によって、または圧縮、押出しまたは球体化によって達成されてもよい。
【0049】
本発明の顆粒を含有する調合物中に含有される治療的化合物は、薬学的に許容可能なその塩として調合できる。本明細書中において、「薬学的に許容可能な誘導体」とは開示されている化合物の塩、エステル、水和物または溶媒和化合物を指す。薬学的に許容可能な塩の場合、薬理学的に活性な親化合物が、その酸性または塩基性塩を作製することにより改変されている。薬学的に許容可能な塩の例としては、限定されるものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられる。薬学的に許容可能な塩としては、例えば無毒の無機酸または有機酸から形成される、親化合物の従来の無毒の塩または四級アンモニウム塩が挙げられる。例えばこのような従来の無毒の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの、およびアミノ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製される塩が挙げられる。
【0050】
本発明の薬学的に許容可能な塩は、従来の化学的手法によって、塩基性または酸性部分を含有する親治療化合物から合成できる。一般にこのような塩は、水中または有機溶剤中、または両者の混合物中で、これらの化合物の遊離酸または塩基形態と所定量の適切な塩基または酸とを反応させて調製できる。一般に非水性媒体が好ましい。適切な塩の一覧は、その開示を参照によって本明細書に援用する非特許文献4に記載されている。
【0051】
「薬学的に許容可能」という語句は、ここで良識的な医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題または合併症なしに、合理的な利点/リスク比と釣り合う、ヒトおよび動物組織と接して使用するのに適する、化合物、材料、組成物、および/または剤形に言及するために用いる。
【0052】
各錠剤に組み込まれる治療化合物の量は、既知の薬学原理に従って選択されてもよい。治療的化合物の有効量は、具体的に考察される。有効量という用語は、例えば医薬品に関しては、薬学的有効量が考察されるものと理解される。薬学的有効量は、必要とされるまたは所望の治療的応答を誘発するのに十分な薬剤または薬学的活性物質の量または分量であり、または換言すれば、患者に投与されると感知できる生物学的応答を誘発するのに十分な量である。
【0053】
本発明の特定の実施態様は、病的骨再吸収増大によって特徴づけられる疾患を治療するため、特に骨粗鬆症を治療するためのビスホスホン酸を含有する医薬組成物、特に(1−ヒドロキシ−3−(N−メチル−N−ペンチル)アミノプロピリデン−1、1−ビスホスホン酸(イバンドロン酸)または薬学的に許容可能なその塩の調製に関する。より具体的には本発明は、医薬組成物を調製するホットメルト顆粒化法に関し、医薬組成物それ自体、および病的骨再吸収増大によって特徴づけられる疾患を治療するため、特に骨粗鬆症を治療するためのこれらの医薬組成物の使用に関する。
【0054】
以下の実施例は、本発明を例示する目的で提供され、本発明の範囲と趣旨を決して限定するものではない。
【実施例】
【0055】
実施例1
本実施例中のおよび本発明の組成物の作製に先立つステアリン酸のホットメルト顆粒化は、次の工程によって実施した。
【0056】
【表1】

【0057】
次に顆粒化ステアリン酸を使用して、次の組成物を調製した。
【0058】
【表2】

【0059】
上の組成物を調製するために使用した工程は、次のとおりである。
A:イバンドロン酸ナトリウム一水和物IBA/0010406および乳糖一水和物NF#315DCを別々に#30メッシュに通して、5分間混合する。
B:プラスドンS630、微結晶性セルロースNF(アビセル(Avicel)PH200)、およびクロスポビドンNFおよびステップAからの混合物を#30メッシュを通して予備篩がけし、プラスドンS630、微結晶性セルロースNF(アビセル(Avicel)PH200)、およびクロスポビドンNFをステップAからの混合物の間に挟んで、適切なV−ブレンダー内で10分間混合する。
C:コロイド二酸化ケイ素およびステアリン酸顆粒(PEG6000+ステアリン酸)を#30メッシュを通して予備篩がけしてステップBからの混合物に添加し、適切なV−ブレンダー内で5分間混合する。
D:適切な打錠プレスで圧縮する。
【0060】
得られた錠剤を分析したところ、重量の変動に関して問題がなく、脆砕性問題もないことが分かった。10個の錠剤サンプルを錠剤硬度について試験した。硬度は8.0〜9.1Kpの範囲と測定され、これは8.4Kpの標的硬度と良好に一致した。これらの結果は、ステアリン酸を本発明に従った顆粒として提供すれば、医薬組成物中で高濃度のステアリン酸が使用できるという事実を示唆する。
【0061】
実施例2
本実施例中のおよび本発明の組成物の作製に先立つステアリン酸のホットメルト顆粒化は、次の工程によって実施された。
【0062】
【表3】

【0063】
次にカプセル化したステアリン酸を使用して、次の組成物を調製する。
【0064】
【表4】

【0065】
上の組成物を調製するために使用した工程は、次のとおりである。
A:イバンドロン酸ナトリウム一水和物IBA/0010406および乳糖一水和物NF#315DCを別々に#30メッシュに通して、5分間混合する。
B:プラスドンS630、微結晶性セルロースNF(アビセル(Avicel)PH200)、およびクロスポビドンNFおよびステップAからの混合物を#30メッシュを通して予備篩がけし、プラスドンS630、微結晶性セルロースNF(アビセル(Avicel)PH200)、およびクロスポビドンNFをステップAからの混合物の間に挟んで、適切なV−ブレンダー内で10分間混合する。
C:コロイド二酸化ケイ素およびステアリン酸顆粒(8%HPMCE5+ステアリン酸)を#30メッシュを通して予備篩がけしてステップBからの混合物に添加し、適切なV−ブレンダー内で5分間混合する。
D:適切な打錠プレスで圧縮する。
【0066】
得られた錠剤を分析したところ、重量の変動に関して問題がなく、脆砕性問題もないことが分かった。10個の錠剤サンプルを錠剤硬度について試験した。硬度は6.5〜7.2Kpの範囲と測定され、これは7〜8Kpの標的硬度と同程度であった。これらの結果は、ステアリン酸を本発明に従った顆粒として提供すれば、医薬組成物中で高濃度のステアリン酸が使用できるという事実を示唆する。
【0067】
本明細書で言及される全ての公報、特許、および特許出願は、本発明に関係がある当業者の技術レベルの目安であり、それぞれの公報、特許、および特許出願が具体的に個々に援用されたかのように、その内容全体を参照によって本明細書に援用するものとする。
【0068】
以上、本発明を説明したが、本発明が多様に変更されてもよいことは明らかである。このような変更は本発明の要旨と範囲からの逸脱とは見なされず、当業者には明らかであるように、このような全ての変更は以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)潤滑剤およびホットメルトバインダーを含んでなる溶融混合物を調製するステップと、
(b)溶融混合物を冷却させるステップと、
(c)冷却混合物を粉砕して顆粒を形成するステップと
を含んでなる潤滑剤顆粒を調製する方法。
【請求項2】
ホットメルトバインダーが、非水性溶剤またはポリエーテルグリコール中のアカシア、トラガカント、ゼラチン、デンプン、セルロースエーテル、微結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、アルギン酸およびその塩、ポリエチレングリコール、グアーガム、多糖類、ベントナイト、糖、転化糖、ポロキサマー、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、セルロース系材料の1つ以上を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホットメルトバインダーがポリエチレングリコールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ホットメルトバインダーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
潤滑剤が、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、滑石、コロイド二酸化ケイ素、水素化または部分的水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、動物性脂肪、ポリオキシエチレンモノステアリン酸、軽油、ラウリルリン酸ナトリウム、酸化マグネシウムまたは酢酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
潤滑剤がステアリン酸であり、ホットメルトバインダーがポリエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
潤滑剤がステアリン酸であり、ホットメルトバインダーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の薬学的バインダー、希釈剤または崩壊剤が冷却に先だって溶融混合物に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
微結晶性セルロースの水性分散体が冷却に先だって溶融混合物に添加される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって調製される潤滑剤顆粒。
【請求項11】
ポリエチレングリコール、ステアリン酸、および微結晶性セルロースを含んでなる、請求項9に記載の方法によって調製される潤滑剤顆粒。
【請求項12】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸、および微結晶性セルロースを含んでなる、請求項10に記載の潤滑剤顆粒。
【請求項13】
微結晶性セルロースがアビセル(Avicel)PH102である、請求項11または12に記載の潤滑剤顆粒。
【請求項14】
活性医薬品成分(API)および請求項10〜13のいずれか一項に記載の潤滑剤顆粒を含んでなる医薬組成物。
【請求項15】
APIがビスホスホン酸または薬学的に許容可能なその塩である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ビスホスホン酸がイバンドロン酸である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
APIがイバンドロン酸ナトリウムである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
潤滑剤の量が医薬組成物の総重量の5重量%を超える、請求項14〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
潤滑剤の量が医薬組成物の総重量の9重量%を超える、請求項14〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
潤滑剤の量が医薬組成物の総重量の15重量%を超える、請求項14〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
固形経口医薬品として調製され、該固形経口医薬品は錠剤またはカプセルである、請求項14〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
イバンドロン酸ナトリウム一水和物、請求項11に記載の潤滑剤顆粒、乳糖一水和物、プラスドン、微結晶性セルロース、クロスポビドン、およびコロイド二酸化ケイ素からなる医薬組成物。
【請求項23】
イバンドロン酸ナトリウム一水和物、請求項12に記載の潤滑剤顆粒、乳糖一水和物、プラスドン、微結晶性セルロース、クロスポビドンおよびコロイド二酸化ケイ素からなる医薬組成物。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物を患者に投与するステップを含んでなる、骨再吸収増大に関連する疾患を治療する方法。
【請求項25】
前記疾患が、骨粗鬆症、高カルシウム血症、腫瘍骨溶解症またはパジェット病である、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513329(P2010−513329A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541714(P2009−541714)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/CA2007/002314
【国際公開番号】WO2008/074145
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(507324773)ミラン ファーマシューティカルズ ユーエルシー (4)
【Fターム(参考)】