説明

ホットランナ装置

【課題】 本発明は、ノズルと金型との間の距離が短くても温度差を大きくとることのできるホットランナ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 金型2に取り付けられて、溶融樹脂を金型2のキャビティ6に注入するためのホットランナ装置は、金型2に対して押し付けられながら樹脂を注入するノズル本体20と、ノズル本体20と金型2との間に設けられた断熱部材30,40,50とを有する。断熱部材は、第1の接触部においてノズル本体20と接触し、且つ第2の接触部において金型2と接触する。第1の接触部と第2の接触部の間の断熱部材に沿った伝熱流路の長さは、ノズル本体20と金型2との間の直線距離より長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットランナ装置に係り、特に熱可塑性樹脂の射出成形に用いられるホットランナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の射出成形に用いられるホットランナ装置は、金型キャビティ内への樹脂の充填を迅速にし、かつ成形品にランナが形成されることを防止するための装置である。ランナの形成が防止できることで、成形後にランナを除去する手間が省け、成形効率を高めることができる。
【0003】
ホットランナ装置では、ノズル本体部をヒータで加熱することで、ノズル内の樹脂は高温溶融状態に保持される。一方、金型キャビティ内に充填された樹脂は、取り出し可能な温度(固化する温度)になるように迅速に冷却される必要があり、金型のキャビティ周囲は低温になるように冷却されている。したがって、ノズルが金型に接触するゲート位置に対して、キャビティ側の金型は樹脂の固化温度以下となり、ホットランナ装置のノズルは樹脂の溶融温度以上となるように温度制御が行われる。
【0004】
例えば、一般的に、金型の冷却温度は100℃以下であり、樹脂の溶融温度は200℃以上である。このような場合、ゲート位置をはさんで微小な距離の間で100℃以上の大きな温度差を維持する必要がある。
【0005】
ホットランナ装置では、型開き時に樹脂が漏れないようにゲートを開閉する必要があるがある。ゲート開閉方法として、なんら開閉機構を設けずに固化した樹脂でゲート孔に蓋をするオープンゲート方式、及び機械的にバルブをゲート孔に挿入して閉じるバルブゲート方式がある。近年は、バルブゲート方式が用いられる場合が多い。
【0006】
上記いずれの方式においても、ゲートを介して流入する溶融樹脂の圧力がかかってもゲートから外部へ溶融樹脂が漏れないように、ノズル部分は金型に強く押し付けられている。したがって、ノズル本体と固定金型とは、金属部品同士が接触している箇所があり、この接触部分を通じた熱伝導により、キャビティ側の温度上昇、及びノズル側の温度低下が起こるという問題があった。
【0007】
キャビティ側の金型温度が高くなると、所定の時間内に樹脂が十分冷却・固化されず、型開き時に糸引き現象が生じるおそれがある。また、ノズル本体の温度が低くなると、ノズル内の溶融樹脂の一部が固化し、この固化した樹脂は次の樹脂充填時に溶融樹脂により溶かされて一緒にキャビティに充填される。ところが、固化した樹脂の量が多いと溶融されずにキャビティ内に入ってしまうおそれがある。このすでに固化した樹脂がキャビティ内に入ると、例えばペットボトル用のプリフォーム材を形成するような場合、白化現象が生じる要因となってしまう。
【0008】
近年、成形効率をあげるために、冷却時間を短縮して成形サイクルを短縮する傾向にある。このためには、金型温度をより低く設定して冷却時間を短縮する必要がある。したがって、ホットランナ装置のノズルと金型キャビティとの間の温度差は益々大きくなっている。これにより、従来は大きな問題とはなっていなかったノズル本体と固定金型との温度差をいかに適切な値に維持するかが課題となっている。
【0009】
従来の技術としては、ノズルの先端を直接金型に接触させるが、この部分の金型を熱伝導率の小さい材料する方法、ノズルの先端は金型に接触させず、ノズル先端から離れた位置で接触させる方法などがある。前者はノズルの先端が直接冷えてしまう欠点がある。一方、後者は大きく離すと構造が大きくなってしまうことや、樹脂漏れが避けられないという問題がある。
【0010】
そこで、ノズルの周囲にシールリングを設けて、漏れ出る樹脂を隙間内に封じ込めて樹脂を断熱層として機能させることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、この特許文献1には、ノズルと金型との間に空気断熱用間隙を設けて、ノズルと金型との断熱を図る技術も開示されている。
【0011】
また、ノズルの周囲に設けたシールリングの形状を、ノズルの芯ずれが少なくなるような形状にしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第2842240号公報
【特許文献2】特許第3160890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1及び2に記載の方法は、シールリングまでの隙間が比較的大きく、この隙間に漏れ出た樹脂を取り除くためのメンテナンス作業が煩雑であるといった問題がある。また、この隙間を小さくするためにシールリングの径を小さくすると、ノズル本体の熱が金型に伝達し易くなるといった問題がある。
【0013】
このような問題を解決するために、ノズルの先端を金型に直接接触させるが、ノズルのごく先端に小型ヒータを組み込み、ゲートを閉じた後、固化したノズル内の樹脂を次の充填の直前に小型ヒータにより再溶融させる方法が考えられる。しかし、ノズルのごく先端に小型ヒータを組み込むには、ノズルの構造が複雑となり、高価な装置となるといった問題がある。
【0014】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、ノズルと金型との間の距離が短くても温度差を大きくとることのできるホットランナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、金型に取り付けられて、溶融樹脂を該金型のキャビティに注入するためのホットランナ装置であって、前記金型に対して押し付けられながら樹脂を注入するノズル本体と、該ノズル本体と前記金型との間に設けられた断熱部材とを有し、前記断熱部材は、第1の接触部において前記ノズル本体と接触し、且つ第2の接触部において前記金型と接触し、前記第1の接触部と前記第2の接触部の間の前記断熱部材に沿った伝熱流路の長さは、前記ノズル本体と前記金型との間の直線距離より長いことを特徴とするホットランナ装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノズル本体と金型との間に断熱部材が設けられるため、ノズル本体と金型との間に大きな温度差を設けることができる。したがって、ノズル本体の温度を樹脂の溶融温度に保ちながら、金型の温度を低減することができる。これにより、冷却時間が短縮され、成型サイクルを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明が適用可能なホットランナ装置について図1を参照しながら説明する。図1は本発明が適用可能なホットランナ装置の全体構成を示す断面図である。
【0018】
図1に示すホットランナ装置は、バルブゲート式ホットランナ装置であり、固定金型2に取り付けられるよう構成されている。固定金型2は可動金型4と共に、溶融樹脂が注入されるキャビティ6を形成する。ホットランナ装置は、ノズル部8と、ノズル部8に溶融樹脂を供給する樹脂供給部10と、ゲートを開閉するためのバルブピン12を駆動するための駆動部14とを有する。
【0019】
ノズル部8は、溶融樹脂の通路が形成されたノズル本体20と、ノズル本体20の周囲に設けられてノズル本体20を加熱するヒータ22とを有する。ノズル本体20の中心には溶融樹脂の通路20aが形成され、通路20a内にバルブピン12が延在している。バルブピン12の先端は、金型2のキャビティに繋がるゲート孔2aを開閉する弁として機能する。
【0020】
バルブピン12は樹脂供給部10を貫通して延在し、その上端は駆動部14のシャフト14aに接続されている。駆動部14は油圧シリンダを構成しており、シャフト14aを油圧により駆動することができる。したがって、駆動部14のシャフト14aを駆動することで、バルブピン12を駆動することができる。これにより、固定金型2のゲート孔2aを開閉することができる。なお、駆動部14には2つの油圧シリンダが直列に形成されている。上側の油圧シリンダを駆動することで、バルブピン12を上下に往復動させることができる。また、下側の油圧シリンダを駆動することで、バルブピン12でゲート孔2aを閉じた際にさらに押圧力をバルブピン12に加えることができる。
【0021】
溶融樹脂をキャビティ6に注入する際には、バルブピン12を上昇させてゲート孔2aを開くことにより、通路20aから溶融樹脂がゲート孔2aを通じてキャビティ6に流れ込む。キャビティ6に溶融樹脂が充填されたら、バルブピン12は下降され、バルブピン12の先端がゲート孔2aに挿入されることで、ゲート孔2aが閉じられる。この状態では、バルブピン12の先端は、キャビティ6に僅かに突出した状態、若しくはキャビティ6の外周面と同一面で停止した状態となる。さらに、バルブピン12の進退方向に成形品を取り出す金型に用いる場合には、バルブピン12とゲート孔2aがオーバーラップした状態で、バルブピン12の先端をキャビティ6よりも引き込まれた位置において停止させてもよい。
【0022】
図1において、ノズル部8のノズル本体20は、固定金型2に取り付けられる。ノズル本体20の下端部と固定金型2との間には、金属製のシールリング24が設けられる。シールリング24は、ノズル本体20が固定金型2に取り付けられた際にノズル本体20と固定金型2の間に挟まれて、溶融樹脂をシールするために設けられる。シールリング24は、溶融樹脂が流れるために高温に維持されたノズル本体20と、溶融樹脂を固化させるために低温に維持された固定金型2との両方に接触するため、ノズル本体20の熱はシールリング24を伝って固定金型2に移動する。したがって、シールリング24の両側での温度差を大きくとるには、熱がシールリング24を伝導する際の温度勾配を小さくする必要がある。すなわち、シールリング24を熱伝導率の小さい材料で形成することが好ましい。
【0023】
ここで、シールリング24に関して詳細に説明する。図2は図1におけるシールリング24が設けられた部分の近傍を示す拡大断面図である。
【0024】
上述のように、シールリング24は、ノズル本体20と固定金型2との間に配置されて、スペーサとして機能する。また、シールリング24はノズル本体20を固定金型2に取り付ける際に位置決めの機能も有する。すなわち、ノズル本体20を固定金型2のゲート孔2aに対して精度よく位置決めすることにより、バルブピン12の先端がノズルから突出した際に、バルブピン12の先端を固定金型のゲート孔2aに精度よく嵌合させてゲート孔2aを閉じることができる。なお、溶融樹脂をキャビティ6に充填している間は、バルブピン12は後退しているので(図2では上昇)、溶融樹脂はノズル本体20と固定金型2との間の隙間26に漏れ出る。
【0025】
ノズル本体20は高温に保持されるに対して、固定金型2はキャビティ6内の樹脂を冷却・固化させるために、冷却水路(図示せず)を流れる冷却水により冷却され、低温に維持されている。したがって、バルブピン12によりゲート孔2aを閉じたとき、バルブピン12の先端も低温の固定金型2に接触して温度が低下する。またシールリング24を通しての伝熱によっても、ノズル本体20の先端部分の温度は低下する傾向にある。
【0026】
したがって、ヒータ22の熱が十分先端まで達しない場合には、ノズル本体22の先端部分の温度低下によって、溶融樹脂の通路20aの先端付近で樹脂が固化するおそれがある。また、反対に、シールリング24を介してノズル本体20やヒータ22の熱が固定金型2に流れて固定金型が加熱されてしまい、キャビティ6内の樹脂の冷却・固化が遅くなるおそれもある。
【0027】
以上のような問題を回避するため、シールリング24にはできるだけ熱伝導率の小さな材料が用いられるが、シールリング24には強度も要求されるので、金属以外の材料を用いることには限界がある。また、シールリング24の径を大きくしてゲート位置から離れた位置にすることは、構造上の制約があり、ノズル径以上にはできない。また、隙間26が大きくなると樹脂の漏れ量が多くなり、保守が難しくなる。
【0028】
また、ヒータ22はできるだけノズル本体20の先端部分まで設けることが好ましいが、その熱がシールリング24を介して固定金型2に流れて温度を上昇させるおそれがあり、ヒータ22を設ける位置は、シールリング24の手前までが限界である。
【0029】
ヒータ22により加熱されたノズル本体20の熱は、シールリング24を介して低温の固定金型2に伝達される。ここで、熱伝導により移動する単位時間当たりの熱量qは、熱伝導率kと温度勾配dT/dx(温度差/距離)に比例することが知られている。したがって、ノズル本体20から固定金型2に伝達される熱量を小さくするには、シールリング24の熱伝導率を小さくするか、温度勾配を小さくすればよい。
【0030】
シールリング24は、ノズル本体20と固定金型2との間で押圧されるため、剛性及び強度も必要である。したがって、シールリング24の材料として、比較的脆いセラミックなどを用いることはできず、金属を用いることとなり、熱伝導率を大幅に小さくすることは難しい。また、ノズル本体20の外形は30mm程度と小さく、ノズル本体20を取り付ける部分には大きなスペースを確保することができないため、シールリング24の寸法を大きくして温度勾配を小さくする(すなわち、距離を大きくする)ことも難しい。
【0031】
そこで、本発明では、限られたスペース内でシールリングの形状を工夫することで、シールリングによる伝熱距離を長くし、温度勾配を小さくして熱伝導を小さくし、断熱部材として用いている。これにより、ノズル本体20の先端部分の温度低下や、固定金型2の温度上昇を抑制することができ、ノズル本体20の先端部分と固定金型2との間の温度差を大きく維持することができる。
【0032】
次に、本発明の第1実施例によるホットランナ装置について、図3を参照しながら説明する。図3は本発明の第1実施例によるホットランナ装置のシールリングが設けられた部分の拡大断面図である。本発明の第1実施例によるホットランナ装置は、シールリングの形状を工夫したものであり、シールリング以外の部分は図1に示すホットランナ装置と同等であり、その説明は省略する。
【0033】
図3において、断熱部材として機能するシールリング30は、図2に示すシールリング24に比較すると、その断面が細長い形状となっており、伝熱流路の幅が小さくなっている。なお、図3は断面図であるので、シールリング30全体の形状は、中空の円錐を輪切りにしたような形状である。
【0034】
シールリングには位置合わせ機能も必要であるため、シールリング30の一端30aは垂直方向と水平方向でノズル本体20に接触し、且つ他端30bも垂直方向と水平方向で固定金型2に接触する。シールリング30の一端30aがノズル本体20に接触する部分を第1の接触部とし、シールリング30の他端30bが固定金型2に接触する部分を第2の接触部とすると、第1の接触部と第2の接触部との間の距離L1は、ノズル本体20の外周と固定金型2の内周との間の距離L0より長くなっている。したがって、シールリング30により形成される伝熱流路の長さ(L1に相当する)は、図2に示すシールリング24の伝熱流路の長さ(L0に相当する)より長くなっており、シールリング30における温度勾配が小さくなっている。
【0035】
また、図3に示すシールリング30と図2に示すシールリング24とを比較すると、図3に示すシールリング30のほうが、断面における伝熱流路の幅が狭くなっている。したがって、図3に示すシールリング30のほうが、伝熱流路の面積が小さく、熱抵抗が大きくなっているため、両端30a、30b間の温度差を大きくすることができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施例によるホットランナ装置について、図4を参照しながら説明する。図4は本発明の第1実施例によるホットランナ装置のシールリングが設けられた部分の拡大断面図である。本発明の第2実施例によるホットランナ装置は、シールリングの形状を工夫したものであり、シールリング以外の部分は図1に示すホットランナ装置と同等であり、その説明は省略する。
【0037】
図4において、断熱部材として機能するシールリング40は、図2に示すシールリング24に比較すると、断面において外周側からと内周側から細い溝42,44が形成されている。これにより、シールリング40は、断面において細長い部分がUターンを2回繰り返して蛇行した形状となっており、その一端40aは垂直方向と水平方向でノズル本体20に接触し、且つ他端40bも垂直方向と水平方向で固定金型2に接触している。
【0038】
シールリング40の一端40aがノズル本体20に接触する部分を第1の接触部とし、シールリング40の他端40bが固定金型2に接触する部分を第2の接触部とすると、第1の接触部と第2の接触部との間のシールリング40に沿った距離L2は、ノズル本体20の外周と固定金型2の内周との間の距離L0より長くなっている。したがって、シールリング40により形成される伝熱流路の長さ(L2に相当する)は、図2に示すシールリング24の伝熱流路の長さ(L0に相当する)より長く、約3倍の長さとなっており、シールリング40における温度勾配は約1/3となっている。
【0039】
以上のように、図2に示すシールリング24に比較すると、本実施例によるシールリング40は、同じスペースに入る形状でありながら、伝熱流路を約3倍の長さにすることができ、温度勾配を約1/3と小さくすることができる。
【0040】
なお、シールリング40は小さな円環状の部材であるため、溝42,44を形成することが難しい場合は、以下の第3実施例のように、シールリング40をいくつかの部分に分割して形成してから組み立てることとしてもよい。
【0041】
次に、本発明の第3実施例によるホットランナ装置について、図5を参照しながら説明する。図5は本発明の第3実施例によるホットランナ装置のシールリングが設けられた部分の拡大断面図である。本発明の第3実施例によるホットランナ装置は、シールリングの形状を工夫したものであり、シールリング以外の部分は図1に示すホットランナ装置と同等であり、その説明は省略する。
【0042】
図5において、断熱部材として機能するシールリング50は、図4に示すシールリング40を90°回転させたように、断面において細長い部分が縦方向にUターンを2回繰り返して蛇行した形状となっており、その一端50aは垂直方向と水平方向でノズル本体20に接触し、且つ他端50bも垂直方向と水平方向で固定金型2に接触している。
【0043】
シールリング50の一端50aがノズル本体20に接触する部分を第1の接触部とし、シールリング50の他端50bが固定金型2に接触する部分を第2の接触部とすると、第1の接触部と第2の接触部との間のシールリング50に沿った距離L3は、ノズル本体20の外周と固定金型2の内周との間の距離L0より長くなっている。したがって、シールリング40により形成される伝熱流路の長さ(L3に相当する)は、図2に示すシールリング24の伝熱流路の長さ(L0に相当する)より長く、シールリング50における温度勾配も小さくなっている。
【0044】
シールリング50は、図5に示すように3つの部分に分割されており、この3つの部分が組み合わされて一つのシールリング50が形成される。このように複数の部分に分割してシールリングを形成することで、複雑な形状のシールリングを容易に形成することができる。
【0045】
また、シールリング50は、複数のリングを重ね合わせて全体の形状として縦方向にUターンした形状となっており、縦及び横方向からの荷重に対して変形しにくい形状である。したがって、ノズル本体20が固定金型2に向けて大きな荷重で押圧されても、シールリング50の変形は小さく抑制され、固定金型2に対するノズル本体20の位置を精度よく維持することができる。
【0046】
図6は図5におけるシールリング50の一部を拡大した断面図である。図6に示されたシールリングの一部は、シールリング50を形成する一つの部分と他の部分との接続部である。シールリング50を形成する一つの部分の断面における幅をx1とすると、接続部での接触部分の幅に相当するx2は、x1よりも小さくなっている。これは、シールリング50により形成される伝熱流路の面積が、接続部において小さくなっていることを意味する。したがって、接続部において熱抵抗が大きくなり、シールリング50の両端50a,50b間の温度差を大きくすることができる。
【0047】
以上のように、上述の各実施例によれば、ノズル本体20と固定金型2との間に断熱部材として機能するシールリング30,40,50が設けられるため、ノズル本体20と固定金型2との間に大きな温度差を設けることができる。したがって、ノズル本体20の温度を樹脂の溶融温度に保ちながら、固定金型2の温度を低減することができる。これにより、冷却時間が短縮され、成型サイクルを短縮することができる。
【0048】
なお、上述の各実施例は、バルブゲート方式のホットランナ装置として説明したが、本発明はオープンゲート方式のホットランナ方式にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明が適用可能なホットランナ装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すシールリングが設けられた部分の近傍を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施例によるホットランナ装置のシールリングが設けられた部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施例によるホットランナ装置のシールリングが設けられた部分の拡大断面図である。
【図5】本発明の第3実施例によるホットランナ装置のシールリングが設けられた部分の拡大断面図である。
【図6】図5におけるシールリングの一部を拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0050】
2 固定金型
2a ゲート孔
4 可動金型
6 キャビティ
8 ノズル部
10 樹脂供給部
12 バルブピン
14 駆動部
20 ノズル本体
22 ヒータ
24,30,40,50 シールリング
26 隙間
42,44 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に取り付けられて、溶融樹脂を該金型のキャビティに注入するためのホットランナ装置であって、
前記金型に対して押し付けられながら樹脂を注入するノズル本体と、
該ノズル本体と前記金型との間に設けられた断熱部材と
を有し、
前記断熱部材は、第1の接触部において前記ノズル本体と接触し、且つ第2の接触部において前記金型と接触し、
前記第1の接触部と前記第2の接触部の間の前記断熱部材に沿った伝熱流路の長さは、前記ノズル本体と前記金型との間の直線距離より長いことを特徴とするホットランナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のホットランナ装置であって、
前記断熱部材の断面は蛇行した形状であることを特徴とするホットランナ装置。
【請求項3】
請求項2記載のホットランナ装置であって、
前記断熱部材は円環状の部材に円周状の溝が形成された部材であることを特徴とするホットランナ装置。
【請求項4】
請求項2記載のホットランナ装置であって、
前記断熱部材は複数の部材が組み合わされて形成されていることを特徴とするホットランナ装置。
【請求項5】
請求項1記載のホットランナ装置であって、
前記断熱部材の前記伝熱流路の幅は不均一であることを特徴とするホットランナ装置。
【請求項6】
請求項5記載のホットランナ装置であって、
前記断熱部材は複数の部材が組み合わされて形成されており、
前記伝熱流路は該複数の部材にまたがって形成され、
隣接する前記部材同士の接触部の幅は、前記部材の各々に形成された伝熱流路の幅より小さいことを特徴とするホットランナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−302665(P2008−302665A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154155(P2007−154155)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】