説明

ホルムアルデヒドを含まないガラス繊維製品用の硬化オーブン中における製品の制御

ガラス繊維に塗布する結合剤を硬化するシステムを開示する。結合剤の硬化は、結合剤がコーティングされたガラス繊維を1個以上の温度領域を有する硬化オーブン中を通過させることによって達成される。結合剤がコーティングされたガラス繊維の温度はモニターされており、硬化オーブン中の温度はガラス繊維の適切な加熱を確実にするように調整され、それによって結合剤組成物の均一な硬化を確実にする。製品がオーブンを通過するとき、または硬化した製品が硬化オーブンを出るときに、温度測定が行われる。本発明は、特に、アクリル系熱硬化性結合剤およびホルムアルデヒドを含まない結合剤の硬化に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを含まない結合剤系を有するガラス繊維製品の製品硬化を制御する方法に関する。このガラス繊維製品が硬化オーブン中にある間、またはガラス繊維製品が硬化オーブンを出るときのいずれかに、この製品の温度をモニターする。この製品が温度プロフィールまたは出口温度を示さない場合、適切な硬化を確保するようにプロセスに調整を加える。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維用結合剤には、この結合剤を織布または不織布ガラス繊維シート製品に塗布し、硬化させ、より硬直な製品を製造する剛化用途から、結合剤樹脂をシートまたは嵩高性の繊維製品に塗布し、その後、これを乾燥させ、場合によっては中間製品であるが、なお硬化性の製品を形成するようにB段階化する熱成形用途、および建物用断熱材などのような完全な硬化系まで様々な用途がある。
【0003】
ガラス繊維断熱材製品は、一般に、硬化させた熱硬化性ポリマー材料によって接着させたガラス繊維マットを含む。溶融ガラス流を延伸して不規則な長さの繊維にし、成形チャンバー内に吹き込み、そこでこれらは移動コンベヤ上にマットとして不規則に載せられる。これらの繊維には、成形チャンバー内を通過中および延伸作業を終えてからまだ熱い間に水性結合剤が噴霧される。フェノール−ホルムアルデヒド結合剤は、現在、ガラス繊維断熱材産業全体にわたって使用されている。成形作業中のガラス繊維および繊維マットを通過する空気流からの残熱は、一般に、結合剤から大部分の水を揮発させるのに十分であり、それによって、繊維上に、結合剤の残留成分が、粘着性または半粘着性のハイソリッドの液体として残される。コーティングされた繊維マットを硬化オーブンに移送し、例えば熱風をこのマットに吹き込んで結合剤を硬化させ、ガラス繊維を強固に結着させる。
【0004】
本発明の意味で使用されるガラス繊維用結合剤は、マトリクス樹脂と混同するべきではない。マトリクス樹脂は、完全に異なる、類似性のない技術分野である。時には「結合剤」と称されるが、マトリクス樹脂は繊維間の隙間の空間全体を満たすように働き、その結果、このマトリクスにより繊維の強度特性が複合物に変えられているはずである、高密度な繊維強化製品が得られる。それに対して、本明細書で使用する「結合剤樹脂(binder resin)」は、空間を充填するのではなく、どちらかと言えば、繊維、特に繊維の接点のみをコーティングする。ガラス繊維用結合剤はまた、接着性がセルロース系基板の化学的性質に合わせて調整されている、紙製品または木製品用「結合剤」と同一視することはできない。そのような樹脂の多くは、例えば、尿素/ホルムアルデヒド樹脂およびレソルシノール/ホルムアルデヒド樹脂は、ガラス繊維用結合剤としての使用に適さない。ガラス繊維用結合剤の分野の当業者は、ガラス繊維用結合剤に関連する既知の問題のいずれをも解決することをセルロース系結合剤に期待していないようである。
【0005】
ガラス繊維断熱材製品に有用な結合剤は、一般に、未硬化状態では低粘度を必要とし、さらに、硬化した時にガラス繊維用の硬直な熱硬化性ポリマーマットを形成するのに十分な特性を必要とする。未硬化状態での結合剤粘度の低さは、マットを正確な大きさにするために必要とされる。また、粘着性結合剤は接着性または粘着性である傾向があり、したがって、それらは、成形チャンバー壁上に繊維の蓄積をまねく。この蓄積された繊維は、後にマット上に落下し、高密度領域および製品の問題を引き起こすことがある。硬化した時に硬直なマトリクスを形成する結合剤は、完成したガラス繊維断熱材製品が、包装および輸送のために圧縮されたとき、建物中に設置された時にその規定された垂直方向の寸法を回復するために必要とされる。
【0006】
多くの熱硬化性ポリマーの中から、適当な熱硬化性ガラス繊維用結合剤樹脂の候補が非常に多く存在する。しかしながら、結合剤をコーティングしたガラス繊維製品は、多くの場合、必需品タイプのものであり、したがって、コストが推進要因になり、一般に、熱硬化性のポリウレタン、エポキシ樹脂、その他の樹脂のような樹脂が除外される。その優れたコスト/性能比のために、従来一般的に選択された樹脂はフェノール/ホルムアルデヒド樹脂である。フェノール/ホルムアルデヒド樹脂は経済的に製造することができ、尿素で増量させた後、多くの用途で結合剤として使用することができる。このような尿素増量フェノール/ホルムアルデヒド結合剤は、何年もの間、ガラス繊維断熱材産業の中心的存在であった。
【0007】
しかしながら、ここ数十年間にわたり、よりクリーンな環境の提供を望む産業界の方の、および連邦規制による揮発性有機化合物(VOC)放出の最小化から、現在使用されているホルムアルデヒドベースの結合剤からの放出削減の研究だけでなく、代替になりそうな結合剤の研究が広範囲にわたって行われてきた。例えば、ベースになるフェノール/ホルムアルデヒドレゾール樹脂の調製でのフェノールとホルムアルデヒドの比の微妙な変更、触媒の変更、および種々の多数のホルムアルデヒド捕集剤の添加により、フェノール/ホルムアルデヒド結合剤からの放出は、以前に使用されていた結合剤と比べて、かなり改善されている。しかしながら、ますます厳しくなる連邦規制とともに、ホルムアルデヒドを含まない代替結合剤系にますます注意が払われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に有用なホルムアルデヒドを含まない結合剤系の1つは、ポリカルボキシポリマーおよびポリオールを含む結合剤を使用する。ホルムアルデヒドを含まない樹脂とは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドを生成する化合物を用いて製造していないものである。ホルムアルデヒドを含まない樹脂は、断熱材の製造工程中に測定可能なレベルのホルムアルデヒドを放出せず、また、通常の使用条件下でホルムアルデヒドを放出しない。この結合剤系をリン含有有機酸のアルカリ金属塩などの触媒と共に使用すると、優れた回復性および剛性特性を示すガラス繊維製品が得られる。
【0009】
しかしながら、こうした新規な結合剤系は、pHが約3.5未満、好ましくは2.5未満、より好ましくは約2.0未満で最もよく使用される。pHがわずか0.3変化しても、結合剤組成物の硬化が不十分になることがある。これにより、硬化時に不十分な性能を示すガラス繊維製品が得られる結果になる。
【0010】
ガラス繊維製品の硬化は、適切な製品性能に不可欠である。結合剤系のpHに加えて、製品が硬化される温度、および製品がその温度を維持する時間が重要である。製品は、確実に完全な硬化が起こるのに十分な長い時間、完全に加熱されなければならない。
【0011】
製品が確実に適切に硬化するのに十分な温度に完全に加熱されたかどうかを決定するためには、製品を連続的にモニターすることができるシステムを使用することが望ましい。また、製品を完全に硬化させるのに十分な加熱をするように、硬化オーブンの条件を調整することができるフィードバックシステムを設けることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ガラス繊維断熱材などのガラス繊維製品は、ガラス繊維を紡績し、次いでこれらの繊維を結合剤組成物でコーティングすることによって形成される。コーティングされた繊維は、ガラス繊維のバットまたは塊にまとめられる。次いで、この結合剤がコーティングされた繊維は、結合剤組成物が架橋する硬化ステップにかけられる。これは、繊維を1つにまとめておく助けとなり、機械的特性を向上させる。
【0013】
硬化は、一般に、結合剤がコーティングされた繊維を硬化オーブン中で加熱することによって達成される。オーブンは、通常、様々な領域に様々な温度プロフィールを有する複数の領域を有するオーブンである。確実に十分に硬化するためには、このコーティングされた繊維は、所定の温度に完全に加熱され、最小限の時間、その温度に維持されなければならない。適切な硬化を確保するのに必要な時間および温度は、使用する結合剤の性質、ガラス繊維製品の厚さなどに依存するような要素である。
【0014】
典型的には、ホルムアルデヒドを含まない結合剤については、望ましい温度は一般に160〜240℃の範囲で、0.5〜5分間の時間である。さらに、この時間および温度は、ある程度、結合剤系の性質に依存する。例えば、EP0583086A1に記載されているものなどのポリアクリル酸結合剤は、温度に依存する任意の時間と共に、180℃〜240℃の温度を必要とする。その他の系では、150〜200℃の温度で0.5〜15分間の範囲の時間、製品を硬化することが必要とされる。
【0015】
確実にガラス繊維製品が完全に加熱されるように、センサを使用して、製品がオーブンを出るときに、その製品の表面熱を測定する。この表面温度が少なくとも約210℃である場合、その製品の硬化は十分であることが分かった。この表面温度が約210℃未満である場合、完全な硬化は起こらず、製品の品質が悪くなる。
【0016】
あるいは、ガラス繊維製品がオーブンを通過する間、熱測定を行うことができる。これは、熱電対を製品に直接取り付け、その製品がオーブン中を通過するときに、製品の温度の変化および周囲の温度の変化をモニターすることによって達成することができる。熱電対に集められたデータは、オーブンの外部にある記録装置、または製品がオーブンを通過するときにその製品と共に移動する記録装置に送られる。
【0017】
製品の温度が150℃に達しない場合、最終的な製品の温度を上昇させるようにオーブンの条件に調整を加える。これらには、1個以上のオーブン領域の温度を上昇させること、製品を通過する熱風の流量を増加させること、および製品がオーブン中を通過する速度を調整することが含まれる。これらの変数のいずれかを単独で、または組み合わせて、最終的な製品の温度を変化させることができる。
【0018】
本発明の方法では、最終的な製品の温度は、製品が硬化オーブンから出てくるときに測定される。次いで、測定された温度は、事前に設定された温度の値と比較される。測定値が事前に設定した値より低い場合、最終的な製品の温度が事前に設定した値以上になるように、最終的な製品の温度を上昇させるように、1個以上のオーブンの変数に調整が加えられる。
【0019】
前記の記載は、以下に記載される本発明の詳細な説明がよりよく理解されるために、本発明の特徴および技術的利点を幾分広く概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を成す、本発明のさらなる特徴および利点を以下に説明する。開示された概念および特定の実施形態が、本発明と同一の目的を実施するための改変または他の構成の設計の基礎として容易に利用され得ることを理解されたい。また、そのような同等の構成が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明から逸脱しないことも理解されたい。本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、その構成と操作方法のどちらに関しても、さらなる目的および利点と共に、添付の図面を参照して検討した時に以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、各図面は、例示および説明のためのみに提示されるものであり、本発明の範囲を定めるものとして意図されてはいないことを明確に理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明をより完全に理解するために、次に、以下の説明を添付の図面と共に参照する。
【0021】
ガラス繊維製品の構造結合性および物理的特性は、ガラス繊維を1つにまとめ、この製品に剛性および弾力性を与える結合剤の使用と直接関係がある。この結合剤組成物の有効性は、結合剤がどの程度硬化するかに大きく起因する。これは特に、ガラス繊維製造業者によって現在使用されている新規なホルムアルデヒドを含まない結合剤組成物にあてはまる。結合剤組成物の硬化は、ある程度、結合剤樹脂の温度、およびその温度が維持される時間の長さに依存する。本発明は、樹脂でコーティングされた製品が、確実にその樹脂が適切に硬化するのに十分に加熱されたかどうかを決定する手段を提供する。本発明はまた、製品が適切に硬化されていない場合、残りの製品が確実に適切に硬化するように硬化オーブンの条件を調整するフィードバックシステムも提供する。
【0022】
本発明は、特に、ホルムアルデヒドを含まない結合剤を含むが、それだけに限定されない、アクリル系熱硬化性結合剤の適切な硬化を保証するのに有用である。本発明の実施に有用なホルムアルデヒドを含まない結合剤は、その他のホルムアルデヒドを含まない樹脂を使用してもよいが、典型的には、アクリル樹脂などのポリカルボキシポリマーを含む樹脂から調製される。本明細書で使用される、「ホルムアルデヒドを含まない」という用語は、樹脂もしくは結合剤組成物が、実質的にホルムアルデヒドを含まない、および/または、硬化もしくは乾燥したときにホルムアルデヒドを放出しないことを意味する。それらは、一般的に、分子量が約10,000未満、好ましくは約5,000未満、最も好ましくは約3,000未満であり、約2,000であることが有利である。
【0023】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤において使用されるポリカルボキシポリマーは、複数の側鎖カルボキシ基を含む有機ポリマーまたはオリゴマーを含む。このポリカルボキシポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、桂皮酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸などを含むが、それに限定されることはない、不飽和カルボン酸から調製されたホモポリマーまたはコポリマーとすることができる。あるいは、このポリカルボキシポリマーは、無水マレイン酸、メタクリル酸無水物など、ならびにそれらの混合物を含むが、それに限定されることはない、不飽和の酸無水物から調製され得る。これらの酸および酸無水物を重合する方法は、化学技術分野では周知である。
【0024】
ホルムアルデヒドを含まない硬化性水性結合剤組成物はまた、少なくとも2個のヒドロキシル基を含むポリオールを含む。このポリオールは、加熱および硬化作業の間、組成物中のポリ酸との反応に十分に利用できるように、十分に不揮発性でなければならない。このポリオールは、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レソルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール酸尿素(glycollated urea)、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、および、例えば、これによって参照により本明細書に組み込む米国特許第4,076,917号の教示に従って製造することができるビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジパミドなどのβ−ヒドロキシアルキルアミドなどが例示される、ある種の反応性ポリオールなど、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する、分子量が約1000未満の化合物とすることができる。あるいは、このポリオールは、例えば、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのホモポリマーまたはコポリマーなど、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む付加重合体とすることができる。本発明のために最も好ましいポリオールは、トリエタノールアミン(TEA)である。
【0025】
ポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量数とポリオール中のヒドロキシルの当量数の比は、約1/0.01から約1/3である。ポリオール中のヒドロキシルの当量に対してポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量が過剰であることが好ましい。ポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量数とポリオール中のヒドロキシルの当量数の比は、約1/0.4から約1/1であることがより好ましい。ポリ酸のカルボキシ、酸無水物、またはそれらの塩の当量数とポリオール中のヒドロキシルの当量数の比は、約1/0.6から約1/0.8であることが最も好ましく、最も好ましくは1/0.65から1/0.75である。0.7:1に近い低い比は、低分子量ポリカルボキシポリマーおよびpHが低い結合剤と組み合わせたとき、本発明において特に有利なものであることが分かった。
【0026】
ホルムアルデヒドを含まない硬化性水性結合剤組成物はまた、触媒を含む。最も好ましくは、この触媒は、例えば、ポリリン酸のアルカリ金属塩、リン酸二水素のアルカリ金属塩、ポリリン酸、アルキルホスフィン酸など、分子量が約1000未満の化合物であることができるリン含有促進剤である。あるいは、この触媒は、例えば、次亜リン酸ナトリウムの存在下で生成したアクリル酸および/またはマレイン酸の付加重合体、リン酸塩の連鎖移動剤または連鎖停止剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーから製造した付加重合体、および、例えば、共重合したホスホエチルメタクリレート、同様のホスホン酸エステル、共重合したビニルスルホン酸モノマー、それらの塩などの酸官能性モノマー残基を含む付加重合体など、リン含有基を有するオリゴマーまたはポリマーとすることができる。このリン含有促進剤は、ポリ酸とポリオールの合計重量の約1重量%から約40重量%のレベルで使用することができる。リン含有促進剤のレベルは、ポリ酸とポリオールの合計重量の約2.5重量%から約10重量%であることが好ましい。
【0027】
本発明で使用する結合剤貯蔵物は、通常、固形分を約48〜53重量%含有する水性懸濁液として供給される。本発明で使用する結合剤組成物は、まず、この組成物が固形分を約1〜約10%含有する点まで結合剤をさらに希釈することによって調製される。
【0028】
次いで、pHが約3.5未満、好ましくは3.0未満、非常に好ましくは2.5未満になるように、水性結合剤組成物に酸を添加する。低いpHは、この結合剤組成物の適切な塗布と硬化を確実にする上で重要であることが分かった。
【0029】
結合剤の硬化は、最も多くの場合、結合剤がコーティングされた繊維を硬化オーブン中で加熱することによって達成される。硬化オーブンには、一般的に、1個以上の温度領域が配置されている。各領域で、結合剤がコーティングされた繊維は、150℃〜325℃の範囲の温度、好ましくは180〜250℃の範囲の温度にさらされる。製品がオーブン中にいる時間は、約5分〜約3分の範囲であり、1〜2.5分が好ましい。また、確実にガラス繊維製品が均一に加熱されるように、各領域に付随するファンによって空気がガラス繊維製品中を強制的に通過させられる。
【0030】
図1を参照すると、ガラス繊維製品は、溶融ガラスを紡績機10中に導入してガラス繊維12を形成することによって作製される。これらの繊維は紡績機を出て、上記の結合剤を含む水性結合剤組成物でコーティングされる。次いで、これらの繊維は回収ボックス13に集められ、そこで、成形コンベヤ14上に集められ、未硬化のコーティングされた繊維のマット15を形成する。確実にこのマットの形成を促進するように、ファン16によって空気が回収ボックス17を通って排気される。ドロップアウトボックス17は、コンベヤ14とファン16の間の空気の速度を低下させるために使用される。
【0031】
各領域に付随するファン25、26、27および28は、ガラス繊維マット中に熱風を引き込み、通過させるために使用される。成形コンベヤ14は、マット15を、回収ボックスから次に第2コンベヤ17へと運ぶ。次いで、それは、硬化オーブン20中を移動するメッシュオーブンコンベヤ18に移送される。図1の硬化オーブン20は4個の領域を有するオーブンであるが、任意の領域配置いずれをも製品を確実に適切に硬化するために使用することができる。
【0032】
オーブンの各領域は、付随する加熱ユニット21、22、23、24およびファン25、26、27、28を備え、それらは各々、別個に制御することができる。各領域に付随するファン25、26、27および28は、繊維マット15中に熱風を引き込み、通過させ、マット15を十分に加熱し、それによって確実に完全に硬化させるために使用される。
【0033】
未硬化のガラス繊維マット15は、このガラス繊維マット15をオーブン20中、一定の速度で各領域に関連して搬送するコンベヤ19によって、オーブン20中を通過させられる。オーブン温度、空気流量およびオーブン中における滞留時間の組み合わせによって、ガラス繊維製品は、結合剤組成物が完全に硬化するのに十分な長い時間、十分な温度に達していなければならない。
【0034】
しかしながら、硬化オーブン中の温度プロフィールは常に均一であるとは限らず、製品は、必要な時間、所望の温度に達しないことがある。一実施形態では、本発明は、確実に製品が所望の温度になるように、硬化オーブン直後の製品の温度をモニターし、その測定温度に基づいて、1個以上のオーブンの変数を調整するシステムを提供する。
【0035】
図1を再度参照すると、温度センサ29は、硬化された製品がオーブン20を出るときに製品30の温度をモニターことができるように、硬化オーブン20の出口に配置されている。温度センサ29は測定した温度を制御ユニット31に送り、制御ユニットで、その測定温度が事前に設定した温度と比較される。温度が事前に設定した温度から所定の差異を超えて逸脱する場合、制御ユニットは、製品を変化させることができる1個以上の上流の変数を変化させる。
【0036】
この実施形態では、分光センサなどの間接型センサが一般的に使用され、赤外線センサが好ましい。間接型センサは、プロセスの流れを妨げないので、好ましい。
【0037】
赤外線センサの選択は、必要な熱線、評価する材料の大きさ、性質などの要素に依存する。赤外線センサは、製品がオーブンを出るときに、その製品が放出する赤外線エネルギーを検出する。製品が熱いほど、赤外線エネルギーは大きくなる。次いで、放射される赤外線エネルギーは、光学素子を通して集められ、検出器上に収束される。そして、検出器は、そのエネルギーを電気信号に変換し、次いで、その電気信号は増幅され、表示される。この信号はまた、データ処理装置に送ることもできる。
【0038】
本発明の実施においては、赤外線センサは、約38℃ほどの低い温度から232.2℃ほどの高い温度まで検出することができるものであるべきである。センサの精度は、±2%以内であるべきである。
【0039】
好ましい実施形態において十分な測定を行うのに、1個のセンサで十分であるが、2個以上のセンサが使用される。この方法で、製品の温度のより完全な測定を行うことができる。
【0040】
比較に使用される事前に設定した温度プロフィールまたは最終的な製品の温度は、主に、結合剤組成物の性質、硬化前の製品の水分量などに依存する。一般に、ホルムアルデヒドを含まないアクリル系の結合剤については、最終製品は、182〜260℃であるべきである。
【0041】
上記の方法のうちの一つで測定を行うと、次いで、データは制御ユニット31に送られ、そこで、測定温度が所定の、または事前に設定した温度または温度プロフィールと比較される。測定データが事前に設定した値と所定の差異を超えて異なる場合、次いで、測定値を事前に設定した値と一致させるように硬化プロセスに調整を加える。一般的には、許容される差異は5〜25℃の範囲であり、差異が±5℃を超えないことが好ましい。調整することができる変数には、製品を通過する空気流量、硬化オーブン内の温度、および製品がオーブン中を通過する速度、ならびに製品がオーブンに入るときのその製品の水分量がある。空気流量および温度に関しては、オーブン内の1個以上の領域に対して調整を加えることができる。
【0042】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤系を用いて作業する場合、硬化オーブン20が少なくとも2個の領域を有することが好ましく、4個の領域を有することがより好ましい。したがって、本発明の実施においては、最終的な製品の温度が低すぎる場合、領域のうちの少なくとも1個の温度を上昇させることができる。例えば、図1を再度参照すると、制御ユニット31が最終的な製品の温度が事前に設定した値より低いと決定した場合、制御ユニット31は、加熱ユニット21、22、23および24のうちの1個以上に信号を送信し、それによって、それぞれの領域の温度を上昇させる。図1を再度参照すると、制御ユニット31は、1個、2個、3個、または4個すべての領域を変化させることができる。
【0043】
オーブン関係の制御は、測定温度を事前に設定した値と比較し、次いで、それらの値の差に基づいて、温度センサの上流にあるオーブンの条件を変化させることができるシステムいずれによっても達成することができる。このシステムは、手動、自動、または半自動型とすることができるが、自動型システムが好ましい。そのようなシステムの1つには、Rockwell Automation製のPIDユニットがある。
【0044】
1個以上の領域の温度を上昇させる別の手段は、製品を通過する空気流の速度を変化させることである。この実施形態では、制御ユニットは、領域のファン25、26、27および28のうちの1個以上に信号を送って、各領域に付随するファンの速度を増大させ、それによって、空気流量を増加させる。領域および製品を通過する空気流量を増加させることによって、製品のより均一な加熱が達成される。
【0045】
製品の最終的な温度を変化させる更に別の手段は、製品がオーブン中を通過する速度を調整することによるものである。一般に、オーブン中での滞留時間を長くすると、製品はより熱くなり、よりよく硬化される結果になる。これは、コンベヤを駆動するモータ32に信号を送る制御ユニットによって達成される。コンベヤの速度を調整することによって、製品の滞留時間を長く、または短くすることができる。
【0046】
図2は、本発明の異なる実施形態を示す。この実施形態では、温度熱電対133が製品115に接して配置されている。記録装置134はセンサに連結されており、製品がオーブンを通過するときの製品および周囲の温度、ならびに製品がオーブン中を通過するときのその製品の温度を記録する。そのようなモニタの1つには、ECD,Inc.製のM.O.L.E.(登録商標)プロファイラーがある。これによって、製品の温度が時間に対してどのように変化したか、どのくらいの時間、製品が所定の温度であったかを示す温度プロフィールが得られる。データ記録装置がオーブンを出ると、次いで、データは抽出され、制御ユニット131によって事前に設定した製品プロフィールと比較される。一般的には、これには、製品が少なくとも20秒間、少なくとも180℃の温度に達したかどうかを調べるチェックが含まれる。図2に示す残りの要素は、番号の頭に「100」が付けられている以外は図1で定義されているのと同じである。
【0047】
上記のように、測定プロフィールが事前に設定したプロフィールから逸脱する場合、測定プロフィールが事前に設定したプロフィールと許容できる差異内で一致するまで1個以上のオーブンの変数に調整を加える。上記のように、この調整には、1個以上の領域の温度を上昇させることが含まれる。
【0048】
製品の温度をモニターする別の方法は、製品に熱電対を取り付けることによるものである。そして、この熱電対は、熱電対からオーブンの外側にあるモニター装置にデータを送信するワイヤに取り付けられている。このワイヤは、熱電対が製品と共にオーブン中を完全に通過することができるのに十分な長さのものである。
【0049】
これらのシステムの利点は、プロセスの様々な段階における製品の温度を直接測定できることである。これによって、製品がなる実際の温度、および、どのくらいの時間その製品がその温度であったかをより正確に読み取ることが可能になる。
【0050】
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換および改変ができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械装置、製造、物質組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。本明細書から当業者には容易に理解されるように、本明細書に記載の対応する実施形態とほぼ同じ機能を実行する、またはほぼ同じ結果を実現する、既存の、または今後開発されるプロセス、機械装置、製造、物質組成物、手段、方法または工程を利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、こうしたプロセス、機械装置、製造、物質組成物、手段、方法または工程を含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】出口センサを使用する本発明の制御システムの概略図である。
【図2】製品に付属する温度モニタを使用する制御システムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤組成物を硬化する方法であって、
ガラス繊維を結合剤組成物でコーティングするステップと、
コーティングした前記ガラス繊維をオーブン中で加熱するステップと、
前記製品がオーブンを出るときに、製品の温度を測定するステップと、
前記測定温度を事前に設定した温度と比較するステップと、
前記測定温度が事前に設定した温度以上になるように、モニターより上流のプロセス条件の1つ以上を調整するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記製品温度が、赤外線センサによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オーブンが、複数の領域を有するオーブンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセス条件が、前記オーブンのうちの少なくとも1個の領域の温度である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセス条件が、前記オーブン中において前記製品を通過する空気流量である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセス条件が、前記オーブン中における滞留時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合剤が、アクリル系熱硬化性結合剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記結合剤が、ホルムアルデヒドを含まない結合剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ホルムアルデヒドを含まない結合剤組成物を硬化する方法であって、
ガラス繊維をホルムアルデヒドを含まない結合剤組成物でコーティングするステップと、
前記ガラス繊維を複数の領域を有する硬化オーブン中で加熱するステップと、
前記製品がオーブンを通過するときに製品の温度を測定して、温度プロフィールを作成するステップと、
前記測定温度プロフィールを事前に設定した温度プロフィールと比較するステップと、
前記測定温度プロフィールが事前に設定した温度プロフィールから逸脱する場合、プロセス条件の1つ以上を調整するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記プロセス条件が、前記オーブンの1個以上の領域の温度である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセス条件が、前記オーブンの1個以上の領域を通過する空気流量である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセス条件が、前記オーブン中における前記製品の滞留時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
結合剤がコーティングされたガラス繊維製品を硬化する方法であって、
ガラス繊維を結合剤組成物でコーティングするステップと、
コーティングした前記製品を硬化オーブン中で硬化させるステップと、
前記製品がオーブンを出るときに、製品の熱を分光センサによって測定するステップと、
前記測定温度を事前に設定した温度と比較するステップと、
前記測定温度が事前に設定した温度から逸脱する場合、前記硬化オーブンに関係するプロセス条件の1つ以上を調整するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記製品温度が、赤外線センサによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記オーブンが、複数の領域を有するオーブンである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセス条件が、前記オーブンのうちの少なくとも1個の領域の温度である、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記プロセス条件が、前記オーブン中において前記製品を通過する空気流量である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセス条件が、前記オーブン中における滞留時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記結合剤が、アクリル系熱硬化性結合剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記結合剤が、ホルムアルデヒドを含まない結合剤である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−506045(P2008−506045A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520481(P2007−520481)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/024026
【国際公開番号】WO2006/017106
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(506427093)
【Fターム(参考)】