説明

ホログラフィックデータ記憶物品の製造方法

【課題】
ホログラフィックデータ記憶媒体の製造方法が提供される。
【解決手段】
この方法は、(a)1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材を用意し、(b)光学的に透明な基材が約0.1〜1の範囲の吸光度を有する1以上の波長で、光学的に透明な基材を照射して、1以上の光学的に読取り可能なデータ及び光化学活性染料の1種以上の光生成物を含む改変された光学的に透明な基材を生成させることからなる。前記1以上の波長は約300〜約800nmの範囲である。光学的に透明な基材は厚さが100μm以上であり、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光化学活性染料を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホログラフィックデータ記憶物品を製造し使用する方法に関する。さらに、本開示はホログラフィックデータ記憶物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック記憶は、2つの光のビームの交差によって感光性媒体中に作り出される三次元干渉パターンの像であるホログラムの形態でのデータの記憶である。デジタルコード化されたデータを含んでいるシグナルビームと、参照ビームとの重ね合わせによって、媒体のボリューム内に干渉パターンが形成され、その結果媒体の屈折率を変化又は変調させる化学反応が生じる。この変調がシグナルからの強度と位相の両方の情報をホログラムとして記録するのに役立つ。このホログラムは、後に、記憶媒体を参照ビームだけに露光させることによって取り出すことができる。すなわち、この参照ビームが記憶されたホログラフィックデータと相互作用して、ホログラフィック像を記憶するのに用いた最初のシグナルビームに比例して再構成されたシグナルビームを生成する。こうして、ホログラフィックデータ記憶においては、データは三次元干渉パターンを介して媒体のボリューム全体に記憶される。
【0003】
各ホログラムは1〜1×10ビット以上のデータを保有し得る。CDやDVDを始めとする表面型記憶形式と比べたときのホログラフィック記憶の1つの明確な利点は、シグナル及び/又は参照ビームの角度、波長、又は媒体位置を変えるなどのような多重化技術を使用して感光性媒体の同じボリューム内に多数のホログラムを重複して記憶させることができるということである。しかし、実行可能な技術としてのホログラフィック記憶の具現化に向けての主たる障害は、信頼できる経済的に実現可能な記憶媒体の開発であった。
【0004】
初期のホログラフィック記憶媒体では、入射光が屈折率の変化を生じさせるドープした又はドープしてないニオブ酸リチウム(LiNbO)のような無機の光−屈折性結晶を使用した。これらの屈折率の変化は光−誘起された電子の創成とその後の捕捉に起因しており、内部電場を誘起し、これが線形電気光学効果によって最終的に屈折率を変化させる。しかし、LiNbOは高価であり、効率が比較的悪く、経時的に減衰し、しかも有意な屈折率の変化を観察するには厚い結晶が必要である。
【0005】
より最近の研究によって、光学的に誘起された重合工程のためにより大きい屈折率の変化を生じることができるポリマーが開発された。これらの物質は、フォトポリマー(感光性樹脂)といわれ、LiNbO及びその変形体と比べて大幅に改良された光学的感度と効率を有する。従来技術の方法においては、媒体が1種以上の光活性の重合性液体モノマー又はオリゴマー、開始剤、不活性ポリマー充填材、及び場合により増感剤の均一な混合物からなる「単一化学」系が用いられていた。この媒体は最初モノマー又はオリゴマーの形態の混合物の割合が大きいので、形と安定性を提供するには紫外線(UV)硬化段階を必要とするゲル様の粘稠度を有していることがある。残念ながら、UV硬化段階は光活性のモノマー又はオリゴマーの大部分を消費し、残るデータ記憶に利用可能な光活性のモノマー又はオリゴマーが著しく少なくなる可能性がある。また、高度に制御された硬化条件下でも、UV硬化段階では重合度が変動し、結果として媒体試料間で均一性が悪くなることが多い。
【0006】
ポリマー材料に基づき染料をドープしたデータ記憶材料が開発された。染料をドープしたデータ記憶材料の感度は、染料の濃度、記録用の波長における染料の吸収断面積、光化学的遷移の量子効率、及び単位染料密度に対する染料分子の屈折率変化に依存する。しかし、染料濃度と吸収断面積の積が増大すると、記憶媒体(例えば、光学的データ記憶ディスク)は不透明になり、そのため記録と読取りの両方が複雑になる。
【特許文献1】米国特許第4217438号明細書
【特許文献2】米国特許第4920220号明細書
【特許文献3】米国特許第5438439号明細書
【特許文献4】米国特許第5440669号明細書
【特許文献5】米国特許第5450218号明細書
【特許文献6】米国特許第6322931号明細書
【特許文献7】米国特許第6574174号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0136333号明細書
【非特許文献1】Eur.J.Org.Chem.,pp.91−97,2005
【非特許文献2】The Chemical Society of Japan,Chemistry Letter,pp.1358−1359,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、効率的であり、光のような電磁エネルギーに感受性である光化学活性染料を使用して、染料の主吸収ピークから干渉されることなく、高いボリューメトリックデータ記憶キャパシティーを達成することができるホログラフィックデータ記憶方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書には、多量のデータを確実に記憶するのに価値があるホログラフィックデータ記憶媒体を製造し使用する方法が開示されている。
【0009】
1つの態様では、本発明は、ホログラフィックデータ記憶媒体を製造する方法である。この方法は、(a)1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材を用意し、(b)その光学的に透明な基材を、この光学的に透明な基材が約0.1〜1の範囲の吸光度を有する1以上の波長で照射して、1以上の光学的に読取り可能なデータ及び光化学活性染料の1種以上の光生成物を含む改変された光学的に透明な基材を生成させることを含んでなる。この1以上の波長は約300〜約800nmの範囲である。光学的に透明な基材は100μm以上の厚さであり、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光化学活性染料を含んでいる。
【0010】
本発明の別の態様では、光学的書き込み及び読取り方法が提供される。この方法では、ホログラフィックデータ記憶媒体を、データ(すなわち1以上のデータ)を保有するシグナルビーム及び参照ビームで同時に照射して、光化学活性染料を1種以上の光生成物に部分的に変換すると共にシグナルビーム内のデータをホログラムとしてホログラフィックデータ記憶媒体内に記憶する。ホログラフィック記憶媒体は光学的に透明な基材と1種以上の光化学活性染料を含んでいる。光学的に透明な基材は、100μm以上の厚さを有しており、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光化学活性染料を含んでおり、約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で約0.1〜1の範囲のUV−可視吸光度である。次に、ホログラフィック記憶媒体を読取りビームで照射し、ホログラムからの回折光に含まれるデータを読取る。ある実施形態では、光化学活性染料から1種以上の光生成物への変換は、データ記憶媒体が光生成物だけでなく染料も含み、ホログラムを生成するのに必要な屈折率コントラストを提供するようにして起こる。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、ホログラフィックデータ記憶物品を使用する方法である。この方法では、ホログラフィックデータ記憶物品中のホログラフィックデータ記憶媒体を、第1の波長を有する電磁エネルギーで照射する。このホログラフィックデータ記憶媒体は、100μm以上の厚さの光学的に透明な基材を含んでおり、また光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で1種以上の光化学活性染料を含む。照射は、光学的に透明な基材が約0.1〜1の範囲のUV−可視吸光度を有する約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で行う。1種以上の光化学活性染料の1種以上の光生成物と、ホログラムとして記憶された1以上の光学的に読取り可能なデータとを含む改変された光学的に透明な基材が形成される。次いで、この改変された光学的に透明な基材を、第2の波長を有する電磁エネルギーで照射して、ホログラムを読取る。
【0012】
さらに別の態様では、本発明はホログラフィックデータ記憶媒体を製造する方法である。この方法では、1種以上の光学的に透明なプラスチック材料、及び約300〜約800nmの範囲の波長で約0.1〜約1の範囲のUV−可視吸光度を有する1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材のフィルムを形成する。このフィルムは100μm以上の厚さを有しており、光学的に透明な基材は約0.1〜約10重量%の光学的に透明な基材を含んでいる。
【0013】
別の態様では、本発明はホログラフィックデータ記憶媒体である。このホログラフィックデータ記憶媒体は、1種以上の光学的に透明なプラスチック材料、1種以上の光化学活性染料、及びその1種以上の光生成物を含む光学的に透明な基材からなる。1種以上の光生成物は光学的に透明な基材内でパターン化されて、ホログラフィック記憶媒体内に含まれる1以上の光学的に読取り可能なデータを提供する。光学的に透明な基材は100μm以上の厚さであり、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光化学活性染料を含んでいる。光学的に透明な基材は約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で約0.1〜1の範囲のUV−可視吸光度を有する。
【0014】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の幾つかの態様及び本発明で使用する一般的な科学的原理は、2005年6月23日に公開された米国特許出願公開第2005/0136333号(出願番号第10/742461号)、及び2004年9月30日に出願された同時係属中の出願第10/954779号(いずれも、援用によりその全体が本明細書の一部をなす)を参照することによってよりはっきりと理解することができる。
【0016】
本明細書で定義されているように、用語M/#はデータ記憶媒体のキャパシティー(収容能力)を意味し、所与の回折効率でデータ記憶媒体のボリュームエレメントに記録することができる多重化ホログラムの総数の関数として測定することができる。M/#は屈折率の変化(Δn)、媒体の厚さ、及び染料濃度のような様々なパラメーターに依存する。これらの用語は本開示中でさらに説明する。M/#は次式(1)に示されるように定義される。
【0017】
【数1】

ここで、ηはi番目のホログラムの回折効率であり、Nは記録されたホログラムの数である。選択した波長、例えば532nm又は405nmにおける試験試料のM/#を測定する実験法では、試験する試料をコンピューターで制御される回転式試料台に載せる。この回転式試料台は高い角分解能を有しており、例えば約0.0001度である。M/#の測定には2つの段階、すなわち記録と読取りが必要である。記録の際には、複数の平面波ホログラムを同じ試料上の同じ位置に記録する。平面波ホログラムは、シグナルビームと参照ビームによって生成し記録される干渉パターンである。シグナルビームと参照ビームは互いにコヒーレントである。これらはいずれも、試料上の同じ位置に入射する、同じ方向に偏光した、同じパワーとビームサイズを有する平面波である。試料を回転させることによって複数の平面波ホログラムを記録する。隣接する2つのホログラム間の角度間隔は約0.2度である。この間隔は、追加のホログラムを多重化するとき、既に記録されているホログラムに対する影響が最小になると同時に媒体の総キャパシティーの使用が効率的であるように選択される。各ホログラムに対する記録時間はM/#の測定において一般に同じである。読取りの際には、シグナルビームを遮断する。参照ビームと増幅光検出器を使用して、回折されたシグナルを測定する。記録角度範囲にわたって約0.004度の段階サイズで試料を回転させることによって、回折されたパワーを測定する。読取りに使用する参照ビームのパワーは通例、記録に使用したものより約2〜3オーダー小さい。これは、読取りの間のホログラムの消去を最小にしつつ、測定可能な回折されたシグナルを維持するためである。回折されたシグナルに基づき、ホログラム記録角における回折ピークから多重化ホログラムを同定することができる。次に、i番目のホログラムの回折効率ηを、次式(2)を使用することによって計算する。
【0018】
【数2】

ここで、Pi、diffractedはi番目のホログラムの回折されたパワーである。次いで、ホログラムの回折効率と式(1)を使用してM/#を計算する。このように、ホログラフィック平面波特性決定系を使用して、データ記憶物質の特性、殊に多重化ホログラムを試験することができる。また、データ記憶物質の特性は回折効率を測定することによっても決定することができる。
【0019】
本明細書で定義される場合、用語「ボリュームエレメント」は、光学的に透明な基材又は改変された光学的に透明な基材の全ボリュームの三次元の一部分を意味する。
【0020】
本明細書で定義される場合、用語「光学的に読取り可能なデータ」は、記憶すべきデータの「ホログラム」を含む第1の又は改変された光学的に透明な基材の1以上のボリュームエレメントから構成されると理解することができる。個々のボリュームエレメント内の屈折率は、電磁放射線に暴露されていないボリュームエレメントの場合、又は光化学活性染料がボリュームエレメントの全体にわたって同じ程度に反応したボリュームエレメントの場合のように、ボリュームエレメントの全体にわたって一定であってもよい。ホログラフィックデータ書き込みプロセスの間に電磁放射線に暴露した殆どのボリュームエレメントは複雑なホログラフィックパターンを含んでおり、従ってボリュームエレメント内の屈折率はボリュームエレメントに渡って変化すると考えられる。ボリュームエレメント内の屈折率がボリュームエレメントに渡って変化する場合、ボリュームエレメントが、照射前の対応するボリュームエレメントの屈折率と比較し得る「平均屈折率」を有すると考えるのが便利である。このように、一実施形態では、光学的に読取り可能なデータは、照射前の光学的に透明な基材の対応するボリュームエレメントとは異なる屈折率を有する1以上のボリュームエレメントを含んでいる。データ記憶は、データ記憶媒体の屈折率を不連続な段階ではなく段階的に(連続的な正弦波の変化)局部的に変化させ、次いで誘起された変化を回折光学素子として使用することによって達成される。
【0021】
データをホログラムとして記憶するキャパシティー(M/#)はまた、データを読取るのに使用する波長における屈折率の変化/単位染料密度(Δn/N0)と、データをホログラムとして書き込むのに使用する所与の波長における吸収断面積(σ)との比に正比例する。屈折率変化/単位染料密度は、照射前のボリュームエレメントの屈折率から照射後の同じボリュームエレメントの屈折率を引いた差と、染料分子の密度との比によって与えられる。屈折率変化/単位染料密度は(センチメートル)の単位を有する。このように、ある実施形態では、光学的に読取り可能なデータは、1以上のボリュームエレメントの屈折率の変化/単位染料密度と、1種以上の光化学活性染料の吸収断面積との比が、センチメートルの単位で表して約10−5以上である1以上のボリュームエレメントを含んでいる。
【0022】
感度(S)は、一定量の光フルエンス(F)を使用して記録されるホログラムの回折効率の目安である。光フルエンス(F)は、光強度(I)と記録時間(t)の積によって与えられる。数学的に、感度は次式(3)で与えられる。
【0023】
【数3】

ここで、Iは記録用ビームの強度であり、「t」は記録時間であり、Lは記録(又はデータ記憶)媒体(例、ディスク)の厚さであり、ηは回折効率である。回折効率は次式(4)で与えられる。
【0024】
【数4】

ここで、λは記録媒体中の光の波長であり、θは媒体における記録角であり、Δnは、染料分子が光化学的変換を受ける記録プロセスにより生成する格子の屈折率コントラストである。
【0025】
吸収断面積は、原子又は分子が特定の波長で光を吸収する能力の尺度であり、平方cm/分子で測定される。一般にσ(λ)で示され、光学的に薄い試料について次式(5)に示すようにBeer−Lambert Lawによって支配される。
【0026】
【数5】

ここで、Nは立方センチメートル当たりの分子の濃度であり、Lは試料の厚さ(センチメートル)である。
【0027】
量子効率(QE)は所与の波長の各吸収された光子に対する光化学的遷移の確率の目安である。すなわち、ブリーチングプロセスともいわれる所与の光化学的変換を達成する入射光の効率の目安となる。QEは次式(6)で与えられる。
【0028】
【数6】

ここで、「h」はPlanck定数であり、「c」は光の速度であり、σ(λ)は波長λにおける吸収断面積であり、Fはブリーチングフルエンスである。パラメーターFは光強度(I)とブリーチングプロセスを特徴付ける時定数(τ)との積で与えられる。
【0029】
用語「光学的に透明な」は、光学的に透明な基材又は光学的に透明なプラスチック材料について使用する場合、1未満の吸光度を有し、すなわち約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で入射光の10%以上がその材料を通って透過することを意味する。
【0030】
本明細書で定義される場合、用語「光学的に透明な基材」は、光学的に透明なプラスチック材料と1種以上の光化学活性染料の組合せを意味し、これは1未満の吸光度を有し、すなわち、約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で入射光の10%以上がその物質を通って透過する。
【0031】
本明細書で定義される場合、用語「光学的に透明なプラスチック材料」は、1未満の吸光度を有し、すなわち、約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で入射光の10%以上が当該材料を通って透過するプラスチック材料を意味する。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪族基」とは、環状ではなく線状又は枝分かれした配列の原子からなる1以上の価数を有する有機基をいう。脂肪族基は1個以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基を含む原子の配列は、窒素、イオウ、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素のみで構成されていてもよい。便宜上、本明細書中で用語「脂肪族基」は、「環状ではなく線状又は枝分かれした配列の原子」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基、などのような広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC脂肪族基であり、このメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC脂肪族基であり、このニトロ基は官能基である。脂肪族基は、同じでも異なっていてもよい1個以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素がある。1個以上のハロゲン原子を含む脂肪族基として、ハロゲン化アルキル、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチルエン(例えば、−CHCHBrCH−)、などがある。脂肪族基の別の例としては、アリル、アミノカルボニル(すなわち、−CONH)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(すなわち、−CHC(CN)CH−)、メチル(すなわち、−CH)、メチレン(すなわち、−CH−)、エチル、エチレン、ホルミル(すなわち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち、−CHOH)、メルカプトメチル(すなわち、−CHSH)、メチルチオ(すなわち、−SCH)、メチルチオメチル(すなわち、−CHSCH)、メトキシ、メトキシカルボニル(すなわち、CHOCO−)、ニトロメチル(すなわち、−CHNO)、チオカルボニル、トリメチルシリル(すなわち、(CHSi−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(すなわち、(CHO)SiCHCHCH−)、ビニル、ビニリデン、などがある。さらなる例として、C〜C10脂肪族基は1個以上で10個以下の炭素原子を含有する。メチル基(すなわち、CH−)はC脂肪族基の一例である。デシル基(すなわち、CH(CH2)−)はC10脂肪族基の一例である。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」とは、1個以上の芳香族基を含み1以上の価数を有する原子の配列をいう。1個以上の芳香族基を含み1以上の価数を有する原子の配列は窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素で構成されていてもよい。本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」としては、限定されることはないが、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニルエン、及びビフェニル基がある。既に記載したように、芳香族基は1個以上の芳香族基を含有する。芳香族基は常に4n+2個の「非局在化」電子を有する環状構造であり、「n」はフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示されるように1以上の整数である。芳香族基はまた非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族成分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族成分−(CH−と縮合した芳香族基(C)からなる芳香族基である。便宜上、用語「芳香族基」は本明細書中で、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基、などのような広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC芳香族基であり、このメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC芳香族基であり、このニトロ基は官能基である。芳香族基には、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPhC(CFPhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(すなわち、3−CClPh−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(すなわち、4−BrCHCHCHPh−)、などのようなハロゲン化芳香族基が含まれる。芳香族基の別の例としては、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(すなわち、4−HNPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(すなわち、NHCOPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPhC(CN)PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPhCHPhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(すなわち、−OPh(CHPhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(すなわち、4−HOCHPh−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(すなわち、4−HSCHPh−)、4−メチルチオフェン−1−イル(すなわち、4−CHSPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(すなわち、2−NOCHPh)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェニル−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)、などがある。用語「C〜C10芳香族基」には、3個以上であるが10個以下の炭素原子を含有する芳香族基が含まれる。芳香族基1−イミダゾリル(C−)はC芳香族基を代表する。ベンジル基(C−)はC芳香族基を代表する。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「環式脂肪族基」とは、1以上の価数を有し、環状であるが芳香族ではない原子の配列からなる基をいう。本明細書で定義される場合、「環式脂肪族基」は芳香族基を含有しない。「環式脂肪族基」は1個以上の非環状成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C11CH−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族ではない原子の配列)とメチレン基(非環状成分)を含む環式脂肪族基である。環式脂肪族基は窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素で構成されていてもよい。便宜上、用語「環式脂肪族基」は本明細書中で、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基、などのような広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC環式脂肪族基であり、このメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC環式脂肪族基であり、このニトロ基は官能基である。環式脂肪族基は同じでも異なっていてもよい1個以上のハロゲン原子を含んでいてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素がある。1個以上のハロゲン原子を含む環式脂肪族基としては、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(すなわち、−C10C(CF10−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CHCHBrCH10O−)、などがある。環式脂肪族基の別の例として、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(すなわち、HNC10−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(すなわち、NHCOC−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち、−OC10C(CN)10O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち、−OC10CH10O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(すなわち、−OC10(CH10O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち、4−HOCH10−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち、4−HSCH10−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(すなわち、4−CHSC10−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CHOCOC10O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(すなわち、NOCH10−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CHO)SiCHCH10−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)、などがある。用語「C〜C10環式脂肪族基」には、3個以上であるが10個以下の炭素原子を含有する環式脂肪族基含まれる。環式脂肪族基2−テトラヒドロフラニル(CO−)はC環式脂肪族基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C11CH−)はC環式脂肪族基を代表する。
【0035】
本発明はホログラフィックデータ記憶及び検索に光学的データ記憶を使用する方法を提供する。これらのホログラフィック記憶媒体は、光学的に透明なプラスチック材料と1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材を含む。光化学活性染料は比較的低い吸収断面積のような望ましい光学的特性有する一方で比較的高い屈折率変化及び/又は比較的高い量子効率を有する。また、高い量子効率によって、より高い感度が得られる。これは、感度が量子効率と屈折率変化(Δnと定義される)の積に正比例するからである。光化学的染料を含む光学的に透明な基材中にデータをホログラムとして書き込むのは、染料が書込波長において光化学的変換を受けることにより、1以上の光学的に読取り可能なデータを含む改変された光学的に透明な基材が生成するためである。染料をドープしたデータ記憶物質の感度は、染料の濃度(N)、記録用波長における染料の吸収断面積、光化学的遷移の量子効率QE、及び単位染料密度に対する染料分子の屈折率変化(Δn/N)に依存する。しかし、染料濃度と吸収断面積の積が増大するにつれて、ディスクが不透明になり、記録と読取りの両方が複雑になる。従って、高いM/#を達成するための所定の染料は、染料の主UV−可視吸収ピークから取り出される、データを書き込むのに使用する波長で高い屈折率変化と高い量子効率を伴って部分的な光化学的変換を受ける物質である。
【0036】
光化学活性染料は、最大吸収及び500nm未満のスペクトル幅(半値幅、FWHM)と関連する中心波長を特徴とする光学的吸収共鳴を有する染料分子として説明することができる。加えて、光化学活性染料分子は、その吸収範囲内の波長で露光されたときに光に誘起された部分的な化学反応を受けて、1種以上の光生成物を形成する。この反応はより小さい構成成分を形成する酸化、還元、若しくは結合破壊、又はシグマトロピー転位のような分子再配列、又はペリ環状付加環化を始めとする付加反応のような光−分解反応であることができる。こうして、ある実施形態では、ホログラムの形態のデータ記憶が達成され、ここでは光生成物が改変された光学的に透明な基材内でパターン化されて(例えば、段階的)、1以上の光学的に読取り可能なデータが得られる。
【0037】
光化学活性染料(以後、「染料」ということがある)は、露光の際に染料の屈折率を能力、光が屈折率変化を生じる効率、及び染料が最大吸収を示す波長とデータの記憶及び/又は読取りに使用される所望の1以上の波長との間隔を始めとする幾つかの特性を基にして選択し利用する。光化学活性染料の選択は、ホログラフィック記憶媒体の感度(S)、光化学活性染料の濃度(N)、記録用波長における染料の吸収断面積(σ)、染料の光化学的変換の量子効率(QE)、及び屈折率変化/単位染料密度(すなわち、Δn/N)のような多くの要因に依存する。これらの要因のうち、QE、Δn/N、及びσは感度(S)、また情報記憶キャパシティー(M/#)に影響するより重要な要因である。好ましい光化学活性染料は、高い屈折率変化/単位染料密度(Δn/N)(既に説明した通り)、光化学的変換段階における高い量子効率、及び光化学的変換に使用する電磁放射線の波長における低い吸収断面積を示すものである。
【0038】
光化学活性染料は、電磁放射線により書き込み、読取ることができるものである。化学線、すなわち約300〜約1100nmの波長を有する放射線を使用して書き込み(シグナルビームで)、読取る(読取りビームで)ことができる染料を使用するのが望ましい。書き込み読取りを行う波長は約300〜約800nmである。一実施形態では、書き込み読取りは約400〜約600nmの波長で行う。別の実施形態では、書き込み読取りは約400〜約550nmの波長で行う。さらに別の実施形態では、読取り波長は、書き込み波長から0〜約400nmシフトするようにする。書き込み読取りを行う代表的な波長は約405〜約532nmである。ある実施形態では、光化学活性染料はビシナルジアリールエテンである。別の実施形態では、光化学活性染料はビシナルジアリールエテンから誘導された光生成物である。さらに別の実施形態では、光化学活性染料はニトロンである。さらにまた別の実施形態では、光化学活性染料はニトロスチルベンである。ビシナルジアリールエテン、ニトロン、ビシナルジアリールエテンから誘導された光生成物、及びニトロスチルベンからなる群から選択されるものを2種以上含む任意の組合せを使用することもできる。
【0039】
代表的な1群のビシナルジアリールエテン化合物は次の一般構造(I)で表すことができる。
【0040】
【化1】

ここで、「e」は0又は1であり、Rは結合、酸素原子、置換された窒素原子、イオウ原子、セレン原子、二価C〜C20脂肪族基、ハロゲン化二価C〜C20脂肪族基、二価C〜C20環式脂肪族基、ハロゲン化二価C〜C20環式脂肪族基、二価C〜C30芳香族基であり、ArとArは各々独立してC〜C40芳香族基、又はC〜C40ヘテロ芳香族基であり、ZとZは独立して結合、水素原子、一価C〜C20脂肪族基、二価C〜C20脂肪族基、一価C〜C20環式脂肪族基、二価C〜C20環式脂肪族基、一価C〜C30芳香族基、又は二価C〜C30芳香族基である。下表に、式Iで表される化学的に上位の群に含まれる個々のビシナルジアリールエテン化合物を例示する。表に掲げた代表的な構造で、芳香族基ArとArの各々は、基Z及びZと同様に同一であることに注意されたい。当業者には理解されるように、ArはArと構造が異なっていてもよいし、ZはZと構造が異なっていてもよく、かかる下位の群は一般構造I内に含まれ、本発明の範囲内に包含される。
【0041】
【化2】

別の実施形態では、eは0であり、ZとZはC〜Cアルキル、C〜Cパーフルオロアルキル、又はCNである。さらに別の実施形態では、eは1であり、ZとZは独立してCH、CF、又はC=Oである。さらに別の実施形態では、ArとArは各々独立してフェニル、アントラセニル、フェナントレニル、ピリジニル、ピリダジニル、1H−フェナレニル及びナフチルからなる群から選択される芳香族基であり、これは場合により1以上の置換基で置換されていてもよく、その置換基は各々独立してC〜Cアルキル、C〜Cパーフルオロアルキル、C〜Cアルコキシ、又はフッ素である。さらに別の実施形態では、ArとArの1以上は次の構造(II)、(III)、及び(IV)からなる群から選択される1以上の芳香族部分からなる。
【0042】
【化3】

ここで、R、R、R、及びRは水素、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基、又はC〜C10芳香族基であり、Rは各々の場合に独立してハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基、又はC〜C10芳香族基であり、「b」は0〜4までの整数であり、XとYはイオウ、セレン、酸素、NH、及び、C〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基、又はC〜C10芳香族基で置換された窒素からなる群から選択され、QはCH又はNである。一実施形態では、1以上のR、R、R、及びRは水素、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル、C〜Cパーフルオロアルキル、シアノ、フェニル、ピリジル、イソキサゾリル、−CHC(CN)からなる群から選択される。
【0043】
既に述べたように、好ましい光化学活性染料は、高い屈折率変化、光化学的変換段階における高い量子効率、及び光化学的変換に使用する電磁放射線の波長における低い吸収断面積を示すものである。かかる適切な光化学活性染料の一例はビシナルジアリールエテン(V)で例示される。
【0044】
【化4】

これは、1,2−ビス{2−(4−メトキシフェニル)−5−メチルチエン−4−イル}−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペント−1−エンと命名することができる。化合物(V)は分子内で環化する波長である約600nmで約1のUV吸光度を示し、その環化段階で約0.8の高いQEを示す。ビシナルジアリールエテン(V)はまた上記表にも例I−1として表されており、一般構造Iで、Rがパーフルオロトリメチレン基であり、「e」が1であり、ZとZが各々結合であり、ArとArが各々2−(4−メトキシフェニル)−5−メチルチエン−4−イル部分である。
【0045】
光化学活性染料として使用することができる適切なビシナルジアリールエテンの他の例としては、ジアリールパーフルオロシクロペンテン、ジアリールマレイン酸無水物、ジアリールマレイミド、又は以上のジアリールエテンを1種以上含む組合せがある。ビシナルジアリールエテンは当技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。
【0046】
ビシナルジアリールエテンは光のような化学線(すなわち、光化学反応を起こすことができる放射線)の存在下で反応することができる。一実施形態では、代表的なビシナルジアリールエテンは光(hν)の存在下で次式(7)に従って可逆的環化反応を起こすことができる。
【0047】
【化5】

式中、X、Z、R及びeは上記の意味を有する。これらの環化反応を用いてホログラムを生成させることができる。ホログラムは、放射線を使用して環化反応又は逆の開環反応を起こすことによって生成させることができる。このように、ある実施形態では、ビシナルジアリールエテンから誘導された光生成物を光化学活性染料として使用することができる。ビシナルジアリールエテンから誘導されたかかる光生成物は次式(VI)で表すことができる。
【0048】
【化6】

式中、「e」、R、Z、及びZは式(I)を有するビシナルジアリールエテンについて記載したとおりであり、AとBは縮合環であり、RとRは各々独立して水素原子、脂肪族基、環式脂肪族基、又は芳香族基である。縮合環AとBは一方又は両方がヘテロ原子をもたない炭素環式環からなることができる。別の実施形態では、縮合環AとBは酸素、窒素、及びイオウからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。式(VI)の範囲内に入る化合物の非限定例としては次の化合物(VII)と(VIII)がある。
【0049】
【化7】

ここで、R10は各々の場合に独立して水素原子、メトキシ基、又はトリフルオロメチル基である。
【0050】
ニトロンも、ホログラフィックデータ記憶媒体を製造するための光化学活性染料として使用することができる。代表的なニトロンは一般に次の構造(IX)で表されるアリールニトロン構造を含んでいる。
【0051】
【化8】

ここで、Arは芳香族基であり、各々のR11、R12、及びR13は水素原子、脂肪族基、環式脂肪族基、又は芳香族基であり、R14は脂肪族基(例えば、イソプロピル)又は芳香族基であり、「n」は0〜4の値を有する整数である。ある実施形態では、基R14は次のものからなる群から選択される1以上の電子吸引性置換基を含んでいる。
【0052】
【化9】

ここで、R15〜R17は独立してC〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基、又はC〜C10芳香族基である。
【0053】
構造(IX)から分かるように、ニトロンはα−アリール−N−アリールニトロン又はアリール基とα−炭素原子が共役しているその共役類似体であり得る。α−アリール基は多くの場合アルキル基がcontain 1〜約4個の炭素原子を含有するジアルキルアミノ基で置換されていることが多い。ニトロンの適切な非限定例としては、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−フェニルニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−クロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(3,4−ジクロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−カルボエトキシフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−アセチルフェニル)−ニトロン、α−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−(4−シアノフェニル)−ニトロン、α−(4−メトキシフェニル)−N−(4−シアノフェニル)ニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−フェニルニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−(4−クロロフェニル)ニトロン、α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロン、α−スチリル−N−フェニルニトロン、α−[2−(1,1−ジフェニルエテニル)]−N−フェニルニトロン、α−[2−(1−フェニルプロペニル)]−N−フェニルニトロン、又は以上のニトロンを1種以上含む組合せがある。
【0054】
別の実施形態では、光化学活性染料はニトロスチルベン化合物である。ニトロスチルベン化合物は4−ジメチルアミノ−2’,4’−ジニトロスチルベン、4−ジメチルアミノ−4’−シアノ−2’−ニトロスチルベン、4−ヒドロキシ−2’,4’−ジニトロスチルベン、などで例示される。ニトロスチルベンはcis異性体、trans異性体、又はcisとtrans異性体の混合物であることができる。従って、別の実施形態では、ホログラフィックデータ記憶媒体を製造するのに有用な光化学活性染料は4−ジメチルアミノ−2’,4’−ジニトロスチルベン、4−ジメチルアミノ−4’−シアノ−2’−ニトロスチルベン、4−ヒドロキシ−2’,4’−ジニトロスチルベン、4−メトキシ−2’,4’−ジニトロスチルベン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−フェニルニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−クロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(3,4−ジクロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−カルボエトキシフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−アセチルフェニル)−ニトロン、α−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−(4−シアノフェニル)−ニトロン、α−(4−メトキシフェニル)−N−(4−シアノフェニル)ニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−フェニルニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−(4−クロロフェニル)ニトロン、α−[2−(1,1−ジフェニルエテニル)]−N−フェニルニトロン、及びα−[2−(1−フェニルプロペニル)]−N−フェニルニトロンからなる群から選択される1種以上のものからなる。
【0055】
電磁放射線に暴露された際に、ニトロンは単分子環化を経て次の構造(X)で例示されるオキサジリジンになる。
【0056】
【化10】

ここで、Ar、R11〜R14、及びnは構造(IX)に対して上で示したのと同じ意味を有する。
【0057】
光化学活性染料は光学的に透明な基材の総重量を基準にして、ある実施形態では約0.1〜約10重量%、別の実施形態では約1〜約4重量%、さらに別の実施形態では約4〜約7重量%の量で用いられる。
【0058】
ホログラフィックデータ記憶媒体を製造するのに使用される光学的に透明なプラスチック材料は、ホログラフィック記憶物質内のデータを読取り可能にするのに充分な光学品質、例えば低い散乱、低い複屈折、及び所定の波長における無視できる損失を有するあらゆるプラスチック材料からなることができる。例えば、オリゴマー、ポリマー、デンドリマー、アイオノマー、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、星形ブロックコポリマーなど、又は以上のポリマーを1種以上含む組合せのような有機ポリマー材料を使用することができる。熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーを使用することができる。適切な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステル、など、又は以上の熱可塑性ポリマーを1種以上含む組合せがある。適切な熱可塑性ポリマーの幾つかのより可能な例としては、限定されることはないが、非晶質及び半結晶性熱可塑性ポリマー並びにポリマーブレンド、例えば、ポリ塩化ビニル、線状及び環状ポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、など、水素化ポリスルホン、ABS樹脂、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、など、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メタクリル酸メチル−ポリイミドコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、例えば、限定されることはないが2,6−ジメチルフェノール−コポリマーと2,3,6−トリメチルフェノール、などから誘導されたもの、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、並びにポリ塩化ビニリデンがある。
【0059】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示した方法で基材として使用する熱可塑性ポリマーはポリカーボネートから製造される。ポリカーボネートは芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、又は芳香族及び脂肪族構造単位の両方を含むポリカーボネートであり得る。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「ポリカーボネート」には、次式の構造(XI)の構造単位を有する組成物が含まれる。
【0061】
【化11】

式中、R15は脂肪族、芳香族又は環式脂肪族基である。ある実施形態では、ポリカーボネートは次式の構造(XII)の構造単位を含む。
【0062】
【化12】

式中、A1とA2は各々が単環式二価アリール基であり、Y1はA1をA2から隔てる0、1、又は2個の原子を有する橋架け基である。代表的な実施形態では、1個の原子がA1とA2を隔てる。このタイプの基の具体的な非限定例は−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン、などである。かかるビスフェノール化合物の幾つかの例は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、などのようなビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、などのようなビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、などのようなビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、などのようなビス(ヒドロキシジアリール)スルホン、又は以上のビスフェノール化合物を1種以上含む組合せである。別の実施形態では、ゼロ個の原子がA1とA2を隔てており、具体的な例はビフェノールである。橋架け基Y1は例えば、メチレン、シクロヘキシリデン若しくはイソプロピリデン、又はアリール橋架け基のような炭化水素基であることができる。
【0063】
当技術分野で公知のあらゆるジヒドロキシ芳香族化合物を用いてポリカーボネートを製造することができる。ジヒドロキシ芳香族化合物の例としては、例えば、次式の一般構造(XIII)を有する化合物がある。
【0064】
【化13】

式中、R16とR17は各々独立してハロゲン原子、又は脂肪族、芳香族、若しくは環式脂肪族基を表し、aとbは各々独立して0〜4の整数であり、Xは次式の構造(XIV)の基の1つを表す。
【0065】
【化14】

式中、R18とR19は各々独立して水素原子又は脂肪族、芳香族若しくは環式脂肪族基を表し、R20は二価炭化水素基である。適切なジヒドロキシ芳香族化合物の幾つかの具体的な非限定例としては、(一般的又は個々の)名称又は構造が米国特許第4217438号に開示されているもののような二価フェノール及びジヒドロキシ−置換された芳香族炭化水素がある。ビスフェノールAから誘導された構造単位を含むポリカーボネートは、比較的安価で商業的に容易に入手可能であるので好ましい。構造(XIII)で表され得るこのタイプのビスフェノール化合物の特定の例の非排他的なリストには、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後、「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以後、「DMBPA」)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、並びにビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以後、「DMBPC」)、など、さらにまた以上のビスフェノール化合物を1種以上含む組合せが含まれる。
【0066】
ポリカーボネートは当技術分野で公知の方法のいずれかで製造することができる。枝分かれしたポリカーボネート、さらには線状ポリカーボネートと枝分かれしたポリカーボネートのブレンドも有用である。好ましいポリカーボネートはビスフェノールAに基づくものである。好ましくは、ポリカーボネートの重量平均分子量は約5000〜約100000原子質量単位、より好ましくは約10000〜約65000原子質量単位、最も好ましくは約15000〜約35000原子質量単位である。ホログラフィックデータ記憶媒体を形成するために使用するのに適切な熱可塑性ポリマーの他の特定の例としては、Lexan(登録商標)というポリカーボネート及びUltem(登録商標)という非晶質ポリエーテルイミドがあり、これらはいずれもGeneral Electric Companyから市販されている。
【0067】
有用な熱硬化性ポリマーの例としては、エポキシ系、フェノール系、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は以上の熱硬化性ポリマーを1種以上含む組合せからなる群から選択されるものがある。
【0068】
光化学活性染料は他の添加剤と混合して光活性材料を形成してもよい。かかる添加剤の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂、結合剤、発泡剤、など、並びに以上の添加剤の組合せがある。光活性材料はホログラフィックデータ記憶媒体を製造するのに使用される。
【0069】
環式脂肪族及び芳香族ポリエステルは光活性材料を製造するための結合剤として使用することができる。これらはポリカーボネートのような熱可塑性ポリマーと共に使用して光学的に透明な基材を形成するのに適している。これらのポリエステルは光学的に透明であり、改良された耐候性、低い吸水性及びポリカーボネートマトリックスとの良好な溶融相溶性を有する。環式脂肪族ポリエステルは一般に、ジオールと二塩基酸又は酸誘導体の反応により、多くの場合適切な触媒の存在下で製造される。
【0070】
一般に、光学的に透明な基材、及びホログラフィックデータ記憶媒体を形成するのに使用されるポリマーは、例えば染料を含ませる段階及びコーティング又は後の層を設ける段階及び最終の形式に成形する段階中のような加工パラメーター、並びにその後の保存条件に耐えることができなければならない。適切な熱可塑性ポリマーは、ある実施形態では約100℃以上、別の実施形態では約150℃以上、さらに別の実施形態では約200℃以上のガラス転移温度を有する。200℃以上のガラス転移温度を有する代表的な熱可塑性ポリマーとしては、ある種のタイプのポリエーテルイミド、ポリイミド、及び以上の1種以上を含む組合せがある。
【0071】
既に記載したように、有効な光化学活性染料は、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%の量で存在し、約300〜約800nmの範囲の波長で約0.1〜約1の範囲のUV−可視吸光度を有する。かかる光化学活性染料を例えば結合剤のような他の物質と組み合わせて使用して光活性材料を形成し、その後これを用いてホログラフィックデータ記憶媒体を製造する。ある実施形態では、1種以上の光学的に透明なプラスチック材料と1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材のフィルムを形成する。一般に、このフィルムは、染料を光学的に透明なプラスチック材料と混合することで得られる成形用組成物を使用する成形技術によって製造される。混合は単軸式若しくは多軸式押出機、Bussニーダー、Henschel、ヘリコーン、Eirichミキサー、Rossミキサー、Banbury、ロールミル、射出成形機、真空成形機、ブロー成形機、などのような成形機、又は以上の機械を1種以上含む組合せのような機械で行うことができる。また、染料と光学的に透明なプラスチック材料を溶液中に溶解させることができ、この溶液から光学的に透明な基材のフィルムをスピンキャストすることができる。
【0072】
混合段階の後、データ記憶組成物を射出成形して、ホログラフィックデータ記憶媒体を製造するのに使用することができる物品にする。射出成形した物品は任意の幾何学的形状を有することができる。適切な幾何学的形状の例としては円板、方形板、多角形状、などがある。物品の厚さは、ある実施形態では100μm以上、別の実施形態では250μm以上で変化することができる。250μm以上の厚さが現行のデジタル記憶ディスクの厚さに匹敵するホログラフィックデータ記憶ディスクを製造するのに有用である。
【0073】
こうして製造された成形データ記憶媒体は、データをホログラムの形態で記憶するのに使用することができるデータ記憶物品を製造するために使用することができる。データ記憶物品中のデータ記憶媒体に第1の波長を有する電磁エネルギーを照射して、1以上の光学的に読取り可能なデータと光化学活性染料の1種以上の光生成物とを含む改変された光学的に透明な基材を形成する。得られたホログラフィックデータ記憶媒体は光学的に透明な基材内にパターン化光生成物を有していて、1以上の光学的に読取り可能なデータを提供する。一実施形態では、照射により、光化学活性染料から光生成物への部分的な化学的変換(「反応」ということもある)、例えば、ビシナルジアリールエテンから環化した生成物への環化反応、又は環化した生成物からビシナルジアリールエテン生成物への開環反応、又はアリールニトロンからアリールオキサジリジン生成物、若しくはオキサジリジンから誘導された分解生成物への変換が容易になり、それにより1以上の光学的に読取り可能なデータのホログラムが製造される。
【0074】
記憶されたホログラフィックデータの読取りは、データ記憶媒体に電磁エネルギーを照射することを含む読取りビームによって行うことができる。読取りビームはホログラムからの回折光に含まれるデータを読取る。ある実施形態では、読取り波長は350〜1100nm(nm)であることができる。一実施形態では、データをホログラムとして書き込むのに使用されるデータビームと、記憶されたデータを読取るのに使用される読取りビームの波長は同じである。別の実施形態では、データビームと読取りビームの波長は互いに異なっており、独立して350〜1100nmの範囲の波長を有することができる。さらに別の実施形態では、読取りビームは書き込みビームの波長から0〜約400nmシフトされた波長を有する。
【0075】
本明細書に開示した方法は、ある実施形態ではビット方式タイプのデータ記憶、別の実施形態ではデータのページ方式タイプの記憶に使用することができるホログラフィックデータ記憶媒体を製造することができる。さらに別の実施形態では、本方法はデータ記憶媒体の複数の層にデータを記憶するのに使用することができる。
【0076】
以上に記載したホログラフィックデータ記憶物品は、ホログラムの形態でデータを記録し、ホログラフィックデータを読取るのに有用である。ホログラフィックデータ記憶物品内のホログラフィックデータ記憶媒体に書き込むべきデータを有する第1の波長の電磁エネルギー(シグナルビーム又は書き込みビーム)を照射する。これにより、1種以上の光化学活性染料(既述)の1種以上の光生成物と、1以上の光学的に読取り可能なデータとを含む改変された光学的に透明な基材が形成される。こうして、データはホログラムとしてデータ記憶媒体内に記憶される。次に、ホログラフィックデータ記憶媒体に第2の波長を有する電磁エネルギー(読取りビーム)を照射してホログラムを読取る。ある実施形態では、読取りビームはシグナルビームの波長から0〜約400nmシフトされた波長を有する。
【0077】
典型的な実施形態について本開示を例示し説明して来たが、本開示の思想からいかなる意味でも逸脱することなく様々な修正と置換をなすことができるので、示した詳細に限定する意図はない。すなわち、当業者は日常以下の実験を使用して、本明細書に開示した本開示のさらなる修正と等価物に想到し得るし、かかる修正と等価物は全て特許請求の範囲に定義されている本開示の思想と範囲内に入ると考えられる。
【実施例】
【0078】
実施例1.4’−メトキシ−2,4−ジニトロスチルベンの調製
凝縮器、Dean−Starkトラップ、メカニカルスターラー、窒素導入口、加熱マントル、温度計、及びTherm−o−watch(登録商標)温度調節器を備えた2リットルの3ツ首丸底フラスコに、p−アニスアルデヒド(149.8グラム、1.1モル)、2,4−ジニトロトルエン(182グラム、1.0モル)、キシレン(500ミリリットル)、及びピペリジン(50ミリリットル、0.5モル)を加えた。得られた混合物を、Therm−o−watch(登録商標)温度調節器の温度を145℃に設定して加熱した。約2時間撹拌・加熱した後、およそ20ミリリットルの水がDean−Starkトラップに回収された。この反応溶液を室温まで放冷した後、さらに1時間氷水浴で冷却したところ、この間に所望の生成物が溶液から結晶化した。固体の物質をろ過し、ペンタンで濯ぎ、真空オーブン中100℃で12時間乾燥して257.1グラム(理論の85.6%)の所望の生成物を暗赤色の結晶性固体として得た。
【0079】
実施例2.α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンの調製
メカニカルスターラー及び窒素導入口を備えた1−リットルの3ツ首丸底フラスコに、フェニルヒドロキシアミン(27.3グラム、0.25モル)、(4−ジメチルアミノ)シンナムアルデヒド(43.81グラム、0.25モル)、及びエタノール(250ミリリットル)を加えた。得られた明るい橙色のスラリーに、シリンジを介してメタンスルホン酸(250マイクロリットル)を加えた。明るい橙色スラリーが深赤色になり、全ての固体が溶解した。5分以内に、橙色の固体が形成された。ペンタン(約300ミリリットル)を加えて反応混合物の撹拌を補助した。固体をろ過し、真空オーブン中80℃でしばらくの間乾燥して55.9グラム(理論の84%)の所望の生成物を明るい橙色の固体として得た。この染料は次式の構造(XV)を有する。
【0080】
【化15】

実施例3.α−スチリル−N−フェニルニトロンの調製
N−イソプロピルヒドロキシルアミン塩酸塩(5.04グラム、45.2ミリモル、1モル当量、Acros Organicsから入手可能)を、16ミリリットルの水中のtrans−シンナムアルデヒド(5.66グラム、42.9ミリモル、0.95モル当量、Aldrich Chemical Companyから入手可能)と合わせた。急速に撹拌した混合物はtrans−シンナムアルデヒドの低い溶解性のためにエマルションになり始めた。約1時間後、エマルションは消失し、均一な淡黄色の溶液が得られた。4時間撹拌した後、反応混合物を塩化メチレン中に注ぎ入れ、26ミリリットルの飽和炭酸ナトリウム水溶液(塩化水素副生成物の消費を保証するために2モル当量より多くの炭酸ナトリウム塩基を含有する)で処理して、pHを約10.5にした。相を分離し、水相を追加の塩化メチレンで濯いだ。合わせた有機相を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮し、真空下で一晩乾燥して7.4グラム(理論の91%)の所望の生成物を生成させた。これは液体クロマトグラフィーで純粋であることが決定され、NMR分光法でさらに特性決定された。この生成物の無水エタノール中のUV−可視スペクトルで、吸収最大(λmax)が330nmにあることが明らかになった。この希薄溶液を390nmの光源に暴露して、ニトロンを吸収最大が256nmにシフトした対応するオキサジラジンに変換した。試料の取扱いは全て赤色光のみの暗室内で行ってα−スチリル−N−フェニルニトロンの安定性を保証すした。この染料は次式の構造(XVI)を有する。
【0081】
【化16】

実施例4
この実施例では、後に約1.2ミリメートルの厚さを有する成形ディスクを製造するのに使用したα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロン−ポリスチレンブレンドを調製する方法について記載する。
【0082】
10キログラムの結晶ポリスチレン1301ペレット(Nova Chemicalsから入手した)をRetschミルで粗い粉末に粉砕し、80℃に維持した循環空気オーブン中でしばらくの間乾燥した。10−リットルのHenschelミキサーで、6.5キログラムの乾燥ポリスチレン粉末と195グラムのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンをブレンドして均一な橙色の粉末を形成した。次に、この粉末ブレンドを185℃のWP 28ミリメートル二軸式押出機に供給し、公称染料含有率が約3重量%の暗い橙色のペレットを6.2キログラム得た。次いで、この物質を追加の結晶ポリスチレン1301ペレットでさらに希釈して、0.60重量%、0.75重量%、1重量%、及び1.24重量%のα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンを有するブレンドを製造した。これら4つの希釈したブレンド組成物の各々をWP 28ミリメートル二軸式押出機で再度加工して均一に着色したペレットを形成した。
【0083】
4つの希釈したブレンド(上記のように調製)をELECTRA DISCOTM 50−トン全電気式商用CD/DVD(コンパクトディスク/デジタルビデオディスク)成形機(Milacron Inc.から入手可能)で射出成形することによって光学品質のディスクを製造した。両方の表面に鏡面スタンパーを用いた。サイクル時間は一般に約10秒に設定した。成形条件は、使用したポリマーのガラス転移温度及び溶融粘度、並びに光化学活性染料の熱安定性に応じて変化させた。従って、最大バレル温度は約200〜約375℃で変化した。
【0084】
実施例5.Mini−jector(登録商標)を使用する成形ディスクの製造法
成形条件は、光化学活性染料を配合するのに使用したポリマーマトリックスの種類に応じて変化させた。光化学活性染料の成形OQ(光学グレード)のポリカーボネートとポリスチレンに基づくブレンドで使用した典型的な条件を表1に示す。
【0085】
【表1】

実施例6.光化学活性染料のUV−可視スペクトルの測定法
スペクトルは全て、約1.2ミリメートルの厚さを有する射出成形したディスクを使用してCary/Varian 300 UV−可視分光光度計で記録した。スペクトルは300〜800nmの範囲で記録した。ディスク間の変化のため、基準試料は使用しなかった。UV−可視吸収スペクトル測定の結果を表2に実施例7〜11として示す。
【0086】
表に記載した吸収は、試験した各試料に対する700〜800nmの範囲の平均のベースラインを、405nm又は532nmで測定した吸収から差し引くことによって計算した。これらの化合物は700〜800nmの範囲で吸収しないので、この補正によりディスクの表面からの反射によって生じた見掛けの吸収が除かれ、染料の吸光度のより正確な表示が得られた。これらの実施例で使用したポリマーは405nm又は532nmで殆ど又は全く吸収しなかった。
【0087】
実施例7〜10では光化学活性染料としてα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンを、実施例11ではα−スチリル−N−フェニルニトロンを使用した。
【0088】
【表2】

表2のデータは、約300〜約800nmの範囲の波長で約0.1〜約1の範囲のUV−可視吸光度を有する光化学活性染料を、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%で使用することによって、0.5以上のM#を達成することができるということを示している。結果はまた、効率的で、かつ光のような電磁エネルギーに対して感受性である光化学活性染料を使用して、染料の主吸収ピークからの干渉を受けることなく、高いボリューメトリックデータ記憶キャパシティーを達成することができるということも示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックデータ記憶媒体の製造方法であって、当該方法が、
(a)1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材を用意し、
(b)前記光学的に透明な基材が約0.1〜1の範囲の吸光度を有する約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で、前記光学的に透明な基材に照射して、1以上の光学的に読取り可能なデータ及び光化学活性染料の1種以上の光生成物を含む改変された光学的に透明な基材を生成させる
ことを含んでなり、前記光学的に透明な基材が、100μm以上の厚さであり、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光化学活性染料を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記1以上の光学的に読取り可能なデータが光学的に透明な基材の対応するボリュームエレメントとは異なる屈折率を有する1以上のボリュームエレメントを含んでおり、前記ボリュームエレメントは照射前の対応するボリュームエレメントの屈折率に対して屈折率の変化によって特徴付けられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
データ記憶媒体がM/#により測定して0.5より大きいデータ記憶キャパシティーを有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1種以上の光生成物が、改変された光学的に透明な基材内でパターン化されて、1以上の光学的に読取り可能なデータを提供する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
1種以上の光化学活性染料がビシナルジアリールエテンからなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
1種以上の光化学活性染料がニトロンからなる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
1種以上の光化学活性染料がニトロスチルベンからなる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
1種以上の光化学活性染料がビシナルジアリールエテンから誘導された光生成物からなる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ビシナルジアリールエテンが次式の構造(I)を有する、請求項5記載の方法。
【化1】

式中、「e」は0又は1であり、Rは結合、酸素原子、置換された窒素原子、イオウ原子、セレン原子、二価C〜C20脂肪族基、ハロゲン化二価C〜C20脂肪族基、二価C〜C20環式脂肪族基、ハロゲン化二価C〜C20環式脂肪族基、又は二価C〜C30芳香族基であり、Ar及びArは各々独立してC〜C40芳香族基、又はC〜C40ヘテロ芳香族基であり、Z及びZは独立して結合、水素原子、一価C〜C20脂肪族基、二価C〜C20脂肪族基、一価C〜C20環式脂肪族基、二価C〜C20環式脂肪族基、一価C〜C30芳香族基、又は二価C〜C30芳香族基である。
【請求項10】
ニトロンが次式の構造(IX)を有するアリールニトロンからなる、請求項6記載の方法。
【化2】

式中、Arは芳香族基であり、R11、R12、及びR13の各々は水素原子、脂肪族基、環式脂肪族基、又は芳香族基であり、R14は脂肪族基又は芳香族基であり、「n」は0〜4の値を有する整数である。
【請求項11】
14が次式のものからなる群から選択される1種以上の電子吸引性置換基からなる、請求項10記載の方法。
【化3】

式中、R15〜R17は独立してC〜C10脂肪族基、C〜C10環式脂肪族基、又はC〜C10芳香族基である。
【請求項12】
1種以上の光化学活性染料が、4−ジメチルアミノ−2’,4’−ジニトロスチルベン、4−ジメチルアミノ−4’−シアノ−2’−ニトロスチルベン、4−ヒドロキシ−2’,4’−ジニトロスチルベン、4−メトキシ−2’,4’−ジニトロスチルベン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−フェニルニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−クロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(3,4−ジクロロフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−カルボエトキシフェニル)−ニトロン、α−(4−ジエチルアミノフェニル)−N−(4−アセチルフェニル)−ニトロン、α−(4−ジメチルアミノフェニル)−N−(4−シアノフェニル)−ニトロン、α−(4−メトキシフェニル)−N−(4−シアノフェニル)ニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−フェニルニトロン、α−(9−ジュロリジニル)−N−(4−クロロフェニル)ニトロン、α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロン、α−スチリル−N−フェニルニトロン、α−[2−(1,1−ジフェニルエテニル)]−N−フェニルニトロン、α−[2−(1−フェニルプロペニル)]−N−フェニルニトロン、及び1,2−ビス{2−(4−メトキシフェニル)−5−メチルチエン−4−イル}−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペント−1−エンからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
光学的に透明な基材が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、又は熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの組合せからなる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
熱可塑性ポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステル、又は以上の熱可塑性ポリマーを1種以上含む組合せからなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
熱硬化性ポリマーが、エポキシ系熱硬化性ポリマー、フェノール系熱硬化性ポリマー、ポリシロキサン系熱硬化性ポリマー、ポリエステル系熱硬化性ポリマー、ポリウレタン系熱硬化性ポリマー、ポリアミド系熱硬化性ポリマー、ポリアクリレート系熱硬化性ポリマー、ポリメタクリレート系熱硬化性ポリマー、又は以上の熱硬化性ポリマーを1種以上含む組合せからなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性ポリマーが、ビスフェノールAから誘導された構造単位を含むポリカーボネートからなる、請求項13記載の方法。
【請求項17】
1種以上の光生成物が1種以上の光化学活性染料の光−分解生成物からなる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
1種以上の光生成物が1種以上の光化学活性染料の分子再配列生成物からなる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
光学的書き込み及び読取り方法であって、
ホログラフィックデータ記憶媒体に、データを保有するシグナルビーム及び参照ビームを同時に照射して、光化学活性染料を1種以上の光生成物に部分的に変換すると共にシグナルビーム内のデータをホログラムとしてホログラフィックデータ記憶媒体に記憶させ(ここで、ホログラフィック記憶媒体は光学的に透明な基材及び1種以上の光化学活性染料を含んでおり、光学的に透明な基材は、100μm以上の厚さを有し、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する光化学活性染料を含み、かつ約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で約0.1〜1の範囲のUV−可視吸光度を有する)、
ホログラフィック記憶媒体に読取りビームを照射し、回折光に含まれるデータをホログラムから読取る
ことを含んでなる、方法。
【請求項20】
読取りビームが、シグナルビームの波長から0〜約400nmだけシフトされた波長を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ホログラフィックデータ記憶物品を使用する方法であって、
ホログラフィックデータ記憶物品内のホログラフィックデータ記憶媒体に、第1の波長を有する電磁エネルギーを照射する段階(ここで、ホログラフィックデータ記憶媒体は光学的に透明な基材を含んでおり、この光学的に透明な基材は、100μm以上の厚さであり、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で1種以上の光化学活性染料を含んでおり、前記照射は光学的に透明な基材が約0.1〜1の範囲の吸光度を有する1以上の波長で行い、前記1以上の波長は約300〜約800nmの範囲である)と、
1種以上の光化学活性染料の1種以上の光生成物、及びホログラムとして記憶された1以上の光学的に読取り可能なデータを含む改変された光学的に透明な基材を形成する段階と、
物品中のホログラフィックデータ記憶媒体に、第2の波長を有する電磁エネルギーを照射してホログラムを読取る段階と
を含んでなる、方法。
【請求項22】
第2の波長が第1の波長から0〜約400nmだけシフトされている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第1の波長と第2の波長が同じではない、請求項21記載の方法。
【請求項24】
第1の波長が第2の波長と同じである、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記1種以上の光生成物が、ビシナルジアリールエテン、ビシナルジアリールエテンから誘導された光生成物、オキサジリジン、又はオキサジリジンから誘導された分解生成物からなる、請求項21記載の方法。
【請求項26】
1種以上の光学的に透明なプラスチック材料、及び1種以上の光化学活性染料を含む光学的に透明な基材のフィルムを形成することを含んでなる、ホログラフィックデータ記憶媒体を製造する方法であって、
光学的に透明な基材が、100μm以上の厚さであり、光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光化学活性染料を含んでおり、約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で約0.1〜1の範囲のUV−可視吸光度を有する、方法。
【請求項27】
光学的に透明な基材のフィルムを成形技術によって形成する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
光学的に透明な基材のフィルムをスピンキャスティング技術によって形成する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
1種以上の光学的に透明なプラスチック材料が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、又は熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの組合せからなる、請求項26記載の方法。
【請求項30】
1種以上の光学的に透明なプラスチック材料、1種以上の光化学活性染料、及びその1種以上の光生成物を含んでなる光学的に透明な基材を含むホログラフィックデータ記憶媒体であって、
前記光学的に透明な基材が100μm以上の厚さであり、前記光化学活性染料が光学的に透明な基材の総重量を基準にして約0.1〜約10重量%に相当する量で光学的に透明な基材中に存在しており、前記光学的に透明な基材が約300〜約800nmの範囲の1以上の波長で約0.1〜1の範囲のUV−可視吸光度を有しており、前記1種以上の光生成物が光学的に透明な基材内でパターン化されて、ホログラフィック記憶媒体内に含まれる1以上の光学的に読取り可能なデータを提供する、ホログラフィックデータ記憶媒体。
【請求項31】
1種以上の光生成物が、ホログラムとしてのデータの記憶中に1種以上の光化学活性染料の光化学的変換により生じる、請求項30記載のホログラフィックデータ記憶媒体。

【公表番号】特表2009−514019(P2009−514019A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537763(P2008−537763)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040440
【国際公開番号】WO2007/050354
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】