説明

ホテルの部屋の省エネ装置

【課題】利用者(宿泊者)は、カードキー又はICタグのいずれかを選択することができること。
【解決手段】 ホテルの部屋の解錠を行うためのカードキーと、部屋内に設置され、かつカードキーを着脱自在に保持するカードホルダーとを備え、カードキーがカードホルダーに挿入されると該ガードホルダーに設けられたカード挿入検知スイッチを介して部屋内の照明灯が点灯可能になるホテルの部屋の省エネ装置に於いて、カードホルダーにICタグと無線通信によって情報のやり取りをする照明起動用リーダーを含む照明制御部を設け、該照明起動用リーダーは、利用者の携帯電子機器を鍵として部屋のオートロックを解錠した態様であっても、ICタグが検知範囲内に存在する限り、該ICタグと情報のやりとりをし、一方、照明制御部は、照明起動用リーダーから受け取った情報に基づいて前記照明灯を点灯するように制御するホテルの部屋の省エネ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿泊施設の一例であるホテルの部屋の省エネ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カード用スイッチ装置が記載されている。このカード用スイッチ装置は、カードの抜き差しでホテル等の室内(部屋)の照明、エアコン等をオン又はオフするものである。特許文献1の第1図、第2図及び第3図は、本発明の実施例形態のカードホルダーの構造と同様である(但し、本発明の新規事項は除く)。
この種のカード用スイッチ装置は、当業者の間では、「カードホルダー」と称され、部屋内の照明等を点灯・消灯をすることができるのみならず、前記カードを電気錠用のキー(鍵)としても使用することができる「いわゆるカードシステム」として、主にホテルで実用化されている。
【0003】
また、特許文献2や特許文献3に記載の「カードホルダー」は、特許文献1と同様にケースの上部に設けられたカード挿入口から、カードキーを挿入する構造である。
また、特許文献4や特許文献5には、「ICタグ」を用いて錠前を解錠(開錠)できる事項が記載されているものの、「ICタグ」と特許文献1、特許文献2等の記載の「カードホルダー」とを組み合わせてホテルの室内(部屋)の照明、エアコン等をオンする事項は記載されていない。
【0004】
さらに、特許文献6や特許文献7には、「携帯電話」を用いて錠前を解錠(開錠)できる事項が記載されている。携帯電話をホテルの部屋の鍵として利用する場合には、前述した「いわゆるカードシステム」の「カードキー」をフロントから貰わなければ、カードホルダーを利用することができない、という難点がある。何故ならば、薄板のカードキーをカードホルダーのカード挿入口に差し込むことはできるが、肉厚の携帯電話は、既設型のカードホルダーのカード挿入口し込むことはできないからである。したがって、ホテルの部屋の省エネ装置に対する利用者の選択が狭まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−33928号公報
【特許文献2】特開2007−120066号公報
【特許文献3】特開2007−293073号公報
【特許文献4】特開平9−270011号公報
【特許文献5】特開2003−132435号公報
【特許文献6】特開2006−34544号公報
【特許文献7】特開2008−138467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の所期の目的は、従来のカードキーシステムをそのまま使用することができると共に、時代の流れで、例えばFelica(登録商標)機能を有する携帯電子機器(少なくともカードキーと同等の機能を有する携帯電話機)が、ホテルの部屋の鍵として利用されるようになってきた実情に伴い、従来技術型(公知)のカードキーをカードホルダーに差し込まなくても、カードホルダーを利用しつつ少なくとも部屋内の照明灯が点灯可能になるホテルの部屋の省エネ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホテルの部屋の省エネ装置は、ホテルの部屋の解錠を行うためのカードキーと、部屋内に設置され、かつカードキーを着脱自在に保持するカードホルダーとを備え、少なくともカードキーがカードホルダーに挿入されると該ガードホルダーに設けられたカード挿入検知スイッチを介して部屋内の照明灯が点灯可能になるホテルの部屋の省エネ装置に於いて、前記カードホルダーに直接又は間接的にICタグと無線通信によって情報のやり取りをする照明起動用リーダーを含む照明制御部を設け、該照明起動用リーダーは、利用者の携帯電子機器を鍵として部屋のオートロックを解錠した態様であっても、該利用者が所持する物との関係で前記ICタグが検知範囲内に存在する限り、該ICタグと情報のやりとりをし、一方、前記照明制御部は、前記照明起動用リーダーから受け取った情報に基づいて前記照明灯を点灯するように制御する。
【0008】
上記構成に於いて、照明起動用リーダーは、その発信電波が中出力型UHF帯又は高出力型UHF帯のいずかであり、またカードホルダーは、利用者が操作するための使用開始スイッチを備え、照明制御部は、利用者が前記該使用開始スイッチを操作すると、その作動を開始することを特徴とする。また照明起動用リーダーは、定期的にICタグが検知範囲内に存在するか否か確認し、ICタグが検知範囲内に存在しない場合に於いて、カードホルダーは、その照明制御部よって省エネスイッチを作動させて部屋内の照明灯を消す初期状態へと戻すことを特徴とする。また照明起動用リーダーは、部屋内に検知範囲が重なるように少なくとも2個配設されていることを特徴とする。さらに、ホテルの部屋の開閉体付近の壁には親機としてのカードホルダーが設けられ、この親機に対して所要間隔を有して子機としての照明起動用リーダーを含む照明制御部がさらに前記部屋内に配設されており、前記子機が複数個の場合に於いて、後順位の子機がICタグからの信号を受信した場合には、先順位の子機に対してリレー方式で受信した旨を伝達することを特徴とする。このような実施例の場合には、複数の子機をハブ方式で接続し、中心の子機が手を繋ぐ他の子機からICタグからの信号を受信した旨の信号を受け取った場合には、親機に対してその旨を伝達するようにしても良い。加えて、ホテルのフロントの存在する階にセンター処理部と接続するICタグ発行部が設けられて、該ICタグ発行部から発行されたICダグは、望ましくは利用者(宿泊者)が所持する携帯電子機器、ポーチ、セカンドバック等に添付(例えば貼付)されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(a)従来のカードキーシステムをそのまま使用することができると共に、時代の流れで、例えばFelica(登録商標)機能を有する携帯電子機器(少なくともカードキーと同等の機能を有する携帯電話機)が、ホテルの部屋の鍵として利用されるようになってきた実情に伴い、従来技術型(公知)のカードキーをカードホルダーに差し込まなくても、カードホルダーを利用しつつ部屋内の照明灯が点灯可能になるホテルの部屋の省エネ装置を提供することができる。また、可能な限り、既設のカードキーシステムに用いられるカードキーよりも安価な記憶媒体を活用することができる。また、利用者(宿泊者)は、カードキー又はICタグのいずれかを選択することができるので、従来のカードキーシステムをそのまま使用しても選択の幅は狭まらない。
(b)利用者(宿泊者)が扉を開けると、ICタグが照明起動用リーダーの検知範囲内であれば、携帯電子機器、ポーチ等を照明起動用リーダー付近に設けた特定の載置場所の置かなくても、或いはカードホルダーの挿入口に差し込まなくても、直ちに部屋内の照明灯が点灯する。
(c)実施形態によっては、照明起動用リーダーの検知範囲を広げ、例えばビジネスホテルの部屋内に設置されたベッドの枕もと、デスク等に携帯電子機器を置いても、ICタグとの通信が可能である。
(d)実施形態によっては、部屋を利用しない間、省エネ装置を十分に発揮することができる(請求項2)。
(e)実施形態によっては、利用者が部屋から出て行ったか否かを確認し、省エネ効果を十分に発揮することができる(請求項3)。
(f)その他、既設のカードホルダーの美観を損なうことなく、既設のカードホルダーの設置箇所で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る省エネ装置Xを含む省エネ装置の全体構成図。
【図2】省エネ装置に関連するカードキー発行部、ICタグ発行部等の要部の概念構造図。
【図3】カードホルダーの正面図。
【図4】カードホルダーの正面視からの概略説明図。
【図5】カードホルダーの縦断面概略説明図。
【図6】照明制御部、マイクロスイッチを含む主要部の概念構造図。
【図7】携帯電子機器で解錠する場合のフローチャート。
【図8】ICタグで点灯する場合のフローチャート。
【図9】消灯する場合の一例を示すフローチャート。
【図10】発信電波が中出力型UHF帯である場合の他の実施形態の要部構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)全体構成の説明
以下、本発明の実施形態をホテルへの適用を例にして、図面を参照しながら説明する。図1は実施形態に係る省エネ装置Xを含む全体構成図である。なお、当業者にとって周知事項の説明は極力割愛し、狭義乃至広義に解釈し得る用語については適宜に定義する。この図において、ホテルHのフロント1には、図示しないキーボードやマウス等の操作部および液晶ディスプレイ等の表示部が設置されているとともに、カード型の電子キー(この実施形態ではカードキー2と称する。)を発行するためのカードキー発行部3と、ICタグ4を発行するためのICタグ発行部5と、利用者(宿泊者)Aが所持する携帯電子機器(例えば携帯電話)6に対して電気錠用の解錠コードaを与えるための解錠コード発行部7とがそれぞれ設けられ、これらの各発行部3、5、7は、フロント1またはホテルH内の任意場所(たとえば、事務室等)に設置されたセンター処理部8に接続されている。
【0012】
ここで、カードキー2とは、例えば当業者にルームキー、ゲストカード等と称されるカード状の記憶媒体で、ホテルHの部屋10の電気錠11を解錠するために用いられる鍵のことをいう。電気錠11はホテルHの各部屋10を構成する開閉体(例えばドア)12の自由端部に取り付けられ、携帯電子機器6が保持する解錠コードaを読取るための解錠コード読取り部13、オートロック状態にある開閉体12を開くための開閉体施解錠部14等を備えている。
【0013】
また、ここで、ICタグ4とは、RFID(電波による個別識別体)のことをいい、本実施例では、パッシブタグ(受動型タグ)を用いている。もちろん、ICタグ4は、パッシブタグや能動型のアクティブタグ、或いは双方の組み合わせタグであっても良い。
【0014】
ところで近年、「UIDカード」が出現して実用化されている。UIDカードは、周知のように、UID(Unique Identification)コードやIDmコードと呼ばれる、全地球規模のユニーク性が保証されたIDコードが書き込まれたICチップ内蔵カードであるが、たとえば、我が国におけるFelica(フェリカ)カードやTaspo(タスポ)カードおよび一部のポイントカード、または、諸外国におけるMifare(マイフェア)カードなどがそのIDカードの実例である。これらの名称(Felica/Taspo/Mifare)は指定商品や指定役務によっては各社の登録商標である。また近年「おさいふケイタイ(登録商標)」と呼ばれる携帯電話が普及しつつある。そこで、錠前の技術分野に於いても、カードキー2は当然のことながら、前述したICタグ4を含め、UIDカードや、例えばFelica(登録商標)機能を有する携帯電子機器(少なくともカードキーと同等の機能を有する携帯電話機)6が、ホテルの部屋の鍵として利用されるようになってきている。本実施例の電気錠11は、このような時代の流れに対応して、カードID、ホテルコード、部屋番号、使用期間、発行日等を含む解錠コードaを保持するカードキー2のみならず、前記解錠コードaを保持する携帯電子機器6をそれぞれ用いて電気錠11を解錠することができる。
【0015】
図1及び図2で示すセンター処理部8は、コンピュータ(以下、CPU8a)を含むとともに、少なくとも、このCPU8aで実行する制御プログラムを記憶したプログラム記憶部8bと、カードID、ホテルコード、部屋番号、使用期間、発行日等にそれぞれ関連付けられたデータテーブルを記憶したデータテーブル記憶部8cとを有して構成されており、プログラム記憶部8bに記憶された制御プログラムをCPU8aで実行することにより、前記フロント1に設置されている各部(操作部1a、表示部1b、各発行部3、5、7)の動作を制御すると共に、ネットワークを介してそれぞれ接続する各部屋10の開閉体の電気錠11の動作を制御する。なお、図1では、ホテルHの部屋10は、説明の便宜上「一つ」のみ示しているが、当然、多数の客室(部屋)が存在し、号室の各々には、カードキー2や実施例の携帯電話機6の情報をそれぞれ読み取ってその読み取り情報をセンター処理部8に出力できる前述の解錠コード読取部13、開閉体施解錠部14等が設けられている。また、室内には、本発明の主要部である省エネ装置Xがそれぞれ設けられている。
【0016】
(2)省エネ装置X
図1及び図3乃至図6を参照にして、省エネ装置Xの主要部を説明する。20は部屋10の出入口付近の室内壁Wに垂直状態で固定されるカードホルダーである。このカードホルダー20の用語は当業者に普通名称的に用いられているが、ホテルの部屋10の解錠を行なうために部屋内の適宜箇所に設置され、少なくともカードキー2が挿入口を介して上方からケース内に差込まれると、該ケース内に内装されたカード挿入検知スイッチを介して部屋内の単数又は複数の照明灯21を点灯させる。
【0017】
しかして、22は後端開口のケースで、このケースの段差状上壁部分22aにはカード挿入口23が横方向に形成されている。また、ケース22の前壁22bの下部中央には押しボタン式スイッチ用の小孔24が形成されている。25はケースの後端開口を閉じる後壁で、この後壁25の適宜箇所には不番の取付け小孔が複数個形成されている。26は前記後壁に複数個の柱状連結具27、27を介して取付けられたスイッチ取付け板で、このスイッチ取付け板26の内壁面には、可動接片(作動片)28aを有する第1のマイクロスイッチ(カード挿入検知スイッチ)28が設けられている。前記可動接片28aはケース22の内壁面と後壁25の内壁面とで区画された内部空間29に不番の切欠を介して臨んでいる。
【0018】
30は後壁25の切欠縁より内部空間へと屈曲形成され、かつカード挿入口23から挿入されたカードキー2の挿入端部を支持するL型形状の支持片である。31は前記カードキー2を可動接片(作動片)28aに強制的に押し付けることができるように内部空間29に内装された板バネ等の弾発性部材で、この弾発性部材31は、上方の取り付け基端部が適宜にケースの22内壁面に固定されている。
【0019】
そして、本実施例のカードホルダー20は、例えばケース22の内部空間29の下部に第2のマイクロスイッチ33が内装されている。この第2のマイクロスイッチ33は、従来の第1のマイクロスイッチ28とは個別の押しボタン32式のスイッチであり、照明起動用リーダー35を含む照明制御部36を作動するためのもの(いわば使用開始スイッチ)である。本実施例では、照明起動用リーダー35は、ケース22の内壁面に固定された状態でかつ前記押しボタン32の先端部が小孔24から多少突出するように内部空間29に内装されている。
【0020】
ここでの照明制御部36とは、インターフェイスを介して信号を処理する電気素子をいい、必要なCPU、ソフト、記憶部を含むと共に、さらに入力側の照明起動用リーダー35や出力側のリレー37を含み、電気素子とは物理的に別個な単数又は複数のマイクロスイッチ28、29は含まれない(広義)。
【0021】
また、実施形態の照明起動用リーダー35は、その発信電波が中出力型UHF帯又は高出力型UHF帯のいずかである。中出力型UHF帯の検知範囲(読取り距離)は2m程度であり、また、高出力型UHF帯の検知範囲は0〜10mである。図6は、普通一般のビジネスホテル(6畳乃至10畳)の広さの部屋に高出力型UHF帯の照明起動用リーダー35を採用した照明制御部36をカードホルダー20のケースに内装した一例を示す。この実施例の場合には、ICタグ4のID情報を乗せる反射波の距離が数cmであっても、照明起動用リーダー35から発振される電波の検知範囲が比較的広いので、照明制御部36は単数で足りる。なお、照明制御部36には電源39が適宜に接続している。
【0022】
(3)携帯電子機器で解錠する場合のフローチャート
利用者Aは、省エネ装置Xを利用する場合、従来型のカードキー2を利用するか、又はICタグ4を利用するか、それとも双方併用するかは、自由に選択することができる。したがって、部屋の解錠手段と点灯手段との組み合わせに関しては幾つかのパターンが存在するが、ここでは、「利用者Aが部屋の解錠手段として自己の携帯電話6を希望し、かつ部屋の点灯手段としてIDタグの選択した場合」について説明する。
【0023】
図7は携帯電子機器で部屋を解錠(開錠)する場合のフローチャートである。この場合、利用者Aは、予め自己の携帯電話6に解錠コード発行部7から解錠コードaを貰い、また、望ましくはICタグ発行部5から発行されたICタグ4を携帯電話6の表面に貼りつけ、指定の部屋10まで行く。指定の部屋10の電気錠11を解錠する場合に於いて、ステップS1では、解錠コードaが携帯電話6から電気錠11の解錠コード読取部13へと送信する。ステップS2では解錠コード読取部13が解錠コードaを受信したか否かを判別(確認)する。ステップS5は解錠コード読取部13が解錠コードaを受信しなかった場合である。この場合には開閉体解錠部14は作動しない。
【0024】
これに対して、ステップS3は解錠コード読取部13が解錠コードaを受信した場合である。この場合には、受信した解錠コードaとセンター処理部8のデータテーブル記億部8cに格納されているデータとの照合を行なわれる。照合の結果、両情報が一致したならばステップS4に進み、開閉体解錠部14が作動して電気錠11が解錠される。この時、開閉体12を開くと、省エネ装置Xを構成するリーダー35から常に電波が発振されている実施例の場合にあっては、携帯電話6に貼付されているICタグ4と開閉体付近の前記リーダー35との信号のやりとりが直ちに実行され、部屋10内の照明灯21が点灯する。付言すると、カードホルダー20は開閉体12付近の壁Wに設置されているので、携帯電話6を所持する利用者が部屋10内に脚を踏み入れると、ICタグ4はカードホルダー20の検知範囲に存在し、カードホルダー20の挿入口にキーカードを差し込まなくても、部屋10内の照明灯21が瞬時に点灯する。
【0025】
(4)点灯する場合の一例を示すフローチャート
ここでは第2のマイクロスイッチ33を操作した場合に於いて、照明灯21が点灯する場合を説明する。前述したように、リーダー35から常に電波が発振されている実施形態の場合には、ICタグ4がカードホルダー20の検知範囲に存在すれば照明灯21が瞬時に点灯する。しかし、このような実施形態の場合には、部屋を利用しない間、省エネ装置Xを十分に発揮することができないという問題点がある。そこで、本実施形態では、カードホルダー20は使用開始スイッチ33を備え、照明起動用リーダー35は、該使用開始スイッチ33がONになると起動して電波を発信し、一方、使用開始スイッチ33がOFFになると、電波の発信を停止する。
【0026】
図8に於いて、ステップS1は、携帯電話を所持した利用者Aが部屋10に脚を踏み入れ、カードホルダー20の押しボタン32を押した場合である。この実施形態では、第2のマイクロスイッチ33のスイッチが入ると照明制御部36が作動する。そして、照明制御部36が作動すると、ステップS2に入り、リーダー35からICタグ4に向けて識別情報を乗せた電波が返信される。ICタグ4に書き込まれている識別情報(ID)の内容については特に図示しないが、例えばルームナンバー、照明制御部36の識別番号、ホテルHの識別番号などである。照明制御部36の図示しない記憶部には、ICタグ4が保持する識別情報(ID)に対応した確認情報等が格納されている。
【0027】
ステップS3では、ICタグ4から電波を受信したか否かを判別する。リーダー35はICタグ4から電波を受信するとステップS4へと進む。一方、リーダー35は電波を受信しなかった場合にはステップS6へ進み、照明灯21は点灯しない。ステップS4では、例えば照明制御部36の記憶部の確認情報(照明制御部36とセンター処理部8が接続している実施例形態によっては、センター処理部8のデータテーブル記憶部8cに格納されている確認情報)と、ICタグ4から受取った識別情報(ID)が一致するか否かの照合が行なわれる。その結果、情報が一致しない場合はステップS6に進み、一方、情報が一致した場合にはステップS5に進むので、照明灯21が点灯する。
【0028】
(5)消灯する場合の一例を示すフローチャート
本実施形態では、照明起動用リーダー35は、定期的(所定時間経過後)にICタグ4が検知範囲内に存在するか否か確認し、ICタグ4が検知範囲内に存在しない場合に於いて、カードホルダー20は、その照明制御部36よって、省エネスイッチである第1のマイクロスイッチ37を作動させて部屋内の照明灯を消す初期状態へと戻す。
【0029】
図9は照明灯21が点灯した後のフローチャートで、このフローチャートのポイントはステップS7である。ステップS7では、照明灯21が点灯してからの時間を図示しないタイマー回路で計測し、例えば10分、20分、30分、40分、1時間等の所定時間が経過した場合にステップS8に進み、再度リーダー35からICタグ4に向けて電波が送信される。ステップS9では、図8で説明したようにリーダー35から電波が受信したか否かの確認(判定)がなされ、その結果、No(受信しない)の場合はステップS11へと進み、一方、Yes(再び受信した)の場合はステップS10へと進み、点灯が継続する。
【実施例】
【0030】
カードホルダー20のケースの表面には、押しボタン32式のスイッチを押して部屋内の照明灯21を点灯した場合に、照明灯21と同時に点灯する表示部(例えばLEDランプ)が設けられている(図示しない)。また、利用者Aがチェックアウトした場合或いは使用期間(時間)の経過後にセンター処理部8で各部屋の照明灯21が消灯するように省エネ装置Xの照明制御部36を制御しても良い。
【0031】
図10は発信電波が中出力型UHF帯である場合の他の実施形態の要部構成図である。図10の(a)は部屋10を平面から見た概略説明図である。また、図10の(b)は、該実施形態の技術的思想を概念的に示す説明図である。この実施形態では、ホテルの部屋10の開閉体12付近の壁Wには親機としてのカードホルダー20が設けられ、この親機20に対して所要間隔を有して子機(子機1乃至子機n)としての照明起動用リーダー35を含む照明制御部36がさらに前記部屋内10に配設されている。
【0032】
子機は一台でも良いが、照明起動用リーダー35の検知範囲について法律上の規制があり、事実上、高出力型UHF帯を使用するのが難しい場合には、図10で示すように、子機を部屋内の壁、床、天井、ベッド、机、クローゼット等の適宜箇所に多数配設し、親機ないし子機の各照明制御部36に必要なソフトを入れ、後順位の子機がICタグからの信号を受信した場合には、先順位の子機に対してリレー方式で受信した旨を伝達するように構成する。このように構成すると、照明起動用リーダー35の検知範囲を広げ、例えばベッドの枕もと、デスクの上、クローゼット内等に携帯電子機器が存在しても、ICタグとの通信が可能となる。
【0033】
なお、特に図示しないが、前記子機が複数個存在する実施例に於いて、複数の子機をハブ方式で接続し、中心の子機が手を繋ぐ他の子機からICタグからの信号を受信した旨の信号を受け取った場合には、親機に対してその旨を伝達するようにしても良い。加えて、ホテルのフロントの存在する階にセンター処理部と接続するICタグ発行部が設けられて、該ICタグ発行部から発行されたICダグは、望ましくは利用者(宿泊者)が所持する携帯電子機器、ポーチ、セカンドバック等に添付(例えば貼付)される。
さらに、周知事項ではあるが、「カードホルダー」は、部屋内の照明等を点灯・消灯をすることができるのみならず、エアコン、冷蔵庫等の電気機器をON、OFFすることもできるので、従来のカードシステムをそのまま利用しても良いことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
錠前や建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0035】
X…省エネ装置、H…ホテル、A…利用者、1…フロント、2…カードキー、3…カードキー発行部、4…ICタグ、5…ICタグ発行部、6…携帯電子機器、7…解錠コード発行部、8…センター処理部、10…部屋、11…電気錠、12…開閉体、20…カードホルダー、21…照明灯、22…ケース、22…カード挿入口、28…カード挿入検知スイッチ、29…内部空間、3…使用開始スイッチ、35…照明起動用リーダー、36…照明制御部、37…リレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホテルの部屋の解錠を行うためのカードキーと、部屋内に設置され、かつカードキーを着脱自在に保持するカードホルダーとを備え、少なくともカードキーがカードホルダーに挿入されると該ガードホルダーに設けられたカード挿入検知スイッチを介して部屋内の照明灯が点灯可能になるホテルの部屋の省エネ装置に於いて、
前記カードホルダーに直接又は間接的にICタグと無線通信によって情報のやり取りをする照明起動用リーダーを含む照明制御部を設け、該照明起動用リーダーは、利用者の携帯電子機器を鍵として部屋のオートロックを解錠した態様であっても、該利用者が所持する物との関係で前記ICタグが検知範囲内に存在する限り、該ICタグと情報のやりとりをし、一方、前記照明制御部は、前記照明起動用リーダーから受け取った情報に基づいて前記照明灯を点灯するように制御するホテルの部屋の省エネ装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、照明起動用リーダーは、その発信電波が中出力型UHF帯又は高出力型UHF帯のいずかであり、またカードホルダーは、利用者が操作するための使用開始スイッチを備え、照明制御部は、利用者が前記該使用開始スイッチを操作すると、その作動を開始することを特徴とするホテルの部屋の省エネ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、照明起動用リーダーは、定期的にICタグが検知範囲内に存在するか否か確認し、ICタグが検知範囲内に存在しない場合に於いて、カードホルダーは、その照明制御部よって省エネスイッチを作動させて部屋内の照明灯を消す初期状態へと戻すことを特徴とするホテルの部屋の省エネ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに於いて、照明起動用リーダーは、部屋内に検知範囲が重なるように少なくとも2個配設されていることを特徴とするホテルの部屋の省エネ装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に於いて、ホテルの部屋の開閉体付近の壁には親機としてのカードホルダーが設けられ、この親機に対して所要間隔を有して子機としての照明起動用リーダーを含む照明制御部がさらに前記部屋内に配設されており、前記子機がICタグからの信号を受信した場合には、前記親機に対して、リレー方式又はハブ方式のいずれかで受信した旨を伝達することを特徴とするホテルの部屋の省エネ装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に於いて、ホテルのフロントの存在する階にセンター処理部と接続するICタグ発行部が設けられて、該ICタグ発行部から発行されたICダグは、利用者(宿泊者)が所持する携帯電子機器やポーチに添付されることを特徴とするホテルの部屋の省エネ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−43552(P2012−43552A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181322(P2010−181322)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】