説明

ホログラム記録装置

【課題】複数の視差画像を同時に記録媒体に照射できるホログラム記録装置を提供する。
【解決手段】入射した偏光を偏光方向が異なる2つの物体光に分離する分離手段50と、分離手段50で分離される2つの偏光方向の双方を含む物体光を、分離手段50に入射させる物体光光学系と、分離手段50により分離された2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光するシリンドリカルレンズ60と、物体光に対応した参照光を記録媒体に照射する参照光光学系と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示したい被写体を直接レーザ光で照明する必要がないこと、可視光画像に限定されないこと、架空物体の立体像表示が可能なことなどの特長をもつ、ホログラフィックステレオグラム技術についての研究が行われている。
【0003】
ホログラフィックステレオグラムでは、作成対象となる画像を構成する複数の視差画像を1枚ずつ記録媒体上に記録する。このとき、各視差画像は、短冊形状の要素ホログラムとして記録媒体上に記録され、この短冊形状の要素ホログラムを記録媒体に並列して記録することで、3次元画像が形成される。
【0004】
特許文献1には、視差方向に分割表示された複数の画像を透過した光を重ね合わせて投影してから集光して分割数に応じた画像をホログラム用記録媒体上に投影する物体光光学系を備えるホログラフィックステレオグラム露光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−350395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の視差画像を同時に記録媒体に照射できるホログラム記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のホログラム記録装置は、入射した偏光を偏光方向が異なる2つの物体光に分離する分離手段と、前記分離手段で分離される2つの偏光方向の双方を含む物体光を、前記分離手段に入射させる物体光光学系と、前記分離手段により分離された2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光する集光手段と、前記物体光に対応した参照光を前記記録媒体に照射する参照光光学系と、を備える。
【0008】
請求項2に記載のホログラム記録装置は、請求項1に記載のホログラム記録装置において、前記物体光光学系は、前記分離手段が分離する2つの偏光方向の双方を同量ずつ有する直線偏光又は円偏光の偏光を変調することによって、2つの偏光方向の双方を含む物体光を生成し、前記分離手段は、前記入射した偏光を前記偏光方向が直交する2つの物体光に分離することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のホログラム記録装置は、請求項1または2に記載のホログラム記録装置において、前記参照光光学系は、前記2つの物体光に対応させて、入射角度の異なる2つの参照光を前記記録媒体に照射することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のホログラム記録装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載のホログラム記録装置において、前記集光手段は、前記2つの物体光の前記記録媒体への入射角度がそれぞれ異なるように、前記2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のホログラム記録装置によれば、複数の視差画像を同時に記録媒体に照射できるホログラム記録装置が提供される。
【0012】
請求項2に記載のホログラム記録装置によれば、本構成を有しない場合に比べて、明るさのムラの発生が抑制される。
【0013】
請求項3に記載のホログラム記録装置によれば、記録媒体への参照光の入射角度を変更させてホログラムが作成される。
【0014】
請求項4に記載のホログラム記録装置によれば、異なる方向からの観察が可能なホログラムが作成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1及び第2の実施形態においてホログラムを作成する対象となる画像の一例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す上面図である。
【図3】第2の実施形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す上面図である。
【図4】第3の実施形態においてホログラムを作成する対象となる画像の一例を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
[第1の実施形態]
【0017】
第1の実施形態では、図1(A)に示す画像(記録画像)をホログラムとして記録するものとする。第1の実施形態において、図1(A)に示す画像の視差画像列を構成する視差画像[1]〜[10]が、図1(B)に示すように、短冊形状の要素ホログラムとして視差方向に並列にホログラム記録媒体上に記録される。これにより、図1(A)に示す画像の3次元画像が形成される。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す上面図である。ホログラム記録装置100は、レーザ光源10を備える。このレーザ光源10からは、コヒーレント光のレーザ光が発振される。
【0019】
レーザ光源10のレーザ光照射側には、透過型の空間光変調器30と偏光素子40とが配置されている。なお、本実施形態では、空間光変調器30がレーザ光源10側に配置されているが、偏光素子40がレーザ光源10側に配置されても構わない。
【0020】
空間光変調器30は、例えば液晶パネルにより構成され、表示する視差画像(通常は多値画像)の階調に応じて、空間光変調器30に入射した光を強度変調する。具体的には、空間光変調器30は、P偏光及びS偏光成分を同量ずつ含む45度の直線偏光を強度変調して、物体光を生成する。
【0021】
偏光素子40は、例えば2分のλ板であり、入射した物体光を、所望の偏光にする。具体的には、後述する分離手段50が分離する2つの偏光成分の双方を有するような直線偏光にする。他、偏光素子40として4分のλ板を使い、円偏光としてもよい。この45度の直線偏光あるいは円偏光である物体光が、分離手段50で分離される2つの偏光方向の双方を含む物体光の一例に該当する。なお、第1の実施形態では、空間光変調器30及び偏光素子40を含む光学系が、物体光光学系の一例に該当する。
【0022】
偏光素子40から出射された物体光は、レンズ41で集光され、フィルタ42で空間光変調器の画素ピッチに起因する高次回折成分が除去された後、レンズ43により平行光となり、分離手段50に入射する。分離手段50には、例えば、Wollastonプリズム、プリズム偏光器、及びRochonプリズム等が用いられる。
【0023】
分離手段50は、入射した物体光を、偏光方向が異なる2つの物体光に分離する。具体的には、例えば物体光がP偏光及びS偏光成分を含む45度の直線偏光であった場合、分離手段50は、入射した物体光を、光軸が互いに異なるように第1の物体光(P偏光)及び第2の物体光(S偏光)に分離する。分離後の2つの物体光は、同一の視差画像を有する。分離された第1の物体光(P偏光)及び第2の物体光(S偏光)は、シリンドリカルレンズ60に入射する。第1の実施形態では、シリンドリカルレンズ60が集光手段として機能する。
【0024】
シリンドリカルレンズ60に入射した第1の物体光及び第2の物体光は、ホログラム記録媒体70上の異なる位置に集光される。集光された第1の物体光と、第2の物体光とは、両物体光と対向する側から参照光光学系によりホログラム記録媒体70に照射される参照光と干渉し、干渉縞がホログラム記録媒体70に記録される。これにより、同一の視差画像が2つ、ホログラム記録媒体70上に記録される。具体的には、ホログラム記録媒体70上には、例えば、視差画像[1]が視差方向に2つ並列して記録される。
【0025】
視差画像[1]が記録されると、ホログラム記録媒体70は矢印aの方向へと移動する。空間光変調器30は、次の視差画像(例えば、視差画像[2])を表す物体光を生成する。視差画像[2]を表す第1の物体光及び第2の物体光がホログラム記録媒体70上に集光され、視差画像[2]が視差方向に2つ並列してホログラム記録媒体70上に記録される。上述した処理を繰り返すことによって、図1(A)に示す画像のホログラムが作成される。
【0026】
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係るホログラム記録装置によれば、空間光変調器30と、偏光素子40とを含む光学系は、分離手段50が分離する2つの偏光方向の双方を含む物体光を分離手段50に入射させ、シリンドリカルレンズ60は、分離手段50によって分離された2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光する。そして、集光された両物体光と対向する側からホログラム記録媒体70に照射される参照光と干渉し、干渉縞がホログラム記録媒体70に記録される。これによって、複数の視差画像を同時にホログラム記録媒体に照射してホログラムが作成される。
【0027】
なお、第1の実施形態において、第1の物体光と第2の物体光とに対応させて、入射角度の異なる2つの参照光を照射するとよい。これにより、ホログラム記録媒体への参照光の入射角度を変更させてホログラムが作成される。ホログラムの再生時には2つの参照光のいずれかと同様の照明光によって、立体像が再生される。
[第2の実施形態]
【0028】
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、同一の視差画像を2つ、ホログラム記録媒体70に記録したが、第2の実施形態では異なる2つの視差画像をホログラム記録媒体70に記録するものとする。なお、第2の実施形態においても、図1(A)に示す画像(記録画像)をホログラムとして記録するものとする。
【0029】
図3は、第2の実施形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す上面図である。なお、図3において、図2と同一の構成については、図2と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
第2の実施形態では、レーザ光源10のレーザ光照射側に、レーザ光源10から照射されたレーザ光のP偏光を透過し、かつS偏光を反射する偏光ビームスプリッタ20が配置されている。また、偏光ビームスプリッタ20の直交する2面のうち一方の面と対向する位置に空間光変調器30aが配置され、他方の面と対向する位置に空間光変調器30bが配置されている。
【0031】
偏光ビームスプリッタ20で反射されたS偏光は、空間光変調器30aに入射し、偏光ビームスプリッタ20を透過したP偏光は空間光変調器30bに入射する。
【0032】
空間光変調器30a及び30bは、例えば液晶パネルにより構成され、表示する視差画像(通常は多値画像)の階調に応じて、空間光変調器に入射した光を強度変調する。このように空間光変調器30a及び30bが強度変調し、生成した光が物体光となる。
【0033】
空間光変調器30aは、各画素において、表示した画像(第1の画像)の明るさ(階調)に応じて、入射したS偏光の偏光状態を変化させる。例えば、明るい画素はS偏光成分が少なく、P偏光成分が多くなるように変化させる。一方、暗い画素はS偏光成分が多く、P偏光成分は少なくなるように変化させる。偏光ビームスプリッタ20を透過する偏光成分はP偏光のみであるため、偏光ビームスプリッタ20の透過光は、第1の画像の強度分布を反映したP偏光の物体光となる。ここで、第2の実施形態では、空間光変調器30aは、図1(B)に示した視差画像列に含まれる視差画像のうち、奇数番目の視差画像(視差画像[1]、視差画像[3]、視差画像[5]・・・)を表す物体光を順次生成するものとする。
【0034】
空間光変調器30bは、各画素において、表示した画像(第2の画像)の明るさ(階調)に応じて、入射したP偏光の偏光状態を変化させる。例えば、明るい画素はP偏光成分が少なく、S偏光成分が多くなるように変化させる。一方、暗い画素はP偏光成分が多く、S偏光成分は少なくなるように変化させる。偏光ビームスプリッタ20を反射する偏光成分はS偏光のみであるため、偏光ビームスプリッタ20の反射光は、第2の画像の強度分布を反映したS偏光の物体光となる。ここで、空間光変調器30bは、図1(B)に示した視差画像列において、空間光変調器30aが生成する物体光によって表される視差画像の次に位置する視差画像を表す物体光を生成する。すなわち、空間光変調器30aが視差画像[1](視差画像[i])を表す物体光を生成する場合、空間光変調器30bは、視差画像[2](視差画像[i+1])を表す物体光を生成する。
【0035】
このように、第1の物体光(P偏光)、および、第2の物体光(S偏光)は、偏光ビームスプリッタ20により合波される。これにより、2つの偏光方向の双方を含む物体光が生成される。なお、空間光変調器30a及び30bと、偏光ビームスプリッタ20とを含む光学系が、物体光光学系の一例である。
【0036】
偏光ビームスプリッタ20によって合波された合成光は、レンズ41に入射する。合成光がレンズ41に入射してから分離手段50に入射するまでについての説明は、第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0037】
分離手段50は、入射した合成光を、偏光方向が異なる2つの物体光に分離する。具体的には、分離手段50は、合成光を、光軸が互いに異なるように第1の物体光(P偏光)及び第2の物体光(S偏光)に分離する。分離された第1の物体光(P偏光)及び第2の物体光(S偏光)は、シリンドリカルレンズ60に入射する。第2の実施形態では、シリンドリカルレンズ60が集光手段として機能する。
【0038】
シリンドリカルレンズ60に入射した第1の物体光及び第2の物体光は、ホログラム記録媒体70上の異なる位置に集光される。集光された第1の物体光と、第2の物体光とは、両物体光と対向する側から参照光光学系によりホログラム記録媒体70に照射される参照光と干渉し、干渉縞がホログラム記録媒体70に記録される。これにより、第1の物体光が表す第1の画像及び第2の物体光が表す第2の画像がホログラム記録媒体70上に記録される。具体的には、ホログラム記録媒体70上には、例えば、視差画像[1]及び視差画像[2]が視差方向に並列して記録される。
【0039】
第1の画像及び第2の画像が記録されると、ホログラム記録媒体70は矢印aの方向へと移動する。空間光変調器30a及び空間光変調器30bは、次の視差画像(例えば、視差画像[3]及び視差画像[4])を表す物体光を生成する。視差画像[3]及び視差画像[4]をそれぞれ表す第1の物体光及び第2の物体光がホログラム記録媒体70上に集光され、視差画像[3]及び視差画像[4]が視差方向に並列してホログラム記録媒体70上に記録される。上述した処理を繰り返すことによって、図1(A)に示す画像のホログラムが作成される。
【0040】
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態に係るホログラム記録装置によれば、空間光変調器30a及び30bと、偏光ビームスプリッタ20とを含む光学系は、分離手段50が分離する2つの偏光方向の双方を含む物体光を分離手段50に入射させ、シリンドリカルレンズ60は、分離手段50によって分離された2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光する。そして、集光された両物体光と対向する側からホログラム記録媒体70に照射される参照光と干渉し、干渉縞がホログラム記録媒体70に記録される。これによって、複数の視差画像を同時にホログラム記録媒体に照射してホログラムが作成される。
【0041】
複数の視差画像を一括してホログラム記録媒体上に記録する方法として、複数の視差画像を1つの空間光変調器に表示し、複数の視差画像をホログラム記録媒体上に一括して露光する方法が考えられる(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では、元の画素数を保ったまま複数の視差画像を表示するためには空間光変調器を大型化する必要がある。また、空間光変調器の大型化に伴うレンズの大型化も必要となる。これは、ホログラフィックステレオグラム露光装置の大型化やコストアップに繋がる。また、空間光変調器の大きさを変えない場合、複数の視差画像を1つの空間光変調器に表示するためには各視差画像のサイズを小さくする必要がある。しかしながら、視差画像のサイズを小さくすると、画素数が小さくなり、視差画像の解像度が下がってしまう。
【0042】
一方、第2の実施形態に係るホログラム記録装置によれば、空間光変調器30aはP偏光を用いて視差画像[i]を表す物体光を生成し、空間光変調器30bはS偏光を用いて視差画像[i+1]を表す物体光を生成する。したがって、1つの空間光変調器には1つの視差画像が表示されるため、空間光変調器が大型化によってホログラム記録装置が大型化したり、視差画像の解像度が下がったりしない。
【0043】
また、P偏光及びS偏光を第1の物体光及び第2の物体光に用いることによって、偏光ビームスプリッタ20による合波が可能となるため、図3に示すように、偏光ビームスプリッタ20の直交する2面と対向する位置に、空間光変調器30b及び30bをそれぞれ配置できる。これによって、第1の画像及び第2の画像を含む合成光を生成する光学系の省スペース化が図られる。
【0044】
さらに、視差画像[i](第1の画像)を表す第1の物体光(P偏光)及び視差画像[i+1](第2の画像)を表す第2の物体光(S偏光)は、偏光ビームスプリッタ20によって合波され、分離手段50によって、第1の物体光(P偏光)と第2の物体光(S偏光)とに分離される。そして、視差画像[i]を表す第1の物体光(P偏光)と、視差画像[i+1]を表す第2の物体光(S偏光)がホログラム記録媒体の異なる位置に集光され、視差画像列に含まれる視差画像が2枚ずつホログラム記録媒体上に記録される。すなわち、第2の実施形態に係るホログラム記録装置では、視差画像を1枚ずつ記録する場合の2分の1の速さでホログラムが作成されるため、ホログラムの作成時間が短縮される。
【0045】
なお、第2の実施形態において、空間光変調器30bは、空間光変調器30aが生成する物体光によって表される視差画像の次に位置する視差画像を表す物体光を生成していた。しかしながら、空間光変調器30bは、空間光変調器30aが生成する物体光によって表される視差画像から、予め定めた枚数の画像を隔てた位置に存在する視差画像を表す物体光を生成してもよい。例えば、空間光変調器30aが視差画像[i]を表す物体光を生成する場合、空間光変調器30bは、視差画像[i+2]や視差画像[i+3]を表す物体光を生成してもよい。
【0046】
また、第2の実施形態において、第1の物体光及び第2の物体光は、それぞれ異なる視差画像を表していたが、同一の視差画像を表わしていてもよい。同一の視差画像を記録する場合、第1の実施形態と同様、第1の物体光と第2の物体光とに対応させて、入射角度の異なる2つの参照光を照射するとよい。これにより、ホログラム記録媒体への参照光の入射角度を変更させてホログラムが作成される。ホログラムの再生時には2つの参照光のいずれかと同様の照明光によって、立体像が再生される。
【0047】
さらに、第2の実施形態において、分離手段50に入射する偏光はP偏光及びS偏光を別途変調して合波した光であったが、これに限られるものではなく、円偏光であってもよい。なお、記録するホログラムの明るさをそろえるために、分離手段50によって分離された2つの物体光の光量が等しくすることが好ましい。このためには、異なる2つの視差画像を記録する場合は、同量のP偏光とS偏光を合波した光を用いればよい。同一の視差画像を2つ記録する場合は、同じく同量のP偏光とS偏光を合波した光、45度の偏光方向を有する直線偏光及び円偏光のいずれかを用いればよい。円偏光は、右回り円偏光および左回り円偏光のいずれでもよい。
[第3の実施形態]
【0048】
次に、第3の実施形態に係るホログラム記録装置について説明する。第3の実施形態では、ホログラム再生時に、見る角度によって異なる画像が再生される(チェンジング)ホログラムを作成するものとする。
【0049】
図4は、第3の実施形態において、ホログラムの作成対象である画像A(第1の記録画像)及び画像B(第2の記録画像)の一例を示す図である。
【0050】
第3の実施形態では、例えば、ホログラム記録媒体を右方向から見た場合に、図4(A−1)に示す画像Aが再生され、ホログラム記録媒体を左方向から見た場合に、図4(B−1)に示す画像Bが再生されるようなホログラムを作成するものとする。図4(A−2)は、画像Aの視差画像列(A[1]〜A[10])であり、図4(B−2)は、画像Bの視差画像列(B[1]〜B[10])である。
【0051】
見る角度によって異なる画像が再生されるホログラムを作成する場合、図4(C)に示すように、画像Aの視差画像と、画像Bの視差画像とを交互にホログラム記録媒体に記録する。このとき、画像Aの視差画像を表す物体光と、画像Bの視差画像を表す物体光とは、異なる方向からホログラム記録媒体に照射される。例えば、画像Aの視差画像を表す物体光をA方向から照射し、画像Bの視差画像を表す物体光をB方向から照射する。これによって、ホログラム記録媒体をA方向から見た場合には、画像Aが再生され、B方向から見た場合には画像Bが再生されるホログラムが作成される。
【0052】
次に、第3の実施形態に係るホログラム記録装置の構成について説明する。図5は、第3の実施形態に係るホログラム記録装置の構成の一例を示す上面図である。
【0053】
図5において、レーザ光源10、偏光ビームスプリッタ20、空間光変調器30a及び30b、レンズ41、フィルタ42、及びレンズ43の機能は図1と同様であるため、説明を省略する。ただし、第3の実施形態では、空間光変調器30aは、画像Aの視差画像列に含まれる視差画像を表す物体光を生成し、空間光変調器30bは、画像Bの視差画像列に含まれる視差画像を表す物体光を生成する。
【0054】
レンズ43により平行光となった合成光は、分離手段50に入射し、分離手段50によって第1の物体光(P偏光)と第2の物体光(S偏光)とに分離される。第3の実施形態では、例えば、偏光ビームスプリッタを分離手段50として用いるとよい。
【0055】
分離手段50を透過した第1の物体光(P偏光)は、レンズ51a、レンズ52aを経て、反射ミラー53aにより反射され、シリンドリカルレンズ60aに入射する。シリンドリカルレンズ60aに入射した第1の物体光はホログラム記録媒体70上に集光される。
【0056】
分離手段50により反射された第2の物体光(S偏光)は、レンズ51b及び反射ミラー53bを介してレンズ52bに入射する。レンズ52bに入射した第2の物体光は、平行光となり、シリンドリカルレンズ60bに入射する。シリンドリカルレンズ60bに入射した第2の物体光は、第1の物体光が集光された位置とは異なる位置に集光される。本実施形態では、第1の物体光が集光された位置と隣り合う位置に、第2の物体光は集光される。このとき、第1の物体光の光軸と、第2の物体光の光軸とが予め定められた角度をなし、かつ、第1の物体光及び第2の物体光のホログラム記録媒体70への入射方向がそれぞれ異なるように、反射ミラー53a及び53b、並びに、シリンドリカルレンズ60a及び60bの位置や向きは調整される。本実施形態では第1の物体光(P偏光)の光軸と、第2の物体光(S偏光)の光軸とは直交するものとする。なお、第3の実施形態では、反射ミラー53a、シリンドリカルレンズ60a、反射ミラー53b、レンズ52b、及びシリンドリカルレンズ60bが、集光手段として機能する。
【0057】
集光された第1の物体光と、第2の物体光とは、両物体光と対向する側からホログラム記録媒体70に照射される参照光と干渉し、干渉縞がホログラム記録媒体70に記録される。これにより、画像Aの視差画像列に含まれる視差画像(第1の画像)、及び画像Bの視差画像列に含まれる視差画像(第2の画像)がホログラム記録媒体70上に記録される。具体的には、例えば、画像A[1]及び画像B[1]が視差方向に並列して記録される。
【0058】
画像A[1]及び画像B[1]が記録されると、ホログラム記録媒体70は矢印aの方向へと移動する。空間光変調器30a及び空間光変調器30bは、次の視差画像(例えば、画像A[2]及び画像B[2])を表す物体光を生成する。画像A[2]及び画像B[2]をそれぞれ表す第1の物体光及び第2の物体光がホログラム記録媒体70上に集光され、画像A[2]及び画像B[2]が視差方向に並列してホログラム記録媒体70上に記録される。上述した処理を繰り返すことによって、図4(A−1)及び(B−1)に示す画像がホログラムとして記録される。
【0059】
第3の実施形態によれば、1回の記録動作で、画像A(第1の記録画像)の視差画像列に含まれる視差画像(第1の画像)と、画像B(第2の記録画像)の視差画像列に含まれる視差画像(第2の画像)とが、ホログラム記録媒体70上に記録される。したがって、第3の実施形態によれば、画像Aの視差画像列に含まれる視差画像と、画像Bの視差画像列に含まれる視差画像とを交互に1枚ずつ記録する場合の2分の1の速さでホログラムが作成されるため、ホログラムの作成時間が短縮される。
【0060】
また、第1の物体光(P偏光)と第2の物体光(S偏光)とは、90度という大きな角度差をもつため、ホログラムの再生時には、画像Aおよび画像Bの両画像が同時に眼に入りにくく、各画像について良好な再生像が得られる。
【0061】
第1の実施形態〜第3の実施形態において、参照光の偏光は、円偏光又は45度であることが望ましい。円偏光、および、P偏光およびS偏光の振動面の中間である45度の偏光は、P偏光およびS偏光のいずれとも干渉し、かつ、回折効率がそろうため、明るさのムラの発生が抑制される。なお、円偏光は、右回り円偏光および左回り円偏光のいずれでもよい。
【0062】
なお、第2の実施形態において、第1の物体光および第2の物体光の光軸が非平行であることに起因して、再生像が歪む場合がある。この場合、視差画像列を構成する視差画像に対して再生像の歪みを抑制する画像処理を行うとよい。また、光軸のずれは、使用するレンズの開口数(NA:Numerical Aperture)に依存するが、通常は問題にならないほど小さい。この場合、視差画像に対して再生像の歪みを抑制する画像処理をしなくてもよい。
【0063】
上述した実施の形態は、本発明の実施形態の一部である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0064】
20…偏光ビームスプリッタ
30、30a、30b…空間光変調器
40…偏光素子
50…分離手段
51a、51b…レンズ
52a、52b…レンズ
53a、53b…反射ミラー
60、60a、60b…シリンドリカルレンズ
70…ホログラム記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した偏光を偏光方向が異なる2つの物体光に分離する分離手段と、
前記分離手段で分離される2つの偏光方向の双方を含む物体光を、前記分離手段に入射させる物体光光学系と、
前記分離手段により分離された2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光する集光手段と、
前記物体光に対応した参照光を前記記録媒体に照射する参照光光学系と、
を備えることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項2】
前記物体光光学系は、前記分離手段が分離する2つの偏光方向の双方を同量ずつ有する直線偏光又は円偏光の偏光を変調することによって、2つの偏光方向の双方を含む物体光を生成し、
前記分離手段は、前記入射した偏光を前記偏光方向が直交する2つの物体光に分離することを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録装置。
【請求項3】
前記参照光光学系は、前記2つの物体光に対応させて、入射角度の異なる2つの参照光を前記記録媒体に照射することを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム記録装置。
【請求項4】
前記集光手段は、前記2つの物体光の前記記録媒体への入射角度がそれぞれ異なるように、前記2つの物体光をそれぞれ記録媒体の異なる位置に集光することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のホログラム記録装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−155130(P2012−155130A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13924(P2011−13924)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】