説明

ホルダラック

【課題】基板の直径が大きくなる傾向にある近年、重ね合わされる互いの基板全面においてサブミクロンの精度で位置合わせをすることが困難になってきている。このような事情から、基板をより高い精度で位置合わせするために、それを保持する基板ホルダを精密に管理する機構が求められている。
【解決手段】基板を保持して搬送するための基板ホルダを収容するホルダラックであって、基板ホルダを収容する収容空間を除湿する除湿部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダラックに関する。
【背景技術】
【0002】
回路が形成された2枚の基板を、接合すべき電極同士が接触するように貼り合わせて加熱加圧することにより接合することが知られている。ここで、2枚の基板を位置合わせして貼り合わせてから加熱加圧により接合するまでに、2枚の基板に位置ずれを生じさせないこと及び接合段階における圧力及び温度の均一性を高めることを目的として、2枚の基板を上下から2枚の基板ホルダにより挟んで保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−302858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の直径が大きくなる傾向にある近年、重ね合わされる互いの基板全面においてサブミクロンの精度で位置合わせをすることが困難になってきている。このような事情から、基板をより高い精度で位置合わせするために、それを保持する基板ホルダを精密に管理する機構が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るホルダラックは、基板を保持して搬送するための基板ホルダを収容するホルダラックであって、基板ホルダを収容する収容空間を除湿する除湿部を備える。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】貼り合わせ装置の全体構造を概略的に示す平面図である。
【図2】ホルダラックの外観を概略的に示す斜視図である
【図3】ラック本体の構造を概略的に示す断面図である。
【図4】収納ケースの構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】ホルダラックの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る貼り合わせ装置100の全体構造を概略的に示す平面図である。貼り合わせ装置100は、回路パターンが形成された2枚の基板120を2枚の基板ホルダ190でそれぞれ保持して、接合すべき電極同士が接触するように貼り合わせて加熱加圧することにより接合する装置である。貼り合わせ装置100には、基板120を保持して搬送するための基板ホルダ190を収容するホルダラック300が着脱可能であり、貼り合わせ装置100は装着されたホルダラック300から基板ホルダ190を搬出して使用する。
【0010】
貼り合わせ装置100は、共通の筐体101の内部に形成された大気環境部102及び真空環境部202を含む。大気環境部102は、筐体101の外部に面して制御部110及びEFEM(Equipment Front End Module)112を有する。
【0011】
貼り合わせ装置100に含まれる各装置の各要素は、貼り合わせ装置100全体の制御及び演算を司る制御部110又は要素ごとに設けられた制御演算部が、統合制御、協調制御をすることにより動作する。制御部110は、貼り合わせ装置100を制御するための情報を記憶する記憶部111及び貼り合わせ装置100の電源投入、各種設定等をする場合にユーザが外部から操作する操作部を有する。更に制御部110は、配備された他の機器と接続する接続部を含む場合もある。
【0012】
EFEM112は、3つのロードポート113、114、115及びロボットアーム116を備える。そして各ロードポートにはFOUP(Front Opening Unified Pod)が装着される。FOUPは密閉型の基板格納用ポッドであり、複数の基板120を収容することができる。
【0013】
ロードポート113、114に装着されたFOUPには複数の基板120が収容されており、ロボットアーム116によって大気環境部102に搬入される。このように構成することで、基板120を外気にさらすことなくFOUPから大気環境部102に搬送することができ、基板120への塵埃の付着を防止することができる。大気環境部102及び真空環境部202によって接合された基板120は、ロードポート115に装着されたFOUPに格納される。
【0014】
なお、ここでいう基板120は、既に回路パターンが複数周期的に形成されている単体のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ等である。装填された基板120が、既に複数のウエハを積層して形成された積層基板である場合もある。基板120は、湿った状態だと酸化が進行しやすくなり、腐食及びクラックの発生等の特性が劣化する現象が起きてしまうので、乾燥した状態が維持されることが望ましい。
【0015】
大気環境部102は、筐体101の内側にそれぞれ配置された、予備アライナ130、本アライナ140、反転機構150、分離機構160及び搬送機構170を備える。筐体101の内部は、貼り合わせ装置100が設置された環境の室温と略同じ温度が維持されるように温度管理される。これにより、本アライナ140の精度が安定するので、位置決めを精確にできる。また筐体101の内部には周知のエアフィルタが備えられており、高いクリーン度が保たれる。
【0016】
大気環境部102には、筐体101の一部に設けられたホルダラック着脱部103を介してホルダラック300が着脱される。ホルダラック300は、シャッタを備える筐体及びその筐体内に設置されたラック本体を有しており、ホルダラック着脱部103に装着されて密着した状態でシャッタを開く構造を有している。このような構造により、ホルダラック300の着脱による大気環境部102の雰囲気の乱れを抑制して、クリーン度を保つことができる。
【0017】
予備アライナ130は、高精度であるが故に狭い本アライナ140の調整範囲に基板120の位置が収まるように、個々の基板120の位置を仮合わせする。これにより、本アライナ140における位置決めを確実にすることができる。
【0018】
予備アライナ130は、ターンテーブル131及びホルダテーブル132を備える。ターンテーブル131には、EFEM112のロボットアーム116によって基板120が載置される。そして、ターンテーブル131によって、基板120の回転方向の位置が調整される。その後基板スライダによってターンテーブル131からホルダテーブル132へと搬送された基板120は、精確に位置合わせされた後、ホルダテーブル132上に配置された基板ホルダ190に保持される。
【0019】
ホルダテーブル132には電力供給ピンが設けられており、基板ホルダ190の裏面に設けられた電力供給端子と接続して、基板ホルダ190に電力を供給する。電力供給端子から電力を供給された基板ホルダ190は、その内部に設けられた静電チャックにより基板保持面に電位差を生じさせ、基板120を静電吸着する。このようにして一体化された基板120及び基板ホルダ190を、ワークと呼ぶ。
【0020】
基板ホルダ190はホルダラック300に収容されており、搬送機構170によってホルダテーブル132上に搬送される。また、使用後の基板ホルダ190は、搬送機構170によってホルダラック300に戻される。
【0021】
本実施形態では、ホルダラック300は貼り合わせ装置100に対して着脱可能に構成されている。そのように構成することで、貼り合わせ装置100の内部空間にホルダラック300を設置するスペースを設ける必要がなくなるので、貼り合わせ装置100を小型化することができる。これは、例えば加熱加圧装置を増やすことで数多くの基板ホルダ190が必要になる場合であって、ホルダラック300のサイズが大きくなる場合により効果的となる。また、他のホルダラック300との交換及び基板ホルダ190をメンテナンスするメンテナンス装置への取り付け等を容易に行うことができる。
【0022】
その一方で、ホルダラック300を貼り合わせ装置100から取り外して外部で保管する場合等では、収容された基板ホルダ190が貼り合わせ装置100とは異なる雰囲気にさらされ、水分が付着するなどの不具合が発生する場合がある。基板ホルダ190に水分が付着すると、基板ホルダ190が基板120を保持したときに、基板120がその水分を吸湿してしまう可能性があるので、本実施形態に係るホルダラック300は、基板ホルダ190を乾燥した状態で管理する機構を備える。ホルダラック300の具体的な構成については後述する。
【0023】
本アライナ140は、固定ステージ141、移動ステージ142及び干渉計143を備える。また、本アライナ140を包囲して断熱壁144及びシャッタ145が設けられる。断熱壁144及びシャッタ145に包囲された空間は空調機等に連通して温度管理され、本アライナ140における位置合わせ精度を維持する。
【0024】
固定ステージ141は、移動ステージ142よりも上方に位置していて、固定された状態でワークを下向きに保持する。固定ステージ141に保持されるワークを上ワークと呼び、上ワークを構成する基板ホルダ190を上基板ホルダ191と呼ぶ。移動ステージ142は、載置されたワークを搬送する。移動ステージ142に載置されるワークを下ワークと呼び、下ワークを構成する基板ホルダ190を下基板ホルダ192と呼ぶ。
【0025】
固定ステージ141に保持された上ワークと、移動ステージ142に保持された下ワークは、接合面が対向するように精密に位置合わせされる。そして、下ワークを上昇させることにより接合面同士が接触して仮接合される。仮接合された2つのワークをまとめてワーク対と呼ぶ。
【0026】
反転機構150は、後述する第1搬送ユニット171及び第2搬送ユニット172よりも下側に位置しており、基板ホルダ190又はワークを支持する複数の支持ピン及び基板ホルダ190又はワークを把持して反転させる回転把持部を備える。第1搬送ユニット171又は第2搬送ユニット172によって搬送されてきた基板ホルダ190又はワークを支持ピンで支持して、支持ピン上の基板ホルダ190又はワークを回転把持部で把持して反転させる。
【0027】
反転した後、再び支持ピン上に基板ホルダ190又はワークを支持することで、第1搬送ユニット171又は第2搬送ユニット172によって搬出可能になる。なお複数の支持ピンは、基板ホルダ190の基板保持面の外周領域に対応する位置に設けられているので、基板ホルダ190又はワークを上向きでも下向きでも支持することができる。分離機構160は、後述する加熱加圧装置240で加熱加圧された後のワーク対を受け取り、接合後の基板120を、2つの基板ホルダ190から分離する。
【0028】
搬送機構170は、第1搬送ユニット171、第2搬送ユニット172、第1受け渡しポート173、第2受け渡しポート174、シングルスライダ175及びロボットアーム176を備える。第1搬送ユニット171及び第2搬送ユニット172は、予備アライナ130、反転機構150、第1受け渡しポート173及び第2受け渡しポート174の間で基板120、基板ホルダ190、ワーク及びワーク対の搬送をする。
【0029】
第1搬送ユニット171と第2搬送ユニット172は、上下方向に並行して設けられたレール上をそれぞれ独立して走行する。そして第1搬送ユニット171は第2搬送ユニット172よりも上側に位置して、基板120、基板ホルダ190、ワーク及びワーク対を保持したままでもすれ違うことができる構造になっている。
【0030】
第1受け渡しポート173は、分離機構160の上部に設けられ、基板ホルダ190、及びワーク対を載置するためのプッシュアップピンを備える。第2受け渡しポート174もプッシュアップピンを備え、シングルスライダ175と、第1搬送ユニット171及び第2搬送ユニットの間での基板ホルダ190、ワーク及びワーク対の受け渡しを仲介する役割を担う。
【0031】
シングルスライダ175は、第2受け渡しポート174及び本アライナ140の間でワーク及びワーク対の搬送をする。ロボットアーム176は、第1受け渡しポート173、分離機構160及び後述するロードロックチャンバ220の間でワーク対を搬送する。またロボットアーム176は、ホルダラック300、第1受け渡しポート173及び分離機構160の間で基板ホルダ190を搬送する。
【0032】
真空環境部202は、断熱壁210、ロードロックチャンバ220、ロボットアーム230及び複数の加熱加圧装置240を有する。断熱壁210は、真空環境部202を包囲して真空環境部202の内部温度を維持すると共に、真空環境部202の外部への熱輻射を遮断する。これにより、真空環境部202の熱が大気環境部102に及ぼす影響を抑制できる。ロボットアーム230は、ワーク対を搬送する搬送装置であり、保持したワーク対を、ロードロックチャンバ220と加熱加圧装置240の間で搬送する。
【0033】
ロードロックチャンバ220は、大気環境部102側と真空環境部202側とに、交互に開閉するシャッタ222、224を有する。ワーク対が大気環境部102から真空環境部202に搬入される場合、まず、大気環境部102側のシャッタ222が開かれ、ロボットアーム176がワーク対をロードロックチャンバ220内の載置台に載置する。そして、ロボットアーム176がロードロックチャンバ220から退避した後で、大気環境部102側のシャッタ222を閉じる。
【0034】
その後ロードロックチャンバ220は、排出ポンプで空気を外部に排出して内部の真空度を上げていき真空状態にする。このときワーク対を構成する基板120又は基板ホルダ190に水分が付着していると真空度を上げるのに時間がかかってしまうので、ワーク対を構成する基板120及び基板ホルダ190は乾燥していることが望ましい。ロードロックチャンバ220は、基板120及び基板ホルダ190が乾燥していれば、湿っている場合に比べて速く内部を真空状態にすることができる。そしてこのことが、貼り合わせ装置100の全体のスループットの向上に貢献する。
【0035】
ロードロックチャンバ220内が真空状態になった後、真空環境部202側のシャッタ224が開かれ、ロボットアーム230がワーク対を搬出する。このような真空環境部202への搬入動作により、大気環境部102の内部雰囲気を真空環境部202側に漏らすことなく、ワーク対を真空環境部202に搬入できる。
【0036】
次にロボットアーム230は、ロードロックチャンバ220から搬出したワーク対を複数の加熱加圧装置240のいずれかに搬入する。そして加熱加圧装置240は、ワーク対を加熱加圧する。これにより2つの基板ホルダ190に挟まれた状態で搬入された基板120は恒久的に接合される。
【0037】
真空環境部202から大気環境部102にワーク対を搬出する場合は、まず真空環境部202側のシャッタ224が開かれ、ロボットアーム230がワーク対をロードロックチャンバ220に搬入する。次に、真空環境部202側のシャッタ224が閉じられ、大気環境部102側のシャッタ222が開かれる。
【0038】
その後、ワーク対はロボットアーム176によって分離機構160に搬入される。接合後の基板120は、分離機構160により上基板ホルダ191及び下基板ホルダ192から分離され、搬送機構170によって、ロードポート115に装着されたFOUPに搬送される。分離後の上基板ホルダ191及び下基板ホルダ192は、搬送機構170によって、ホルダラック300に戻されるか、次の基板120を載置するべくホルダテーブル132に搬送される。
【0039】
図2はホルダラック300の外観を概略的に示す斜視図である。ホルダラック300は、筐体301、シャッタ302、シャッタ駆動部303及び着脱部材304を備える。ホルダラック300は、貼り合わせ装置100に着脱可能であり、貼り合わせ装置100に装着するときは、ホルダラック着脱部103に設けられた挿入部に対して、着脱部材304を挿入することで固定する。
【0040】
着脱部材304には着脱検知センサが備えられており、ホルダラック300は、着脱検知センサが装着を検知した場合に、シャッタ駆動部303を駆動させてシャッタ302を開く。このように、貼り合わせ装置100とホルダラック300が密着した状態でシャッタ302を開くことで、大気環境部102の雰囲気を汚染することなく大気環境部102とホルダラック300を連通することができる。なお筐体301の、シャッタ302がある面の反対側の面である裏面に操作部を備え、操作部に対するユーザの指示によって、シャッタ302の開閉を実行するように構成してもよい。
【0041】
ホルダラック300を取り外すときは、シャッタ駆動部303を駆動させることでシャッタ302を閉じてから、ホルダラック300全体を後退させて、着脱部材304を引き抜く。なお、本実施形態ではシャッタを用いたが、シャッタの代わりに扉、蓋等を用いてもかまわない。
【0042】
図3は、ラック本体310の構造を概略的に示す断面図である。図中で右側にあたるラック本体310の前面は、筐体301のシャッタ302を有する側の面であり、ホルダラック300を貼り合わせ装置100に装着した場合に、貼り合わせ装置100に面する。
【0043】
ラック本体310は、収納ケース350を載置する棚311を備える。棚311は収納ケース350を収容する収容空間312を複数備える。各収容空間312には、収納ケース350を支持する支持凸部313、検知光314を照射する照射部315及び照射部315に対向して配置された受光部316が設置されている。なお、図では4つの収容空間312を備えた場合を例に挙げているが、収容空間312の数は模式的なものであって、この数に限らない。
【0044】
収納ケース350は開閉蓋351を備え、開閉蓋351を開くことにより、ロボットアーム176が基板ホルダ190を出し入れすることができる。収納ケース350が支持凸部313上に載置された場合、収納ケース350の内部空間が、収容空間312の少なくとも一部を形成する。そして、収納ケース350の天井部及び底面部に備えられた透過窓353が、照射部315の直下に位置する。照射部315は、収納ケース350内に基板ホルダ190が収納されているか否かを検知するための検知光314を照射する。
【0045】
図中の最下段の収容空間312のように収納ケース350内に基板ホルダ190が収納されていない場合、照射部315が照射した検知光314は、透過窓353を透過して受光部316に受光される。一方、図中の最上段の収容空間312のように収納ケース350内に基板ホルダ190が収納されている場合、照射部315が照射した検知光314は基板ホルダ190に遮られて受光部316に受光されない。このような構成により、収納ケース350内に基板ホルダ190が収納されているか否かが検知される。
【0046】
ラック本体310は、基板ホルダ190を収容する収容空間312を除湿する除湿部320を備える。除湿部320が収容空間312を除湿することによって、基板ホルダ190を乾燥した状態で維持することができる。除湿部320は送出部323を備え、通気管321を通して、収納ケース350の内部空間に乾燥Nを送出する。通気管321は、支持凸部313の収納ケース350を支持する面に連通している。
【0047】
収納ケース350はその底面に、内部空間と外部空間を連通する吸気孔354を有しており、収納ケース350が支持凸部313上に載置されたときに、通気管321と吸気孔354が接続するようにそれぞれ配置されている。支持凸部313の収納ケース350を載置する面は弾性部材によって形成されており、通気管321から送出された乾燥Nが外部空間に漏れ出さないように構成されている。
【0048】
収納ケース350の内部空間と除湿部320は、電磁弁322を開いた状態で連通し、電磁弁322を閉じることで遮断することができる。図中の最下段の収容空間312が、電磁弁322によって遮断されている状態を表しており、その他の段の収容空間312が連通している状態を表している。電磁弁322が開いた状態で送出部323が乾燥Nを送出することによって、乾燥Nが収納ケース350の内部空間に到達し、内部空間を除湿する。
【0049】
このように、収納ケース350の内部空間を除湿することで、ホルダラック300全体を除湿したり、大気環境部102の全体を除湿したりするのに比べて少ない量の乾燥Nで基板ホルダ190を乾燥することができる。
【0050】
温調部324は、送出部323が送出する乾燥Nの温度を制御することで、収納ケース350の内部空間の温度が室温と等しくなるよう調整する。ここで、乾燥Nの温度を室温よりも高くするよう制御しても良い。そのように制御することで、基板ホルダ190を乾燥する時間を短縮することができる。
【0051】
また、基板ホルダ190が、加熱加圧装置240によって加熱加圧された後であって、高い温度を有している場合等に、その冷却を目的として乾燥Nの温度を低くするように制御しても良い。なお、収納ケース350の内部空間を温調するヒータを別途備えて、ヒータが温調を担うように構成しても良い。
【0052】
図4は、収納ケース350の構造を概略的に示す斜視図である。図においては、収納ケース350の天井部を省略している。収納ケース350は、開閉蓋351、位置決めゴマ352、透過窓353及び吸気孔354を備える。開閉蓋351は、収納する基板ホルダ190を出入する蓋であり、収納ケース350が棚311に載置されたときにホルダラック300の着脱面に対して対向する面に備えられる。そして、ロボットアーム176が基板ホルダ190を搬出又は搬入する場合に開閉蓋351は開閉される。
【0053】
位置決めゴマ352は、基板ホルダ190を精確な位置に収納するために、収納ケース350の底部に設けられたコマである。本実施形態では、4つの位置決めゴマ352が設置されている。透過窓353は、収納ケース350内に基板ホルダ190が収容されているかを確認するための窓である。吸気孔354は、収納ケース350をホルダラック300の支持凸部313に載置したときに、通気管321と接続して、除湿部320と連通する。
【0054】
なお、本実施形態では吸気孔354を1つ備える例を挙げて説明したが、これに限らず複数の吸気孔354を備えるように構成しても良い。また、吸気孔354の他に排気孔を設けて、送出された乾燥Nを排気孔から排出することで、乾燥Nを循環させるよう構成しても良い。
【0055】
図5はホルダラック300による除湿動作の制御手順を示すフローチャートである。各制御は、ホルダラック制御部325が主体となって実行される。ステップS501では、ホルダラック300が他の装置に装着されずに独立した状態でいるかを確認する。ここでは、ホルダラック300の着脱部材304に備えられた着脱検知センサによって、ホルダラック300が他の装置に装着されていないかを確認する。
【0056】
ホルダラック300が独立している場合は、ステップS502に進む。ホルダラック300が独立しておらず、他の装置に装着されている場合は、除湿動作を行わずに処理を終了する。ホルダラック300が、例えば内部空間の雰囲気を高精度に管理している貼り合わせ装置100に装着されている場合、貼り合わせ装置100と連通することによって基板ホルダ190が乾燥した状態になるので、除湿の必要がなくなるからである。このように制御することで、乾燥Nの消費を抑制することができる。
【0057】
ステップS502ではホルダラック300に収容された複数の収納ケース350それぞれについて、基板ホルダ190が収納されているか否かを確認する。ここでは、照射部315から照射した検知光314が受光部316によって受光されない場合に、基板ホルダ190が収納されていると判断する。基板ホルダ190が収納されていると判断された場合、ステップS503に進み、収納されていないと判断した場合は処理を終了する。
【0058】
ステップS503では、基板ホルダ190が収納されていると判断された収容空間312に対応する電磁弁322を開き、その他の電磁弁322は閉じた状態で、送出部323が乾燥Nを送出する。送出された乾燥Nは基板ホルダ190が収納された収納ケース350の内部空間に到達する。このように基板ホルダ190が収納された収納ケース350にのみ乾燥Nを送出するよう構成することで、乾燥Nの消費を抑制することができる。
【0059】
ステップS504では、乾燥Nを送出している各収納ケース350について、乾燥Nが収納ケース350の内部空間に充満したか否かを判断する。ここでは、送出部323が収納ケース350に乾燥Nを送出した場合に、乾燥Nが充満するまでの時間を予め計測しておき、送出からその時間が経過したことをもって、乾燥Nが内部空間に充満したと判断する。
【0060】
なお、乾燥Nが充満したか否かを検出する検出部を設けて判断するよう構成しても良い。乾燥Nが充満していないと判断した場合は、ステップS503に戻り乾燥Nの送出を継続する。乾燥Nが充満したと判断した場合はステップS505に進む。
【0061】
ステップS505では、乾燥Nの送出量を調整する。収納ケース350の内部空間は、開閉蓋351及び吸気孔354を備えていることからその密閉度は完全ではなく、乾燥Nは少量ずつ外部空間に漏れ出す。そこでステップS505では、乾燥Nの送出量をこの漏れ出す量に相当する量に調整する。このように調整することで、内部空間に乾燥Nが充満した状態を保つことができる。乾燥Nが漏れ出す量についてはあらかじめ計測しておくか、乾燥Nの濃度を測定する測定器を備えておき、濃度変化を観察することで算出する。ステップS506では、調整後の送出量で乾燥Nを送出する。
【0062】
なお、ここでは収納ケース350の内部空間に乾燥Nが充満するよう調整したが、これに限らず、収納ケース350の内部空間の内圧が外部よりも高くなるように調整しても良い。そのように調整することで、外部からの水分及び塵埃の侵入を防止することができる。
【0063】
ステップS507では、ホルダラック300が他の装置に装着されたか否かを判断する。そして、装着されたと判断した場合はステップS508に進み、装着されていないと判断された場合はステップS506に戻り乾燥Nの送出を継続する。
【0064】
ステップS508では、電磁弁322を閉じるとともに乾燥Nの送出を停止して、処理が終了する。このように除湿部320は、基板ホルダ190が搬出されたか否かを確認して、基板ホルダ190が収納されているときに、収納ケース350の内部空間を除湿する。
【0065】
上記実施形態では、基板ホルダ190がホルダラック300から搬出されるか、ホルダラック300が他の装置に装着されるまで乾燥Nの送出を継続するよう構成していたが、これに限らない。収納ケース350の内部空間に、基板ホルダ190の湿度を計測する湿度計測器を設置して、基板ホルダ190が乾燥したか否かを判断することによって、乾燥Nの送出を制御しても良い。即ち、基板ホルダ190の湿度が閾値よりも高い場合に乾燥Nを送出して、湿度が閾値以下になったら乾燥Nの送出を停止する。このように構成することで、乾燥Nの消費量を適切に低減することができる。
【0066】
また上記実施形態では、収納ケース350の内部空間に乾燥Nを送出することで基板ホルダ190を乾燥させていたがこれに限らず、収納ケース350の内部空間に乾燥剤を設置する乾燥剤設置部を備えるように構成しても良い。乾燥剤としては、シリカゲル、生石灰など周知のものを用いることができる。
【0067】
また上記実施形態では、収納ケース350の内部空間を除湿するよう構成していたがこれに限らず、ホルダラック300全体を除湿するように構成しても良い。そのように構成することで、除湿部320を含むホルダラック300の構造を簡素化することができる。
【0068】
また上記実施形態では、ホルダラック300の複数の収容空間312の全てについて、乾燥Nを送出できるように構成していたがこれに限らず、特定の収容空間312についてのみ乾燥Nを送出できるように構成しても良い。また上記実施形態では、除湿部320が乾燥Nを送出する例を挙げて説明したがこれに限らず、乾燥空気などの他の乾燥気体を送出するよう構成しても良い。
【0069】
また上記実施形態では、ホルダラック300が他の装置に装着されているときには、収納ケース350の内部空間の除湿を行わない例を挙げて説明したが、これに限らず、他の装置に装着されているときに除湿を行うように構成しても良い。そのように構成することで、他の装置で使用している間に基板ホルダ190が湿るようなことがあった場合でも、ホルダラック300に戻すことで基板ホルダ190を乾燥させることができる。
【0070】
また上記実施形態では、貼り合わせ装置100がホルダラック着脱部103を1つ備える例を挙げて説明したが、これに限らず複数のホルダラック着脱部103を備えて、ホルダラック300を複数着脱できるように構成しても良い。そのように構成することで、例えば加熱加圧装置240を数多く備えた場合等に、複数のホルダラック300から基板ホルダ190を取り出すことで、貼り合わせ装置100で使用する基板ホルダ190の数を増やすことができる。
【0071】
また上記実施形態では、ホルダラック300が収納ケース350を収容する収容空間312を縦1列に備える構成を例に挙げて説明したが、これに限らず、縦2列以上備えるように構成しても良い。そのように構成した上に、縦2列以上に備えられた収容空間312で1つの除湿部320を併用することで、装置構成を簡略化することができる。
【0072】
また上記実施形態では、ホルダラック300を貼り合わせ装置100に装着して、ロボットアーム176によって、ホルダラック300に収容された基板ホルダ190を貼り合わせ装置100に搬入していたが、これに限らない。ホルダラック300を、貼り合わせ装置100とは離れた位置に設置しておき、貼り合わせ装置100とホルダラック300の間に基板ホルダ190が吸湿しないように雰囲気を管理した搬送経路を設け、その搬送経路に設置された搬送ロボットによってホルダラック300に収容された基板ホルダ190を、貼り合わせ装置100との間で搬送するように構成しても良い。
【0073】
このように搬送経路を設け、その搬送経路に他の装置を接続することにより、ホルダラック300に収容された基板ホルダ190を容易に共有することができる。またホルダラック300を直接貼り合わせ装置100に接続しないことで、貼り合わせ装置100内部の雰囲気を乱しにくくなる。
【0074】
また上記実施形態では、ホルダラック300を貼り合わせ装置100に着脱するように構成していたが、これに限らず、貼り合わせ装置100の大気環境部102の内部にホルダラック300を備えるように構成しても良い。そのように構成することで、貼り合わせ装置100はホルダラック着脱部103を備えなくてもよく、ホルダラック300は着脱部材304を備えなくてもよくなるので、装置構成を簡略化できる。
【0075】
また上記実施形態において貼り合わせ装置100は、使用する基板ホルダ190を、装着されたホルダラック300から直接搬出する例を挙げて説明したが、これに限らない。装着するホルダラック300とは別に、貼り合わせ装置100の大気環境部102内に内部ホルダラックを備え、装着されたホルダラック300に載置された収納ケース350を、内部ホルダラックに搬送して、内部ホルダラックから使用する基板ホルダ190を搬出するように構成しても良い。
【0076】
この場合、装着されたホルダラック300と内部ホルダラックの間にロボットアームを設け、そのロボットアームによって、装着されたホルダラック300から、開閉蓋351が閉じた状態で収納ケース350を搬出し、内部ホルダラックに搬入して載置する。またロボットアーム176は、使用する基板ホルダ190を、装着されたホルダラック300ではなく、内部ホルダラックに載置された収納ケース350から搬出する。
【0077】
このようにホルダラックを内部及び外部に備えることで、例えば、使用可能な状態の基板ホルダ190を内部ホルダラックに収納し、メンテナンスが必要な基板ホルダ190を装着された外部のホルダラック300に収納することができる。その結果、貼り合わせ装置100で内部のホルダラックを使用したままで、装着された外部のホルダラック300を取り外して、基板ホルダ190のメンテナンスを実行することができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0079】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0080】
100 貼り合わせ装置、101 筐体、102 大気環境部、103 ホルダラック着脱部、110 制御部、111 記憶部、112 EFEM、113、114、115 ロードポート、116 ロボットアーム、120 基板、130 予備アライナ、131 ターンテーブル、132 ホルダテーブル、140 本アライナ、141 固定ステージ、142 移動ステージ、143 干渉計、144 断熱壁、145 シャッタ、150 反転機構、160 分離機構、170 搬送機構、171 第1搬送ユニット、172 第2搬送ユニット、173 第1受け渡しポート、174 第2受け渡しポート、175 シングルスライダ、176 ロボットアーム、190 基板ホルダ、191 上基板ホルダ、192 下基板ホルダ、202 真空環境部、210 断熱壁、220 ロードロックチャンバ、222 シャッタ、224 シャッタ、230 ロボットアーム、240 加熱加圧装置、300 ホルダラック、301 筐体、302 シャッタ、303 シャッタ駆動部、304 着脱部材、310 ラック本体、311 棚、312 収容空間、313 支持凸部、314 検知光、315 照射部、316 受光部、320 除湿部、321 通気管、322 電磁弁、323 送出部、324 温調部、325 ホルダラック制御部、350 収納ケース、351 開閉蓋、352 位置決めゴマ、353 透過窓、354 吸気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して搬送するための基板ホルダを収容するホルダラックであって、
前記基板ホルダを収容する収容空間を除湿する除湿部
を備えるホルダラック。
【請求項2】
他の装置に着脱する着脱部を更に備える請求項1に記載のホルダラック。
【請求項3】
前記除湿部は、前記着脱部により前記他の装置に装着されているときには、前記収容空間の除湿を行わない請求項2に記載のホルダラック。
【請求項4】
前記収容空間の少なくとも一部を形成する内部空間に前記基板ホルダを収納する収納ケースと、
前記収納ケースを載置する棚と
を備え、
前記除湿部は前記内部空間を除湿する請求項1から3のいずれか1項に記載のホルダラック。
【請求項5】
前記収納ケースは、前記内部空間が外部空間と連通する吸気孔を有し、
前記除湿部は、前記収納ケースが前記棚に載置された時に前記吸気孔に接続される通気管から乾燥気体を前記内部空間に送出する請求項4に記載のホルダラック。
【請求項6】
前記乾燥気体は、乾燥Nである請求項5に記載のホルダラック。
【請求項7】
前記除湿部は、前記基板ホルダが収納されているときに前記収容空間を除湿する請求項1から6のいずれか1項に記載のホルダラック。
【請求項8】
前記収容空間の温度を調整する温調部を備える請求項1から7のいずれか1項に記載のホルダラック。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のホルダラックを備え、
前記ホルダラックに収容された前記基板ホルダを用いて、複数の基板を貼り合わせる貼り合わせ装置。
【請求項10】
前記ホルダラックを着脱する着脱部を備える請求項9に記載の貼り合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−165885(P2011−165885A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26932(P2010−26932)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】