説明

ホースの修理方法

【課題】 ホースから剥れることのないホース修理用パッチによるホースの修理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数のたて糸と当該たて糸に対してスパイラル状に織り込まれたよこ糸とよりなるジャケット30と、当該ジャケット30の内面及び外面のうちの少なくとも一方に形成された被覆材31とを有するホース2の損傷部29の前記被覆材31を形成した面に、繊維よりなる織物27の両面に同一素材の熱可塑性プラスチックよりなる皮膜層28を形成してなるパッチ1を当接し、当該パッチ1を加熱して少なくともホース2に当接していない面の皮膜層28を溶融せしめ、当該溶融樹脂をパッチ1の縁からはみ出させてホース2の被覆材31と一体化せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホースの損傷部を修理するためのパッチを使用したホースの修理方法に関するものであって、特に複数のたて糸と当該たて糸に対してスパイラル状に織り込まれたよこ糸とよりなるジャケットと、当該ジャケットの内面及び外面のうちの少なくとも一方に形成された熱可塑性プラスチックよりなる被覆材とを有する、消防用ホースタイプのホースの修理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に消防用ホースは筒状織物の内面に熱可塑性プラスチックよりなるライニングを施したものであって、肉厚が薄く柔軟であるために傷付きやすい。特にジャケットが傷付くと漏水するのみならず、ジャケットを構成する糸条が切断されてホースの耐圧力が低下し、水圧により破断する可能性がある。
【0003】
このような消防用ホースの傷を修理する方法としては、例えば特公昭48−7726号公報に示されるように、ホースの内面から傷の部分にパッチを当て、それを加熱してホースのライニングに接着するのが一般的である。
【0004】
かかるパッチの構造としては、特公昭33−6092号公報、特公昭34−2183号公報などに示されるように、加硫ゴムの主体と未加硫ゴムの接着層とよりなるものが知られている。なおこれらの公報に記載されたものは一般的なターポリンの修理用パッチであって、ホースを修理する場合には、主体部分に織物を使用した補強層が設けられ、接着層にはホースのライニングと接着しやすい材質が用いられる。
【0005】
しかしながら消防用ホースは高い内水圧が作用し、その水圧により膨張収縮を繰り返すと共に、パッチの補強層の織物がホース内を流れる水に直接に触れているため、仮にパッチがライニングに強固に接着されていたとしても、パッチの補強層と接着層との間で剥れが生じやすい。
【0006】
パッチの補強層が剥れると、その剥れた補強層が水の流れを阻害して抵抗となり、また完全に剥れてしまった場合には、流水経路において引っ掛かってホースを詰まらせてしまう可能性がある。しかもホースの傷の部分には強度の低い接着層のみが残るため、その接着層を突き抜いて損傷部から漏水する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭48−7726号公報
【特許文献2】特公昭33−6092号公報
【特許文献3】特公昭34−2183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、パッチによりホースを修理する方法において、ホースから剥れることのないホースの修理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して本発明は、複数のたて糸と当該たて糸に対してスパイラル状に織り込まれたよこ糸とよりなるジャケットと、当該ジャケットの内面及び外面のうちの少なくとも一方に形成された被覆材とを有するホースの損傷部の前記被覆材を形成した面に、繊維よりなる織物の両面に同一素材の熱可塑性プラスチックよりなる皮膜層を形成してなるパッチを当接し、当該パッチを加熱して少なくともホースに当接していない面の皮膜層を溶融せしめ、当該溶融樹脂をパッチの縁からはみ出させてホースの被覆材と一体化せしめることを特徴とするものである。
【0010】
このホースの修理方法においては、前記加熱によりパッチのホースに当接した面の皮膜層の熱可塑性プラスチックをも溶融せしめ、当該皮膜層をホースの被覆材と一体化せしめることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パッチを加熱してホースに当接していない面の皮膜層を溶融させ、当該溶融樹脂をパッチの縁からはみ出させてホースの皮膜層と一体化せしめるので、パッチの織物はその両面及び周縁を樹脂で包まれることとなり、パッチはホースに強固に接着すると共に、織物が剥れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ホースを修理する状態を示す縦断面図
【図2】ホースを修理する状態を示す横断面図
【図3】本発明のパッチを示すものであって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】本発明のパッチをホースの損傷部に配置した状態を示す断面図
【図5】本発明のパッチによりホースの損傷部を修理した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は本発明のホース修理用パッチ1を使用してホース2を修理する状態を示すものであって、3はパッチ1をホース2内に配置する管内器具であり、4は前記管内器具3との間でホース2の壁面を挟む挟持部材、5は管内器具3と挟持部材4との間にホース2の壁面を強く挟圧するクランプ装置である。
【0014】
前記管内器具3は、基板6上にヒーター7が取り付けられ、当該ヒーター7上にアルミ板8が被せられ、当該アルミ板8の上部はシリコーンゴムのクッション板9で覆われている。そして基板6の先端には略砲弾状の形状の先端部材10が取り付けられ、また基板6の後端にはケーブル11が取り付けられ、当該ケーブル11で管内器具3をホース2内に挿入すると共に、当該ケーブル11を通して前記ヒーター7に電力を供給するようになっている。
【0015】
また前記挟持部材4は、基板12の下面にヒーター13が取り付けられ、当該ヒーター13の下面にアルミ板14が被せられ、さらに当該アルミ板14の下部はシリコーンゴムのクッション板15で覆われている。また前記基板12の上面には、発泡ゴムのクッション16が設けられている。
【0016】
クランプ装置5は基台24の上方にアーム17が取り付けられており、当該アーム17の先端に回動アーム18が回動自在に取り付けられ、トグルクランプ19により回動操作されるようになっている。
【0017】
回動アーム18に取り付けられた支持部材20に摺動軸21が、トグルクランプ23により上下に摺動自在に取り付けられており、当該摺動軸21の下端に押圧部材22が取り付けられている。
【0018】
而して管内器具3のクッション板9上にパッチ1を載置し、ケーブル11で押して管内器具3をホース2内に挿入して、ホース2の損傷部に位置せしめ、そのホース2の外側から管内器具3上に挟持部材4を載置し、それをクランプ装置5の基台24上に載置する。そしてクランプ装置5のトグルクランプ23を操作して挟持部材4のクッション16の上から押圧部材22で押圧する。
【0019】
この状態で管内器具3のヒーター7に通電し、さらに必要に応じて挟持部材4のヒーター13にも通電して、パッチ1を加熱し、パッチ1をホース2の内面に接着し、ホース2の損傷部を修理する。
【0020】
本発明のパッチ1は、図3に示すように、たて糸25とよこ糸26とを織成した織物27の両面に、熱可塑性プラスチックの皮膜層28を形成したものであって、その形状は長方形又は楕円形などの任意の形状とすることができる。両面の皮膜層28は、織物27の布目の間を通して一体に結合していることが好ましい。
【0021】
本発明のパッチ1における皮膜層28を構成する熱可塑性プラスチックは、パッチ1で修理するホース2のライニング層を構成する熱可塑性プラスチックと同一の素材であることが好ましい。
【0022】
また前記修理されるホース2が、ジャケットの両面に同一の熱可塑性プラスチックの被覆材を形成したものである場合には、パッチ1は当該ホース2の一部を切り取ったものを使用することができる。
【0023】
而して本発明のパッチ1を使用してホース2を修理するには、前述のようにパッチ1を管内器具3に載置してホース2内に挿入し、図4に示すようにパッチ1をホース2の損傷部29に位置せしめる。
【0024】
このとき、前記パッチ1の織物27を構成するたて糸25及びよこ糸26が、ホース2のジャケット30を構成する糸条に対して45度の斜めの角度となるように載置するのが好ましい。
【0025】
図面においては、ホース2はジャケット30の両面に被覆材31が形成されているが、この被覆材31はジャケット30の内面に形成されたライニングのみのものであっても差し支えない。
【0026】
この状態で図1及び図2に示すように、ホース2の損傷部29を挟んで管内器具3上に挟持部材4を載置し、クランプ装置5のトグルクランプ23を操作して押圧部材22を下動させ、管内器具3と挟持部材4との間にパッチ1及びホース2の壁面を挟圧し、ヒーター7に通電して発熱させる。
【0027】
これにより、ヒーター7はアルミ板8及びクッション板9を介してパッチ1を加熱する。パッチ1はその下面から加熱されるため、先ずパッチ1における下面側の皮膜層28が加熱されて溶融し、管内器具3と挟持部材4とに挟圧されることにより、皮膜層28が溶融した樹脂は周縁方向に広がり、図5に示すようにパッチ1の外周部のホース2の内面の被覆材31と融合して一体化する。
【0028】
さらに加熱を続けることにより、パッチ1全体が加熱されて上面の皮膜層28も溶融し、ホース2内面の被覆材31と融合し、図5に示すようにパッチ1の両面の皮膜層28がホース2内面の被覆材31と融合して一体化する。
【0029】
以上の説明では管内器具3のヒーター7にのみ通電するものとして記載しているが、必要に応じて挟持部材4のヒーター13にも通電してホース2の外側からも加熱することもできる。なおこの場合には、外側から過度に加熱すると、ホース2の被覆材31が過度に溶融し、かえって損傷を拡大する可能性もあるので、温度を低くしたり加熱時間を短くするなど、加熱の程度を低くするべきである。
【0030】
従ってパッチ1の織物27は、その両面のみならず周縁も皮膜層28で包まれてホース2内の水から遮断され、織物27内に水が侵入することがない。そのため織物27が皮膜層28から剥れることがなく、剥れた織物27が流水抵抗となったり、水の流路を詰まらせたりするようなことがない。
【0031】
またパッチ1は管内器具3と挟持部材4との間で強く挟圧されつつ加熱され、皮膜層28が溶融して周縁から外部に広がった状態でホース2の被覆材31と融合するので、ホース2の内面は滑らかな曲面となり、修理による流水抵抗の増大は最小限に抑制することができる。
【0032】
以上の説明では、ホース2の内面からのみ修理するものとして記載しているが、ホース2の外面にも被覆材31が形成されている場合には、全く同様にして外面からも修理することができる。
【0033】
すなわち、ホース2内に管内器具3を挿入して損傷部29に位置せしめ、その損傷部29の上にもパッチ1を載置してその上に挟持部材4を載置し、さらにその上からクランプ装置5の押圧部材22で押圧するのである。このときには、管内器具3及び挟持部材4の両方のヒーター7、13を同様に加熱させるべきである。またホース2の損傷が表面のみであってライニングに損傷がない場合には、ホース2の外面のみを本発明により修理することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 パッチ
2 ホース
27 織物
28 皮膜層
29 損傷部
30 ジャケット
31 被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のたて糸と当該たて糸に対してスパイラル状に織り込まれたよこ糸とよりなるジャケット(30)と、当該ジャケット(30)の内面及び外面のうちの少なくとも一方に形成された被覆材(31)とを有するホース(2)の損傷部(29)の前記被覆材(31)を形成した面に、繊維よりなる織物(27)の両面に同一素材の熱可塑性プラスチックよりなる皮膜層(28)を形成してなるパッチ(1)を当接し、当該パッチ(1)を加熱して少なくともホース(2)に当接していない面の皮膜層(28)を溶融せしめ、当該溶融樹脂をパッチ(1)の縁からはみ出させてホース(2)の被覆材(31)と一体化せしめることを特徴とする、ホースの修理方法
【請求項2】
パッチ(1)のホース(2)に当接した面の皮膜層(28)をも溶融せしめ、当該皮膜層(28)をホース(2)の被覆材(31)と一体化せしめることを特徴とする、請求項1に記載のホースの修理方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81762(P2012−81762A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263178(P2011−263178)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【分割の表示】特願2007−158070(P2007−158070)の分割
【原出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】